赤ちゃん主導の離乳食(BLW)とは?やり方・安全性・栄養のすべてを専門家が徹底解説
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赤ちゃん主導の離乳食(BLW)とは?やり方・安全性・栄養のすべてを専門家が徹底解説

赤ちゃん主導の離乳食、通称BLW(Baby-Led Weaning)は、近年日本でも注目を集めている新しい離乳食の進め方です。伝統的なスプーンでペースト状の食事を与える方法とは異なり、赤ちゃんが自らの手で固形物をつかんで食べることを主体とします1。この方法は、赤ちゃんの自主性を尊重し、食への好奇心を育む可能性がある一方で、「窒息しないか」「栄養は足りるのか」といった保護者の切実な疑問や不安も伴います。この記事では、JHO編集委員会が最新の科学的根拠と国内外の専門家の見解を徹底的に分析し、BLWの哲学から具体的な実践方法、日本文化への適応に至るまで、保護者が抱えるあらゆる疑問に答えることを目指します。世界保健機関(WHO)や日本の厚生労働省の指針を踏まえつつ、BLWという選択肢を安全かつ効果的に検討するための、信頼できる情報を提供します。

この記事の科学的根拠

この記事は、引用されている調査報告書に明記された、最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を含むリストです。

  • 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」: 日本における離乳食の開始時期、進め方の段階、鉄分補給の重要性に関する国内の公式基準として、この記事の議論の基盤となっています2
  • 世界保健機関(WHO): 補完食に関する国際的な推奨事項、特に応答的な食事(Responsive Feeding)の概念は、BLWの原則を評価する上で重要な比較対象となります3
  • BLISS研究(ランダム化比較試験): BLWの安全性と栄養面(特に鉄分摂取)に関する最も質の高い科学的根拠の一つです。本記事における「調整されたBLW」に関する記述は、この研究結果に大きく依拠しています4
  • 日本小児科学会: 子どもの窒息事故予防に関する提言は、BLWを実践する上での具体的な食品の準備方法や注意点を解説するための、極めて重要な安全情報源です5

要点まとめ

  • BLW(赤ちゃん主導の離乳食)は、赤ちゃんが自分で固形物を選び、自分のペースで食べることを尊重する食事法です。
  • 科学的根拠によれば、安全な食材の準備方法を学べば、BLWが従来の離乳食より窒息の危険性を高めることはありません。
  • 栄養面、特に「鉄分不足」が懸念されますが、毎食鉄分の豊富な食品を意識的に提供する「調整されたBLW」で危険性を低減できます。
  • 日本の専門家の間でも意見は分かれており、伝統的な方法と組み合わせた「ハイブリッド法」も現実的な選択肢です。
  • 成功の鍵は、赤ちゃんの準備が整っているかを見極め、窒息予防の知識を持ち、家族がリラックスして食事を楽しむことです。

BLWの最大の懸念:窒息の危険性は本当?専門家の見解と科学的根拠

BLWを検討する保護者にとって、最大の障壁は「窒息」への恐怖です。この問題を理解するためには、まず「むせ(Gagging)」と「窒息(Choking)」を明確に区別することが不可欠です。

「むせ」と「窒息」の決定的な違い

「むせ」は、赤ちゃんが大きな食べ物の塊を喉の奥から押し出すための、正常で重要な防御反射です6。むせる時、赤ちゃんは咳き込んだり、顔を赤くしたり、音を出したりしますが、空気の通り道は確保されています。これは、赤ちゃんが様々な形状や食感の食べ物を安全に口の中で処理する方法を学んでいる証拠です。
一方、「窒息」は、食べ物が気道を完全に、または部分的に塞いでしまう医学的な緊急事態です7。窒息している赤ちゃんは、声を出したり咳をしたりすることができず、静かになり、皮膚が青白くなることがあります。これは即時の対応を必要とします。

科学的研究が示す真実

多くの保護者がBLWは窒息の危険性が高いと考えがちですが、質の高い科学的研究はこの通説を裏付けていません。BLWの安全性を高めるための調整版(BLISS)を用いたランダム化比較試験(RCT)を含む複数の研究では、安全に関する指導を受けた上でのBLW群と、従来のスプーンで与える離乳食群との間で、実際に窒息が起きた頻度に統計的な有意差は認められませんでした8
興味深いことに、ある研究では、BLWを実践する赤ちゃんは離乳食開始初期(6ヶ月頃)にはより多く「むせる」ものの、8ヶ月頃にはむせる頻度が少なくなる傾向が示されました9。これは、BLWの赤ちゃんが固形物の扱いに早期から慣れ、口腔機能を効果的に発達させている可能性を示唆しています。むしろ、長期間ペースト状の食事のみで、固形物への移行が遅れた赤ちゃんの方が、手づかみ食べを開始した際に窒息を経験する危険性が高い可能性を指摘する研究もあります10
結論として、窒息の危険性は「方法そのもの」にあるのではなく、「安全な進め方を知っているか」に依存します。適切な知識(例えば、丸い食べ物は縦に4等分する、硬い野菜は指で潰せるくらい柔らかく調理する)を身につけることで、BLWは伝統的な方法と比較して窒息の危険性を増加させることはない、というのが現在の科学的なコンセンサスです8

栄養は足りる?特に「鉄分不足」への具体的な対処法

窒息の次に大きな懸念は、赤ちゃんが自らのペースで食べるBLWで、十分なエネルギーと必須栄養素、特に鉄分を摂取できるかという点です1。鉄は赤ちゃんの神経発達に極めて重要であり、不足は長期的な影響を及ぼす可能性があります11

「調整されたBLW」の重要性:BLISS研究からの教訓

この問いに答える上で最も信頼性の高い根拠は、ニュージーランドで行われた「BLISS(Baby-Led Introduction to SolidS)」と呼ばれるランダム化比較試験です。この研究で検証されたのは、単なるBLWではなく、栄養と安全への懸念に対処するために特別に「調整されたBLW」でした12。研究に参加した保護者は、以下の具体的な指導を受けました4

  • 毎回の食事に、鉄分が豊富な食品を1品必ず含めること。
  • エネルギーが豊富な食品を1品提供すること。
  • 窒息の危険性を避けるために、安全な形状や硬さで食品を提供すること。

この研究の結果は非常に重要です。12ヶ月の時点で、この「調整されたBLW(BLISS群)」の赤ちゃんと、従来の方法で離乳食を進めた赤ちゃんとを比較したところ、食事からの鉄分摂取量、体内の鉄貯蔵量を示すフェリチン値、鉄欠乏性貧血の割合において、両群間に有意な差は見られませんでした13。ニュージーランドでの別の観察研究でも、BLWの実践と鉄分の状態低下との間に関連は見出されませんでした14

家庭でできる鉄分確保の戦略

これらの研究結果が示すのは、「どのような形のBLWでも栄養的に安全」ということではなく、「鉄分供給を意識した、教育に基づくBLWであれば、鉄分不足の危険性を高めることはない」という、より正確な結論です。日本の厚生労働省のガイドラインも、生後9ヶ月頃からの鉄欠乏の危険性を強調しており、これはBLWかどうかにかかわらず重要な視点です2。 具体的には、以下の鉄分が豊富な食品を積極的に取り入れることが推奨されます。

  • 赤身の肉(牛肉、豚肉)や魚(カツオ、マグロ)を柔らかく調理し、手で持てるスティック状にする。
  • 鶏レバーをペーストにして、全粒粉のパンに塗る。
  • 鉄分強化された乳児用シリアルを、パンケーキやおやきに混ぜ込む。
  • 豆腐やレンズ豆などの植物性食品も良い選択肢です。

さらに、ブロッコリーやパプリカなどのビタミンCが豊富な野菜や果物を一緒に提供することで、植物性食品からの鉄分吸収率を高めることができます11

日本の「離乳食ガイドライン」とBLW、何が違う?

日本の保護者にとって、BLWを検討する際には、厚生労働省が定める「授乳・離乳の支援ガイド」との違いを理解することが不可欠です2。このガイドラインは、日本の離乳食指導の「基準」となるものです。

厚生労働省ガイドラインの基本

日本の公式ガイドラインは、赤ちゃんの咀嚼(そしゃく)機能の発達に合わせて、食事の形態を段階的に変化させていくことを特徴としています15

  • 初期(ゴックン期、5~6ヶ月頃): なめらかにすりつぶしたポタージュ状から始める16
  • 中期(モグモグ期、7~8ヶ月頃): 舌でつぶせる豆腐くらいの硬さ15
  • 後期(カミカミ期、9~11ヶ月頃): 歯ぐきでつぶせるバナナくらいの硬さ15
  • 完了期(パクパク期、12~18ヶ月頃): 歯ぐきで噛める肉団子くらいの硬さ16

この構造化されたプロセスは、赤ちゃんが安全に食べるスキルを習得し、必要な栄養を確保することを目的としています。保護者がスプーンで与えることで、食べる量を管理しやすいという側面もあります。

BLWとの比較:哲学と実践の違い

BLWと日本の伝統的な方法との最も根本的な違いは、「誰が食事をコントロールするか」という点にあります。以下の比較表で、その違いを明確に理解できます。

基準 日本の伝統的離乳食(MHLWガイドライン) 赤ちゃん主導の離乳食(BLW)
食事の主導権 保護者が主導(スプーンで与える、量を管理する)17 赤ちゃんが主導(自分で選ぶ、食べる量を決める)17
最初の食事形態 必須としてポタージュ状・ペースト状から開始16 ペースト状の段階を省略し、固形物から開始1
食感の進展 規定の段階(ゴックン→モグモグ等)に沿って進める15 初期から多様な食感に触れ、赤ちゃん自身のペースで進む
食事の準備 赤ちゃんのために別に調理することが多い18 安全に配慮した上で、家族と同じ食事を取り分けることを推奨6
核となる哲学 栄養確保と食べる機能の発達を目的とした構造的プロセス 赤ちゃんの自主性と自己調整能力を育むことを重視

現実的な選択肢:「ハイブリッド法(組み合わせ離乳食)」

この明確な違いから、多くの日本の保護者は「公式ガイドラインから完全に逸脱するのは不安だ」と感じるかもしれません。ここで非常に現実的かつ有効な選択肢となるのが、「ハイブリッド法(組み合わせ離乳食)」です19
これは、伝統的な方法とBLWの「良いとこ取り」をするアプローチです。例えば、食事の基本はガイドラインに沿って少量のお粥や野菜ペーストをスプーンで与えつつ、同時に赤ちゃんが自分で安全に食べられる手づかみメニュー(蒸した野菜スティックなど)をいくつか食卓に並べるのです。この方法は、保護者の不安を和らげながら、赤ちゃんが自分で食べるスキルと楽しさを体験する機会を提供できるという大きな利点があります。

専門家の意見:日本における賛成派と慎重派の議論

日本国内の医療専門家の間でも、BLWに対する見解は一枚岩ではありません。信頼できる情報提供のためには、この専門的な議論を公平に提示することが不可欠です。

  • 賛成・推進する立場: 日本離乳食・小児食育学会は、歯科医師である河崎真也氏を中心に、BLWが口腔機能の発達や「食べることが好き」という気持ちを育むとして公式に推奨しています20。彼らは、赤ちゃんが自分で噛む力を学ぶことの重要性を強調しています。
  • 批判的・慎重な立場: 一方で、著名な小児科医である伊藤明子医師のように、BLWは栄養失調や栄養障害につながるケースがあるとして推奨しないと明言する専門家もいます21。また、日本小児科学会はBLWを公式に支持してはおらず、その推奨内容は基本的に厚生労働省のガイドラインに沿っており、特に窒息予防の重要性を強く訴えています5。学術論文においても、日本での研究はまだ不足しており、鉄や亜鉛の欠乏につながる可能性が指摘されています22

この専門家間の議論は、BLWがまだ発展途上のアプローチであることを示しています。保護者は、一方的な意見に偏るのではなく、双方の主張を理解した上で、科学的根拠(特に前述の研究結果)と照らし合わせ、自身の家庭に合った方法を冷静に判断することが求められます。

BLWの始め方完全ガイド:いつから?最初の食材は?

BLWを安全に始めるためには、正しい知識と準備が重要です。ここでは、具体的なステップを解説します。

ステップ1:開始時期の見極め(「6ヶ月」という数字より大切なこと)

開始時期は、単に「生後6ヶ月になったから」という暦の上の日付で決めるべきではありません。以下の3つの発達のサインがすべて揃っていることを確認することが、最も重要です15

  1. 支えがあれば、まっすぐ座れる: 安全に食べ物を飲み込むための正しい姿勢を保つ能力です。
  2. 食べ物に興味を示し、手を伸ばして掴もうとする: 赤ちゃん自身が食事に参加する意欲の表れです。
  3. 舌で食べ物を押し出す反射(舌突出反射)が弱まっている: スプーンなどを口に入れても舌で押し出さなくなり、食べ物を口の奥へ運ぶ準備ができたサインです。

これらのサインが揃うのが、多くの赤ちゃんで生後6ヶ月頃ですが、個人差があることを理解しましょう。

ステップ2:最初の食材の選び方と安全な準備

最初は、アレルギーの可能性が低く、赤ちゃんが握りやすい形状の食材から始めます。

  • 理想的な最初の食材(日本版):
    • 野菜スティック: 茹でたり蒸したりして、指で簡単につぶせるほど柔らかくした人参、大根、さつまいも。長さは赤ちゃんの拳から少しはみ出るくらいが持ちやすいです。
    • ブロッコリー: 房の部分が持ち手になるよう、柔らかく蒸します。
    • 果物: 熟したバナナや、皮をむいてスティック状に切ったアボカド。
    • 炭水化物: 全粒粉の食パンを軽くトーストしてスティック状に切ったものや、固めに炊いたご飯で作った小さな俵型のおにぎり。
  • 安全な準備の鉄則:
    • 丸くて小さいもの: ミニトマトやブドウは、窒息の危険性が非常に高いため、必ず縦に4等分します5
    • 硬いもの: 生のリンゴや人参のような硬い野菜や果物は、必ず加熱して柔らかくします。
    • 避けるべき食品: 日本小児科学会は、ナッツ類、丸いソーセージ、こんにゃくゼリー、餅のような粘着性の高い食品は、乳幼児の窒息事故の危険性が高いため、そのままの形状で与えるべきではないと警告しています5

ステップ3:食事の進め方と心構え

  • 環境設定: 赤ちゃんを足が床や足置きにつく安定したハイチェアに座らせ、まっすぐな姿勢を保ちます。
  • 提供方法: 2~3種類の食材をハイチェアのトレイの上に直接置き、赤ちゃんが自由に探求できるようにします。
  • 保護者の役割: 絶対に赤ちゃんから目を離さないでください。そして、決して赤ちゃんの口に食べ物を無理やり入れたり、食べることを強制したりしないでください23。保護者の役割は、安全な環境と健康的な選択肢を提供することであり、食べる量や順番は赤ちゃんに委ねます。
  • 栄養の基本: 離乳食初期は「食べる練習」の時期です。1歳になるまでは、母乳または育児用ミルクが主要な栄養源であり続けることを忘れないでください6

管理栄養士考案!鉄分も摂れる「手づかみ食べ」和食レシピ集

ここでは、日本の家庭で手軽に作れて、栄養、特に不足しがちな鉄分も補給できる手づかみ食べのレシピ例を紹介します。

レシピ例

  1. ひじきと しらすのミニおにぎり24:
    ひじき(鉄分)としらす(カルシウム)を混ぜ込んだ、栄養価の高いおにぎり。赤ちゃんが握りやすいように、少し固めに炊いたご飯で小さな俵型に握ります。
  2. ほうれん草と豆腐のおやき25:
    茹でて細かく刻んだほうれん草(植物性鉄分)、水切りした豆腐、少量の片栗粉を混ぜて、小さな円盤状にして両面を焼きます。豆腐はタンパク質も豊富です。
  3. 鶏レバーと野菜のパテ:
    鉄分の王様である鶏レバーを、人参や玉ねぎなどの野菜と一緒に茹でてフードプロセッサーにかけ、赤ちゃんが手で持てるように成形して軽く焼くか蒸します。

1週間の献立プラン例(日本食スタイル)

具体的なイメージを持つために、1週間の献立プラン例を以下に示します。これはあくまで一例であり、家庭の状況に合わせて柔軟に変更してください。

曜日 朝食 昼食 夕食
トーストスティック + アボカド 鮭のおにぎり + 蒸しブロッコリー 鶏肉の柔らか煮(スティック状) + 蒸しさつまいもスティック
バナナ + 無糖ヨーグルト ほうれん草と豆腐のおやき + 蒸し人参スティック 蒸し鱈 + 蒸しズッキーニスティック
トーストスティック + 鶏レバーパテ ひじきとしらすのおにぎり + 豆腐スティック 牛肉の柔らか煮(細切り) + 蒸しブロッコリー
オートミールパンケーキ 納豆のミニおにぎり + 蒸しかぼちゃ 鶏ひき肉団子 + 蒸し大根スティック
熟した梨のくし切り + チーズ うどん(短く切って手づかみで) 豚肉の柔らか煮(細切り) + 蒸しパプリカ

よくある質問

「むせる」のが怖くて、なかなか固形物をあげる勇気が出ません。
お気持ちは非常によく分かります。「むせる」ことは、赤ちゃんが食べ方を学んでいる正常な過程の一部です。まずは、指で簡単につぶせるほど柔らかく調理した食材(蒸した人参スティックや熟したバナナなど)から始めてみてください。そして、必ず赤ちゃんがまっすぐ座っている状態で、保護者が見守る中で行いましょう。この記事で解説した「むせ」と「窒息」の違いを再確認し、窒息時の対処法を事前に学んでおくと、心に余裕が生まれます。
食事が毎回ぐちゃぐちゃになり、片付けが大変です。何か対策はありますか?
BLWと散らかりは、切っても切れない関係にあります26。しかし、これは赤ちゃんが五感を使って食べ物を探求している証拠でもあります。対策としては、床に新聞紙やレジャーシートを敷く、袖までカバーできる長袖のエプロンを使う、吸盤付きの食器を利用するなどの方法があります。完璧を目指さず、「今は学習の時間」と割り切ることも、保護者の精神的な負担を減らす上で大切です。
スプーンでの食事とBLWを組み合わせても良いのでしょうか?
はい、全く問題ありません。この記事で「ハイブリッド法」として紹介したように、両方を組み合わせることは非常に現実的で賢明な選択です19。例えば、ヨーグルトやお粥など手づかみでは食べにくいものはスプーンで介助し、他の固形物は赤ちゃん自身に任せるという方法です。この柔軟なアプローチにより、栄養摂取の安心感と、赤ちゃんが自分で食べるスキルを育む機会の両方を得ることができます。
周りのママ友は皆ペースト状の離乳食をあげています。BLWをすることに少し罪悪感があります。
離乳食の進め方に「唯一の正解」はありません。最も重要なのは、ご自身の家庭の価値観、赤ちゃんの個性、そして保護者の安心感に合った方法を選ぶことです。この記事で示した通り、BLWも科学的根拠に基づき、安全に配慮すれば有効な選択肢の一つです。周りと比べる必要はありません。自信を持って、ご自身の家族にとって最善だと思える方法を選択してください。

結論

赤ちゃん主導の離乳食(BLW)は、単なる食事法ではなく、「赤ちゃんを信頼し、その自主性を尊重する」という育児哲学です。科学的根拠を紐解くと、適切な知識を持って安全対策を徹底し、鉄分などの栄養供給に配慮すれば、BLWは従来の離乳食に代わる有効な選択肢となり得ることが分かります。しかし、それがすべての家庭にとって「最善」の方法であるとは限りません。
日本の公式ガイドラインが示す段階的なアプローチにも、長年にわたる知見に基づいた確かな安全性と合理性があります。最終的に最も重要なのは、情報を鵜呑みにするのではなく、科学的根拠、専門家の多様な意見、そして何よりも目の前にいる我が子の様子を観察し、自身の家庭の状況に合わせて、柔軟に方法を選択することです。伝統的な方法、BLW、あるいはその両方を組み合わせたハイブリッド法であれ、保護者が自信を持ち、食事が親子にとって楽しく、健やかな時間となることこそが、離乳食の真の成功と言えるでしょう。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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