「そろそろお酒をやめたい」「健康診断で注意されたから減らさないと」と思って飲酒量を減らしたり、思いきって断酒したときに、 手の震えや強い不安感、汗びっしょりになる、夜まったく眠れない――そんなつらい症状に悩まされていませんか。
長年多量飲酒を続けてきた人が、急にお酒をやめたり大きく減らしたりすると、体がアルコールのない状態に対応しきれず、 「アルコール離脱症候群(アルコール離脱症状・禁断症状)」と呼ばれるさまざまな症状があらわれることがあります。 軽い場合は自宅での見守りで落ち着くこともありますが、重くなると幻覚やけいれん、意識障害など命に関わる状態に進行することもあり、 専門的な医療による管理が欠かせません1,2。
本記事では、日本の厚生労働省や国内外のガイドライン・研究報告をもとに、アルコール離脱症候群の仕組み、典型的な症状と危険なサイン、 自宅でできる対処と医療機関に任せるべきケースの違い、受診先の選び方、家族・周囲の支え方まで、できるだけわかりやすく整理して解説します1–6。
「こわくて誰にも相談できない」「仕事や家族に知られたくない」と一人で抱え込んでいる方も少なくありません。 この記事を通して、ご自身や大切な人の状態を落ち着いて振り返り、「今何をすべきか」を具体的にイメージするための一歩につなげていただければ幸いです。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。 厚生労働省や日本の専門学会、世界保健機関(WHO)などの信頼できる公的情報源を中心に、 日常生活で活用しやすい形で整理してお届けすることを目指しています。
本記事では、厚生労働省の「アルコール健康障害対策」やe-ヘルスネットの解説ページ、日本のアルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン、 WHOのアルコール離脱管理に関する推奨、国際的な総説論文などを一次情報源として用い、アルコール離脱症候群に関する最新の知見を整理しました1–8。
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:アルコール健康障害対策基本法やアルコール健康障害対策推進基本計画、e-ヘルスネットの解説、統計資料などを優先して参照しています。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本のアルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインや、WHO、BMJ、StatPearlsなどのエビデンスをもとに要点を整理しています。
- 医療機関・専門センターの資料:依存症専門医療機関・国立病院機構の冊子などを参考に、現場に近い実務的な情報も補足しています。
これらの情報をもとに、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ構成案や草稿を作成し、原著資料と照合しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。
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要点まとめ
- アルコール離脱症候群とは、多量飲酒を続けてきた人が急に飲酒をやめたり大きく減らしたりしたときに起こる、「手のふるえ・発汗・不眠・不安・血圧上昇・幻覚・けいれん」などの症状の総称です1,2。
- 軽い離脱症状は最後の飲酒から6〜24時間以内に出ることが多く、通常2〜3日でピークを迎えますが、睡眠障害や不安感などが数週間続くこともあります7,8。
- 発熱、激しい混乱や興奮、全身のけいれん、見えないものが見える・聞こえるといった幻覚などが出ている場合は、生命に関わる「せん妄(振戦せん妄)」の可能性があり、救急車(119番)を含めて至急医療機関に相談が必要です7,8。
- 治療では、ベンゾジアゼピン系薬による離脱症状のコントロールや、ビタミンB1(チアミン)補給、点滴による脱水・電解質補正などが行われます。症状や合併症の有無によって、入院治療が推奨される場合があります3–6,8。
- 自宅での断酒・減酒を試みる場合は、決して一人で抱え込まず、家族や友人、かかりつけ医、精神科・心療内科、保健所、依存症専門相談窓口、自助グループなどと連携しながら進めることが重要です3,4,9。
- アルコール健康障害対策基本法やアルコール健康障害対策推進基本計画に基づき、全国各地に依存症専門医療機関や相談窓口の整備が進められています。住んでいる地域にかかわらず、支援につながる道は少しずつ広がっています3,4,10。
「お酒をやめようとすると手が震える」「眠れないからまた飲んでしまう」「家族が断酒を始めてから様子がおかしい」――このような不安や疑問を抱えている方に向けて、 この記事ではアルコール離脱症候群の仕組みから、日常生活でできる工夫、医療機関の受診の目安までを段階的に解説します。
まずは、長年の飲酒が体と脳にどのような変化をもたらし、その結果としてどんな離脱症状が出てくるのかという基本から整理します。 そのうえで、「どこまでが自宅で様子を見てよい範囲か」「どのような症状が出たら迷わず救急受診すべきか」を、具体的なチェックポイントとして紹介します。
また、断酒・減酒を続けるうえで役立つ日記のつけ方や家族とのコミュニケーションの工夫、自助グループや相談窓口の活用など、 長い目で見た回復のプロセスも取り上げます。必要に応じて、 関連する総合ガイド や、 詳細解説記事 など、JHO内の関連記事にも自然な流れで橋渡しできる構成を想定しています。
読み進めることで、「自分や家族の状態をどう整理するか」「いつ、どこで、誰に相談するか」「今日から具体的に何を変えていくか」が、 少しずつイメージできるようになることを目指しています。
第1部:アルコール離脱症候群の基本と日常生活の見直し
まずは、「アルコール離脱症候群とは何か」「どのような人に起こりやすいのか」という基本から整理します。 専門的な病名を聞くと身構えてしまうかもしれませんが、背景にあるのは、長年の飲み方の積み重ねと、 それに慣れてしまった体・脳がアルコールのない状態に戸惑うという、ある意味とても“人間らしい”反応でもあります1,2,7。
1.1. アルコール離脱症候群の仕組み ― 体と脳の「慣れ」が裏返る
アルコール(エタノール)は、脳の働きを「抑える方向」に作用する物質です。 飲み始めはリラックスしたり、眠気が出たりするのはこのためです。 しかし、毎日多量に飲み続けていると、脳は「いつもアルコールがある状態」を基準にしてバランスをとるようになります。 抑える方向の作用に対して、逆に興奮させる仕組みを強めて釣り合いをとろうとするのです1,7。
その状態で急にお酒が切れるとどうなるでしょうか。 抑える力(アルコール)が急になくなるのに、興奮させる仕組みだけが強いまま残ってしまいます。 その結果、手のふるえや発汗、脈が早くなる、血圧が上がる、不安で落ち着かない、眠れないといった症状が出てきます。 これが「離脱症状」と呼ばれるものです1,2,4,7。
日本のe-ヘルスネットでは、代表的な離脱症状として、 「不眠・発汗・手のふるえ・血圧の上昇・不安・いらいら感」などが挙げられ、重症になると幻覚やけいれん発作が起こることもあると説明されています1,2。 また厚生労働省のアルコール健康障害対策のページでも、アルコール依存症ではアルコールが抜けたときに離脱症状が出現し、 それを抑えるためにまた飲んでしまう悪循環が生じるとされています3。
離脱症状の程度には幅があり、「朝起きたときだけ軽く手が震える」「寝汗をかく」「なんとなく不安で落ち着かない」程度でおさまる人もいれば、 一気に禁酒した数時間後から強い震えや吐き気、2日目前後に幻覚・けいれん・意識障害といった重症の状態に進む人もいます7,8,11。
1.2. 悪化させてしまうNG習慣 ― 「迎え酒」や自己流の断酒
離脱症状を軽くするどころか、かえって悪化させてしまう行動も少なくありません。 代表的なのは、以下のような「NG習慣」です。
- 迎え酒で症状をごまかす: 手の震えや不安感が出たときに「少し飲めばおさまるから」とお酒を飲んでしまうと、短期的には楽になっても、長期的には依存と離脱の悪循環を強めることになります1,3。
- 一人きりで急に断酒する: 長年多量飲酒を続けてきた人が、医療者のサポートなしに突然お酒を断つと、重症の離脱症候群や振戦せん妄を起こす危険が高まります4–6,8。
- 睡眠薬や市販薬を自己判断で増やす: 不眠や不安をまぎらわそうとして、手持ちの睡眠薬や抗不安薬、市販薬を自己判断で増やすと、呼吸抑制や転倒など別のリスクが高まります。
- 水分や食事をほとんどとらない: 吐き気や下痢でつらいときにほとんど水分をとらないでいると、脱水や電解質異常が進行し、けいれんや意識障害のリスクが上がります7,8。
アルコール離脱症状は、単に「気合いで乗り越えるもの」ではありません。 脳と全身のバランスが崩れている、れっきとした医学的な状態です。 特に重い依存状態が疑われる場合や、過去に離脱でけいれん・幻覚を経験したことがある場合は、 かかりつけ医や精神科・心療内科、依存症専門医療機関などと相談しながら、安全なやめ方を一緒に考える必要があります3,4,6。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 朝起きたとき、手が震えたり汗をかいていて、少し飲むと楽になる | アルコールへの身体依存が進行し、離脱症状が出ている可能性 |
| 仕事中や会議中でも、「次いつ飲めるか」が頭から離れない | アルコールへの精神依存が強く、飲酒のコントロールが難しくなっている状態 |
| 何度も「今日こそはやめよう」と思ったが、離脱症状が怖くて続かない | 離脱症状による悪循環(症状を止めるためにまた飲む)が起きている可能性 |
| 過去に断酒・減酒を試みた際、幻覚やけいれんを経験したことがある | 重症の離脱症候群や振戦せん妄の既往。自己流断酒は非常に危険で、専門的な管理が必要 |
| 肝臓病や心臓病、糖尿病など、他の持病も抱えながら多量飲酒を続けている | 離脱症状が重症化しやすく、入院治療が望ましいケースの可能性 |
第2部:身体の内部要因 ― 栄養・ホルモン・隠れた不調と離脱症状
生活習慣や飲み方だけでなく、体の内側の状態も離脱症状の出方や重さに大きく影響します。 栄養不足やビタミン欠乏、ホルモンバランス、持病の有無などによっては、同じ量の飲酒でも離脱が重く出やすくなることがあります4,7,8。
2.1. 長期多量飲酒と栄養・ビタミンの欠乏
アルコールを長年多量に飲み続けていると、食事がおろそかになったり、胃腸の働きが悪くなって栄養の吸収が落ちたりします。 特にビタミンB1(チアミン)の不足は、重い脳の障害(ウェルニッケ脳症など)につながることが知られており、 離脱時にはビタミンB1を点滴や内服で補うことが世界的な標準的対応になっています5–8。
離脱症状が出ているときは、吐き気や嘔吐、下痢、食欲低下などでさらに栄養状態が悪化しやすく、 脱水や電解質異常(血液中のナトリウムやカリウムのバランスの乱れ)も生じやすくなります。 これらはけいれんや不整脈、意識障害の引き金にもなるため、症状が強い場合には点滴治療を含む医療的な管理が重要です7,8,11。
2.2. ライフステージ・性別とアルコール離脱
一般的に、女性は体格が小さいことや、体内の水分量が男性より少ないことなどから、同じ量のアルコールでも血中濃度が高くなりやすいとされています。 そのため、男性より少ない量でも依存症や離脱症状を起こしやすいと考えられています1,2,4。
また、更年期などホルモンバランスが大きく変化する時期には、睡眠障害や気分の変動が起こりやすく、 それをきっかけに飲酒量が増えて依存状態になる方もいます。 妊娠中や授乳中の飲酒は胎児や乳児に深刻な影響を与えるため、 アルコール健康障害対策の中でも特に重要なテーマとして位置づけられています3,4,10。 妊娠・授乳の可能性がある場合は、自己判断での断酒・減酒ではなく、必ず産婦人科や内科などと連携しながら進めることが大切です。
2.3. 心の不調・ストレスとアルコール離脱
うつ病や不安障害、PTSDなどの心の病気がある場合、ストレスを紛らわせるために飲酒が増え、 その結果として依存状態や離脱症候群が生じていることも少なくありません4,7。 心の不調とアルコール問題は互いに悪影響を与え合うことが多く、 「お酒をやめれば心の状態も自然によくなる」とは限らない点に注意が必要です。
精神科・心療内科の受診では、離脱症状の程度だけでなく、背景にあるストレスや職場・家庭環境、過去のトラウマなども含めて評価されます。 必要に応じて、薬物療法だけでなく、カウンセリングや地域の支援機関との連携も検討されます3,4,6。
第3部:専門的な診断が必要な状態 ― 重症離脱・合併症・似た病気
「少し手が震える」「寝つきが悪い」といった軽い離脱症状にとどまっているうちは、家庭での見守りと外来通院を組み合わせて乗り切れる場合もあります。 一方で、症状が急速に悪化したり、意識の状態がおかしくなってきた場合には、「重症アルコール離脱症候群」や「振戦せん妄」と呼ばれる危険な状態になっている可能性があります7,8,11。
3.1. 重症アルコール離脱症候群・振戦せん妄とは
重症のアルコール離脱症候群では、以下のような症状が組み合わさってあらわれることがあります。
- 時間や場所、人がわからなくなるなどの強い混乱(せん妄)
- 激しい不安や興奮で一時もじっとしていられない
- 全身の強い震え、歩けないほどのふらつき
- 発熱(38℃以上)や脈拍の急激な増加
- 「虫が這っている」「誰かが話しかけてくる」といった幻覚(視覚・聴覚・触覚)
- 全身のけいれん発作や意識を失う発作
これらは、単なる「二日酔い」や「飲みすぎの反動」とはまったく異なる、救急対応が必要な状態です。 WHOの推奨や国際的な総説でも、重症離脱や離脱けいれんを起こした患者にはベンゾジアゼピン系薬剤を用いた集中的な治療と、 バイタルサイン(血圧・脈拍・呼吸・体温)の継続的なモニタリングが推奨されています6–8,11。
日本でも、厚生労働省のガイドラインや専門施設の資料で、重症離脱症候群や振戦せん妄は入院管理が原則とされており、 救急外来または入院可能な医療機関への早めの受診が重要とされています4–6,9。
3.2. アルコール離脱と似た症状を起こす病気
離脱症状の最中には、アルコール以外の原因による症状(脳卒中、脳炎、低血糖、感染症など)が隠れている場合もあります。 例えば、突然の意識障害や片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、強い頭痛などがあれば、脳卒中など別の救急疾患の可能性も考えなければなりません。
また、アルコールによる長年の肝障害や心筋症、膵炎などが背景にある場合、 離脱をきっかけにこれらの病気が一気に悪化することもあります。 「いつもの二日酔いとは明らかに違う」「顔色が悪い、息が荒い、会話が成り立たない」といった様子があれば、 迷わず119番通報も含めて救急相談窓口に連絡しましょう。
3.3. 日本で使われる評価尺度と診断の流れ
医療機関では、離脱症状の重症度を評価するために、海外で広く用いられているCIWA-Arというスケールや、 日本のガイドラインに基づいたチェックリストなどが使われます5,6,8。 症状の程度に応じて、「外来フォローでよいか」「一般病棟入院か」「集中治療室レベルの管理が必要か」などが判断されます。
診断では、飲酒歴(何年くらい、どのくらいの量を飲んでいるか)、過去の離脱症状の有無、既往歴(肝臓病・心臓病・糖尿病・てんかんなど)、 現在服用中の薬、家族のサポート状況などが丁寧に聴かれます。 血液検査や心電図、場合によっては頭部CTやMRIなどの検査が行われることもあります4–7。
第4部:今日から始める改善アクションプラン
アルコール離脱症候群に向き合うことは、「お酒をやめるかどうか」だけの問題ではありません。 これまでの生活そのものや、人間関係、働き方、自分のストレス対処法を見直す、長いプロセスの入り口でもあります。 ここでは、今すぐできる小さな一歩から、数カ月〜数年かけて取り組んでいくステップまで、レベル別のアクションプランを整理します3,4,9。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 一人で抱え込まない・安全確認をする | 家族や信頼できる友人に「お酒を減らしたい・やめたいと思っている」と正直に伝える。 過去に離脱で倒れたことがある、重い持病がある場合は、今のうちにかかりつけ医や精神科・心療内科への相談予約を取る。 |
| Level 2:今週から始めること | 飲酒量と体調を記録する | 毎日の飲酒量(種類・本数・アルコール度数)と、翌朝の体調(手の震え・汗・睡眠・気分)を簡単なメモやアプリで記録する。 厚生労働省が推奨する「純アルコール量」の目安を参考に、自分がどのくらい飲んでいるのか把握する3,10。 |
| Level 3:1〜3カ月かけて見直すこと | 医療機関・相談窓口・自助グループとつながる | 精神保健福祉センターや保健所、依存症専門医療機関の相談窓口を調べ、面談や電話相談を利用する3,4,10。 断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)などの自助グループのミーティングに試しに参加してみる。 |
| Level 4:中長期的に続けたいこと | 生活リズムとストレス対処法の再構築 | 睡眠・食事・運動・休息のリズムを整え、ストレスを「お酒以外」で発散できる方法(散歩、趣味、軽い運動、誰かに話すこと)を増やしていく。 必要に応じて、心理カウンセリングや家族療法なども検討する。 |
どのステップから始めてもかまいません。 大切なのは、「一度失敗したから自分はダメだ」と決めつけないことです。 アルコール健康障害対策基本法やアルコール健康障害対策推進基本計画でも、発生・進行・再発それぞれの段階に応じた支援が重要とされています4,10。 何度つまずいても、そのたびに助けを借りながら立て直していくことが回復への道です。
第5部:専門家への相談 ― いつ・どこで・どのように?
「この症状で病院に行っていいのか」「どの診療科にかかればよいのか」「費用が心配で受診をためらってしまう」といった不安は、多くの方が抱えています。 ここでは、受診を検討すべき危険なサインと、診療科の選び方、診察時に役立つ準備についてまとめます。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 発熱(38℃以上)や強い悪寒、脈が非常に速い、息苦しいなどの症状がある
- 時間や場所、人がわからなくなる、意味の通らないことを言うなど意識がはっきりしない
- 虫や動物が見える、人の声が聞こえるなど、実際にはないものが見えたり聞こえたりする
- 全身のけいれん発作を起こした、あるいはその前触れのような違和感がある
- 立ち上がれないほどふらつく、何度も転倒する、頭を強く打った
- 胸の痛みや締め付け感、強い腹痛、黒い・赤い便や嘔吐(血が混じる)がある
- 「死にたい」「消えたい」という気持ちが強くなっている
これらの症状がある場合は、自宅で様子を見るのではなく、すぐに救急外来の受診を検討してください。 夜間や休日で受診先に迷うときは、各自治体の救急相談窓口(#7119など)や119番に相談することもできます。 特に、けいれんや重い意識障害、激しい幻覚・興奮がある場合は、迷わず119番通報を検討してください7,8,11。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- まず相談しやすい窓口: かかりつけの内科、総合診療科、精神科・心療内科、地域の精神保健福祉センター、保健所など。
- 離脱症状が強い場合: 精神科・心療内科や依存症専門医療機関、場合によっては救急外来。
- 肝臓病・膵炎・心臓病などが疑われる場合: 消化器内科、循環器内科、総合内科などの連携が必要になることがあります。
- 妊娠中・授乳中: 産婦人科と連携しつつ、精神科・内科とも相談しながら安全な断酒・減酒の方法を検討します。
日本では、アルコール健康障害対策推進基本計画に基づき、都道府県ごとに依存症専門医療機関や相談窓口が整備されつつあります3,4,10。 お住まいの地域のホームページや厚生労働省の情報ページから、最寄りの相談先を探してみてください。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 健康保険証(もしくはマイナンバーカード)
- 現在飲んでいる薬・サプリのリスト、お薬手帳
- ここ1〜2週間の飲酒量のメモ(ビールなら何本、日本酒なら何合など具体的に)
- 離脱症状がいつから、どのように出ているかのメモ(時間帯、症状の変化)
- できれば家族など、普段の様子を知っている人の同伴
日本の公的医療保険に加入している場合、外来受診は自己負担3割が基本です。 初診料や血液検査、点滴、薬代などが加わるため、数千円〜1万円前後になることが多いですが、 症状や検査内容によって変わります。入院が必要になった場合は、医療費の自己負担上限を補う高額療養費制度の対象となることもあります。 詳細は、加入している健康保険組合や市区町村の窓口に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q1: アルコールをやめると、離脱症状はいつからどのくらい続きますか?
A1: 一般的には、最後に飲んだ後6〜24時間くらいの間に、手の震えや不安、発汗、不眠などの初期離脱症状が出てくることが多いとされています7,8。 多くの場合、2〜3日目に症状がピークとなり、その後少しずつ落ち着いていきますが、睡眠の質の低下や不安感、集中力の低下などが数週間続くこともあります。
ただし、症状の出方や続く期間は、これまでの飲酒量や期間、体の状態、持病の有無などによって大きく異なります。 発熱や強い混乱、幻覚、けいれんなどが見られる場合は、自己判断を避けて早めに医療機関に相談してください。
Q2: 家で一人で断酒しても大丈夫でしょうか?
A2: 過去の飲酒量が少なく、これまで離脱症状を経験したことがない人であれば、家族の見守りのもと自宅で飲酒量を減らしていくことが可能な場合もあります。 しかし、長年多量飲酒を続けている方や、過去に離脱でけいれん・幻覚を起こしたことがある方、肝臓病や心臓病などの持病がある方は、 一人での断酒は非常に危険です4–8。
できれば断酒・減酒を始める前に、かかりつけ医や精神科・心療内科、依存症専門医療機関などに相談し、 必要なら入院や通院でのサポートを受けながら進めることをおすすめします。 夜間に急変することもあるため、少なくとも最初の数日は、家族や同居人がそばにいて様子を見ることが望ましいです。
Q3: 少しずつお酒を減らすのと、いきなりやめるのはどちらが安全ですか?
A3: どちらが適切かは、飲酒量や依存の程度、体の状態によって変わります。 多量飲酒が長く続いている場合や、すでに離脱症状が出ている場合には、医師の管理のもとでベンゾジアゼピン系薬剤などを用いながら、 比較的短期間で断酒に持ち込む方法が推奨されることが多いとされています5–8,11。
一方で、依存の程度が比較的軽い人では、飲酒量を段階的に減らしていく「減酒」から始め、 将来的な断酒や飲酒量低減を目標とする選択肢も、国内のガイドラインで位置づけられています5,10。 自分に合った方法を決める際には、必ず医療者と相談しながら進めましょう。
Q4: 睡眠薬や市販薬を使って離脱症状を乗り越えても良いですか?
A4: 離脱症状は、脳と全身のバランスが大きく崩れている状態であり、自己判断で睡眠薬や抗不安薬、市販薬を増やして対応するのは危険です。 アルコールと同時に服用すると呼吸抑制や転倒のリスクが高まり、離脱後に急に大量に飲むと副作用が強く出ることもあります7,8。
国際的なガイドラインでは、離脱症状の治療にはベンゾジアゼピン系薬剤を第一選択とし、適切な量を医師が調整しながら使用することが推奨されています6–8,11。 不眠や不安がつらい場合も、自己判断ではなく、必ず医師や薬剤師に相談してください。
Q5: 離脱症状は毎回同じくらいで済むのでしょうか?
A5: いいえ、離脱症状の重さは毎回同じとは限りません。 むしろ、過去に比較的軽い離脱症状で済んでいた人でも、繰り返すうちに徐々に重くなり、あるとき突然けいれんや振戦せん妄を起こすことがあります4,7,8。
特に、過去に離脱けいれんや振戦せん妄を経験した人は、次回以降も重症化しやすいとされており、 自宅での自己流断酒は避け、専門的な管理のもとで断酒・減酒を進めることが強く推奨されます。
Q6: 家族として、離脱症状に苦しむ本人をどう支えればよいですか?
A6: 家族の役割は、本人を「責めること」ではなく、「安全を守ること」と「専門家につなぐこと」です。 具体的には、危険なサインが出ていないかを一緒にチェックし、必要に応じて救急受診をためらわないこと、 そして本人が一人で断酒を抱え込まないよう、相談窓口や医療機関、自助グループなどへの橋渡し役になることが重要です3,4,9,10。
家族自身も大きなストレスを抱えやすいため、家族向けの相談窓口や家族会、自助グループを活用し、 一人で抱え込まないようにすることも大切です。アルコール健康障害対策基本法でも、本人だけでなく家族の支援が重視されています4,10。
Q7: 仕事を続けながら治療することはできますか?
A7: 離脱症状の重さや仕事の内容によって対応は変わります。 軽度〜中等度の離脱で外来治療が中心の場合、主治医と相談しながら勤務時間や仕事内容を調整しつつ治療を続けるケースもあります。 一方、重症離脱や振戦せん妄、合併症がある場合は、入院治療が優先され、一定期間の休職が必要になることもあります4–6,8。
アルコール健康障害は、単なる「自己管理の問題」ではなく、医学的な治療が必要な状態です。 職場にどこまで伝えるかは悩ましい問題ですが、産業医や産業保健スタッフ、外部の相談窓口なども活用しながら、 一人で抱え込まずに調整方法を探していくことが大切です。
Q8: 一度断酒に成功しても、また飲んでしまったら意味がないのでしょうか?
A8: 「また飲んでしまった」ことに強い罪悪感を抱く方は少なくありませんが、 回復のプロセスは往々にして一直線ではなく、行きつ戻りつしながら少しずつ前に進むものだと考えられています5,9。
近年の国内ガイドラインでも、断酒だけでなく飲酒量の低減を治療目標の一つとして位置づけるなど、 多様なゴール設定が提案されています5,10。 大切なのは、「できなかった自分を責めること」ではなく、「今回の経験から何がわかったか」「次はどこを工夫できるか」を一緒に考えてくれる医療者や支援者とつながることです。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
アルコール離脱症候群は、「意思が弱いから起こるもの」ではなく、長年の飲酒によって変化した脳や体が、 アルコールのない状態に適応しようとして起こる医学的な状態です。 手の震えや発汗、不安、不眠といった軽い症状から、幻覚やけいれん、意識障害に至る重症例まで幅がありますが、 適切な支援を受けることで、多くの方が安全に離脱を乗り越え、長期的な回復への一歩を踏み出すことができます1–8。
もし今、あなた自身や大切な人が離脱症状に悩んでいるなら、「一人で我慢する」か「また飲んでしまう」以外にも選択肢があることを覚えておいてください。 家族や友人、かかりつけ医、精神科・心療内科、保健所や精神保健福祉センター、依存症専門医療機関、自助グループなど、 役割の違うさまざまな支援者が存在します3,4,9,10。
本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の状態に対する診断や治療方針の決定を直接行うものではありません。 気になる症状がある場合や、断酒・減酒の方法について不安がある場合は、迷わず医療機関や相談窓口にご相談ください。 小さな一歩でも、今ここから始めることが、将来の自分や家族の健康につながります。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。 アルコール離脱症候群に関する本記事も、厚生労働省の資料や日本のガイドライン、WHOなどの公的機関が公表している情報を土台としています1–8,10。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、 JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。 最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
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