【卵巣嚢腫】見逃せない5つのサインと初期症状|原因・危険性・治療と受診の目安
女性の健康

【卵巣嚢腫】見逃せない5つのサインと初期症状|原因・危険性・治療と受診の目安

卵巣嚢腫(卵巣のう腫)は、卵巣の中や表面にできる「液体がたまった袋状のしこり(嚢胞)」のことです。厚生労働省の情報でも、卵巣のう腫は「多くは良性」で、初期には自覚症状がないことが一般的だと説明されています。1

ただし、腫瘍(卵巣腫瘍)として扱う必要があるケースもあり、日本婦人科腫瘍学会(JSGO)は「卵巣腫瘍は小さいと無症状が多い一方、大きくなると頻尿・便秘・腹部膨満などを起こし、ねじれ(茎捻転)や破裂では激しい下腹痛で緊急手術が必要になることがある」と整理しています。2

この記事では、まず「見逃せない5つのサイン」をチェックし、次に原因・検査・治療の考え方、そして「いつ・どこに相談すべきか」を、厚生労働省、国内学会(日本産科婦人科学会・日本婦人科腫瘍学会)、国立がん研究センターなどの公的情報と、海外の信頼できる医療情報(Mayo Clinic、NHS、米国HHS Office on Women’s Healthなど)をもとに、生活者目線でわかりやすく解説します。12345

なお、卵巣嚢腫は「放っておけば必ず悪化する」ものでも、「自分で見分けて大丈夫」と言い切れるものでもありません。Mayo Clinicは、ほとんどは自然に消える一方で、ねじれ(卵巣捻転)や破裂などの重い合併症が起こり得るため、危険な症状を知っておくことが重要だとしています。6

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要点まとめ

  • 卵巣嚢腫は「初期は無症状」「多くは良性」とされますが、サイズが大きくなると腹部の張りや下腹部痛などが出ることがあります。126
  • 見逃せないサインは、①下腹部痛・重だるさ、②お腹の張り・ウエストがきつい、③頻尿や便秘、④月経の変化(不正出血・量の変化など)、⑤性交痛や腰・太ももの鈍い痛みです。2456
  • 突然の激しい下腹部痛、痛みに吐き気・嘔吐や発熱が伴う、ふらつき・冷や汗などがある場合は、ねじれ(茎捻転)や破裂の可能性があり、早急な受診が必要です。156
  • 日本婦人科腫瘍学会(JSGO)は、画像で4〜6cm以上、充実性部分がある、痛みがある、急激な痛み(捻転・破裂)がある場合は手術を検討し得ると整理しています。2
  • 検査は、問診・内診、経腟超音波、必要に応じてCT/MRIや腫瘍マーカーなどで性状を評価します。234
  • 「経過観察でよい部分」と「医療で見極めるべき部分」を分けることが重要です。特に閉経後は悪性の可能性も相対的に上がるため、医療者の評価がより重要になります。4
  • 受診のハードルを感じる方も少なくありませんが、厚生労働省の情報でも、月経や婦人科症状がある場合は早めの婦人科・産婦人科受診が勧められています。1

第1部:卵巣嚢腫の基本と日常生活の見直し

卵巣嚢腫は、日々の生活の中で突然気づくこともあれば、健診や別の理由の超音波検査で偶然見つかることもあります。日本婦人科腫瘍学会(JSGO)は、卵巣腫瘍は小さいうちは無症状で、偶然発見されることも少なくないと説明しています。2

1.1. 基本的なメカニズム・体の仕組み

卵巣は子宮の左右に1つずつあり、排卵(卵子を放出すること)を通じて月経周期に関わる臓器です。Mayo Clinicは、卵巣嚢腫を「卵巣の中や表面にできる、通常は液体で満たされた袋」と定義し、月経周期の過程でできる“機能性嚢胞”がもっとも一般的だと説明しています。6

イメージとしては、「卵巣の中に水風船のような袋ができる」状態です。袋が小さいうちは気づきにくいのですが、袋が大きくなると周囲(膀胱や直腸、骨盤内の組織)を押して、圧迫感や排尿・排便の変化として現れることがあります。日本婦人科腫瘍学会(JSGO)も、腫瘍が大きくなると頻尿や便秘を生じ得るとしています。2

1.2. 悪化させてしまうNG習慣

卵巣嚢腫そのものを「生活習慣だけで治す」ことはできません。ただし、症状をこじらせたり、受診のタイミングを遅らせたりする行動は避けたいところです。特に日本では「迷惑をかけたくない」「忙しいから後回し」と我慢しやすく、厚生労働省の情報でも、月経に伴う不調があっても何もしていない人が多い一方で、早めの婦人科受診が勧められています。1

  • 痛みや張りを我慢し続ける:症状が続く場合、医療で「経過観察でよい状態か」を見極める価値があります。14
  • 急に強い痛みが出たのに様子を見る:日本産科婦人科学会(JSOG)は、破裂やねじれ(茎捻転)では突然激しい腹痛が起き、直ちに産婦人科受診が必要としています。3
  • 痛み止めだけで長期に先延ばし:一時的にラクになっても原因評価が遅れることがあります(必要な検査がある場合)。14
  • 強い運動や性交で痛みが増すのに繰り返す:Mayo Clinicは、骨盤に影響する激しい活動(性交など)で破裂リスクが上がることがあると説明しています。6

1.3. 卵巣嚢腫で見逃せない5つのサイン(初期症状のヒント)

卵巣嚢腫は無症状のことも多い一方、症状が出る場合には“圧迫”や“炎症・出血”などの形でサインが現れます。ここでは、複数の公的・学会情報に共通して出てくる代表的なサインを、生活者が気づきやすい形にまとめます。12456

  1. 下腹部の痛み・重だるさ(片側に出ることも):Mayo Clinicは、大きな嚢腫で骨盤痛が出ることがあるとしています。6
  2. お腹の張り・膨満感、ウエストがきつくなる:JSOGは、腫瘍が大きくなったり腹水がたまると腹部膨満感が出ると説明しています。3 国立がん研究センターも、服のウエストがきつくなるなどの変化が受診のきっかけになることがあるとしています(悪性疾患の情報ですが、症状の“気づき方”として参考になります)。5
  3. 頻尿・尿意が近い、あるいは便秘:JSGOは、腫瘍が膀胱や直腸を圧迫して頻尿や便秘を生じ得るとしています。2 NHSも頻尿や便通の変化を症状として挙げています。4
  4. 月経の変化(量の増減・不規則・いつもと違う出血):NHSは、過多月経・不規則・いつもより軽いなどの月経変化を挙げています。4 Office on Women’s Health(米国HHS)も、不正出血などが起こり得るとしています。5
  5. 性交痛、腰・太ももの鈍い痛み:Office on Women’s Healthは、性交痛や腰〜太ももの鈍い痛みを症状として挙げています。5

ポイントは「1つだけで決めつけない」ことです。例えば“頻尿”は膀胱炎でも起こりますし、“お腹の張り”は便秘や食事でも起こります。だからこそ、複数のサインが重なる、いつもより強い、数週間〜数カ月続く、というときに「婦人科で確認する」という選択が安心につながります。14

表1:セルフチェックリスト(卵巣嚢腫のサインと背景の例)
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ(例)
下腹部の痛みや重だるさが、数週間以上続く/月経周期と無関係に出る 卵巣嚢腫(症状の出る嚢胞)、子宮内膜症性嚢胞など/別の婦人科疾患の可能性も
お腹の張りが続く、ウエストがきつい、食後すぐ満腹になる感じが増えた 嚢腫・腫瘍の増大による圧迫、腹水(まれ)など(評価が重要)
トイレが近い/尿が出にくい感じ、便秘が続く 膀胱・直腸への圧迫(サイズが大きい可能性)
生理が不規則、量が急に変わる、普段と違う出血がある ホルモン変動、嚢腫・他の婦人科疾患/妊娠の可能性も含めて確認が必要
性交痛がある/腰〜太ももに鈍い痛みがある 子宮内膜症性嚢胞、骨盤内の炎症・癒着などの可能性
突然の激しい下腹部痛(片側が多い)+吐き気・嘔吐/冷や汗 茎捻転(ねじれ)や破裂、出血などの緊急状態の可能性

第2部:身体の内部要因 — ホルモン・基礎疾患・ライフステージ

生活習慣の乱れが直接「卵巣嚢腫を作る」と単純には言えません。背景には、排卵に伴う生理的な変化(機能性嚢胞)や、子宮内膜症などの基礎疾患、妊娠、骨盤内感染症などが関わることがあります。Mayo Clinicおよび米国HHS Office on Women’s Healthは、原因としてホルモン要因、排卵誘発薬、妊娠、子宮内膜症、重い骨盤内感染などを挙げています。56

2.1. 【特に女性】ライフステージとホルモンバランス

卵巣は月経周期の中で卵胞が育ち、排卵後に黄体が変化していきます。この過程で、卵胞がうまく破れずに液体がたまる、排卵後の黄体が縮まずに液体がたまるなどで“機能性嚢胞”ができます。Mayo Clinicは、多くの嚢腫は月経周期の結果として生じる機能性嚢胞であると説明しています。6

妊娠初期にも、妊娠を支えるために嚢腫(黄体由来)が見られることがあり、Office on Women’s Healthは、通常は初期妊娠で生じ、後期まで残る場合は除去が検討されることがあると説明しています。5

一方、閉経後は「機能性嚢胞ができにくい」ため、見つかった嚢胞・腫瘍は“性状評価(良性か、境界悪性・悪性の可能性があるか)”がより重要になります。NHSは、がん性の嚢胞は閉経後でより多いと述べています。4

2.2. 子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)と痛み・不妊の不安

子宮内膜症が卵巣に及んでできる嚢胞は、月経痛、骨盤痛、性交痛など“痛み”に関わりやすく、日常生活や仕事の集中にも影響します。厚生労働省の情報でも、子宮内膜症は骨盤痛や性交痛、不妊の原因になり得ると説明されています。1

治療の考え方として、日本婦人科腫瘍学会(JSGO)は、良性腫瘍のうち「子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)はホルモン療法で縮小することがあるが、他の腫瘍は薬で縮小は期待しにくい」と整理しています。2 つまり、同じ“嚢胞”でも種類によって、薬の位置づけが変わるということです。

2.3. 感染・排卵誘発薬・既往(再発)など

重い骨盤内感染症が卵巣や卵管に広がると嚢胞が形成され得ること、排卵を促す薬(例:排卵誘発)が関係する場合があることは、Mayo ClinicやOffice on Women’s Healthでも触れられています。56

また、「以前に嚢腫があった人は、またできることがある」という点もMayo Clinicが触れています。6 だからこそ、診断後は“自分に必要なフォロー”を医療者と一緒に決めていくことが現実的です。

2.4. なぜ「頻尿」「便秘」「腰の痛み」が起こるのか(圧迫の話)

卵巣は骨盤の深いところにあり、近くには膀胱(前側)や直腸(後ろ側)があります。嚢腫が大きくなると、これらを押して「トイレが近い」「尿が出にくい」「便秘」といった症状として現れることがあります。JSGOは、腫瘍の増大で膀胱や直腸の圧迫により頻尿や便秘が生じ得ると説明しています。2

同時に、圧迫や骨盤内の緊張は腰や太ももの鈍い痛みとして感じることがあり、Office on Women’s Healthも腰〜太ももの鈍い痛みを症状の1つとして挙げています。5

第3部:専門的な診断が必要な疾患

セルフケアの工夫(体を温める、痛みの記録を取る、無理を減らすなど)は役に立ちますが、卵巣嚢腫は「検査で性状を見極める」ことが重要です。ここでは、見極めのポイント(合併症・鑑別・検査の流れ)を整理します。246

3.1. 緊急性が高い状態:茎捻転(ねじれ)・破裂・出血

卵巣嚢腫の合併症で特に注意したいのは、卵巣(または付属器)がねじれて血流が途絶える「卵巣捻転(茎捻転)」と、嚢腫が破れて腹腔内で痛みや出血が起こる「破裂」です。Mayo Clinicは、嚢腫のねじれや破裂が重い症状を起こし得ること、そして「突然の強い腹部・骨盤痛」「発熱や嘔吐を伴う痛み」「ショックの兆候(冷や汗、速い呼吸、ふらつきなど)」があれば直ちに医療を受けるべきだとしています。6

Office on Women’s Healthも、痛み+発熱や嘔吐、突然の激しい腹痛、ふらつき・めまい・脱力、呼吸が速いといった症状があれば、すぐ医療を受けるよう示しています。5 日本産科婦人科学会(JSOG)も、破裂や茎捻転では突然激しい腹痛が起こり、直ちに産婦人科受診が必要と述べています。3

もし日本で「今この瞬間に強い痛みがある」「冷や汗・嘔吐・意識が遠のく」などがあれば、迷わず救急(119)を利用することも選択肢です。命に関わるケースは多くありませんが、“見逃したときの損失”が大きいのがこの領域です。56

3.2. 卵巣がん(卵巣腫瘍の悪性)との区別が必要なケース

卵巣嚢腫の多くは良性ですが、「悪性の可能性を評価する」ことは欠かせません。国立がん研究センター(がん情報サービス)は、卵巣がん・卵管がんは初期に症状が出にくい一方で、ウエストがきつい、下腹部のしこり、食欲低下、頻尿、便秘、脚のむくみ、腹水による腹部膨満などをきっかけに受診し診断されることがあると説明しています。5

ここで大事なのは、「症状だけで良性・悪性を自己判定しない」ことです。JSOGやJSGOは、超音波で嚢胞性(液体主体)か充実性(固形成分)かを評価し、充実性部分があれば悪性や境界悪性も疑って精査する、という考え方を示しています。23

3.3. 代表的な検査の流れ:問診・内診→経腟超音波→必要に応じて画像検査・血液検査

検査の基本は、症状の経過や月経・妊娠可能性、既往歴・家族歴を確認し、内診(必要に応じて)と経腟超音波検査で卵巣を観察することです。JSOGは、卵巣腫瘍の診断で問診・内診、超音波検査を行い、性状評価(嚢胞性か充実性か)を進め、必要に応じてMRIや腫瘍マーカー測定を行うと説明しています。3

JSGOも、経腟超音波に加えてCT/MRIで他臓器との関係や性状、リンパ節などを観察し、良性・境界悪性・悪性の判断に役立てる一方、術前画像だけでは区別が難しいこともあり、必要に応じて術中迅速病理診断を行うことがあると述べています。2

血液検査については、Office on Women’s Healthが、閉経後にCA-125(腫瘍マーカー)を測定することがある一方、閉経前では他の疾患でも上昇し得るため慎重に解釈される、と説明しています。5

3.4. 治療の選択肢:経過観察・薬・手術(腹腔鏡/開腹)

治療は「種類(機能性か、子宮内膜症性か、腫瘍性か)」「大きさ」「見た目(充実性部分の有無)」「症状」「年齢(閉経前後)」「妊娠希望」などで決まります。246

経過観察:Mayo Clinicは、多くの嚢腫は数カ月で治療なしに自然に消えることが多いと説明しています。6 NHSも、超音波で見つかった嚢胞は数週間後に再検査して経過を追うことがあるとしています。4

薬(ホルモン関連):Mayo Clinicは、経口避妊薬などのホルモン避妊薬は排卵を抑えることで「新しい嚢腫ができるのを減らす可能性」がある一方、既にある嚢腫を小さくするわけではない、と説明しています。7 一方でJSGOは、子宮内膜症性嚢胞はホルモン療法で縮小することがあると述べています。2

手術:JSGOは、画像で腫瘍が4〜6cm以上、充実性部分がある場合などに手術を検討し得ること、急激な下腹痛(茎捻転・破裂など)の場合は緊急手術になり得ること、そして状況により腹腔鏡下手術(体への負担が少ない)や開腹手術が選択されること、妊娠希望があれば嚢胞摘出術(正常卵巣を残す)も選択肢になり得ることを説明しています。2

第4部:今日から始める改善アクションプラン

卵巣嚢腫の“根本治療”は、種類によって医療で決まります。ただし、今日からできることとして「危険サインの見極め」「症状の記録」「受診時に伝える情報を整える」だけでも、安心と適切な判断に直結します。Mayo Clinicも、月経の変化など“いつもと違う症状”を記録し、気になる変化は相談するよう勧めています。6

表2:改善アクションプラン(卵巣嚢腫の不安に向き合うステップ)
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること 「危険サイン」の確認と、痛みの扱いを安全にする 突然の激痛、痛み+嘔吐や発熱、ふらつき・冷や汗があれば救急(119)も検討/痛みが軽い場合は無理をせず休む(自己判断で強い運動を続けない)56
Level 2:今週できること 症状と月経の記録を作る 痛みの部位(右/左/中央)、強さ(0〜10)、持続時間、月経との関係、頻尿・便秘、性交痛、出血の有無をメモ/市販の月経管理アプリでも紙でも可6
Level 3:受診に向けて 婦人科・産婦人科での相談準備 妊娠可能性、服薬(ピル・ホルモン剤・排卵誘発薬など)、既往歴、家族歴、これまでの検査歴を整理/受診時に「いつから・どんな症状が・どのくらい続くか」を伝える345
Level 4:中長期のフォロー 医療者と一緒に「経過観察の間隔」「手術の要否」を決める 超音波での再評価(増大・性状変化の確認)/必要に応じてCT・MRI・腫瘍マーカーなどで精査/妊娠希望がある場合は温存手術の選択肢も相談245

「忙しいから受診は後で」と思うときほど、まずは“危険サインがないか”だけでも確認しておくと安心です。痛みが続く場合や、生活に支障が出る場合は、我慢しすぎず相談することが現実的な一歩になります。146

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

卵巣嚢腫の相談先は基本的に婦人科・産婦人科です。NHSは、症状がある場合は受診を勧め、突然の激しい骨盤痛や、痛み+吐き気・嘔吐があれば緊急の相談が必要としています。4 日本の文脈でも、JSOGは破裂や茎捻転で突然激しい腹痛が起こり得るため直ちに受診するよう示しています。3

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 突然の激しい下腹部痛/骨盤痛46
  • 痛みに吐き気・嘔吐、または発熱が伴う456
  • ふらつき、めまい、脱力、冷や汗、呼吸が速いなど(ショックを疑うサイン)56
  • 急激な痛みが出て、動けない・立てない(茎捻転や破裂などを疑い、救急対応が必要なことがあります)36

これらがある場合は、迷わず救急(119)や緊急受診を検討してください。恥ずかしさや「大げさかも」という気持ちがあっても、緊急の婦人科疾患は“早いほど選択肢が広がる”ことがあります。36

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 下腹部痛・張り・頻尿・月経の変化・性交痛:まずは婦人科/産婦人科へ(卵巣の評価は経腟超音波が基本になりやすい)234
  • 急激な強い痛み、吐き気・嘔吐、冷や汗、ふらつき:救急受診(夜間・休日は救急)を検討456
  • 妊娠の可能性がある:婦人科/産婦人科で妊娠関連の評価も含めて相談(妊娠初期の嚢腫もあり得るため)5

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 症状メモ:いつから/どこが/どれくらい痛いか、頻尿・便秘・出血の有無、性交痛など(表1のチェック項目がそのまま役立ちます)6
  • 月経の記録:周期、量、痛み、いつもと違う出血の有無4
  • お薬手帳・サプリ情報:ホルモン剤、ピル、排卵誘発薬などがあれば必ず共有6
  • 妊娠可能性の情報:最終月経、妊娠検査薬の結果など(必要に応じて妊娠検査で評価されます)5
  • 費用:日本では公的医療保険の範囲で検査が行われることが多い一方、検査内容(超音波、血液検査、MRI/CT等)で自己負担は変わります。具体的な負担は医療機関で確認してください。24

「何を言えばいいかわからない」という方は、まずは次の一文からで十分です。「下腹部の張り(または痛み)が続き、頻尿(または月経の変化)があって不安です。卵巣のう腫が心配なので、超音波で見ていただけますか?」——医療者はその情報をもとに、必要な問診と検査を組み立てます。34

よくある質問

Q1: 卵巣嚢腫は放っておくと危険ですか?

A: 多くは良性で、初期は無症状のこともあります。16 ただし、サイズが大きい場合や性状によっては、茎捻転(ねじれ)や破裂などの合併症が起こり得ます。26

突然の激しい痛みや、痛み+嘔吐・発熱、ふらつきなどがあれば緊急性があるため、すぐ受診(必要なら救急)を検討してください。456

Q2: 卵巣嚢腫の「5つのサイン」だけで自己診断できますか?

A: 自己診断はおすすめできません。症状は他の病気(膀胱炎、便秘、別の婦人科疾患など)でも起こり得ます。45

ただし、複数のサインが重なる、長引く、生活に支障がある場合は、婦人科で超音波検査などを受けて「卵巣の状態を確認する」ことが安心につながります。34

Q3: 卵巣嚢腫はがんになりますか?

A: 卵巣嚢腫の多くは良性ですが、卵巣腫瘍には良性・境界悪性・悪性があり、検査で性状評価が必要です。23

国立がん研究センターは、卵巣がんは初期症状が出にくい一方、腹部膨満、食欲低下、頻尿などをきっかけに見つかる場合があると説明しています。気になる症状が続く場合は早めに婦人科へ相談しましょう。5

Q4: 検査では何をしますか?痛いですか?

A: 一般的には問診(症状、月経、妊娠可能性、既往など)と、必要に応じて内診、経腟超音波検査で卵巣の大きさ・中身(液体主体か、固形成分があるか)を評価します。234

状況によりCT/MRI、血液検査(腫瘍マーカーなど)を追加して評価します。検査の感じ方には個人差があるため、不安が強い場合は遠慮なく医療者に伝えてください。25

Q5: 薬(ピルなど)で小さくなりますか?

A: 種類によります。Mayo Clinicは、ホルモン避妊薬は排卵を抑えて“新しい嚢腫ができるのを減らす可能性”はあるが、既にある嚢腫を縮小するわけではないと説明しています。7

一方で日本婦人科腫瘍学会(JSGO)は、子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)はホルモン療法で縮小することがあると述べています。2 「自分の嚢腫がどのタイプか」を医療者と確認することが第一歩です。

Q6: 妊娠や不妊に影響しますか?

A: 影響の有無は嚢腫の種類や状況によります。NHSは、多くの場合で生殖能力は通常影響されないとしつつ、妊娠しにくさが症状として現れることもあると説明しています。4

またJSGOは、妊娠希望がある場合、腫瘍のみを摘出して正常卵巣を残す手術(嚢胞摘出術)が選択肢になり得ると説明しています。妊娠を希望している方ほど、自己判断で放置せず早めに相談するメリットがあります。2

Q7: 性交痛があるのですが、卵巣嚢腫が原因ですか?

A: 性交痛は、卵巣嚢腫(特に子宮内膜症性嚢胞など)や骨盤内の癒着・炎症など、婦人科領域の要因で起こることがあります。Office on Women’s Healthも性交痛を症状の1つとして挙げています。5

一方で原因は多様です。痛みが続く、悪化する、出血を伴う場合は、婦人科で評価を受けてください。45

Q8: 受診の目安は「どれくらい続いたら」ですか?

A: 目安は症状の強さとパターンです。NHSは、症状がある場合は受診を勧め、特に突然の激しい痛みや、痛み+吐き気・嘔吐がある場合は緊急の相談が必要としています。4

「軽いけれど繰り返す」「いつもと違う症状が数週間以上続く」「複数のサインが重なる」場合も、検査で安心を得る意味があります。6

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

卵巣嚢腫は、初期に無症状で経過することも多く、多くは良性とされます。16 しかし、サイズや性状によっては、圧迫症状(張り・頻尿・便秘)や痛みが出たり、ねじれ(茎捻転)・破裂といった緊急性の高い状態が起こり得ます。236

今日からできる最も重要なことは、「見逃せない5つのサイン」を知り、危険な症状があれば迅速に受診すること、そして症状が続く場合は婦人科で超音波などの評価を受けることです。46

誰にも相談しにくいテーマですが、早めに状況を把握することは“自分と大切な人を守る行動”です。無理に我慢せず、必要なときは医療者に頼ってください。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。

本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、厚生労働省、国立がん研究センター、日本の専門学会(日本産科婦人科学会・日本婦人科腫瘍学会)などの一次情報、および海外の信頼できる医療情報(Mayo Clinic、NHS、米国HHS Office on Women’s Health等)を照合しながら作成しました。1234567

本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

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参考文献

  1. 厚生労働省. 働く女性の心とからだの応援サイト「月経について(女性特有の健康課題)」. https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menstruation.html(最終アクセス日:2025-12-23)

  2. 公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会(JSGO). 卵巣腫瘍(市民の皆さまへ). https://jsgo.or.jp/public/ransou.html(最終アクセス日:2025-12-23) 

  3. 公益社団法人 日本産科婦人科学会(JSOG). 卵巣の腫瘍とがん(市民のみなさまへ). https://www.jsog.or.jp/citizen/5715/(最終アクセス日:2025-12-23)

  4. NHS. Ovarian cyst. https://www.nhs.uk/conditions/ovarian-cyst/(最終アクセス日:2025-12-23) 

  5. National Cancer Center Japan(国立がん研究センター がん情報サービス). 卵巣がん・卵管がん. https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/index.html(最終アクセス日:2025-12-23)

  6. Mayo Clinic. Ovarian cysts – Symptoms and causes. https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/ovarian-cysts/symptoms-causes/syc-20353405(最終アクセス日:2025-12-23)

  7. Mayo Clinic. Ovarian cysts – Diagnosis and treatment. https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/ovarian-cysts/diagnosis-treatment/drc-20353411(最終アクセス日:2025-12-23)

  8. U.S. Department of Health & Human Services, Office on Women’s Health. Ovarian cysts. https://womenshealth.gov/a-z-topics/ovarian-cysts(最終アクセス日:2025-12-23) 

  9. NCBI Bookshelf(StatPearls). Ovarian Cyst. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK560541/(最終アクセス日:2025-12-23) 

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