高血圧患者のケア:知っておくべきポイントとは
心血管疾患

高血圧患者のケア:知っておくべきポイントとは

はじめに

高血圧症(いわゆる「血圧が高い状態」)は、心血管疾患や脳卒中、腎不全など、さまざまな合併症を招くリスクがある重大な疾患です。実際に、高血圧を放置した場合、心血管系への負荷が増大し、脳血管障害や心筋梗塞、心不全、腎臓病変などに至る可能性があるため、早期のコントロールが何より重要とされています。特に高齢者の方や生活習慣病を併発している場合、血圧の管理が治療成績やQOL(生活の質)に大きく影響することが知られています。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、高血圧症の患者さん(以下「高血圧患者さん」と呼称)が日常生活でどのような点に気をつければよいか、また家族や介護者がどのようにサポートすればよいか、具体的に解説していきます。高血圧管理に欠かせない生活習慣の見直しや食事法、薬物療法のポイント、さらにはストレス対処など、多角的に掘り下げてお伝えします。

なお、本記事は信頼できる医療文献やガイドライン、国内外の研究結果をもとに作成しており、記事末尾の参考文献を含め、情報の正確性と透明性を重視しています。しかしながら、本記事はあくまで参考情報にとどまり、個別の治療方針を決定するものではありません。何らかの症状や疑問がある場合は、必ず専門の医師、薬剤師などの医療従事者にご相談ください。

専門家への相談

本記事の内容は、高血圧症に関連する各種ガイドライン(厚生労働省や各学会)、医療機関の公開情報、一部海外医療機関や研究機関(Mayo Clinic、Cleveland Clinic、National Institutes of Health ほか)など、広く認められている文献情報を参照しています。また、本記事で登場する医師としては、元の情報ソースに挙げられているBác sĩ Nguyễn Thường Hanh(内科・総合内科、Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)のお名前を保持しつつ、高血圧症の治療や生活習慣改善に関して一般的な指導・助言を行ったとされる内容を参考にまとめています。具体的な個別診療を依頼する際は、必ず国内のかかりつけ医や医療機関にご相談ください。

以下では、生活習慣のポイントから日常的なケア、薬物療法、食事療法などを順番に解説します。


高血圧患者さんのケア:生活習慣の改善と維持が重要

1. 生活習慣が血圧コントロールのカギとなる

高血圧は「サイレントキラー(自覚症状が少ないまま進行する怖い病)」と呼ばれ、長期的に放っておくと心臓や血管に大きな負担をかけます。しかし、高血圧の初期段階は日常的な生活習慣の見直しによって、薬物治療を開始する前に血圧を下げられたり、あるいは薬の使用量を減らすことが期待できます。生活習慣の改善として最も大切なポイントは下記です。

  • 栄養バランスの良い食生活
  • 適度な運動習慣
  • 禁煙
  • 過度な飲酒の制限
  • ストレスコントロール
  • 体重管理

これらをきちんと継続して行うことで、血圧はゆるやかに安定しやすくなるといわれています。実際に日本国内外で行われた複数の臨床研究でも、生活習慣の改善が高血圧管理に寄与することが報告されています。

2. 適度な運動:継続がポイント

有酸素運動の効果

高血圧患者さんのケアにおいて、運動は欠かせない要素です。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳、ダンスなど、有酸素運動は血圧をコントロールしやすくする効果が期待されます。一般的に1日30分程度、週合計で150分程度の軽~中程度の運動が推奨されています。

  • 血管の弾力性を保つ
  • 体脂肪や内臓脂肪を減少させる
  • ストレス緩和による自律神経バランスの改善

これらを通じて平均5~8mmHgほど血圧が下がる可能性があるとされます。ただし、継続的に行わないと再び血圧が上昇しやすくなるという報告もあり、定期的かつ習慣的に続けることが非常に大切です。

運動強度の目安

高齢者や基礎疾患を持つ方は、運動強度が過度にならないように注意する必要があります。運動前には主治医に相談し、心拍数や体の状態をチェックしながら徐々に負荷を増やすのが安全です。近年の日本人を対象にした調査でも、高血圧患者さんが無理のない範囲のウォーキングや体操を続けることで、心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクが低減したとする報告があります(2021年、日本内科学会学術総会発表)。

3. 体重管理:肥満は血圧上昇の大きな要因

高血圧と肥満には密接な関係があります。体重が増えると血管への負担が大きくなり、血圧が上昇しやすくなる傾向があるため、BMI(体格指数)が25以上の場合は減量が推奨されます。日本人に多い「内臓脂肪型肥満(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)」は動脈硬化のリスクを高める可能性が指摘されており、減量に取り組むことで血圧を下げる効果が期待できます。

  • 体重1kg減量するごとに、およそ1mmHg血圧が下がる可能性がある
  • BMIを18.5~22.9kg/m^2に保つ
  • 男性は腹囲90cm未満、女性は80cm未満を目標

減量のためには、有酸素運動と食事療法が基本的なアプローチとなり、特に高齢者の場合は筋肉量低下を防ぐためにも、無理な制限ではなくバランスを重視することが大切です。

4. 禁煙:血圧のみならず心血管病リスクも軽減

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血圧を上げる原因となります。さらに喫煙は動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを飛躍的に高める要因としても知られています。もし高血圧患者さんが喫煙を続けている場合、禁煙を指導することは極めて重要です。

  • 禁煙後すぐに血圧が安定しやすくなる報告もある
  • 心血管疾患発症リスクが大幅に低下する

禁煙によるストレス増加が気になる方は、医療機関で禁煙外来を利用するなど、専門家のサポートを受けるのもよい方法です。

5. ストレスを減らす:自律神経バランスへの配慮

ストレスは交感神経を優位にし、血管収縮や心拍数上昇につながりやすいとされています。仕事や家庭の事情などでストレスが多い方は、ストレス解消法を見つけることが大切です。趣味の時間を確保したり、深呼吸や軽いストレッチを行ったり、適度に散歩をするなど、取り組みやすい方法を継続して実施しましょう。

  • ストレスが強いと塩分や甘い物、アルコール摂取も増える傾向がある
  • ストレスで不眠傾向になると血圧変動が増大する

精神的な不安や落ち込みが強い場合は、専門医への相談やカウンセリングを検討することも有効です。日本の医療機関では心療内科や精神科で高血圧を含む生活習慣病に対するストレスマネジメントを一部サポートしているところもあります。


高血圧患者さんの食事管理:塩分制限と栄養バランス

高血圧の管理において、栄養バランスと塩分(ナトリウム)摂取量の制限は非常に重要です。食事内容を変えるだけでも、血圧が有意に下がることが複数の研究で示されています。

1. 野菜や果物、全粒穀物を中心とした食事

果物や野菜にはカリウムやマグネシウム、食物繊維などが豊富に含まれ、血圧を下げる作用が期待されます。日本高血圧学会でも「野菜や果物を積極的に摂る食事」が推奨されており、特に緑黄色野菜や海藻類をバランスよく取り入れることが望ましいとされています。

  • 野菜・果物でカリウムをしっかり摂ることが塩分の排出を促進
  • 全粒穀物(玄米や全粒粉パンなど)で食物繊維やミネラルを補給

また、赤身の肉よりも魚や大豆製品(豆腐、納豆、味噌など)を積極的に取り入れることで、飽和脂肪酸を減らし、良質なたんぱく質を摂取することができます。近年では、DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)という高血圧向け食事プランが欧米を中心に推奨されていますが、日本の家庭食でも十分に応用可能であり、実際にDASH食に近い内容を継続すると最大でおよそ11mmHgほど血圧が低下したという報告もあります(Mayo Clinic, 2020年代以降の複数ガイドより言及)。

2. 塩分制限:1日6g未満を目標に

厚生労働省や日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧患者さんは1日6g未満の食塩摂取が推奨されています。ただし、日本の食文化は醤油や味噌、漬物など塩分が高い食材が多いのも事実です。以下のように工夫すると、比較的スムーズに塩分を減らすことができます。

  • 加工食品やインスタント食品をできるだけ避ける
    市販の加工食品やレトルト食品は塩分が高いことが多いため、購入前に成分表示を確認しましょう。
  • 調味料の使い方を見直す
    一度に大量の醤油やソースをかけるのではなく、少量ずつ分けたり、だしやスパイス、ハーブなどで風味を出す工夫をすることで塩分を減らしやすくなります。
  • 味覚を慣れさせる
    急に塩分を大幅にカットすると味気なく感じる場合があるため、少しずつ減らして慣れていく方法が有効です。

研究事例:塩分制限と血圧への影響

2019年にThe Lancetで公表された多国籍コホート研究(約12万人を対象)では、塩分摂取量が多い人ほど、血圧が高めになりやすい傾向が確認されました(Mente A, et al., 2019, The Lancet, DOI:10.1016/S0140-6736(18)32481-9)。日本を含むアジア圏は醤油や味噌などの発酵食品があるため、一概に欧米と同じ結果にはならない部分もあるものの、全体として「摂りすぎはリスクを高める」という傾向は一致しています。

3. アルコール摂取の管理

アルコール(特にビールや日本酒など量が多くなりがちなもの)の摂取過多は、血圧を上昇させる要因になります。適量にとどめるか、もしくは飲まなくても問題ないのであれば、極力制限するのが理想です。

  • 男性は1日あたり純アルコール量20~30g程度までが目安
  • 女性は1日あたり10~20g程度までが目安

ビール大瓶1本(約500mL)で純アルコール量約20gに相当するため、飲みすぎに注意が必要です。特に、すでに血圧が高い方で糖尿病など他の生活習慣病リスクを抱えている場合は、なるべく減らすに越したことはありません。

4. 実践の工夫:食事記録や献立表の作成

実際に塩分や脂質、糖質をどれくらい摂取しているかを把握するためには、簡単な食事日記をつけると便利です。1日の食事や間食、飲み物などを記録するだけでも、塩分や糖分、カロリーの取りすぎに気づきやすくなります。管理栄養士の指導が受けられる場合は、メニュー提案や改善のアドバイスを受けるのも効果的です。


血圧の自己測定と薬物療法:正しい手順と注意点

1. 自宅での血圧測定が重要な理由

高血圧は診察室で測る値だけではなく、家庭内での血圧(家庭血圧)や24時間の血圧変動を把握することが非常に大切とされています。自宅での定期的な血圧測定は、治療方針の評価や血圧変動の早期発見に役立ちます。

  • 家でのリラックス時の値を確認することで「白衣高血圧」や「仮面高血圧」を見分けられる
  • 薬の効果や生活習慣改善の効果を、客観的な数値で把握できる
  • 急な血圧上昇に伴う症状を早期発見する手がかりになる

正しい測定手順

  1. 測定前に5~10分程度、静かな部屋で安静にする
    カフェイン飲料や喫煙、運動後すぐなどは避ける。
  2. 椅子に深く腰掛け、背もたれを使い、脚を組まない
    腕は心臓の高さに保つ。
  3. 腕帯を正しく巻き、指示通りに開始
    測定中は動かず、話さず、リラックスして待つ。
  4. 朝と晩の2回以上、可能であれば毎日同じ時間に測定
    朝は起床後1時間以内、食事や服薬前が望ましい。

2. 血圧が180/120mmHg以上になったら要注意

もし測定値が180/120mmHg以上であり、さらに以下のような症状を伴う場合は速やかに受診が必要です。

  • 胸の痛み
  • 呼吸困難
  • しびれや脱力、言語障害
  • 視野が急にぼやける
  • 激しい頭痛

こうした症状は、脳出血や心筋梗塞、急性肺水腫などの重篤な合併症が発生している可能性があります。疑わしい場合は、迷わず救急外来などを受診しましょう。

3. 薬物療法の基本:医師の指示を守る

生活習慣の改善だけでは目標血圧に達しない場合、多くの患者さんは医師の判断により降圧薬を使用します。よく使われる代表的な降圧薬には以下のような種類があります。

  • カルシウム拮抗薬
    血管を拡張させ、心拍数を抑え、血圧を下げる。高齢者にも比較的使いやすく、血圧変動を安定化させる効果も期待される。
  • ACE阻害薬
    アンジオテンシン変換酵素を阻害して、血管を広げる作用がある。糖尿病性腎症など合併症を持つ場合によく選ばれる。
  • ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
    血管収縮を引き起こすホルモンの働きをブロックし、血圧を下げる。咳などの副作用がACE阻害薬より少ないと言われる。
  • 利尿薬
    体内の余分な水分やナトリウムを排出し、血圧を下げる。心不全合併例などによく使われる。
  • β遮断薬
    心拍数を抑え、心臓の負担を減らす。狭心症や心筋梗塞既往など、心疾患を伴う人にしばしば処方される。

薬を正しく服用することは極めて重要で、自己判断による中断や減量、別の薬への切り替えは危険です。もし副作用や体調不良を感じた場合は、必ず医師の指導を仰ぎましょう。

4. 血圧変動の管理:1日の中のアップダウンを抑える

血圧は1日の中でも常に変動しています。朝方に急激に上がる「モーニングサージ」や、深夜から早朝にかけて血圧が下がりすぎる「夜間低血圧」など、個々人でパターンが異なります。したがって、できる限り定期的な測定を行い、急激な血圧変動が起きていないかを確認することが大切です。

  • 不規則な睡眠や夜勤労働などがある場合、血圧のコントロールが乱れやすい
  • 寝る前に深酒をすると、夜間の血圧変動が大きくなる恐れがある

関連研究

2019年に発表された論文(Blood Pressure Variability and Therapeutic Implications in Hypertension and Cardiovascular Diseases, PMID:31623162)では、高血圧治療において血圧変動幅をなるべく小さくすることが、脳心血管イベントリスクの低減につながる可能性があると報告されています。日本人を含む多国籍データの解析から、特に早朝と夜間の血圧管理が重要であるとの示唆が得られました。カルシウム拮抗薬など、一部の薬剤は血圧変動の幅を抑える効果が期待されることから、医師の判断で投与方法や時間帯が工夫される場合があります。


高血圧と合併症リスク:見逃せない症状に注意

1. 脳血管障害や心筋梗塞のリスク

血圧が高い状態が続くと、血管の内壁に大きな圧力がかかり、動脈硬化が進行しやすくなります。結果として脳出血や脳梗塞、心筋梗塞など命に関わる疾患を発症する可能性が高まります。特に、以下の症状が見られる場合は早急な対応が必要とされます。

  • 一時的に片方の手足や顔面が動かしにくい、力が入らない
  • うまく言葉が出てこない、ろれつが回らない
  • 胸部に強い痛みや圧迫感がある

こうした前兆がある場合には、ためらわずに医療機関を受診しましょう。

2. 腎機能低下と高血圧

腎臓は血液をろ過して老廃物を排出する役割がありますが、高血圧が続くと腎臓の糸球体に過度な圧力がかかり、慢性腎臓病へと進行する恐れがあります。さらに腎機能が低下すると、ナトリウムや水分の排泄がうまくいかず、血圧が一層上がりやすくなる悪循環に陥ります。

  • 血清クレアチニン値や推算糸球体濾過量(eGFR)を定期的にチェック
  • むくみや夜間頻尿が増えた場合は要注意

腎機能が低下している場合は、利尿薬の使い方や食事の塩分量をさらに厳格に管理することがあります。

3. 眼底検査も定期的に

高血圧の影響は細い血管にも及び、網膜症を発症するケースがあります。眼底検査によって血管の状態を直接観察でき、動脈硬化の進行度をある程度把握できます。高血圧と診断された場合、眼科で定期的に検査を受けることが推奨されています。


日常生活の具体的なアドバイス

1. 食事の工夫

  • 塩分控えめを意識し、素材の味を活かす調理法を試す
    だしやハーブ、香辛料をうまく使うと、塩分を減らしても満足度が下がりにくい。
  • 外食時には「薄味でお願いします」と一言添える
    最近は塩分に配慮したメニューを用意している飲食店も増えてきています。
  • 血圧を下げる作用が示唆される食品
    大豆製品や魚介類、海藻類、野菜や果物に含まれるカリウムなどが注目されますが、あくまで総合的なバランスが肝要です。

2. 生活リズムの安定

  • 十分な睡眠
    1日6~8時間程度の安定した睡眠を確保することが望ましいとされています。
  • 夜間のカフェインやアルコールを控える
    就眠前の摂取は睡眠の質を下げ、翌朝の血圧に影響することがあるため注意しましょう。
  • 定期的な休憩とリラクゼーション
    仕事中でも1~2時間ごとに軽く立ち上がったりストレッチをすることで、血行改善やストレス緩和につながります。

3. 家族や周囲のサポート

高血圧患者さん自身が自分の健康を管理できるように環境を整備することが大切ですが、家族や周囲の支えも重要です。

  • 食事は家族全員で塩分控えめを実践
    患者さんだけが我慢しているとストレスが高くなります。周囲も同じ食事法を心がけると良いでしょう。
  • 定期的に声をかけ、体調の変化を確認
    高血圧患者さんの中には自覚症状が少ない方もいます。普段と違う様子を家族が早めに気づいて受診を促すことも大事です。
  • 運動や健康イベントに一緒に参加
    ウォーキングや体操などを一緒に行うと、モチベーションが続きやすくなります。

研究・文献の追加情報:近年のエビデンス

ここでは、近年(おおむね過去4年以内)に公表された、国内外の信頼度の高い研究・ガイドラインのエッセンスをいくつか紹介しながら、上記内容の補足をします。いずれも高血圧管理に関連した研究であり、日本国内での臨床状況にも比較的当てはまりやすいと考えられています。

  • 2021年発表:日本人高齢者を対象とした生活習慣改善の検討(Journal of the American Geriatrics Society)
    数千名の高齢者を対象にしたコホート研究で、ウォーキングなどの軽度~中度運動を週150分以上継続したグループは、血圧の平均値が有意に低下し、心血管イベントリスクも減少傾向を示した。
  • 2022年発表:塩分制限とカリウム摂取量に関する研究(Hypertension誌)
    日本を含むアジア地域での大規模データ解析にて、野菜・果物を多く取り入れた食事が血圧コントロールと関連していることが示唆された。特にカリウム摂取量が高いグループは、血圧の変動が安定しやすい。
  • 2023年更新:日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン
    治療目標値の明確化とともに、生活習慣への介入の重要性が再度強調された。特に塩分摂取量の制限と運動の習慣化について、継続支援が必要と示されている。

これらの研究やガイドラインは、日本人特有の食生活や遺伝的要因も考慮されており、国内の一般的な臨床現場でも広く参照されています。海外の研究結果とは若干異なる部分もありますが、全般的に「塩分制限」「適度な運動」「ストレス管理」が鍵になるという点では共通しています。


高血圧患者さんへの推奨事項(参考)

ここまで述べてきた内容を踏まえ、日々の生活で意識すべきポイントをまとめます。あくまで一般的な目安であり、個人差がありますので最終的には主治医の指示に従ってください。

  1. 塩分は1日6g未満を目標
    だしや香辛料を活かして味付けを工夫し、徐々に慣らしていきましょう。
  2. 野菜や果物、魚、大豆製品を積極的に
    飽和脂肪酸を多く含む加工肉やファストフードは控えめに。
  3. 週150分以上の有酸素運動を目指す
    ウォーキングから始めてもOK。筋力トレーニングも週2回程度取り入れると効果的。
  4. 禁煙と適度な飲酒制限
    喫煙は血圧と動脈硬化を悪化させ、心血管病リスクを増大させます。アルコールは可能な範囲で減らしましょう。
  5. ストレスを溜め込みすぎない
    睡眠時間をしっかり確保し、仕事や家庭環境を必要に応じて調整することも検討してください。
  6. 家での血圧測定を習慣化
    週に数回、朝晩測定し数値を記録。変化を見逃さないようにする。
  7. 薬は医師の指示通りに継続
    副作用が出たら必ず相談し、自己判断で中止や変更はしない。

結論と提言

高血圧症は、心臓や血管、脳、腎臓など全身に大きな影響を及ぼし得る疾患です。一見、自覚症状が少ないため軽視されがちですが、合併症が起きてからでは取り返しがつかないこともあります。したがって、日常的に血圧をチェックし、生活習慣の改善を根気強く行うことが予防と進行抑制の両面で極めて大切です。以下に要点を再掲します。

  • 生活習慣の見直しが第一歩
    食事(塩分制限、栄養バランス)、適度な運動、禁煙、適量飲酒、ストレス管理、体重管理が重要です。
  • 自宅での血圧測定を継続
    変動のパターンや治療効果を正しく把握するため、朝晩の測定を意識しましょう。
  • 医師の指示を忠実に守る
    降圧薬の服用を含め、診察予約や検査日程など、定期的なフォローアップが必要です。
  • 周囲のサポートも欠かせない
    一緒に食事や運動の工夫をしたり、メンタル面をフォローすることで、長期的な管理が継続しやすくなります。

高血圧管理は、特効薬や一朝一夕の取り組みだけで解決できるものではありません。しかし、正しい知識を身につけ、日々の積み重ねを大切にすることで、将来的な重篤合併症のリスクを大幅に下げることが期待できます。


参考文献

  • 10 ways to control high blood pressure without medication
    Mayo Clinic アクセス日: 14/02/2022
  • Living with high blood pressure
    CBHS Health Fund アクセス日: 14/02/2022
  • How to measure your blood pressure at home
    Blood Pressure UK アクセス日: 14/02/2022
  • High blood pressure and diet
    MedlinePlus アクセス日: 14/02/2022
  • High Blood Pressure: Healthy Eating Guide
    HealthHub アクセス日: 14/02/2022
  • High Blood Pressure: When to Seek Emergency Care
    Cleveland Clinic アクセス日: 14/02/2022
  • High blood pressure (hypertension)
    Mayo Clinic アクセス日: 14/02/2022
  • Hướng dẫn Chẩn đoán và điều trị tăng huyết áp
    Bộ Y Tế アクセス日: 17/02/2022
  • Blood Pressure Variability and Therapeutic Implications in Hypertension and Cardiovascular Diseases
    National Center for Biotechnology Information アクセス日: 17/02/2022

追加参考例(近年研究)

  • Mente A, et al. (2019). Association of urinary sodium and potassium excretion with blood pressure. The Lancet, 393(10167), 496–506.
    DOI: 10.1016/S0140-6736(18)32481-932481-9)
    (塩分と血圧上昇の関連を示唆する多国籍コホート研究)
  • 日本高血圧学会. (2023). 高血圧治療ガイドライン2023.
    (生活習慣改善の推奨や目標血圧値の明確化が盛り込まれている)

最後に:医療従事者への相談を忘れずに

本記事で取り上げた高血圧患者さんへのケアや生活習慣改善のポイントは、いずれも多くの研究で効果が示唆されている方法ですが、個々人の体質や合併症の有無、生活環境によって最適解は異なります。とくに降圧薬の選択や量の調整、他の疾患を併発しているケースでは、専門の医師(内科、循環器内科など)と相談しながら慎重に進める必要があります。
したがって、本記事はあくまでも参考情報であり、正確な診断や治療を提供するものではありません。高血圧に関して疑問や不安がある場合は、ぜひ主治医や専門の医療従事者に相談してください。適切な治療と生活習慣の改善を両立させることで、将来的な大きなリスクを回避し、健康な生活を続けることが可能となるでしょう。


※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、医療行為の指示や助言を行うものではありません。個別の病状や治療方針につきましては、必ず担当の医師や医療従事者とご相談ください。

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