性的健康

低用量ピル・アフターピル徹底比較:効果・副作用・費用(保険適用/自費)と日本での全入手方法【2025年最新】

日本の避妊方法は、依然としてコンドームに大きく依存しているという現実があります。国立社会保障・人口問題研究所の第15回出生動向基本調査によると、避妊を実行している夫婦のうち、コンドームのみを使用している割合は依然として高い水準にあります1。この状況は、より確実な避妊法である経口避妊薬(ピル)の利用率が欧米諸国に比べて極端に低いことを示唆しています2。その結果として、意図しない妊娠や、それに伴う人工妊娠中絶が依然として日本の社会的な課題の一つであり続けている可能性が、厚生労働省の統計からも示唆されています3。この記事は、日本産科婦人科学会(JSOG)や厚生労働省(MHLW)の最新の指針や報告書、そして世界保健機関(WHO)などの国際的な科学的根拠に基づき、現代の日本で利用可能な避妊薬の選択肢を網羅的かつ公平に解説する「最も信頼できる完全な手引書」となることを目指します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明確に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指針との直接的な関連性を示したリストです。

  • 日本産科婦人科学会(JSOG)/日本女性医学学会: 本記事における低用量ピル(OC・LEP)の種類、副作用、飲み忘れ時の対処法、禁忌事項に関する記述は、同学会が発行した「OC・LEPガイドライン 2020年度版」に基づいています4。これは日本の処方実態に即した最も権威ある指針です。
  • 日本産科婦人科学会(JSOG): 緊急避妊薬に関する種類、使用法、副作用、追跡調査の指針は、「緊急避妊法の適正使用に関する指針(令和7年改訂版)」を主要な根拠としています5
  • 厚生労働省(MHLW)/日本薬剤師会: 薬局での緊急避妊薬の試験販売に関する記述は、厚生労働省の「緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書」に基づいています6
  • 世界保健機関(WHO): 避妊が女性の健康と権利にとって持つ世界的な重要性に関する記述は、WHOの公式見解を参考にしています7
  • 米国疾病予防管理センター(CDC): 特定の健康状態を持つ女性に対する各避妊法の安全性評価や、実践的な使用法に関する国際的な推奨事項については、CDCが発行する「米国避妊法使用のための医学的適格性基準(U.S. MEC)」および「米国避妊法使用のための選択的実践勧告(U.S. SPR)」を補足的な情報源としています89

要点まとめ

  • 日本ではコンドームへの依存度が高く、ピルの使用率は低いですが、ピルは正しく使えば99%以上の高い避妊効果が期待できます。
  • ピルには避妊目的の「OC」(自費診療)と、月経困難症などの治療目的の「LEP」(保険適用)があり、成分は同じでも費用が異なります。
  • 緊急避妊薬(アフターピル)は、産婦人科、オンライン診療、そして一部薬局での試験販売という3つの経路で入手可能です。
  • 副作用には個人差がありますが、一般的なものは服用継続で軽減することが多く、重篤な血栓症の初期症状(ACHES)を知っておくことが重要です。
  • どの避妊法を選ぶかは、自身の健康状態、生活習慣、価値観を基に、必ず専門家と相談して決定することが不可欠です。

避妊薬の主要な選択肢:あなたに合うのはどれ?全体像を理解する

避妊薬と一言で言っても、その種類は多岐にわたります。自分にとって最適な方法を見つける第一歩は、全体像を把握することです。ここでは、日本で利用可能または参考にされる主要な避妊法を、目的や特徴で整理しました。

表1:主要な避妊法の比較概要
種類 主な目的 避妊効果(理想的な使用) 使用頻度 日本での入手しやすさ 保険適用の有無
低用量ピル/超低用量ピル (OC/LEP) 日常的な避妊、月経困難症等の治療 99.7%4 毎日1回 容易(要処方箋) あり(治療目的のLEPのみ)10
ミニピル (POP) 日常的な避妊(血栓症危険性が高い方向け) 約99%11 毎日1回(厳密な時刻遵守が必要) 容易(要処方箋)12 なし
緊急避妊薬(アフターピル) 避妊失敗後の緊急対応 約85%(72時間以内)5 緊急時に1回 条件付き(要処方箋、一部薬局)13 なし
避妊注射(参考) 長期的な避妊 99%以上14 3ヶ月に1回 困難(国内未承認)15 なし
避妊インプラント(参考) 長期的な避妊 99%以上16 3年に1回 困難(国内未承認)17 なし

注:避妊効果は一般的な数値であり、個々の状況や製品によって異なります。必ず医療専門家にご相談ください。


1. 経口避妊薬(ピル):日常的な避妊の標準的選択肢

経口避妊薬、通称「ピル」は、正しく服用すれば極めて高い避妊効果が期待できる、世界で広く用いられている避妊法です。日本では、その目的によって大きく二つに分類されますが、この区別を理解することが、費用や入手方法を知る上で非常に重要になります。

1.1. ピルの種類と特徴:OC・LEP、世代、相性とは?

日本の医療現場では、ピルはその使用目的によって明確に区別されます。この点を理解することが、自分に合ったピルを見つける第一歩です。

  • OC(Oral Contraceptives): 「避妊」を目的として処方されるピルです。自由診療となるため、費用は全額自己負担となります10
  • LEP(Low dose Estrogen Progestin): 「月経困難症」や「子宮内膜症」などの「治療」を目的として処方されるピルです。病気の治療とみなされるため、健康保険が適用されます10。日本では、OCとLEPで同じ成分の薬剤が用いられることも多く、医師の診断によってどちらに該当するかが決まります。

さらに、ピルは含有される黄体ホルモン(プロゲスチン)の種類によって「世代」に分類され、それぞれに特徴があります。

  • 第一世代: 不正出血が比較的起こりにくいとされています。代表的な薬剤に「ノルエチステロン」を含むものがあります18
  • 第二世代: 第一世代に比べ、男性ホルモンの作用が抑えられています。代表的な薬剤に「レボノルゲストレル」を含むものがあります18
  • 第三世代: 第二世代よりもさらに男性ホルモンの作用を抑える効果が期待でき、にきびなどの改善に繋がる可能性があります。代表的な薬剤に「デソゲストレル」を含むものがあります19
  • 第四世代: 最も新しい世代で、超低用量ピルとも呼ばれます。男性ホルモンを抑える作用が非常に強く、むくみにくいという特徴がありますが、血栓症の危険性が他の世代に比べてわずかに高い可能性も指摘されています19。代表的な薬剤に「ドロスピレノン」を含むものがあります。

また、1シート内のホルモン量が一定か変動するかで「相性」に分けられます。

  • 1相性: 全ての錠剤のホルモン量が同じです。飲み間違いの危険性が低く、月経移動などの調整がしやすいという利点があります19
  • 多相性(主に3相性): 自然なホルモン周期に近づけるため、錠剤によってホルモン量が段階的に変化します。これにより、総ホルモン量を抑え、不正出血の頻度を減らすことが期待されます19

これらの分類は複雑に聞こえるかもしれませんが、どのピルが最適かは、個人の体質、健康状態、そして何を最も重視するかによって異なります。日本産科婦人科学会の「OC・LEPガイドライン」でも、これらの特徴に基づいた選択が推奨されており、必ず医師との相談を通じて決定することが重要です4

1.2. ミニピル(プロゲスチン単剤ピル):エストロゲンが使えない方の選択肢

ミニピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)を含まず、黄体ホルモン(プロゲスチン)のみを含むピルです。エストロゲンが含まれていないため、血栓症の危険性が極めて低く、以下のような方々にとって重要な選択肢となります12

  • 血栓症の既往歴や危険因子がある方
  • 35歳以上で1日に15本以上喫煙する方
  • 前兆を伴う片頭痛がある方
  • 高血圧の方
  • 授乳中の方

ミニピルの最大の注意点は、毎日厳密に同じ時刻に服用する必要があることです。服用時刻が3時間以上ずれると避妊効果が低下する可能性があるため、バックアップの避妊法(コンドームなど)が必要となります11。この厳格な服用規則は、ミニピルが主に子宮頸管粘液の性状を変化させて精子の侵入を防ぐ作用に依存しており、その効果が24時間程度しか持続しないためです。国際的には米国産婦人科学会(ACOG)などの指針でもその有効性と注意点が示されており、特定の条件下での安全な避妊法として確立されています20

1.3. 副作用と対処法:知っておけば怖くない

ピルの服用にあたり、多くの方が副作用を心配されます。しかし、どのような副作用があり、どう対処すれば良いかを知っておくことで、不安は大きく軽減できます。

一般的な副作用(マイナートラブル):
飲み始めの1~3ヶ月は、体がホルモン状態に慣れるまで、以下のような症状が出ることがあります21

  • 不正出血: 最も一般的な副作用です。多くは服用を続けることで自然に治まります。
  • 吐き気・嘔吐: 就寝前に服用したり、軽い食事と一緒に摂ることで軽減できる場合があります。
  • 頭痛: 特に片頭痛持ちの方は注意が必要ですが、多くは一時的なものです。
  • 乳房の張り・痛み
  • 気分の変動

これらの症状は、ほとんどの場合、体が新しいホルモンバランスに適応するにつれて自然に解消されます。しかし、症状が重い場合や長く続く場合は、ピルの種類を変更することで改善する可能性があるため、処方医に相談することが重要です。

重篤な副作用(血栓症):
ピルの副作用で最も注意すべきものが、血栓症(血管の中に血の塊ができる病気)です。頻度は非常に稀ですが、命に関わる可能性があるため、初期症状を知っておくことが極めて重要です。日本産科婦人科学会の指針でも、血栓症の初期症状の周知が強調されています4。以下の「ACHES」と呼ばれる症状が現れた場合は、直ちにピルの服用を中止し、救急医療機関を受診してください22

  • A (Abdominal pain): 激しい腹痛
  • C (Chest pain): 激しい胸痛、息苦しさ、押しつぶされるような痛み
  • H (Headache): 激しい頭痛
  • E (Eye problems): 見えにくい、視野が狭くなる、舌がもつれる
  • S (Severe leg pain): ふくらはぎの激しい痛み・むくみ・腫れ・赤み

血栓症の危険性は、年齢、喫煙、肥満、家族歴などによって高まります。ピルの処方前には、医師がこれらの危険性について問診を行います。

1.4. ピルの費用と入手方法

ピルを入手するための費用と方法は、目的(避妊か治療か)によって異なります。

費用:

  • 保険適用(LEP)の場合: 月経困難症などの治療目的で処方される場合、健康保険が適用されます。自己負担額は、薬剤費と診察料を合わせて、おおむね1ヶ月あたり1,000円から3,000円程度が目安です10
  • 自費診療(OC)の場合: 避妊目的で処方される場合、全額自己負担となります。費用は医療機関によって異なりますが、1ヶ月あたり2,000円から3,500円程度が一般的な相場です10

入手方法:

  1. 産婦人科での対面診療: 最も標準的な方法です。医師による問診、血圧測定などを受け、適切なピルを処方してもらいます。直接相談できる安心感があります。
  2. オンライン診療: 近年、急速に普及している方法です。スマートフォンやパソコンを使い、ビデオ通話などで医師の診察を受け、ピルを自宅に配送してもらいます13。通院の手間が省ける、待ち時間がないといった利点があります。厚生労働省の指針に沿って適切に行われる限り、安全な医療提供方法と認められています23

2. 緊急避妊薬(アフターピル):万が一の時のための最終手段

緊急避妊薬(アフターピル)は、避妊に失敗した、あるいは避妊なしの性交があった後、意図しない妊娠を防ぐために緊急的に使用する薬剤です。あくまで「緊急用」であり、日常的な避妊法として使用するものではありません。

2.1. 種類と効果:いつまでに飲めばいい?

日本で主に処方される緊急避妊薬には、2つの種類があります。作用や服用期限が異なるため、正しく理解しておくことが重要です。

  • レボノルゲストレル (LNG): 性交後72時間(3日)以内に服用します。排卵を抑制または遅延させることで妊娠を防ぎます。日本産科婦人科学会の指針によると、正しく服用した場合の妊娠阻止率は約85%とされています5
  • ウリプリスタル酢酸エステル (UPA): 性交後120時間(5日)以内に服用します。レボノルゲストレルよりも長時間、排卵を抑制する効果が期待できます13。国際的には広く使用されていますが、日本ではまだ新しい選択肢です。

どちらの薬剤も、服用が早ければ早いほど避妊効果は高まります。また、避妊効果は100%ではなく、服用後も妊娠する可能性があること、そして性感染症を防ぐ効果はないことを理解しておく必要があります5

2.2. 【最重要】日本での入手方法:3つのルートを完全解説

緊急避妊薬へのアクセスは、近年大きく変化しています。現在、日本で利用できる主な入手経路は以下の3つです。

ルート1:産婦人科での処方(対面診療)

従来からの最も標準的な方法です。医療機関を受診し、医師の診察を受けた上で処方されます。メリットは、医師に直接相談できる安心感や、必要に応じて性感染症の検査なども受けられる点です。一方、診療時間内に受診する必要があるため、時間的・地理的な制約や、心理的な負担を感じる場合があるという課題もあります。

ルート2:オンライン診療での処方

スマートフォンなどを利用して、自宅などから医師の診察を受け、薬を配送してもらう方法です。24時間対応しているサービスもあり、時間や場所を選ばずに受診できる利便性が最大の特長です13。厚生労働省が定めた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に準拠したサービスであれば、安心して利用できます23。多くのサービスがあり、料金や配送時間も様々です。

表2:主要オンライン診療サービスの比較例
サービス名 料金目安(診察料+薬代) 診療時間 配送スピード(目安)
クリニックフォア24 約9,680円~ 平日 9:00-20:45 / 土日祝 9:00-17:45 最短翌日
ソクピル25 約8,800円~ 24時間対応 最短当日(バイク便利用時)
エニピル26 約10,000円~ 24時間対応 最短翌日

注:上記は2025年時点での情報の一例です。最新の情報や詳細な条件は各サービスの公式サイトで必ずご確認ください。

ルート3:薬局での試験販売

これは、厚生労働省の委託を受けた日本薬剤師会が実施している調査研究事業であり、全国の限られた薬局でのみ行われています6。まだ「試験的」な取り組みであり、全国どこの薬局でも購入できるわけではない点に注意が必要です。対象薬局は、事業の公式サイトで確認できます27。この制度を利用する際の手順は以下の通りです。

  1. 対象薬局を検索し、事前に連絡する。
  2. 薬局を訪問し、個室等のプライバシーが確保された空間で、研修を受けた薬剤師と面談する。
  3. 研究の趣旨について説明を受け、同意書に署名する。
  4. 身分証明書を提示する。
  5. 薬剤師の面前で内服する。
  6. 費用(おおむね7,000円~9,000円程度)を支払う。
  7. 後日、アンケートに協力する。

この事業は、緊急避妊薬へのアクセスを改善するための重要な一歩ですが、利用には厳格な要件があることを理解しておく必要があります28


3. その他の避妊法:注射とインプラント

世界には、ピル以外にも様々なホルモン剤による避妊法が存在します。日本ではまだ承認されていませんが、国際的には広く利用されている選択肢として、避妊注射と避妊インプラントがあります。

避妊注射(デポプロベラなど): 3ヶ月に1回、腕やお尻に筋肉注射することで、高い避妊効果が持続します15。毎日ピルを飲む手間がありませんが、一度注射すると効果が3ヶ月間続くため、副作用が出てもすぐには止められない、妊娠を望んだ時に排卵の回復が遅れることがある、などの欠点もあります。

避妊インプラント(ネクスプラノンなど): 上腕の内側に、数センチの小さな棒状の装置を埋め込む方法です。約3年間、持続的にホルモンを放出し、高い避妊効果を維持します17。挿入と除去には、医師による簡単な処置が必要です。

これらの方法は、日本では未承認のため、一部の医療機関が医師の責任のもとで薬剤を個人輸入し、自由診療(保険適用外)として提供しているのが現状です1517。ここで極めて重要なのは、未承認薬による健康被害が発生した場合、日本の公的な「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となるという重大な危険性です14。これらの方法を検討する際は、その利点だけでなく、この重大な危険性も十分に理解した上で、信頼できる医療機関と慎重に相談する必要があります。


4. あなたに最適な避妊法を選ぶための実践的ガイド

これまで解説してきた情報を基に、ご自身の状況に合った避妊法を考えるための実践的な手引きを提案します。これはあくまで考えるための道具であり、最終的な決定は必ず医師と相談してください。

セルフチェックリスト

以下の質問にご自身で答えてみることで、相談すべきポイントが明確になります。

  • 毎日決まった時間に薬を飲むことは苦になりませんか?
    →「はい」なら、低用量ピルやミニピルは良い選択肢です。
    →「いいえ」なら、飲み忘れの危険性が少ない他の方法(避妊リング(IUD)、避妊注射など)も医師に相談してみましょう。
  • 血栓症の危険因子(35歳以上で喫煙、肥満、家族歴など)はありますか?
    →「はい」なら、エストロゲンを含まないミニピルや他の避妊法が推奨されます。必ず医師に伝えてください8
  • 月経痛が重い、経血量が多いといった悩みはありますか?
    →「はい」なら、治療目的のLEP(保険適用のピル)を処方してもらうことで、生活の質(QOL)の改善も期待できます4
  • 費用はどのくらいまで許容できますか?
    → 費用を抑えたい場合、もし月経困難症などの症状があれば、保険適用のLEPが選択肢になります。

ライフスタイル別の推奨シナリオ

  • ペルソナA:多忙な社会人で、生理痛も重い
    保険適用となる可能性のあるLEP(低用量ピル)は、避妊と同時に月経困難症の治療もでき、生活の質の向上に繋がる可能性があります。通院が難しい場合は、オンライン診療も便利な選択肢です。
  • ペルソナB:特定のパートナーはおらず、性交渉の機会がある
    ピルは高い避妊効果を提供しますが、性感染症(STI)を防ぐことはできません。そのため、ピルとコンドームを併用する「二重防御(デュアルプロテクション)」が、あなた自身を最も確実に守る方法です。この考え方は、日本産科婦人科学会の指針でも推奨されています29

よくある質問

ピルを飲むと太るというのは本当ですか?

一昔前の高用量ピルでは、ホルモンの影響で食欲増進やむくみが起こり、体重が増加することがありました。しかし、現在主流の低用量・超低用量ピルでは、そのような副作用は大幅に軽減されています19。一部の方でむくみを感じることがありますが、多くは一時的なものです。体重増加とピルの服用に直接的な因果関係はないとする研究が多数です。もし体重の変化が気になる場合は、自己判断で服用を中止せず、処方医に相談してください。

未成年でもピルは処方してもらえますか?

はい、医師が必要と判断すれば、未成年でもピルを処方してもらうことは可能です。日本産科婦人科学会のガイドラインでも、若年女性へのピル処方は、意図しない妊娠を防ぐために重要であるとされています4。ただし、医療機関によっては保護者の同意を求められる場合があります。まずは一人で悩まず、信頼できる産婦人科医に相談することが大切です。オンライン診療でも、年齢に応じて保護者の同席や同意書が必要になることがあります。

ピルを長期間飲み続けると、将来妊娠しにくくなりますか?

いいえ、その心配はありません。ピルの服用が将来の妊娠能力に悪影響を与えるという科学的根拠はありません4。ピルは服用している間だけ排卵を抑制するもので、服用を中止すれば、体のホルモン周期は自然な状態に戻り、排卵も再開します。回復までの期間には個人差がありますが、通常は数ヶ月以内に月経周期が戻ります。

アフターピルを飲んだ後、次の生理はいつ来ますか?

アフターピルを服用すると、ホルモンバランスが一時的に変化するため、次の月経周期が乱れることがあります。多くの場合は、予定通りか、数日早く来ることが多いですが、1週間以上遅れることもあります5。もし予定日を大幅に過ぎても月経が来ない場合や、出血が普段と違う場合は、妊娠の可能性も考えられるため、医療機関を受診して確認することが推奨されます。


結論:自分自身の健康と未来のために、主体的に選ぶ

避妊は、単に妊娠を避けるという受動的な行為ではありません。それは、女性が自分自身の健康、キャリア、そして人生設計を主体的にコントロールするための、極めて重要で積極的な権利であり、そのための強力な道具です7。この記事で見てきたように、現代の日本には、低用量ピルから緊急避妊薬まで、様々な選択肢が存在します。

完璧な避妊法というものは存在せず、どの方法にも利点と欠点があります。最も大切なことは、インターネット上の不確かな情報に惑わされるのではなく、日本産科婦人科学会などの権威ある機関が示す、信頼できる科学的根拠に基づいて、あなた自身の体質、健康状態、生活習慣、そして価値観に合った方法を、専門家である医師と十分に相談しながら、あなた自身が主体的に選ぶということです。

そして最後に、忘れてはならないのは、ホルモン剤による避妊法は性感染症を防ぐことはできないという事実です。あなたとパートナーの健康を守るためには、コンドームの使用が依然として不可欠です29。正しい知識を武器に、ご自身の健康と未来を守るための、最善の一歩を踏み出しましょう。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  2. 国際協力NGOジョイセフ(JOICFP). 日本の避妊方法から考える. 2017 [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.joicfp.or.jp/jpn/2017/06/05/37254/
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  4. 日本産科婦人科学会, 日本女性医学学会編. OC・LEPガイドライン 2020年度版. 2021. Available from: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00641/
  5. 日本産科婦人科学会. 緊急避妊法の適正使用に関する指針(令和7年改訂版). 2025 [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.jsog.or.jp/news/pdf/kinkyuhinin_shishin202504.pdf
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  8. Centers for Disease Control and Prevention. U.S. Medical Eligibility Criteria for Contraceptive Use, 2024. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.cdc.gov/contraception/hcp/usmec/index.html
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  26. エニピル. [公式サイト]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://anypill.online/
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