避妊用具を使っていても妊娠する理由とは?| 妊娠を防ぐはずの避妊器具の限界
妊娠準備

避妊用具を使っていても妊娠する理由とは?| 妊娠を防ぐはずの避妊器具の限界

はじめに

避妊法の一つとして広く利用されているのが、子宮内に装着する器具、いわゆる子宮内避妊具(いわゆる「避妊リング」や「IUD」)です。一般的には装着が比較的簡便であり、長期にわたって高い避妊効果を発揮するとされ、平均して3~10年程度の使用が見込まれます。しかし、しばしば「子宮内避妊具を入れているのに妊娠する可能性はあるのか?」「なぜリングを装着した状態でも妊娠してしまうのか?」といった疑問を耳にします。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、子宮内避妊具を用いた際の妊娠リスク、実際に妊娠してしまった場合の症状・対応方法、リスクや注意点などについて、できるだけ詳しく解説します。あわせて、装着後に気を付けるべき点や、近年発表された研究結果についても言及することで、より幅広く理解を深めていただければ幸いです。

専門家への相談

本記事の内容は、医療機関での診断や治療を代替するものではありません。特に、子宮内避妊具を装着中に体調不良や出血、痛み、不安などがあれば、早めに産婦人科医の診察を受けることをおすすめします。記事中で言及している知見は、医療現場や海外でのガイドライン・信頼できる機関の資料をもとにまとめられたものです。また、本記事には執筆時点で確認できる新しい研究や、医学的根拠にもとづいた追加情報も織り交ぜていますが、個人差や健康状態、使用する子宮内避妊具の種類・特性によって状況は異なります。必ず専門家の判断をあおいでください。なお、本記事で引用する医師名としては、原文に登場した「医師(内科・総合診療科)Nguyễn Thường Hanh」氏の助言が言及されています。


子宮内避妊具を装着していても妊娠する可能性はある?

子宮内避妊具の避妊効果は約98%

子宮内避妊具(以下、便宜上「IUD」と呼びます)は、正しく装着されている場合、避妊効果が約98%といわれています。これは非常に高い数字ではあるものの、あくまで「約98%」であって、100%ではありません。残りの数%には妊娠リスクが存在するということです。実際、アメリカの家族計画に関する医療機関の資料や、日本国内の産婦人科医療機関の臨床データを見ても、子宮内避妊具を利用しているのに妊娠したケースは少ないながらも報告されています。

なぜ「完全な避妊」にならないかという点については、装着したIUDが何らかの要因で位置からずれる、子宮頸管近くまで落ち込む、あるいは子宮内膜の奥深くまで食い込む形で陥没(逸脱)してしまうなどにより、避妊効果が十分に働かなくなる可能性があるからです。また、きちんと装着したつもりでも、まれに子宮内の形状や個々人の体質によっては期待通りの位置に定着せず、妊娠リスクが高まることも指摘されています。

妊娠に気づきやすい症状と兆候

IUDを入れた状態で妊娠した場合、基本的には通常の妊娠初期症状とほぼ同じ兆候が出るといわれています。例えば:

  • 生理の遅れ(いわゆる月経の遅延)
  • つわり(悪心や嘔吐)、めまい
  • 基礎体温の上昇が続く
  • 理由のない疲労感や眠気、倦怠感
  • 下腹部痛
  • 食欲不振または食欲の亢進

ただし、IUDを装着していることで月経パターン自体がやや変化し、月経量が減る、周期がやや乱れる、あるいは稀に月経がほとんど見られなくなるケースもあります。そのため「単にIUDの影響で生理が軽くなっただけかもしれない」と思い込み、妊娠を見逃しやすい恐れもあります。少しでも不安があれば、自宅で市販の妊娠検査薬(早期妊娠検査薬など)を使用し、結果を確認しましょう。さらに疑いが晴れない場合や陽性反応がある場合は、必ず産婦人科を受診して、子宮内にIUDがある状態での妊娠か否かを確認することが大切です。

子宮内避妊具がずれているかどうかを自己チェック

IUDの先端に付いている「ひも」(装着位置確認用)が、子宮頸管付近から触れられるかどうかを自己チェックする方法があります。具体的には、手を清潔にしたうえで膣内奥に指を入れ、子宮頸部(弾力のある柔らかな部分)に触れる際に、短い紐の先端がわかるかどうかを確認する方法です。万一、紐が異常に長かったり、逆にまったく指に触れなかったり、リング本体に触ってしまったりする場合には、ずれや逸脱が起きている可能性があるため、早めに産婦人科へ相談すると安心です。痛みが続く場合や、不正出血が長引いている場合も同様に受診をおすすめします。


IUD装着中に妊娠したらどうする?

もしもIUDを入れている状態で妊娠の可能性があるなら、まずは市販の妊娠検査薬を使って確認してください。陽性が出た場合、あるいは陰性でも体調がおかしいと感じる場合は、早めに産婦人科を受診し、超音波検査などで妊娠の有無と位置を正確に確認する必要があります。これは、とりわけ子宮外妊娠(異所性妊娠)のリスクを見逃さないためにも非常に重要です。

1. 子宮外妊娠のリスク

IUDを装着していて妊娠した場合、通常妊娠よりも子宮外妊娠(とくに卵管内妊娠)が起きるリスクが高いと報告されています。子宮外妊娠は非常に危険な状態であり、緊急処置が必要となるケースも少なくありません。おなかの激痛や出血など、体に異変を感じたら、放置せずに医師に相談しましょう。

2. IUDを取り除く必要性と注意点

妊娠が確定し、子宮外妊娠ではないと判明した場合、多くの医師は可能な限り早期にIUDを取り除くことを推奨しています。理由としては、子宮内に異物が残っていると感染リスクや流産リスク、早産リスクなどが高くなるからです。子宮内避妊具を装着したまま妊娠を継続した場合、流産の確率が40~50%以上に上昇するとする報告も存在します。取り除く際には医療従事者が適切に処置を行うため、自己判断で紐を引っ張ったりしないことが大切です。

取り除くのが危険な場合

非常にまれですが、IUDが子宮壁に深く埋まっていたり、子宮や頸管に強く癒着していたりして、取り除くこと自体が妊娠継続のリスクを上回ると医師が判断する場合があります。その場合は、やむを得ずIUDを装着したまま妊娠を継続する選択が取られることもありますが、その間も定期的な検診や慎重な経過観察が必要になります。


IUD装着中に妊娠した場合のリスク

IUDはそもそも妊娠を防ぐ器具なので、装着時に妊娠してしまった場合は、通常よりもいくつかのリスクが高まるとされています。代表的なものは次のとおりです。

1. 流産・早産

先述のとおり、子宮内にIUDがある状態での妊娠は、流産のリスクが40~50%近くまで高まるとされています。また、早産のリスクも通常より上昇すると報告されています。妊娠継続を希望する場合は、IUDを可能な限り早期に取り除くことで、このリスクをある程度低下させることができるとみられています。

2. 感染症や母体・胎児への影響

IUD装着による子宮内の炎症や感染リスクは、妊娠中も完全になくなるわけではありません。もし感染が生じれば、子宮内環境が悪化して胎児にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、IUDの種類によってはホルモン(レボノルゲストレルなど)を局所的に放出するタイプがあり、理論上はそのホルモンが胎児へ影響する可能性も指摘されていますが、現時点では結論が出ていない部分もあります。ただし、万が一のことを考慮し、できるだけ早くIUDを取り除くほうが望ましいとされています。

3. 胎盤剥離(常位胎盤早期剥離)の可能性

子宮内避妊具が子宮壁との摩擦や、子宮内膜への影響などを及ぼし、まれに胎盤が正常よりも早く剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」を引き起こす可能性があると言われています。これは母体・胎児ともに危険性が高い状態です。剥離が進行すると大出血や胎児機能不全を伴うため、緊急処置が必要になります。

4. ホルモン放出型IUDによる胎児リスク

ホルモンIUDの一部には、黄体ホルモン(プロゲスチン)を子宮内に持続的に放出する機能があります。避妊効果や月経量減少などのメリットがある一方で、もし妊娠が成立した場合、微量ではあってもホルモンが胎児に及ぶ可能性が完全には否定できません。ただし、この点に関するデータや研究はまだ十分ではなく、必ずしも重大なリスクが生じるとは断定されていません。いずれにせよ、早期に医師と相談し、適切な対応を図ることが重要です。


IUD装着中に妊娠しても中絶しなければいけない?

「子宮内避妊具を入れた状態での妊娠は危険だから、中断(人工妊娠中絶)をしないといけないのでは?」と不安を感じる方もいるかもしれません。しかし実際には、IUDの除去が可能であり、感染や合併症がなければ妊娠継続ができる場合もあります。 ただし先述のとおり、流産・早産などのリスクは通常の妊娠よりやや高めになる点は否定できません。

医師がIUD除去を安全に行えるかどうか、子宮内の状態やIUDの埋入具合、そして妊娠週数などを総合的に判断して、最適な治療方針を決定します。事例によってはIUDの紐や本体が子宮壁に埋まってしまい、除去の操作が母体や胎児の生命に危険を及ぼす可能性があると判断されれば、あえて残したまま出産を待つ例も報告されています。その場合でも産科医が細心の注意を払い、胎児の発育に問題がないかを継続的に観察します。


妊娠を防ぐためのポイント:IUD装着後の注意

IUDは正しい使い方をすれば、長期的かつ高い避妊率を維持できる優れた方法です。ただし、その効果を最大限に引き出すためには以下の点に留意しましょう。

  • 定期検診を受ける
    IUD装着後、少なくとも半年~1年に1回、できれば年に2回ほど産婦人科を受診し、子宮内での位置や子宮頸管内の状態を確認してもらいます。IUDのずれや逸脱を早期に発見できれば、装着しなおすことで妊娠リスクを抑えられます。
  • 装着後の安静・行動制限
    一般的には装着直後、約1時間程度は横になり安静を保ち、その後も数日は激しい運動を控えます。入浴の際も長時間の湯船浸かりやプールなどは避けるようにと指導されることが多いです。また、装着後2週間程度は性交渉も控えることが望ましいとされています。
  • 有効期限を守る
    IUDには種類にもよりますが、3~5年、あるいは最長10年などの使用期限があります。効果が持続する期限が切れた状態で放置すると、避妊効果が薄れたり、IUDが子宮組織に埋没したり、感染リスクが高まったりする可能性があるため、必ず期限内に交換や除去を行いましょう。
  • 性感染症(STI)予防のためのコンドーム併用
    IUDは妊娠を防ぐものであり、性感染症を防ぐ機能はありません。クラミジアや淋菌、HIVなどの性行為感染症を防ぎたい場合には、コンドームの併用が必須となります。
  • 異常があったらすぐ受診
    不正出血が続く、下腹部痛が増強する、発熱や尿時痛など感染を疑う症状がある場合は、すみやかに産婦人科へ相談してください。早期の対応が重症化を防ぎます。

最新の研究知見と日本での適用

近年の研究動向

IUDに関する研究は世界中で継続的に行われており、避妊効果だけでなく、経血量や生理痛の変化、子宮内膜症への影響など、多岐にわたる報告がみられます。例えば、レボノルゲストレル(ホルモン放出型)のIUDが従来の銅IUDと比べて経血量を抑えるため貧血改善に有益であるという研究報告も増えています。

とくに2021年にNew England Journal of Medicine(医学界でもトップクラスの権威ある学術誌)で発表された研究(Turok DKら, 2021, doi:10.1056/NEJMoa2032195)では、銅IUDとレボノルゲストレルIUDを緊急避妊目的で使用した際の避妊成功率を比較し、大規模なランダム化比較試験(RCT)の結果として、双方とも高い有効性を示し、しかも副作用の差が大きくないことが報告されました。対象は700名超の女性で、結果的に両群で妊娠率に有意差はなく、いずれのIUDも十分に避妊効果があることが示唆されています。日本では緊急避妊としてのIUD活用はまだ一般的でない部分もありますが、将来的にはより選択肢が広がる可能性があります。

日本国内での実情

日本では、低用量ピルや避妊用注射などに比べて、IUDの普及率は決して高くありません。ただし、不妊手術を行うほどではないが長期にわたる避妊を希望する人や、将来的に妊娠を再開したいがその時期が明確でない人などにとって、IUDは非常に便利です。日本産科婦人科学会や多くの産婦人科医も、適切な指導のもとであれば、IUDが安全で効果的な選択肢になり得ることを認めています。


妊娠が発覚したら:医療機関での対応フロー

  1. 妊娠検査薬・産婦人科受診
    まずはご自身で妊娠検査薬を使用し、反応を確認します。陽性の場合はできるだけ早く産婦人科を受診してください。エコー検査などを通じて、子宮内妊娠か子宮外妊娠かの確認が必須です。
  2. IUDの位置確認・除去の可否判定
    妊娠していることが確定した時点で、医師はIUDの紐の位置やエコー所見から、取り除くことが可能かどうかを判断します。除去が可能ならば、リスクを低減するためにも速やかに除去を行うのが一般的です。
  3. 経過観察と合併症リスクの管理
    IUD除去後も流産や早産など、なんらかのリスクは残ります。定期的な妊婦健診を欠かさず受け、異変や感染症状に早期対応できるようにしましょう。もしIUDが除去できない状態だと診断された場合は、医師の指示に従い、特に早産・感染の有無などを注意深く観察する必要があります。

出産まで続ける場合の注意点

IUDが子宮内に残存したまま出産を目指す例は非常にまれではあるものの、海外では事例報告が存在します。その際、以下のようなリスク管理がさらに重要になります。

  • 母体感染の監視
    IUDが残ったままだと感染症リスクが上がる可能性があります。定期的に母体血液検査や超音波検査を行い、子宮内環境をチェックすることが推奨されます。
  • 赤ちゃんの成長モニタリング
    胎児の発育に問題が起きていないか、エコーによる定期的なチェックを実施します。万一、胎児発育不全や羊水量の異常などが見られた場合、早急に対応をとる必要があります。
  • 経膣分娩か帝王切開か
    分娩方法の選択は、子宮口付近にIUDがあるかどうか、粘膜組織との癒着具合などによって異なります。事前に医師とよく相談したうえで安全な方法を検討します。

妊娠を望む場合のIUD取り外し

「将来的に子どもを望みたい」という場合、使用期限内であってもIUDを医療機関で外してもらうことで、通常の妊孕力(妊娠可能性)に戻るとされています。早ければIUD除去後、すぐに排卵が回復して妊娠準備をスタートできるとも言われています。ただし、除去の際に子宮や頸管がやや敏感になることがあるため、医師の指示で抗生物質や消炎薬を処方してもらうことがあります。これは感染リスクを抑えるための措置です。


よくある質問と注意点

IUD装着直後の出血や腹痛は正常?

装着後数日は、軽い下腹部痛や少量の出血が起きることがあります。これは子宮内に異物を挿入したことによる反応で、一般的には1週間ほどで治まることが多いです。ただし、痛みや出血が長引く、あるいは痛みが強まるなど異常を感じたら、放置せずに産婦人科を受診してください。

どうしても妊娠不安が消えない場合は?

IUDの避妊効果は高いものの、100%ではありません。妊娠不安が大きい場合は、コンドームとの併用を検討する方が安心です。また、服薬管理が可能であれば低用量ピルなど他のホルモン避妊法との併用を検討するケースもありますが、医師と十分相談のうえでリスクとベネフィットを比較する必要があります。

緊急避妊としてのIUDの利用は可能か?

海外では、性交渉後5日以内に銅IUDを装着することで高い緊急避妊効果が期待できるという研究報告があります。ただし、日本では緊急避妊ピルが主流であり、IUDを緊急避妊の選択肢にするケースはそれほど多くありません。今後のガイドラインや医療現場の体制によっては、さらに選択肢が広がる可能性もあると考えられています。


結論と提言

子宮内避妊具(IUD)は、正しく使用されている場合には非常に高い避妊効果(約98%)を発揮する優れた方法です。とはいえ、妊娠リスクがゼロではないこと、装着位置のずれや逸脱などで妊娠が成立してしまう可能性があることは知っておく必要があります。もし装着中に妊娠が確認された場合は、すぐに医療機関へ行き、子宮外妊娠の有無やIUD除去の可否を含めた専門家の判断を受けましょう。

また、IUDを継続したまま妊娠を続けるとなると流産や早産、感染症のリスクが高まるため、多くの場合はできるだけ早期に除去を試みるのが一般的です。とはいえ、除去すること自体が子宮や胎児へのリスクとなり得るケースもあり、最終的な判断は医師の指示に従うことが欠かせません。

今後、研究の進歩により、ホルモン放出型IUDなどのさまざまなメリット・デメリットがさらに明らかになり、より個々人に適した避妊法の選択が可能になると期待されます。日本国内でも、より多様な避妊ニーズを満たすために、IUDの認知や活用が広がる可能性があるでしょう。

医師への相談と参考情報

  • IUD装着中の異常症状や妊娠の疑いがある場合、必ず産婦人科を受診する
  • 妊娠検査薬で陽性が出た際には、子宮外妊娠や感染症のリスクを確認するため超音波検査が必要
  • 装着後の不調があるならば、様子見をせず早めに診察を
  • 装着位置や使用期限を守り、定期検診を欠かさない
  • 避妊だけでなく、性感染症予防のため必要に応じてコンドームの併用も検討する

重要なお知らせ
この記事は、一般的な情報提供を目的としており、医療行為の指示を行うものではありません。体調に異変を感じたり、避妊トラブルや妊娠の可能性が疑われる場合は、必ず専門の医師に直接ご相談ください。


参考文献


追加の留意事項
本記事は、医療資格を持たない執筆者の調査・文献レビューを元に作成しています。医学的判断や治療方針の最終決定には、必ず産婦人科など専門家の診察が必要です。自身の健康状態にあわせて、疑問点や不安なことがあれば専門家へご相談ください。

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