赤ちゃんの鼻づまりを和らげる9つの民間療法 | 親が知っておきたい注意点
小児科

赤ちゃんの鼻づまりを和らげる9つの民間療法 | 親が知っておきたい注意点

はじめに

赤ちゃんや幼いお子さまが鼻づまりを起こすと、呼吸が苦しくなって睡眠や授乳がうまくできず、見ている親御さんも心配になります。多くの場合、鼻づまりはそこまで重大な疾患に結びつくわけではありませんが、しつこい鼻づまりが続けば赤ちゃんの機嫌が悪くなったり、体力消耗や授乳不良につながることもあります。とくに生後間もないお子さまにとっては、鼻が詰まるだけで大きなストレスになりがちです。

この記事では、赤ちゃんの鼻づまりを和らげるうえで参考となる「昔から伝わる民間療法」的な対処法(以下では「民間療法」や「民間的なケア」と表現)を9つご紹介します。ただし、これらはあくまでも一般的に伝わる方法や、実際にお子さまを育てる中で多くの方が試してみている対処法であり、すべての赤ちゃんに確実に効果があるわけではありません。実行される際は、主治医の指示や病院の受診を優先してください。

専門家への相談

鼻づまりの原因や対処法は、赤ちゃんの月齢・健康状態・鼻づまりの程度などによって異なります。医師や小児科専門医に相談し、必要があれば適切な医療的ケアを受けることが大切です。この記事ではスタンフォード大学小児医療センター(Stanford Children’s Health)やCleveland Clinicなどの国際的に信頼されている医療機関の文献をはじめ、複数の情報源を参考にまとめています。実際にご家庭でケアをする前には、必ず小児科医・専門家の意見を確かめましょう。

赤ちゃんの鼻づまりはなぜ起こる?

赤ちゃんは鼻腔がまだ非常に狭く、粘膜が未発達なため、ちょっとした刺激でも鼻づまりを起こしやすいとされています。たとえばウイルス感染やアレルギーなど、なんらかの原因で鼻腔粘膜がむくみ、粘液や鼻水が増えると、空気の通り道がふさがって息苦しくなります。赤ちゃんは大人のように上手に鼻をかむことができないため、鼻づまりから抜け出すのも一苦労です。

また、室内環境や季節の影響、さらにはホコリやタバコの煙などの刺激によっても、鼻づまりが悪化することがあります。したがって、部屋の空気を適度に保湿し、空気を汚さないように気を配ることは、赤ちゃんの鼻づまりを予防・改善するうえで重要なポイントです。

9つの民間療法による鼻づまり対策

以下では、多くのご家庭や先人の経験から伝わる民間的なケア方法を9つご紹介します。いずれも「安全性が高い」と言われる対策ではありますが、赤ちゃんの様子を見ながら、必要に応じて小児科を受診し、医師に相談のうえ実施してください。

1. 生理食塩水(いわゆる「鼻洗浄用の食塩水」)を使う

赤ちゃんの鼻づまり改善策として、よく推奨されるのが生理食塩水の点鼻や洗浄です。これは比較的安全と考えられており、以下のようなメリットがあります。

  • 鼻水や鼻腔内の分泌物をやわらかくする
  • 鼻の粘膜表面を清潔に保ち、乾燥を防ぐ

やり方は、赤ちゃん用の生理食塩水(点鼻液)を1〜2滴、片方の鼻孔に垂らしたあと、専用の鼻吸い器で軽く吸い取る、という方法が一般的です。これは病院や薬局で販売されている市販の生理食塩水を使用すると安心でしょう。

ただし、一度に大量の食塩水を入れすぎると、鼻粘膜を逆に乾燥させてしまう恐れが指摘されています。赤ちゃんが嫌がったり、鼻を詰まらせそうになったら無理せず中断し、様子を見ながら少量ずつ進めましょう。

研究データ

実際に、鼻洗浄用の生理食塩水の有用性は近年の複数の研究でも示唆されています。とくに上気道炎症状に対して生理食塩水が安全かつ軽度の緩和効果をもたらすとの報告があり(Nasal Congestion (Stuffy Nose): What It Is, Causes & Treatment, Cleveland Clinic, 参照)、この方法は世界各国で小児科領域のケアに取り入れられています。

また、Cochrane Database of Systematic Reviewsでは、ネブライザーで生理食塩水や高張食塩水を使用するアプローチが軽症〜中等症の鼻づまり・呼吸障害軽減に有効である可能性が報告されています(Zhang Lら 2021, “Nebulized hypertonic saline solution for acute bronchiolitis in infants”, Cochrane Database of Systematic Reviews, 2021(12):CD006458, doi:10.1002/14651858.CD006458.pub5)。ただし、赤ちゃんの年齢や症状に応じた判断が必要なので、必ず医師と相談してください。

2. ティートゥリーオイルなどの精油(エッセンシャルオイル)を活用

昔から「鼻づまりのときにアロマオイルを活用すると良い」という考えがあります。その中でも、ティートゥリーオイル(またはユーカリオイルなど)は殺菌・抗ウイルス作用があるとされ、鼻づまり時の補助策として用いられることがあります。

  • タオルやハンカチに1〜2滴だけ精油を垂らす
  • 赤ちゃんの鼻に直接かがせるのではなく、少し離れたところに置いて香りをやわらかく広げる
  • 香りがきつすぎないように注意する

赤ちゃんの肌に直接つけるのは刺激が強すぎる可能性があるので避けるべきです。衣類や枕、タオルなどに少量つけておき、部屋全体に優しい香りが広がる程度に留めるのがよいでしょう。とくに3カ月未満の赤ちゃんには精油は基本的に推奨されないので、月齢や体調を考慮しながら使用してください。

3. 鼻や顔周辺のマッサージ

赤ちゃんの鼻のまわり(鼻筋・眉間・こめかみ周辺)や頬骨あたりを指先でやさしくマッサージすると、鼻づまりがいくらか楽になることがあります。実際、顔の周辺には多数の神経や血管が集中しており、そこを軽く刺激して血行を促すと、粘液の排出がスムーズになる可能性が示唆されています。

  • 指先の腹を使って、円を描くように軽くなでる
  • 強く押しすぎない
  • 赤ちゃんが嫌がらない範囲で、短時間にとどめる

これに加え、頭皮や髪の生え際を軽くマッサージしてあげるのもリラックス効果が期待できます。赤ちゃんが気持ちよさそうにしているかを確認しながら行ないましょう。

4. 湯気・蒸気を活用する

適度な湿度は鼻腔内の粘膜や分泌物をやわらかくする効果があると考えられています。具体的には以下のような方法があります。

  • お風呂で湯気を取り込む:赤ちゃんを入浴させる際、浴槽から上がる蒸気をほどよく吸うことで鼻腔が潤い、粘液が緩みやすくなる
  • 洗面器を使ったスチーム:大人がタオルをかぶってスチームを浴びる要領で、赤ちゃんを抱っこしながら安全を確保しつつ、そばで蒸気を少し吸わせる

ただし、熱いお湯でのやけどリスクには十分注意してください。湯温は37度前後を目安にし、絶対に赤ちゃんから目を離さず短時間で切り上げましょう。

5. 寝姿勢を工夫する

赤ちゃんが鼻づまりで苦しそうなとき、寝姿勢を少し工夫すると息がしやすくなることがあります。

  • 頭側をほんの少し高くする:タオルや柔らかめのクッションを使って頭が高くなるようにします
  • 2歳未満の場合は慎重に:SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクを考えると、あおむけで寝かせるのが原則ですが、高さを付けすぎたり、柔らかい毛布や枕を使いすぎると危険が伴います

2歳以上になってからであれば、多少頭を高くしてあげることで鼻づまりが緩和され、寝ている間の息苦しさが和らぐといわれています。しかし、まだ首が据わらない時期や1歳前後の赤ちゃんに対しては、安易に厚みのある枕を使用しないようご注意ください。

6. 耳への温湿布

「耳は鼻とつながっている」という東洋医学的な考え方があり、耳周辺を温めることで鼻づまり緩和につながるという民間療法があります。具体的には、温かいタオルやカイロをタオルでくるんだものを耳の付け根あたりに数分当てると、鼻粘膜への刺激が軽減されるとの説です。

実際のところ、科学的根拠は明確ではない場合もありますが、赤ちゃんが心地よさそうにしているならば、家庭でできるケア方法のひとつとして試してみる価値はあるかもしれません。やはりやけどのリスクがあるため、温度には細心の注意を払いましょう。

7. 背中を軽くとんとんする

赤ちゃんの鼻づまりだけでなく、痰がからんで苦しそうなときに有効といわれるのが、背中を優しくとんとん(タッピング)してあげる方法です。以下の手順で行なうとよいとされています。

  1. 赤ちゃんをうつ伏せ気味に抱くか、膝の上に乗せる
  2. 体を少し前に傾けた状態を保つ(約30度)
  3. **手のひらをカップ状(軽く丸める)**にして、肩甲骨まわりを優しくとんとん叩く

このとき、ごく弱い力でリズミカルに叩いてあげてください。痰や粘液がゆるみ、気道に溜まった分泌物が動きやすくなるとされています。ただし、赤ちゃんが嫌がるほど強く叩くのはNGです。

8. 室内の空気環境を整える

鼻づまりの悪化要因として、空気の乾燥や、室内に漂うホコリ・煙草の煙・刺激性の強い匂いなどがあげられます。具体的には次のことを心がけましょう。

  • 加湿器を使用する:相対湿度が50〜60%程度になるよう調整し、鼻腔粘膜を乾燥から守る
  • 定期的な換気:室内の空気がよどむとウイルスやアレルゲンが溜まりやすい
  • 刺激物を排除:香水の強い香り、タバコの煙、殺虫剤や消臭剤などの化学物質

赤ちゃんの生活空間が快適で清潔に保たれていれば、鼻づまりの頻度や程度も軽減される可能性があります。もしアレルゲンが原因の場合は、掃除や寝具のケアを入念に行ない、医師のアドバイスを仰いでください。

9. 足裏を温める・オイルを塗布する

昔から「足裏を温めると鼻やのどの症状が和らぐ」との言い伝えがあり、足裏に生薬やオイルを塗布する民間的なケアを行なう人も少なくありません。具体的には、メントールやユーカリが含まれるオイルを少量とって、赤ちゃんの足裏を軽くマッサージする方法がよく知られています。

  • オイルを大量に使わない:刺激が強いと肌荒れの原因になる
  • ベビーマッサージ用の刺激の少ないものを選ぶ
  • 塗ったあとは靴下をはかせてあげるか、タオルで軽く包む

足裏を温めると血行が良くなり、体全体の冷えを緩和する効果が期待されます。直接的に鼻づまりが劇的に改善される科学的根拠は限定的ですが、保温効果によって風邪の悪化を防ぎ、赤ちゃんがリラックスできる場合があります。

民間療法を実施するときの注意点

上記の民間療法は、比較的安全と考えられる方法を中心に取り上げましたが、絶対に自己判断だけで進めず、必ず医師や専門家に相談したうえで実践することが大切です。以下の点に留意しましょう。

  • 医師の許可を得る:赤ちゃんの月齢や健康状態によっては、逆効果になる場合もあります
  • 強引に行なわない:赤ちゃんが明らかに嫌がる場合は中断し、無理をしない
  • 薬の使用は専門家の指示が必須:市販の点鼻薬や抗生物質などを独断で使用しない
  • 口から摂取する民間療法は避ける:赤ちゃんの消化機能は未熟なため、知らない成分を与えるのはリスクが高い
  • 症状が悪化したらすぐ受診:鼻づまりだけでなく、発熱や呼吸困難など他の症状が見られる場合、速やかに医療機関で診察を受ける
  • 生活環境の見直し:花粉やハウスダストなどのアレルゲン、煙草の副流煙などに配慮し、外出時には体を冷やさないように注意する

なぜ赤ちゃんの鼻づまりに注意が必要?

赤ちゃんは鼻呼吸が中心です。大人に比べて口呼吸に切り替えるのが上手にできないため、鼻づまりを起こすと呼吸が苦しくなり、ミルクや母乳をうまく飲めない、睡眠が浅くなってしまうなどのトラブルが起こります。さらに、慢性的な鼻づまりが続けば、耳管の働きが未熟な赤ちゃんは中耳炎を併発しやすくなるリスクも指摘されています。

また、新生児期から生後数カ月の間は、気道が非常に狭いことに加え、免疫が十分に発達していないため、ちょっとしたウイルス感染や環境の変化でも鼻づまりがひどくなることがあるのです。したがって、こまめに対処し、必要であれば医師の判断で薬や適切な治療を受けることが望ましいでしょう。

民間療法に科学的根拠はあるの?

「民間療法」というと科学的根拠が乏しいイメージを抱きがちですが、実際には現代の小児科医療でもある程度応用されている方法がいくつかあります。たとえば先述の生理食塩水による点鼻や蒸気吸入、マッサージなどは、明確なエビデンスがあるわけではなくとも、リスクが少なく症状を軽減する可能性があると考えられています。

一方で、オイルやハーブ、民間的な軟膏などを赤ちゃんに使用する場合、成分やアレルギーリスクを十分に確認する必要があります。とくに首がすわらない低月齢の乳児に対して、誤って口に入ってしまったり皮膚に負担がかかったりするケースもあるので注意が必要です。

一般的なケアが効かない場合は?

  • 高熱や強い咳を伴う:ウイルス性疾患や細菌感染などが進んでいる可能性
  • 鼻づまりが長期間改善しない:アレルギー性鼻炎や鼻ポリープなど構造的な問題も疑われる
  • 呼吸が苦しそう、哺乳量が激減:呼吸不全や脱水症状を招く恐れがあるため、早急に専門医へ

こういった兆候がある場合は、すみやかに小児科を受診しましょう。家庭でのケアに限界を感じる場合や、2〜3日試しても改善が見られないときは、自己流の対処を続けずに医師の診察を受けることが重要です。

おわりに

以上、赤ちゃんや幼い子どもの鼻づまりに対する代表的な民間的ケアと注意点をご紹介しました。鼻づまり自体は一見すると軽い症状に思えますが、赤ちゃんの場合は生活リズムや栄養摂取に大きな影響を与えかねません。ぜひ本記事の内容を参考に、安全に配慮しながらケアしてみてください。ただし、あくまでもこれらの方法は情報提供・一般的な参考としてご理解いただき、気になる点や不安が大きい場合は早めに専門医のアドバイスを受けるようにしましょう。

専門家の受診を推奨する理由

赤ちゃんの鼻づまりが長引くと、眠れない・ミルクを上手に飲めない・機嫌が悪いなどの日常的な不調につながるだけでなく、何らかの感染症や基礎疾患が潜んでいる可能性も否定できません。さらに、鼻づまりが慢性化すると中耳炎など他の合併症を誘発することもあります。自己流のケアで様子を見すぎることなく、「少しでもおかしい」と思ったらこまめに受診することをおすすめします。

参考文献

医師に相談することを忘れずに

本記事で取り上げた民間的なケア・対策は、あくまで参考情報であり、正式な医療アドバイスや診断ではありません。赤ちゃんの症状には個人差が大きいため、「なかなか良くならない」「症状が長引く」「新しい症状が出てきた」と感じたら、迷わず小児科医や専門家に相談してください。

重要なポイント: この記事の内容はあくまでも一般的な情報提供を目的としており、医学的アドバイスの代替ではありません。赤ちゃんやお子さまの体調にご不安がある場合は、必ず小児科や医療専門家の診断を受けてください。

(執筆者情報:執筆日2023年12月20日/著者:Minh Châu Văn/医学監修:医師CKI Nguyễn Đinh Hồng Phúc(Nhi khoa · Bệnh viện Nhi Đồng 1 TP HCM)/内容更新:Lan Quan)

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