はじめに
高脂血症(いわゆる「脂質異常症」)は、血液中の脂質成分が過剰に増加している状態を指します。特にコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)の値が基準値より高くなると、心筋梗塞や脳卒中などの重大なリスクが高まると考えられています。こうした背景から、食生活を適切に見直し、脂質異常症に対応した食事を続けることは、健康管理において非常に重要です。本記事では、血中脂質が高めの方がどのような食事を心がけるとよいのか、そして日常生活の中で注意すべき点は何かを詳しく解説します。医療現場でも注目されている最新の知見や、研究成果から得られた情報を踏まえて、分かりやすくまとめています。
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専門家への相談
高脂血症や心血管疾患において、医療機関や栄養の専門家からのアドバイスは非常に重要です。特に血液検査の数値が高めで不安を感じる方は、まず医師に相談し、必要に応じて管理栄養士などの専門家の意見を取り入れてください。本記事の内容はあくまでも情報提供を目的としたものであり、個々の健康状態を踏まえた診断・治療の代替にはなりません。気になる症状や既往症がある場合は、必ず主治医・専門家にご相談ください。
I. 高脂血症(脂質異常症)と食事の基本的な考え方
脂質異常症は、LDLコレステロール(いわゆる“悪玉”コレステロール)やトリグリセリド(中性脂肪)が高すぎる、あるいはHDLコレステロール(“善玉”コレステロール)が低すぎる状態を指します。値が長期的に乱れると、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中など生命に関わる疾患を引き起こす可能性があります。食事の改善は、薬物療法と並んで脂質異常症の管理において要となる対策です。以下では、主に食事面で気をつけるべきポイントを整理します。
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エネルギー量のコントロール
過剰なエネルギー摂取は体重増加を招き、BMIが上昇すると脂質代謝が悪化しやすくなります。必要に応じて1日あたり300kcal程度、従来の食事量から控えめにするなど、段階的に摂取カロリーを調整してみましょう。やみくもな制限はリバウンドリスクを高めるため、定期的に体重やBMIをチェックしながら、無理なくコントロールするのが理想です。 -
脂質の質と量
脂質の摂取比率は全体カロリーの15〜20%程度が目安です。また、脂質には飽和脂肪酸(動物性脂肪に多い)やトランス脂肪酸(加工食品に含まれることがある)など、血中コレステロールを悪化させる可能性のあるものが含まれます。アメリカ心臓協会(AHA)では、飽和脂肪酸を1日の総エネルギー摂取の6%未満に抑えるよう推奨しています。一方、青魚やナッツ、アボカドに含まれる不飽和脂肪酸は、血中脂質の改善に寄与する可能性があるため積極的に取り入れましょう。 -
コレステロールの制限
食事由来のコレステロールは、1日250mg程度以下を目指すとよいとされています。卵黄やレバーなどコレステロールを多く含む食品は控えめにしつつ、摂取する場合は全体のバランスを見ながら調整することが大切です。 -
塩分の制限
塩分を過剰に摂取すると血圧が上昇しやすく、心血管リスクに悪影響を与える可能性があります。目安としては1日2.3g(約2300mgのナトリウム)未満を意識し、加工食品や外食時には特に注意してください。 -
タンパク質の確保
タンパク質は1日の総エネルギーの12〜20%を目標に、魚や大豆製品、脂質の少ない肉類などから摂るようにしましょう。とくに植物性タンパク質(大豆や豆製品など)は、飽和脂肪酸が少ない傾向にあるため、高脂血症の方に適しています。 -
野菜・果物の摂取
野菜や果物はビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含んでおり、比較的カロリーが低めです。特に水溶性食物繊維は、コレステロールの吸収を抑制するとされ、LDLコレステロール(悪玉)の減少に寄与することが示唆されています。 -
アルコールの節度ある摂取
アルコールは適量を超えると中性脂肪(トリグリセリド)の上昇につながりやすく、脂質異常のリスクを高めます。飲酒量や頻度を含め、主治医あるいは管理栄養士にアドバイスを求めましょう。
II. 高脂血症の方におすすめの食品と避けたい食品
A. おすすめの食品
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食物繊維が豊富な食品
- 野菜、果物、オートミール、豆類など。特に水溶性食物繊維(5〜10g/日程度)はコレステロールの吸収抑制に効果的とされています。
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青魚やオメガ3脂肪酸を含む食品
- サバ、イワシ、サケ、マグロなどはEPAやDHAと呼ばれる不飽和脂肪酸が豊富で、中性脂肪の低減や血圧の安定化に役立つ可能性があります。週に2回以上の魚介類の摂取が推奨され、調理法は揚げるより焼きや煮込みを中心にするとよいでしょう。
- クルミ、亜麻仁、キャノーラ油などもオメガ3脂肪酸を比較的多く含むため、適宜取り入れることで脂質バランスの改善が期待できます。
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ナッツ類(特にアーモンド、クルミなど)
- 適量であればHDLコレステロール(善玉)の改善や心血管リスク低減につながるとの報告があります。ただしカロリーが高めなので、一度に食べ過ぎないよう注意が必要です。
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アボカド
- アボカドに多く含まれる一価不飽和脂肪酸(MUFAs)は、LDLコレステロールの抑制に関与するとされています。肥満傾向のある方でも、全体カロリーのバランスを見ながら取り入れることで、脂質バランスの改善に役立ちます。
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卵(特に卵白)
- 卵黄にはコレステロールが多い一方、卵白は良質なタンパク源でありコレステロールを含みません。適度に摂取することでタンパク質やビタミンB群などを効率的に補うことが可能です。
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大豆製品(豆腐・豆乳など)
- 植物性タンパク質の代表格であり、脂質が少なく食物繊維やイソフラボンなどの成分も含みます。1日25g程度の大豆由来タンパク質を摂ると、LDLコレステロールが5〜6%低下すると示唆した研究もあります。
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植物油(キャノーラ油、オリーブ油、ひまわり油など)
- 飽和脂肪酸が少なく、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸が比較的多いタイプの油を日常的に使うと、コレステロール管理にプラスに働きます。
B. 避けたい食品
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全脂乳製品(バター、全脂ヨーグルト、濃厚なチーズなど)
- 飽和脂肪酸が多く、塩分も高めの場合があり、高脂血症の方には不利に働く可能性があります。低脂肪・無脂肪タイプに切り替えるなど工夫するとよいでしょう。
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赤身肉(特に霜降り肉や脂肪分の多い部位)
- 飽和脂肪酸やコレステロールを多く含むため、摂り過ぎるとLDLコレステロール上昇につながります。鶏肉の皮なしや、脂肪分の少ない部位を選択すると比較的安心です。
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加工肉(ベーコン、ソーセージ、ハムなど)
- ナトリウムや飽和脂肪酸が多く含まれるだけでなく、保存料などの添加物も気になります。摂取量が多いと心血管リスクを上げるとの報告もあり、できるだけ控えめにしましょう。
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揚げ物や高脂質のスナック菓子
- 油で揚げた食品は総エネルギーが高く、トランス脂肪酸が含まれる場合があります。日常的に多く摂取すると血中脂質バランスが崩れやすくなるため注意が必要です。
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甘いお菓子やデザート類(クッキー、ドーナツなど)
- 飽和脂肪酸や反すう動物由来の脂肪、糖分が多く、トリグリセリドの上昇要因となる可能性があります。適量を意識するか、フルーツやナッツを活用して代替しましょう。
III. 日常生活の工夫と薬物療法
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生活習慣の見直し
食事だけでなく、適度な運動(ウォーキングや軽いジョギングなど)を週に数回取り入れることが、高脂血症の改善と維持に大きく貢献します。禁煙や十分な睡眠時間の確保も、動脈硬化リスクの低減に役立つとされています。 -
薬物療法の必要性
食事や運動などの生活習慣を改善しても十分にコレステロールやトリグリセリドが下がらない場合、主治医の判断で薬物療法が導入されることがあります。スタチン(Statin)系薬剤はLDLコレステロールを下げる主力薬であり、中性脂肪の上昇を抑え、HDLコレステロール(善玉)の上昇にもつながると報告されています。5年間以上にわたりスタチンを投与された患者では、20年という長期的な経過観察で有意な心血管リスク低下が確認されたとの報告もあります。
また、フィブラートやナイアシンも中性脂肪を低減させる薬として用いられます。ただし、腎臓や肝臓に疾患を抱える方、他の薬剤を服用している方などは副作用のリスクを考慮したうえで選択が必要です。薬物治療が始まった場合も、自己判断で中止したり減量したりせず、処方医の指示に必ず従ってください。
IV. 研究データと最新の知見
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水溶性食物繊維とLDLコレステロール
近年の複数のメタ解析から、水溶性食物繊維の摂取増加によってLDLコレステロールの低減効果が得られる可能性が示されています。特に1日5〜10gの水溶性食物繊維摂取は、食事からのコレステロール吸収を緩やかにする方向に働くと考えられています。 -
青魚摂取と心血管疾患リスク
2020年に発表された欧州心臓病学会(ESC)と欧州アテローム・動脈硬化学会(EAS)のガイドラインでは、サバやイワシ、サケなどの摂取が心血管リスクの軽減に寄与する可能性があるとされています(Mach F. ら (2020) “2020 ESC/EAS Guidelines for the management of dyslipidaemias”, European Heart Journal, 41(1):111-188, doi:10.1093/eurheartj/ehz455)。 -
植物性タンパク質の有用性
大豆や豆類などの植物性タンパク質を多めに取り入れた場合、飽和脂肪酸の摂取が減りやすく、LDLコレステロールが低下しやすいとの報告があります。2020年に発表されたシステマティックレビューでも、植物性中心の食生活が総コレステロールおよびLDLコレステロールの改善につながると示唆されました(Reiter-Brennan C. ら (2020) “The Effects of Plant-Based Diets on Plasma Lipids: A Systematic Review”, Nutrients, 12(8):2342, doi:10.3390/nu12082342)。 -
継続的なスタチン投与の長期的効果
スタチンの長期投与に関する臨床研究では、心血管イベントの一次予防や再発予防に高い有効性が認められています。継続して服用することで総死亡率の低下にもつながるとされ、海外の大規模コホート研究でも同様の知見が積み重ねられています。
V. おすすめの生活習慣とまとめ
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定期的な健康診断と血液検査
高脂血症は自覚症状に乏しいため、定期的に血液検査を受けることが重要です。コレステロールやトリグリセリドがわずかに高めの段階で早期対策を始めれば、重篤な合併症のリスクを大幅に下げられます。 -
適度な有酸素運動
ウォーキングや軽めのジョギング、水泳など週に150分程度を目安に行うと、HDLコレステロール(善玉)の増加や体重管理にプラスになります。 -
禁煙・節酒
喫煙は動脈硬化を加速させ、アルコールの過剰摂取は中性脂肪を増加させる可能性が高いです。どちらも心血管イベントのリスク要因であり、適切にコントロールまたは中止を検討しましょう。 -
薬物療法との併用
食事療法と運動だけでは改善が見られない場合、医師が薬物治療を提案することがあります。スタチンなどの薬剤を処方された場合も、生活習慣の改善は引き続き必要です。 -
長期的な視点での取り組み
高脂血症は生活習慣の変革を要する慢性的な問題です。急激な減量や過度な食事制限は継続が難しく、リバウンドするおそれが高くなります。無理のない範囲でコツコツと続け、定期的に血液検査や医師の診察を受けながら状況を確認し続けることが大切です。
結論として、高脂血症の管理には食事が大きく関わりますが、運動・禁煙・節酒などの生活習慣の改善、そして必要に応じた薬物療法を総合的に組み合わせることが肝要です。
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