食道がんステージ3:効果的な治療法と予後の見通し
がん・腫瘍疾患

食道がんステージ3:効果的な治療法と予後の見通し

はじめに

食道がんは、食道の内側にある細胞が異常増殖し、腫瘍を形成する病気です。その中でも食道がんステージ3は、腫瘍が食道の壁を貫いて周辺組織へ進行し、さらに近傍のリンパ節にも転移している状態を指します。遠隔転移(体の離れた部位への転移)が確認されていないものの、がんが局所的にかなり進行しているため、症状が明確にあらわれやすい段階です。治療にあたっては、化学療法(抗がん剤)や放射線治療を組み合わせるケースが多く、患者さんの体力や病変の広がりによっては手術が検討されることもあります。ただし、このステージの予後(生存率)は比較的厳しく、早期発見・早期治療の重要性が改めて注目される段階でもあります。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本稿では、食道がんステージ3の特徴、症状、治療法、そして予後に関する情報を整理しながら、患者さんやそのご家族の方々に役立つ知識を幅広くご紹介します。近年は化学療法と放射線治療を組み合わせたり、分子標的薬や免疫療法を取り入れたりすることで、以前より治療効果が高まっているとの報告もあり、研究がさらに進んでいます。本記事は国内外の信頼できる情報源をもとにまとめていますが、あくまでも参考情報であり、実際の治療方針は担当医師との相談が不可欠です。読み進めていただくことで、ステージ3食道がんの現状や最新の知見について理解を深めていただければ幸いです。

専門家への相談

本記事では、食道がんステージ3に関する国内外の医療機関・研究機関(Cancer Research UKcancer.cacancer.govcancer.orgMayo Clinicなど)の公表情報を参照しながら、総合的に解説しています。各研究機関や医療専門家が示すガイドラインやエビデンスを組み合わせることで、治療法の選択肢や患者さんのQOL(生活の質)を向上させる取り組みが行われています。また、近年は免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリズマブ、ニボルマブなど)の有効性を検討した臨床試験が増えており、欧米を中心に新しい標準治療の可能性が探られています。

なお、本記事は医学的助言を提供するものではなく、あくまで参考情報としてお読みください。実際に治療やケアについて判断を下す際は、必ず主治医や専門家にご相談いただくようお願いいたします。

食道がんステージ3とは

ステージ3の定義

食道がんステージ3とは、がんが食道の壁を貫通しているか、または隣接する組織(胸膜、心膜、横隔膜など)に浸潤し、かつ近傍のリンパ節へ転移がある状態を指します。一方で、肺や肝臓など離れた部位への遠隔転移が認められない段階です。病変部位が局所的に進行しているため、この時点で明らかな症状に気づくことが多くなり、治療選択も多面的なアプローチが必要とされます。

食道がんには大きく分けて扁平上皮がん腺がんの2種類があります。扁平上皮がんは食道の内表面を構成する扁平上皮細胞から発生し、腺がんは分泌腺(粘液を分泌する細胞)から生じます。ステージ3の場合、腫瘍がいずれの組織型であってもかなり進行しており、かつリンパ節転移が確認されることが多く、治療計画を立てるうえで非常に重要な段階です。

ステージ3はさらに細かく分類されることが多く、例えば3Aと3Bに分類される場合があります。

  • 3A:腫瘍が食道壁の比較的深い層(粘膜下層や固有筋層)まで達しており、近隣のリンパ節への転移が最大6個まで認められる。
  • 3B:腫瘍がさらに外側の層まで達し、周辺の臓器・組織(胸膜、心膜、横隔膜など)に浸潤している。また、近隣リンパ節への転移が最大6個まで認められるが、遠隔臓器への転移はない。

ステージ3の症状

代表的な症状

食道がんがステージ3に進行すると、以下のような症状が比較的はっきり現れることがあります。

  • 嚥下困難(ものを飲み込みにくい、つかえる感覚がある)
  • 原因不明の体重減少
  • 胸の痛み(胸骨付近や背中に痛みを感じる場合もある)
  • 重度の胃もたれや胸やけ
  • 声のかすれ(反回神経が侵される場合)
  • 吐血や黒色便(出血を伴う場合)

初期段階での食道がんは症状がほとんどないことも少なくありません。しかしステージ3に至ると、腫瘍が大きくなり、食道内部が狭まるほか、周辺組織へ浸潤することによってさまざまな症状が顕在化します。ただし、全ての患者さんが同じ症状を示すわけではなく、個々の体質や腫瘍の部位によって現れ方や程度が異なるため、気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。

治療法の概要

主な治療戦略

食道がんステージ3では、以下の治療法が単独あるいは組み合わせで選択されます。患者さんの全身状態や腫瘍の正確な広がり・組織型、HER2陽性かどうかなどによって最終的な治療計画が変わります。

  1. 化学療法(抗がん剤)
  2. 放射線治療
  3. 外科手術
  4. 分子標的治療薬
  5. 免疫療法

これらを併用することで、より強力にがん細胞を叩きながら、遠隔転移や局所再発を抑えることが期待されます。ただし、副作用や手術負担も大きくなるため、治療前に主治医と十分にリスクとベネフィットを検討する必要があります。

各治療法の詳細

1. 化学療法と放射線治療の併用

ステージ3の食道がん治療では、化学療法と放射線治療を同時に実施するケース(化学放射線療法)が多く見られます。化学療法(抗がん剤)は血流を介して全身に作用し、食道だけでなく、まだ顕在化していない微小転移がんも抑制する効果が期待できます。一方、放射線治療は局所的にがん細胞の増殖を抑える働きがあり、併用することで互いの効果を増強できると考えられています。

代表的な抗がん剤には以下のようなものがありますが、実際には患者さんの体力や副作用のリスクを考慮し、個別に組み合わせが決定されます。

  • シスプラチン系薬剤(シスプラチン、カルボプラチンなど)
  • フルオロウラシル系薬剤(5-FU、カペシタビンなど)
  • タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセルなど)
  • イリノテカン
  • エピルビシン など

化学療法でがん細胞の増殖を抑えつつ、放射線治療で局所を狙い撃ちすることで、より高い効果が期待できます。一方で、副作用として吐き気脱毛骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板の減少)、倦怠感などが生じる可能性があり、患者さんのQOL(生活の質)に影響が出ることも否めません。そのため、治療中は医療スタッフによる副作用対策が重要となります。

2. 放射線治療

放射線治療は、体外照射(外部照射)が基本です。強いX線やガンマ線をがん局所に照射し、がん細胞のDNAにダメージを与えて増殖を抑制または死滅させます。ステージ3では広範囲に浸潤している可能性があるため、照射範囲や照射角度を慎重に決定します。近年は強度変調放射線治療(IMRT)画像誘導放射線治療(IGRT)など高度な技術が導入され、周辺正常組織へのダメージを抑える努力が進められています。

副作用としては食道炎嚥下障害胸やけ倦怠感などが挙げられます。特に放射線による食道粘膜の炎症は痛みを伴うことがあるため、必要に応じて鎮痛剤を使用しながら治療が行われることがあります。

3. 外科手術

ステージ3であっても、患者さんの全身状態が良好で腫瘍の局在が手術可能範囲に限られる場合は、手術(食道切除術)が検討されます。しかし、食道がんが大きく広がっている場合や、周辺の重要臓器へ深く浸潤している場合には手術が技術的に難しい、あるいは患者さんの体力的に大きな負担となり得るため、化学放射線療法のみで対応することも珍しくありません。

手術の方法としては、部分的な食道切除から全摘まであり、病変の位置や患者さんの状態によって選択されます。手術後は嚥下機能の低下や体力の消耗が問題となることもあるため、リハビリテーションや栄養管理が不可欠です。

4. 分子標的治療薬

食道がんの中でも、とくに腺がんタイプHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)というタンパク質が過剰発現している症例では、トラスツズマブをはじめとする分子標的薬が併用されることがあります。抗HER2抗体であるトラスツズマブは、HER2陽性腫瘍に特異的に結合してがん細胞の増殖を抑える働きがあり、化学療法と併用することで治療効果を高めることが報告されています。

また、VEGF(血管内皮増殖因子)をターゲットにした抗体医薬のひとつであるラムシルマブも、腺がんタイプの食道がんや胃食道接合部がんで使用される場合があります。新たな血管形成を抑制することで腫瘍への栄養供給を遮断し、がん細胞の成長を抑える作用が期待されています。

5. 免疫療法

近年、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤が食道がんにも導入され始めています。たとえば、

  • ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)
  • ニボルマブ(Nivolumab)

などが臨床で使用されており、化学療法と併用することで治療成績が向上する可能性が報告されています。がん細胞は免疫機構から逃れる仕組みを持っていますが、これらの薬剤は免疫細胞(T細胞)の機能を回復させ、がん細胞を攻撃できるようにサポートするものです。

特にニボルマブを術後補助療法として用いることで、再発リスクの減少や生存期間の延長に寄与する可能性が示唆されています。アメリカの大規模臨床試験(CheckMate 577)では、切除可能な食道がんあるいは胃食道接合部がんを対象に、術後にニボルマブを投与したグループで無病生存期間が有意に延長したと報告されています(Kelly RJら、2021年、New England Journal of Medicine、384巻13号、1191-1203、doi: 10.1056/NEJMoa2032125)。こうした免疫療法は日本国内でも導入が進みつつありますが、副作用や適応条件などを含め主治医との綿密な相談が必要です。

ステージ3の予後と生存率

食道がんステージ3の生存率

食道がんのステージ3において、5年生存率は10~15%程度と報告されることが多く、非常に厳しい数字であることは否めません。また、進行度が高いぶん、局所再発や隣接臓器への浸潤、遠隔転移が後に生じるリスクが高いのも現状です。一般的に治療開始までの時期や、治療効果に個人差があるため、ステージ3と診断された場合でも一律に生存率が決まるわけではありません。

近年は、化学療法と放射線治療を同時併用する治療計画が広く行われており、一部の臨床試験結果では、3~5年生存率が20~30%程度まで向上する可能性が示唆されています。腫瘍の遺伝子特徴(HER2陽性など)や免疫療法の導入など、新しい治療アプローチを積極的に取り入れることで予後が改善される例もあります。ただし、全身状態やがんの特性によっては副作用のリスクも上昇するため、治療の選択肢を慎重に検討する必要があります。

食道切除術が行われる場合

ステージ3の患者さんでも、腫瘍が局所にとどまっており、手術で完全切除が期待できると判断された場合には、術前に化学放射線療法を行い、腫瘍を小さくしたうえで手術を実施する方法が検討されます。この術前治療(ネオアジュバント療法)により、切除可能性を高めるだけでなく、潜在的な微小転移を抑える効果が期待できます。また術後に補助療法を行うことで再発リスクを下げる取り組みも行われています。

ただし、食道切除術は大きな侵襲を伴い、術後の合併症リスクや体力の消耗が懸念されます。そのため、手術適応の判定には患者さんの栄養状態や心肺機能など多くの要素を考慮し、専門家チームが協議することが一般的です。

生活面での注意点とサポート

栄養管理とリハビリテーション

食道がんステージ3では嚥下障害が顕著になりやすく、十分な栄養摂取が難しくなるケースがあります。治療中・治療後には

  • 飲み込みやすい食事形態への工夫
  • カロリーやたんぱく質、ビタミン類を効率的に補う食事プラン
  • 必要に応じた高エネルギー栄養補助食品の活用
  • 摂食・嚥下リハビリテーション

などを行い、体力の維持とQOLの向上を図ることが大切です。特に放射線治療中は食道炎が生じ、痛みによって食事量が低下することがあるため、医師・管理栄養士・リハビリスタッフの連携が重要となります。

精神的サポートと情報共有

ステージ3と診断されると、患者さんは病気や治療の先行きに対して強い不安を抱えることがあります。また、副作用や日常生活の制限、職場復帰の問題など、さまざまな悩みが生じるかもしれません。そのため、専門医や看護師、ソーシャルワーカー、臨床心理士などの多職種チームからなるサポート体制を活用し、遠慮なく相談することが推奨されます。最近は、患者会やオンラインコミュニティなどで情報交換をすることで、同じ病気と向き合う仲間の経験談を参考にできる機会も増えています。

結論と提言

食道がんステージ3は、がんが局所的に進行し、近隣のリンパ節へ転移しているものの、遠隔転移はない段階です。症状としては嚥下困難や体重減少などが顕著にあらわれやすく、治療の中心は化学療法と放射線治療の併用や、条件が合えば手術の検討が行われます。さらにHER2陽性腫瘍では分子標的薬の併用、そして免疫療法の導入も近年注目されています。治療戦略によっては3~5年生存率が20~30%まで改善する可能性が示唆されており、研究が今後ますます発展していく領域でもあります。

一方で、ステージ3は食道切除術の適応を判断するのが難しく、副作用や合併症リスクが高まるため、患者さんの全身状態や希望を考慮しながら決定されることが多いのも事実です。がんの性質や遺伝子特性に応じたオーダーメイド医療が少しずつ実現しつつあり、特に免疫チェックポイント阻害薬を活用した新たな治療法では、有望な結果が報告されています。

治療を進めるうえでは、身体的サポートだけでなく精神的ケアや生活上の支援も大切です。特に、放射線治療による食道炎や化学療法による副作用(吐き気、倦怠感など)への対策、リハビリテーションによる嚥下障害対策など、多方面からの支援が必要となるでしょう。

参考文献


【重要】本記事は医療情報を提供することを目的としており、最終的な治療方針や薬剤の使用については、必ず専門の医師・薬剤師などの医療従事者とご相談ください。個々の症例や患者さんの体調などにより最適な治療法は異なります。本記事で紹介している情報は、あくまで参考材料であり、専門家の診断や治療に置き換わるものではありません。

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