この記事では、一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれるこの危険な状態について、その本質から、なぜ症状が消えても危険なのかという科学的根拠、そして未来の脳梗塞を防ぐための具体的な対策まで、日本脳卒中学会の最新ガイドライン1や国内外の研究67に基づき、徹底的に解説します。あなたやあなたの大切な人の未来を守るための、正しい知識を身につけましょう。
この記事の科学的根拠
本記事は、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、その時点における最高品質の医学的根拠にのみ基づいて作成しています。記事の正確性と信頼性を担保するため、以下の主要な情報源を基盤としています。これには、日本の主要な学術団体による最新の診療指針、政府機関による公的統計、および国内外の査読付き研究論文が含まれます。各情報源が記事のどの部分の根拠となっているかを明確に示します。
- 日本脳卒中学会: TIAの最新の医学的定義、診断基準、ABCD²スコアを用いた危険度評価、アスピリン投与や二剤抗血小板療法(DAPT)などの薬物治療に関する推奨は、同学会発行の「脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023年版)」に準拠しています12。
- 国立循環器病研究センター (NCVC): TIAの緊急性や日本のトップ機関としての治療体制に関する記述は、同センターの公開情報を参考にしています3。
- 厚生労働省 (MHLW): 日本における脳血管疾患の患者数や日本人の食塩摂取量の平均値などの統計データは、同省が発表した「患者調査」4および「国民健康・栄養調査」5の最新データに基づいています。
- 国際的な医学研究論文: 高危険度TIAに対する二剤抗血小板療法の有効性など、特定の治療法の根拠として、権威ある医学雑誌(例:The New England Journal of Medicine)に掲載された臨床試験の結果を引用しています6。
要点まとめ
- TIAは「脳梗塞の最終警告」: TIAは「軽度の脳卒中」ではなく、脳の血管が一時的に詰まることで発症する、本格的な脳梗塞の極めて危険な前触れです。症状が短時間で消えるため見過ごされがちですが、緊急の対応が必要です。
- 最新の定義は「画像診断」が基準: 現在のTIAの医学的定義は、症状が消えた後にMRIなどの画像検査で脳に新たな梗塞が見られない状態を指します。症状が消えても、脳細胞がすでに障害を受けている場合は「脳梗塞」と診断されます2。
- ABCD²スコアで危険度を評価: 症状が消えた後でも、医師は「ABCD²スコア」という評価基準を用いて、短期的な脳梗塞の発症危険度を判断します。このスコアが高い場合は、即時の入院や治療が必要です18。
- 「FAST」で緊急サインをチェック: 顔の麻痺(Face)、腕の麻痺(Arm)、言葉の障害(Speech)のいずれか一つでも見られたら、時間(Time)を置かずに救急車を呼ぶ必要があります。症状が消えてもためらってはいけません9。
- 予防には日本の生活習慣の見直しが鍵: TIAの再発や脳梗塞への移行を防ぐには、薬物治療に加え、減塩を中心とした日本食の活用10、適度な運動11、禁煙、そして「特定健診」の活用12が極めて重要です。
一過性脳虚血発作(TIA)とは? – 脳梗塞との決定的な違い
一過性脳虚血発作、通称TIAは、脳の血管が一時的に血栓(血の塊)などで詰まるものの、自然に血流が再開することで症状が消失する状態です。多くの人が「すぐに治ったから大丈夫」と考えがちですが、これは脳が発する極めて危険な警報です。国立循環器病研究センターは、TIAを発症した患者の数パーセントが48時間以内に、約10~20%が90日以内に本格的な脳梗塞を発症すると警告しており、TIAを「脳梗塞の超急性期」と捉え、24時間体制で対応しています3。
TIAの最新の医学的定義
かつてTIAは「症状が24時間以内に完全に消失するもの」と時間で定義されていました。しかし、MRIをはじめとする画像診断技術の進歩により、たとえ症状が数分で消えても、脳の細胞がすでに死んでいる(梗塞に陥っている)場合があることが分かってきました。このため、日本脳卒中学会は2019年に定義を見直し、「一過性の神経症状で、画像診断にて急性期の新規脳梗塞の所見を認めないもの」をTIAとしました2。つまり、症状の持続時間ではなく、脳に実際にダメージが残っているかどうかが、TIAと脳梗塞を分ける決定的な基準となったのです。
特徴 | 一過性脳虚血発作(TIA) | 軽症脳梗塞 |
---|---|---|
症状の持続 | 一時的(通常1時間以内)で完全に消失する | 症状が24時間以上持続するか、消失しても後遺症が残ることがある |
画像診断(MRI-DWI) | 脳に新たな梗塞の所見がない | 脳に新たな梗塞の所見がある |
本質 | 脳梗塞の「前触れ」「最終警告」 | 実際に脳細胞が壊死した「脳梗塞」 |
対応 | 脳梗塞と同様に緊急の検査・治療が必要 | 脳梗塞として緊急の治療が必要 |
出典:日本脳卒中学会「TIAの定義に関する見解」2、および「脳卒中治療ガイドライン2021」1を基にJHO編集部作成。
TIAの2つの主な原因:どこから危険はやってくるのか
TIAを引き起こす血栓は、主に2つの起源からやってきます。原因を特定することが、再発予防のための治療法を選択する上で極めて重要です113。
- 動脈硬化によるもの(アテローム血栓性・血行力学性)
最も一般的な原因です。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などによって、脳や首の血管(特に頸動脈)の壁にコレステロールなどが溜まり、プラークと呼ばれるコブができます。このプラークが破れると、その場で血栓ができて血管を塞いだり(アテローム血栓性)、プラークの一部が剥がれて脳の先の細い血管に飛んでいって詰まらせたりします。また、動脈硬化で血管が極端に狭くなると、血圧の低下時などに一時的に脳への血流が不足して症状が出ることもあります(血行力学性)。 - 心臓に原因があるもの(心原性脳塞栓症)
心臓、特に心房細動という不整脈があると、心臓内に血栓ができやすくなります。この血栓が血流に乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせることで発症します。心原性の血栓は比較的大きいことが多く、太い血管を詰まらせて重篤な脳梗塞を引き起こす危険性が高いとされています13。
これがTIAの危険なサイン – 見逃してはいけない5つの症状
TIAの症状は、脳のどの部分の血流が障害されたかによって様々ですが、突然現れて短時間で消えるという共通点があります。以下に示すのは、米国疾病予防管理センター(CDC)などが啓発する、注意すべき典型的な症状です1415。これらの症状は、たとえ一つでも、一瞬でも経験したらTIAの可能性があります。
- 片側の麻痺・しびれ: 体の片側の顔、腕、脚に突然、力が入らなくなる、感覚が鈍くなる、しびれる。例:「突然、右手の力が抜けて箸を落としてしまった」「顔の右半分が垂れ下がった感じがする」
- 言語障害(失語症・構音障害): 突然、ろれつが回らなくなる、言葉が出なくなる、他人の言うことが理解できなくなる。例:「簡単な言葉を言おうとしても、うまく口が動かない」「相手の話が外国語のように聞こえる」
- 視覚異常: 片方の目が見えなくなる(一過性黒内障)、物が二重に見える、視野の一部が欠ける。例:「片方の目がカーテンが下りるように急に見えなくなったが、数分で戻った」
- めまい・平衡感覚障害: 立っていられないほどの激しいめまいや、ふらついてまっすぐ歩けない。ただし、単なるめまいのみの症状は他の原因も多いです。
- 突然の激しい頭痛: これまでに経験したことのないような、バットで殴られたような激しい頭痛。これは、くも膜下出血の可能性も考えられ、極めて危険なサインです。
緊急サインを即座にチェック!「FAST」テストの実践法
TIAや脳梗塞が疑われる人がいたら、誰もが簡単にできる「FAST」テストで確認しましょう。これは、顔(Face)、腕(Arm)、言葉(Speech)の3つの症状をチェックし、発症時刻(Time)を確認してすぐに行動するための、世界的に使われている標語です9。日本の家庭でも、次のように実践できます。
- F (Face) – 顔の麻痺: 「『いー』と歯を見せて笑ってください」とお願いし、片方の口角が下がっていないか、ほうれい線の深さが左右で違わないかを確認します。
- A (Arm) – 腕の麻痺: 「両腕を前に伸ばして、手のひらを上に向けたまま10秒間キープしてください」とお願いし、片方の腕が下に落ちてこないかを確認します。
- S (Speech) – 言葉の障害: 「今日は良い天気ですね」「さくらさく」など、簡単な言葉を復唱してもらい、ろれつが回っているか、言葉に詰まらないかを確認します。
- T (Time) – 発症時刻を確認し、すぐ救急車を: 上記の3つのうち、一つでも異常があれば、発症時刻を確認し、症状がたとえ消えたとしても、ためらわずに119番通報してください。
重要:TIAにおいて最も危険なのは「症状が消えるから大丈夫」という自己判断です。症状の消失は治癒を意味するのではなく、本格的な発作の前の「猶予期間」に過ぎません。この時間を無駄にしてはいけません。
なぜ症状が消えても危険なのか? – 脳梗塞リスクを測る「ABCD²スコア」
症状が消えたTIA患者が、その後どのくらいの危険度で脳梗塞を発症するかを予測するために、医師は国際的に広く用いられている「ABCD²スコア」という評価尺度を使用します18。このスコアは、5つの項目を点数化し、合計点で短期的な脳梗塞発症の危険度を評価するものです。このスコアの存在こそが、「症状が消えても即受診すべき」科学的な理由なのです。
あなたのリスクは何点?ABCD²スコアの内訳と評価
ABCD²スコアは、以下の項目から成り立っています。ご自身の状況を当てはめて、危険度を自己評価する際の参考にしてください。ただし、これはあくまで目安であり、正確な評価は必ず医師の診察を受けてください。
項目 | 評価基準 | 点数 |
---|---|---|
A (Age / 年齢) | 60歳以上 | 1点 |
B (Blood Pressure / 血圧) | 収縮期血圧140mmHg以上 または 拡張期血圧90mmHg以上 | 1点 |
C (Clinical Features / 臨床症状) | 片側の麻痺 | 2点 |
麻痺を伴わない言語障害 | 1点 | |
D (Duration / 持続時間) | 60分以上 | 2点 |
10分~59分 | 1点 | |
D (Diabetes / 糖尿病) | 糖尿病の既往あり | 1点 |
出典:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021」1などを基にJHO編集部作成。
このスコアの合計点数が高いほど、脳梗塞を発症する危険性が高まります。例えば、ある研究では、2日以内の脳梗塞発症率は、スコアが0-3点で1.0%、4-5点で4.1%、6-7点で8.1%と報告されています。日本脳卒中学会のガイドラインでは、このスコアが3点以上、特に4点以上の場合には入院を考慮し、緊急に専門的な検査と治療を開始することを強く推奨しています116。
TIAと診断されたら – 脳梗塞を防ぐための最新治療法
TIAと診断された、あるいは強く疑われる場合、治療の目的は「本格的な脳梗塞の発症をいかに防ぐか」という一点に尽きます。そのためには、原因を迅速に特定し、それに応じた治療を開始する必要があります17。
迅速な検査と診断
- 頭部MRI検査: 特に拡散強調画像(DWI)は、発症後数時間以内のごく小さな脳梗塞も見つけ出すことができ、TIAと脳梗塞の鑑別に不可欠です。
- 頭頸部MRA検査・頸動脈エコー検査: 脳や首の血管の動脈硬化による狭窄や閉塞がないかを調べます。
- 心電図・心エコー検査: 心房細動などの不整脈や、心臓内に血栓の原因がないかを調べます。
薬物療法:血栓の再発を防ぐ
検査で特定された原因に基づき、血栓ができるのを防ぐ薬物療法が治療の中心となります1。
- 抗血小板薬: 動脈硬化が原因の場合に用いられます。血小板が固まるのを防ぎ、血栓をできにくくします。アスピリンが代表的な薬剤です。
- DAPT(二剤抗血小板療法): ABCD²スコアが高いなど、脳梗塞発症の危険性が特に高いと判断された場合に、発症後早期(通常21~90日間)にアスピリンとクロピドグレルなど2種類の抗血小板薬を併用する治療法です。国際的な大規模臨床試験(THALES試験など)で、DAPTが脳梗塞の再発を有意に抑制することが示されています619。
- 抗凝固薬: 心房細動など、心臓に原因がある場合に用いられます。血液を固める働きを持つ様々な因子に作用し、血栓ができるのを防ぎます。ワーファリンや、近年ではDOAC(直接経口抗凝固薬)が広く使われています。
外科的治療・カテーテル治療
頸動脈の動脈硬化による高度な狭窄が見つかった場合、薬物療法だけでは不十分なことがあります。その場合、脳梗塞の危険性を減らすために、以下の治療が検討されます113。
- 頸動脈内膜剥離術(CEA): 首を切開し、頸動脈の内壁に付着したプラークを直接取り除く手術です。
- 頸動脈ステント留置術(CAS): 足の付け根などからカテーテルを挿入し、頸動脈の狭窄部で金属製の網(ステント)を広げて血管を内側から補強する治療です。
未来の脳梗塞を予防する – 日本の生活で実践できる5つの習慣
TIAの治療は、病院での急性期対応だけでは終わりません。本当の戦いは、退院後の日常生活の中にあります。本格的な脳梗塞を生涯にわたって予防するためには、危険因子を管理し、生活習慣を改善することが不可欠です。ここでは、日本の生活様式の中で実践できる具体的な5つの習慣を提案します20。
1. 食事:伝統的な和食の知恵を活かす
高血圧は脳卒中の最大の危険因子であり、その管理には減塩が最も重要です。厚生労働省が推進する「健康日本21」では、1日の食塩摂取量の目標を7g未満としていますが、令和5年の「国民健康・栄養調査」によると日本人の平均摂取量は9.8gと、依然として目標を大きく上回っています5。伝統的な和食の知恵を活かし、美味しく減塩に取り組みましょう1021。
- だしの旨味を活用: 昆布や鰹節からとった天然のだしをしっかり効かせることで、塩分が少なくても満足感のある味わいになります。
- 香辛料や酸味をプラス: 生姜、しそ、みょうがなどの薬味や、酢、レモンなどの酸味は、味のアクセントになり、薄味を補ってくれます。
- 汁物は「具沢山」に: 味噌汁やスープは、野菜やきのこ、海藻などの具をたっぷり入れることで、汁の量を減らし、カリウムの摂取を増やしてナトリウムの排出を促せます。
- 青魚を積極的に: サバ、イワシ、アジなどの青魚に含まれるDHAやEPAは、血液をサラサラにし、動脈硬化を防ぐ効果が期待されます。
具体例 | ポイント | |
---|---|---|
主食 | 玄米ごはん | 食物繊維が豊富で血糖値の上昇を穏やかにする |
汁物 | 根菜と豆腐の具沢山味噌汁 | 減塩味噌を使用し、野菜でカリウムを摂取 |
主菜 | サバの塩焼き(塩は控えめに、大根おろしを添えて) | 良質な脂質(DHA/EPA)を摂取 |
副菜1 | ほうれん草とひじきのおひたし(だし醤油で) | 緑黄色野菜と海藻でビタミン・ミネラルを補給 |
副菜2 | きゅうりとワカメの酢の物 | 酢の活用で塩分を控える |
2. 運動:無理なく続けるコツ
定期的な運動は、血圧を下げ、血糖値を改善し、体重管理に役立ちます。特に、ウォーキング、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動が推奨されます11。「1日30分、週に3回以上」が目標ですが、まずは「今より10分多く歩く」ことから始めてみましょう。エレベーターを階段に変える、一駅手前で降りて歩くなど、日常生活の中に運動を組み込む工夫が長続きの秘訣です。
3. 禁煙と節酒:血管への最大のいたわり
喫煙は、血管を傷つけ動脈硬化を促進する最大の危険因子の一つであり、脳卒中の危険性を約2倍に高めると言われています13。禁煙は、脳卒中予防において最も効果的な手段の一つです。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来で専門家のサポートを受けることを強くお勧めします。また、過度の飲酒も高血圧や不整脈の原因となるため、適量を守ることが大切です。
4. ストレス管理
慢性的なストレスは血圧を上昇させ、脳卒中の危険因子となり得ます。自分に合ったリラックス法を見つけることが重要です。趣味に没頭する時間を作る、軽い運動をする、十分な睡眠をとるなど、心と体を休ませる習慣を意識しましょう。
5. 定期的な健康チェック:「特定健診」を必ず受ける
TIAの危険因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病は、初期には自覚症状がほとんどありません。これらの危険因子を早期に発見し、管理するために、40歳から74歳までの方を対象とした「特定健診・特定保健指導」は極めて重要な機会です1222。年に一度、必ず特定健診を受け、ご自身の体の状態を把握し、必要であれば保健指導を受けて生活習慣の改善に繋げましょう。これが、気づかぬうちに進行する危険からあなたを守るための、最も確実な方法の一つです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 症状が一度きりでも、本当に病院に行くべきですか?
はい、必ず、そして直ちに医療機関を受診してください。TIAは、症状が一度きりであっても、数日以内に本格的な脳梗塞を発症する危険性が非常に高い状態です8。症状が消えたからといって安心せず、「脳梗塞を防ぐためのチャンスをもらえた」と考え、すぐに専門医の診察を受けることが極めて重要です。
Q2. 何科を受診すればよいですか?
脳神経内科または脳神経外科が専門です。どちらを受診すべきか迷った場合や、夜間・休日で専門医が見つからない場合は、まずは救急外来を受診するか、地域の救急相談窓口(#7119など)に連絡して指示を仰いでください。かかりつけ医がいる場合は、まずそちらに相談するのも良いでしょう。重要なのは、迅速に行動することです。
Q3. 治療後の生活で、最も気をつけることは何ですか?
最も重要なことは二つあります。一つは、処方された薬を自己判断で絶対にやめないことです。特に抗血小板薬や抗凝固薬は、血栓の再発を防ぐための生命線です。副作用などが気になる場合は、必ず主治医に相談してください。もう一つは、この記事のセクション6で紹介した生活習慣の改善を継続することです。薬物療法と生活習慣の改善は、脳梗塞予防の両輪です。
結論:TIAは「最後のチャンス」- 正しい知識で未来を守る
一過性脳虚血発作(TIA)は、それ自体が後遺症を残すことは稀ですが、その裏には本格的で破壊的な脳梗塞がすぐそこに迫っているという、極めて重大なメッセージが隠されています。症状が消えることは、決して「治った」ことを意味しません。むしろ、それは本格的な発作が起こる前に、対策を講じるための「最後のチャンス」が与えられたと考えるべきです。日本脳卒中学会の理事長を務められた宮本享先生をはじめとする多くの専門家が、その緊急性を訴えています23。
本記事で解説した「FAST」テストで危険なサインを見抜き、「ABCD²スコア」でその危険度を理解し、そして日本の食文化や医療制度を活かした予防策を実践すること。これらの正しい知識こそが、あなた自身やあなたの大切な家族を、脳梗塞という深刻な事態から守るための最も強力な武器となります。
もし、あなたやあなたの周りの人がTIAを疑う症状を経験したら、それは行動すべきサインです。ためらわずに医療専門家に相談し、精密な検査を受けることを強く推奨します。その迅速な行動が、あなたの未来を大きく変えることになるのです。
参考文献
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