甲状腺がんの手術や放射性ヨウ素内用療法を控えているとき、「何を食べてよくて、何を控えたほうがいいのか」が気になって、毎日の食事が不安になってしまう方は少なくありません。 特に日本では、昆布やわかめなどヨウ素を多く含む食品が身近にあるため、「海藻は一切ダメなの?」「一生ヨウ素制限を続ける必要があるの?」と悩む声もよく聞かれます。
しかし、甲状腺がんの治療中に必要とされる「低ヨウ素食(ヨウ素制限食)」は、多くの場合ごく限られた期間だけです。 それ以外の時期には、極端な制限ではなく「バランスのよい食事」と「感染症を避けるための安全な食べ方」が大切になります。
この記事では、厚生労働省や国立がん研究センターがん情報サービスなどの公的情報、甲状腺疾患に関する日本の専門学会・病院の資料、海外のガイドラインや論文をもとに、 甲状腺がん患者さんが押さえておきたい「食事で控えたいもの・食べてよいもの・上手な付き合い方」を、できるだけ分かりやすく整理します。 放射性ヨウ素治療前の短期的な食事制限と、治療全体を通して意識したい長期的な食生活のポイントを分けて解説しますので、ご自身の状況と照らし合わせながら読んでみてください。
なお、ここで紹介する内容はあくまで一般的な情報です。 実際の食事制限の期間や細かいルールは、病院・主治医の方針や検査・治療の内容によって異なります。 「自分の場合はどうしたらいいのか」が分からないときは、必ず担当の医師や管理栄養士に相談しましょう。
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Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、国立がん研究センターがん情報サービス、厚生労働省の資料、日本核医学会や甲状腺疾患専門病院の情報、世界保健機関(WHO)や海外のガイドライン・論文などの一次情報に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:がんの治療と療養生活に関する公式情報、統計資料など、日本人向けの信頼できる情報を優先して参照しています。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本核医学会の放射性ヨウ素内用療法ガイドラインや、低ヨウ素食に関する研究・レビュー論文など、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています。
- 甲状腺専門病院・教育機関・医療機関の一次資料:ヨウ素と甲状腺の関係、食事制限の目的や注意点など、実際の診療現場に即した説明を参考にしています。
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要点まとめ
- 甲状腺がんの治療では、放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)前の短期間だけ「低ヨウ素食(ヨウ素制限食)」が必要になることが多く、その期間以外は「バランスのよい普通の食事」が基本です。
- 低ヨウ素食中は、昆布・わかめ・ひじきなどの海藻類、だしや加工食品、乳製品、卵黄、ヨウ素を含むサプリメントなど、ヨウ素を多く含む食品をしっかり控えることが重要です。
- 一方で、肉や鶏肉、精製した米・パン、ヨウ素を含まない塩、野菜・果物・ナッツ類など、ヨウ素が少ない食品はしっかり食べてエネルギーとたんぱく質を確保することが、体力維持や治療の副作用軽減につながります。
- 手術後や治療中は、感染症にかかりやすくなったり、飲み込みにくさ・味覚の変化が出ることがあります。やわらかく飲み込みやすい調理法や、衛生的な食事の準備を心がけましょう。
- 食事制限の内容や期間は、病院ごと・治療内容ごとに異なります。「ネットで見た情報」と自分の指示が違う場合は、迷わず担当医・管理栄養士の指示を最優先にしてください。
「これを食べたら再発するのでは?」「海藻を一口でも食べたら治療に影響する?」――そんな不安から、食事が楽しくなくなってしまっている方もいるかもしれません。 しかし、甲状腺がんと食事の関係は、「いつ」「どの治療のために」「どのくらいの期間」制限するのかによって大きく変わります。
本記事では、まず放射性ヨウ素治療の仕組みとヨウ素制限の目的を整理し、そのうえで日常生活で見直したい食習慣、注意したい食品、今日から実践できる食べ方の工夫を段階的に紹介します。 「一生続ける厳しい食事制限」ではなく、「必要な時期に、必要な部分だけしっかり調整する」ことをイメージできるようになることがゴールです。
必要に応じて、がんと生活習慣に関する総合ガイドや、 他の治療法・症状に関する解説記事など、JHO内の関連記事にも触れながら、全体像をつかみやすく解説していきます。
この記事を読み進めることで、「自分の治療スケジュールでは、いつどのような食事制限が必要なのか」「普段の食事では何を大切にすればよいのか」が具体的にイメージできるようになるはずです。
第1部:甲状腺とヨウ素の基本と、日常生活の見直し
まずは、「甲状腺はどのような臓器か」「ヨウ素とどのような関係があるのか」を簡単に整理し、そのうえで日常生活で見直しやすいポイントを確認していきましょう。 仕組みを知ることで、「なぜ今この食事制限が必要なのか」が理解しやすくなり、無理のない範囲で協力しやすくなります。
1.1. 甲状腺とヨウ素の基本的な仕組み
甲状腺は、首の前側にある小さな臓器で、T3(トリヨードチロニン)やT4(サイロキシン)というホルモンをつくっています。 これらのホルモンは、体温の調整、心臓の動き、腸の動き、脳の働き、筋肉のエネルギー代謝など、ほぼ全身の機能を「ちょうどよいスピード」に保つ役割を担っています。
甲状腺ホルモンをつくる際に欠かせない材料がヨウ素です。 ヨウ素は海藻類や魚介類、ヨウ素添加塩などに多く含まれるミネラルで、普通の生活では日本人の多くが十分な量を摂取できています。 甲状腺疾患専門病院の解説でも、日本は「ヨウ素充足地域」とされており、通常の食事であればヨウ素を気にしすぎる必要はないと説明されています5。
一方で、放射性ヨウ素内用療法の前には、あえてヨウ素の摂取量を減らす必要があります。 からだの中のヨウ素を少なくしておくと、放射性ヨウ素が残っている甲状腺がんの細胞により集まりやすくなり、治療効果を高められる可能性があるためです2。
1.2. 悪化させてしまうNG習慣と、見直したい日常のポイント
甲状腺がんと診断されると、「健康のために何かしなければ」と思うあまり、自己判断で極端な食事制限をしてしまう方もいます。 しかし、過度な制限は栄養不足や体力低下につながり、かえって治療を乗り切りにくくなることがあります。 ここでは、特に見直したいNG習慣と、その代わりに意識したい行動を整理します。
- 自己判断で「海藻・魚介類を一生禁止」にしてしまう
低ヨウ素食が必要なのは、多くの場合「放射性ヨウ素治療や特定の検査の前後」の限られた期間です。 それ以外の時期まで一律に海藻や魚介類を完全に避けると、カルシウムやビタミンD、良質な脂質などの摂取が不足する恐れがあります。 - 加工食品・インスタント食品に頼りすぎる
外食やコンビニ食品が続くと、知らないうちに「昆布だし入り」「海藻エキス入り」の調味料やスープをとってしまい、低ヨウ素食の期間に十分な制限ができないことがあります。 普段から「原材料表示をちらっと確認する」習慣をつけておくと安心です。 - アルコール・甘い飲み物を習慣的にとりすぎる
甲状腺がんに限らず、がんの治療中・治療後は飲酒を控え、糖分の多い飲料もとりすぎないほうがよいとされています。 肝臓や体重管理への負担を減らすことが、治療後の体調管理にもつながります。 - 疲れているのに食事を抜いてしまう
食欲が落ちているときに食事を抜くと、さらに体力が落ち、治療の副作用にも耐えにくくなります。 少量でもエネルギーとたんぱく質を含むもの(おかゆに卵の白身や鶏ささみを加える、ヨウ素が少ない時期なら豆腐を使うなど)をこまめにとる工夫が大切です。
低ヨウ素食が必要な時期とそうでない時期を分けて考え、「必要なときにしっかり制限し、それ以外はバランスを重視する」ことが、結果的に治療の質と生活の質(QOL)を守ることにつながります。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる背景・見直したいポイント |
|---|---|
| 放射性ヨウ素治療前なのに、数日前まで昆布だしの濃い鍋物や海藻サラダをよく食べていた | ヨウ素の摂取量が多くなっている可能性。治療日までの食事計画を主治医・栄養士に確認し、海藻・魚介類を中心に見直す。 |
| 食欲不振で、菓子パンや甘い飲み物だけで済ませてしまうことが多い | たんぱく質・ビタミン・ミネラル不足のリスク。ヨウ素量を確認しながら、肉・卵白・豆腐・野菜スープなどを少しずつ追加する。 |
| 手術後に飲み込みづらさがあり、固いものやパサパサしたものがつかえてしまう | むせや誤嚥を避けるため、とろみをつける・やわらかく煮る・小さく刻むなどの工夫が必要。必要に応じてリハビリや専門外来へ相談。 |
第2部:身体の内部要因 — 栄養・ホルモン・隠れた不調と低ヨウ素食
生活習慣を整えても、甲状腺がんそのものや治療の影響で、ホルモンバランスや栄養状態が大きく変化することがあります。 ここでは、特に女性に多いホルモンの変化や、栄養不足・低ヨウ素食のポイントを整理します。
2.1. 【特に女性】ライフステージと甲状腺ホルモンのバランス
女性は、月経・妊娠・出産・更年期など、ライフステージに応じてホルモンバランスが大きく変化します。 甲状腺ホルモンの働きは、月経周期や妊娠の維持にも関わっているため、甲状腺がんの治療中・治療後は、月経の変化や妊娠計画について主治医と相談しておくことが大切です。
一般に、甲状腺がんは他のがんと比べて予後が良いとされ、適切な治療とホルモン補充を行えば、妊娠・出産が可能なケースも多いと報告されています。 ただし、放射性ヨウ素内用療法は妊娠中や授乳中には行えないため、治療と妊娠をどのような順番で計画するか、医師と綿密に話し合う必要があります。 食事面では、鉄分・葉酸・カルシウム・たんぱく質など、妊娠期に必要な栄養を意識しつつ、ヨウ素制限が必要な時期には海藻以外の食材で補う工夫が重要です。
2.2. 栄養不足・隠れた欠乏状態を防ぐためのポイント
甲状腺がんの手術後や放射線治療、薬物療法の影響で、食欲低下・味覚の変化・疲れやすさが続くことがあります。 その結果、エネルギーやたんぱく質、ビタミン・ミネラルが不足し、「見た目にはあまり痩せていないのに筋肉量が落ちている」といった状態になることもあります。
とくに以下のようなサインがある場合は、栄養状態の悪化が疑われます。
- 体重が意図せず数か月で3〜5kg以上減っている
- 階段の上り下りや短い距離の歩行でも、以前より疲れやすい
- 傷の治りが遅い、風邪をひきやすくなった
- 食事量が明らかに減ったのに、何となく放置してしまっている
食事からの改善が難しいときは、病院の栄養サポートチームや管理栄養士に相談し、補助的な栄養食品や、飲み込みやすいレシピを紹介してもらうことも一つの方法です。 低ヨウ素食が必要な時期でも、条件を満たせば使用できる栄養補助食品が用意されている場合がありますので、自己判断で完全に避けるのではなく、指示を受けて選びましょう。
2.3. 低ヨウ素食とは?いつ・どのように必要になる?
低ヨウ素食(ヨウ素制限食)とは、一日のヨウ素摂取量をおおむね50μg未満に抑えることを目標とした食事を指し、放射性ヨウ素内用療法や一部の検査の前に行われます6。 海外の学会では「1〜2週間程度の低ヨウ素食」が推奨されており、日本でも多くの施設で治療の約2週間前からヨウ素制限を行う方法がとられています2,4。
日本核医学会の委員会が作成した資料では、食品を「食べてよいもの」「量に注意するもの」「食べることを禁止するもの」の3つに分類し、ヨウ素含有量をもとに具体的なメニュー例が示されています4,3。 代表的な分類のイメージは次の通りです。
- 食べてよい(ヨウ素が少ない)食品の例
白米・うどん・そうめんなどの精製された穀類/肉類(牛・豚・鶏)/多くの野菜・果物/油脂・砂糖/ヨウ素を含まない食塩 など - 量に注意する食品の例
卵(特に卵黄)/乳製品少量/一部の魚介類/加工食品の一部 など(病院ごとの基準による) - 食べないことが推奨される食品の例
昆布・わかめ・ひじきなどの海藻類/昆布だし・海藻エキス入りスープ/ヨウ素添加塩・海塩/海藻を原料とするサプリメント など
重要なのは、低ヨウ素食はあくまで「治療準備のための短期的な食事療法」であり、通常は数週間以上にわたって続ける必要はないことです。 甲状腺専門病院の説明でも、「放射性ヨウ素内用療法という治療の前には一定期間ヨウ素制限を行うが、この場合は必ず医師の指示に従うこと」とされています4,7,8。 期間や細かい禁止食品のリストは施設ごとに異なるため、配布されたパンフレットやレシピ集をよく読み、不安があれば担当医・栄養士に確認しましょう。
第3部:専門的な診断が必要な疾患と、食事だけでは対応できないサイン
「食事に気を付ければ何とかなる」と考えてしまうと、必要な検査や治療を遅らせてしまうことがあります。 ここでは、食事だけでは対処できないサインや、放射性ヨウ素治療・再発チェックのために専門的な診断が必要となる代表的な場面を整理します。
3.1. 放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)とその準備
甲状腺がんの手術で甲状腺を切除した後、残っている甲状腺がん細胞や転移巣に対して行われるのが放射性ヨウ素内用療法です。 放射線を出すヨウ素(放射性ヨウ素)をカプセルや液体の形で内服し、そのヨウ素ががん細胞に集まることで、内側からがん細胞を攻撃します2。
この治療の前には、以下のような準備が行われることがあります。
- 甲状腺ホルモン薬の一時的な中止、またはTSHを高める薬剤の投与
- 数日〜2週間程度の低ヨウ素食(ヨウ素制限食)
- ヨウ素を含む造影剤や薬剤の中止(事前に使用歴を確認)
低ヨウ素食を十分に行わないと、体内に余っているヨウ素が放射性ヨウ素よりも先に甲状腺組織に取り込まれ、治療効果が弱まってしまう可能性があります6,8。 一方で、必要以上に長期間・厳格にヨウ素制限を続けると、ストレスや栄養バランスの乱れにつながるため、「指示された期間・内容を守る」ことが何より大切です。
3.2. 再発や別の病気が疑われる症状
食事での工夫は、治療をサポートしたり体力を守ったりするうえでとても重要ですが、食事だけで再発や新たながんを防ぐことはできません。 次のような症状がある場合は、「食生活のせい」と決めつけず、早めに主治医に相談しましょう。
- 首や鎖骨の周りに、新しいしこり・腫れを触れるようになった
- 声がかすれる・出しにくい状態が続いている
- 飲み込みづらさが急に悪化したり、むせることが増えた
- 特に理由が思い当たらないのに体重が大きく減少している
- 息切れ・動悸・胸の痛みなど、胸の症状が気になる
なお、がん情報サービスでは、甲状腺がんの治療後も、定期的な診察や検査を受けながら、禁煙・節度ある飲酒・バランスのよい食事・適度な運動などを心がけることが大切とされています1。 食事はあくまで「全体のセルフケアの一部」と考え、睡眠やストレス対策も含めた生活全体を整えていくことが重要です。
第4部:今日から始める改善アクションプラン
ここからは、甲状腺がんと診断された方や、放射性ヨウ素治療を控えている方が「今日からできること」「今週から整えたいこと」「長く続けたい習慣」をレベル別に整理します。 完璧を目指す必要はありませんが、「自分にできそうなところから一つずつ」取り入れていくことで、治療の不安も少しずつ和らいでいきます。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今日からできること | 低ヨウ素食が必要な時期かどうかを確認する | 診察券や説明書を見返し、「〇月〇日〜治療日まで低ヨウ素食」などの指示がないかをチェック。 曖昧な場合は次回診察時や電話で主治医・看護師に確認する。 |
| Level 1:今日からできること | 海藻・だし・加工食品の「ヨウ素を意識してみる」 | 昆布だしの濃いお味噌汁や海藻サラダ、海藻入りスープなどを毎日食べている場合は、一度頻度をメモしてみる。 低ヨウ素食の時期には控え、普段も「食べすぎない」意識を持つ。 |
| Level 2:今週から整えたいこと | 自宅で作れる低ヨウ素メニューのレパートリーを増やす | 白米+肉や卵白のおかず+野菜のおひたしなど、ヨウ素が少なく栄養バランスのよい献立を2〜3パターン作ってみる。 日本核医学会などが公開しているレシピ集も参考になる3,4。 |
| Level 2:今週から整えたいこと | 外食・コンビニ利用時の選び方を考えておく | 低ヨウ素食の時期に外食が必要な場合、「海藻サラダ・わかめスープ付きの定食を避ける」「だしが濃い麺類より、具材が分かりやすい定食を選ぶ」など、自分なりのルールを決めておく。 |
| Level 3:長期的に続けたいこと | 禁煙・節度ある飲酒・適度な運動を習慣にする | がんの治療中・治療後は、喫煙は控え、飲酒量も減らすことが推奨されます。 また、体調の許す範囲で散歩やストレッチなどの軽い運動を取り入れることで、体力や気分の維持にもつながります。 |
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
甲状腺がんと食事の関係について情報を集めていると、「自分で何とかしなければ」と思い込んでしまうことがあります。 しかし、治療の内容や持病、ライフスタイルによって「最適な食べ方」は異なります。 不安を一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することが、結果的には近道になることが多いです。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 食べ物や飲み物が頻繁に気管に入ってむせる、息苦しさがある
- 首の腫れ・しこりが急に大きくなってきた、あるいは新たな腫れを触れる
- 強いだるさ・動悸・息切れなど、日常生活に支障が出る症状が続く
- 下痢や嘔吐が続き、水分や食事がほとんどとれない
これらの症状がある場合、「食べ物が合わなかっただけ」「疲れているだけ」と自己判断せず、できるだけ早く主治医または近くの医療機関を受診してください。 意識がもうろうとする、激しい胸の痛みや息苦しさがあるなど、明らかに緊急性が高いと感じる場合は、ためらわずに救急車(119番)を利用しましょう。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 甲状腺がんの定期フォローや食事制限の相談:手術や治療を受けた病院の外来(内分泌内科・耳鼻咽喉科・頭頸部外科など)
- 食欲不振・体重減少・栄養状態の不安:主治医に相談のうえ、管理栄養士や栄養サポートチームを紹介してもらう
- 飲み込みづらさや声のかすれが中心の症状:耳鼻咽喉科・リハビリテーション科など、嚥下機能を扱う診療科
どの診療科に行けばよいか迷うときは、まず甲状腺がんの主治医に相談し、必要に応じて他科を紹介してもらうのが安心です。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 最近1〜2週間の食事内容をメモしたノートやスマートフォンの写真
- 現在服用している薬・サプリメントの一覧(ヨウ素を含む製品が紛れ込んでいないかを確認)
- 体重の変化や、だるさ・息切れなどの症状がいつから出ているかのメモ
検査や栄養指導にかかる費用は、保険の適用状況や医療機関によって異なります。 不安がある場合は、受付や医療相談窓口で大まかな目安を聞いておくと安心です。
よくある質問
Q1: 手術だけで放射性ヨウ素治療を受けない場合でも、低ヨウ素食は必要ですか?
甲状腺がんの治療後、すべての人に低ヨウ素食が必要になるわけではありません。 一般的には、放射性ヨウ素内用療法やヨウ素シンチグラムなど、ヨウ素を使った検査・治療の前に限って短期間の低ヨウ素食が行われます1,2。
手術のみで経過観察となっている場合や、放射性ヨウ素治療を行わない方では、通常のバランスのよい食事が基本であり、自己判断で長期間ヨウ素を極端に制限する必要はありません。 ただし、検査や治療の方針によっては今後低ヨウ素食が必要になる可能性もあるため、主治医からの説明をよく聞き、不安な点はその場で確認するようにしましょう。
Q2: 昆布やわかめなどの海藻は、どの程度までなら食べても大丈夫ですか?
日本人にとって海藻は身近な食材であり、通常の健康な人であれば「適量」であれば問題ないとされています5,20。 しかし、放射性ヨウ素治療や一部の検査の前に限っては、昆布・わかめ・ひじきなどヨウ素を多く含む海藻類は短期間でもしっかり制限する必要があります3,4。
具体的な「どのくらいまでOKか」は、病院ごとの基準や配布された低ヨウ素食リストによって異なります。 「海藻入りおにぎり1個なら大丈夫?」といった細かい疑問があるときは、購入した商品の原材料を見せながら、主治医や管理栄養士に確認すると安心です。
Q3: 大豆製品(豆腐・豆乳・納豆など)は、低ヨウ素食のときは全部避けるべきですか?
大豆そのものはヨウ素を多く含む食品ではありませんが、低ヨウ素食の期間中は「大豆製品の量に注意」とされている施設もあります。 これは、加工の過程でヨウ素を含む調味料が使われている場合があることや、甲状腺ホルモン薬との相互作用など、いくつかの要因が考えられます。
日本核医学会のレシピ集などでは、食べてよい量の目安が示されていることがあります3,4。 低ヨウ素食が必要な期間に配られた指示書をよく読み、「完全に禁止」ではなく「量に注意すべき食品」として扱われているかどうかを確認しましょう。
低ヨウ素食が終われば、豆腐や納豆などの大豆製品は、たんぱく質源としてむしろ積極的に取り入れたい食材です。 不安な場合は、主治医や管理栄養士に「自分の場合」の上限量を確認してみてください。
Q4: 低ヨウ素食の期間中に外食やコンビニを利用しても大丈夫でしょうか?
低ヨウ素食中でも、工夫次第で外食やコンビニを利用することは可能です。 ただし、昆布だしや海藻、ヨウ素添加塩を使っていないかが分かりにくいため、できるだけ自宅での手作り中心にすることが推奨されています3,4,7。
やむを得ず外食する場合は、次のようなポイントを意識してメニューを選びましょう。
- 海藻サラダ・わかめスープ・とろろ昆布などが含まれないメニューを選ぶ
- だしの味が強い麺類よりも、具材が明確な定食やグリル料理などを選ぶ
- 注文時に「海藻は抜いてください」とお願いできる場合は、遠慮なく相談する
コンビニでは、原材料表示をよく確認し、「昆布エキス」「海藻エキス」「ヨウ素添加塩」などの記載がない商品を選ぶことがポイントです。
Q5: 甲状腺がんになったら、一生ヨウ素を制限し続けなければいけませんか?
多くの方にとって、ヨウ素の厳格な制限が必要なのは「放射性ヨウ素治療や特定の検査の前後」など、ごく限られた期間にとどまります1,2,4。 それ以外の時期は、日本人向けの一般的な食事ガイドラインに沿ったバランスのよい食事が推奨されます。
もちろん、海藻を毎日大量に食べるような極端な摂り方は避けたほうがよいですが、「お味噌汁に少量のわかめ」「時々海藻サラダを楽しむ」程度であれば、多くの方で問題はないと考えられています5。
「どの程度までなら安心なのか」は、甲状腺の残存量やホルモン補充の状況によっても変わります。 定期検診の際に、主治医に自分の食生活の例を伝えながら、長期的な目安を一緒に考えてもらうと安心です。
Q6: コーヒーや炭酸飲料、お酒は甲状腺がんに悪影響がありますか?
コーヒーや炭酸飲料そのものが、甲状腺がんを悪化させるという明確なエビデンスはありません。 ただし、糖分の多い飲み物やアルコールを大量に摂ると、体重増加や肝機能への負担、睡眠の質の低下などを通じて、全身状態を悪くする可能性があります。
放射性ヨウ素治療前後や、抗がん剤など他の治療を受けている場合は、アルコールを控えることが推奨されることが多いため、主治医の指示に従ってください。 コーヒーについては、カフェインに弱い方や胃の不調がある方は量を減らすなど、自分の体調と相談しながら付き合うとよいでしょう。
Q7: 低ヨウ素食のレシピをどこで探せばよいですか?
日本では、日本核医学会の委員会が作成した低ヨウ素食のレシピ集や、病院独自のレシピブックが配布されていることがあります3,4。 放射性ヨウ素治療を受ける医療機関で資料をもらえるかどうか、まずは確認してみてください。
海外では、患者会が作成した低ヨウ素食のクックブックなども公開されていますが6,7、日本とは食文化や使用する食材が異なる部分があります。 参考にする場合は、「日本で手に入る食材でアレンジできるか」「主治医の指示と矛盾しないか」を確認しながら活用しましょう。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
甲状腺がんと診断されると、多くの方が「何を食べてはいけないのか」「自分の食生活が再発の原因になるのではないか」と不安になります。 特に、日本の食文化では海藻やだしが身近な存在であるため、ヨウ素制限と言われると「もう何も食べられない」と感じてしまうかもしれません。
しかし、低ヨウ素食が必要なのは多くの場合「放射性ヨウ素治療や検査の前後」という限られた期間であり、それ以外の時期には、バランスのよい食事と生活習慣の見直しが大切になります。 必要なときにしっかりヨウ素を制限し、それ以外の時期には過度な自己制限を避けることで、体力と心の余裕を保ちながら治療を続けることができます。
「自分のケースではどうすればよいのか」が分からなくなったときは、インターネットの情報だけで判断せず、主治医や管理栄養士に率直に相談してください。 一人ひとりの治療内容や生活スタイルに合わせた「ちょうどよい食べ方」を一緒に探していくことが、長い療養生活を支える大きな力になります。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(国立がん研究センターがん情報サービス、日本核医学会のガイドライン・レシピ集、甲状腺専門病院の解説、海外の低ヨウ素食ガイドラインや論文など)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。
記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。
参考文献
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