抗精神病薬による錐体外路症状とは?主な症状と原因、受診の目安と対処法
精神・心理疾患

抗精神病薬による錐体外路症状とは?主な症状と原因、受診の目安と対処法

抗精神病薬や吐き気止めなどのお薬を飲み始めてから、「手が震える」「歩き方がぎこちない」「じっと座っていられない」「口や舌が勝手に動く」といった動きの異常が気になっていませんか。

このような「薬をきっかけに現れる動きの症状」は、まとめて錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう/extrapyramidal symptoms:EPS)と呼ばれます。特に抗精神病薬はこころの症状を抑える一方で、脳内のドパミンという物質のバランスが変化し、運動のコントロールに影響を与えることがあります。

錐体外路症状には、パーキンソン病に似た「薬剤性パーキンソニズム」、急に首や眼球がねじれる「急性ジストニア」、じっとしていられない「アカシジア」、口や舌の不随意運動が続く「遅発性ジスキネジア」など、いくつかのタイプがあります。中には自然に軽くなるものもあれば、放っておくと転倒や誤嚥(むせ込み)につながったり、長く残ってしまうものもあります。

この記事では、厚生労働省や日本のガイドライン、公的機関・医学会の情報をもとに、錐体外路症状の基本的な仕組みと主なタイプ、原因となるお薬、日常生活で気づきやすいサイン、受診の目安、医療機関での対応や治療の選択肢について、できるだけわかりやすく解説します。ご自身やご家族が抗精神病薬などを服用している方は、「どんな症状が出たら相談すべきか」「我慢してよいのか・いけないのか」の判断の参考にしてください。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、厚生労働省が公開している重篤副作用マニュアルや薬剤性パーキンソニズムの解説資料、日本精神神経学会の統合失調症薬物治療ガイドライン、日本病院薬剤師会の副作用評価資料、国内の医療機関による解説記事、さらに海外の査読付き論文やレビューなどの一次情報をもとに、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 厚生労働省・PMDAなどの公的機関:薬剤性パーキンソニズム、アカシジア、悪性症候群など、重篤な副作用ごとの解説・対応マニュアルを優先して参照しています。
  • 日本の医学会・専門ガイドライン:日本精神神経学会の「統合失調症薬物治療ガイドライン2022」など、抗精神病薬の適正使用と副作用対策に関する推奨をもとに要点を整理しています。
  • 医療機関・教育機関の一次資料:心療内科・精神科クリニックによる錐体外路症状の説明や、薬剤師向けの副作用評価スケール(DIEPSSなど)を情報源として活用しています。

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

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要点まとめ

  • 錐体外路症状(EPS)は、主に抗精神病薬などドパミン受容体をブロックする薬によって生じる「薬剤性の運動障害」の総称で、薬剤性パーキンソニズム、急性ジストニア、アカシジア、遅発性ジスキネジアなどが代表的です。
  • 症状は「動きにくい・固くなる(運動過少)」タイプと、「勝手に動く・落ち着かない(運動過多)」タイプに大別され、歩きにくさや手の震え、じっと座っていられないほどの落ち着かなさ、口や舌の不随意運動などがみられます。
  • 原因となる薬をすぐ中止すればよいとは限らず、自己判断で断薬すると、元の精神症状の悪化や再発につながるおそれがあります。基本は「症状の記録」をとりながら、処方した医師・薬剤師に早めに相談することが重要です。
  • 対応の基本は、原因薬の用量を減らす・錐体外路症状の出にくい薬へ切り替える・必要に応じて抗コリン薬などの補助薬を併用するなどで、症状の種類ごとに対策が異なります。
  • 高熱や全身の強いこわばり、意識の低下などを伴う場合は、抗精神病薬の重篤な副作用である悪性症候群の可能性もあり、救急受診(119番通報を含む)が必要です。
  • 錐体外路症状はつらい副作用ですが、早期発見・早期対応で軽くできる場合も多く、治療薬の効果を保ちながら上手に付き合う方法を主治医と一緒に探していくことが大切です。

第1部:錐体外路症状の基本と日常生活の見直し

まずは「錐体外路とは何か」「どのような症状が錐体外路症状にあたるのか」を整理し、日常生活の中で気づきやすいサインを確認していきます。専門的な病名を覚えることよりも、「以前と比べてどこがどう変わったのか」を言葉にできるようになることが大切です。

1.1. 錐体外路と錐体外路症状の基本

錐体外路とは、大脳皮質から大脳基底核などを通って脊髄へ運動の指令を伝え、無意識の姿勢の維持や歩く動き、表情などを自動的に調整している神経回路の総称です。ここでの情報伝達にはドパミンなどの神経伝達物質が関わっており、そのバランスが崩れると、動きが遅くなる・固くなる、あるいは勝手に動いてしまうといった症状が出てきます。

錐体外路の障害によって生じる症状は、まとめて錐体外路症状と呼ばれ、運動が少なくなる「運動過少」と、運動が多すぎる「運動過多」に大きく分けられます。運動過少の代表がパーキンソニズム(筋固縮、動作緩慢、表情の乏しさなど)、運動過多の代表がジスキネジアやジストニア(勝手にねじれる・震えるなどの不随意運動)です。

精神科領域では、これらが抗精神病薬などの副作用として起こることが少なくありません。同じ「パーキンソン様の症状」でも、パーキンソン病そのものなのか、薬によるものなのかで対応が異なるため、服薬歴を含めて丁寧な評価が必要になります。

1.2. 日常で気づきやすい「NGサイン」

錐体外路症状は、最初は「なんとなく動きがぎこちない」「落ち着きがない」といった形で現れることが多く、ご本人も周囲も「歳のせい」や「性格」「疲れやストレス」で片づけてしまいがちです。以下のようなサインが、抗精神病薬や一部の吐き気止め・抗うつ薬などを飲み始めた・増量した時期と重なっていないか振り返ってみましょう。

  • 歩く速度が遅くなり、歩幅が小刻みになる。方向転換がぎこちない。
  • 表情が乏しくなり、声が小さく単調になったと言われる。
  • 椅子に座っていても脚を止められない、立ったり座ったりを繰り返すなど、じっとしていられない。
  • 自分の意思とは関係なく、口をもぐもぐさせる、舌を突き出す、目をぎゅっと閉じるといった動きが出る。
  • 首が急に横にねじれる、眼球が上を向いて戻りにくいなど、強い筋肉のこわばりが出る。

このようなサインが気になる場合、「自分は気にしすぎかもしれない」と我慢するのではなく、いつから・どのくらいの頻度で・どの状況で起きるのかを簡単にメモしておくと、診察の際に大きな助けになります。可能であれば、家族など第三者が気づいた変化も書き添えておくとよいでしょう。

表1:錐体外路症状セルフチェックリスト(例)
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
抗精神病薬を飲み始めてから、歩き出す一歩目が重く、歩幅が小さくなった 薬剤性パーキンソニズムの可能性/加齢や運動不足による筋力低下 など
椅子に座っていられず、脚を揺らしたり立ち上がって部屋をうろうろしてしまう アカシジア(静座不能症)の可能性/不安・イライラの高まり など
口をもぐもぐさせる、舌を突き出すなど、自分の意思と違う顔や舌の動きが続いている 遅発性ジスキネジアなどの不随意運動/歯列や義歯の違和感 など
突然首や肩がねじれるように固くなる、眼球が上を向いて戻りにくい発作がある 急性ジストニアの可能性(早めの医療機関受診が必要)
歩行時にふらつきや転倒が増え、飲み込みにくさやむせ込みも気になる 薬剤性パーキンソニズムの進行/脳血管障害など他の神経疾患 など

第2部:身体の内部要因 — ドパミンバランスと基礎疾患

生活リズムや環境だけでは説明できない動きの変化がある場合、背景には脳内のドパミンバランス、年齢や脳の病気、その他の服用薬といった「身体の内部要因」が関わっている可能性があります。この部では、錐体外路症状が出やすくなる体側の条件について見ていきます。

2.1. ドパミンバランスとライフステージ・脳の脆弱性

抗精神病薬の多くは、脳内のドパミンD2受容体をブロックすることで、幻覚や妄想、興奮などの症状を和らげます。一方で、同じドパミンは錐体外路系でも「スムーズに動くための潤滑油」のような役割を果たしているため、ブロックの度合いが強すぎたり、もともとの脳の機能が弱っていたりすると、動きにくさや不随意運動が出やすくなります。

特に以下のような条件があると、同じ用量の薬でも錐体外路症状が出やすいとされています。

  • 高齢である(加齢に伴ってドパミン系が弱くなっている)
  • 脳血管障害、認知症、頭部外傷などの既往がある
  • もともとパーキンソン病やパーキンソン症候群を指摘されている
  • 女性で体格が小柄な場合や、体重が大きく変動している場合
  • 抗精神病薬を急に増量した、あるいは複数併用している

同じ薬でも「若いときは大丈夫だったが、高齢になってから突然副作用が出てきた」というケースもあります。長年同じ薬を飲んでいても、年齢や体調の変化に応じてリスクは変化するため、定期的な副作用チェックが重要です。

2.2. 他の薬・栄養状態・身体状態との関係

錐体外路症状は、必ずしも抗精神病薬だけで起こるわけではありません。ドパミン受容体をブロックするタイプの制吐薬(吐き気止め)や胃腸薬、一部の抗うつ薬やカルシウム拮抗薬などでも、パーキンソン症状やアカシジア、ジストニアが現れることがあります。

また、貧血や低栄養、電解質バランスの乱れ、重い肝障害・腎障害などがあると、薬物が体内に蓄積しやすくなり、副作用のリスクが高まります。特にアカシジアでは、「血清鉄の低下や糖尿病が促進因子となる」と報告されていることもあり、採血での評価が参考になる場合があります。

「精神科の薬以外は市販薬だけだから大丈夫」と思い込まず、処方薬・市販薬・サプリメントを含め、飲んでいるものをすべて主治医・薬剤師に伝えることが、副作用対策の第一歩です。お薬手帳を活用し、複数の医療機関にかかっている場合も情報を共有できるようにしておきましょう。

第3部:専門的な診断が必要な錐体外路症状

ここからは、代表的な錐体外路症状のタイプについて、特徴的な症状や発症のタイミング、放置した場合のリスク、医療機関での対応を整理します。専門的な検査や治療が必要となることが多いため、「思い当たる症状があるか」を確認しながら読み進めてください。

3.1. 薬剤性パーキンソニズム(パーキンソン病に似た症状)

薬剤性パーキンソニズムは、抗精神病薬や一部の制吐薬などを原因として、パーキンソン病に似た症状が現れる状態です。一般に、薬の用量が増えるほどリスクが高まり、高齢者や脳に器質的な病変がある方では特に注意が必要とされています。

主な症状は、筋固縮(筋肉のこわばり)、動作緩慢(動きが遅くなる)、姿勢反射障害(バランスを取りにくく転倒しやすい)、小刻み歩行、表情の乏しさ、声が小さくなる、飲み込みにくさなどです。多くの場合、左右の差が少ない両側性で現れ、安静時の振戦は目立たないこともあります。

対応の基本は、原因薬の減量または中止、錐体外路症状の少ない薬への切り替えです。抗コリン薬(トリヘキシフェニジルなど)を併用することもありますが、高齢者では便秘や尿閉、認知機能低下など別の副作用が増えるため、必要最低限・最短期間にとどめることが推奨されています。自己判断でパーキンソン病治療薬(ドパミン作動薬など)を追加すると精神症状が悪化するおそれがあるため、必ず専門の医師のもとで調整します。

3.2. 急性ジストニア(首や眼球の急なねじれ・こわばり)

急性ジストニアは、抗精神病薬を開始してから数日以内に起こることが多い副作用で、若年男性に多いとされています。首が突然横を向いたまま戻らなくなったり、眼球がぐっと上を向いてしまったりするなど、激しい筋収縮による異常な姿勢が特徴です。場合によっては喉頭ジストニアが起こり、呼吸が苦しくなるなど命に関わることもあります。

強い痛みや不安を伴うことが多く、ご本人も周囲もパニックになりがちですが、抗コリン薬(ベンザトロピンなど)の筋肉注射や点滴で比較的速やかに改善することが期待できます。症状が出た場合は、夜間や休日であっても救急外来を受診し、「抗精神病薬を飲み始めた直後であること」「急に首・眼球がねじれて戻らないこと」を伝えてください。

3.3. アカシジア(静座不能症)

アカシジアは、「じっとしていられない感じ」と「実際に動かずにはいられない行動」がセットになった状態です。脚を揺らす、立ったり座ったりを繰り返す、部屋を歩き回るなどの運動亢進に加えて、内側から湧き上がる強い不安・焦燥感が特徴です。本人は「もともと落ち着きがないだけ」と説明することもあり、軽症例では見逃されやすいと言われています。

抗精神病薬の用量や種類の変更後に悪化することが多く、ときに「病気そのものの悪化による興奮」と誤認されて薬がさらに増量されてしまう悪循環に陥ることもあります。重症の場合には、自傷行為や自殺企図につながることも報告されており、注意が必要です。

対応の原則は、原因薬の減量・中止や、アカシジアを起こしにくい薬への切り替えです。そのうえで、状況に応じてベータ遮断薬(プロプラノロール)、一部の抗うつ薬(低用量ミルタザピン)、ベンゾジアゼピン系薬などが検討されます。ただし、どの薬をどの程度使うかはエビデンスや併存疾患を踏まえたうえで決める必要があり、自己判断での服用は避けてください。

3.4. 遅発性ジスキネジア・遅発性ジストニア(長く続く不随意運動)

遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬の長期服用中または中止後しばらくたってから現れることが多い不随意運動で、口・舌・顔のくねるような動き、手足や体幹のねじれた動きなどが特徴です。遅発性ジストニアは、首や体幹など特定の部位が持続的にねじれたり傾いたりするタイプのジストニアを指します。

これらは一度出現すると完全には戻りにくい場合があり、食事や会話、外出など日常生活や対人関係に大きな影響を与えます。そのため、最も重要なのは「予防」であり、必要最小限の用量で治療を行い、定期的に口や舌、手足の動きを観察して早期に変化を捉えることが推奨されています。

すでに遅発性ジスキネジア・ジストニアが出ている場合は、可能な範囲で原因薬を減量・中止し、錐体外路症状の少ない薬(第二世代抗精神病薬の一部など)への切り替えが検討されます。海外ではVMAT2阻害薬など新しい治療薬も使われていますが、日本では保険適用や入手性が異なるため、主治医と相談しながら選択していく必要があります。

3.5. 悪性症候群など、緊急対応が必要な状態

抗精神病薬の稀ではあるものの重篤な副作用として悪性症候群があります。高熱(38℃以上)、全身の強い筋強剛、発汗、意識の変化、自律神経の乱れ(血圧や脈拍の急激な変動)などを特徴とし、放置すると命に関わる状態です。多くは薬の開始後・増量後・中止後1週間以内に発症するとされています。

錐体外路症状としての筋強剛や動きにくさが徐々に強くなり、それに高熱や意識の変化が伴ってきた場合は、すぐに救急車を呼ぶか、最寄りの救急外来を受診してください。自己判断で解熱剤だけを飲んで様子を見るのは危険です。

第4部:今日から始める改善アクションプラン

錐体外路症状への対処は、「薬を続けるか・やめるか」の二択ではありません。ここでは、今日からできるセルフケアと、数日〜数週間かけて主治医と一緒に進めていくステップを、レベル別に整理します。

表2:錐体外路症状への改善アクションプラン(例)
ステップ アクション 具体例
Level 1:今夜からできること 症状を「見える化」し、安全を確保する ・気になる動きや時間帯をノートやスマホにメモする
・家族にも歩き方や表情の変化を観察してもらう
・転倒しやすい場所(段差・滑りやすい床)を片づける
Level 2:数日以内に行いたいこと 主治医・薬剤師に早めに相談する ・次回の診察を待たずに予約を前倒しする
・メモや動画(不随意運動の様子など)を見せて具体的に伝える
・服用中のすべての薬(市販薬・サプリ含む)を書き出して持参する
Level 3:中長期的に続けたいこと 定期的な副作用チェックと生活の整え方 ・主治医と相談し、用量や薬の組み合わせを定期的に見直す
・転倒予防のための運動(ゆっくりしたストレッチやバランス訓練など)を取り入れる
・睡眠や食事、禁煙・節酒など、全身状態を整える習慣を支える

重要なのは、「つらい症状を我慢して薬を続ける」か「症状が怖くて自己中断する」という極端な選択ではなく、副作用と病気のコントロールのバランスを、主治医と一緒に調整していく姿勢です。症状を具体的に伝えるほど、医療者も対応策を考えやすくなります。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

「どの程度の症状なら様子を見てよいのか」「どのタイミングで受診すべきか」は、多くの方が迷うポイントです。ここでは、危険なサイン、受診先の選び方、診察時に役立つ情報のまとめ方について解説します。

5.1. すぐに受診を検討すべき危険なサイン

  • 38℃以上の発熱と、全身の強いこわばり・動かしにくさ、意識のぼんやりが同時に出ている
  • 急に首や舌、喉がねじれる・固くなるなどで呼吸が苦しい、飲み込みにくい
  • 歩行時のふらつき・転倒が急に増えた、階段の昇り降りが極端に怖くなった
  • じっとしていられないほどの落ち着かなさと、強い不安・絶望感、自分を傷つけたい気持ちが強くなっている
  • 口や舌の不随意な動きが急に強くなり、食事や会話が難しくなってきた

これらの症状がみられる場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。夜間や休日であれば救急外来や119番通報も選択肢です。「どの薬をいつからどのくらい飲んでいるか」を伝えられるよう、お薬手帳を手元に用意しておきましょう。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 抗精神病薬の副作用が疑われる場合:処方した精神科・心療内科が基本的な窓口になります。
  • 歩行障害や震えなど、パーキンソン病との区別が難しい場合:神経内科との連携が検討されることがあります。
  • 高齢で複数の病気・薬が関係していそうな場合:総合内科や老年科が全身の状態を含めて評価することもあります。
  • 救急レベルの症状(高熱、意識障害、呼吸苦など)がある場合:迷わず救急外来へ。

どの診療科が適切か分からない場合でも、まずは現在お世話になっている主治医やかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらう流れが安心です。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • お薬手帳・処方箋の控え:どの薬をいつからどの用量で飲んでいるかがひと目で分かります。
  • 症状メモ・動画:症状の出る時間帯、きっかけ、頻度、家族が気づいた変化などを書き留めたり、スマホで動画を撮っておくと診断の助けになります。
  • 既往歴や他院での検査結果:脳の病気や内科的な病気との関連を評価するうえで重要です。

診察や検査の費用は、受診する医療機関や行う検査の種類によって異なりますが、日本では公的医療保険が適用される場合がほとんどです。自己負担割合(3割負担など)や、高額療養費制度などについても、不安があれば医療ソーシャルワーカーや窓口で相談してみてください。

よくある質問

Q1: 抗精神病薬を飲み始めてから手の震えや動作の遅さが出てきました。すぐに薬をやめた方がよいですか?

A1: 手の震えや動作の遅さは、薬剤性パーキンソニズムなどの錐体外路症状のサインである可能性があります。ただし、自己判断で抗精神病薬を急に中止すると、幻覚や妄想、気分の波など元の症状が悪化・再発する危険があります。

まずは「いつ頃から」「どのような動きが」「どのくらいの頻度で出ているか」をメモし、できるだけ早く処方医(精神科・心療内科)に相談してください。多くの場合、用量の調整や薬の切り替え、必要に応じた補助薬の追加などで、症状と治療効果のバランスを取り直すことが検討されます。

Q2: アカシジア(静座不能症)と、単なる「不安・イライラ」との違いは何ですか?

A2: どちらも落ち着かなさや不安感を伴いますが、アカシジアでは「じっとしていられない」という身体的な衝動と、「実際に脚を揺らす・立ったり座ったりを繰り返す・部屋を歩き回る」といった行動が、薬の開始や増量と関連してはっきり現れることが特徴です。

また、本人が「座っていたくても座っていられない」「動かずにはいられない」と表現することが多く、その苦痛から自傷行為や治療中断につながることもあります。単なる不安や落ち着かなさと思い込まず、抗精神病薬などの用量が変わったタイミングと重なっていないかを確認し、気になる場合は主治医に「アカシジアの可能性はありますか?」と具体的に質問してみましょう。

Q3: 錐体外路症状は時間がたてば自然に治りますか?

A3: 急性のパーキンソニズムやジストニア、アカシジアの一部は、原因薬の減量・中止や補助薬の併用によって軽くなったり、治まったりすることがあります。一方で、遅発性ジスキネジア・遅発性ジストニアなどは、長期服用ののちに出現し、完全には戻りにくい場合があることが知られています。

どのタイプであっても、「そのうち治るだろう」と放置するよりも、できるだけ早く医療者に相談し、原因となっている薬や用量を見直すことが重要です。早期に対応することで、症状が重くなる前に抑えられる可能性が高まります。

Q4: 錐体外路症状が出ているときに、運動やリハビリをしても大丈夫でしょうか?

A4: 軽度のパーキンソニズムやふらつきに対しては、バランス訓練や下肢筋力トレーニングなどのリハビリが転倒予防に役立つ場合があります。ただし、症状が強い時期や、急性ジストニア・悪性症候群が疑われる場合には、無理な運動は危険です。

運動を始める前に、主治医やリハビリ専門職(理学療法士など)に現状を評価してもらい、「どの程度の負荷なら安全か」「どの動きは避けるべきか」のアドバイスを受けると安心です。自宅では、転倒しにくい環境づくり(段差の解消、滑り止めマットの使用など)が大切な対策になります。

Q5: 市販の胃薬や吐き気止め、他の薬でも錐体外路症状は起こり得ますか?

A5: はい、起こり得ます。ドパミン受容体をブロックするタイプの制吐薬(吐き気止め)や胃腸薬、一部の抗うつ薬、カルシウム拮抗薬など、抗精神病薬以外の薬でも、パーキンソン症状やアカシジア、ジストニアなどの錐体外路症状が報告されています。

「精神科の薬ではないから安全」とは限らないため、市販薬を含めて服用中の薬をすべてお薬手帳に記録し、気になる症状が出た場合は、処方医やかかりつけ薬剤師に「この薬で錐体外路症状が出る可能性はありますか?」と相談してください。

Q6: 高齢の親が抗精神病薬を飲んでいて、歩き方や表情が変わってきたように感じます。家族としてどう支えればよいですか?

A6: 高齢の方は、もともとドパミン系の機能が低下していることが多く、少量の抗精神病薬でもパーキンソニズムやふらつき、表情の乏しさが出やすいとされています。ご家族が変化に気づいた時点で、早めに主治医に相談することが大切です。

その際、「いつ頃から」「どのような場面で」「具体的にどう変わったか」をメモして持参すると、医師が原因を判断しやすくなります。また、転倒やむせ込みを防ぐために、家の中の危険な段差や滑りやすい床を片づけ、必要に応じて手すりや滑り止めマットを導入するなど、環境面のサポートも重要です。

Q7: 錐体外路症状が疑われるとき、医療機関ではどのような検査や評価が行われますか?

A7: まずは問診と診察で、「症状の種類・程度・時間的経過」「薬の種類・用量・服用期間」「既往歴や他の病気」の情報が詳しく確認されます。そのうえで、歩き方や表情、筋肉のこわばり、不随意運動の有無などを実際に観察します。

錐体外路症状の程度を客観的に評価するために、DIEPSSなどの標準化された評価スケールが用いられることがあります。また、貧血や電解質異常、肝・腎機能、血清鉄などを調べる血液検査、必要に応じて頭部MRIやCTなどを行い、他の神経疾患との区別を進めていきます。

Q8: 妊娠中や授乳中に抗精神病薬を飲んでいます。錐体外路症状との関係で注意することはありますか?

A8: 妊娠・授乳中は、お母さんの精神状態と胎児・乳児への影響をバランスよく考える必要があり、「薬をやめるのが正解」とは限りません。一部の薬では、新生児に筋緊張の異常や呼吸の問題などが報告されているものもあり、個別に検討することが大切です。

妊娠・授乳の予定がある、すでにされている場合は、「錐体外路症状の有無」と合わせて、主治医(必要に応じて産科医・小児科医)に早めに相談し、安全性の高い薬の選択や用量調整、出産前後のフォロー体制について話し合っておきましょう。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

錐体外路症状は、抗精神病薬などによって生じる「動き」に関する副作用の総称であり、パーキンソニズム、ジストニア、アカシジア、遅発性ジスキネジアなど、いくつかのタイプがあります。中には自然に軽くなるものもありますが、放置すると転倒や誤嚥、社会生活への大きな支障、長く残る不随意運動につながることもあります。

一方で、錐体外路症状が怖いからといって、自己判断で薬をやめると、統合失調症や双極性障害などの症状が悪化・再発し、かえって大きなリスクを抱えることになります。大切なのは、「症状を我慢する」か「薬をやめる」かではなく、主治医や薬剤師と連携して、副作用と治療効果のバランスを調整していくことです。

「少しでもおかしい」と感じたときこそ、早めに相談することで選択肢が広がります。今日からできる症状の記録や安全対策を始めつつ、一人で抱え込まず、医療者や周囲の人と一緒に、より安心して続けられる治療の形を探していきましょう。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。

本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(厚生労働省の重篤副作用マニュアル、日本精神神経学会のガイドライン、医療機関や薬剤師会による解説資料、海外の査読付き論文など)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。

免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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