「最近、セックスしたい気持ちがほとんど湧かない」「パートナーは求めてくるのに、自分はその気になれず罪悪感がある」「もともとは性欲があったのに、数年前から急に減ってしまった」——こうした悩みを、誰にも言えず一人で抱えている女性は少なくありません。
性欲は、ホルモンバランスや心身の状態、人間関係、仕事・家事・育児などのストレスによって日々変動します。年齢やライフステージによっても自然に上下しますし、「性欲が強い/弱い」の感じ方は人それぞれです。そのため、「何回以上セックスしないと異常」といった明確な基準は存在しません。
一方で、「以前と比べて明らかに性欲が落ちた」「そのことで自分やパートナーがつらい思いをしている」「セックスが痛くて避けてしまう」といった場合には、身体や心の不調、あるいはパートナーシップの問題など、何らかの原因が隠れていることがあります。女性の性欲低下が、病名としては「女性性欲低下障害」「女性性機能障害」の一つとして扱われることもあります。
この記事では、Japanese Health(JHO)編集部が、公的機関や学会ガイドライン、査読付き論文などの信頼できる情報をもとに、女性の性欲低下についてわかりやすく整理しました。性欲が低いこと自体が「悪い」「ダメ」なのではなく、「自分とパートナーがどう感じているか」を大切にしながら、原因の見立て方やセルフケア、医療機関に相談する目安まで、順番に解説していきます。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合は、我慢しすぎず、医療機関や専門家に相談することも検討してみてください。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、厚生労働省の関連サイトや研究班が監修した情報、国内の専門学会、日本語で公開されている性機能に関する解説、世界保健機関(WHO)や海外の医学ジャーナルなど、一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています123。
- 厚生労働省・公的研究機関:女性の健康支援サイトや更年期に関する情報、統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています45。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:女性性機能障害や性欲低下に関する研究、スクリーニング質問票(DSDS)の日本語版作成に関する論文、国際的な専門家グループによる総説などをもとに要点を整理しています167。
- 医療機関・NPO等による一次資料:がん治療後の性欲低下や、更年期・慢性疾患と性機能の関係などについて、患者さん向けに公開されている日本語解説を参考にしています38。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。
要点まとめ
- 女性の性欲は、年齢やライフステージ、パートナーとの関係性、ストレスなどによって自然に変動します。「性欲が低いこと=必ずしも病気」というわけではありません2。
- しかし「以前と比べて著しく低下している」「そのことで本人やパートナーが強い苦痛を感じている」場合は、女性性欲低下障害などの「女性性機能障害」の一つとして専門的な評価が必要になることがあります27。
- 原因としては、更年期や出産・授乳期などのホルモン変化、慢性疾患や服薬(抗うつ薬など)、うつ病・不安障害、過去のつらい性体験、パートナーとの関係性の問題など、身体と心の要因が複雑に絡み合っていることが多いとされています236。
- セルフケアとしては、睡眠や食事・運動といった生活習慣の見直し、ストレス対策、パートナーとのコミュニケーションを深める工夫、痛みや違和感がある場合に婦人科で相談することなどが挙げられます。
- 「自分だけがおかしい」と責める必要はありません。つらさが続く場合や、生活・関係性に支障が出ている場合は、婦人科や心療内科・精神科などで相談する選択肢も知っておきましょう。
「自分の性欲は低すぎるのでは?」「パートナーとの性欲の差をどうしたらよいか分からない」と悩むとき、いきなり「病気かどうか」を考えると不安が大きくなりがちです。まずは、生活リズムやストレス、パートナーとの関係性といった身近なポイントから、ゆっくり振り返っていくことが大切です。
この記事では、最初に性欲の基本的な仕組みと、悪化させやすい生活習慣を解説し、そのうえでホルモンバランスや病気など身体の内部要因、専門的な診断が必要になるケースを段階的に紹介します。
あわせて、今日からできる小さなセルフケアや、パートナーと話し合うときのヒント、どの診療科に相談するとよいかの目安も整理しました。必要に応じて、関連する総合ガイドや、詳細解説記事など、JHO内の関連記事にも自然な形でつながる構成を意識しています。
読み進めることで、「自分の状態をどう理解し、どのタイミングで、どこに、何を相談すればよいか」を具体的にイメージしやすくなることを目指しています。
第1部:女性の性欲の基本と日常生活の見直し
まずは、「性欲とは何か」「性欲の高さ・低さに絶対的な基準はあるのか」というところから整理していきます。そのうえで、多くの人に当てはまりやすい生活習慣や環境要因をチェックし、日常の中でできる工夫を考えていきましょう。
1.1. 性欲の基本的なメカニズムと個人差
性欲とは、簡単にいうと「性行為や親密なスキンシップをしたいという気持ち」のことです。脳の働き、性ホルモン(エストロゲンやテストステロンなど)、血流、自律神経、過去の経験や価値観、パートナーとの関係性など、さまざまな要素が組み合わさって生じます23。
かつては、性反応を「性欲 → 興奮 → オルガズム」という直線的な流れとして説明するモデルがよく使われていました。しかし、多くの女性では「最初から強い性欲があってセックスを始める」のではなく、「パートナーと触れ合ううちに気持ちが高まる」「最初はなんとなく応じているうちに、徐々に楽しめる」というように、性欲と興奮の境界があいまいなことも多いとされています38。
また、同じ人でも、時期や状況によって性欲は大きく変わります。新しい恋愛の始まり、仕事が忙しい時期、妊娠・出産・更年期などのライフイベントによって、性欲が強くなったり弱くなったりするのは自然なことです2。
そのため、「周りのカップルは月に○回らしいから自分はおかしい」といった比較はあまり意味がありません。大切なのは、「自分がどう感じているか」「パートナーとの関係性にどんな影響が出ているか」です。
1.2. 性欲低下を招きやすいNG習慣と環境要因
次に、病気ではなく生活習慣や環境が性欲低下に影響しているケースを見ていきましょう。以下のような要因は、多くの女性で性欲を下げる方向に働きやすいとされています。
- 慢性的な睡眠不足・過労:残業続き、育児と仕事の両立、介護などで心身が消耗していると、「性欲よりまず休みたい」という状態になりやすくなります。
- 強いストレスや不安:仕事のプレッシャー、家計の不安、人間関係のトラブルなどが続くと、自律神経が緊張モードになり、「リラックスして性を楽しむ」余裕がなくなってしまいます。
- スマートフォン・SNS・動画視聴の長時間利用:寝る直前までスマホを見る習慣は、睡眠の質を下げるだけでなく、パートナーとの会話やスキンシップの時間を奪いやすくなります。
- アルコールの飲み過ぎ:少量のお酒は緊張を和らげることもありますが、飲み過ぎると血流や神経の働きが鈍くなり、性欲や性的反応が低下しやすくなります。
- 自分の体へのコンプレックス:体型の変化や体毛、傷痕などが気になって「明るいところで見られたくない」「裸になるのが恥ずかしい」と感じると、性行為そのものを避けたくなることがあります。
- パートナーとのコミュニケーション不足:日頃の会話が少ない、感謝やねぎらいの言葉がない、喧嘩が続いているなど、心の距離が広がると、自然と身体の距離も広がりやすくなります。
1.3. 簡単セルフチェック:生活習慣から振り返る
性欲低下を感じているとき、いきなり「自分は病気かもしれない」と決めつけるのではなく、まずは生活習慣や環境を振り返ってみることが役に立ちます。以下のセルフチェック表を参考に、最近の自分の状態を書き出してみましょう。
| こんな状態・悩みはありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 仕事・家事・育児が忙しく、毎日へとへとで寝るのが精一杯 | 睡眠不足、慢性疲労、ストレス過多 |
| パートナーとゆっくり会話したり、スキンシップをとる時間がほとんどない | コミュニケーション不足、心理的な距離感 |
| セックスをすると痛みや不快感があり、避けるようになった | 膣の乾燥、更年期症状、感染症、婦人科の病気などの可能性 |
| 数か月〜年単位で性欲がほとんどなく、そのことで自分やパートナーがつらい | 女性性欲低下障害などの性機能障害、うつ病・不安障害などの可能性 |
| 抗うつ薬やてんかん薬、降圧薬など、長期で服薬している薬がある | 薬の副作用による性欲低下や性機能の変化 |
複数の項目が当てはまる場合でも、「必ず病気」というわけではありません。ただ、生活習慣の工夫だけでは改善が難しいことも多いため、気になる場合は医療機関で相談することも選択肢に入れておきましょう。
第2部:身体の内部要因 — ホルモン・慢性疾患・薬の影響
生活習慣を整えても性欲の低下が続く場合、背景にホルモンバランスの変化や慢性疾患、薬の影響など、身体の内側の要因が隠れていることがあります。この章では、女性に多い要因をライフステージ別に整理します。
2.1. 女性ホルモン・テストステロンと性欲の関係
女性の性欲には、女性ホルモンのエストロゲンだけでなく、卵巣などから分泌される男性ホルモンの一種であるテストステロンも関係しているとされています3。テストステロンは男性に多いホルモンですが、女性にとっても筋肉や骨を保つ働き、性欲の調整などに重要な役割があります。
排卵前に性欲が高まりやすいという報告もあり、「排卵前に性交が増えることで妊娠の可能性が高まる」という、生物学的な意味があるとも考えられています3。一方で、人間の性生活は生殖だけでなく、快楽やパートナーとの親密さを高める役割も大きく、必ずしも生理周期と性欲がきれいに一致するわけではありません。
卵巣を摘出した場合や、がん治療などで卵巣機能を抑える治療を受けた場合、閉経後などでは、テストステロンやエストロゲンの低下が性欲低下につながることが知られています38。
2.2. 更年期・閉経に伴う変化
一般的に、女性は40代半ば〜50代前半にかけて閉経を迎え、その前後数年は「更年期」と呼ばれます。この時期には、卵巣機能が低下してエストロゲンが大きく変動・低下し、ホットフラッシュ(ほてり)、発汗、不眠、気分の落ち込みなど、さまざまな症状が現れます45。
更年期には、
- 膣や外陰部の粘膜が薄く・乾燥しやすくなる(外陰膣萎縮)
- 性行為時の摩擦で痛みや出血が起こりやすくなる
- 気分の落ち込みやイライラ、不安、不眠などの精神的な症状
といった変化が起こり、結果として「性行為そのものがつらい」「性について考える余裕がない」と感じる人も少なくありません58。
こうした更年期の性機能の変化は、「加齢だから仕方がない」と我慢すべきものではありません。婦人科などで相談することで、ホルモン補充療法や局所のエストロゲン製剤、保湿剤の使用、骨盤底筋のケアなど、多様な選択肢を一緒に検討することができます。
2.3. 妊娠・出産・授乳期の性欲低下
妊娠・出産・授乳期には、ホルモンバランスの大きな変化に加え、睡眠不足、育児負担、体型の変化、将来への不安など、多くの要因が重なります。そのため、「出産前は性欲があったのに、出産後はそれどころではない」「授乳中は性欲がほとんどなくなった」という声は珍しくありません2。
特に産後数か月〜1年程度は、
- 授乳によりプロラクチン(乳汁分泌に関わるホルモン)が高く、排卵が抑えられている
- 会陰切開や帝王切開の傷、骨盤への負担などにより、身体的な違和感が残っている
- 赤ちゃん中心の生活になり、パートナーとの会話やスキンシップの時間が極端に減る
といった状況が重なり、性欲低下が続くことがあります。
多くの場合、時間の経過とともに少しずつ回復していきますが、「数年たってもまったく戻らない」「産後うつかもしれないと感じる」「夫婦関係が悪化している」といった場合には、婦人科や心療内科などで早めに相談することも大切です。
2.4. 慢性疾患や薬の副作用による性欲低下
性欲低下は、性器そのものの病気だけでなく、全身の病気や薬の影響として現れることもあります。例えば、糖尿病、心血管疾患、関節炎、腎疾患、神経疾患など、慢性疾患を抱える人では、痛みや倦怠感、気分の落ち込み、薬の副作用などが重なり、性欲が低下しやすいことが報告されています8。
また、以下のような薬剤は、副作用として性欲低下や性的反応の変化を起こすことが知られています。
- 一部の抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRIなど)
- 抗てんかん薬
- 降圧薬の一部
- ホルモン療法薬(乳がん・子宮体がんなどの治療薬、避妊薬など)
薬が原因と考えられる場合でも、自己判断で中止することは危険です。「性欲の低下が気になるので、薬の影響の可能性があるか主治医に相談したい」と正直に伝え、効果と副作用のバランスを一緒に検討してもらうことが大切です。
第3部:専門的な診断が必要な「女性性欲低下障害」と関連疾患
セルフケアや生活習慣の見直しだけでは改善が難しい場合や、「長期間にわたって性欲がほとんどない」「そのことで強い苦痛や関係の問題が生じている」場合には、専門的な診断が必要になることがあります。ここでは代表的な概念と、関連する疾患について紹介します。
3.1. 女性性欲低下障害(HSDD)・女性性機能障害とは
女性の性機能障害は、一般的に「性欲」「興奮」「オルガズム」「性交時の痛み」といった要素のいずれか(またはいくつか)がうまく機能しない状態を指します27。このうち、「性的なファンタジーや性活動への興味・欲求が持続的に低下している」「そのことで本人が困っている・悩んでいる」状態は、女性性欲低下障害(Hypoactive Sexual Desire Disorder, HSDD)と呼ばれてきました。
近年の診断基準では、「女性性興奮・性欲障害(Female Sexual Interest/Arousal Disorder)」など、概念の見直しも行われていますが、いずれも「性欲が低いこと自体」よりも、「そのことでどれだけ本人が苦痛を感じているか」「社会生活やパートナーシップにどの程度影響が出ているか」が重視されます27。
女性の性欲低下を評価するために、「Decreased Sexual Desire Screener(DSDS)」というスクリーニング質問票が国際的に用いられており、日本語版の作成と妥当性の検討も行われています1。こうした質問票は、医療機関等での問診を補う形で活用されます。
3.2. うつ病・不安障害などメンタルヘルスとの関係
うつ病や不安障害、ストレス関連障害などのメンタルヘルスの問題は、性欲に大きな影響を与えます。気分の落ち込み、興味や喜びの喪失(アパシー)、自己肯定感の低下などがあると、性やスキンシップに興味を持つこと自体が難しくなることがあります26。
さらに、うつ病や不安障害の治療に用いられる薬(特に一部の抗うつ薬)は、前述のように性欲低下やオルガズムの困難を副作用として引き起こすことがあります。「心の調子を整える薬」と「性の悩み」のバランスは、とてもデリケートな問題です。性欲の変化に気づいたときは、遠慮せず主治医に相談してみましょう。
3.3. 痛み・違和感がある場合に考えられる疾患
性欲低下の背景に、「そもそもセックスをすると痛い・不快」という身体的な問題が隠れているケースも少なくありません。例えば、
- 膣や外陰部の乾燥、膣炎、性感染症
- 子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣嚢腫などの婦人科疾患
- 閉経に伴う外陰膣萎縮や、膣の弾力低下
- 過去のつらい性体験を想起して身体が強く緊張してしまう状態
などがあると、「痛みを避けるために性行為から遠ざかる → ますます性欲が湧かなくなる」という悪循環に陥りやすくなります38。
痛みや出血、強い違和感がある場合は、自己判断せず婦人科で相談することがとても大切です。原因となっている病気の治療や、膣の保湿・ホルモン療法、骨盤底筋のリハビリなどによって、痛みが軽減するケースも多くあります。
3.4. 高齢期の性欲低下とQOL(生活の質)
高齢期の女性では、「パートナーがいない」「健康上の理由で性行為をしていない」といった生活状況の変化に加え、閉経後のホルモン変化や慢性疾患の増加などにより、性欲や性機能の変化が起こりやすいことが知られています5。
しかし、「年をとったから性をあきらめるべき」というわけではありません。性のあり方は人それぞれであり、「性行為をするかどうか」だけが大切なのではなく、「自分にとって心地よい親密さやスキンシップをどう育てていくか」が重要です。高齢女性の性機能障害についても、適切なケアやサポートを通じて、生活の質(QOL)の向上が期待できるとされています5。
第4部:今日から始める性欲低下への改善アクションプラン
原因が何であれ、「今日から自分に優しくできること」を少しずつ増やしていくことは、性欲そのものの改善だけでなく、心身全体の健康にも良い影響を与えます。この章では、レベル別のアクションプランを整理します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | まずは「休む」「緊張をゆるめる」時間を確保する | 寝る1〜2時間前にスマホをオフにし、湯船につかる・アロマを焚く・好きな音楽を聴くなど、心と体をゆるめる習慣をつくる。 |
| Level 2:今週から見直したい生活習慣 | 睡眠・食事・運動のリズムを整える | 就寝・起床時間をなるべく一定にする、朝に軽い散歩を取り入れる、仕事の合間に深呼吸やストレッチを行う、カフェインやアルコールのとり過ぎを控える。 |
| Level 3:パートナーとのコミュニケーション | 性行為そのものではなく、「気持ち」を共有する時間を増やす | 「最近こう感じている」と正直な気持ちを伝える/手をつなぐ、ハグする、マッサージをし合うなど、「セックスをするかどうか」と切り離したスキンシップを増やす。 |
| Level 4:数週間〜数か月かけて取り組むこと | 心身の不調が続く場合、専門家への相談を検討する | 「性欲の低下が数か月以上続く」「気分の落ち込みや不安、痛みが強い」場合は、婦人科や心療内科・精神科などに相談し、必要に応じてカウンセリングや治療を検討する。 |
4.1. 自分のペースを尊重するセルフケア
性欲は「努力すればすぐに上がる」性質のものではありません。むしろ、「早く戻さなければ」「パートナーの期待に応えなければ」と自分を追い込むことで、かえってプレッシャーが高まり、性欲がさらに低下してしまうこともあります。
自分のペースを尊重し、「今日はしんどいから休む」「今は手をつなぐだけにしよう」など、その時々の自分の気持ちを大切にすることが、長い目で見ると回復につながることが少なくありません。
4.2. パートナーと話し合うためのヒント
パートナーとの性欲の差は、多くのカップルで起こりうる自然な現象です。それを「どちらかが悪い」「どちらかが我慢すべき」と捉えるのではなく、「どうすればお互いに安心して過ごせるか」を一緒に考える姿勢が大切です。
- いきなりセックスの頻度の話をするのではなく、「最近どう感じているか」「どんな時に安心するか」といった気持ちの話から始める。
- 責める口調ではなく、「私はこう感じている」という「Iメッセージ」で伝える。
- 性行為以外のスキンシップ(ハグ、マッサージ、手をつなぐなど)も大切な親密さであることを共有する。
- 必要であれば、カップルで相談できるカウンセリング機関を検討する。
話し合いが難しいと感じる場合は、一人で抱え込まず、信頼できる友人や専門家に相談することも選択肢の一つです。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
「自分の工夫だけでは限界かもしれない」と感じたとき、どのタイミングで、どの診療科に相談すればよいのか迷う方も多いでしょう。この章では、受診の目安や、診察をスムーズに進めるための準備について解説します。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 性行為の際に強い痛みや出血が続く。
- 下腹部痛や不正出血など、婦人科の病気が疑われる症状がある。
- 数か月以上、性欲の低下とともに、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失が続いている。
- 「消えてしまいたい」「生きている意味がわからない」といった思いが浮かぶ。
- 薬を飲み始めてから急に性欲が落ちた、または性的な反応が変化した。
上記に当てはまる場合は、我慢を続けるよりも、早めに医療機関で相談した方が安心です。特に、強い抑うつ感や自殺念慮がある場合は、躊躇せずに精神科・心療内科を受診するか、必要に応じて救急相談窓口に連絡してください。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 婦人科・女性外来:膣や外陰部の痛み・乾燥、不正出血、更年期症状、ホルモンバランスの評価など。性欲低下の背景にある婦人科疾患の有無を調べたいときに適しています。
- 心療内科・精神科:うつ病や不安障害、ストレス関連障害、過去のトラウマなど、心の問題が大きく関わっていそうな場合。服薬による性欲低下が疑われるときにも相談できます。
- 総合内科:糖尿病や高血圧、甲状腺疾患など、全身状態を含めてチェックしたい場合。
- 性機能外来・カウンセリング機関:性機能に特化した外来や、カップルカウンセリングなどを行う機関もあります。地域によって、利用できるサービスが異なります。
どの診療科を選ぶべきか迷う場合は、まず身近なかかりつけ医や婦人科に相談し、「こういうことで悩んでいるが、どこで相談すればよいか」と尋ねてみるのも一つの方法です。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 症状のメモ:いつ頃から性欲が低下したか、どんな場面で悩みを感じるか、痛みや違和感がある場合はその部位やタイミングもメモしておくと、医師に伝えやすくなります。
- 服薬中の薬の情報:お薬手帳や、サプリメントを含めた一覧を持参すると、薬の影響を評価するのに役立ちます。
- 月経周期・ライフイベントの情報:月経不順の有無、妊娠・出産歴、更年期症状の有無なども、性欲低下の背景を見立てる手がかりになります。
日本では、公的医療保険が適用される診療については、原則として自己負担が1〜3割となります。実際の費用は受ける検査や治療内容によって大きく変わるため、心配な場合は、受診時に「おおよその費用の目安」を事前に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q1: 性欲があまりないのは、やはり「異常」なのでしょうか?
A1: 性欲の強さにはもともと大きな個人差があり、「性欲が弱い=異常」「性欲が強い=正常」といった単純な基準はありません2。同じ人でも、仕事の忙しさや体調、ライフイベントによって性欲は変動します。
重要なのは、「本人がどう感じているか」と「パートナーとの関係にどの程度影響が出ているか」です。性欲が低くても本人が特につらくなければ、必ずしも治療の対象とはなりません。一方で、「以前との違いが大きい」「自分やパートナーが強い苦痛を感じている」場合には、女性性欲低下障害などの可能性も含めて相談を検討してよいでしょう27。
Q2: 出産後から性欲がほとんどなくなりました。いつまで続きますか?
A2: 妊娠・出産・授乳期には、ホルモンバランスの変化や睡眠不足、育児負担などが重なり、多くの女性で一時的な性欲低下が見られます2。個人差はありますが、授乳回数が減り、生活リズムが落ち着いてくるにつれて、少しずつ性欲が戻ってくるケースも多いとされています。
ただし、「数年たってもまったく戻らない」「気分の落ち込みや不安も強い」「夫婦関係が大きく悪化している」といった場合には、産後うつや夫婦関係の問題など、他の要因が絡んでいることも考えられます。婦人科や心療内科などで早めに相談することをおすすめします。
Q3: パートナーの性欲が強く、性欲の差がつらいです。どう向き合えばよいですか?
A3: 性欲の強さは人それぞれで、カップル間で差があること自体は珍しくありません。大切なのは、どちらかが我慢し続けるのではなく、「お互いが安心して過ごせるバランス」を一緒に探していくことです。
具体的には、「自分はこういう時に安心する」「このくらいの頻度なら無理なく応じられそう」といった自分の気持ちを、責める口調ではなく「私は〜と感じる」という形で共有するのがポイントです。また、性行為だけでなく、ハグや手をつなぐ、マッサージをし合うなど、さまざまな形のスキンシップも大切にしてみてください。
話し合いがうまくいかない場合や、関係がこじれてしまっている場合には、カップルカウンセリングなど専門家のサポートを検討するのも一つの選択肢です。
Q4: 更年期で性欲が落ちました。ホルモン治療を受けた方がいいのでしょうか?
A4: 更年期には、エストロゲンの低下に伴うほてりや発汗、不眠、膣や外陰部の乾燥など、多くの症状が同時に現れることがあります45。ホルモン補充療法(HRT)は、更年期症状の改善に有効な一方で、乳がんや血栓症などのリスクとのバランスを慎重に検討する必要があります。
性欲の低下だけでなく、更年期症状全体がつらい場合には、婦人科で「どの程度の症状があるか」「持病や家族歴はどうか」を含めて相談し、自分に合った治療方法(ホルモン療法以外の選択肢も含めて)を一緒に検討してもらうことが大切です。
Q5: 抗うつ薬を飲み始めてから性欲が下がった気がします。薬をやめてもいいですか?
A5: 一部の抗うつ薬などは、性欲低下やオルガズムの困難など、性機能への影響を副作用として持つことが知られています26。しかし、自己判断で薬を中止すると、うつ症状や不安症状が悪化する危険があります。
性欲の変化に気づいたときは、「この薬を飲み始めてから性欲が下がった気がする」と具体的に主治医に伝えましょう。薬の種類や量の調整、服薬時間の工夫、別の治療法の検討など、いくつかの選択肢を一緒に考えてもらえる可能性があります。
Q6: 性の悩みを医師に話すのが恥ずかしくて、受診を迷っています。
A6: 性に関する悩みは、とてもプライベートで、恥ずかしさや抵抗感を覚えるのは自然なことです。一方で、医療者の側から見ると、性欲や性機能の変化は、ホルモンや全身状態、メンタルヘルスの重要なサインの一つでもあります。
どうしても口頭で話すのが難しい場合は、「性欲の低下で悩んでいる」「セックスのときに痛みがある」といった簡単なメモを書いて渡す方法もあります。性の悩みに理解のある婦人科や女性外来、心療内科などを選ぶと、話しやすいと感じる方も多いようです。
Q7: セックスレスになったら、必ず性欲低下があるということですか?
A7: セックスレス(一定期間、性交渉がない状態)と性欲低下は、重なる部分もありますが、必ずしも同じものではありません。例えば、「お互い忙しくて機会がないだけで、本当はしたい気持ちはある」というケースもあれば、「性欲自体はあるが、パートナーとの関係がぎくしゃくしていて誘えない/応じられない」というケースもあります。
逆に、「性欲自体がほとんどないために、結果としてセックスレスになっている」という場合もあります。重要なのは、「自分はどう感じているか」「パートナーはどう感じているか」を丁寧に振り返り、それぞれの「本音」に耳を傾けることです。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
女性の性欲低下は、とても個人的でデリケートなテーマです。そのため、「誰にも相談できない」「自分だけが異常なのでは」と感じやすい一方で、実際には多くの女性がライフステージを通じて経験する可能性のある問題でもあります23。
性欲は、ホルモンや身体の状態だけでなく、心の健康、パートナーとの関係性、仕事や家事・育児の負担、過去の体験などが複雑に絡み合った結果として形づくられます。「性欲が低いこと」を単純に良い・悪いで判断するのではなく、「自分とパートナーがどう感じているか」「どの部分なら変えていけそうか」を一緒に考えていくことが大切です。
この記事で取り上げたように、生活習慣の見直しやセルフケア、パートナーとのコミュニケーションを通じて改善が期待できる部分もあれば、婦人科や心療内科など専門家のサポートを借りた方がよい場合もあります。つらさや不安が続くときは、一人で抱え込まず、信頼できる人や医療機関に相談することも選択肢の一つとして覚えておいてください。
Japanese Health(JHO)編集部は、厚生労働省や日本の専門学会、世界保健機関(WHO)などの信頼できる情報に基づき、日本で暮らす一人ひとりが自分らしい選択をできるよう、これからも性と健康に関する情報を丁寧にお届けしていきます。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。
記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。
参考文献
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富士フイルムヘルスケアラボ. ≪Vol.112≫更年期障害 | できる!上がる!ヘルスケアNEWS. https://h-jp.fujifilm.com/…(最終アクセス日:2025-11-26)

