「骨の中の“骨髄”にがんができた」「血液のがんと言われたけれど、自分はあとどのくらい生きられるのか…」――そんな不安を抱えながらも、誰にどう聞けばよいか分からず、一人で悩んでいる方は少なくありません。
医療現場では「骨髄がん」という名前は正式な病名ではなく、多くの場合、骨髄の中で血液の細胞ががん化する病気(多発性骨髄腫、白血病、骨髄異形成症候群など)の総称として使われます。つまり、「骨髄がん」と告げられたとき、その人が実際に抱えている病気は一つではなく、いくつかの疾患のどれかであることがほとんどです。
本記事では、日本の公的ながん情報や専門学会のガイドラインに基づき、骨髄のがんの代表例である多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病など)を中心に、 「どんな病気なのか」「どんな症状が出るのか」「どのように検査・治療するのか」「余命・生存率の目安はどう考えればよいのか」を、できるだけ分かりやすく整理して解説します。
統計や生存率の数字を目にするとショックを受けるかもしれません。しかし、それらはあくまで「多くの患者さんを平均したデータ」です。一人ひとりの経過は年齢や体力、病気のタイプ、治療内容によって大きく変わります。数字だけで「自分の余命」を決めつけないことも、とても大切です。
この記事を読み進めることで、今の不安を少し整理し、「自分や家族はこれから何を確認し、いつ、どこに相談すればよいのか」を具体的にイメージできるようになることを目指しています。
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- 厚生労働省・国立がん研究センターなどの公的機関:国立がん研究センターがん情報サービス(多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、がん統計など)、厚生労働省の資料を中心に、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
- 日本血液学会・日本骨髄腫学会などの学会ガイドライン:造血器腫瘍診療ガイドライン(2024年版)や多発性骨髄腫の診療指針など、血液がん診療の標準的な考え方を示す資料を参考にしています。
- 海外の公的機関・専門団体:米国国立がん研究所(NCI)、Cancer Research UK などの統計・解説ページを、補足的な情報として利用しています。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
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要点まとめ
- 「骨髄がん」という言葉は、多くの場合、骨の中心にある骨髄で血液細胞ががん化する病気(多発性骨髄腫や白血病など)の総称として使われます。1
- 代表的な骨髄のがんである多発性骨髄腫は、抗体をつくる形質細胞ががん化する病気で、日本では全がんの約1%、血液がんの約1割を占める比較的まれながら重要な疾患です。2
- 症状としては、骨の痛みや骨折しやすさ、貧血による息切れ・だるさ、感染症を繰り返す、原因不明の出血やあざ、発熱、体重減少などがみられます。こうした症状が続く場合は、早めに受診することが大切です。2
- 検査では、血液検査・尿検査・骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)・画像検査などを組み合わせて、がん細胞の種類や広がり、危険度(リスク)を評価します。
- 治療には、化学療法(抗がん薬)、分子標的薬や免疫療法、造血幹細胞移植、放射線治療、支持療法(痛み・貧血・感染症への対策)などがあり、近年は新しい薬の登場で生存期間の延長が期待できるようになってきました。3
- 「どのくらい生きられるか」は、病気の種類・進行度・年齢・全身状態・遺伝子異常の有無などによって大きく異なります。統計上の5年生存率(例:多発性骨髄腫ではおおよそ40〜50%台、急性白血病では病型や年齢により10〜70%程度など)はあくまで「目安」であり、自分自身の経過を決めつけるものではありません。4
- 一人で抱え込まず、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターなどと相談しながら、自分のペースで情報を理解し、治療や生活の方針を決めていくことが大切です。
「骨髄がん」と聞くと、多くの方がすぐに「余命」「治るのかどうか」といった言葉を思い浮かべます。しかし、実際には病気の種類や進行度、体力、合併症の有無などによって、必要な情報や対策は一人ひとり大きく異なります。
この記事では、まず骨髄や血液の仕組みを簡単に確認したうえで、「どんな症状がサインになりやすいか」「どのような検査で診断するのか」「主な治療法とメリット・デメリット」「統計上の生存率をどう受け止めればよいか」まで、段階的に理解できるよう構成しています。
必要に応じて、JapaneseHealth.org トップページや、関連する総合ガイドなど、JHO内の他の記事にも自然な文脈で橋渡ししながら、気になるポイントを深掘りできるようにしています。
読み進める中で、「自分の症状は本当に骨髄のがんなのか?」「今の治療でいいのか?」「生活や仕事はどう調整すればいいのか?」といった疑問や不安に対し、次の一歩を考えるヒントを見つけていただければ幸いです。
第1部:骨髄と「骨髄がん」の基本をおさえる
まずは、そもそも骨髄とはどんな場所なのか、そして「骨髄がん」という言葉でどのような病気が指されることが多いのかを整理します。基礎を理解しておくことで、検査結果や主治医の説明も受け止めやすくなります。
1.1. 骨髄と血液の仕組み
骨髄(こつずい)は、腕や脚、背骨などの骨の中心部分にある、やわらかいスポンジ状の組織です。ここでは「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」と呼ばれるもとになる細胞から、次のような血液細胞が日々つくられています。1
- 赤血球:全身に酸素を運ぶ役割。減ると「貧血」で、息切れやだるさ、動悸などが出ます。
- 白血球:細菌やウイルスから体を守る細胞。減ると感染症にかかりやすくなります。
- 血小板:出血を止める働き。減るとあざが増えたり、鼻血や歯ぐきの出血が止まりにくくなります。
これらの細胞は、必要な分だけつくられ、古くなったものは壊される、というサイクルを繰り返しています。骨髄は、まさに「血液の工場」であり、この工場の仕組みがおかしくなると、さまざまな血液の病気が起こります。
1.2. 「骨髄がん」と呼ばれる代表的な病気
「骨髄がん」という名前は正式な病名ではありませんが、一般的には骨髄の中で血液細胞ががん化する病気の総称として使われます。代表的なものには次のような病気があります。1
- 多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ):抗体をつくる「形質細胞」ががん化して骨髄で増える病気。骨の痛み、骨折、貧血、腎臓の障害などを起こしやすくなります。2
- 白血病(はっけつびょう):白血球のもとになる細胞ががん化して、未熟な細胞が骨髄や血液の中で異常に増える病気。急性と慢性、骨髄性とリンパ性などさまざまなタイプがあります。
- 骨髄異形成症候群:骨髄の中で血液細胞をうまくつくれなくなり、貧血や感染症、出血傾向を起こす病気のグループ。一部は急性骨髄性白血病に移行することがあります。3
つまり、「骨髄がん」と言われた場合でも、その中身は多発性骨髄腫なのか、白血病なのか、骨髄異形成症候群なのかなどによって、治療法も予後(今後の見通し)も大きく変わります。主治医に「自分の正式な病名」「どのタイプに当てはまるのか」を確認しておくことが重要です。
1.3. 多発性骨髄腫の基本
多発性骨髄腫は、白血球の一種であるB細胞から分化した形質細胞ががん化して、「骨髄腫細胞」と呼ばれる異常な細胞として骨髄の中で増える病気です。がん化した細胞は、からだを守る抗体ではなく「Mタンパク」と呼ばれる異常なタンパク質を大量につくり続けます。2
日本では、2021年に7,756人が新たに多発性骨髄腫と診断されており、全がんの約1%、すべての血液がんのおよそ1割を占めると報告されています。患者さんの多くは高齢で、診断時の年齢の中央値はおよそ67歳とされています。2
多発性骨髄腫では、骨髄腫細胞が骨髄の中で増えることで正常な血液細胞がつくれなくなり、貧血や感染症、出血などを引き起こします。また、骨の代謝に悪影響を与えて骨がもろくなる・背骨が潰れるなどの骨病変が起こりやすく、強い骨の痛みや骨折が問題となります。2
1.4. 白血病・骨髄異形成症候群の基本
白血病は、骨髄でつくられる血液細胞が未熟なまま増え続ける病気です。がん化した細胞が骨髄や血液の中を占領してしまうため、正常な赤血球・白血球・血小板が減り、貧血・感染症・出血傾向などの症状が現れます。
白血病には大きく分けて、次のようなタイプがあります。
- 急性骨髄性白血病(AML):骨髄系の細胞が急速に増えるタイプ。
- 急性リンパ性白血病(ALL):リンパ球のもとになる細胞が増えるタイプ。小児白血病の多くがこれに当たります。
- 慢性骨髄性白血病(CML)・慢性リンパ性白血病(CLL):進行が比較的ゆっくりで、分子標的薬などが効果を発揮することが多いタイプ。
骨髄異形成症候群は、造血幹細胞に異常が起こり、血液細胞をうまくつくれなくなってしまう病気のグループで、貧血や白血球減少、血小板減少が続きます。一部のタイプでは、時間とともに急性骨髄性白血病へと進行することがあります。3
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる背景・注意すべきポイント |
|---|---|
| 背中や腰、肋骨の痛みが続き、ちょっとした動きやくしゃみでひどくなる | 多発性骨髄腫などによる骨のもろさ・骨折の可能性 |
| 階段を少し上がるだけで強い息切れや動悸が出る、顔色が悪いと言われる | 貧血(赤血球の減少)の可能性 |
| ちょっとぶつけただけで大きなあざができる、鼻血・歯ぐきの出血が止まりにくい | 血小板の減少による出血傾向の可能性 |
| 微熱や発熱が続く、風邪が長引く、肺炎などの感染症を繰り返す | 白血球の減少や免疫力低下の可能性 |
| 原因不明の体重減少や強い倦怠感が数週間以上続いている | がんを含む全身性の病気のサインの一つ |
上記の症状が必ずしも骨髄のがんを意味するわけではありませんが、いくつかが重なっている場合や、生活に支障をきたすほど強い場合には、早めに内科や血液内科を受診することが大切です。
第2部:症状・原因・なりやすい人の特徴
この章では、骨髄のがんで実際にどのような症状が出やすいのか、また原因やリスク要因として分かっていること・分かっていないことについて整理します。
2.1. 骨髄がんで起こりやすい症状
骨髄のがんは、初期には自覚症状がはっきりしないことも多く、健康診断の血液検査や、別の病気のチェックの途中で見つかることもあります。進行すると、次のような症状が現れやすくなります。2
- 骨の痛み・骨折しやすさ(多発性骨髄腫に多い)
- 貧血症状(息切れ、動悸、立ちくらみ、顔色不良、だるさ)
- 感染症の繰り返し(風邪が長引く、肺炎・尿路感染症など)
- 出血傾向(あざが増える、鼻血・歯ぐきの出血、月経量の増加など)
- 腎臓の障害(むくみ、尿量の変化、血液検査でのクレアチニン上昇など)
- 高カルシウム血症(吐き気、便秘、脱水、意識障害など)
- 原因不明の発熱や体重減少、夜間の寝汗
とくに骨の痛みが長引く、強い貧血や出血傾向がある、発熱が続くといった場合は、放置せず医療機関で血液検査などを受けることが重要です。
2.2. 原因は何か?分かっていること・分かっていないこと
多発性骨髄腫や白血病、骨髄異形成症候群などの骨髄のがんについて、「これが原因です」と言い切れるものは、現時点では多くありません。多くの場合、遺伝的な要因と、環境要因(化学物質や放射線への曝露など)が組み合わさって発症すると考えられています。
一部の病型では、次のようなリスク要因が報告されています。
- 高齢(多発性骨髄腫や多くの白血病は高齢者に多い)
- 家族に同じ病気を持つ人がいる(家族歴)
- 長期間のベンゼン暴露や、過去のがん治療における化学療法・放射線治療歴
- 一部の先天性の病気(ダウン症候群など)
ただし、これらのリスク要因があっても必ず病気になるわけではありませんし、逆に、病気になった多くの人にははっきりしたリスク要因が見つからないことも多いのが現実です。「自分の生活が悪かったせいだ」と自分を責める必要はありません。
2.3. 日本での頻度と患者さんの背景
国立がん研究センターがん情報サービスによると、多発性骨髄腫は日本の全がんの約1%、血液がん全体のおよそ1割を占める比較的まれながら重要ながんであり、2021年には7,756人が新たに診断されたと報告されています。2また、多くの患者さんは60〜70代で診断されます。
白血病や骨髄異形成症候群は、全体のがんに比べると数は多くありませんが、子どもから高齢者まで幅広い年齢層で起こりうる病気です。急性リンパ性白血病は小児に多く、急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群は高齢者に多い傾向があります。
第3部:どうやって診断する?検査の流れとポイント
「骨髄のがんかもしれない」と言われたとき、多くの方がまず不安に感じるのは、骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)ではないでしょうか。この章では、診断までの大まかな流れと、主な検査の意味を整理します。
3.1. 最初の受診と血液検査
多くの場合、最初のきっかけはかかりつけ医や内科での血液検査です。貧血や白血球・血小板の異常、血清タンパクの異常などが見つかると、精密検査のために血液内科への紹介状が作成されることがよくあります。
血液検査では主に次のような項目がチェックされます。
- 赤血球数・ヘモグロビン値(貧血の有無)
- 白血球数とその内訳(未熟な細胞が多いかどうかなど)
- 血小板数(出血傾向のリスク)
- 血清総タンパク・アルブミン・Mタンパクの有無(多発性骨髄腫の手がかり)
- 腎機能(クレアチニン)、カルシウム値、乳酸脱水素酵素(LDH)など
3.2. 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
骨髄の病気かどうかを確定するには、骨髄検査が欠かせません。一般的には、腰の骨(腸骨)や胸の骨(胸骨)から細い針を刺して骨髄液や骨の小さな柱状の組織を取り出します。
- 骨髄穿刺(こつずいせんし):骨髄液を少量吸い出し、顕微鏡で細胞の種類や割合を調べます。
- 骨髄生検(こつずいせいけん):骨の一部ごと採取し、骨髄の中で細胞がどのように増えているかを立体的に調べます。
検査の際には、局所麻酔を行ったうえで針を刺すため、「最初の麻酔がチクッとする」「骨の中を吸われるときに一瞬ズーンと響くような痛みがある」と表現されることが多いですが、多くの場合、数分〜十数分程度で終わります。検査の前に、医師や看護師から流れや痛みへの対策について説明があるはずですので、不安な点は遠慮なく質問しておきましょう。
3.3. 画像検査・遺伝子検査など
骨の状態や病気の広がりを調べるために、次のような検査が行われることがあります。
- X線・CT・MRI:骨の破壊や骨折の有無、臓器への浸潤などを確認します。
- PET-CT:がん細胞が活発な場所を調べるために使われることがあります。
- 染色体・遺伝子検査:多発性骨髄腫や白血病では、細胞の染色体や遺伝子に特徴的な変化が見つかることがあり、予後や治療法の選択に関わります。
これらの結果を総合して、病気の種類・病期(ステージ)・リスク(予後の良し悪し)を評価し、治療方針が検討されます。
第4部:主な治療法と今日からできるセルフケア
骨髄のがんに対する治療は、病気の種類や進行度、年齢、体力、合併症の有無などによって大きく異なります。この章では、多発性骨髄腫や白血病で行われる主な治療法の概要と、治療中・治療後の生活で意識したいポイントを紹介します。
4.1. 多発性骨髄腫の治療の基本
日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドラインや日本骨髄腫学会の診療指針では、多発性骨髄腫に対する治療として、次のような選択肢が示されています。3
- 化学療法・分子標的薬:プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、抗体薬などを組み合わせたレジメン(例:ボルテゾミブ+レナリドミド+ステロイドなど)。
- 自家造血幹細胞移植:比較的若く体力のある方では、一度強い化学療法で骨髄腫細胞を減らした後、自分の造血幹細胞を戻す治療が行われることがあります。
- 維持療法:再発をできるだけ遅らせるため、少量の薬を長期間続ける治療。
- 放射線治療:骨の痛みや局所的な病変に対して行うことがあります。
- 支持療法:痛み止め、骨を強くする薬(ビスホスホネート製剤など)、輸血、感染症予防、腎機能の保護など。
近年は CAR-T 細胞療法や二重特異性抗体といった新しい治療も登場し、一部の患者さんでは従来よりも長い生存期間や深い寛解が期待できるようになっています。3
4.2. 白血病・骨髄異形成症候群の治療
白血病や骨髄異形成症候群では、病型やリスクに応じて次のような治療が行われます。
- 急性白血病:強力な化学療法による寛解導入療法と、その後の地固め療法・維持療法が行われます。場合によっては、造血幹細胞移植が検討されます。
- 慢性骨髄性白血病:BCR-ABL という異常な遺伝子を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬(分子標的薬)が治療の中心となり、多くの患者さんで長期生存が期待できるようになっています。
- 骨髄異形成症候群:貧血や感染症、出血のコントロールを目的とした支持療法に加え、造血を促す薬や、リスクに応じて造血幹細胞移植が検討されることがあります。
4.3. 今日からできる生活面の工夫
治療の内容にかかわらず、次のような日常生活の工夫は多くの患者さんに共通して役立つことが多いです。
- 疲れやすさを前提に予定を組む:一日の予定を詰め込みすぎず、休憩時間を多めに取る。
- 感染症対策:手洗い・うがい、マスク着用、人混みを避ける、同居家族のワクチン接種など。
- 転倒や骨折の予防:段差や滑りやすい場所に注意し、必要に応じて杖や手すりを使う。
- 栄養バランス:食欲が落ちやすい時期でも、少量ずつでもタンパク質やエネルギー源を取り入れる工夫をする。
- 仕事や家事の分担:職場の産業医や上司、家族と相談しながら、無理のない働き方・家事の分担を検討する。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今日からできること | 体調の変化を記録し、無理をしない | 毎日の体温・体重・症状のメモをつけ、つらい時は家事や仕事を「休む勇気」を持つ |
| Level 2:今週から意識したいこと | 感染症・骨折予防の環境づくり | 手すりの設置、段差解消、職場と相談して時短勤務や在宅勤務を検討する |
| Level 3:今後数か月〜長期的に考えたいこと | 治療方針と生活設計の見直し | 主治医と相談しながら治療目標を確認し、家族や医療ソーシャルワーカーと将来の仕事・介護・お金のことを話し合う |
第5部:「どのくらい生きられるのか」をどう考えればよい?
骨髄のがんと診断されたとき、多くの方が最初に知りたくなるのが「自分はあとどのくらい生きられるのか」という点です。この章では、生存率や余命の数字をどう受け止めればよいのか、日本や海外の統計を紹介しながら整理します。
5.1. 多発性骨髄腫の生存率の目安
多発性骨髄腫は、治療の進歩により以前に比べて生存期間が延びてきたものの、依然として再発しやすく、長期的な付き合いが必要な病気です。日本のがん統計や解析によると、多発性骨髄腫の5年相対生存率はおおよそ40〜50%前後と報告されており、年齢や病期、治療内容によって差があることが示されています。4
また、国際病期分類(ISS)や改訂ISS(R-ISS)では、血液検査の値や染色体異常の有無などによりステージ1〜3に分け、それぞれで生存期間や5年生存率が異なることが示されています。一般に、ステージが早いほど、生存率は高い傾向にあります。4
5.2. 急性白血病の生存率の目安
急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)は、急速に進行するため早期の治療開始が重要な病気です。英国の大規模統計などによると、AMLの5年生存率は全体でおよそ30〜40%とされ、年齢が高くなるほど低くなる傾向が報告されています。5
一方、ALLでは、小児の治療成績が大きく向上しており、子どものALLでは5年生存率が90%以上とされる報告もあります。成人のALLでも、治療法の進歩により5年生存率が70%前後とされるデータがありますが、年齢やリスク因子により大きく異なります。6
これらの数字はあくまで英国などの統計に基づく「全体の傾向」であり、日本の医療制度や治療環境とは完全に同じではありませんが、「病型や年齢によって生存率が大きく変わる」という全体像をつかむ目安として役立ちます。
5.3. 統計の数字と「あなた自身」の違い
生存率の数字を見たとき、多くの方が「半分しか生きられないなら、自分もそうなのだろう」と感じてしまいがちです。しかし、統計とは何千人・何万人という患者さんを平均した数字であり、一人ひとりの経過を決めつけるものではありません。
実際には、次のような要素によって、予後(今後の見通し)は大きく変わります。
- 診断時の年齢・体力(パフォーマンスステータス)
- 病期(ステージ)・細胞や遺伝子のリスク(高リスク/標準リスクなど)
- 合併症(心臓・腎臓・肝臓の病気など)の有無
- どのような治療が選択できるか(移植の適応があるか、新しい薬が使えるか など)
- サポート体制(家族・友人・職場、相談できる医療機関の有無)
「自分の病気のタイプやステージでは、統計上どのくらいの人がどのくらい生きているのか」「治療によってどれくらい再発を遅らせられそうか」など、知りたいことがあれば、主治医に率直に質問して構いません。日本には「がん相談支援センター」や「血液疾患の相談窓口」など、第三者的な立場で相談に乗ってくれる窓口もあります。
5.4. 受診を急ぐべき危険なサイン
次のような症状がある場合は、骨髄のがんに限らず、何らかの重い病気が隠れている可能性があります。放置せず、早めに医療機関に相談してください。
- 38℃以上の発熱が数日以上続く、あるいは強い寒気・呼吸苦を伴う
- 息切れや胸の痛みで日常生活が送れない
- 突然の激しい背中・胸・腰の痛み(骨折や圧迫骨折の可能性)
- 大量の出血(吐血・下血・止まらない鼻血など)
- ぐったりして意識がもうろうとする、会話がかみ合わない
夜間や休日であれば、救急外来の受診や119番への通報もためらわないでください。日本では健康保険制度が整備されており、緊急時には誰でも必要な医療を受ける権利があります。
よくある質問
Q1: 「骨髄がん」と言われました。多発性骨髄腫と白血病はどう違うのですか?
A1: 「骨髄がん」という言葉は正式な病名ではなく、多くの場合、骨髄の中で血液細胞ががん化する病気の総称として使われます。多発性骨髄腫は、抗体をつくる形質細胞が骨髄で増える病気で、骨の痛みや骨折、Mタンパクと呼ばれる異常タンパクの増加が特徴です。一方、白血病は未熟な白血球のもとになる細胞が増える病気で、貧血・感染症・出血傾向などが前面に出ることが多くなります。正式な病名や病型を主治医に確認することが大切です。
Q2: 多発性骨髄腫や白血病は必ず治らない病気なのでしょうか?
A2: 多発性骨髄腫は現時点では「完治」が難しく、再発しやすい病気とされていますが、薬物療法や移植、維持療法の進歩により、長期間にわたって病気をコントロールしながら生活できる方も増えています。急性白血病では、強力な化学療法や造血幹細胞移植によって長期寛解・治癒が期待できるケースも少なくありません。どの程度「治る可能性」があるかは、病型・年齢・リスクにより大きく異なるため、主治医と自分の病型に即して確認する必要があります。
Q3: 余命や生存率について、医師にどこまで聞いてもよいのでしょうか?
A3: 生存率や余命の話は、患者さんにとっても医師にとってもセンシティブなテーマですが、「知りたい」と思うのであれば遠慮する必要はありません。「私と同じ病型・年齢の人では、統計上どれくらいの方が何年ぐらい生きているのか」「今の治療でどのくらい再発を遅らせられそうか」といった聞き方をすると、より具体的な説明が得られやすくなります。ただし、統計はあくまで目安であり、一人ひとりの経過は違うという点も合わせて説明を受けておきましょう。
Q4: 骨髄検査(骨髄穿刺)はとても痛いと聞いて不安です。
A4: 骨髄穿刺では、局所麻酔をしたうえで、腰や胸の骨から細い針を刺して骨髄液を採取します。最初の麻酔注射でチクッとした痛み、その後針を差し込むときや吸引するときに一瞬ズーンと響くような感覚を覚える方が多いですが、多くの場合は数分〜十数分程度で終わります。痛みが強い場合は、麻酔の追加や体勢の調整などを行ってくれることもあるので、不安な点は事前に医師や看護師に伝えておきましょう。
Q5: 家族に説明するとき、どこまで正直に話すべきか悩みます。
A5: 誰にどこまで話すかは、とても個人的で難しい問題です。パートナーや同居家族には、治療や通院への協力が必要になる場面も多いため、病名や大まかな治療の流れ、仕事や家事への影響などを共有しておくと、後々のサポートが得やすくなります。一方で、高齢の親や小さな子どもなどには、ショックを考えてどこまで伝えるか迷うこともあるでしょう。そのような場合は、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターなどに「家族への伝え方」を相談することも一つの方法です。
Q6: 仕事を続けながら治療することはできますか?
A6: 病型や治療の強さ、通院頻度、あなたの仕事内容によって大きく異なりますが、多発性骨髄腫や一部の慢性白血病では、治療を受けながら仕事を続けている方も少なくありません。急性白血病や移植治療など、入院が長くなる場合は、休職や傷病手当金の利用なども視野に入れながら調整する必要があります。産業医や上司、人事部、ハローワーク・社会保険労務士などと連携しながら、「できる範囲で続ける」「一旦休む」「在宅勤務を検討する」など、複数の選択肢を検討してみてください。
Q7: 食事やサプリメントで病気を改善することはできますか?
A7: 骨髄のがんそのものを「食事やサプリメントだけで治す」ことはできません。多発性骨髄腫や白血病は、基本的には専門的な薬物療法や移植などの医療が必要な病気です。ただし、バランスの良い食事や十分なエネルギー・タンパク質の摂取は、治療に耐える体力を保つうえで非常に重要です。サプリメントを使う場合は、薬との飲み合わせ(相互作用)に注意が必要なものもあるため、自己判断ではなく主治医や薬剤師に相談しましょう。
Q8: 骨髄バンクへのドナー登録を勧められました。どのような仕組みですか?
A8: 造血幹細胞移植が必要な患者さんの中には、兄弟姉妹など家族の中に適合するドナーが見つからない方も多くいます。そのような場合に頼りになるのが、骨髄バンクなどのボランティアドナー制度です。日本では、ドナー候補者が説明や検査、採取のために必要な休暇を取りやすくするため、「ドナー休暇制度」の導入が推奨されています。実際に提供を行う場合は、健康状態の確認や詳細な説明が行われ、本人の同意のもとで実施されます。7
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
骨髄のがんは、「治療が長くつらい病気」というイメージが先行しがちです。しかし実際には、病気の種類や進行度、体力や合併症、利用できる治療の選択肢などによって、経過も生活の形も大きく違います。
統計上の生存率や余命の数字は、あくまで多くの患者さんを平均した目安にすぎません。大切なのは、「自分の病気のタイプとステージでは何が分かっていて、何がまだ分からないのか」「今の自分にとって大切にしたいこと(生活・仕事・家族・趣味など)は何か」を整理し、主治医や医療スタッフと対話しながら、自分なりのペースで治療と生活のバランスを決めていくことです。
一人で抱え込まず、家族や友人、がん相談支援センター、患者会など、さまざまな支えを活用してください。Japanese Health(JHO)編集部も、信頼できる公的情報源に基づく解説を通じて、皆さんが少しでも安心して次の一歩を踏み出せるよう、お手伝いできればと考えています。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
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参考文献
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厚生労働省. 造血幹細胞移植関連情報. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/zouki_ishoku/index_00002.html(最終アクセス日:2025-11-26)

