はじめに
顔に生じる脂漏性皮膚炎(いわゆる「脂漏性湿疹」)は、皮脂腺の過剰な活動によって皮膚が炎症を起こし、赤みやかゆみ、フケのようなはがれなどが生じる慢性的な皮膚トラブルです。皮脂の多い部位でとくに起こりやすく、頭皮や鼻まわり、眉、耳まわりなどで繰り返し症状が出るのが特徴とされます。見た目に影響するため、多くの方が生活の質を下げたり、自信を失ったりしがちです。しかし、脂漏性皮膚炎そのものは決して命にかかわる病気ではなく、正しく対処することで症状をコントロールしやすくなるといわれています。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、顔に発症する脂漏性皮膚炎の代表的な症状、原因、治療法やケアのポイントについて詳しく解説します。さらに、脂漏性皮膚炎は「自然に治るものなのか」「どのように再発を予防するのか」といった疑問にもお応えします。日常生活のストレス管理やスキンケアの工夫、必要に応じた専門家の受診など、実践的な視点で多角的にご説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
専門家への相談
今回取り上げる脂漏性皮膚炎の管理や治療に関しては、Thạc sĩ – Bác sĩ Lê Thị Cẩm Trinh(日本語表記での学位・資格呼称は省略)という皮膚科領域の専門家の見解やアドバイスをもとに情報を整理しています。学術的な知見に加え、実際に外来診療や患者指導の現場での経験を踏まえながら、医療従事者の立場から参考になる情報を精選しているのが特徴です。記事内では一般的なケア法や治療の選択肢も示しますが、皮膚症状には個人差があり、まれに症状が急激に悪化することもあります。自己判断ではなく、症状の変化や疑問が生じた際には、迷わず皮膚科専門医にご相談ください。
以下、顔における脂漏性皮膚炎に関する詳しい情報を順を追ってご説明します。
顔の脂漏性皮膚炎とは?
脂漏性皮膚炎は、皮脂腺が密集している部位(頭皮・顔・耳まわり・体幹の一部など)で、皮膚の炎症や落屑(フケ状のはがれ)が生じる疾患です。とくに顔の皮膚には皮脂を分泌する皮脂腺が集中しているため、脂漏性皮膚炎が起こりやすいとされています。慢性的に症状がぶり返す一方で、急におさまったように見えたり、再び強く現れたりするのが特徴です。
脂漏性皮膚炎自体は人にうつる病気ではありません。季節やホルモンバランス、ストレスなどの要因によって悪化・軽快をくり返すため、「いつのまにか良くなったのに、また再発した」というケースも多くみられます。とくに日本では気候の変化が激しく、冬の乾燥や季節の変わり目に症状が目立つ方が多いようです。
顔における脂漏性皮膚炎の主な症状
脂漏性皮膚炎は、個人の体質や生活習慣によって症状の強さや出方が異なりますが、以下のような兆候がよくみられます。これらの症状を複数同時に感じる場合は、早めに医師の診察を受けることが望ましいです。
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過剰な皮脂分泌
頬や鼻まわり、眉間、額などがテカテカと光るように脂っぽくなります。皮脂が過剰に出ることで毛穴が詰まりやすくなり、ニキビ(面皰)を併発しやすくなることもあります。 -
皮膚の赤みやうろこ状の落屑
炎症が起こった部位に赤みが生じ、皮膚が薄くめくれるようにフケ状のかさぶたや白い粉が落ちる状態になります。とくに眉毛の生え際や小鼻まわりなどで目立つケースが多いとされています。 -
かゆみ
かゆみの程度は人によって差がありますが、皮脂やフケが増えるほどかゆみが強くなる傾向があります。無理にかきむしると皮膚がさらに傷つき、細菌による二次感染や色素沈着のリスクが高まります。 -
湿った状態やジュクジュクした感じ
炎症が強いと、皮膚がただれたように湿り気を帯びたり、液体がにじむようにジュクジュクしたりすることがあります。放置すると傷口から菌が侵入しやすくなるため、注意が必要です。 -
軽い痛みやヒリヒリ感
強い炎症が長期化すると、触れるだけでヒリヒリしたり、軽度の痛みを伴う場合があります。
脂漏性皮膚炎は自然に治るのか?
顔の脂漏性皮膚炎は残念ながら完全に自然治癒することはほぼありません。一時的に症状が落ち着くことはあるものの、季節的要因やホルモンバランス、ストレスなどで再燃・寛解を繰り返しやすいのが特徴です。「何もしなくてもいずれ治る」と放置してしまうと、かゆみや赤み、落屑が慢性化し、皮膚バリアが傷ついてほかの皮膚トラブルを併発するおそれもあります。
とくに顔は外見上の問題が大きいので、「ただの脂漏性皮膚炎だろう」と軽視するのではなく、皮膚科などを受診して早めに適切なケアと治療を始めることが大切です。薬剤の使用やスキンケアの工夫を行うことで、見た目の改善だけでなく、将来的な再発リスクの軽減も期待できます。
脂漏性皮膚炎が悪化・再発しやすい要因
顔の脂漏性皮膚炎を引き起こす背景として、遺伝的素因に加え、下記のような環境や生活習慣の要因が関与していると考えられています。これらの要因が積み重なると、一度治まった症状が再び悪化したり、慢性的に皮膚炎を起こしたりしやすいです。
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真菌(マラセチア属)の増殖
マラセチアは人の皮膚表面に常在するカビ(真菌)の一種ですが、皮脂が過剰に分泌されるとこの真菌が増殖しやすくなります。免疫系が過剰反応し、炎症や落屑を起こす場合があると報告されています。 -
ストレスや睡眠不足
心身のストレスや慢性的な睡眠不足はホルモンバランスを乱し、皮脂の分泌量に影響を与えます。またストレスが強いと免疫力が低下し、皮膚のバリア機能も衰えやすいことがわかっています。 -
寒冷・乾燥した気候
冬場は湿度が低下して肌が乾燥しやすい反面、ヒーターの効いた室内では皮脂の分泌がかえって増える場合もあり、皮膚のバランスが崩れがちです。 -
ホルモンの変化
思春期や妊娠・産後、更年期などでホルモンが大きく変動すると、皮脂の分泌量にも変化が生じて脂漏性皮膚炎が悪化しやすくなるといわれます。 -
アルコールや刺激の強い食品・化学物質
アルコール過剰摂取、刺激の強いスパイスを多用した食生活、強い洗剤や溶剤などへの接触は皮膚を刺激し、炎症のリスクを高めます。 -
基礎疾患の存在
アトピー素因のほか、パーキンソン病、HIV感染など、免疫系の機能低下や神経系のトラブルを抱える方は脂漏性皮膚炎が悪化しやすいと報告されています。
脂漏性皮膚炎の好発年齢とリスク
脂漏性皮膚炎は新生児期(乳児脂漏性皮膚炎)と成人期に発症するケースが多いといわれています。新生児期の場合は、母体から受け継いだホルモンの影響で皮脂分泌が盛んなため、一時的に頭や顔に症状が出やすいのが特徴です。この乳児期の脂漏性皮膚炎は、多くの場合は比較的短期間で軽快し、そのまま治っていくことも少なくありません。
一方、成人で発症した脂漏性皮膚炎は、20代以降から50~60代まで幅広く見られますが、特に男性は皮脂分泌が活発なため比較的リスクが高いとされます。いったん脂漏性皮膚炎を経験すると、その後も再発・慢性化しやすい傾向があり、「しばらく治まっていたのに、季節の変わり目にまた悪化した」という声がよく聞かれます。
実際に、日本の皮膚科外来においても、成人以降の脂漏性皮膚炎は珍しくなく、長期間にわたる経過観察や治療が必要となる症例が多いです。
顔の脂漏性皮膚炎は自然に治るのか、再発はあるのか
乳児の脂漏性皮膚炎の多くは、ホルモンバランスの落ち着きとともに自然軽快し、その後再発しないことも多いです。しかし、成人期における顔の脂漏性皮膚炎は自然治癒する可能性はかなり低いとされています。治まったように見えても、季節・体調の変化や食生活、ストレスなどのちょっとしたきっかけで再発を繰り返すことが多いです。
したがって、いつ再発しても症状をコントロールしやすいように、基本的なスキンケア・生活習慣の調整・定期的な専門家の診断が必要と考えられます。「自然に治るだろう」と放置するよりも、再発時に早めの治療を行うことで炎症が長引かず、皮膚へのダメージが蓄積しにくくなることが期待できます。
顔の脂漏性皮膚炎を和らげる主な治療法
脂漏性皮膚炎の治療は、症状の程度や範囲、患者の生活背景などに応じて異なります。基本的には医師の診察に基づいて薬剤を選び、正しいスキンケアや生活習慣のアドバイスを受けることが望ましいです。以下は、よく用いられる治療・ケアの例です。
1. 抗真菌薬の外用
脂漏性皮膚炎の原因のひとつと考えられる皮膚常在真菌「マラセチア」の増殖を抑えるために、抗真菌薬配合の外用薬(クリーム、ローションなど)がしばしば使われます。たとえば、抗真菌成分のケトコナゾールなどを含む製剤が処方されることがありますが、日本国内ではOTC医薬品でも類似成分を含むシャンプーなどが流通しています。
頭皮から顔へと症状が広がっている場合には、ケトコナゾールやシクロピロックス配合のシャンプーで頭皮を洗いつつ、顔には抗真菌クリームを塗布するなど、部位ごとに使い分ける方法が取られます。ただし、肌が乾燥しやすくなるため、保湿ケアを並行して行うとよいでしょう。
2. ステロイド外用薬・免疫調整薬
炎症が強い場合は、ステロイドを含む外用薬が使用されることがあります。短期間だけ用いることで炎症を早急に抑制し、その後は弱めの薬に切り替える方法が一般的です。ステロイドは連用すると副作用のリスクがあるため、医師の指示に従い、必要最小限の期間に留めることが重要です。
また、ステロイドの使用が難しい部位や長期的な対処が必要な場合には、タクロリムスやピメクロリムスといった免疫調整薬(カルシニューリン阻害薬)が処方されることもあります。これらはステロイドよりも副作用が少ないとされますが、刺激感が出ることもあり、医師の判断のもと使用します。
3. 適切なスキンケアと保湿
皮膚のバリア機能を維持するために、洗顔や保湿が非常に重要です。洗顔料は低刺激性で保湿力のあるものを選び、ゴシゴシこすらずやさしく洗いましょう。洗顔後は、皮膚をこすらないように清潔なタオルでそっと水分をふき取り、すぐに保湿を行います。
保湿には、セラミドやヒアルロン酸など保湿成分を含むクリームやローションが有効です。炎症が強い場合は、まず医師から処方された薬剤を塗り、その後で保湿剤を重ねる方法をとることが多く推奨されています。
4. 生活習慣とストレス管理
脂漏性皮膚炎はストレスや睡眠不足で悪化しやすいと考えられているため、日常的なセルフケアが欠かせません。以下のような生活習慣の見直しが、再発予防や症状緩和に有効です。
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十分な睡眠
夜更かしはホルモンバランスを乱し、皮脂分泌量の増加や免疫の低下につながります。毎日できるだけ同じ時間に就寝し、6~8時間の睡眠を確保しましょう。 -
適度な運動
軽い有酸素運動やストレッチ、ヨガなどはストレスを軽減し、血行を促進するため、皮膚の状態を整えやすくなります。 -
バランスの良い食事
高脂質・高糖質の食事ばかり摂取していると皮脂分泌の増加に影響する可能性があります。野菜や果物、良質なたんぱく質をバランスよく取り入れ、油分の多い食事や甘いものの過剰摂取は控えめにするとよいでしょう。 -
アルコールや刺激物の摂取を抑える
アルコールの過剰摂取や香辛料の取りすぎは皮膚への刺激を増幅させることがあります。飲酒量を見直し、過度な刺激物を避けましょう。 -
リラックス法の取り入れ
音楽鑑賞やアロマテラピー、軽い散歩など、自分がリラックスできる時間を意識的に作ることで、自律神経を整えやすくなり、結果的に皮膚の炎症コントロールに寄与します。
5. 二次感染や重症化が疑われる場合は早期受診
脂漏性皮膚炎の部分をひっかいたり刺激を繰り返したりすると、細菌感染や真菌感染が悪化し、腫れや痛み、膿が出るなど重症化する恐れがあります。そのような状態になった場合には、自己判断で市販薬に頼らず、早めに皮膚科専門医を受診して的確な治療を受けることが大切です。
脂漏性皮膚炎と関連する最新の研究知見(世界的にも確認されているもの)
脂漏性皮膚炎においては、真菌(マラセチア)の関与が最大の要因の一つとされてきましたが、近年は免疫学的な観点やストレスホルモンとの関連性についても数多く研究されています。たとえば、2021年以降に発表されたアメリカ皮膚科学会誌や臨床皮膚科学雑誌などの文献では、以下のポイントが着目されています(※これらの研究は欧米やアジアを含む国際的な共同研究で確認されています)。
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ストレスとコルチゾールレベル
ストレス下で分泌されるコルチゾールが皮膚バリア機能を低下させ、真菌の増殖を容易にするとみられる。日本国内でも、大学病院の皮膚科外来において、ストレス軽減プログラムと皮膚炎の改善度を比較した試験で、有意な症状改善が認められたという報告がある。 -
プロバイオティクスの可能性
腸内環境の改善が皮膚炎全般に有効ではないかという提案もあるが、脂漏性皮膚炎におけるエビデンスはまだ限定的である。一部の介入研究では、乳酸菌摂取群で皮膚の炎症指標が若干緩和したとの結果が出ており、今後さらに大規模な試験が行われる見通し。
上記のように、まだ研究段階ではあるものの、生活習慣(ストレスや食事)を改善することで病態が軽減される可能性が示唆されています。とくに日本では食文化や気候が独特なため、自分の体調を観察しながら医師と相談し、ストレス管理や食事療法を並行して試みる方も増えています。
日常生活でのケアポイント
脂漏性皮膚炎の治療は、医療機関での診断・処方薬を軸にしつつ、日常ケアの工夫が非常に重要です。以下のポイントを押さえると、症状コントロールや再発予防がぐっと行いやすくなります。
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肌への摩擦を避ける
洗顔時やタオルドライ時に強くこすらないことが鉄則。必要以上にスクラブ洗顔などを行うとバリア機能が低下し、かえって脂漏性皮膚炎が悪化するおそれがあります。 -
洗顔料・シャンプーの見直し
刺激の少ない、弱酸性かアミノ酸系の洗浄剤を選ぶと良いでしょう。皮脂を強力に取りすぎるアルカリ性の洗浄剤は、洗った直後はさっぱりするものの、肌を乾燥させ皮脂を過剰分泌させる悪循環を招く可能性があります。 -
保湿は十分に
乾燥する季節やエアコンの効いた室内では、こまめな保湿が欠かせません。肌の状態に合わせて、クリーム・ローション・乳液などを使い分けましょう。 -
紫外線対策
適度な日光は体内のビタミンD合成に役立ちますが、紫外線の浴びすぎは皮膚を損傷し、炎症を助長する可能性があります。外出時には日焼け止めや帽子などで予防を心がけてください。 -
食生活のバランス
油分や糖分の摂りすぎを見直し、野菜・果物・たんぱく質・炭水化物をバランスよく摂取しましょう。特にビタミンB群は皮膚の代謝をサポートするといわれるため、豚肉や大豆製品、卵、レバーなども適量に取り入れると良いかもしれません。 -
ストレスマネジメント
繰り返しになりますが、ストレスは皮膚症状を増悪させる大きな要因です。自分なりのリラックス方法を確立し、趣味や気晴らしの時間を意識的に取り入れることで、炎症のぶり返しを抑制しやすくなります。
脂漏性皮膚炎と合併症への注意
脂漏性皮膚炎は単独でも十分不快な症状を引き起こしますが、二次感染やほかの皮膚疾患との合併に注意が必要なケースもあります。たとえば、炎症部位を引っかいたり爪で傷つけてしまったりすると、細菌感染や真菌感染がさらに広がる恐れがあります。赤みや腫れが急速に拡大したり、黄汁が出るようになったりした場合は、放置せず早めに医師の診察を受けてください。
また、脂漏性皮膚炎とニキビ(尋常性ざ瘡)が同時に発症することもめずらしくありません。どちらも皮脂の過剰分泌や毛穴の詰まりが背景にあるため、ケアの仕方や使用する薬剤によっては一方の症状が悪化する場合があります。自己流でニキビ用のピーリング化粧品を多用しすぎると、脂漏性皮膚炎の炎症を悪化させるリスクもあるため、慎重に選択するようにしましょう。
医療の最新動向と日本国内での適応
脂漏性皮膚炎に対する新しい外用薬や内服薬の研究は、国内外で絶えず行われています。近年、海外を中心に生物学的製剤(免疫学的な作用を標的とする新しいタイプの薬剤)についての研究も進展しているものの、現状ではアトピー性皮膚炎や乾癬向けの治療が主であり、脂漏性皮膚炎への適応例は限定的です。
日本国内で一般的に保険診療として使われるのは、従来からあるステロイド外用薬や抗真菌薬、カルシニューリン阻害薬などが中心です。症状の重症度や部位によって処方が変わるため、医師の指示を仰いでください。新薬や海外発の製剤を個人輸入などで独自に使用するのは、予期せぬ副作用や安全性の問題が大きいため推奨されません。
再発予防のポイント
脂漏性皮膚炎は再発しやすい疾患ですが、以下のような点を意識することで、再発を最小限に抑えることが期待できます。
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日々の洗顔・保湿を継続する
症状がいったん良くなっても、スキンケアを中断せず続けていくことで、皮膚バリアが安定しやすくなります。 -
定期的な頭皮ケア
頭皮に脂漏性皮膚炎が残っていると、顔へと炎症が広がることが多々あります。専用のシャンプーや薬用ローションを使い、頭皮環境を整えておきましょう。 -
環境調整
冬場や乾燥時期は加湿器を使うなどして、適切な湿度を保つとともに、急激に肌を乾燥させないように留意するとよいです。 -
早めの治療
「ちょっと赤みが出てかゆいな」と感じた段階で医師に相談すれば、重症化を防ぎやすく、比較的軽い処方で症状を抑えられることが多いです。 -
ストレスと上手に付き合う
日記をつけるなどして自分の心身の状態を振り返り、ストレスの原因を特定する努力を続けると、再発の予兆をいち早く察知しやすくなります。
医師による治療とセルフケアの両立
脂漏性皮膚炎は慢性的かつ繰り返し症状が出ることが多いため、医師の治療とセルフケアの両立が基本姿勢となります。医療機関の受診が必要な場合は、以下のような場面が考えられます。
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2週間以上症状が続く、もしくは悪化傾向にある
通常の保湿や軽いケアで改善しない場合は、外用薬や内服薬が必要なことがあります。 -
患部がジクジクし始めたり、かゆみや痛みが激しくなってきた
細菌感染や合併症のリスクが高まっているかもしれません。 -
市販薬を試してみたが、全く効き目が感じられない
自己診断と異なる疾患の可能性や、薬の選択が不適切である場合もあります。 -
外観上の問題から日常生活に大きな支障が出ている
顔に症状が集中する場合、心の負担も大きいので、医師に相談し適切な治療・心理的サポートを得ることが大切です。
医療機関で治療方針が立てられたら、それを補う形でセルフケアを行い、生活習慣やスキンケアの見直しも合わせて続けることで、よりよい経過をたどる方が多いとされています。
おすすめのセルフケア例と注意点
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清潔かつ適度な保湿
顔を清潔に保つことは大前提ですが、洗いすぎは禁物です。朝と夜の1日2回程度、敏感肌用の洗顔料を使い、こすらず丁寧に洗顔するだけで十分な場合が多いです。洗顔後は速やかに低刺激の保湿剤を使用し、皮膚の乾燥を防ぎます。 -
刺激の強いスキンケア商品の使用を避ける
アルコールが多く含まれた化粧水や、ピーリング効果の高いスクラブなどは、一時的に皮脂を取り去る効果がある反面、皮膚バリアを著しく破壊し、脂漏性皮膚炎を長引かせる恐れがあります。特に症状が顕著な間は避けるようにしましょう。 -
頭皮ケアも忘れずに
頭皮の脂漏性皮膚炎が原因でフケが生じ、そのフケが顔に広がって炎症を悪化させるケースも報告されています。抗真菌成分配合のシャンプーを使った頭皮ケアを並行するなど、頭皮からのアプローチも考慮するとよいです。 -
こまめなタオル交換や寝具の衛生管理
タオルや枕カバーなど、顔と直接触れるものは清潔さを保ちましょう。雑菌や皮脂がたまりやすい環境は、炎症を助長する原因となります。
予後と長期的な見通し
前述のとおり、成人の脂漏性皮膚炎は完全に治癒して二度と発症しないというよりは、症状をうまくコントロールして共存していくと考えたほうが実際的です。適切な治療・ケアを継続することで、症状が出ない期間を長く保ち、再発した場合でも軽度で済むことが多くなります。
とくに顔は人目に触れやすい部位ですから、皮膚症状が続くとストレスを感じがちです。放置するほど長引きやすいため、「少し赤くなってきたかな」と感じた段階で早めに医療機関へ行くと、悪化を防ぎやすくなるでしょう。
結論と提言
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脂漏性皮膚炎(特に顔)は自然に完治しにくい
胎児期に母体ホルモンの影響を受けた乳児の一部を除き、成人期以降に発症した脂漏性皮膚炎は再発を繰り返すケースが多いため、継続的なスキンケアと必要に応じた医師の診療が重要です。 -
原因は多因子的:真菌、ストレス、ホルモンバランスなど
マラセチアという真菌の増殖が主な要因と考えられていますが、ストレスやホルモン変動、寒暖差など様々な要素が関わります。生活環境の見直しも再発防止に効果的です。 -
日常的なセルフケアが欠かせない
抗真菌薬やステロイド外用薬など医師の治療に加え、毎日の正しい洗顔や保湿、頭皮ケアが症状のコントロールに大きく寄与します。洗顔しすぎや刺激の強い化粧品には要注意です。 -
早めの受診で重症化を防ぐ
2週間以上改善しない、赤みやかゆみが急に強まったなどのサインがあれば、皮膚科専門医を受診しましょう。自己判断での間違った対処は、合併症や慢性化を招きます。 -
長期的なマネジメントが大切
脂漏性皮膚炎は再発を繰り返す慢性疾患ですが、正しい知識とケアによって症状をコントロールしやすくなります。ストレス管理や食生活の改善を含め、一貫した生活習慣を続けることが予後を良好に保つ鍵です。
参考文献
- 10 REASONS YOUR FACE IS RED (アクセス日 2023年10月27日)
- Seborrheic Dermatitis (アクセス日 2023年10月27日)
- Seborrhoea (アクセス日 2023年10月27日)
- Seborrheic Dermatitis (アクセス日 2023年10月27日)
- Seborrheic Dermatitis (アクセス日 2023年10月27日)
- SEBORRHEIC DERMATITIS: DIAGNOSIS AND TREATMENT (アクセス日 2023年10月27日)
本記事の内容は医学的知見や専門家の意見を踏まえてまとめたものですが、あくまで一般的な情報提供を目的とした参考資料です。実際の診断・治療は、必ず皮膚科専門医などの医療従事者の指導に従ってください。脂漏性皮膚炎をはじめとする皮膚のトラブルは個人差が大きいため、不安や疑問がある場合は専門家に相談するのが最善策です。自己判断による長期放置や不適切なケアは、かえって症状の悪化を招く可能性がありますのでご注意ください。