赤ちゃんの離乳食サーモンはいつから？臭み取りのコツと栄養満点レシピ【管理栄養士監修】

離乳食のサーモン、始める前に知っておきたい４つのこと

サーモンを離乳食に取り入れる前に、まず親御さんが最も気になるであろう「安全性」に関する４つの重要事項を、公的機関の指針に基づいて詳しく解説します。これらの知識は、自信を持って離乳食作りを進めるための土台となります。

① いつから？ 鮭は離乳食中期（7〜8ヶ月）からが安心

多くの親御さんが最初に抱く疑問は「一体いつからサーモンをあげていいの？」ということでしょう。厚生労働省が策定した「授乳・離乳の支援ガイド」では、離乳食はまずお粥のような消化しやすい食品から始め、野菜、豆腐、そして白身魚へと進めていく段階的なプロセスが示されています¹。サーモンはマグロなどと同じ「赤身魚」に分類され、タラやかれいといった初期の白身魚に比べて脂質を多く含みます¹⁵。そのため、赤ちゃんの消化器官が発達し、白身魚に十分に慣れた後の離乳食中期（生後7〜8ヶ月頃）から導入するのが最も安全かつ一般的とされています⁴。この時期であれば、赤ちゃんはサーモンの栄養を効率的に消化・吸収する準備が整っています。下の表は、魚の種類を段階的に進めるための目安です。

② アレルギーは大丈夫？安全な進め方

食物アレルギーは、親御さんにとって大きな懸念事項です。事実、サーモン（さけ）は、消費者庁によってアレルギー表示が推奨される21品目の一つに含まれています²⁴。魚アレルギーの主要な原因物質は「パルブアルブミン」という熱に強いタンパク質です²⁴。しかし、適切な手順を踏むことで、リスクを管理しながら安全に試すことができます。以下のステップを必ず守ってください。

• 他のタンパク質から: 豆腐や白身魚など、他のタンパク質源に慣れてから始めましょう。
• ごく少量から: 初めて与える際は、耳かき1杯程度の本当にごく少量からスタートします¹³。
• 平日の午前中に: 万が一アレルギー反応が出た場合に、すぐに小児科を受診できるよう、平日の午前中に試すのが賢明です¹³。
• 新しい食材は一つだけ: その日に他の新しい食材を同時に試すのは避けましょう。原因の特定が困難になります。
• 症状を観察: 食べた後に、じんましん、腫れ、呼吸の苦しさなどの症状が出ないか注意深く観察し、異変があれば直ちに医療機関を受診してください⁷。

③ 水銀は心配ない？厚生労働省の公式見解

妊娠中の魚介類摂取に関するアドバイスを見聞きしたことがある親御さんの中には、魚に含まれる水銀（メチル水銀）が赤ちゃんの神経発達に影響を与えるのではないかと心配される方もいるかもしれません²⁵⁶。しかし、この心配はサーモンには当てはまりません。厚生労働省および水産庁は、魚介類の水銀濃度に関する詳細なデータを提供しており、妊婦が摂取量を制限すべき魚（キンメダイやメカジキなど一部の大型魚）をリストアップしています⁶。その公式な指針の中で、サーモン（サケ）は「特段の注意が必要ない」魚として明確に分類されており、摂取量の制限なく安心して食べられることが示されています⁶。これは、サーモンが食物連鎖の上位に位置しないため、体内に水銀が蓄積されにくいことが理由です²⁷。この公的な見解は、サーモンを離乳食に使う上での大きな安心材料となります。

④ 骨や食中毒は？調理と保存の基本ルール

アレルギーや水銀以外の安全対策も重要です。特に、骨による窒息のリスクと食中毒の予防には細心の注意が必要です。

• 骨の完全な除去: 赤ちゃんにとって窒息は深刻な危険を伴います²。調理の際には、指やピンセットを使って、どんなに小さな骨も見逃さずに完全に取り除いてください。刺身用のサクを使うと骨がないため便利ですが、必ず加熱調理してください⁴。
• 十分な加熱: 赤ちゃんに与える魚は、サルモネラ菌などの食中毒を防ぐため、中心部まで完全に火を通す必要があります³⁰。刺身のような生の魚は、少なくとも3歳以降、できればそれ以上大きくなるまで与えるべきではありません¹¹。
• 適切な形状と水分: 調理後の身は、赤ちゃんの月齢に合わせて、ペースト状にすりつぶしたり、細かくほぐしたりしてください²。パサパサしていると飲み込みにくいため、だし汁や野菜のペーストと混ぜて、とろみをつけてあげることが大切です¹⁵。
• 衛生管理: 生魚を触った後は、必ず石鹸で手を洗いましょう¹。まな板や包丁も、使用後に熱湯をかけるなどして衛生的に管理することが重要です。

これで失敗しない！鮭の臭みを完全に取り除く「４つの裏ワザ」

「赤ちゃんが魚の臭みを嫌がって食べてくれない」というのは、多くの親御さんが直面する課題です。魚の生臭さは、主に表面の細菌が魚の成分であるトリメチルアミンオキシドを分解して生じるトリメチルアミン（TMA）という物質が原因です⁵²。しかし、ご家庭でできる簡単な下処理で、この臭みは驚くほど軽減できます。ここでは、プロも実践する4つの効果的な「裏ワザ」を紹介します。

これらの方法を調理法に応じて使い分けることで、サーモン本来の美味しさを引き出し、赤ちゃんが喜んで食べる一皿を作ることができます。

鮭の栄養を最大化する！相性抜群の野菜と時期別レシピ

サーモンの持つ優れた栄養を、さらに効果的に赤ちゃんの成長に繋げるためには、野菜との「食べ合わせ」が鍵となります。ここでは、栄養の相乗効果や食べやすさを考慮した最適な野菜の組み合わせと、赤ちゃんの成長段階に合わせた具体的なレシピを提案します。

栄養と食感の相乗効果：野菜との組み合わせの妙

なぜ野菜との組み合わせが重要なのでしょうか。それには3つの理由があります。

1. 栄養の相乗効果： ブロッコリーやかぼちゃに含まれるビタミンCは、サーモンに含まれる鉄分の吸収を助けます⁵⁹。また、サーモンのビタミンDは、ほうれん草や小松菜などの青菜に含まれるカルシウムの吸収を促進します⁵⁹。
2. 食感の相乗効果： じゃがいもやさつまいも、かぼちゃのようなデンプン質の多い野菜は、加熱してつぶすとクリーミーなペースト状になります。これが加熱するとパサつきがちなサーモンの身と合わさることで、全体がしっとりとなめらかになり、赤ちゃんが非常に飲み込みやすくなります¹⁵。
3. 風味の相乗効果： にんじんや玉ねぎ、キャベツなどの野菜が持つ自然な甘みは、サーモンの豊かな風味と調和し、味わいのバランスを整えてくれます。

これらの組み合わせを参考に、赤ちゃんの好みや成長に合わせてアレンジしてみてください。次に、具体的な調理法を月齢別に見ていきましょう。

【離乳食中期：7〜8ヶ月】ごっくん・もぐもぐ向けレシピ

この時期は、なめらかにすりつぶし、飲み込みやすいペースト状にするのが基本です。

• レシピ1：鮭とじゃがいものとろとろ煮
  下処理した鮭と皮をむいたじゃがいもを、かぶるくらいの水で柔らかくなるまで茹でます。お湯を少量残してすり鉢ですりつぶすか、ブレンダーにかけます。最後にだし汁や育児用ミルクを加えて、ポタージュ状のなめらかさに調整します⁶⁰。
• レシピ2：鮭とにんじんのミルク煮
  下処理した鮭とにんじんを柔らかく茹でてすりつぶします。鍋に戻し、育児用ミルクを加えて弱火で軽く煮ます。にんじんの自然な甘みが鮭の風味とよく合います⁶⁶。

【離乳食後期：9〜11ヶ月】かみかみ・手づかみ食べレシピ

歯ぐきでつぶせる固さを目安に、少しずつ形のある食事に移行していきます。

• レシピ1：鮭と彩り野菜のトマトリゾット風
  下処理して細かくほぐした鮭、みじん切りにした玉ねぎ、皮をむいて種を取ったトマト、細かく刻んだブロッコリーを、だし汁と軟飯（またはおかゆ）で煮込みます。トマトの酸味が食欲をそそります⁶⁸。
• レシピ2：鮭とさつまいものおやき
  下処理してほぐした鮭と、蒸してつぶしたさつまいも、少量の片栗粉を混ぜ合わせます。小さな円形に成形し、少量の油をひいたフライパンで両面を焼きます。手づかみ食べの練習に最適です¹¹。

【離乳食完了期：12〜18ヶ月】ぱくぱく期・取り分けレシピ

大人に近い食事ができるようになり、手づかみ食べも上手になります。

• レシピ1：鮭とキャベツのミルク味噌スープ
  大人の味噌汁を作る際、味噌を入れる前に取り分けます。細かくほぐした鮭と、柔らかく煮たキャベツを加え、牛乳を少量加えて風味をマイルドにします。栄養満点の和風スープの完成です⁶⁸。
• レシピ2：鮭とほうれん草のクリームうどん
  茹でて短く切ったうどんに、ほぐした鮭、茹でて刻んだほうれん草を合わせます。ホワイトソース（牛乳と少量の片栗粉や小麦粉で作る）をかければ、赤ちゃんも大満足の一品になります¹⁴。

よくある質問

結論

サーモンは、適切な時期（離乳食中期以降）に、正しい知識（アレルギー、骨、衛生管理）を持って導入すれば、赤ちゃんの成長にとって非常に有益で安全な食材です。特に、脳の発達に重要なDHAと、日本の子供たちに不足しがちなビタミンDを同時に摂取できる点は、他の食材にはない大きな魅力と言えるでしょう。魚特有の臭みも、本記事で紹介した簡単な下処理を行うことで効果的に取り除くことができ、野菜と組み合わせた美味しいレシピで、きっと赤ちゃんの「お気に入りメニュー」の一つになるはずです。本記事が提供する科学的根拠に基づいた情報と実践的なアプローチが、親御さんの不安を解消し、自信を持って赤ちゃんの食生活を豊かにするための一助となることを心から願っています。