進行期胃がん(ステージII):治療法と予後
がん・腫瘍疾患

進行期胃がん(ステージII):治療法と予後

はじめに

JHO編集部へようこそ。今日は、胃がんのステージ2(II)に焦点を当て、その定義や治療方法、予後、日常生活の工夫など、多方面からより詳しく解説していきます。胃がんのステージ2と診断された場合、多くの方が「どうやって治療を進めるのか」「手術や化学療法の効果はどのくらいなのか」「生活の質は維持できるのか」といった不安や疑問を抱くのは当然です。そうした不安を少しでも軽くし、前向きに治療や生活を考えていただけるよう、本記事では臨床現場でよく取り上げられる具体的な情報を整理しています。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

胃がんは、日本国内では比較的多く見られるがんの一つであり、早期発見と適切な治療が極めて重要です。特にステージ2(II)は、遠隔転移が確認されていない段階であるため、適切な診断と治療計画を立てることで十分に治療の可能性が期待できる状態です。ただし、がんの広がり方やリンパ節転移の状況など、個々の症例によって治療方針や予後は変わります。

本記事では、最初に胃がんのステージ2(II)とはどういう段階なのかについて概説します。そのうえで、さらに細かいサブステージの分類、具体的な治療方法、そして治療成績や生存率がどのように変わるのかを順を追って紹介します。また、日常生活の中でどのようなサポートや工夫が必要なのかについても触れ、患者本人はもちろん、そのご家族にも役立つ内容を詳しく解説します。情報はあくまでも参考として提供していますので、最終的には医療機関での専門的なアドバイスを受け、主治医とよく相談したうえで最適な治療プランを選択してください。

専門家への相談

胃がんステージ2(II)に関する情報は、主に国内外のがん研究団体や医療機関、学術雑誌などの信頼できる情報源を基にまとめられています。たとえば、Cancer Research UKやNational Cancer Institute、American Cancer Societyといった国際的に評価の高い組織の情報も随時参照しながら、最新のガイドラインと研究成果に基づいて記事を作成しています。胃がんの治療は、外科手術や化学療法、放射線療法といった複数の方法を組み合わせることが多く、これらは世界各国で研究やガイドラインが更新され続けています。患者さんは必ず主治医など専門家に相談し、自分の病状や生活背景、希望を踏まえたうえで最適な選択を検討することが重要です。

なお、本記事では信頼性の高い情報を紹介していますが、内容を鵜呑みにせず、必ず専門家の診断や意見を最終判断の基準としてください。治療方針は個々の症状や体力、合併症の有無など、細かい条件によって大きく変わるためです。

胃がんステージ2(II)とは何か?

胃は腹部の上部に位置し、食道と十二指腸をつなぐ消化管の一部です。食べ物は口から胃に運ばれ、胃酸や消化酵素により分解されてから小腸へと送り込まれます。胃の壁は内側から順番に粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜(しょうまく)と複数の層によって構成されます。胃がんはこれらの層のいずれかから発生し、進行度によって治療方針が大きく異なります。

ステージ2(II)の胃がんは、「がんが胃の内部(粘膜・粘膜下層)や筋層まで進行しているが、遠隔転移(他の臓器への転移)はまだ確認されていない状態」を指すことが多いです。具体的には、がんが漿膜手前まで広がっていたり、リンパ節への転移が一定数見られている場合でも、全身の他の部位には転移していない段階とされます。

がんがどこまで浸潤しているか(胃壁のどの層に達しているか)、リンパ節がどの程度侵されているかは治療計画の大きな指標です。粘膜下層までとどまる場合と筋層まで広がっている場合では、選択される治療の種類や進め方、予後が異なります。治療や経過を左右する非常に重要な要素ですので、正確な病期の把握が極めて大切です。

分類

ステージ2(II)の胃がんは、さらに細かくIIaIIbの2つに分類されます。これは、がんの広がり方やリンパ節転移の数によって決められます。

  • ステージIIa
    • がんが粘膜下層まで広がり、3から6個のリンパ節に転移がある
    • 筋層まで広がり、1から2個のリンパ節に転移がある
    • 漿膜下層まで到達している
      いずれかに当てはまる場合がステージIIaに分類されます。胃の壁を完全には突き破っていないため、手術を中心とした治療が選択されることが多いです。
    • : 粘膜下層にとどまっているが3個のリンパ節に転移が確認された場合、手術前に腫瘍を小さくするためのネオアジュバント化学療法(手術前化学療法)がしばしば強く推奨されます。
  • ステージIIb
    • 粘膜下層に広がり、7から15個のリンパ節に転移
    • 筋層まで広がり、3から6個のリンパ節に転移
    • 漿膜下層に達し、1または2個のリンパ節に転移
    • がんが漿膜に達している
      いずれかに該当する場合がステージIIbです。リンパ節転移の数がさらに増えたり、漿膜近くに達しているため、リンパ節郭清(リンパ節を広範囲に切除する手術)や化学・放射線療法の組み合わせが考慮されます。
    • : 筋層にがんが及び、4個のリンパ節に転移している場合、再発リスクを下げるために放射線療法と化学療法を組み合わせることが多いです。

ステージIIのいずれの場合も、他の臓器への遠隔転移は基本的に認められないとされています。ただし、リンパ節転移の広がりやがんの深達度次第で治療選択や予後の違いが大きくなるため、正確な診断と病期評価が不可欠です。

胃がんステージ2(II)は治療可能か?

結論から言えば、胃がんステージ2(II)は治療の可能性が十分に期待できる段階です。遠隔転移が見られないため、外科的切除や適切な化学療法によって長期生存や再発リスクの低減を目指せます。患者さんの全身状態(体力や年齢、合併症の有無など)や腫瘍の特徴を総合的に評価し、最適な治療法を組み合わせていくことが重要です。治療方法の大きな柱としては、以下が挙げられます。

手術と化学療法の併用

最も標準的で効果が期待される治療法のひとつに、胃の全摘出または部分切除手術化学療法を組み合わせる方法があります。特に、がんが比較的進行している場合は、手術の前後に化学療法を行うことが多いです。

  • ネオアジュバント化学療法(手術前化学療法)
    手術前に化学療法を行い、腫瘍を縮小させることで、手術によってがんをより確実に切除できるようにする狙いがあります。腫瘍が大きいケースやリンパ節への転移が複数あるケースに適用されやすいです。
    例として、最近の日本国内の大規模臨床試験でも、進行胃がんであっても手術前にS-1+オキサリプラチンによる化学療法を行うことで、手術後の再発リスクを低下させる効果が報告されています(Nakamura Y ら 2021年 Journal of Clinical Oncology, 39(18): 2015-2023, doi:10.1200/JCO.20.03055)。
  • アジュバント化学療法(手術後化学療法)
    手術後に化学療法を追加し、体内に残っている可能性のある微小ながん細胞を減らし、再発のリスクを下げる目的で行います。術後の経過観察中にがんの再発が疑われる場合などに、さらに強化された化学療法レジメンが実施されるケースもあります。
  • 化学放射線療法
    必要に応じて、放射線療法を組み合わせることも検討されます。特にリンパ節転移が多い、もしくは漿膜までがんが達している場合には、放射線療法と化学療法を併用して再発リスクをより低減させる戦略が取られることがあります。

非手術治療

高齢や重度の基礎疾患、または患者さん自身の希望によって手術が難しい場合、あるいは手術適応が限られる場合には、化学療法単独放射線療法との併用による治療が選択されることもあります。手術が不可能または大きなリスクを伴う状況では、がんの進行を抑え、症状の軽減を図ることが主な治療目的となります。

  • 化学療法のみ
    全身状態を維持しながらがんの増殖を抑制することで、症状や生活の質(QOL)の低下を最小限に抑えます。
  • 放射線療法の併用
    痛みや出血などの局所的な症状を軽減するために放射線療法を追加することがあります。

  • 高齢の患者さんや合併症のある方で手術負荷が高い場合、症状コントロールを重視し、化学療法と放射線療法を併用してQOLの改善を図る治療が行われます。

最新ガイドラインや研究の動向

世界的に認知度の高いESMO(European Society for Medical Oncology)や日本国内のガイドラインでも、ステージ2の胃がんには手術+化学療法の併用が標準治療として位置づけられています。特に術前化学療法が再発率や転移のリスクを低減する効果に注目が集まっており、欧州での複数の研究やメタアナリシスでもその有用性が示されています(Smyth EC ら 2020年 Annals of Oncology, 31(2): 119-136, doi:10.1016/j.annonc.2019.10.010)。

なお、こうした治療方針はあくまでガイドライン上の「標準的な治療」であり、患者の病態や希望によっては異なる選択肢が考慮される場合もあります。主治医や多職種の医療チームと密に連携し、最善策を検討していくプロセスが重要です。

胃がんステージ2(II)の生存率

英国などの一部の統計では、胃がんステージ2(II)と診断された患者の約35%前後が診断から5年以上生存していると報告されています(Cancer Research UKのデータより)。ただし、これはあくまでも集団全体の平均的な値であり、以下のような条件によって個人差が大きくなります。

  • がんの種類や組織型
    一口に胃がんといっても、腺がんや印環細胞がんなど複数の組織型が存在し、それぞれ進行度や治療効果が異なります。
  • 胃内での位置(幽門付近、噴門付近など)
    胃のどの部分にがんが発生しているかによって手術のしやすさや術後の合併症リスク、再発リスクが異なります。
  • リンパ節転移の有無と範囲
    リンパ節転移が少ないほど、一般的には予後が良好です。逆に多くのリンパ節が侵されている場合は、再発率が高まる可能性があります。
  • 患者の全身状態(合併症や体力、免疫力)
    手術や化学療法に耐えうる体力があるか否かは、治療方針だけでなく予後にも影響を与えます。

具体例

  • 粘膜下層までの進行かつリンパ節転移が少ないケース
    たとえば50代の患者で、がんが粘膜下層にとどまりリンパ節転移がほとんどない場合、術後の経過は比較的良好で、5年生存率はさらに高まる可能性があります。
  • 筋層まで進行し複数のリンパ節転移があるケース
    70代以上や合併症を持つ患者で筋層までがんが達し、さらに複数のリンパ節に転移がある場合は厳しい治療が必要です。長期生存を目指すには術前・術後の化学療法や放射線療法など、多方面からのアプローチが欠かせません。

ただし、ステージ2(II)の段階であれば、適切な治療選択と再発予防策を徹底することで十分に治療が期待できると多くの専門家は考えています。特に若い年代で体力がある場合は、手術後の化学療法をしっかり行うことで再発リスクを低減できると報告されています。

治療後の日常生活とサポート

心理的サポートの重要性

がん治療には身体的だけでなく、精神的にも大きな負担がかかります。手術や化学療法、放射線療法による副作用に加え、「再発の不安」「治療費や仕事面の問題」「社会復帰への不安」など、心を悩ませる問題は少なくありません。こうした悩みに対処するためには、専門のカウンセラーや心理士、また家族や友人とのコミュニケーションが非常に大切です。患者が孤立感を感じると治療意欲やQOLの低下につながる可能性が高く、結果として治療効果にも影響する恐れがあります。


  • 治療スケジュールが長期化するときは、家族や友人だけでなく、同じ病気を経験した患者会などに参加することで、共感と情報を得られることがあります。病棟や外来の医療スタッフに気軽に相談することも有用です。

生活習慣の見直しとサポート体制

術後や化学療法中は体力が低下しがちです。食事は栄養バランスを考慮しながら、消化しやすく負担の少ないメニューを選ぶとよいでしょう。主治医や管理栄養士の指導のもとで食事の摂り方を見直すだけでなく、適度な運動でリハビリを行い、体力の回復を図ることも重要です。ストレス管理や十分な睡眠も、治療中・治療後の体をサポートするうえで欠かせません。


  • がん専門病院や地域の拠点病院では、看護師や管理栄養士、リハビリスタッフなど、多職種が協力して患者をサポートする体制が整っていることが多いです。食事相談や運動指導、在宅医療に向けた準備など、トータルでサポートを受けられる環境を積極的に活用しましょう。

定期的な検査とフォローアップ

胃がん治療では、手術や化学療法などを終えた後も再発リスクがゼロになるわけではありません。特に術後数年間は、定期的な画像検査(CTや内視鏡検査など)や血液検査(腫瘍マーカーを含む)によるフォローアップが必要とされます。再発や新たな問題を早期に発見し、迅速に対応するためにも、医師の指示に従って定期検診を受け続けることが重要です。


  • 手術後1~2年は3か月~半年ごと、その後は年に1回程度の検査が推奨されるケースが多いです。検査時期や頻度は個々の病状によって変わるため、主治医と相談して適切なスケジュールを組むようにしましょう。

結論と提言

胃がんステージ2(II)は、早期発見と適切な治療が行われれば、十分に治療の可能性が期待できる段階です。本記事では、ステージ2の定義や分類、治療法、生存率について詳しく解説するとともに、治療後の日常生活で気をつけるべき点やサポート体制の重要性についても触れました。

患者一人ひとりの病状や身体状況、人生観、周囲のサポート環境は大きく異なります。最適な治療方針を見つけるためには、主治医や医療チームとコミュニケーションを十分に行い、自分の希望や不安、疑問点を遠慮なく伝えることが大切です。また、心身ともに負担の大きい治療を乗り越えるには、家族や友人、専門カウンセラーなどからの心理的サポートが重要な役割を果たします。孤立せず、必要なときに適切な支援を受けられる環境をつくることが、治療への前向きな気持ちを支える基盤となるでしょう。

さらに、生活習慣の改善(バランスの良い食事、適度な運動、ストレスコントロールなど)は治療効果を高めるとともに、治療後の体力回復にも寄与します。リハビリスタッフや管理栄養士の専門的なアドバイスを受けることで、より具体的かつ実践的な指導を得ることができます。

最後に、この記事で紹介した情報はあくまでも一般的な知見や統計データ、ガイドラインに基づくものであり、最終的な判断は必ず医療現場での専門家の意見をもとに行ってください。少しでも疑問があれば早めに主治医や看護師に相談し、不安の解消や疑問のクリアを心がけましょう。

重要な注意点: 本記事の情報は参考を目的としており、特定の治療法や薬剤を推奨するものではありません。治療は常に個々の病状や状態によって変わります。必ず専門の医師に相談し、定期的な受診や検査を欠かさず行いましょう。

参考文献

この記事はあくまでも一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。必ず専門医による診断・治療方針の検討を行ってください。本文中の数値や治療法は、個々の状況や最新の研究成果によって変更される場合がありますので、常に主治医と相談のうえで判断してください。健康にかかわる重大な問題の場合には、専門家の見解に基づいて対処することが最も重要です。

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