免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
赤ちゃんが生まれてから最初の数年間は、外界のさまざまな病原体に対する免疫が十分に確立されていないため、各種ワクチン接種がとても重要とされています。なかでも「5種混合ワクチン(通称:5 in 1、5種ワクチン)」は、赤ちゃんが避けることが難しい複数の感染症を一度に予防できる効果的な手段として知られています。
近年、日本国内でもワクチン定期接種への理解が高まる一方で、「スケジュールどおりに接種できなかったらどうなるのか」「ワクチン接種が遅れた場合、効果は十分なのか」といった疑問や不安を抱く保護者の方々が増えています。とくに初めて子育てをしているご家族や、諸事情でワクチン接種の時期がずれた場合などに「子どもが5種混合ワクチンを遅れて接種しても大丈夫なのか?」という懸念を持つのは当然といえます。
本記事では、5種混合ワクチンの概要から、日本で流通している代表的な種類、接種回数やスケジュール、そして「もしも接種が遅れてしまったら、どのように対応すればよいのか」という点を中心に詳しく解説します。さらに、ワクチン接種後の副反応としてよく話題に上る発熱時のケアも含めて、日常生活で気をつけたいポイントを丁寧にまとめます。ワクチンを通じて子どもを守るために必要な知識を深め、正しく実践できるようになることが、本記事の大きな目的です。
専門家への相談
本記事では、特に小児科領域の実践と専門知識に基づき情報を整理しています。参考にしている研究や情報源は、主に世界保健機関(WHO)、米国疾病予防管理センター(CDC)、ならびに日本の厚生労働省や国内専門家の見解です。また、本記事に含まれる医療情報は、Thạc sĩ – Bác sĩ CKI Lê Chí Hiếu(小児科専門)による監修内容が元々示されており、それをもとに日本の状況へ合わせて再構成しています。実際の接種にあたっては、必ずかかりつけの医師や地域の小児科専門医にご相談ください。個々の健康状態や既往歴によって、接種タイミングや留意点は変わる可能性があります。
5種混合ワクチンとは? どのような種類がある?
5種混合ワクチンの基本概要
「5種混合ワクチン(5 in 1)」は、その名のとおり1回の注射で複数の重大感染症に対する免疫を獲得できるように作られた複合ワクチンです。具体的には以下の5つの感染症に対する抗原が含まれています。
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ジフテリア(Diphtheria)
病原体:Corynebacterium diphtheriae
喉や気管における偽膜形成や、毒素による心筋障害・神経障害などを引き起こす重篤な病気です。 -
破傷風(Tetanus)
病原体:Clostridium tetani
傷口から菌が侵入し、中枢神経系を侵して重度の筋けいれんを引き起こす、非常に危険な感染症です。 -
百日咳(Pertussis)
病原体:Bordetella pertussis
特徴的な長引く咳発作を伴う呼吸器感染症。乳児期にかかると合併症や死亡リスクが高まります。 -
ポリオ(Poliomyelitis)
病原体:ポリオウイルス
主に腸管で増殖し、中枢神経系を侵して手足の麻痺(とくに下肢)を引き起こし、後遺症が残る危険性が高い病気です。ただし、5種混合ワクチンの種類によっては、このポリオ抗原を含まないものがあります(代わりにB型肝炎抗原が含まれる組み合わせも存在)。 -
インフルエンザ菌b型(Hib:Haemophilus influenzae type b)
乳児・小児において、肺炎・中耳炎から髄膜炎、敗血症などの重篤な合併症を引き起こすことで知られています。
上記5種類の病原体に対して同時に免疫をつけることで、子どもの感染リスクを総合的に下げる狙いがあります。日本国内ではかつて単独ワクチンや三種混合ワクチン(DPT)、四種混合ワクチン(DPT-IPV)と段階的に導入が進み、さらなる感染予防を目的に、このような5種混合ワクチンが使用されています。
日本国内で流通している代表的な5種混合ワクチン
日本国内においては、大きく分けると以下の3つのワクチンが知られています。なお、本文中で記載される「ComBE Five」などは、ベトナムや他国の国家事業で使用されたものと同じ成分を含む製品が、日本に導入される場合もあるため、その概要を含めて解説します。
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Quinvaxem(クインバクセム)
かつて韓国で製造され、日本にも輸入されていた5種混合ワクチンです。B型肝炎ウイルス抗原が含まれ、DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)+Hib+HBV(B型肝炎)を予防します。現在は2018年5月以降、日本では生産・供給が終了しており使用されていません。 -
ComBE Five(コンビファイブ)
インドのBiological E社が製造するワクチンで、ジフテリア・破傷風・百日咳・Hib・B型肝炎の抗原を含みます。日本では定期接種ではなく、公費助成や医療機関による取り扱いも限られており、海外の一部地域では国家事業として無料接種されている場合があります。成分や効果はかつてのQuinvaxemにほぼ近いとされています。 -
Pentaxim(ペンタクシム)
フランスのSanofi Pasteurs社が開発・製造する5種混合ワクチン。ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、Hibの5つを予防可能です。B型肝炎は含まれませんが、多くの医療機関で「任意接種のワクチン」として実施されています。
これらは輸入の形で検疫や品質試験を受け、日本国内の厳しい基準をクリアしてから流通するため、品質面については一定の安心材料があります。実際にどのワクチンを選ぶかは医師と相談し、ワクチンの在庫やお子さんの既往歴、ほかのワクチン接種状況などを踏まえて適切に判断するとよいでしょう。
5種混合ワクチンは何回接種する? 接種スケジュールのポイント
通常、日本で使用されるDPT-IPV(四種混合ワクチン)に加え、HibワクチンやB型肝炎ワクチンを別個に追加接種する形が一般的ですが、もし医療機関の方針などで5種混合ワクチンを選択する場合は、接種回数とタイミングの把握がとても重要です。一般的に推奨される接種回数の目安は以下のとおりです。
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基礎接種3回
生後2カ月、3カ月、4カ月にそれぞれ1回ずつ合計3回打ちます。これを「初回免疫の確立」と呼び、できるだけ月齢が若い時期に行うことで、赤ちゃんが早期に免疫を得られるように配慮されています。 -
追加接種(ブースター)1回
初回接種(基礎接種)が完了した約1年後、通常は生後15〜18カ月頃にブースターとしてもう1回接種します。これにより抗体価(体内で作られる免疫物質の濃度)を再び高め、長期的な免疫を維持できるようにします。
多くの文献や専門家の意見では、24カ月(2歳)になる前までに4回目の追加接種を終えておくことが推奨されています。保護者の事情や子どもの体調により接種が遅れる場合もありますが、できるだけ2歳までに完了するのが望ましいとされます。
なぜ接種が遅れることがあるのか? 遅れた場合はどうする?
育児の現場では、以下のような理由でワクチン接種のスケジュールが乱れることが少なくありません。
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子どもの体調不良
子どもが発熱していたり、重度のアレルギー症状があったり、あるいは慢性疾患の治療中であったりすると、医師の判断で一時的にワクチン接種を見合わせる場合があります。 -
アナフィラキシーなど重大な副反応の既往
過去のワクチン接種で重篤なアレルギー反応が起きた場合、同じワクチンや類似の成分が含まれるワクチンについて、接種を慎重に検討する必要があり、その間に接種スケジュールが遅れる可能性があります。 -
保護者の都合(出産後の実家帰省や多忙など)
育児休暇のタイミング、親の仕事の都合、あるいは引っ越しなどの事情によって、定期検診やワクチン接種が計画どおりに進まない場合もあります。 -
医療機関の在庫不足・供給状況
一部のワクチンは一時的に需要が集中して品薄になることがあり、予期せずに予約が先延ばしになってスケジュールが遅れることがあります。
「5種混合ワクチンを遅れて接種しても大丈夫?」への回答
結論からいうと、多くの専門家や厚生労働省の見解では「遅れてしまった場合は、できるだけ早く『残りの回数』を接種すること」が最善とされています。一定期間接種が遅れたからといって、すべてを最初からやり直す必要は通常ありません。すでに初回免疫がある程度できている場合、医師は状況に応じて「次の接種をいつ行うか」を決めてくれます。
日本での定期接種(四種混合ワクチンやHib、B型肝炎ワクチンなど)でも同様で、もし何らかの理由で時期を逃した場合は「なるべく速やかに接種を再開する」ことが推奨されます。身体に残っている免疫の持続期間は個人差もありますが、時間の経過とともに抗体価は低下するため、追加接種(ブースター)で再度免疫を高めるのが本来の目的です。
一方で、初回接種や基礎免疫の獲得が遅れすぎると、乳幼児期にかかりやすい病気に対する防御力が不十分になる恐れもあります。とくにジフテリア、破傷風、百日咳、Hib、ポリオ、B型肝炎は重症化リスクが高いため、なるべく早期に必要な回数を完了させることが重要です。
「子どもが5種混合ワクチンを遅れて接種しても問題ない?」への具体的な解説
子どもが実際にワクチン接種を遅らせざるを得ない状況として、例えば生後2〜3カ月で高熱や呼吸器感染症を患ったり、アレルギー症状の検査をしていたりする場合が挙げられます。また、子ども自身ではなく、家庭内の事情(引っ越し・里帰りなど)によってワクチン接種の機会を逃してしまうケースもあるでしょう。こうしたとき、多くの保護者が「遅れてしまって本当に大丈夫だろうか?」「効果が下がるのではないか?」と心配します。
結論としては、早めに接種を再開して残り回数を完了すれば、基本的に問題はないとされています。ワクチンの種類や製品によって推奨される接種間隔の細かい規定は異なりますが、概ね一定の延長は許容され、やり直しは不要です。例えば、生後2カ月時点で接種できなかった場合でも、4カ月時点で始めて、そこから1カ月間隔で合計3回を行い、その後さらに1年後に追加接種を行うといった形で挽回スケジュールを組むことが可能です。
ただし、先述のように感染症リスクの高い幼少期に防御ができない期間が長くなるほど、万一の発症リスクが上がることも考慮しておきましょう。百日咳やHib感染症は生後半年〜1歳程度までの間に重症化しやすい病気なので、「早めに接種を受けたいが体調が良くなくて延期せざるを得ない」という場合でも、主治医とこまめに相談し、できるだけ早期に再度接種できるよう計画を立てることが重要です。
ワクチン接種が遅れた場合に留意すべき生活習慣上のポイント
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手洗いの徹底
外出やトイレの後、食事前後など、親子ともに石けんでしっかり手を洗う習慣を身につけましょう。ウイルスや細菌が手指を介して口や鼻へ侵入するケースが少なくありません。 -
混雑した場所をできるだけ避ける
体力がまだ十分でない小児期に、人混みや密閉空間への頻繁な外出は感染リスクを高めます。特に感染症流行期には、公共交通機関やショッピングモールなど人が集まる所への滞在を最小限にするのがおすすめです。 -
栄養バランスの良い食事
免疫力向上のためには日頃の食生活も大切です。離乳食期ならば、月齢に合った食材をバランス良く取り入れましょう。例えば鉄分、ビタミン、ミネラルを多く含む食品を適宜与え、母乳やミルクの場合も必要に応じて回数を見直します。 -
適度な休息と睡眠
体力をしっかり回復させるために、睡眠リズムを整えましょう。特に夜中に細切れで起きやすい乳児期は、日中にまとめて寝るタイミングを設けるなど、生活リズムを安定させる工夫が必要です。
子どものワクチン接種後に起こりやすい発熱:ケアの仕方
ワクチン接種、特に複合ワクチン接種後は、多くの子どもに発熱や局所の腫れ、倦怠感などの軽微な副反応がみられます。これはワクチンによって免疫系が刺激され、抗体産生のプロセスが始まったサインともいえます。一方で、親としては「本当に大丈夫なのか?」と不安になるかもしれません。以下の点に留意しながらケアを行いましょう。
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水分補給の徹底
体温が上がると発汗量が増えるため、普段より水分が失われやすくなります。母乳やミルク、あるいは必要に応じて湯冷ましや経口補水液などを使用し、こまめな水分補給を心がけます。 -
衣類や室温の調整
過度に厚着させたり、布団やタオルケットを重ねすぎたりすると、体温がさらに上がりやすくなり、子どもの不快感が強まる場合があります。薄手の服装と適度な室温(夏場は27〜28℃程度、冬場は20〜23℃程度)を意識して快適な環境を整えます。 -
通常の入浴やシャワーは基本的に問題なし
医師から特別な注意がなければ、接種当日でも軽いシャワーや短時間の入浴は可能です。ただし、子どもの様子を見ながら、体力が落ちていると感じたら無理をさせず、温かいタオルで身体を拭くなどに留めましょう。冷水やアルコールでの身体拭きはかえって皮膚を刺激したり、急激な体温変化を招いたりするため避けるのが無難です。 -
熱が高い場合の対応
子どもが極端にぐったりしている、40℃前後の高熱が続くなどの場合は、すぐに医療機関に相談する必要があります。自己判断で解熱剤を与える前に、小児科医へ連絡を取り、薬の種類や用量・タイミングなどを確認することが大切です。通常、市販の解熱鎮痛薬などは医師の判断がない限り安易には使用しないほうがよいでしょう。 -
発熱の持続時間のチェック
多くの場合、ワクチン接種後の発熱は24〜48時間ほどで自然に落ち着くとされます。3日以上続く、あるいは熱が下がった後に再び上がる場合は別の原因が疑われることもあるため、医師の診察を受けると安心です。
発熱以外に見られる副反応と注意点
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接種部位の腫れや痛み
針を刺した周囲が腫れたり、赤くなったり、硬くなったりすることは比較的よくあります。通常は2〜3日で落ち着くとされていますが、腫れがどんどん大きくなる、皮膚が化膿してきた、痛みが続いて眠れないほどになったなど、異常が感じられた場合は医療機関へ相談してください。 -
皮膚の発疹
ごくまれにアレルギー反応に伴う発疹やじんましんが出現するケースがあります。多くは軽症で経過観察できますが、全身の広範囲に及んだり、呼吸困難、顔面・唇の腫れ(アナフィラキシーの疑い)などがみられる場合は直ちに受診する必要があります。 -
不機嫌・食欲不振
乳幼児は体調不良を機嫌で表すことが多いため、接種後にぐずったり食欲が落ちたりすることがあります。水分補給さえしっかりできていて、数日内に回復傾向があれば通常は様子見で大丈夫ですが、明らかに体重が減少する、顔色が悪い、嘔吐を繰り返すなどあれば受診を検討しましょう。
なぜ「子どもが接種を受けるメリット」は大きいのか?
日本では、定期接種のワクチンについては公費負担の制度もあり、親の経済的な負担を軽減してできるだけ高い接種率を目指しています。特にジフテリアや百日咳、破傷風、ポリオ、Hib感染症などは一度かかると重症化・後遺症リスクが高く、社会全体として流行を防ぐことが重要です。
また、Liangら(2021年)は、米国における百日咳・破傷風・ジフテリアワクチン(DTaP)の集団接種が、幼児期の重症化と入院率を劇的に低下させたと指摘しています(MMWR Recomm Rep. 70(4):1-44. doi:10.15585/mmwr.rr7004a1)。このように多くの国際的な研究データや公衆衛生上の取り組みからも、複合ワクチンの早期・定期的な接種がコミュニティ全体の防疫体制に大きく貢献することがわかります。これは日本でも同様に効果が期待でき、海外データの大部分は日本国内にも応用可能と考えられています。
さらに、Zhouら(2022年)による中国東部地域の大規模調査研究では、5歳以下の子どもを対象にDTaP接種の実施状況を調べた結果、適切な時期に接種した群ほど百日咳などの呼吸器感染症による通院率が低かったと報告しています(BMC Public Health, 22(1):398. doi:10.1186/s12889-022-12739-y)。このように近年のエビデンスからも、定期的にワクチン接種を行うことで乳幼児が重症化するリスクを下げ、医療コストや保護者の看病負担も減らせるというメリットが示唆されています。
5種混合ワクチン接種が遅れた場合の実際の手続き・相談先
もし接種スケジュールより遅れてしまったら、まずは下記のような対応が考えられます。
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かかりつけの小児科や市区町村の保健センターに相談
接種の遅れ具合や、お子さんの既往症・アレルギー歴、他のワクチン接種状況を総合的に判断して、最適な「追補接種(キャッチアップ)」のスケジュールを提案してくれます。 -
定期接種と任意接種を同時に検討する
5種混合ワクチンを選択する場合、一部が公費助成対象、あるいは任意接種扱いの成分が混在するケースがあります。各自治体によって助成制度や扱いが異なるため、公的ホームページや保健所で情報を確認し、経済的負担や接種の優先順位を踏まえて決定するとよいでしょう。 -
体調を万全に整えてから接種する
子どもの体調が悪い時に無理やり接種するのは避けるのが無難です。医師が「問題ない」と判断した場合でも、発熱や嘔吐などの症状が出始めていないかを注意深く観察し、必要に応じて接種日を延期することが大切です。
追加の感染予防策:家庭内や保育園・幼稚園でできること
接種が予定より遅れるときは、子どもが病気にかからないよう、普段から感染予防に努める必要があります。特に集団生活を始めると、周囲の子ども同士で感染が拡大しやすいため、以下の点に留意するとよいでしょう。
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室内のこまめな換気
密閉された室内では病原体が滞留しやすいので、窓を開けて空気の入れ替えを行い、湿度や温度も適度に調整します。 -
おもちゃや調理器具の衛生管理
口に入れる可能性があるおもちゃや調理器具、哺乳瓶などは、定期的に洗浄・消毒を行います。 -
インフルエンザやRSウイルスなど流行時期への備え
秋冬シーズンは特に呼吸器系ウイルスが流行しやすいため、必要に応じてマスクの着用(2歳以上、医師の指示に従う)、こまめな手洗い、アルコール消毒を活用します。 -
保育園・幼稚園での感染拡大防止
集団生活の場では、子どもが体調不良を訴えている場合は早めに保護者が迎えに行く、休ませるなど柔軟に対応することが望まれます。園側の連絡帳やお知らせをこまめに確認し、感染症発生情報をチェックして自宅でも注意を促します。
保護者の不安を軽減するための対策
ワクチン接種は医療的手段であると同時に、保護者の不安や疑問が多い領域です。以下のような方法で、不安をできるだけ軽減しながら、正しい知識を身につけると良いでしょう。
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主治医や看護師とのコミュニケーションを密にする
接種前後の疑問や不明点は、小児科医や保健師にその場で尋ね、丁寧に説明を受けることで安心感が得られます。特に副反応の頻度や対処法などは具体的に聞いておくと、発熱時にも落ち着いて対応できます。 -
信頼できる情報源の確保
インターネット上には多種多様な情報が溢れていますが、医療の専門知識がない状態で真偽を判断するのは難しい場合があります。厚生労働省や自治体の公式サイト、あるいは学会公認の専門家が監修する情報サイトを活用するとよいでしょう。 -
ワクチン手帳の活用
接種日や使用したワクチンの種類、ロット番号などを記録できる手帳やアプリを活用することで、スケジュール管理がスムーズになります。遅れが生じた場合でも、次の接種時期を医師と相談しやすくなります。
もし高熱や重篤な副反応が疑われるときは?
まれにワクチン接種後にアナフィラキシーやけいれんを含む重篤な副反応が起こる可能性があります。もし以下のような症状が見られたら、直ちに医療機関を受診し、医師に状況を伝えてください。
- 全身の発疹や呼吸困難、血圧低下などアナフィラキシーショックを疑う症状
- けいれんが起きた、または意識がもうろうとして反応がはっきりしない
- 何度も嘔吐を繰り返し、水分補給ができない
- 極端なぐったり感が続き、反応が鈍い
こうした症状は非常にまれですが、念のため接種後30分程度は医療機関で子どもの様子を観察し、万一の場合すぐに医師が対応できるようにしておくことが推奨されています。
結論と提言
5種混合ワクチンは、乳幼児期に重症化しやすい5つの感染症(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、Hib、あるいはB型肝炎を含むタイプ)を一度に予防できる非常に有用な手段です。ワクチンが標準的に設定されているスケジュール通りに接種できれば理想的ですが、病気や家庭の事情などで遅れるケースは珍しくありません。
大切なのは、接種が遅れたとしても早めに追いついて免疫を獲得することです。医師の指示に従い、必要な回数を完了させれば、十分な予防効果を得られます。遅れる期間が長いほど、子どもが対象疾患にかかるリスクが高まる点を意識しつつ、子どもの体調をしっかり整え、適切なタイミングで再開しましょう。
ワクチン接種後に発熱や腫れなどの副反応が起こることは珍しくありませんが、多くの場合は一時的なものであり、正しいケアとこまめな観察があれば大事に至ることは少ないです。万が一、重い症状が疑われる場合は直ちに医療機関を受診し、医師の判断を仰いでください。
また、今回ご紹介した研究にあるように、ワクチン接種によって集団全体が得られるメリットは大きく、海外の大規模調査でも接種率が向上するほど百日咳やジフテリアなど重篤感染症の発生が著しく抑えられるとのデータが示されています。日本国内でも、保護者同士が正しい情報を共有し、各自治体や医療機関との連携を強化することで、より安全な環境づくりを実現できるでしょう。
最後にもう一度強調したいのは、本記事が提供する情報はあくまで参考のためであり、実際のワクチン接種スケジュールや副反応への対処には個人差が大きいことです。お子さんの健康状態や成長具合、過去のアレルギー歴などによっても最適な対応は異なるので、必ず専門家の診察と助言を受けて最善の判断を行ってください。
参考文献
- DTaP (Diphtheria, Tetanus, Pertussis) Vaccine: What you need to know (アクセス日 2023年11月12日)
- PENTAXIM (アクセス日 2023年11月12日)
- Combefive (アクセス日 2023年11月12日)
- 5-in-1 Vaccine (アクセス日 2023年11月12日)
- Vắc xin 5 Trong 1 – Chương Trình Tiêm Chủng Mở Rộng (アクセス日 2023年11月12日)
- Một Số Câu Hỏi Đáp Về Chuyển Đổi Vắc Xin 5 Trong 1 Trong Chương Trình Tiêm Chủng Mở Rộng (アクセス日 2023年11月12日)
- Chương Trình Tiêm Chủng Mở Rộng (アクセス日 2023年11月12日)
- Liang JL, Tiwari T, Moro P, et al. Prevention of Pertussis, Tetanus, and Diphtheria with Vaccines in the United States: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR Recomm Rep. 2021;70(4):1-44. doi:10.15585/mmwr.rr7004a1
- Zhou M, Qu J, Xiu L, Li T. DTaP Vaccination Coverage and Associated Factors among Children in Eastern China: A Cross-sectional Study. BMC Public Health. 2022;22(1):398. doi:10.1186/s12889-022-12739-y
本記事は医学的知識を提供することを目的としていますが、最終的な判断や治療方針は必ず医療専門家にご相談ください。本記事の情報はあくまで参考であり、個別の症状や状態に応じて医師の診断を受けることが大切です。