はじめに
足首をひねる、いわゆる「足関節捻挫(捻挫と呼ばれることも多い)」は、スポーツ中だけでなく日常生活でも起こりやすい一般的なけがの一つです。特に軽度であれば自宅での対処ですぐ回復することが多い一方、重度の場合(靱帯が完全に断裂しているなど)は手術治療や専門的なリハビリテーションが必要になることもあります。この記事では、足関節捻挫(以下「捻挫」と表記)の原因、症状、治療法、日常生活での注意点などについて、専門的知見と国内外での研究をふまえて分かりやすく解説します。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
本記事で言及される内容は、TS. Dược khoa Trương Anh Thư(Dược・Bệnh viện Đại học Y Dược TP. HCM)による専門的な視点をもとに整理した知識を含みます。ただし、捻挫の重症度や個々の健康状態によって適切な治療・ケアは異なる可能性があるため、少しでも不安な点があれば医師や理学療法士などの専門家に相談することをおすすめします。
捻挫(足関節捻挫)とは
捻挫とは、足首周辺の靱帯が過度に伸ばされたり、部分的あるいは完全に断裂したりする状態を指します。靱帯は骨と骨をつなぐ丈夫な組織で、関節を安定させる役割を担っています。いっぽう、腱(けん)は筋肉と骨をつなぐ組織であり、構造や役割が靱帯とは異なります。足関節捻挫は、足首を内側や外側にひねったときに起こりやすく、バスケットボールやサッカーなどで素早い方向転換をする競技、あるいは不安定な地面を歩いた際などにも比較的よくみられます。
捻挫の主な特徴
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靱帯の損傷
靱帯が引き伸ばされる、部分断裂、完全断裂などさまざまな段階の損傷があり得ます。損傷が大きいほど痛みや腫れ、足首の不安定性が強くなります。 -
内返し捻挫が多い
足の裏が内側に向いて足首の外側靱帯を損傷する、いわゆる「内返し捻挫」がもっとも頻度が高いとされています。 -
痛み・腫れ・むくみなど
捻挫してすぐに患部が腫れることが多く、痛みのために歩行困難や可動域の制限が起こる場合があります。
症状とサイン
どんな症状があるか
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捻った瞬間に「グキッ」とした感覚や音
受傷時に靱帯が急激に伸ばされたり切れたりする音や感覚を自覚する方もいます。 -
痛み
受傷直後から持続的な痛みがある場合もあれば、最初は軽い違和感程度だが徐々に痛みが増してくる場合もあります。痛みが強いほど、損傷の程度が大きい可能性があります。 -
腫れや皮下出血
足首周辺がすぐに腫れることが多く、内出血によって赤紫色に変色したり、数日かけて青あざや黄色味を帯びたりすることもあります。 -
可動域の制限・荷重困難
足首を曲げたり伸ばしたりする動作が難しくなり、痛みで体重をかけられないほどの症状が出る場合もあります。 -
感覚異常(しびれ・麻痺など)
外傷の程度が大きい場合は、神経や血管への影響で足のしびれや感覚麻痺、極度の腫れ、冷感などが生じることがあります。
受診のタイミング
- 痛みや腫れが著しく、数日たっても改善の兆しがない
- 体重をほとんどかけられず、歩行が不可能
- 足首の皮膚が赤く腫れ、熱感や発熱がある
- 足や足指にしびれ、感覚麻痺、冷感、変色がある
- 自分で適切な処置方法が分からない、あるいは不安を感じる
上記のような場合は、早めに医師の診察を受け、状態に応じた正しい治療やケアを行うことが重要です。
原因
なぜ起こるのか
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急激な足首のひねり
ジャンプの着地や走行中の方向転換などで足首が耐えられる範囲を超えてひねられ、靱帯が伸びたり切れたりしてしまうことが最も多い原因です。 -
筋力やバランスの低下
足関節周辺の筋肉や腱の働きが低下していると、ちょっとした段差や不安定な地面を踏んだときに足首をひねりやすくなります。 -
準備運動不足
スポーツ前のウォームアップが不足していると、関節や筋肉が十分に温まっておらず、捻挫を含むけがのリスクが高まります。 -
合わない靴・ハイヒール
足に合わない靴やヒールが高い靴は足首を不安定にしやすく、ちょっとした段差や曲がり角で足をひねる事故が起こりやすいです。
危険因子
誰がなりやすいか
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過去に捻挫したことがある人
一度捻挫した足首は、靱帯がゆるんだり周辺の筋力が低下したりして、再発リスクが高まることがあります。 -
スポーツ愛好家やアスリート
バスケットボール、サッカー、テニスなど、急停止や急な方向転換が多い競技は捻挫しやすい傾向があります。 -
ハイヒールや合わない靴をよく履く人
足首を不安定にするだけでなく、バランスを崩しやすいため、捻挫の危険性を高めます。 -
不整地での作業や散歩を日常的にする人
山道や石畳の道など凹凸の大きい地面は足首をひねりやすい状況を作りやすいです。
診断方法
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医師による問診・触診
受傷状況や痛みの特徴、日常動作への支障などを詳しく聞いたうえで、足首まわりを触診して靱帯や骨の状態を確認します。 -
画像検査(X線、MRIなど)
骨折の有無を確かめるためにX線検査を行い、損傷が重度の場合はMRIで靱帯や軟部組織の状態を詳しく調べることがあります。
軽度の捻挫と判断されれば画像検査を行わないこともあります。
治療方法
まずは応急処置
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RICE処置の徹底
- Rest(安静):足首を動かさず、無理に荷重をかけない
- Ice(冷却):氷やアイスパックで患部を冷やす
- Compression(圧迫):弾性包帯などで軽く圧迫し、腫れや内出血を抑える
- Elevation(挙上):患部を心臓より高い位置に上げ、血液の滞留を緩和する
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温めるタイミングに注意
受傷後72時間程度は炎症が強いため、温めることで腫れが増す可能性があります。通常はアイシングを優先し、腫れや痛みがやや落ち着いてから温熱療法を検討します。
軽度から中等度の捻挫
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サポーターやテーピング
足首の安定性を高め、無理な動きを制限します。早期の回復と再発予防に役立ちます。 -
鎮痛剤・消炎鎮痛薬の使用
痛みや腫れが強い場合、医師の指示のもとで痛み止めや抗炎症薬(イブプロフェンなど)を一時的に使用します。 -
理学療法(フィジカルセラピー)
リハビリ専門家の指導のもと、足首周辺の筋力・柔軟性・バランス感覚を強化するエクササイズを行い、再発予防と機能回復を図ります。
重度の捻挫
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専門医の診察・手術
靱帯が完全に断裂している場合、手術で靱帯を縫合したり再建したりすることがあります。長期間のリハビリが必要になる場合もあります。 -
装具またはギプス固定
手術後や受傷直後の痛みが強い場合はギプスや固定装具を用いて関節を安定化させます。 -
長期リハビリ
損傷の程度によっては、数か月に及ぶ理学療法やリハビリで筋力と可動域を回復させる必要があります。
近年の研究とエビデンス
- 近年、捻挫の再発防止にはバランストレーニングや足部の固有受容感覚(身体の位置感覚)の向上が重要であることが明らかになっています。
たとえば、2021年にBritish Journal of Sports Medicineに掲載されたシステマティックレビュー(Doherty C, Bleakley C, Delahunt E, Holden S. 2021, doi:10.1136/bjsports-2020-102450)では、捻挫後の運動療法が再発率の低下と痛みの軽減に有効である可能性が指摘されています。 - さらに、Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy(Martin RL, Davenport TE, Fraser JJ, et al. 2021, doi:10.2519/jospt.2021.0302)においては、足関節外側靱帯損傷の診療ガイドライン改訂版が報告され、適切な運動療法・装具使用・フォローアップが捻挫後の機能回復に効果的とされています。
日常生活での注意点
早期回復を促すポイント
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過度な負荷を避ける
痛みがあるうちは無理に運動したり、荷重をかけたりしないようにしてください。安静と休養が回復への近道です。 -
段階的な復帰
痛みが落ち着き、医師や理学療法士が許可したら、軽いストレッチやウォーキングから徐々に負荷を上げていきます。 -
正しい靴選び
捻挫した足に負担をかけないためにも、クッション性があり足に合ったサイズの靴を履きます。特に再発防止には足首をしっかりホールドできる靴やサポーターなどが推奨されます。 -
体重管理
もし体重過多であれば、足首への負担を減らすため、医師や栄養士と相談しながら無理のない範囲で減量を目指すと良いでしょう。 -
周辺筋力・バランス感覚の強化
けがの再発を防ぐには、ふくらはぎや足首周辺の筋肉を鍛えることが効果的です。片足立ちやバランスボードなどを使う練習で固有受容感覚を高めることも重要です。
どんな症状が出たら病院へ行くべきか
- 捻挫から数日たっても腫れや痛みが引かない
- 足首に赤みや熱感が出てきた
- しびれや感覚麻痺がある
- 足の色が変わる、または冷たく感じる
こうした場合は血流障害や神経障害などが起こっている可能性もあるため、早期受診が必要です。
おすすめのセルフケアとリハビリ
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アイシングの継続
痛みや腫れがあるうちは1日数回、15〜20分程度氷で冷やすと炎症を抑えられます。 -
弾性包帯やサポーターの活用
足首を適度に固定し、負荷を減らします。ただし、長時間の過度な圧迫は血流を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。 -
リハビリテーション
痛みが落ち着いてきたら、医師や理学療法士の指導のもと、可動域訓練や筋力強化トレーニングを行います。早期に適切なリハビリを始めることで、関節の硬さや筋力低下を防ぎ、回復を促進できます。
よくある質問
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Q: 捻挫をしてすぐにお湯などで温めてもいい?
A: 受傷直後から72時間程度は炎症反応が強いため、温めると腫れが悪化する場合があります。アイシングを優先し、腫れが落ち着いてから温めや温熱療法を活用するとよいでしょう。 -
Q: 軽度の捻挫なら病院へ行かなくてもいい?
A: 軽度であっても、痛みや腫れが強い場合、また数日たっても悪化するなら専門家の診断を受けるほうが安全です。誤った自己判断で適切なケアを怠ると、回復が遅れたり、癖づいて再発を繰り返すことがあるので注意しましょう。 -
Q: サポーターをしていれば運動しても大丈夫?
A: サポーターは安定性を補助するものであり、痛みや腫れが強いときに無理をして運動するのは好ましくありません。医師や理学療法士と相談して、状態に合った運動レベルを決めるのが安心です。
結論と提言
足関節捻挫は、軽度のものから重度のものまで症状に幅があるため、早期の正確な診断と適切なケアが欠かせません。応急処置としては、RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)が基本です。症状に応じてサポーターやリハビリを組み合わせることで回復を早め、再発を防止できます。再発率を下げるには、足首周辺の筋力強化と固有受容感覚の向上が重要であることが、近年の研究でも示唆されています。痛みや腫れが長引いたり、しびれや発熱などの症状がある場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
この記事の情報は、一般的な医学的知見や公的機関・信頼できる研究に基づいた参考情報であり、個別の症状や状況に対して必ずしも適用されるとは限りません。必ず医師や医療専門家に相談のうえ、適切な治療やケアを受けてください。
参考文献
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Sprained ankle
https://orthoinfo.aaos.org/en/diseases–conditions/sprained-ankle/
アクセス日: 2021年12月6日 -
Recovering from an ankle sprain
https://www.health.harvard.edu/pain/recovering-from-an-ankle-sprain
アクセス日: 2021年12月6日 -
Ankle sprain
https://www.footcaremd.org/conditions-treatments/ankle/ankle-sprain
アクセス日: 2021年12月6日 -
Ankle Sprains
https://kidshealth.org/en/teens/ankle-sprains.html
アクセス日: 2021年12月6日 -
Ankle Sprains
https://www.foothealthfacts.org/conditions/ankle-sprain
アクセス日: 2021年12月6日 - Doherty C, Bleakley C, Delahunt E, Holden S. “Treatment and prevention of acute and recurrent ankle sprain: an overview of systematic reviews with meta-analysis,” British Journal of Sports Medicine, 55(2), 2021, 76–84, doi:10.1136/bjsports-2020-102450
- Martin RL, Davenport TE, Fraser JJ, et al. “Ankle Stability and Movement Coordination Impairments: Lateral Ankle Ligament Sprains Revision 2021,” Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 51(9), 2021, 147–158, doi:10.2519/jospt.2021.0302
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