【耳鼻科医が解説】睡眠用耳栓の正しい選び方と安全な使い方|外耳炎リスクを避け、安眠を守る科学的アプローチ
睡眠ケア

【耳鼻科医が解説】睡眠用耳栓の正しい選び方と安全な使い方|外耳炎リスクを避け、安眠を守る科学的アプローチ

パートナーのいびき、隣室の生活音、窓の外の交通騒音。現代社会において、安らかな眠りを妨げる音の問題は多くの人々にとって深刻な悩みです。このような状況で、薬に頼らずに睡眠の質を向上させるための強力な解決策として「睡眠用耳栓」が注目されています。しかし、「どの耳栓を選べば良いのか?」「長時間使っても安全なのか?」「外耳炎になる危険性はないのか?」といった疑問や不安を抱えている方も少なくないでしょう。この記事では、JHO編集委員会が、日本の耳鼻咽喉科専門医の知見、厚生労働省の公式ガイドライン、そして最新の国際的な科学研究に基づき、睡眠用耳栓の利益と危険性を徹底的に分析します。素材ごとの特徴から、あなたの目的に合った遮音性能の選び方、そして最も重要な「外耳炎」などの健康被害を確実に避けるための安全な使用方法まで、網羅的かつ具体的に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたはご自身の健康と快適な睡眠を守るための、賢明な選択ができるようになっていることをお約束します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を示したリストです。

  • 厚生労働省 (MHLW): この記事における耳栓の有効性の基本的な考え方や、安全な使用、衛生管理に関する指導は、厚生労働省の「e-ヘルスネット」1や「騒音障害防止のためのガイドライン」2といった公的情報に基づいています。
  • 科学的レビューおよびメタアナリシス: 睡眠の質の向上、ストレスホルモン(コルチゾール)の減少、さらには集中治療室におけるせん妄リスクの低減といった耳栓の具体的な効果に関する記述は、Littonら3やTengら4による複数の論文を統合したメタアナリシス(最高レベルの科学的根拠)に基づいています。
  • 日本の耳鼻咽喉科専門医: 外耳炎の予防策や耳の衛生管理に関する具体的な医学的助言は、日本の臨床現場で診療を行う長友耳鼻咽喉科5や、あらい耳鼻咽喉科6などの専門医療機関が公開している情報に基づいています。

要点まとめ

  • 睡眠用耳栓は、睡眠の質を向上させ、ストレスホルモンを減少させる効果が科学的に証明されている有効な手段です。
  • 最適な耳栓を選ぶには、「素材(フォーム、シリコンなど)」「遮音性能(NRR値)」「フィット感」の3つのステップで総合的に判断することが重要です。
  • 最も重要なのは安全な使用です。外耳炎や耳垢栓塞といった危険性を避けるため、清潔な手で装着し、耳を乾燥させ、過度な耳掃除を避けるといった衛生管理を徹底する必要があります。
  • 万が一、耳に痛み、かゆみ、閉塞感などの異常を感じた場合は、直ちに使用を中止し、耳鼻咽喉科の専門医に相談してください。

なぜ耳栓が睡眠に有効なのか?科学が示す驚くべき効果

「騒音が気になるときは、耳栓が効果的です」。これは、日本の厚生労働省が運営する健康情報サイト「e-ヘルスネット」で示されている公的な見解です1。単なる気休めではなく、耳栓の使用は睡眠の質そのものを改善し、心身の健康に多大な利益をもたらすことが、数多くの質の高い研究によって裏付けられています。

その最も強力な証拠の一つが、集中治療室(ICU)の患者を対象とした研究です。ICUは常に電子音や会話が飛び交う過酷な騒音環境ですが、2016年に発表された複数の研究を統合・分析したメタアナリシスによると、患者が耳栓を使用することで、深刻な意識障害である「せん妄」の発症危険性が41%も減少したことが報告されています37。これは、騒音を遮断することが、脳の正常な機能を保つ上で極めて重要であることを示しています。

さらに、耳栓の効果は心理的なものに留まりません。2021年に行われた臨床試験では、耳栓を使用した患者の尿中コルチゾール(代表的なストレスホルモン)濃度が有意に低下したことが確認されました8。つまり、耳栓は体感的な安らぎをもたらすだけでなく、生理学的なレベルでストレス反応を抑制する力があるのです。また、2021年の別のメタアナリシスでは、耳栓とアイマスクを併用することが睡眠の質を最大化する上で最も効果的であると結論付けられており、音と光の両方を遮断する包括的なアプローチの有効性が示唆されています4


【ステップ式完全ガイド】あなたに最適な睡眠用耳栓の選び方

市場には無数の耳栓が存在し、どれを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。しかし、ご自身の目的と耳の特性を理解し、以下の3つのステップに従って検討すれば、最適な製品を見つけることができます。「最強」や「人気」といった言葉だけに惑わされず、科学的かつ合理的な視点で選びましょう。

ステップ1:素材を理解する – 快適性と衛生面での選択

耳栓の素材は、遮音性能、快適なつけ心地、そして衛生管理のしやすさを決定する最も重要な要素です。主な素材の特徴を理解しましょう。

  • フォームタイプ(スポンジ素材)
    • 長所: 非常に柔らかく、指で細く潰してから耳に入れると体温でゆっくりと膨らみ、耳の穴の形にぴったりとフィットします。これにより高い遮音性能を発揮し、圧迫感も少ないため、特に横向きで寝る方や耳栓の痛みが気になる方に最適です9。価格が安価な点も魅力です。
    • 短所と安全上の注意: 多孔質な素材のため、皮脂や湿気を吸いやすく、細菌が繁殖しやすいという欠点があります。このため、専門家や厚生労働省のガイドラインでは、衛生面を考慮し、繰り返し使わずに毎回新しいものを使用する使い捨て(ディスポーザブル)が強く推奨されています1011
  • シリコンタイプ
    • 粘土タイプ: 耳の入り口を粘土のように塞ぐタイプです。耳の穴の奥まで挿入しないため圧迫感がなく、様々な耳の形に対応できます。ただし、髪の毛などが付着しやすく汚れやすいため、衛生管理には注意が必要です12
    • フランジタイプ(きのこ型): 複数のヒレ(フランジ)がついており、耳の穴にしっかりと密着します。遮音性が高く、着脱が容易なのが特徴です。素材がフォームタイプより硬めのことが多く、人によっては長時間の使用や横向き寝で痛みを感じる場合があります13。繰り返し使用できますが、使用後の洗浄が不可欠です。
  • デジタルタイプ(電子式耳栓)
    • 長所: いわゆるノイズキャンセリング技術を応用し、いびきや空調音のような持続的な低周波ノイズを選択的に低減します。一方で、アラーム音や人の呼びかけのような重要な音は聞こえるように設計されている製品が多く、安全性と快適性を両立できます14
    • 短所: 価格が非常に高価であり、定期的な充電が必要です。

ステップ2:遮音性能(NRR値)を正しく評価する

遮音性能は、一般的にNRR(Noise Reduction Rating)値という指標で示されます。これは「現在の騒音レベルを何デシベル(dB)低減できるか」を示す数値で、値が大きいほど遮音性能が高くなります。

考え方の例:

  • 一般的な会話:約60dB
  • いびき:約50~60dB
  • 交通量の多い道路沿い:約80dB

睡眠に適した静かな環境は概ね35~40dB以下とされています15。例えば、60dBのいびきに悩んでいる場合、NRR値が20~25dB以上の耳栓を使用すれば、騒音レベルを理想的な環境に近づけることができます。

安全上の警告: 遮音性が高ければ高いほど良い、というわけではありません。NRR値が高すぎる耳栓は、火災報知器の音、赤ちゃんの泣き声、災害時の警報など、命に関わる重要な音まで遮断してしまう危険性があります。ご自身の生活環境で必要な安全性を考慮し、過度に高いNRR値を追求しないことも賢明な選択です。

ステップ3:フィット感と快適性を最優先する

どんなに遮音性能が高くても、耳に合わずに痛みを感じたり、夜中に外れてしまったりするようでは意味がありません。「フィット感」こそが、快適性と実際の遮音効果を決定づける最後の鍵です。

耳栓が耳に合っていないと、隙間から音が侵入してしまい、カタログ通りの遮音性能は得られません。また、特に横向きで寝る方にとって、耳からはみ出す部分が大きい耳栓は、枕との間で圧迫されて強い痛みの原因となります9。可能であれば、S/M/Lといった複数のサイズのイヤーピースが付属している製品を選び、ご自身の耳に最適なサイズを見つけることをお勧めします12


【最重要】外耳炎や耳垢栓塞を防ぐための絶対安全マニュアル

耳栓の最大の懸念点は、不適切な使用による健康被害です。しかし、日本の耳鼻咽喉科専門医や厚生労働省が示す正しい知識を身につければ、これらの危険性はほぼ完全に防ぐことができます。以下のルールを必ず守ってください。

1. 装着と取り外しは清潔な手で

基本的なことですが、最も重要です。汚れた手で耳栓を触ると、細菌が耳の中に持ち込まれ、感染症の原因となります。装着前には必ず石鹸で手を洗いましょう。

2. 耳は完全に乾いた状態で使用する

入浴後など、耳の中に湿気が残った状態で耳栓をすると、耳の中が高温多湿になり、細菌や真菌(カビ)が繁殖しやすい環境となります。これが外耳炎の主な原因です5。耳栓は必ず、耳が完全に乾いていることを確認してから使用してください。

3. 過度な耳掃除は絶対にしない

日本の耳鼻咽喉科医が口を揃えて指摘するのが、「耳掃除のしすぎ」が外耳炎の最大のリスクであるという点です6。耳垢(みみあか)には、皮膚を保護し、感染を防ぐ役割があります。過度な耳掃除は、この保護層を剥がし、耳の皮膚を傷つけ、感染の危険性を高めます。耳掃除は多くても月に1回程度で十分とされています6

4. 耳垢栓塞(じこうせんそく)に注意する

耳栓を奥に押し込む行為は、耳垢を鼓膜の方向へ押し固めてしまい、耳の聞こえが悪くなったり、閉塞感を感じたりする「耳垢栓塞」の原因となることがあります。耳栓は無理に奥まで押し込まず、快適にフィットする位置で使用してください。もし耳が詰まった感じがしたら、自分で取ろうとせず、耳鼻咽喉科を受診してください。

5. 衛生管理を徹底する

厚生労働省のガイドラインでも示されている通り、衛生管理は極めて重要です2

  • フォームタイプ: 原則として使い捨てを推奨します。
  • シリコンタイプ: 再利用する場合は、使用後に毎回、刺激の少ない石鹸とぬるま湯で洗浄し、完全に乾燥させてから保管してください。
  • 交換時期: 汚れが目立ったり、弾力性が失われたり、破損したりした場合は、ためらわずに新しいものと交換しましょう。

6. 異常を感じたら直ちに使用を中止し、専門医へ

耳に痛み、かゆみ、閉塞感、耳だれ、聞こえにくさといった症状が現れた場合は、アレルギー反応や感染症のサインかもしれません。直ちに耳栓の使用を中止し、耳鼻咽喉科の専門医の診察を受けてください。


睡眠用耳栓に関するよくある質問

Q1: 耳栓を使い続けると、聴力が悪くなったり、「耳栓なしでは眠れない」ようになったりしませんか?

A: 正しい方法で使用している限り、耳栓が聴力に悪影響を及ぼすことはありません。むしろ、騒音による聴覚へのダメージを防ぐ効果があります。「耳栓なしでは眠れない」と感じるのは、依存症ではなく、静かで快適な睡眠環境に体が適応した結果です。これは、より質の高い睡眠を得るためのポジティブな習慣と捉えることができます。

Q2: 睡眠時に、ノイズキャンセリングイヤホンを使っても良いですか?

A: 理論上は可能ですが、一般的に音楽用のノイズキャンセリングイヤホンは、睡眠用に設計された耳栓に比べてサイズが大きく硬いため、特に横向きで寝る際に耳が痛くなる原因となります。長時間の快適な装着を考えると、睡眠専用に設計された耳栓の方がはるかに適しています。

Q3: 耳栓はどのくらいの頻度で交換すべきですか?

A: 素材によります。衛生面を最優先するならば、フォームタイプは数回の使用、あるいは汚れたと感じたら交換するのが理想的です。シリコンタイプは耐久性が高いですが、傷や変形が見られたら交換時期です。常に清潔な状態を保つことが、安全な使用の鍵です。

Q4: 耳栓をしていると、火災報知器や目覚まし時計の音が聞こえなくなりませんか?

A: これは非常に重要な懸念点です。対策として、①遮音性能(NRR値)が過度に高すぎない製品(例:20~25dB程度)を選ぶ、②スマートフォンや時計を枕元に置き、音量を最大にする、または振動機能も併用する、③高周波数の音は通しやすい「デジタル耳栓」を検討する、といった方法があります。ご自身の安全を確保できる方法を必ず見つけてください。


結論

睡眠用耳栓は、正しく選び、正しく使えば、騒音に悩まされることなく質の高い睡眠を取り戻すための、非常に安全で効果的な科学的ツールです。重要なのは、「最強の遮音性」を求めるのではなく、ご自身の耳に合った「快適なフィット感」と、生活環境に応じた「適切な遮音性」、そして何よりも「徹底した衛生管理」という三つのバランスを理解することです。本記事で解説した医学的・科学的根拠に基づいた知識を活用し、ご自身の健康を守りながら、静かで安らかな夜を手に入れてください。もし少しでも耳に不安や異常を感じることがあれば、ためらわずに耳鼻咽喉科の専門家へ相談しましょう。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言を構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  3. Litton E, Carnegie V, Elliott R, et al. The Efficacy of Earplugs as a Sleep Hygiene Strategy for Reducing Delirium in the ICU: A Systematic Review and Meta-Analysis. Crit Care Med. 2016;44(5):992-9. doi:10.1097/CCM.0000000000001557. PMID: 26741578. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26741578/
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  14. Your SELECT. 睡眠用耳栓のおすすめ9選!遮音性に優れ、快眠をサポートする人気アイテムを紹介 [インターネット]. [引用日: 2025年7月27日]. Available from: https://cuebic.co.jp/your_select/sleep/rs260
  15. ライズTOKYO株式会社. 耳栓着用の睡眠って効果があるの?注意点や選び方を紹介! [インターネット]. [引用日: 2025年7月27日]. Available from: https://www.risetokyo.jp/contents/_wp/archives/blog/6028
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