週末に子供と楽しむ!児童心理学の専門家が選ぶ、心を育むホラー映画10選
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週末に子供と楽しむ!児童心理学の専門家が選ぶ、心を育むホラー映画10選

週末の夜、家族で映画を楽しむ時間は、親子の絆を深める絶好の機会です。しかし、「ホラー映画」という選択肢が挙がった時、多くの保護者様は戸惑いを覚えるかもしれません。「子供に怖いものを見せても大丈夫だろうか?」という懸念は、当然のものです。本稿は、そのような保護者様の疑問や不安に応えるため、児童心理学とメディアリテラシーの観点から、子供とホラー映画の健全な付き合い方を提案するものです。単におすすめ作品を羅列するのではなく、なぜ子供が「怖いもの」に惹かれるのかという心理的メカニズムを解き明かし、映画鑑賞という体験を通じてお子様の「心の盾」を育むための具体的な方法を、専門家の視点から徹底的に解説します。

要点まとめ

  • 子供がホラーに惹かれるのは、スリルを求める「センセーション・シーキング」や、危険を安全に学びたい「病的(morbid)な好奇心」といった心理的要因が背景にあり、成長過程で自然なことです10
  • 映画の「G指定」は「怖くない」という意味ではなく、あくまで年齢制限がないことを示すものです1416。保護者がお子様の気質を理解し、主体的に作品を選ぶことが重要です。
  • 映画鑑賞は、親子で対話し、恐怖を乗り越える体験を共有する「対話の道具」です。鑑賞前の準備、鑑賞中の寄り添い、鑑賞後の対話というプロセスが、子供の心の成長に不可欠です136
  • 「良い怖さ」とは、主人公が主体的に困難に立ち向かい、物語が希望をもって終わるもの。一方、現実的な暴力や救いのない結末は「悪い怖さ」であり、避けるべきです480
  • メディアリテラシー教育は、情報を批判的に読み解く力を養います。ホラー映画は、作り手の意図を考え、恐怖の裏にあるメッセージを読み解く絶好の実践機会となります415

序章:なぜ子供は「怖いもの」に惹かれるのか? — 保護者のためのメディア心理学入門

責任あるメディア選択の基礎:日本の小児科学会の提言を遵守する

本稿が映画鑑賞を提案するにあたり、まず大前提として、日本の医療専門機関が示すメディア接触に関する重要なガイドラインを共有し、その遵守を強く推奨します。特に、日本小児科学会および日本小児科医会は、乳幼児期のメディア接触が心身の発達に与える影響について警鐘を鳴らしています1。2004年に発表された提言「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」では、以下の点が強調されています1

  • 2歳以下の子供には、テレビ・ビデオを長時間見せない。内容に関わらず、長時間視聴は言語発達が遅れる危険性を高めます3
  • テレビはつけっぱなしにしない。
  • 乳幼児に一人でメディアを見せない。親が一緒にいて、問いかけに応えるなどの双方向のコミュニケーションが不可欠です1
  • 授乳中や食事中はテレビをつけない。

これらの提言は、乳幼児期の発達において、人間との直接的な触れ合いや実体験がいかに重要であるかを物語っています4。NPO法人「子どもとメディア」の代表理事である清川輝基氏のような専門家も、子供たちが現実世界での体験機会を失い、一方的な情報を受け取るだけの「メディア漬け」になることの危険性を指摘しています5844。したがって、本稿で紹介する映画鑑賞は、これらの基礎的なメディア習慣が確立された年長児以上のお子様を対象としています。メディアを子守りの道具とせず、日本小児科医会が推奨する「1日の視聴時間は2時間以内」という目安を守り9、メディア機器を子供部屋に置かないといった健全な環境が整っていることを前提として、映画を「特別なイベント」として親子で能動的に楽しむためのガイドです。

「健全な恐怖」の心理学:スリルと達成感

では、なぜ子供たちは、時に保護者を心配させるほど「怖いもの」に惹きつけられるのでしょうか。この背景には、いくつかの心理的な要因があります。第一に、「センセーション・シーキング(sensation-seeking)」と呼ばれる特性が挙げられます。これは、スリルや興奮を求める生来の気質のことで、ジェットコースターや、そしてホラーコンテンツのような刺激的な体験を楽しむ傾向につながります10。安全が確保された環境で、ドキドキするような体験をしたいという欲求は、子供の成長過程において自然なものです。第二に、「病的(morbid)な好奇心」です。これは、危険なものや恐ろしい事柄について、安全な距離から学びたいという知的好奇心を指します10。現実では遭遇したくない状況を、物語というフィルターを通して疑似体験することで、子供たちは世界のリスクについて学び、対処法を考える機会を得るのです。さらに、日本の心理学研究では、怖い映画を最後まで見届けたという「達成感」が、ポジティブな心理的影響をもたらす可能性も示唆されています11。自分の恐怖心と向き合い、それを乗り越えたという経験は、自己肯定感やレジリエンス(精神的な回復力)の育成に繋がるのです。

「G指定のパラドックス」:映倫区分だけでは不十分な理由

映画を選ぶ際、多くの保護者様がまず参考にするのが、映画倫理機構(映倫)が定める年齢区分でしょう。この区分は、子供たちの健全な育成を目的として設定されており、メディア選択の重要な指標となります12。しかし、この区分を鵜呑みにすることには注意が必要です。特に「G指定(General Audiences)」には、見過ごされがちなパラドックスが存在します。

表1:映倫の年齢区分と保護者のための実践的ガイド

区分 映倫による定義 保護者のための実践的ガイド
G (General Audiences) 年齢にかかわらず誰でも観覧できる14 「怖くない」という意味ではない。
G指定は暴力や性的な表現が極めて抑制されていることを示しますが、心理的な恐怖、不安を煽るテーマ、不気味な雰囲気を含む作品は多数存在します。例えば、本稿で紹介する『コララインとボタンの魔女』(G指定)15 や『モンスター・ハウス』はその代表例です。お子様の気質によっては、G指定でも強い恐怖を感じる可能性があります16
PG12 (Parental Guidance Suggested) 12歳未満(小学生以下)の観覧には、親または保護者の助言・指導が適当とされる14 親子での鑑賞と対話が必須。
この区分は、「子供だけで見るべきではない」という強いシグナルです。何が子供にとって不適切と感じられる可能性があるのか(例:いじめ、軽度の暴力、怖い描写など)を、鑑賞中および鑑賞後に話し合うことが求められます17
R15+ (Restricted) 15歳未満の入場・鑑賞を禁止14 中学生以下の鑑賞は不可。
この区分の作品は、本稿の対象外です。心身ともに発達段階にある子供にとって、刺激が強すぎると判断されています。
R18+ (Restricted) 18歳未満の入場・鑑賞を禁止14 高校生以下の鑑賞は不可。
成人向けの作品であり、本稿の対象外です。

この表が示すように、G指定はあくまで「誰でも入場できる」ことを保証するものであり、「誰もが快適に観られる」ことを保証するものではありません458。この「G指定のパラドックス」を理解することが、賢明なメディア選択の第一歩です。最終的な判断基準は、外部のレイティングではなく、ご自身のお子様の個性や発達段階を最もよく知る保護者様自身の中にあるべきなのです。本稿は、その判断を助けるための知識とツールを提供します。

第1部:厳選10作品 — 勇気と対話を育む映画たち

ここでは、児童心理学の観点から厳選した10作品を紹介します。選定基準は以下の通りです。これらの基準に基づき、過度に暴力的・残虐な作品や、R15+以上の成人向け作品は完全に排除しています19

  • 主人公の主体性: 主人公が子供であり、自らの知恵と勇気で困難に立ち向かう物語であること。
  • 恐怖の質: 現実的な暴力や残虐性ではなく、ファンタジーに基づいた恐怖が中心であること。
  • ポジティブなテーマ: 家族愛、友情、勇気、共感といった、子供の心を育むテーマが根底にあること。
  • 解決と希望: 物語が絶望や無力感で終わらず、解決や希望への道筋が示されること。

1. コララインとボタンの魔女 (Coraline, 2009)

表2.1:映画基本情報

項目 詳細
邦題 コララインとボタンの魔女 3D
原題 Coraline
日本公開年 2010年
映倫区分 G15
心理学的テーマ 偽りの愛情と本物の絆を見抜く洞察力

あらすじ
新しい家に引っ越してきた11歳の少女コラライン。仕事で忙しい両親にかまってもらえず、退屈な日々を過ごしていた彼女は、家の中に隠された小さなドアを見つける。そのドアの向こうには、現実の世界とそっくりでありながら、優しくて料理上手な「別のママ」と「別のパパ」が待つ、夢のような世界が広がっていた。しかし、その世界の住人になるための条件は、自分の目にボタンを縫い付けることだった23
心理学的分析
この作品の恐怖は、突然驚かせる「ジャンプスケア」ではなく、じわじわと心を蝕む「アトモスフェリック・ホラー(雰囲気による恐怖)」の傑作です。恐怖の根源は、見慣れた日常(家族、家)が不気味に歪められていく「アンキャニー(不気味の谷)」の感覚にあります。特に、「理想的な母親」が実は子供の魂を喰らう怪物であるという設定は、子供が親に対して抱く根源的な愛着と不安を巧みに突いています。しかし、この映画が子供におすすめできる最大の理由は、主人公コララインの主体性です。彼女は間違いを犯し、誘惑に負けそうになりますが、最終的には他者に頼るのではなく、自らの勇気と知恵を振り絞って怪物に立ち向かいます。これは、自己信頼と問題解決能力の重要性を教える、非常に力強いエンパワーメントの物語です。G指定でありながら、そのテーマは心理的に深く、前述の「G指定のパラドックス」を親子で議論する絶好の教材となります。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: 「別のママ」が本性を現し、蜘蛛のような姿に変貌する場面。幽霊の子供たちが語る悲しい過去。目にボタンを縫い付けるという概念そのもの。
対話のヒント:

  • 「コララインは、最初どうして『別の世界』に惹かれたんだと思う?」
  • 「本物のパパとママは忙しいけど、彼らが特別な理由は何だろう?」
  • 「『勇気がある』って、どういうことだと思う?」

これらの問いかけは、不完全でも本物の愛情が、見せかけの完璧さに勝るという大切な教訓を、子供が自ら見出す手助けとなります。

2. モンスター・ハウス (Monster House, 2006)

表2.2:映画基本情報

項目 詳細
邦題 モンスター・ハウス
原題 Monster House
日本公開年 2007年
映倫区分 G(※議論の余地あり)
心理学的テーマ 見た目の怖さの裏にある悲しい真実を理解する共感性

あらすじ
少年DJの向かいには、庭に少しでも入ると烈火のごとく怒り出す老人ネバークラッカーが住む、不気味な屋敷があった。ある日、DJの不注意がきっかけで老人は心臓発作を起こし、病院に運ばれてしまう。主を失ったその夜から、屋敷はまるで生き物のように動き出し、人々を襲い始める。大人たちは誰も信じてくれない中、DJは親友のチャウダー、そして優等生のジェニーと共に、屋敷の謎を解き明かし、退治することを決意する。
心理学的分析
本作は古典的な「お化け屋敷」のテーマに、ユニークで個人的なひねりを加えています。恐怖の対象が幽霊のような実体のないものではなく、「家」という物理的な存在に外部化されているため、子供の主人公たちが協力して直接的に戦うことが可能です。この子供たちの連携は、友情と共有された勇気というテーマを育みます。決定的に重要なのは、物語の終盤で、なぜ屋敷が怪物になったのかという悲劇的な背景が明かされる点です。これにより、物語は単なるモンスター退治から、他者への「共感」を学ぶレッスンへと昇華します。恐ろしい見た目の裏には、深い悲しみや苦しみが隠されているかもしれない、という教訓は、子供の道徳的発達において非常に価値のあるものです。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: 屋敷が物理的に人々や物を掴み、「食べる」場面。クライマックスの追跡シーン。
レイティングに関する議論: ここで「G指定のパラドックス」を具体的に議論する絶好の機会です。日本のレビューサイトには、「全年齢対象とは知らずに小学校1年生の息子に見せたところ、夜怖がって眠れなくなった」という保護者の声が実際に投稿されています16。この事実は、レイティングはあくまで目安であり、最終判断は保護者が行うべきだという本稿のメッセージを強力に裏付けます。
対話のヒント:

  • 「あの家は、本当に『悪いやつ』だったのかな?それとも『悲しかった』のかな?」
  • 「どうして子供たちが協力することが大切だったんだろう?」
  • 「もし大人が自分の話を信じてくれなかったら、どうする?」

3. 千と千尋の神隠し (Spirited Away, 2001)

表2.3:映画基本情報

項目 詳細
邦題 千と千尋の神隠し
原題
日本公開年 2001年
映倫区分 G25
心理学的テーマ 困難な環境でも自己を失わずに、働くことと感謝の心で成長する力

あらすじ
10歳の少女、千尋は、両親と共に引っ越し先の町へ向かう途中、奇妙なトンネルに迷い込む。その先は、八百万の神々が疲れを癒しに訪れる不思議な町だった。掟を破って神々の食べ物を口にした両親は豚に変えられてしまう。一人取り残された千尋は、生き延びて両親を助け出すため、魔女の湯婆婆が経営する湯屋「油屋」で働くことになる24
心理学的分析
本作は厳密な意味での「ホラー映画」ではありませんが、両親が豚に変わるシーンやカオナシの暴走など、子供にとって十分に恐ろしく、不穏な場面に満ちています21。そのため、より本格的なホラーへの「橋渡し」として最適な作品です。日本の子供たちは、『ゲゲゲの鬼太郎』や『妖怪ウォッチ』といったアニメを通じて、妖怪や超自然的な存在に親しんでいます2728。『千と千尋の神隠し』が描く神々の世界は、この文化的な素地の上で、より複雑で成熟した物語として展開されます。恐怖は、驚きや美しさ、そして何よりも千尋の驚異的な成長物語によってバランスが取られています。無気力だった少女が、困難な状況下で働くことを通じて、感謝の心を知り、他者を思いやる、自立した一人の人間へと成長していく姿は、子供たちにとって非常に力強いポジティブなロールモデルとなります。この作品を含めることで、日本の文化的文脈における「怖さ」の多様性を示し、西洋的なホラーの定義を超えた、より深い理解を促すことができます。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: 両親が豚に変身する場面。カオナシが巨大化し、湯屋の従業員を飲み込む場面。初めて迷い込んだ異界の圧倒的な不気味さ。
対話のヒント:

  • 「千尋は、映画の最初と最後でどう変わったかな?」
  • 「千尋にとって、仕事を持つこと、役割を持つことはどうして大切だったんだろう?」
  • 「どの神様が一番面白かった?それはどうして?」

4. となりのトトロ (My Neighbor Totoro, 1988)

表2.4:映画基本情報

項目 詳細
邦題 となりのトトロ
原題
日本公開年 1988年
映倫区分 G29
心理学的テーマ 不安との向き合い方と、自然や不思議な存在がもたらす心の支え

あらすじ
昭和30年代の日本。小学6年生のサツキと4歳のメイは、病気で入院中の母親の近くで暮らすため、父親と一緒に田舎の古い家に引っ越してくる。そこで姉妹は、子供にしか見えない不思議な生き物「トトロ」と出会う。ある日、母親の退院が延びたことにショックを受けたメイが一人で病院へ向かい、行方不明になってしまう2930
心理学的分析
『となりのトトロ』もまた、ホラー映画ではありませんが、「恐怖」や「不安」という感情を子供がどう乗り越えるかを見事に描いた作品です。「母親の病気と死への不安」「メイが迷子になる恐怖」といった、子供が直面しうる現実的な恐怖が物語の根底に流れています。しかし、この映画は恐怖を直接的に煽るのではなく、トトロやネコバスといったファンタジーの存在を通じて、子供たちが不安を乗り越えるための「心の支え」を提供します。トトロは問題を直接解決してくれるわけではありませんが、その存在がサツキとメイに安心感と希望を与え、困難に立ち向かう力を与えます。これは、子供が恐怖を感じた時に、ファンタジーや想像力がセーフティネットとして機能することを示す、優れた心理的描写です。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: メイが迷子になり、村中が大騒ぎになる場面。母親の病状を心配するサツキの不安な表情。
対話のヒント:

  • 「メイちゃんがいなくなった時、サツキちゃんはどんな気持ちだったと思う?」
  • 「もし自分がサツキちゃんだったら、トトロに何をお願いする?」
  • 「怖いことや心配なことがあった時、どうしたら気持ちが楽になるかな?」

5. パラノーマン ブライス・ホローの謎 (ParaNorman, 2012)

表2.5:映画基本情報

項目 詳細
邦題 パラノーマン ブライス・ホローの謎
原題 ParaNorman
日本公開年 2013年
映倫区分 G31
心理学的テーマ いじめや偏見を乗り越える勇気と、他者の痛みを理解する共感

あらすじ
死者と話すことができる少年ノーマンは、その特殊な能力のために家族や同級生から孤立し、いじめられていた。ある日、彼は変わり者の叔父から、町にかけられた300年前の魔女の呪いを解く役目を託される。やがて、呪いによって蘇ったゾンビたちが町を徘徊し始め、パニックが広がる中、ノーマンは呪いの真相に隠された悲しい物語を知ることになる31
心理学的分析
『パラノーマン』は、ゾンビや魔女といったホラーの要素を使いながら、本質的には「いじめ」と「偏見」という非常に現実的なテーマを扱っています。主人公のノーマンが持つ「死者と話せる能力」は、他者と違うことで孤立する子供たちのメタファーです。物語の核心は、魔女の呪いの正体が、かつて周囲の無理解と恐怖によって迫害された少女の怒りと悲しみであったことをノーマンが突き止める点にあります。彼は力で魔女を倒すのではなく、彼女の痛みに共感し、対話することで呪いを解きます。これは、恐怖の対象を理解しようと努めることの重要性と、共感が持つ癒やしの力を描いた、教育的価値の非常に高い物語です。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: ゾンビたちが町に現れる場面。魔女の霊が怒りで巨大化するクライマックス。
対話のヒント:

  • 「どうして町の人は、最初ノーマンのことをいじめていたんだろう?」
  • 「魔女は本当に悪い子だったのかな?どうして怒っていたんだろう?」
  • 「ノーマンが魔女を助けるためにしたことは、どんなことだった?」

6. グースバンプス モンスターと秘密の書 (Goosebumps, 2015)

表2.6:映画基本情報

項目 詳細
邦題 グースバンプス モンスターと秘密の書
原題 Goosebumps
日本公開年 2017年
映倫区分 G32
心理学的テーマ 想像力が生み出す恐怖と、それをコントロールする冒険

あらすじ
大都会から小さな町に引っ越してきた少年ザックは、隣に住むミステリアスな美少女ハンナと、その気難しい父親に出会う。父親の正体は、世界的な児童向けホラー小説「グースバンプス」シリーズの作者、R.L.スタインだった。ある晩、ザックは偶然にもスタインが書斎に隠していた本の鍵を開けてしまい、小説の中に封印されていたモンスターたちを現実世界に解き放ってしまう32
心理学的分析
この作品は、ホラーというよりもアクション・アドベンチャーの色合いが濃いファンタジー映画です。腹話術人形のスラッピー、雪男、巨大カマキリなど、多種多様なモンスターが登場しますが、その描写は恐ろしさよりも、むしろワクワクするようなスペクタクル性に重点が置かれています33。恐怖の源が「本の中から出てきた」という設定が重要で、子供たちに「これは作り話だ」という安心感を与えやすい構造になっています。主人公たちがモンスターたちを本の中に戻すために知恵を絞り、協力して戦う姿は、チームワークと創造的な問題解決の楽しさを伝えます。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: 腹話術人形スラッピーの不気味な言動。様々なモンスターが次々と現れ、町で暴れる場面。
対話のヒント:

  • 「もし自分が本の中のモンスターを出しちゃったら、どうする?」
  • 「出てきたモンスターの中で、どれが一番面白かった?どれが一番怖かった?」
  • 「物語を作るって、どんな力があるんだろう?」

7. フランケンウィニー (Frankenweenie, 2012)

表2.7:映画基本情報

項目 詳細
邦題 フランケンウィニー
原題 Frankenweenie
日本公開年 2012年
映倫区分 G34
心理学的テーマ 愛する者との死別、そして科学と倫理の境界線

あらすじ
科学好きの少年ヴィクターは、愛犬のスパーキーを交通事故で亡くし、悲しみに暮れる。ある日、学校の科学の授業でカエルに電気ショックを与える実験を見たヴィクターは、スパーキーを生き返らせることを思いつく。嵐の夜、彼は墓地からスパーキーを掘り起こし、自家製の実験装置で蘇生に成功する。しかし、その秘密が同級生たちに知られたことで、町中を巻き込む大騒動へと発展してしまう。
心理学的分析
ティム・バートン監督による白黒のストップモーション・アニメである本作は、ゴシックで不気味な雰囲気を持ちながらも、その核には「愛犬を失った少年の純粋な愛情」という、非常に感動的なテーマがあります。物語は古典的な『フランケンシュタイン』へのオマージュに満ちていますが、恐怖の対象は蘇ったスパーキーではなく、むしろヴィクターの成功を妬み、無責任に模倣する同級生たちが生み出す怪物たちです。これは、「科学の力は使い方を間違えると危険である」という倫理的な問いを子供たちに投げかけます。死という重いテーマを扱いながらも、ヴィクターのひたむきな愛情が最終的に町の人々の心を動かす結末は、深い感動とカタルシスをもたらします。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: スパーキーが事故に遭う場面。同級生たちが蘇らせたペットたちが怪物化する場面。
対話のヒント:

  • 「ヴィクターがスパーキーを生き返らせたのは、良いことだったと思う?悪いことだったと思う?」
  • 「科学の力って、どんなことに使うべきなんだろう?」
  • 「ペットが死んでしまったら、どんな気持ちになるかな?」

8. ホーンテッドマンション (The Haunted Mansion, 2003)

表2.8:映画基本情報

項目 詳細
邦題 ホーンテッドマンション
原題 The Haunted Mansion
日本公開年 2004年
映倫区分 G34
心理学的テーマ 家族の絆と、過去の怨念を解き放つことの重要性

あらすじ
仕事人間の不動産業者ジム・エヴァースは、妻のサラと二人の子供を連れて休暇旅行に向かう途中、大雨に見舞われる。売りに出されているという大豪邸に興味を持ったジムは、家族を説得して立ち寄るが、そこは999人の幽霊が住む呪われた屋敷だった。一家は屋敷に閉じ込められ、執事のラムズリーから、サラが100年前に亡くなった屋敷の主人のかつての恋人の生まれ変わりだと告げられる。
心理学的分析
ディズニーランドの人気アトラクションを原作とする本作は、ホラーとコメディのバランスが絶妙なファミリー向けエンターテイメントです。エディ・マーフィ演じる主人公のコミカルな演技が、幽霊や呪いといった怖い要素を和らげ、子供たちが安心して楽しめる雰囲気を作り出しています34。物語の核心は、仕事ばかりで家族を顧みなかった主人公が、屋敷での恐怖体験を通じて家族の愛の大切さを再認識する成長物語です。また、屋敷の呪いを解く鍵が、過去の悲劇を明らかにし、幽霊たちの魂を解放することにあるという展開は、「許し」や「解放」といったポジティブなテーマを内包しています。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: 墓地で骸骨たちが動き出す場面。屋敷の主人の幽霊がサラに迫る場面。
対話のヒント:

  • 「ジムさんは、映画の最初と最後でどう変わったかな?」
  • 「どうして幽霊たちは、あの屋敷にずっといたんだと思う?」
  • 「家族で力を合わせることの良さって、どんなところだろう?」

9. ルイスと不思議の時計 (The House with a Clock in Its Walls, 2018)

表2.9:映画基本情報

項目 詳細
邦題 ルイスと不思議の時計
原題 The House with a Clock in Its Walls
日本公開年 2018年
映倫区分 PG12(※日本でのソフト版はG指定の場合あり)18
心理学的テーマ 自分の「変わり者」な部分を受け入れ、本当の家族を見つける旅

あらすじ
両親を亡くした少年ルイスは、風変わりな叔父ジョナサンの古い屋敷に引き取られる。その屋敷では、夜な夜な不思議なことが起こっていた。実は、ジョナサンは魔法使いで、隣に住むツィマーマン夫人も魔女だったのだ。そして、屋敷の壁の中には、世界を破滅させる力を持つ「時計」が隠されていた。ルイスは二人に魔法を教わりながら、時計を探し出す冒険に乗り出す。
心理学的分析
本作はPG12指定を受ける可能性がある作品ですが(海外レイティングに基づく)、その内容は子供の成長物語として非常に優れています。主人公のルイスは、ゴーグルがトレードマークの少し変わった少年で、学校では孤立しがちです。しかし、魔法の世界と出会い、自分と同じように「普通ではない」叔父やツィマーマン夫人と暮らす中で、自分の個性を受け入れ、自信をつけていきます。これは、「変わり者であることは悪いことではない」という力強いメッセージです。血の繋がりだけが家族ではなく、互いを理解し、支え合う人々が本当の家族なのだというテーマも、子供たちの心に響くでしょう。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: 邪悪な魔法使いアイザードが登場する場面。不気味なオートマタ(自動人形)たちが動き出す場面。
対話のヒント:

  • 「ルイスは、どうして最初、学校で友達ができなかったんだと思う?」
  • 「『普通』ってなんだろう?人と違うことは、良いこと?悪いこと?」
  • 「ルイスにとって、おじさんとツィマーマン夫人はどんな存在だったかな?」

10. トイ・ストーリー・オブ・テラー! (Toy Story of Terror!, 2013)

表2.10:映画基本情報

項目 詳細
邦題 トイ・ストーリー・オブ・テラー!
原題 Toy Story of Terror!
日本公開年 2013年(TVスペシャル)
映倫区分 G34
心理学的テーマ 恐怖心の克服と、仲間のために勇気を出すこと

あらすじ
ボニーの家族と車で旅行中、ウッディたちは道端の寂れたモーテルに一泊することになる。その夜、仲間のおもちゃが一人、また一人と姿を消していく。残されたおもちゃたちは、見えない敵の正体を突き止め、仲間を救出するために、不気味なモーテルの中を探検する。特に、臆病な恐竜のおもちゃレックスは、自分の恐怖心と戦いながら、仲間を助けようと奮闘する。
心理学的分析
本作は、約22分の短編作品であり、「ホラー映画入門」としてこれ以上ないほど最適な一本です。子供たちが慣れ親しんだ『トイ・ストーリー』のキャラクターたちが、ホラー映画の定番シチュエーション(閉鎖された空間、仲間が次々と消える展開)に置かれることで、恐怖が非常にマイルドな形で提示されます34。物語の中心は、臆病なキャラクターが仲間のために勇気を振り絞るという、古典的かつ力強い成長物語です。見知ったキャラクターたちが恐怖に立ち向かう姿を見ることで、子供たちは安心して物語に入り込み、「自分も怖さを乗り越えられるかもしれない」という自信を得ることができます。
保護者向け鑑賞ガイド
挑戦的なシーン: おもちゃたちが暗闇の中で何者かに連れ去られる場面。
対話のヒント:

  • 「レックスは、どうやって自分の怖さを乗り越えたんだろう?」
  • 「仲間を助けるために一番大切なことは何だと思う?」
  • 「もし自分がおもちゃだったら、あのモーテルでどうする?」

第2部:わが子の「心の盾」を育てる — 保護者のための実践メディアリテラシー

映画を選び、鑑賞することは、プロセスの半分に過ぎません。残りの半分、そしてより重要なのは、その体験をお子様の心の成長に繋げるための、保護者様の関わり方です。この章では、専門家の知見に基づいた、具体的なメディアリテラシーの実践方法を解説します。

親子鑑賞(Co-Viewing)の技術:準備からアフターケアまでの完全ガイド

親子での鑑賞は、単に同じ空間で同じ画面を見るだけではありません。それは、お子様の感情に寄り添い、学びを深めるための能動的なプロセスです。米国小児科学会(AAP)や米国児童青年精神医学会(AACAP)、そして日本の小児科学会が推奨するアプローチを統合し、具体的なステップに落とし込みました13536

ステップ1:鑑賞前の準備

  • 内容の事前確認: レイティングや予告編を確認するだけでは不十分です36。可能であれば、保護者様が先に鑑賞するか、信頼できるレビューサイト(後述のチェックリストを活用)で具体的な内容を把握します。
  • 期待値のコントロール: 子供に「これから少し怖い場面もある映画を見るけど、お父さん/お母さんが一緒にいるから大丈夫だよ」と伝え、心の準備をさせます。
  • ルール作り: 「もし本当に怖くなったら、いつでも『ストップ』って言っていいんだよ。すぐに消そうね」と約束し、子供にコントロール権があることを伝えます。これは、子供が自分の感情を表現することを促し、安心感を与えます。

ステップ2:鑑賞中の関わり

  • 物理的な近さ: 隣に座り、手をつなぐ、膝に乗せるなど、物理的な接触を保ちます。これにより、子供は安心感を得られます。
  • 感情の受容と代弁: 子供が怖がっている様子を見せたら、「今のシーンは怖かったね」「ドキドキするね」と感情を言葉にして認めます。恐怖を感じることは自然な反応であり、悪いことではないと伝えます10
  • 現実との区別: 「これは特殊効果(SFX)で作られた映像だよ」「俳優さんたちは本当は怪我をしていないから大丈夫」といった声かけで、フィクションと現実の境界線を明確にします35

ステップ3:鑑賞後のアフターケア

  • 対話の時間: 鑑賞後すぐに、「どうだった?」「どこが一番面白かった?」「どこが一番怖かった?」など、オープンな質問で感想を引き出します。この対話が、恐怖体験を消化し、学びへと昇華させる上で最も重要です。
  • 悪夢や持続する恐怖への対応: もし子供が悪夢を見たり、鑑賞後も怖がったりする場合は、決してその感情を否定せず、再度安心させます36。明るい昼間の時間帯に、怖かったシーンについてもう一度話し合ったり、怖いキャラクターの絵を描かせてみたりするのも効果的です。絵に描くことで、恐怖の対象を客観視し、コントロールする感覚を得られます。
  • 「映画感想シート」の活用: 映画情報サイト「映画.com」が提供しているような「映画感想シート」をダウンロードして、親子で一緒に記入するのも良い方法です37。これにより、鑑賞体験が整理され、家族の思い出として形に残ります。

「良い怖さ」と「悪い怖さ」を見分けるチェックリスト

すべてのホラーコンテンツが子供に同じ影響を与えるわけではありません3940。お子様の心を育む「良い怖さ」と、不必要なトラウマや攻撃性を助長する可能性のある「悪い怖さ」を見分けるためのチェックリストを作成しました。これは、AAPや日本の専門家の知見を統合した、実践的なツールです10

表3:保護者のためのコンテンツ評価チェックリスト

評価項目 グリーンフラッグ(心を育む要素) レッドフラッグ(避けるべき要素)
主人公 子供が主人公で、主体的に行動し、成長する。 主人公が無力で、ただ恐怖に翻弄されるだけ。
恐怖の源 ファンタジー、超自然的な存在(モンスター、幽霊など)。 現実的で生々しい暴力、残虐な描写(血液、内臓など)。
物語の結末 問題が解決され、希望やカタルシスが感じられる。 救いがなく、絶望的・虚無的な結末。
暴力の扱い 暴力が否定的に描かれ、加害者には相応の結末が訪れる。 暴力が肯定されたり、罰せられなかったりする。
加害者の描写 明らかに非現実的な怪物や、共感の余地のない悪役。 魅力的、共感的、あるいは子供自身に似た加害者(模倣のリスク)10
テーマ 勇気、友情、家族愛、共感、自己信頼。 激しい心理的拷問、人間の残虐性、不信感の強調。
ユーモア 恐怖を和らげるコメディ要素が含まれている。 暴力とユーモアが結びつき、暴力への感覚を麻痺させる10

このチェックリストは、絶対的な基準ではありませんが、保護者様が映画を選ぶ際の思考のフレームワークを提供します480。この視点を持つことで、単なるレイティングを超えた、お子様一人ひとりに合わせたメディア選択が可能になります。

日本の文脈:妖怪の国でのメディアリテラシー

最後に、この議論を日本の文化的な文脈に位置づけることが重要です。前述の通り、日本の子供たちは「妖怪」という形で、古くから超自然的な存在に親しんできました27。この文化的素地は、ホラーコンテンツに対する耐性や解釈に影響を与える可能性があります。この「妖怪文化からの橋渡し」という視点を、より広範なメディアリテラシー教育へと繋げることが肝要です。日本の教育心理学者やNPOは、メディアからの一方的な情報を受け取るだけでなく、その内容を「批判的に読み解く(クリティカル・リーディング)」能力の重要性を説いています414243。この分野における日本の第一人者である清川輝基氏とNPO「子どもとメディア」は、メディアリテラシーを単なる学校の教科ではなく、現代を生きる子供たちにとって必須のライフスキルだと位置づけています567。彼らの警鐘は、受動的なメディア消費が子供たちの発達機会をいかに奪うかという点にあります。したがって、ホラー映画の鑑賞は、メディアリテラシーを実践する絶好の機会です38。「この映画は私たちをどうやって怖がらせようとしているんだろう?」「このモンスターは、本当は何を伝えたかったんだろう?」といった対話を通じて、子供たちはコンテンツの作り手の意図を読み解き、表面的な恐怖の奥にあるメッセージを考える訓練をすることができます。これは、情報が溢れる現代社会を生き抜くための、不可欠な「心の盾」を育むことに他なりません。

健康に関する注意事項

  • 本稿で紹介する映画鑑賞は、メディア視聴に関する日本小児科学会の提言(例:2歳以下の長時間の視聴を避ける、視聴時間を制限するなど)を遵守していることを前提としています1
  • お子様が強い恐怖や不安を示した場合は、直ちに鑑賞を中止し、お子様の気持ちに寄り添い、安心させてあげてください。恐怖の感情を無理に克服させようとしないでください。
  • 映画鑑賞後にお子様の不安が続く、悪夢を見るなどの状態が改善されない場合は、かかりつけの小児科医や児童心理の専門家にご相談ください。この記事は専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。

よくある質問

子供にホラー映画を見せ始めるのは何歳からが適切ですか?
一概に「何歳から」という明確な答えはありません。重要なのは年齢そのものよりも、お子様一人ひとりの発達段階や気質です。本稿で推奨しているのは、日本小児科学会の提言を基に、メディアとの健全な関係が築けている年長児以上を対象としています1。まずは『トイ・ストーリー・オブ・テラー!』のような短編や、『となりのトトロ』のように不安を優しく描く作品から始め、お子様の反応を注意深く観察することが賢明です。お子様が現実とフィクションの区別をある程度つけられるか、恐怖を感じた時に自分の言葉で伝えられるかどうかが一つの目安になります。
映画を見た後に子供が悪夢を見たり、怖がったりしたらどうすればいいですか?
まず、お子様の恐怖の感情を「そんなの嘘だよ」「怖くないよ」と否定しないことが最も重要です36。感情を受け止め、「怖かったね」と共感を示し、安心できるまで寄り添ってあげてください。明るい昼間の時間に、怖かったキャラクターの絵を一緒に描いてみたり、物語の結末がハッピーエンドだったことを思い出させたりするのも効果的です。恐怖を「乗り越える」ことよりも、恐怖を感じても「大丈夫」だと思える安心感を育むことを優先してください。
G指定のホラー映画なら、どんな子供に見せても安全ですか?
安全ではありません。本稿で「G指定のパラドックス」として解説した通り、G指定は「年齢制限なく入場できる」という意味であり、「心理的に怖くない」ことを保証するものではありません14458。『コララインとボタンの魔女』のように、G指定でも非常に不気味で心理的な恐怖を喚起する作品は存在します15。レイティングはあくまで一つの目安とし、必ず保護者様が事前に内容を確認し、お子様の性格や感受性を考慮して最終的な判断を下す必要があります。
ホラー映画を通じて、子供に何を教えることができますか?
良質なホラー映画は、多くのことを教える「対話の道具」になります。『パラノーマン』では「いじめや偏見」と「共感」について、『モンスター・ハウス』では「見た目の奥にある真実」を理解することの大切さを学べます。また、ほとんどの作品で主人公が困難に立ち向かう姿は、「勇気」や「問題解決能力」、「自己信頼」の重要性を伝えます。鑑賞後の対話を通じて、これらのテーマをお子様が自ら発見できるよう手助けすることが、大きな学びにつながります。
このリスト以外の映画を選ぶ際のポイントはありますか?
本稿で提示した「保護者のためのコンテンツ評価チェックリスト」をご活用ください480。特に重要なのは、「恐怖の源は現実的かファンタジーか」「暴力がどのように描かれているか」「物語の結末は希望に満ちているか」という点です。主人公が無力で救いのない物語や、現実の人間による残虐な暴力が描かれる作品は避けるべきです。コメディ要素があり、恐怖を和らげてくれる作品も良い選択肢です10

結論

本稿では、児童心理学とメディアリテラシーの観点から、子供と楽しむためのホラー映画10選と、その健全な鑑賞方法について詳述してきました。重要なのは、子供を恐怖に晒すこと自体が目的ではない、ということです。厳選された物語は、勇気、共感、友情、そして家族の愛といった普遍的なテーマについて親子で語り合うための、豊かで刺激的な「対話の道具」となり得ます。恐怖という強い感情を共有し、それについて話し合う体験は、他のジャンルの映画では得難い、深く強固な親子の絆を育む可能性があります。子供にとって最高のホラー映画とは、特定の作品名ではなく、愛情深く、注意深い保護者様と一緒に鑑賞し、対話し、消化された一本一本の映画そのものです。最終的に、お子様の「心の盾」を育む最も強力な要素は、安全な家庭という基盤の上で、自分の感情を安心して表現でき、それを受け止めてくれる保護者様の存在です。本稿が、映画という素晴らしい文化を通じて、ご家族の絆がより一層深まるための一助となれば、これに勝る喜びはありません。

免責事項
この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。

参考文献

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