骨折のサインを見逃すな!症状を早期発見する方法
筋骨格系疾患

骨折のサインを見逃すな!症状を早期発見する方法

はじめに

日常生活の中で起こる骨折は、年齢や性別を問わずどなたにでも発生しうる大きなケガです。転倒や交通事故などの突然の衝撃が原因になる場合が多く、放置したまま対処が遅れると、さまざまな合併症や後遺症に発展してしまう可能性があります。本記事では、骨折の概要や主な症状、考えられるリスクや早期発見の重要性、さらに応急処置や適切な治療・リハビリのポイントを詳しく解説します。痛みや腫れなどは単なる打撲や捻挫でも起こりうるため、骨折特有の症状をきちんと把握し、早めに医療機関で受診することが大切です。少し長い記事ですが、もし大切な家族や友人、あるいはご自身が骨折の疑いを感じたときに参考になれば幸いです。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事の内容は複数の医学的情報源を参照し、さらに医療機関や整形外科で一般的に行われているガイドラインを考慮してまとめたものです。なお、この記事で紹介する一部情報は、以下の機関やウェブサイトにも基づいています。

  • KidsHealth.org
  • Cleveland Clinic
  • Mayo Clinic
  • Children’s Hospital of Richmond
  • Better Health Channel(オーストラリア ビクトリア州政府の提供)

これらは国際的にも幅広く参照される信頼性のある機関・ウェブサイトであり、健康情報や応急処置に関する情報をわかりやすく示しているのが特徴です。ただし、骨折は受傷状況や部位によって治療法が異なる場合がありますので、症状を疑ったら必ず医師の診断を受けるようにしましょう。

骨折とは何か?

骨折(こっせつ)とは、骨の内部構造が破壊され、骨の連続性が失われる状態を指します。原因は外部から加わる強い衝撃のほか、骨粗しょう症など骨そのものが弱くなる病変によっても起こります。骨折は腕や脚などの四肢に多く発生しますが、転倒の仕方や衝撃の強さによっては、肋骨や背骨、骨盤など人体のさまざまな部位に影響を及ぼすことがあります。

骨折が起こると、身体を支える機能や可動域(関節を動かせる範囲)が著しく損なわれるため、早期の診断と治療が極めて重要です。骨折の分類は、一般的に「骨片がずれたかどうか(転位の有無)」「傷口が開いているかどうか(開放骨折か密閉骨折か)」などで行われ、骨折の部位や程度によって治療法やリハビリの進め方が異なります。

骨折の主な種類

骨折は、骨の折れ方や傷口の状態などによって分類されます。治療やケアの方法は、骨折の種類や重症度により変化します。ここでは、大まかに二つの視点に基づく分類を紹介します。

  • 骨片のずれ(転位)の有無による分類

    • 転位骨折(ずれを伴う骨折)
      骨が完全に離断してしまい、骨折部位が明らかに変形している状態です。ずれた骨片によって筋肉・血管・神経を傷つけるリスクが高く、重症度も増します。
    • 非転位骨折(ずれのない骨折)
      骨にひびが入るように折れた場合や、折れた断面同士がずれていない状態を指します。外見上の変形が軽度であることが多く、痛みは強くても骨折に気づかないまま放置されるケースもあります。
  • 皮膚の損傷(開放か密閉か)による分類

    • 開放骨折
      骨片が皮膚を突き破り、傷口が外部に露出している状態です。感染症や出血のリスクが非常に高く、緊急の処置が求められます。
    • 密閉骨折
      皮膚や筋膜などの保護組織が破れておらず、骨折部位が直接外部に触れていない状態です。傷口が外から見えないため、一見すると骨折とは気づきにくい場合もあります。

骨折の正確な診断にはX線検査がよく用いられます。骨の形態をはっきり捉えることができ、骨折線の有無やずれの程度が分かりやすいのが特徴です。ただし、初期にはX線で判別できない小さな骨折が存在することもあり、必要に応じてCTやMRIが追加で行われることもあります。

骨折の症状:代表的なサイン

骨折を疑う最も典型的な症状は「強い痛み」ですが、実際には打撲や捻挫でも痛みは起こります。痛みが長く続く、あるいは痛みが強く動かせない場合には、なるべく早めに医療機関を受診する必要があります。以下のような症状が同時にみられる場合は、骨折を強く疑うサインと考えられます。

  • 鋭い痛み
    じっとしていてもズキズキ痛む場合が多く、動かそうとするとさらに痛みが増幅するのが一般的です。
  • 腫れや内出血
    骨折部位周辺が赤く腫れたり、青あざ(内出血)が目立つことがあります。打撲でも腫れは起こりますが、腫れの範囲が広範囲であったり、痛みが極端に強い場合は骨折の可能性もあります。
  • 変形やぐらつき
    骨がずれている場合は、その部分の関節や骨格が不自然な角度になったり、触るとぐらつきを感じることがあります。特に大きく変形している場合はほぼ骨折が疑われます。
  • 動かせない、力が入らない
    骨折部位を動かそうとすると、痛みによりほとんど動かせなかったり、筋力が入らないことが多いです。
  • 押すと強く痛む部位がある
    触ったときに特定の一点がとくに強く痛む場合、ひびや骨折が生じているケースがあります。

上記のような症状がみられたら、軽度の捻挫や打撲ではなく骨折の可能性を考慮すべきです。特に、腫れや変形が顕著なときには、すぐに病院で検査を受けることを推奨します。

骨折時の応急処置

もし自分や周囲の人が骨折したかもしれないと感じた場合、医療機関にかかるまでに適切な応急処置をすることが大切です。応急処置の目的は、痛みやショックを和らげ、骨片のずれを最小限に抑え、重篤な合併症を防ぐことです。以下のポイントを押さえましょう。

  1. 安全の確保
    まずは本人や周囲の人の安全を確保します。交通事故などで骨折した場合は、現場が危険な場所であれば速やかに安全な場所へ移動しますが、無理に動かすと痛みや骨片のずれが増すため、ゆっくり慎重に行います。
  2. 安静と固定
    骨折が疑われる部位をなるべく動かさないようにします。雑誌や板などの硬いもので簡易的に副木を作り、包帯やタオルで固定する方法が一般的です。腕の場合は三角巾でつり下げ、足の場合は添え木を当てて動かさないようにします。
  3. 止血と感染予防(開放骨折の場合)
    骨が皮膚を突き破って出血しているようなら、出血部位を清潔な布やガーゼで軽く圧迫して止血を試みます。開放骨折は感染リスクが高いため、できる限り清潔を保ち、早急に医療機関で処置を受けることが重要です。
  4. 冷却と痛みの緩和
    腫れや痛みが強い場合は、氷嚢や冷湿布などで局所を冷やすと症状が軽減します。ただし冷やしすぎは血流を悪化させる場合があるので、15~20分程度を目安に、感覚を見ながら行います。
  5. 速やかな医療機関受診
    応急処置を行った後は、できるだけ早く整形外科などの医療機関で診察を受ける必要があります。レントゲンやCT、MRIなどの画像検査で正確に骨折部位を特定し、ずれを元に戻す整復やギプス固定などの正式な治療に進むケースが一般的です。

治療とリハビリの流れ

骨折の治療は、骨折の種類や部位によって異なります。代表的な治療方法としては、以下のようなものがあります。

  • 保存療法(ギプス・シーネ固定など)
    軽度の骨折や、転位が少なく整復しやすい骨折ではギプスやシーネ(添木)で固定して治す方法が一般的です。およそ数週間から数カ月間の固定期間が必要になります。
  • 手術療法(観血的整復固定術など)
    転位骨折や開放骨折など重症の場合は、プレートやスクリュー、髄内釘などの内固定材を用いて手術を行うことがあります。感染症を予防しながら骨を元の位置に固定し、早期から適切なリハビリを実施することで、後遺症のリスクを最小限に抑えます。
  • リハビリテーション
    骨が完全にくっつくまで安静にしすぎると、筋力低下や関節可動域の制限が起こり、回復後の日常生活に支障をきたします。医師や理学療法士の指示のもと、痛みや腫れが落ち着いてきた段階でゆるやかにリハビリを開始し、徐々に運動量を増やします。

リハビリのポイント

  • 痛みの程度や腫れ具合を確認しながら、段階的に運動量を上げる
  • 筋肉の再生を促すために適切なタンパク質やカルシウム、ビタミンDを意識した食生活を心がける
  • ストレッチや筋力トレーニングは、医師や理学療法士が示すペースで無理なく行う

骨がつながりきったかどうかは、X線検査やCTなどで確認されることが多いです。無理に負荷をかけると再骨折や変形治癒のリスクもあるため、主治医の指導をしっかり守りながら進めることが大切です。

骨折に関連する最新の研究動向

骨折の治療や予防に関しては、近年も多くの研究が行われています。たとえば、骨粗しょう症による骨折リスクの軽減を目指す研究や、早期リハビリを取り入れた新たな治療プロトコルの有用性を検証する研究などがあります。実際に海外から以下のような報告がされています。

  • 2021年に国際学術誌Osteoporosis Internationalに掲載された研究(Gohら)では、骨粗しょう症患者を対象とする「Fracture Liaison Service(骨折リエゾンサービス)」の有効性を5年間追跡調査した結果、適切な医療介入とリハビリ指導を実施することで再骨折率の低減につながると報告されています(doi:10.1007/s00198-020-05786-7)。この結果は、高齢者が多い日本においても骨粗しょう症に起因する骨折予防の重要性を示唆しています。
  • 2022年の学術誌Injuryに掲載された研究(Kanakarisら)では、開放骨折における医療コストと治療成績の関係を検討し、手術時期の適切な選択や抗菌薬投与、徹底した感染管理などが長期的な治療費軽減と機能回復に寄与する可能性が示唆されています(doi:10.1016/j.injury.2022.03.045)。日本国内でも開放骨折の症例は少なくなく、入院期間や治療費の削減に向けた議論が進んでいます。
  • 2022年の学術誌Bone Joint Openに掲載された報告(Jenkinsら)では、新型コロナウイルス感染症流行による外出制限期間中に骨折が増加したのか減少したのかをメタ解析した結果、地域によっては高齢者の在宅時間増加や運動不足が原因で骨折リスクが上昇した例もあったと指摘されています(doi:10.1302/2633-1462.39.BJO-2022-0072)。日本でもライフスタイルの変化に伴う運動不足は深刻であり、骨の健康維持のために適度な運動を継続することが推奨されます。
  • 2021年の学術誌Archives of Orthopaedic and Trauma Surgeryに掲載された研究(Dingemansら)では、肩周辺の骨折(肩甲帯骨折)が手術治療を要するかどうかに関して大規模調査を行い、年齢や骨質状態、骨折型によっては保存療法で十分回復するケースもある一方、一定数の症例で骨折部の転位進行や関節可動域低下が認められたと報告されています(doi:10.1007/s00402-020-03482-3)。この結果は、骨折部位によって治療方針が大きく異なることを示す一例で、日本でも個々の患者に合った慎重な治療選択が求められています。

これらの研究は海外の症例や集団を対象にしているものの、骨粗しょう症や在宅時間の増加などは日本国内でも十分起こりうる問題です。そのため、骨折予防や治療においても参考になる知見であると考えられます。

食事・栄養と骨折予防

骨折のリスクを下げるには、骨そのものを強くすることが大切です。特に高齢者や閉経後の女性は、骨密度が低下しやすく骨折リスクが高まります。以下の栄養素を普段の食生活に取り入れると良いとされています。

  • カルシウム
    牛乳やヨーグルト、小魚、豆腐などに多く含まれます。骨の主成分となるため、積極的に摂取することが推奨されます。
  • ビタミンD
    鮭やイワシ、きくらげ、きのこ類に多く含まれ、カルシウムの吸収を助ける働きがあります。日光を浴びることでも体内で合成されるため、適度な屋外活動もおすすめです。
  • タンパク質
    肉や魚、卵、大豆製品に含まれ、筋力維持だけでなく骨の修復や形成にも重要です。骨折後のリハビリには筋肉の働きが欠かせないため、十分なタンパク質摂取が望まれます。
  • ビタミンK、マグネシウム
    ビタミンKは納豆や緑黄色野菜、マグネシウムはアーモンドやほうれん草に豊富に含まれ、骨の健康を多方面からサポートするとされます。

骨折を防ぐための日常生活の工夫

骨折を未然に防ぐには、転倒などのリスクを下げる環境づくりや、骨密度を維持するための生活習慣が大切です。以下のポイントを意識してみましょう。

  • 定期的な運動習慣
    ウォーキングや軽い筋力トレーニングは骨や筋肉を刺激し、骨密度低下や筋力低下を防ぎます。ただし無理のない範囲で行い、痛みがある場合は医師に相談しましょう。
  • 住環境の安全対策
    床に物を散乱させない、階段や廊下に手すりを設置する、スリッパや靴底に滑り止めがついているかを確認するなど、小さな対策の積み重ねが転倒リスクを大きく減らします。
  • 定期健診や骨密度測定
    年齢を重ねると骨粗しょう症のリスクが高まります。自治体や病院で行われる健康診断で骨密度検査を受け、骨の状態を定期的にチェックすることが有効です。
  • 姿勢の改善
    猫背や偏った重心姿勢は転倒しやすくなる原因の一つです。正しい姿勢を心がけ、バランストレーニングを取り入れて転びにくい身体づくりを目指しましょう。

放置するとどうなる?骨折の合併症

骨折に気づいても、「打撲程度だろう」と自己判断して放置すると、以下のような合併症を招くリスクが高まります。

  • 変形治癒
    骨折した状態のまま自然にくっついてしまうと、骨軸がずれたまま固着してしまう場合があり、関節可動域の低下や痛みの慢性化につながります。
  • 偽関節
    骨がくっつかないまま不安定な状態が続き、偽関節(ぎかんせつ)と呼ばれる異常な関節様構造ができてしまうことがあります。大きな痛みや機能障害の原因になります。
  • 感染症(開放骨折の場合)
    開放骨折で傷口が外部に露出したまま放置されると、傷口から細菌が侵入し、骨髄炎や組織の壊死など重篤な状態を引き起こす恐れがあります。
  • 神経・血管障害
    骨折によって周囲の神経や血管が傷つくと、しびれや血行障害、筋萎縮などが進行する恐れがあります。早期治療を行わないと、後遺症が残る場合があります。

まとめ:骨折を疑ったら早めの対処が重要

骨折は私たちの生活機能に大きな影響を及ぼす重大なケガであり、迅速かつ適切な治療が欠かせません。強い痛みや腫れ、変形などの明らかな症状だけでなく、少しの痛みでも長く続く場合は医療機関での検査を受けることをおすすめします。加えて、周囲の人が骨折した際にも、応急処置として部位の固定や冷却などを行いながら、早急に病院へ連れていきましょう。

また、骨の健康を守るためには日常的な運動やバランスの良い食生活、十分なビタミンD・カルシウムの摂取などが不可欠です。年齢を問わず、自分に合った方法で骨を強くし、転倒リスクを減らす工夫を行うことが大切です。

結論と提言

  • 骨折の兆候としては、強い痛み・腫れ・変形・動かしづらさなどが典型的です。これらの症状がみられた場合、捻挫や打撲と決めつけず、骨折を疑って早期受診を検討してください。
  • 応急処置としては、患部を動かさないよう固定し、冷やして炎症や痛みを抑え、可能であれば止血や感染予防も意識しましょう。開放骨折は感染リスクが高いため、特に迅速な医療対応が必要です。
  • 治療法は保存療法か手術療法か、骨折の種類によって異なります。いずれも適切なリハビリを併用しながら進めることで、機能回復や後遺症予防が期待できます。
  • 予防策としては、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動、骨密度測定などが挙げられます。とくに高齢者や閉経後の女性は骨粗しょう症による骨折リスクが高まるため、積極的な予防対策が推奨されます。

骨折は決して他人事ではなく、誰にでも起こりうる身近なトラブルです。しかし、正しい知識を持ち、いざという時に迅速な対応ができれば、重篤な後遺症を防ぎ、より早く日常生活に復帰することが可能です。

重要なお知らせ
本記事に記載した内容は、あくまで一般的な医学情報を基にした参考情報です。具体的な診断や治療方針は、必ず医師などの有資格の専門家にご相談ください。

参考文献

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