40歳の正常な心拍数とは?│健康を保つための基準と科学的根拠の徹底解説
心血管疾患

40歳の正常な心拍数とは?│健康を保つための基準と科学的根拠の徹底解説

40代に足を踏み入れると、多くの人が身体の顕著な変化を意識し始め、新たな健康上の課題に直面します。これは重要な転換期であり、今日の生活習慣に関する決断が、今後数十年の健康を左右することになります1。仕事や家庭の責任に追われる中で見過ごされがちですが、非常に深い意味を持つ健康指標が心拍数です。特に、日本の研究では、長時間労働と40歳以降に急増する脳卒中の危険性との間に憂慮すべき関連性が指摘されており、この年代における心血管系の健康状態を監視することの重要性が強調されています2

安静時心拍数(Resting Heart Rate – RHR)、すなわち体が完全にリラックスした状態での1分間あたりの心拍数は、単なる数字ではありません。それは基本的な「生命兆候(バイタルサイン)」と見なされ、心筋の活動効率と自律神経系の平衡状態を反映しています3。安定的で至適範囲内にある安静時心拍数は、心臓が過度な負担なく効率的に機能している健康な心臓の証です。

では、「40歳における正常な心拍数とは何か?」という問いに対する答えは、一つの決まった数字で示せるほど単純ではありません。「正常」とは、体格、性別、精神的緊張の度合い、そして特に適用される医学的基準など、多くの要因に依存する一つの範囲を指します。国際的な指針と、日本人自身のデータに基づいて策定された基準との間には、注目すべき差異が存在します。

本稿では、40歳における心拍数について、最も確固たる科学的根拠に基づいた包括的かつ詳細な分析を提供します。アメリカ心臓協会(AHA)や欧州心臓病学会(ESC)といった世界の主要な医学機関が示す基準を探求するとともに、日本人間ドック・予防医療学会の指針や、NIPPON DATAのような大規模コホート研究から得られた日本の専門的な推奨事項やデータを深く掘り下げていきます。本稿の目的は、40代の読者の皆様が自身の心拍数を理解し、監視し、管理するために必要な知識を身につけ、より健康な未来のために主体的に心血管系の健康を守れるようになることです。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下の一覧には、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性のみが含まれています。

  • アメリカ心臓協会(AHA): この記事における成人の安静時心拍数の国際的な基準範囲(60~100bpm)や運動時の目標心拍数の計算方法に関する指針は、アメリカ心臓協会が公表した情報に基づいています45
  • 日本人間ドック・予防医療学会: 日本人におけるより厳格な心拍数の基準値(正常範囲:45~85bpm)に関する記述は、日本人間ドック・予防医療学会が大規模なデータ分析に基づいて策定した指針を根拠としています6
  • NIPPON DATA研究: 安静時心拍数が高いことが、高血圧や高い血糖値など、他の心血管危険因子と関連しているという分析は、日本の大規模コホート研究であるNIPPON DATA 80の研究結果に基づいています7
  • 欧州心臓病学会(ESC): 心血管疾患予防のための身体活動に関する推奨事項(週に150~300分の中強度運動など)は、欧州心臓病学会のガイドラインに基づいています8

要点まとめ

  • 日本の基準はより厳格: 国際的な正常値が60~100拍/分であるのに対し、日本人間ドック学会はより予防的な観点から「45~85拍/分」を正常範囲としています。40代の方はこの基準を参考にすることが推奨されます。
  • 安静時心拍数は健康のバロメーター: 安静時心拍数が高い(特に85拍/分以上)ことは、心血管疾患やその他の健康問題の危険性が高まる兆候である可能性が、国内外の研究で示されています。
  • 心拍数は変動する: 運動習慣、精神的緊張、睡眠の質、カフェイン摂取、性別など、多くの要因が心拍数に影響を与えます。特に運動は、心臓を鍛え、安静時心拍数を下げる最も効果的な方法です。
  • 重要なのは「傾向」の監視: 一度の測定値だけでなく、長期的に自身の心拍数が上昇傾向にないかを確認することが、将来の健康危険性を予測する上で非常に重要です。
  • 生活習慣の改善が鍵: 定期的な運動、精神的緊張の管理、十分な睡眠、禁煙、節酒など、健康的な生活習慣を実践することで、安静時心拍数を至適な範囲に管理することが可能です。

「正常」な心拍数の定義:国際基準と日本の視点

自身の心拍数を正しく理解するためには、まず評価に用いられる参照範囲を把握することが不可欠です。しかし、重要な点として、これらの基準は国際的な医療機関と日本の医療機関とで異なる場合があることを認識しておく必要があります。

国際的に広く用いられる基準

世界的に、健康な成人における安静時心拍数(RHR)の参照範囲として広く受け入れられているのは、毎分60~100拍(bpm)です。この基準は、アメリカ心臓協会(AHA)のような主要な権威ある医療機関によって公表され、支持されています4。日本国内外の多くの一般的な医療情報源も、この数値を共通の基準として引用しています3。この定義に基づくと、安静時心拍数が60bpm未満の状態は徐脈(bradycardia)、100bpmを超える状態は頻脈(tachycardia)と呼ばれます3

日本の専門基準 – より深い洞察

しかし、日本人にとっては、国内のデータに基づいて策定された基準を参照することが、より正確で適切な視点をもたらします。日本人間ドック・予防医療学会は、大規模な健康データを分析した結果、より厳格で予防的な意義の高い基準を提唱しています6

  • 異常なし: 45 – 85 bpm
  • 要再検査・生活改善: 40-44 bpm および 86-99 bpm
  • 要精密検査・要治療: 39 bpm 以下 および 100 bpm 以上

この基準は恣意的に選ばれたものではありません。人間ドックを受診した79万人の日本人を対象とした非常に大規模な研究に基づいて構築されています。この集団の安静時心拍数の平均値は64.6±10.2 bpmであり、統計的に算出された参照範囲は44.7 – 84.6 bpmでした。この数値こそが、45~85 bpmを「正常」とする推奨の確固たる科学的根拠となっているのです9

なぜ違いがあるのか、その意味は?

国際基準(60-100 bpm)と日本基準(45-85 bpm)の違いは、単なる数字の問題ではありません。それは、より深い医学哲学を反映しています。国際基準は主に病的な状態の境界線を定義します(例:頻脈は100 bpm以上)。一方、日本の基準は「至適」な範囲を定め、早期に警告を発することを目的としているように見受けられます。

「要再検査」の閾値を100 bpmよりも大幅に低い86 bpmに設定していることは、主体的な予防的取り組みを示しています。このアプローチは、世界の多くの大規模な疫学研究の結果と完全に一致します。これらの研究は、心血管疾患の罹患率および死亡率の危険性が、安静時心拍数が60 bpmを超えると連続的に上昇し始め、80 bpmを超えるとより顕著になることを示しています10。したがって、日本の指針は、明らかな病状が現れるのを待つのではなく、至適な状態から逸脱した兆候が見られた時点ですぐに行動を起こすことを促します。85 bpmという閾値は「健康」と「病気」の境界ではなく、「低い危険性」と「注意を要する危険性」の境界線なのです。

読者の皆様に直感的にご理解いただくため、以下の表で二つの基準体系を比較します。

表1:安静時心拍数の参照範囲の比較(単位:拍/分)
分類 国際的指針 (AHA) 日本の指針 (人間ドック学会)
正常 / 至適 60−100 45−85
警告域 明確な定義なし 86−99 (要再検査/生活改善)
頻脈 (Tachycardia) >100 >100 (要精密検査/要治療)
徐脈 (Bradycardia) <60 <45 (40−44は要再検査, <40は要治療)

日本在住の40歳の方にとって、人間ドック学会の基準を用いることは、自身の心血管系の健康を評価するための、より感度が高く適切な指標となるでしょう。


40歳における心拍数:平均値、性差、そして変化の傾向

参照範囲を理解した上で、40歳という年齢層に特化した平均値を知ることは、自身の状態をより身近な指標と比較する上で役立ちます。

40歳における平均安静時心拍数

多くのデータ源を総合すると、40代における平均安静時心拍数には、男女間でわずかな差が見られます。

  • 40代男性: 平均安静時心拍数は、おおよそ 67~72 bpm の範囲で変動します11
  • 40代女性: 平均安静時心拍数は、やや高い傾向にあり、おおよそ 69~76 bpm の範囲で変動します11

この差は、女性の心臓が比較的小さいことやホルモンの影響など、複数の要因によって説明される可能性があります。これにより、同量の血液を送り出すために、男性に比べて心臓がわずかに速く拍動する必要があるのです3

年齢に伴う変化の傾向

年齢に伴う安静時心拍数の変化の傾向は、やや複雑です。日本の大迫町で行われた長期的なコホート研究では、平均安静時心拍数は年齢とともに徐々に減少する傾向が示されました12。しかし、別のデータでは、30代から40代にかけてわずかに上昇し、その後の年代で減少し始めると示唆するものもあります13。この不一致は、重要な点を強調しています。それは、ある一時点の平均値と比較するだけでなく、自分自身の心拍数の傾向を経時的に追跡することこそが、健康を評価する上で最も価値があるということです。

運動時の目標心拍数 (Target Heart Rate – THR)

安静時心拍数に加え、運動中の心拍数も、効果を最大化し安全を確保するための重要な指標です。目標心拍数ゾーンを決定するためには、まず最大心拍数(Maximum Heart Rate – MHR)を推定する必要があります。AHAをはじめ多くの機関で用いられる最も一般的な計算式は以下の通りです5

$$MHR = 220 – 年齢$$

40歳の方の場合、推定最大心拍数は 220 – 40 = 180 bpm となります3。これはあくまで平均的な推定値であり、個人によって変動する可能性がある点に注意が必要です14

この最大心拍数から、AHAの推奨に基づき、目標心拍数(THR)の各ゾーンを特定できます3

  • 中強度の運動: 最大心拍数の約50~70%。40歳の方では 90~126 bpm に相当します。
  • 高強度の運動: 最大心拍数の約70~85%。40歳の方では 126~153 bpm に相当します。

これらの目標心拍数ゾーン内で運動を行うことは、体に過度な負担をかけることなく、心血管系に十分な刺激を与えて健康上の利益を得るのに役立ちます。

表2:運動時の目標心拍数ゾーン(40歳、推定MHR ≈ 180 bpmの場合)
運動強度 最大心拍数(MHR)に対する割合 目標心拍数ゾーン (bpm) 目的と体感
軽い準備運動 50%–60% 90−108 運動への準備、体を温める。非常に楽に感じる。
軽い脂肪燃焼 60%–70% 108−126 持久力向上、効率的な脂肪燃焼。楽に会話ができる。
中程度の有酸素運動 70%–80% 126−144 心血管機能の改善。呼吸が速くなり、短い文章なら話せる。
高強度の無酸素運動 80%–90% 144−162 最大パフォーマンス閾値の向上。非常にきつく感じ、会話は困難。

心拍数に影響を与える要因

心拍数は一定ではありません。それは、体内外の多くの要因が複雑に相互作用する動的な指標です。心拍数は、身体的健康、精神的健康、そして生活習慣を結びつける「中枢(ハブ)」のようなものと考えることができます。これらの要因を理解することで、私たちは自身の心拍数をより正確に解釈することができます。

身体的フィットネスレベル

これは最も強力な影響を与える要因の一つです。定期的に運動、特に有酸素運動(持久力トレーニング)を行う人々は、一般的に安静時心拍数が低くなります。この現象は「スポーツ心臓」と呼ばれ、安静時心拍数が40 bpm程度まで低くても完全に正常な場合があります4。この背景にあるメカニズムは単純です。定期的なトレーニングによって心筋がより強く、より効率的になるのです。心臓の一拍でより多くの血液を送り出せるようになるため、安静時には体の酸素需要を満たすために心臓が何度も拍動する必要がなくなります5。対照的に、座りがちな生活習慣は、より高い安静時心拍数と関連し、多くの心血管疾患の危険因子となります3

精神的緊張(ストレス)と精神的健康

心と体は密接に結びついています。私たちが精神的緊張や不安、恐怖を感じると、体の「アクセル」である交感神経系が活性化されます。これによりアドレナリンなどのホルモンが放出され、「闘争・逃走反応」に備えて心拍数と血圧が上昇します5。40代の日本人にとって、仕事のプレッシャーや長時間労働は重大な慢性的精神的緊張の原因となり、安静時心拍数の上昇や関連する健康上の危険性に寄与する可能性があります2

生活習慣と環境

日々の習慣は心拍数に直接的な影響を及ぼします。

  • 刺激物: カフェイン、タバコに含まれるニコチン、アルコールはすべて、一時的または慢性的に安静時心拍数を上昇させる可能性があります。
  • 睡眠: 睡眠不足や質の低い睡眠は神経系のバランスを乱し、翌日の安静時心拍数が高くなることがよくあります。
  • 食生活: 脱水状態は、それを補うために心臓の拍動を速めることがあります。また、特定の栄養素も健康な心血管機能と神経機能を維持する上で役割を果たします1

自律神経系

心拍数は自律神経系によって調節されており、これには互いに拮抗する二つの部門があります。

  • 交感神経系: 「アクセル」のように働き、運動時や興奮時、精神的緊張時に心拍数を増加させます。
  • 副交感神経系: 「ブレーキ」のように働き、休息時やリラックス時に心拍数を減少させます15

低い安静時心拍数は、通常、副交感神経系が優位であることを反映しており、これは体がリラックスし回復している状態を示す良い兆候です。交感神経が過剰に活動するような不均衡は、多くの健康問題の基盤となります。

生物学的要因と病状

  • 性別とホルモン: 前述の通り、女性は男性よりも安静時心拍数が高い傾向にあります。特に40歳前後の女性では、閉経周辺期が始まり、ホルモン(エストロゲン)の変動が動悸や息切れといった症状を引き起こし、安静時心拍数に影響を与えることがあります11
  • 潜在的な病状: 異常に高い安静時心拍数は、発熱、感染症、脱水、貧血、または甲状腺機能亢進症などの他の医学的状態の兆候である可能性があります16

臨床的意義:心拍数は未来の健康を予測するツール

安静時心拍数は、現在の健康状態を反映するだけでなく、将来の健康危険性を強力に予測するツールでもあります。多くの科学的証拠がこの重要な役割を裏付けています。

安静時心拍数は独立した予後予測因子

数十年にわたる大規模な疫学研究は、高い安静時心拍数が、心臓病の既往歴がない人々においてさえ、男女を問わず、全死亡率および心血管疾患による死亡率の独立した予測因子であることを一貫して示してきました10。この関連性は連続的であり、危険性は安静時心拍数が60 bpmを超えると上昇し始め、高くなるほどより顕著になります17。これは、コレステロールや血圧といった他の危険因子が管理されていても、高い安静時心拍数自体が独立した警告信号であることを意味します。

日本の大規模コホート研究からの証拠

日本の読者にとっての妥当性を強固にするため、国内の研究データを考察することは極めて重要です。

日本の基盤となるコホート研究の一つであるNIPPON DATA 80は、非常に貴重なデータを提供しています。8,000人以上の参加者を分析した結果、危険因子の「クラスター効果」が示されました。安静時心拍数が最も高い群(第4四分位群、77 bpm超)の参加者は、心拍数が速いだけでなく、最も低い群と比較して、収縮期血圧、空腹時血糖値、および肥満指数(BMI)が統計的に有意に高いことがわかりました7。例えば、男性では、平均収縮期血圧が最も低い心拍数群の135 mmHgから、最も高い群では143 mmHgに上昇していました。

これは、高い安静時心拍数が単独の危険因子ではないことを示唆しています。それはしばしば、より広範な代謝および心血管系の異常症候群の一部です。共通の病態生理学的機序として、交感神経系の過剰活動が考えられます。この状態は心拍数を増加させるだけでなく、血管収縮を引き起こし(血圧を上昇させ)、糖代謝に悪影響を及ぼします。したがって、高い安静時心拍数は単なる結果ではなく、より深刻な全身性の異常を示す容易に認識できる兆候なのです。それは、自動車のダッシュボードの警告灯のように、私たちに「エンジン」全体、つまり健康状態を点検する必要があることを知らせてくれます。日本の他の研究でも、高い安静時心拍数が全死亡リスクの上昇と関連していることが確認されています9

経時的変化の重要性

AHAによる最近の研究から得られた重要な発見は、安静時心拍数の傾向を経時的に追跡することの重要性です。この研究は、参加者を20年以上にわたって追跡し、時間の経過とともに安静時心拍数が徐々に(わずかであれ多くであれ)増加した人々は、安定またはわずかに減少した人々と比較して、心不全を発症したり死亡したりする危険性が著しく高いことを明らかにしました18。注目すべきは、この危険性は、彼らの安静時心拍数が依然として「正常」範囲内(100 bpm未満)にある場合でも存在したことです。

この発見は強力なメッセージを伝えています。一度の測定だけでは全体の物語を語ることはできません。最も重要なのは、自分自身の心拍数の変化の傾向を長年にわたって追跡し、認識することです。上昇傾向にある安静時心拍数は赤信号であり、注意を払い、医師と相談すべき早期警告信号なのです。


実践ガイド:心拍数の測定、解釈、そして管理

心拍数の重要性に関する知識を得た今、次のステップはそれを実践に移すことです。このセクションでは、各自が主体的に心血管の健康を監視し、管理するための詳細なガイドを提供します。

自宅で正確に心拍数を測定する方法

安静時心拍数の自己測定は、単純でありながら非常に有用な技術です。最も正確な結果を得るために、以下の手順に従ってください。

  1. 時期を選ぶ: 最も理想的な時間帯は、朝、目が覚めた直後、ベッドから出る前、コーヒーを飲んだり一日の活動を始めたりする前です5
  2. 脈拍を見つける: 人差し指と中指の指先を使います(親指は自身の脈拍があるため使用しません)。反対側の手首の内側、親指の付け根の下に、二本の指を軽く置きます。ここが橈骨動脈の位置です3
  3. 拍動を数える: 脈拍がはっきりと感じられたら、時計を見ながら30秒間の拍動数を数えます。その後、その数を2倍にして1分間あたりの拍動数(bpm)を算出します5。または、15秒間数えて4倍にしてもよいでしょう19

いつ医師に相談すべきか?

これまでに議論した基準に基づき、以下のいずれかの兆候に気づいた場合は、医師に相談することをお勧めします。

  • 安静時心拍数が、日本人間ドック学会の警告閾値である85 bpmを継続的に超える場合6
  • 安静時心拍数が継続的に100 bpmを超える(頻脈の状態)場合3
  • 特に専門的な訓練を受けたアスリートでないにもかかわらず、安静時心拍数が継続的に45 bpmを下回る場合6
  • 最も重要なのは、異常な心拍数(速すぎるまたは遅すぎる)が、めまい、立ちくらみ、息切れ、胸の痛みや圧迫感、失神しそうな感覚といった症状を伴う場合は、直ちに医療機関を受診してください3

心拍数を管理するための行動計画

幸いなことに、安静時心拍数は生活習慣の改善によって改善可能な指標です。以下に、科学的根拠に基づいた行動計画を示します。

  • 身体活動を増やす: これが最も効果的な手段です。ESCの推奨に従い、週に最低でも150~300分の中強度の身体活動(速歩き、サイクリングなど)、または75~150分の高強度の活動を目指しましょう8
  • 精神的緊張を管理する: 日常生活にリラクゼーション技法を取り入れましょう。深呼吸、瞑想、ヨガなどの方法や、単に趣味に時間を費やすことでも、副交感神経系を活性化させ、安静時心拍数を下げるのに役立ちます20
  • 睡眠を優先する: 毎晩7~8時間の十分な睡眠を確保し、規則正しい睡眠スケジュールを維持しましょう。
  • 刺激物を制限する: カフェインの摂取量を減らし、アルコールを控え、禁煙に努めましょう。
  • 適正体重を維持する: 過体重や肥満の場合は、減量することで心臓への負担を減らし、安静時心拍数を下げることができます。

以下の表は、日本人間ドック学会の指針に基づき、心拍数の測定結果の解釈と推奨される行動をまとめたものです。

表3:心拍数の解釈と推奨される行動(運動選手ではない成人向け)
安静時心拍数 (bpm) 分類 (人間ドック学会) 解釈と推奨される行動
> 100 赤信号 (要精密検査/要治療) これは頻脈の状態です。特に随伴症状がある場合は、原因を特定するために早期に医師の診察を受ける必要があります。
86 – 99 黄信号 (要再検査/生活改善) 心拍数が至適範囲より高い状態です。これは主体的に生活習慣(運動の強化、精神的緊張の軽減など)を見直し、改善するための合図です。定期的に監視し、定期健康診断の際に医師と相談しましょう。
45 – 85 青信号 (正常) 素晴らしい!心拍数は理想的な範囲にあります。心血管の健康を維持するために、引き続き健康的な生活習慣を継続しましょう。
40 – 44 黄信号 (要再検査/生活改善) 心拍数がやや遅めです。完全に健康であると感じる場合は、引き続き監視してください。疲労感やめまいなどの症状がある場合は、医師に相談してください。
< 40 赤信号 (要精密検査/要治療) これは顕著な徐脈の状態です。心臓の電気系統に影響を与える可能性のある潜在的な病状を除外するために、医師の診察を受ける必要があります。

結論 – 心拍数を生涯の健康パートナーと捉えよう

40代を過ぎると、心拍数を理解し追跡することはもはや選択肢ではなく、主体的な健康管理の不可欠な一部となります。これまでの分析で、安静時心拍数は単なる数字ではなく、身体的、精神的、そして生活習慣に至るまで、体のバランスを総合的に反映する指標であることが示されました。

心に留めておくべき核心的なポイントは以下の通りです。

  • 適切な基準: 40代の日本人にとって、安静時心拍数の至適かつ予防的な参照範囲は、日本人間ドック・予防医療学会の推奨に基づき、毎分45~85拍です。
  • 低い方が良い傾向: 正常範囲内でより低い安静時心拍数は、通常、効率的に機能する健康な心臓と、バランスの取れた自律神経系の証です。
  • 生活習慣の力: あなたの心拍数は運命ではありません。定期的な身体活動と精神的緊張の管理を二つの柱とする、科学的根拠に基づいた生活習慣の介入を通じて、大幅に改善することが可能です。
  • 傾向の重要性: ある一時点の数字に固執するよりも、自分自身の心拍数の傾向を経時的に追跡することがより重要です。徐々に上昇する心拍数は、注意を要する早期警告信号です。

最後の行動喚起は明確です。知識を行動に移しましょう。今日から早速、定期的に自身の心拍数を測定することから始めてください。議論された基準を用いて結果を解釈し、そして最も重要なこととして、それを医師や医療専門家との対話の出発点としてください。彼らは、あなた個人の状態と目標に合わせた、個別化された健康管理計画を立てる手助けをしてくれるでしょう。

あなたの心拍数は、毎分、毎日、あなたの健康に関する物語を語っています。その物語に耳を傾け、理解することで、あなた自身が、健康で活力に満ちた次の章を書き記すための鍵を握ることになるのです。


よくある質問

なぜ日本の心拍数基準(45~85 bpm)は国際基準(60~100 bpm)より厳しいのですか?

日本の基準は、単に「病気ではない」状態を示すだけでなく、「至適な健康状態」と「将来の疾患リスクが低い状態」を目標としているためです。日本人間ドック学会の研究では、日本人の大規模データから、85 bpmを超えると心血管疾患の危険性が高まり始めることが示唆されています910。そのため、病気が顕在化する前の「黄信号」の段階で生活習慣の改善を促し、予防医療を推進するという考え方に基づいています。

安静時心拍数が常に90 bpm前後ですが、100は超えていません。心配いりませんか?

国際基準では「正常」の範囲内ですが、日本の基準では「要再検査・生活改善」に該当します6。これは直ちに病気を意味するものではありませんが、心臓が常に少し余分に働いている状態であり、長期的には心血管系の負担となる可能性があります。多くの研究で、心拍数が高いほど将来の健康リスクが上昇することが示されています1017。これを機に、運動習慣の導入や精神的緊張の管理など、生活習慣を見直す良い機会と捉え、定期健診で医師に相談することをお勧めします。

運動を始めたら、どれくらいで安静時心拍数は下がりますか?

効果が現れるまでの期間は個人差がありますが、一般的に、定期的な有酸素運動(週に150分の中強度運動など)を数週間から数ヶ月続けると、安静時心拍数の低下が期待できます。心臓がトレーニングに適応し、より効率的に血液を送り出せるようになるためです5。大切なのは継続することです。焦らず、自分のペースで運動を習慣化しましょう。

精神的な緊張だけで本当に安静時心拍数は高くなりますか?

はい、高くなります。精神的緊張や不安は、体の「アクセル」である交感神経を活性化させ、心拍数を増加させるホルモン(アドレナリンなど)を放出させます515。慢性的な精神的緊張は、安静時心拍数が常に高い状態につながる可能性があります。深呼吸、瞑想、趣味の時間など、意識的にリラックスする時間を作ることが、心拍数の管理にもつながります。

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免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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  19. ランニングは心拍数を意識しよう!目安となる数値や測り方を解説. DESCENTE [インターネット]. [引用日: 2025年7月3日]. 入手先: https://www.descente.co.jp/media/sports/running/26744/
  20. 自律神経の乱れ. 症状・疾患ナビ. アリナミン製薬 [インターネット]. [引用日: 2025年7月3日]. 入手先: https://alinamin-kenko.jp/navi/navi_jiritsumidare.html
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