高血圧はどの程度から薬が必要?治療薬を使う際の注意点
心血管疾患

高血圧はどの程度から薬が必要?治療薬を使う際の注意点

はじめに

高血圧と診断された場合、「どの程度血圧が高いと薬を飲む必要があるのか」という疑問を抱く方が多いかもしれません。実際、医師から高血圧と診断された方の中には、生活習慣の改善だけで血圧が正常化するケースもあれば、血圧をコントロールするために薬物療法が必要になるケースもあります。一般的には、医療従事者が適切な測定手順で測定した際、収縮期血圧が140mmHgを超える、または拡張期血圧が90mmHgを超えると高血圧と判断されます。さらに、収縮期血圧が130〜139mmHg、拡張期血圧が85〜89mmHgの場合は「高血圧予備群」に該当すると考えられています。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

しかし、高血圧予備群であっても薬を服用すべき場合があるのか、または生活習慣の見直しだけで十分なのかは、一律に決められた指標で判断できるわけではありません。ここでは、高血圧と診断されたときの治療方針や「どれくらい血圧が高いと薬を飲む必要があるか」について詳しく解説します。日々の生活習慣と薬物療法の兼ね合いについても取り上げますので、血圧管理にお悩みの方や高血圧を指摘された方の参考になれば幸いです。

専門家への相談

本記事では、高血圧治療に関して国内外の信頼できる医療機関や専門家による情報を基に解説しています。また、血圧管理や高血圧治療に関して厚生労働省をはじめとする公的機関の資料や複数の国際的な医療ウェブサイトからの情報も参考にしています。記事内で触れられている情報源は、いずれも高血圧の診断・治療について専門的な信頼性が高いと認められているものです。ただし、本記事はあくまで情報提供を目的としており、個別の診断や治療の決定には医師などの専門家による直接の診察や助言が不可欠です。日常生活での血圧管理や、服薬に関する不安や疑問がある場合は、必ず主治医をはじめとする専門家の意見をお聞きください。

I. 血圧がどれくらい高いと薬が必要になるのか

高血圧と診断された場合、最初に気になるのは「本当に薬を飲む必要があるのか」という点でしょう。実際には、収縮期血圧・拡張期血圧・合併症の有無・将来的なリスクなどに基づき、医師が薬物療法を行うかどうかを判断します。生活習慣の改善だけで十分にコントロールできる場合もあれば、合併症予防のために早期から薬の服用を始める場合もあります。下記のような段階によって、おおよその治療方針が定まります。

  • 収縮期血圧130〜139mmHg/拡張期血圧80〜89mmHg(高血圧予備群)
    高血圧予備群は、明らかに高血圧と診断されるほどではないものの、今後高血圧に移行するリスクが高い段階です。一般的には食事・運動・ストレス管理などの生活習慣を見直すことで、血圧が改善する可能性が十分考えられます。ただし、糖尿病や慢性腎臓病などのリスク要因を複数もっている方や、心筋梗塞・脳卒中などを起こす可能性が高いと評価される場合には、予防的に薬物療法を検討することがあります。
  • 収縮期血圧140mmHg以上/拡張期血圧90mmHg以上
    高血圧と診断される基準に該当する場合、基本的には生活習慣の改善が最優先となります。特に他のリスク要因が少ない場合、当初は薬を使わず、塩分制限や運動療法を中心とした生活習慣の修正だけで血圧が十分に下がることもあります。一方、肥満や糖尿病などの合併症リスクが高い方、コレステロール値の異常や喫煙習慣など複数の危険因子を抱えている方は、生活習慣の見直しに加え、早期から薬物療法を行うことで、より確実に血圧を管理するケースがあります。
  • 収縮期血圧160mmHg以上/拡張期血圧100mmHg以上
    いわゆる「中等度~重度の高血圧」に該当し、脳や心臓、腎臓などへの負担が一層大きくなる恐れがあります。そのため、この段階では医師の判断のもと、薬物療法を含む総合的な治療アプローチが推奨されます。生活習慣の改善を行うだけではコントロールが難しいと考えられるため、降圧薬を用いた治療が不可欠となることが一般的です。

上記のように、血圧の数値と個人のリスク要因を総合的に見て、薬物療法の必要性が判断されます。高血圧は症状がなく進行することも多いため、自覚症状が乏しくても、検査結果や医師の指示を軽視せずに適切な治療プランを立てることが重要です。

II. よく使われる高血圧治療薬の種類

高血圧の薬物治療では、複数の薬剤グループが単独または組み合わせて処方されることがあります。代表的な薬剤グループとして、以下のものが挙げられます。

  • カルシウム拮抗薬
    血管平滑筋のカルシウムチャネルをブロックし、血管を拡張させることで血圧を下げる薬です。一般的に中高年の高血圧治療で効果を発揮しやすい場合が多いとされます。むくみなどの副作用が見られることもありますが、通常は医師の指示に従えば安全に使用できます。
  • 利尿薬
    体内の余分な水分やナトリウムを排出し、血液量を減らすことで血圧を下げる薬です。長期的な使用で低カリウム血症が起こる可能性があるため、定期的な血液検査やカリウム補給を必要とするケースもあります。
  • ACE阻害薬
    アンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを阻害し、血管の収縮を抑えて血圧を下げる薬です。咳が副作用として現れる場合がありますが、腎機能保護の観点から糖尿病や腎障害をもつ方に有用とされるケースが多いと報告されています。
  • アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
    アンジオテンシンIIが血管収縮を引き起こすのをブロックし、血圧を低下させる薬です。ACE阻害薬に比べると咳の副作用が少ないとされ、同様に腎保護効果が期待できるケースがあります。

これらの薬剤を使用しても血圧がうまくコントロールできない場合は、医師が追加の降圧薬を処方することもあります。たとえば、アルドステロン拮抗薬、α受容体遮断薬、β受容体遮断薬、αβ受容体遮断薬、レニン阻害薬、血管拡張薬などが挙げられます。これらのうち、どの薬を組み合わせるかは年齢・合併症・薬の相互作用などを総合的に判断して決定されます。また、一度開始した治療であっても、目標とする血圧値が得られない場合や副作用が強い場合には、投与量の調整や薬剤の変更が検討されることがあります。

III. 高血圧治療薬の服用時に気をつけるポイント

降圧薬を服用し始めたときや新しい薬を追加・増量するときは、以下の点に注意するとスムーズに治療が進みやすくなります。

  • 医師の指示を厳守する
    服用回数やタイミングなどは必ず主治医の説明に沿って行いましょう。一般的には1日1回または複数回に分けて服用する場合がありますが、服薬の時間帯や食事との兼ね合いなどは薬剤ごとに異なることがあります。
  • 毎日同じ時間に服用する
    服薬時間を固定すると、飲み忘れや重複服用を防ぐのに役立ちます。たとえば、朝起きた直後や夕食後など、自分が覚えやすいタイミングを決めておくと便利です。
  • 飲み忘れても自己判断で「まとめ飲み」しない
    もし飲み忘れに気づいた場合は、既定の次回服用まで時間があればできるだけ早く服用する、あるいはすでに次回服用のタイミングが近い場合はそのまま1回分を飛ばして次回分を通常どおり服用するなど、医師や薬剤師からの説明に従うのが原則です。自己判断で一度に多量の薬を飲むと、血圧が急激に下がりすぎるリスクがあります。
  • 服用中の他の薬やサプリメントとの相互作用を確認する
    非ステロイド性抗炎症薬(解熱鎮痛薬)や一部の健康食品などは降圧薬の効果を弱めたり、副作用を増強させたりする可能性があります。新たに市販薬やサプリを使う場合は、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
  • 毎日の血圧測定で経過を把握する
    自宅でこまめに血圧を測定し、数値を記録して医師に報告することで、薬剤の効果や副作用の有無を早期に把握できます。頭痛やめまいなどの症状がある場合も必ず伝え、医師が薬剤の調整をしやすい環境を整えましょう。

新しく降圧薬を始めたばかりのときや、薬剤を切り替えた直後は、咳やめまい、吐き気、倦怠感、皮膚のかゆみ、下痢や便秘などの副作用を感じることがあるかもしれません。多くの場合は体が慣れるにつれて軽減しますが、症状が長引く場合や日常生活に支障をきたす場合は、勝手に服用を中断せず担当医に相談し、薬剤の種類や用量を変更してもらうなどの対応を取ることが大切です。

降圧薬による治療を行う際は、同時に生活習慣の改善が欠かせません。薬物療法のみでは血圧コントロールが不十分になるケースも多いため、以下のような生活習慣の見直しを並行して行いましょう。

  • 食塩摂取量の適切な管理
    1日あたり6g未満を目指すことが推奨されます。塩分を多く含む加工食品やファストフード、漬物、スナック菓子などは控えめにし、野菜や果物、良質なタンパク源をバランスよく摂るよう心がけましょう。
  • 適正体重の維持
    肥満は高血圧のリスクを高めます。BMI(体格指数)が18.5〜22.9程度を目標に、過度なカロリー制限ではなく、バランスの取れた食事と適度な運動で健康的な減量を目指すと良いでしょう。男性の場合は腹囲90cm未満、女性の場合は80cm未満を維持することも目標とされることがあります。
  • 節酒・禁酒
    アルコールの過剰摂取は血圧上昇の原因のひとつです。一般には男性で1日あたりビール中ビン1本程度(約330ml)や日本酒1合弱、女性ならばさらに控えめにするなど、適量にとどめることが求められます。
  • 禁煙
    喫煙は血管を傷害し、高血圧や動脈硬化の進行を促します。可能な限り早期に禁煙を開始し、長期的な心血管リスクを下げることが重要です。
  • 適度な運動
    ウォーキングや軽めのジョギング、水泳、サイクリングなど、継続できる有酸素運動を1日30〜60分程度行うと血圧改善効果が期待できます。ただし、持病や関節の問題がある方は運動の種類や強度を医師に相談するようにしましょう。
  • ストレス管理
    精神的緊張やストレスの蓄積は交感神経を刺激し、血圧を上昇させる原因となります。十分な睡眠と休息を確保し、リラクゼーション法や趣味・運動などで上手にストレスをコントロールしましょう。

このように、薬物療法とあわせて生活習慣の改善を行うことで、長期的かつ安定した血圧コントロールが可能になります。高血圧は自覚症状に乏しいまま徐々に進行し、脳卒中や心筋梗塞、腎機能低下など重篤な合併症を招く可能性がありますが、早期発見・適切な治療・生活習慣の見直しを徹底すれば、合併症のリスクを大幅に減らすことができます。

結論と提言

高血圧は血管や臓器に負担をかけ、深刻な合併症のリスクを高める疾患です。しかし、同じ高血圧でも、血圧値や合併症リスクの大小によって薬物療法の必要性や開始タイミングは異なります。収縮期血圧が130~139mmHgまたは拡張期血圧が80~89mmHgであれば、まずは生活習慣の改善に注力し、必要に応じて薬を検討する場合があります。140/90mmHg以上になると、医師と相談のうえ、生活習慣の見直しと薬物療法を並行して進めるケースが増え、中等度以上(160/100mmHg以上)の高血圧では、原則として薬物療法が不可欠です。

どの段階であれ、降圧薬を服用する際には、医師の指示に従って正しく継続することが欠かせません。自己判断で服用量を増減したり、飲み忘れを補うためにまとめて薬を飲んだりすることは極めて危険です。また、ストレス管理や運動療法、食事療法などの非薬物療法を併用することで、より安定した血圧管理を目指すことができます。もしも副作用が強く出たり、処方された薬を飲んでも血圧が下がらなかったりする場合は、勝手に服用を中止せず、主治医に相談の上で薬の変更や量の調整を行いましょう。

日々の生活習慣に気を配りながら医師の助言を受け、必要であれば薬物療法も取り入れていくことが、高血圧の長期的な安定コントロールにおいて非常に重要です。高血圧は放置すると深刻な病気を引き起こす可能性がある一方で、正しい知識と対処法を身につけることで多くのリスクを予防できます。自分の血圧を理解し、適切な治療方針を立てるためにも、定期的に血圧を測定し、少しでも不安があれば早めに医師に相談するようにしましょう。

※本記事の情報は参考提供を目的としたものであり、具体的な診断や治療行為の代わりとなるものではありません。気になる症状や治療法については、必ず主治医や専門家へご相談ください。

参考文献

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