鼻血の止め方の完全ガイド:正しい応急手当から再発予防、病院へ行くべき危険な兆候まで徹底解説
耳鼻咽喉科疾患

鼻血の止め方の完全ガイド:正しい応急手当から再発予防、病院へ行くべき危険な兆候まで徹底解説

鼻血(医学用語では鼻出血)は、多くの人が生涯で一度は経験する非常に一般的な症状です。あるデータによれば、世界人口の約60%が少なくとも一度は鼻血を経験するとされていますが、そのうち専門的な医療介入を必要とするのは6%から10%程度と少数です1。特に10歳未満の子供と思春期以降、そして50歳以上の高齢者で発生率が高くなる傾向があります24。突然の出血に慌ててしまう方も少なくありませんが、正しい知識を持っていれば、ほとんどのケースは自宅で安全かつ効果的に対処することが可能です。本記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、最新の科学的根拠と日米の主要な医学的ガイドラインに基づき、鼻血の正しい止め方、やってはいけない間違い、根本的な原因、そして効果的な再発予防策まで、包括的かつ詳細に解説します。この記事を読むことで、あなた自身やあなたの大切な家族が鼻血に見舞われた際に、冷静かつ的確に対応できるようになることを目指します。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下に示すリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性が含まれています。

  • 米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNS): この記事における「鼻翼を継続的に圧迫する」「抗凝固薬を自己判断で中止しない」などの主要な応急手当および管理に関する指針は、同学会が2020年に発表した鼻出血に関する臨床診療ガイドライン(CPG)に基づいています1011
  • 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会: 日本国内の状況、特に子供の鼻血の一般的な原因や対処法に関する解説は、同学会が提供する公式情報と推奨事項を参考にしています915
  • 各種医学論文およびシステマティック・レビュー: 高血圧と鼻血の関連性3637、アレルギー性鼻炎が鼻血に与える影響31など、特定のテーマに関する詳細な分析は、査読済みの医学雑誌に掲載された研究論文やシステマティック・レビューの知見を取り入れています。

要点まとめ

  • 正しい姿勢は「座って、うつむく」:血液が喉に流れるのを防ぐため、座って少し前かがみになるのが鉄則です。絶対に頭を後ろに反らしてはいけません67
  • 圧迫する場所は「小鼻」:鼻の硬い骨ではなく、柔らかい部分(鼻翼)を親指と人差し指で強くつまみます。これが最も出血しやすいキーゼルバッハ部位を直接圧迫する唯一の方法です10
  • 圧迫時間は「10分以上、連続して」:最低でも10分間は、途中で手を離さずに圧迫し続けることが成功の鍵です。頻繁に確認すると血餅の形成が妨げられます22
  • ティッシュの詰め込みは非推奨:ティッシュなどを鼻に詰めると、取り出す際に粘膜を傷つけ、再出血の原因となるため避けるべきです19
  • 予防の基本は「保湿」:鼻粘膜の乾燥が再発の最大の原因です。加湿器の使用やワセリンの塗布が非常に効果的です57
  • 病院へ行くべきサイン:20分以上圧迫しても止まらない、出血量が非常に多い、めまいがする、頭部の強い外傷後などの場合は、直ちに医療機関を受診してください615

鼻血の医学的背景:なぜ、どこから出血するのか?

効果的な止血法を理解するためには、まず鼻の構造を知ることが不可欠です。鼻血の約80-90%は、鼻の入り口から1〜2cmほど入った左右の鼻を隔てる壁(鼻中隔)の粘膜にある「キーゼルバッハ部位(Kiesselbach’s plexus)」という場所から発生します3。ここは細い血管が網の目のように密集している上に粘膜が薄いため、非常にデリケートで傷つきやすいエリアです。わずかな刺激、例えば鼻をいじる、強く鼻をかむ、あるいは空気が乾燥するだけでも、ここの血管は簡単に破れて出血します。この解剖学的な特徴が、なぜ特定の止血法が有効であるかを科学的に説明しています。小鼻(鼻の柔らかい部分)を圧迫する方法が効果的なのは、このキーゼルバッハ部位を外側から直接圧迫し、血流を物理的に止めることができるからです7

鼻血は出血部位によって、主に2つのタイプに分類されます。

  • 前鼻出血 (Anterior Epistaxis): 全体の80-90%を占め、キーゼルバッハ部位から出血します。通常、出血量は少なく、家庭での適切な応急手当で管理可能です3
  • 後鼻出血 (Posterior Epistaxis): 全体の10-20%を占め、鼻の奥深くにある太い動脈から出血します。このタイプは出血量が多く、家庭での止血が困難なため、直ちに医療機関での処置が必要です。高齢者や高血圧の患者さんで比較的多く見られます4

【完全手順】科学的根拠に基づく鼻血の正しい止め方(鼻翼圧迫法)

ほとんどの医療機関や専門家が推奨する、最も確実で安全な止血法は「鼻翼圧迫法」です。以下の手順を正確に守ることが重要です。

ステップ1:落ち着いて座る

突然の出血に驚くのは自然なことですが、パニックになると血圧が上昇し、逆に出血を悪化させてしまう可能性があります5。まずは深呼吸をして、自分自身や周りの人(特に子供の場合)を落ち着かせることが第一歩です。椅子などに腰掛けましょう13

ステップ2:正しい姿勢をとる – 前かがみで下を向く

これは最も重要でありながら、最も間違えられやすいステップです。椅子に座った状態で、頭を少し前に傾け、顎を引いてうつむき加減の姿勢をとります6。この姿勢の目的は、血液が喉の奥に流れ込むのを防ぐためです。血液を飲み込んでしまうと、胃が刺激されて吐き気や嘔吐を引き起こす可能性があります。さらに危険なのは、血液が気道に入り込み、咳き込んだり窒息したりするリスクがあることです7。口の中に流れてきた血液は、飲み込まずに静かに吐き出してください。

ステップ3:正しい位置を圧迫する – 小鼻(鼻の柔らかい部分)

親指と人差し指を使って、鼻の硬い骨の下にある柔らかい部分(小鼻、鼻翼)全体を、両側から強くつまみます6。これが、ほとんどの鼻血の原因であるキーゼルバッハ部位に直接圧力をかける唯一の方法です。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNS)の臨床診療ガイドラインでも、この圧迫法が中心的な推奨事項(Key Action Statement 2)として挙げられています10

ステップ4:十分な時間、圧迫し続ける

圧迫の「時間」と「継続性」が、止血の成否を分けます。

  • 時間: 多くの専門機関が5分から20分程度の圧迫を推奨しています716。実用的な目安として、まずは時計を見ながら最低10分間、圧迫を続けてください。10分経ってもまだ血が滲むようであれば、さらに10分間圧迫を続けます。
  • 継続性: これが最も大切な原則です。圧迫している間は、血が止まったかどうかを確認するために途中で指を離さないでください6。圧迫を中断すると、せっかくでき始めた血の塊(血餅)が剥がれてしまい、凝固プロセスが振り出しに戻ってしまいます。結果として、止血までの時間が長引くことになります22

絶対にしてはいけない!鼻血を悪化させる3つの間違い

昔からの言い伝えや誤った習慣が、かえって状況を悪化させることがあります。以下の行動は科学的根拠がなく、危険を伴うため絶対に行わないでください。

  1. 間違い1:上を向く、仰向けに寝るこれは最も一般的で危険な間違いです。上を向いても出血は止まりません。血液の流れが見えなくなるだけで、実際には喉の奥へと流れ込んでいるのです。これにより、吐き気、嘔吐、さらには血液が気道に入る窒息のリスクが生じます7
  2. 間違い2:首の後ろをトントンと叩く「首の後ろを叩くと血管が収縮する」という話は、医学的根拠の全くない迷信です。この行為に止血効果は一切ありません12
  3. 間違い3:鼻の硬い骨(鼻根部)をつまむ出血部位であるキーゼルバッハ部位は、もっと鼻先に近い柔らかい部分にあります。硬い骨の部分をいくら強く押さえても、出血点には圧力がかからず、全くの無意味です7

補助的な処置:冷やすこととティッシュの役割

  • 冷やすことについて: 額や鼻の付け根を冷たいタオルで冷やすと血管が収縮し、止血の助けになるという意見もあります12。しかし、その効果は限定的であるというのが専門家の間での一般的な見解です19。一部の救急医は、体を冷やすことが血液凝固能力をわずかに低下させる可能性も指摘しています16。したがって、最優先すべきはあくまでも正しい鼻翼圧迫であり、冷やすことは気分を落ち着かせるための補助的な手段と考えるのが妥当です。
  • ティッシュや綿を詰めることについて: 現代の医療ガイドラインのほとんどは、鼻に物を詰めることを推奨していません7。ティッシュなどを詰めると、デリケートな鼻粘膜をさらに傷つけてしまう恐れがあります。さらに重要なのは、乾いたティッシュなどを引き抜く際に、固まりかけた血餅を一緒に剥がしてしまい、再出血を引き起こすリスクが非常に高いことです22。鼻から垂れてくる血液は、詰め物をするのではなく、外側から優しく拭き取るだけに留めましょう。
表1:鼻血の応急手当 – 正しい方法 vs 間違った方法
行動 ✅ 正しい方法(推奨) ❌ 間違った方法(非推奨) 科学的根拠
姿勢 座って、少し前にうつむく 仰向けに寝る、または上を向く 血液が喉に流れるのを防ぎ、嘔吐や誤嚥のリスクを回避するため7
圧迫部位 小鼻(鼻の柔らかい部分)を強くつまむ 鼻の硬い骨の部分を押さえる、首の後ろを叩く 出血点のキーゼルバッハ部位を直接圧迫して止血するため。他の部位は無効7
圧迫時間 10分~15分間、連続して圧迫する 数分で手を離して確認する 安定した血餅形成には時間が必要。中断すると止血プロセスがリセットされる6
詰め物 鼻には何も詰めず、外に垂れる血を拭う ティッシュや綿を固く詰める 粘膜を傷つけず、血餅が剥がれることによる再出血を防ぐため19

鼻血の根本原因:なぜ繰り返し出血するのか?

鼻血が頻繁に起こる場合、その背景には様々な原因が隠れている可能性があります。原因は大きく「局所的な原因」と「全身的な原因」に分けられます。

3.1. 局所的な原因(鼻そのものの問題)

  • 鼻粘膜の乾燥: 特に冬場の乾燥した空気や、暖房・冷房の効いた室内では鼻の中が乾燥しがちです。乾燥した粘膜は脆くなり、ひび割れて出血しやすくなります。これが最も一般的な原因の一つです7
  • 物理的な刺激(鼻いじり): 鼻をいじる癖は、特に子供の鼻血の主因です7。指の爪でキーゼルバッハ部位を傷つけてしまいます。強く鼻をかむ、くしゃみを連発する、スポーツなどで鼻をぶつけるといった外傷も原因となります。
  • アレルギー性鼻炎・花粉症: 日本では国民病ともいえるアレルギー性鼻炎や花粉症29は、鼻血と密接な関係があります。炎症によって鼻の粘膜が過敏になり、血管がもろくなることに加え31、かゆみや鼻水のために鼻をこすったり、頻繁に鼻をかんだりすることが物理的な刺激となり、出血を引き起こします。アレルギーの治療を適切に行うことが、結果として鼻血の予防にも繋がります。

3.2. 全身的な原因(体全体の病気や薬の影響)

  • 高血圧: 高血圧自体が直接的に鼻血を引き起こすわけではありません。しかし、慢性的な高血圧は全身の血管にダメージを与え、動脈硬化を進行させます。これにより鼻の血管も弾力性を失い、もろくなって破れやすくなります34。システマティック・レビューによると、高血圧患者はそうでない人と比較して鼻血を起こす危険性が高く、出血もより重度になる傾向が示されています36。頻繁に鼻血を繰り返し、かつ高血圧と診断されている方は、血圧のコントロールが重要です。
  • 血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬): 心臓病や脳梗塞の治療・予防のために、アスピリン、クロピドグレル、ワルファリン、DOACs(直接経口抗凝固薬)などを服用している方は、鼻血が出やすく、また一度出ると止まりにくい傾向があります4。ここで最も重要なことは、鼻血が出たからといって自己判断で絶対に薬を中断しないことです39。薬を止めると、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる血栓症のリスクが急激に高まります。まずは応急手当を試し、それでも止まらない場合は速やかにかかりつけ医や医療機関に相談してください。
  • その他の病気: 頻繁な鼻血は、血液の病気(血友病などの凝固異常、血小板減少症、白血病)、重度の肝臓病、鼻の中の腫瘍(良性・悪性)といった、より深刻な病気のサインである可能性も稀にあります5。特に、いつも同じ側の鼻からだけ出血する場合や、原因不明のあざ、歯茎からの出血などを伴う場合は、耳鼻咽喉科での精密検査が必要です7

止血後のケアと効果的な再発予防戦略

4.1. 止血後24〜48時間の過ごし方

血が止まった後も、鼻の粘膜とできたばかりの血餅は非常にデリケートな状態です。再出血を防ぐため、以下の点に注意してください。

  • 鼻への刺激を避ける: 強く鼻をかむ、鼻をいじる、鼻をすするなどの行為は厳禁です7
  • 激しい運動や長風呂は控える: 血圧を上げるような激しい運動、重い物を持ち上げること、熱いお風呂に長く浸かることなどは避けましょう。シャワーはぬるま湯で短時間なら問題ありません3946
  • アルコールを避ける: アルコールには血管を拡張させ、血圧を上げる作用があるため、止血当日の飲酒は控えましょう48

4.2. 再発を防ぐための最も重要な戦略:保湿

鼻血の再発予防で最も重要かつ効果的なのは、鼻の粘膜を常に潤った状態に保つことです5。乾燥を防ぐための具体的な方法をいくつか紹介します。

  • 加湿器の使用: 特に空気が乾燥する冬場や、エアコンを使用する季節には、寝室に加湿器を置き、湿度を40~60%に保つことをお勧めします。これにより、睡眠中の鼻の乾燥を防ぐことができます7
  • ワセリン(白色ワセリン)の塗布: 安価で手に入りやすく、非常に効果的な方法です。清潔な綿棒に少量のワセリンを取り、鼻の入り口、特に左右を隔てる壁(鼻中隔)に薄く塗ります。1日1~2回、特に就寝前に行うと良いでしょう5
  • 生理食塩水のスプレーやジェル: 鼻の中を洗浄し、潤いを与える市販の製品も有効です。特にジェルタイプは粘膜に留まる時間が長いため、保湿効果が高いとされています39
  • 就寝時のマスク着用: シンプルながら効果的な方法です。マスク(特にガーゼマスク)をして寝ることで、自分の呼気に含まれる湿気が鼻の周りに留まり、吸い込む空気を自然に加湿してくれます5

【対象者別】子供と高齢者の鼻血への特別な注意点

5.1. 子供の鼻血

子供の鼻血は非常にありふれた現象で、そのほとんどは心配のないものです。主な原因は鼻いじり、軽い怪我、アレルギー性鼻炎などです12。対処法は大人と基本的に同じですが、いくつかポイントがあります。

  • 安心させることが最優先: 親が冷静に対応し、優しく抱きしめて安心させることが、子供の恐怖心を取り除き、スムーズな処置に繋がります5
  • 自然にうつむかせる工夫: 絵本やおもちゃ、スマートフォンなどを見せると、子供は自然と下を向く姿勢になり、正しい体勢を保ちやすくなります14
  • 注意すべきサイン: ほとんどは良性ですが、2歳未満の乳児の鼻血や、頻繁な鼻血とともに皮膚にあざができやすい、歯茎から出血しやすいなどの症状がある場合は、血液の病気の可能性も考えられるため、小児科や耳鼻咽喉科を受診してください15

5.2. 高齢者および抗凝固薬を服用中の方の鼻血

このグループの鼻血は、より慎重な対応が求められます。原因は高血圧や動脈硬化、そして前述の抗凝固薬・抗血小板薬の影響が大きいです5。高齢者の血管はもろく、出血も鼻の奥からの「後鼻出血」である可能性が高いため、重症化しやすい傾向にあります7

  • 薬の自己中断は絶対にしない: 最も重要なのは、自己判断で服用中の薬を止めないことです39。まずは応急手当を試し、止血しない場合は速やかに医療機関を受診し、どの薬をどのくらい服用しているかを正確に医師に伝えてください。
  • 専門的な管理: 医師は出血のリスクと血栓症のリスクを天秤にかけ、治療方針を決定します。DOACsのような新しい薬を服用している場合の管理は特に専門的な判断を要します5354

病院へ行くべき危険なサインと専門的な治療法

6.1. 医療機関を受診すべき「警告サイン」

以下のような状況では、自宅での対処の限界を超えている可能性があり、速やかな医療機関の受診が必要です。

  • 救急外来へ直行すべき場合:
    • 正しい方法で20分間圧迫し続けても、出血が全く止まらない6
    • 出血が滝のように大量である、または喉に大量に流れ込む9
    • めまい、ふらつき、顔面蒼白、動悸など、失血による症状がある15
    • 頭部や顔面への強い打撲の後に鼻血が出た場合15
    • 血液をサラサラにする薬を服用中で、出血が止まらない場合。
  • 耳鼻咽喉科の受診を検討すべき場合:
    • 週に何度もなど、鼻血を頻繁に繰り返す6
    • 出血がいつも同じ片方の鼻からだけ起こる(腫瘍などの可能性がある)7
    • 長引く鼻づまりや顔面の痛み、嗅覚の低下などを伴う場合15

6.2. 病院で行われる専門的な治療法

医療機関では、より高度な方法で止血を行います。

  • 焼灼術(じょうしゃくじゅつ): 出血点が特定できた場合、硝酸銀という化学薬品や電気メスを用いて出血している血管を焼き、物理的に塞ぎます。局所麻酔下で外来にて行われることが多い手技です26
  • 鼻パッキング(鼻腔内ガーゼ挿入): 出血点が不明確な場合や、出血が広範囲にわたる場合、ガーゼや特殊なスポンジを鼻の中に詰めて内側から圧迫します。数日間留置し、後日抜き取るタイプと、自然に溶けるタイプがあります610
  • 高度な治療: 上記の方法で止血できない重症の後鼻出血の場合、内視鏡手術で出血源となっている動脈をクリップで留める「動脈結紮術」や、カテーテルを用いて血管の中から出血点を塞ぐ「血管塞栓術」といった高度な治療が行われます5510

よくある質問

Q1: 子供の鼻血が頻繁です。何か大きな病気が隠れているのでしょうか?

A1: 子供の鼻血は非常に一般的で、そのほとんどは鼻いじりやアレルギー性鼻炎、空気の乾燥といった良性の原因によるものです12。しかし、非常に稀ですが、出血が止まりにくい、皮膚にあざができやすい、歯茎からも出血するなどの症状を伴う場合は、血液疾患の可能性も否定できません15。心配な場合は、一度小児科または耳鼻咽喉科で相談することをお勧めします。

Q2: 高血圧の薬を飲んでいますが、鼻血と関係ありますか?

A2: 高血圧そのものが直接鼻血を起こすわけではありませんが、長期間の高血圧は血管をもろくし、出血しやすく、また止まりにくくする一因となります34。また、高血圧の治療のために血液をサラサラにする薬(抗血小板薬など)を併用している場合は、その影響も大きいです。鼻血を繰り返す場合は、主治医に相談し、血圧が適切にコントロールされているかを確認することが重要です。

Q3: 鼻血を止めた後、黒っぽい鼻水や黒い便が出ました。大丈夫でしょうか?

A3: はい、それは正常な経過であることが多いです。黒っぽい鼻水は、鼻の中に残っていた古い血が固まったものです。また、止血中に少量の血液を飲み込んでしまった場合、血液が胃酸で酸化されることで便が黒くなることがあります(黒色便)14。これらは通常、1~2日で自然に治まります。ただし、黒い便が続く場合や、腹痛など他の症状がある場合は、消化管からの出血など別の原因も考えられるため、医師に相談してください。

Q4: 鼻血の予防にワセリンが良いと聞きましたが、どのように使えば良いですか?

A4: ワセリンは鼻粘膜の保湿と保護に非常に効果的です。清潔な綿棒の先に米粒程度のワセリンを取り、鼻の入り口の内側、特に左右の鼻を隔てている壁(鼻中隔)に優しく薄く塗ってください5。塗りすぎると息苦しさを感じることがあるので、少量で十分です。1日に1~2回、特に空気が乾燥する時期の就寝前に行うと、再発予防に繋がります。

結論

鼻血は多くの人にとって身近なトラブルですが、正しい知識を持つことで、そのほとんどは慌てずに対処できます。重要なのは、「座って、うつむき、小鼻を、10分以上連続して圧迫する」という黄金律を思い出すことです。そして、やってはいけない間違い、特に「上を向く」という危険な行為を避けることが、安全な対処の鍵となります。頻繁に繰り返す鼻血や、止まりにくい鼻血の裏には、乾燥やアレルギーから、高血圧や特定の薬剤の影響、稀にはより深刻な病気が隠れていることもあります。本記事で解説した予防策を日々の生活に取り入れ、それでも改善しない場合や、「警告サイン」が見られる場合には、ためらわずに専門医の診察を受けることが、あなた自身の健康を守るために最も大切な行動です。

免責事項本記事は情報提供を目的としたものであり、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康上の懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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