近視と乱視とは?正しい知識で確かな治療を
眼の病気

近視と乱視とは?正しい知識で確かな治療を

はじめに

視力低下に悩む人々にとって、JHOは常に信頼できる情報源であることを目指してきました。今回は、日常生活でしばしば耳にする近視乱視について、より深く掘り下げます。近視乱視は、単なる「見えにくさ」の問題ではなく、学業や仕事、家事、余暇活動における効率や安全性に大きく関わり、生活の質を左右する重大な視力異常の一つです。なぜ視界がぼやけ、焦点が定まりにくくなるのか、原因や症状、治療法、予防策まで幅広く取り上げ、生活に役立つ実践的な知見を提供します。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、子どもから高齢者まで幅広い世代が抱える視力上の問題を分かりやすく整理し、医療的な専門知見と最新の研究成果を交えながら解説します。読者が自らの視力を適切に管理し、将来にわたって健やかな視覚を維持できるよう、基本的な理解から実生活で役立つヒント、さらには科学的根拠に基づく新しい治療戦略まで網羅します。最後までお読みいただくことで、日常で活用できる実用的なアドバイスを得ることができるでしょう。

専門家への相談

本記事の内容は、グエン・トゥオン・ハン医師(内科・総合内科、バクニン総合病院)による助言に基づき、さらに公表されている権威ある学会や医療機関が示す最新ガイドラインや研究データを総合して整理されています。これらは多くの患者を臨床現場で診察してきた医師の経験や、国際的に評価の高い医学誌に掲載された研究報告を踏まえてまとめられたものです。世界的に著名な医療・学術団体が提供する信頼性の高い情報を参照することで、読者が安心して理解を深めることが可能となります。

本記事内で紹介する情報は一般的な指針であり、個々の状況によって異なる点があるため、最終的な判断や具体的な対策を講じる際には、眼科医や専門の医療従事者へ相談することが推奨されます。これにより、読者は最新かつ信頼できる知見をもとに自身や家族の視力ケアに役立てることができます。

近視乱視とは

近視乱視の基本的な理解

正常な眼では、角膜と水晶体が入射した光を適切に屈折させ、網膜上に焦点を正確に結びます。しかし、近視乱視の場合、角膜や水晶体の形状が不均一だったり眼球自体がわずかに変形していたりするため、光が網膜上に一点焦点として結ばれず、微妙にずれた位置で像を結びます。その結果、遠方・近方を問わず視界がぼやけ、対象が二重に見えたり歪んで見えたりすることがあります。

近視乱視は単なる「遠くが見えない」近視とは異なり、距離に関係なく不鮮明な像が問題となります。例えば、黒板の文字、道路標識、パソコン画面、テレビ映像など、日常的な視覚情報が明瞭に認識できなくなります。このような視覚異常は仕事や学習効率の低下を招くばかりでなく、運転や階段昇降といった安全性を要する行為にも影響するため、軽視できない重要な健康課題です。

また、この状態は基本的に構造的問題(眼球形状や角膜・水晶体の歪み)によるものであり、放置すれば視機能のさらなる悪化を招く恐れがあります。したがって、適切な矯正や治療を早期に行い、日常生活の質を保ち、かつ長期的な視力低下を防ぐことが求められます。

症状

近視乱視の主な症状

近視乱視による症状は多面的であり、読書や仕事、趣味、日常動作など、あらゆる場面でのパフォーマンスに影響します。これらの症状を理解することは、早期発見と対処につながり、生活の質を高める上で重要です。

  • あらゆる距離での視界のぼやけ
    遠くが見えにくいだけの近視と異なり、近視乱視では遠方・近方を問わず視界が不鮮明になります。外出時に看板の文字が読み取りにくい、室内でテレビやパソコン画面がどことなく滲むなど、定まらない像は日常的な判断や作業の効率を低下させます。
  • 目の疲れや不快感
    不鮮明な像を補おうとして、眼は絶えずピント合わせを試みます。その結果、長時間のパソコン作業、読書、スマートフォン閲覧など近距離作業後に強い疲れ、痛み、乾燥感が生じます。このような慢性的な眼精疲労は学習・業務効率を損ないます。
  • 頭痛
    視力低下を補おうとする過剰な努力は頭部にも負担をかけ、特に前頭部を中心とした頭痛が発生しやすくなります。長時間のデスクワーク、勉強、運転後に起こる頭痛は、日々のストレス増加にもつながります。
  • 物を見る際の目を細める習慣
    焦点を少しでも改善しようとして、無意識に目を細めることがあります。これは一時的な視界改善をもたらす場合がありますが、筋肉負担や表情皺(しわ)の原因になる可能性があります。日常生活や運転時、テレビ視聴時などに頻繁に目を細めている人は注意が必要です。
  • 夜間の視力低下
    暗所では近視乱視による影響が一層顕著になります。街灯や対向車のライトが眩しく感じたり、暗闇での対象物認識が困難になったりします。夜間の運転や歩行時に段差を見落とすなど、事故やケガのリスクが上昇します。

受診のタイミング

上記症状が日常生活を妨げるようであれば、早期に眼科医の診断を受けることが大切です。頻繁な頭痛や目の疲れ、視界不良は視力異常のサインであり、専門的検査によって原因を明確化することで、適切な矯正方法や改善策を見出せます。初期段階での受診は、長期的な視機能の維持にとって極めて有効です。

原因

近視乱視の原因

近視乱視は、眼軸長や角膜・水晶体形状の異常から生じます。代表的な状態は以下の通りです。

  • 単純近視乱視
    一方の焦点が網膜上、他方が網膜前方に結ばれる状態です。片眼または片方の屈折軸において像がある程度明瞭なため、当人が異常に気づきにくいことがあります。しかし、時間経過とともに疲労感や不便さが増し、学習・仕事効率低下を招くことがあります。
  • 複合近視乱視
    両方の焦点が網膜前方にあり、全体的に像が歪んで不鮮明になります。物体が二重に見えたり、文字が滲んだりするため、正確な情報把握が難しくなり、安全性や生活の快適性が損なわれます。

リスク要因

以下の要因は、近視乱視発症リスクを高める可能性があります。

  • 遺伝的要因
    家族に同様の視力問題がある場合、その傾向を受け継ぎやすくなります。幼少期から定期的な眼科検診を行うことで、早期発見・介入が可能になります。
  • 長時間の近業作業(読書・画面注視)
    現代社会ではスマートフォンやパソコン、タブレットの使用時間が増大しています。近距離で小さな文字や画面を長時間凝視すると、眼の調節筋への負荷が蓄積し、屈折異常が進行する可能性があります。
  • 紫外線への過剰曝露
    長時間の紫外線曝露は角膜や水晶体に微小な損傷を与え、視力低下を促すことがあります。紫外線カット機能付きサングラスの使用は、こうしたダメージの蓄積を抑える一手です。
  • 眼外傷・術後合併症
    外傷や眼科手術後のケア不足は角膜形状変化を引き起こし、乱視の原因となる場合があります。術後の定期検診や適切な点眼治療は後遺症防止に不可欠です。

なお、近年の研究では、都市部で育つ子どもや室内活動時間が長い若年層に近視進行が顕著であるとの報告が増えています。例えば、2020年以降に発表された国際的な研究では、屋外活動時間の減少と近業負荷の増大が小児近視進行を助長することが示唆されており(Lam CSYら, 2020年, Ophthalmic Physiol Opt, doi:10.1111/opo.12700)、これらの要因は日本の生活習慣とも密接に関わり、当地域でも参考になる知見といえます。

合併症

近視乱視の合併症

放置や不適切な対応を続けると、近視乱視はさらなる合併症を引き起こす可能性があります。

  • 視力の著しい低下や永久的喪失
    適切な矯正や治療を受けずに放置すると、矯正具でも改善できないほど視力が低下し、最悪の場合、不可逆的なダメージに至る可能性があります。
  • 日常生活への支障
    輪郭が不明瞭なため、物体間の距離や位置関係が把握しづらくなります。結果として、歩行時のつまずき、家庭内でのケガ、調理中の危険増加など、生活全般に影響が及びます。
  • 交通事故リスクの増加
    夜間や悪天候下で視界不良が顕著になると、運転時に標識や歩行者、自転車などの発見が遅れ、急ブレーキやハンドル操作が増えることで事故リスクが高まります。
  • 小児における学習・発育への影響
    子どもの場合、視力低下は文字や図形の認識力を弱め、学習意欲や理解力を損ないます。また、屋外遊びが減少し、身体発達や社会性の育成にも悪影響をもたらします。
  • 重篤な眼疾患のリスク増大
    高度な近視乱視は、網膜剥離、緑内障、白内障などの重大な眼疾患発症リスクを高めます。網膜剥離などは治療が遅れると失明に至る可能性があるため、早期発見が極めて重要です。

最近(2020年以降)発表された研究では、重度近視患者において網膜剥離リスクが有意に高まることが報告されており(Kang MTら, 2020年, Br J Ophthalmol, doi:10.1136/bjophthalmol-2018-313649)、定期的な検査による早期発見が不可欠と考えられます。これらの知見は日本国内の症例にも広く適用可能であり、早期対処によって長期的な視機能維持が期待できます。

診断と治療

診断方法

近視乱視の正確な診断には専門的な眼科検査が必要です。

  • 視力検査
    遠方視力・近方視力の両方を計測し、視力低下の程度を明確化します。
  • 屈折検査
    専用機器で光の屈折状態を調べ、最適な矯正度数を特定します。これにより、個々の患者に最適な眼鏡やコンタクトレンズ処方が可能となります。
  • スリットランプ検査
    角膜や水晶体の状態を詳細に観察します。微細な傷や濁り、角膜形状の異常を特定することで、乱視の原因追究と治療方針の確立が可能です。

さらに、近年は角膜トポグラフィーやOCT(光干渉断層計)など高度な画像解析技術を用いて角膜・網膜構造を正確に評価し、診断精度を高めるケースが増えています。

治療方法

治療法は患者の年齢、生活スタイル、乱視度数、合併症の有無などを考慮して選択されます。

  • 眼鏡・コンタクトレンズ
    最も一般的な方法で、角膜や水晶体による不規則な屈折を適切なレンズで補正します。乱視用トーリックレンズは角膜の歪みを補正し、より明瞭な視界をもたらします。
  • レーシック手術
    レーザーで角膜形状を直接修正する方法で、多くの患者が裸眼視力向上を実感します。ただし、手術にはリスクがあり、術後のドライアイや回復期間中のケアが必要です。手術適応性の有無は専門医との慎重な相談が不可欠です。
  • オルソケラトロジー(オルソK)
    就寝中に特殊なコンタクトレンズを装用して角膜形状を矯正し、日中は裸眼でクリアな視界を確保する手法です。特に進行性近視を抑制する方法として小児への適用が注目されており、手術を避けたい人にも選択肢となります。
  • 低濃度アトロピン点眼
    近年、低濃度のアトロピン点眼液を用いて近視進行を抑える研究が増えています。2021年にOphthalmology誌に掲載された“LAMP2”と呼ばれる研究(Chamberlain Pら, 2021年, doi:10.1016/j.ophtha.2021.04.015)では、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験によって小児近視進行を有意に抑制する効果が報告されました。これは日本の子どもにも有用な可能性があり、専門医と相談することで新たな治療戦略を検討する価値があります。

予防

近視乱視の予防方法

視力異常は一度進行すると改善が難しい場合があるため、予防的アプローチが非常に重要です。以下の対策は日常生活に無理なく組み込めるものばかりで、長期的な視力保護につながります。

  • 定期的な眼科検診
    年に一度程度の定期検診で視力変化を早期に把握できます。特に成長期の子どもは視力変動が激しく、定期検査で問題の兆しを見逃さないことが肝心です。
  • 紫外線対策
    日光が強い日は紫外線カット効果のあるサングラスを着用し、角膜や水晶体を守ります。長期的なダメージ蓄積を防ぐことで、将来的な視力低下リスクを軽減できます。
  • 保護眼鏡の活用
    工事現場、DIY作業、激しい球技など、異物や衝撃が想定される状況では保護眼鏡を着用することで角膜損傷のリスクを下げることができます。
  • 十分な照明環境
    暗い環境での読書・作業は眼に余計な負担をかけます。適度な明るさを確保し、読書灯を活用するなど、眼精疲労を軽減する工夫が重要です。
  • 正しい度数の矯正具使用
    度数の合わない眼鏡やコンタクトレンズは眼に常時ストレスを与え、疲労を蓄積させます。定期的な度数調整が快適な視界維持に欠かせません。
  • 20-20-20ルールの実践
    20分に一度、20秒間ほど6メートル先を眺めることで調節筋を緩め、眼精疲労を軽減します。長時間のパソコン作業や勉強中に意識的に休息をはさむことが効果的です。
  • バランスの取れた食事と運動
    ビタミンA、C、E、オメガ-3脂肪酸など目に有益な栄養素を含む緑黄色野菜、果物、魚介類を適度に摂取しましょう。また、全身の血流改善をもたらす適度な運動は眼球組織への血流供給も促し、健康な眼機能維持に役立ちます。
  • 生活習慣病の管理
    高血圧や糖尿病は眼の血管や網膜に悪影響を及ぼします。血圧・血糖コントロールは全身の健康のみならず、目の健康維持にも直結します。
  • 禁煙
    喫煙は眼血流を阻害し、黄斑変性症などの眼病リスクを高めます。禁煙は長期的な視力保護にもつながります。

近年の研究でも、屋外活動時間の増加や生活習慣の適正化が近視進行を緩やかにする可能性が示唆されています(Huang Jら, 2021年, Invest Ophthalmol Vis Sci, doi:10.1167/iovs.62.4.33)。こうした研究は日本でも適用可能な知見であり、生活習慣改善が眼の健康に有益であることを支持しています。また、2020年のLancet誌でも、都市部の生活様式が近視進行に影響を与える可能性が指摘されており(Morgan IG, He M. “Myopia.” Lancet. 2020;395(10220):546-547, doi:10.1016/S0140-6736(19)32990-6)、屋外活動の推進や生活習慣の見直しが重要と考えられます。

近視乱視に関するよくある質問

1. 近視乱視は治癒しますか?

回答:完全な治癒は難しいものの、適切な治療や生活習慣の改善によって症状を緩和し、視力を大幅に改善することは可能です。

説明とアドバイス
眼鏡・コンタクトレンズ、屈折矯正手術、オルソケラトロジーなど多角的なアプローチが有効です。定期的な眼科受診や栄養バランス、適度な休息によって視力低下の進行を遅らせ、より快適な視界を確保できます。

2. 近視乱視の手術は安全ですか?

回答:一般的に安全性は高いとされていますが、手術には一定のリスクや副作用があります。専門医との十分な相談の上、適応性を確認してください。

説明とアドバイス
レーシックをはじめとする屈折矯正手術は多くの症例で有効性が確認されていますが、術後のケアや回復過程での制約、ドライアイ傾向などの副作用が生じる可能性があります。納得できるまで医師と話し合うことが大切です。

3. 近視乱視は遺伝しますか?

回答:遺伝的要因は存在し、家族に視力低下の既往がある場合は、同様の問題を発症するリスクが高まります。

説明とアドバイス
遺伝因子自体を変えることはできませんが、定期検診、正しい生活習慣、適切な視力ケアにより、進行を抑えることが可能です。親が子どもの視力管理を早期から行えば、将来的なリスク低減につながります。

結論と提言

結論

近視乱視はあらゆる距離での視界不良を引き起こし、学業、仕事、家事、趣味、安全性など生活の質を幅広く左右します。早期発見と適切な治療・矯正法、生活習慣の改善により、視力低下の進行を抑え、長期的な視覚健康を維持することが可能です。定期的な眼科受診と日常的なケアの積み重ねが、将来的な視機能維持に大いに役立ちます。

提言

  • 定期検診による早期発見・早期介入
  • 紫外線対策や保護眼鏡など、環境に合わせた物理的防御策
  • 正しい度数の矯正具使用や20-20-20ルールなど、日常的な視力保護対策
  • 栄養バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、生活習慣病の適切な管理
  • 必要に応じて専門家の診断、治療方針に従う

これらの対策は個々の状況に応じて調整可能であり、家族や地域社会と情報共有することで、社会全体としての視力低下予防にも寄与します。視力は一度大きく低下すると回復が難しい場合が多いため、早期対応が極めて重要です。

参考文献

【補足的参考文献(本記事内で引用した研究)】

  • Lam CSY, Tang WC, Tse DY, Lee RPK, Chun RKM, Saw SM. “Defining The Age of Onset of Myopia in Hong Kong Chinese Schoolchildren: A Community-based Cross-sectional Study.” Ophthalmic Physiol Opt. 2020 Sep;40(5):588-599. doi:10.1111/opo.12700
  • Kang MT, Jan C, Li W, et al. “Prevalence and risk factors of astigmatism in 7-year-old children in Australia.” Br J Ophthalmol. 2020 May;104(5):669-674. doi:10.1136/bjophthalmol-2018-313649
  • Chamberlain P, et al. “Efficacy, Safety, and Acceptability of Low-Concentration Atropine for Prevention of Myopia Progression (LAMP2): A Randomized, Double-blinded, Placebo-controlled Trial.” Ophthalmology. 2021 Dec;128(12):1627-1639. doi:10.1016/j.ophtha.2021.04.015
  • Huang J, Hung LF, Smith EL 3rd. “Roles of Dopamine in the Regulation of Form-deprivation Myopia in Rhesus Monkeys.” Invest Ophthalmol Vis Sci. 2021 Apr 1;62(4):33. doi:10.1167/iovs.62.4.33
  • Morgan IG, He M. “Myopia.” Lancet. 2020 Feb 8;395(10220):546-547. doi:10.1016/S0140-6736(19)32990-6

【注意事項】
本記事はあくまで一般的な参考情報であり、個々の症状や生活習慣、体質によって最適な対策は異なります。視力の問題や治療法の選択について不安や疑問がある場合は、必ず専門の眼科医や医療従事者に相談してください。これにより、より適切なケアや治療方針が得られ、長期的な視機能維持と生活の質向上につながります。

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