はじめに
骨粗しょう症とは、骨密度が低下し、骨組織がスカスカになってしまう状態を指します。骨がもろくなり、些細な衝撃でも骨折を起こしやすくなるため、高齢者を中心に大きな問題とされています。日常生活に支障をきたしたり、将来的に要介護状態へつながる恐れもあることから、できるだけ早期に予防と対策を講じる必要があります。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
骨粗しょう症は加齢だけでなく、生活習慣やホルモンバランス、性別、遺伝的要因などさまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。特に閉経後の女性は骨密度が急激に下がることが多く、骨折のリスクが高まるといわれています。骨折によって長期入院や寝たきりにつながることもあり、心身の機能低下や生活の質(QOL)の著しい低下をもたらすケースも報告されています。
そこで本記事では、骨粗しょう症を予防・対策するうえで重要とされる食事面に着目し、「骨粗しょう症の人やリスクが高い人は何を食べればよいのか、そして控えたほうがよいものは何か」について詳しく解説していきます。さらに、骨の健康を支える栄養素や具体的な食材の選び方、また、日常的に避けたほうが望ましい習慣などについても触れていきたいと思います。
専門家への相談
本記事は、信頼できる栄養学的・医学的情報や複数の研究結果をもとに作成しました。なお、個々の症状や体質、生活背景によって最適な食事や治療法は異なります。骨粗しょう症の重症度や合併症の有無によっても対応が変わりますので、本記事はあくまでも参考情報としてお読みください。具体的な治療方針の決定や食事制限・運動指導などについては、必ず医師や管理栄養士といった専門家にご相談いただくことを推奨します。
骨粗しょう症とは
骨粗しょう症とは、骨密度が低下し骨量が減少することで骨が脆くなり、骨折リスクが高まる疾患です。骨の主成分であるカルシウムやリンなどのミネラルが減少すると、骨の微細構造が弱体化し、軽微な外力でも骨折を起こしやすくなります。以下のような特徴があります。
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骨がもろくなる
転倒や少しぶつかった程度でも骨折する可能性が高くなる。とくに背骨(脊椎)や大腿骨近位部、手首などが骨折しやすいとされる。 -
進行が自覚しにくい
骨が徐々に弱っていくため、はじめのうちは痛みや違和感が乏しい。骨折をきっかけに初めて診断されることもある。 -
高齢者に多いが、若年者も注意
加齢は大きな要因だが、若年者でも偏食や極端なダイエット、喫煙、不規則な生活習慣などによって骨量が減少し、骨粗しょう症のリスクが高まる。
世界的な疫学調査によると、閉経後の女性や高齢男性での発症が多く、日本においても人口の高齢化に伴い患者数の増加が懸念されています。米国の推計では、50歳以上の約10%に当たる人が骨粗しょう症を有し、さらに3倍以上の人が骨量減少による骨折リスクを抱えるとされています。
骨粗しょう症と食事の関係
骨粗しょう症の予防や進行抑制のためには、薬物治療(骨吸収抑制薬や骨形成促進薬など)だけでなく、日頃の食事や生活習慣が極めて重要とされます。骨を構成する主なミネラルであるカルシウムや、それを吸収・活用するために不可欠なビタミンDなどの栄養素を十分に摂取することが、骨密度維持に大きく関わります。
反対に、過剰な塩分やアルコール、カフェインなどはカルシウムの吸収阻害や排出増加を招く可能性があり、骨の健康を損なう一因と考えられています。したがって、「骨粗しょう症になったとき、あるいはなりやすい状態にあるときに積極的に摂りたい食品と控えたい食品」を理解しておくことが重要です。
骨粗しょう症の人が積極的に摂りたい食品
ここでは、骨の形成や維持に欠かせない栄養素と、その栄養素を含む具体的な食品を紹介します。
カルシウムを豊富に含む食品
カルシウムは骨や歯の主成分であり、成人の体内に約1kg存在するといわれています。その99%は骨に蓄えられ、残り1%が血液や細胞中で重要な生理機能を担います。骨粗しょう症のリスクが高い人や診断された人は、1日におよそ1000mg前後のカルシウム摂取が目安とされることが多いです。カルシウムを多く含む食品には以下の例があります。
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)
吸収率が高く、日常的に取り入れやすい。 - 青菜類(キャベツ、ブロッコリー、ケール、ホウレンソウなど)
ホウレンソウにはシュウ酸が含まれ、カルシウム吸収を阻害し得るが、下茹でや調理法を工夫すれば摂取可能。 - ゴマ
小さな粒にカルシウムが多く含まれる。すりゴマにすると吸収率が上がる。 - 大豆製品(豆腐、豆乳、納豆など)
イソフラボンも含まれ、骨の健康維持に有益とされる。 - 魚類(イワシ、サケ、サバ、サーディン缶など)
骨ごと食べるタイプの小魚や缶詰なら、効率よくカルシウムが取れる。 - カルシウム強化のシリアルやパン
食習慣に取り入れやすく、1食あたりでまとまったカルシウムを摂取しやすい。
ビタミンDを豊富に含む食品
ビタミンDは、カルシウムが腸から吸収されるのを助ける役割を担うため、骨の強化には欠かせない存在です。成人では1日当たり600IU、70歳以上は800IU程度の摂取が推奨されることがあります。特に骨粗しょう症の進行が懸念される人は、意識してビタミンDを摂ることが重要です。
- 脂ののった魚(サケ、サンマ、イワシ、サバなど)
魚の種類によってはビタミンD含有量が高く、青魚系は特に豊富。 - 卵黄、レバー、豚肉、チーズなど
1食あたりのビタミンD量はさほど多くないが、積み重ねることで全体量を確保できる。 - 日光浴
食品ではないが、皮膚が太陽光(UV-B)を浴びると体内でビタミンDが合成される。午前中の適度な日光浴も有効。
タンパク質を豊富に含む食品
骨はカルシウムだけでなく、コラーゲンを中心とするタンパク質の土台によって支えられています。良質なタンパク質を十分に摂取することで、骨形成に必要な構造を維持しやすくなります。
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)
カルシウムとタンパク質を同時に補給。 - 大豆製品(豆腐、豆乳、納豆など)
植物性タンパク質とイソフラボンを同時に摂取可能。 - 肉類・魚介類
鶏肉、豚肉、牛肉、魚の切り身、貝類など幅広くタンパク質源となる。 - 豆類、穀物(レンズ豆、キヌア、オートミールなど)
不足しがちな食物繊維も同時に摂取できる。
実際に、骨粗しょう症の人やリスクの高い人を対象に、タンパク質摂取量と骨密度の関連を調べた研究もいくつか報告されており、タンパク質を適度に摂取している群ほど骨密度が高い傾向が確認されています。
最新の研究例(2022年)
Journal of Bone and Mineral Research(JBMR)に2022年に掲載された大規模コホート研究では(Chang Y, Lim S, Koo BK, et al., 2022; 37(4): 762–773, doi:10.1002/jbmr.4499)、約270万人の対象者を数年間追跡し、食事中の栄養バランスと骨・筋骨格系疾患の発症リスクとの関連を調査しました。この研究によると、タンパク質とカルシウム、ビタミンDをバランスよく摂取している群では、将来的な骨折リスクが低減する可能性が示されています。日本人の生活習慣や食事パターンにも大いに応用できると考えられ、骨粗しょう症の予防対策として栄養バランスを整えることの重要性を改めて裏づける結果といえます。
骨粗しょう症の人が控えたい食品・習慣
次に、骨粗しょう症のリスクを高めたり症状を悪化させたりする可能性がある要因について見ていきましょう。食事や生活習慣の中で注意すべきポイントを押さえておくことが大切です。
塩分の多い食品
過剰な塩分摂取は、腎臓からのカルシウム排泄を増やす一因となるとされています。一般的に、1日あたり約6g程度までの食塩摂取にとどめることが推奨されますが、ファストフードやカップ麺、漬物、加工肉、スナック菓子などには多量の塩分が含まれることが多いです。意識して減塩に取り組むことが重要です。
炭酸飲料や甘味飲料
コーラや炭酸入りの甘味飲料には、リン酸が多く含まれているものがあります。リン酸が体内で過剰になると、カルシウムとのバランスが崩れ、骨からカルシウムが溶け出しやすくなる可能性があると指摘されています。とくに日常的に大量に飲用する場合、骨の健康に悪影響を及ぼすリスクが高まることが懸念されます。
カフェインを含む飲料
コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには利尿作用があり、過剰に摂取するとカルシウムの排泄が促進される恐れがあります。まったく飲んではいけないというわけではありませんが、1日に何杯も飲む習慣がある場合は、カフェインレス飲料やハーブティー、麦茶などへの置き換えを検討するとよいでしょう。
なお、紅茶はポリフェノールが豊富で、コーヒーよりも骨への悪影響が少ないとの報告もありますが、「骨粗しょう症が進行している人やリスクの高い人は特に飲みすぎに注意する」という点では変わりません。
アルコール
ビールやワイン、日本酒などのアルコール類を過度に摂取すると、骨形成を担う骨芽細胞の働きを阻害したり、ビタミンDの代謝を乱す可能性があります。過剰飲酒は骨粗しょう症を悪化させ、骨折リスクの上昇にもつながるおそれが高いです。
高齢者の骨粗しょう症と食生活
骨粗しょう症は高齢者に多い病気ですが、高齢者ほど「食が細くなる」「味覚の変化により塩分や甘味を好むようになる」など、栄養バランスを崩しやすい要因が増えます。したがって、以下の点を意識する必要があります。
- 食事の回数を増やす
一度にたくさん食べられない場合は、1日3食を4食や5食に分け、小分けでタンパク質やカルシウムをこまめに摂取する。 - 調理法を工夫する
煮物やスープなど、軟らかく調理して食べやすくしつつ、出汁や香味野菜を使って薄味でも満足度を高める。 - ビタミンD不足対策
日光浴が苦手な高齢者は、ビタミンDが豊富な魚や卵、きのこ類などを積極的に取り入れる。必要に応じてサプリメントを利用する場合もあるが、必ず医師など専門家に相談を。
日常生活での工夫
骨粗しょう症対策は食事だけではなく、日常生活のさまざまな面にも及びます。運動習慣や生活リズムを整えることで、骨の代謝が促進され、骨粗しょう症の予防や進行抑制に効果を発揮します。
- 適度な運動
ウォーキングや軽い筋トレなど、骨に適度な負荷をかける運動が推奨される。筋力を維持・向上させることで転倒リスクを下げる効果も期待できる。 - 禁煙
喫煙は骨量を減少させるリスク要因の一つであり、骨粗しょう症や骨折のリスクを高める可能性がある。可能な限り禁煙を心がける。 - 定期検診
骨密度検査などで現在の骨の状態を正確に把握し、必要に応じて早めに治療や食事療法を始められるようにする。
結論と提言
骨粗しょう症は骨の密度や質が低下して骨折しやすくなる病気であり、高齢者を中心に深刻な合併症を引き起こす可能性があります。食事療法としては、カルシウム、ビタミンD、タンパク質などの骨形成や維持に欠かせない栄養素を十分に摂取することが重要です。これらを豊富に含む食品として、乳製品、青菜類、小魚、大豆製品、卵黄、レバー、豚肉、チーズなどが挙げられます。
一方で、塩分過多やアルコールの過剰摂取、カフェインを多く含む飲料、炭酸飲料などは骨の健康を損ねるリスクがあるため、できるだけ控えるのが望ましいです。さらに、日光浴でビタミンDを合成したり、適度な運動や禁煙などを取り入れることで、骨粗しょう症の進行を抑え、将来的な骨折のリスクを軽減する可能性が高まります。
ただし、骨粗しょう症は一人ひとりの病状や生活環境によって進行度や適切な対処法が異なります。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療の代わりにはなりません。 気になる症状がある場合や、既に骨粗しょう症と診断されている場合は、自己判断で対処するのではなく、医師や管理栄養士などの専門家に相談するようにしてください。
参考文献
- Osteoporosis (アクセス日:記載なし)
- What You Can Do Now to Prevent Osteoporosis (アクセス日:記載なし)
- Osteoporosis Prevention Eating Plan (アクセス日:記載なし)
- Food and Your Bones — Osteoporosis Nutrition Guidelines (アクセス日:記載なし)
- The Recent Prevalence of Osteoporosis and Low Bone Mass in the United States Based on Bone Mineral Density at the Femoral Neck or Lumbar Spine (アクセス日:記載なし)
- Chang Y, Lim S, Koo BK, et al. “Metabolically healthy obesity and the development of musculoskeletal disorders: a cohort study in 2.7 million people,” Journal of Bone and Mineral Research. 2022; 37(4): 762–773. doi:10.1002/jbmr.4499
本記事は一般的な情報に基づき作成された参考資料であり、医療上のアドバイスを提供するものではありません。症状や状態に応じた具体的な治療方針は、必ず専門の医師や薬剤師にご確認ください。