【食中毒のときの食事】何を食べて何を避ける？早く回復するためのポイントと受診の目安

第1部：食中毒の基本と日常生活の見直し

まずは、食中毒とはどのような状態で、体の中で何が起きているのかを簡単に整理します。 「専門的な病気かもしれない」と不安になる前に、多くの人に共通する基本的な仕組みと、日常生活で悪化させてしまいがちなポイントを確認していきましょう。^1・2

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1.1. 食中毒とは？症状と回復までの流れ

食中毒は、細菌・ウイルス・寄生虫・自然毒などを含んだ食品や飲み物をとることで、急性の吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・発熱などが起こる状態を指します。¹

日本の厚生労働省によると、家庭内の調理や持ち帰り食品など、身近な食事が原因となることも多く、「風邪かな？」と思っているうちに脱水が進んでしまうケースも少なくありません。^1・2

一般的には、原因となるものを体外に出し切り、腸の粘膜が回復してくると、症状は数日〜1週間ほどで落ち着いてきます。 その間に大切なのは、無理に食べすぎないことと、不足しがちな水分・電解質を上手に補うことです。^3・5・7

なお、血便や高熱、ひどい腹痛がある場合は、一般的な「軽い食中毒」ではなく、腸管出血性大腸菌など別の重い感染症が隠れている可能性もあります。その場合は自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。^1・6・8

1.2. 悪化させてしまうNGな食べ方・飲み方

具合が悪いときほど、「スタミナをつけなきゃ」「早く治すために栄養をとらなきゃ」と考えてしまいがちです。 しかし、食中毒の急性期〜回復期に避けたほうがよい食べ方・飲み方もあります。^4・6・8

• 揚げ物・脂っこい料理・こってりした肉料理： 脂肪分は消化に時間がかかり、荒れた胃腸には大きな負担になります。唐揚げ、とんかつ、クリームソースたっぷりの料理などは、症状が完全に落ち着くまで避けましょう。^4・6・8
• 香辛料の強い料理・辛いもの： 唐辛子やこしょうなどの強い刺激は、炎症のある腸をさらに刺激し、腹痛や下痢を悪化させることがあります。^4・6
• アルコール飲料： アルコールは胃腸を刺激し、さらに脱水を進めてしまう可能性があります。症状が完全に落ち着くまでは控えましょう。^4・6・8
• カフェイン飲料・炭酸飲料： コーヒー、濃い緑茶、エナジードリンク、コーラなどは、利尿作用や炭酸による刺激で、気持ち悪さや腹部膨満感を悪化させることがあります。^4・6・11
• 生もの（生肉・生魚・生卵・加熱不十分な食品）： 再び病原体を取り込むリスクがあるだけでなく、体力の落ちた状態では重症化のリスクも高くなります。生ものはしっかり体力が戻るまで控えるのが安全です。^1・2・15
• 砂糖の多いお菓子・ジュースの飲みすぎ： 下痢のときに糖分の多い飲み物やお菓子を大量にとると、浸透圧の関係でさらに水分が腸に引き込まれ、下痢が悪化することがあります。保育所向けの感染症ガイドラインでも、脂っこい料理や糖分の多いお菓子は控えるよう勧められています。⁶

反対に、「食べたい」という気持ちが戻ってきたら、後述するようなあっさりした消化のよい食品から少しずつ量を増やし、様子を見ながら元の食事に戻していくのが基本です。^{3・5・7・8}

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第2部：身体の内部要因 — 脱水・栄養・免疫力

食中毒そのものを起こしている病原体に加えて、脱水や栄養不足、免疫力の低下が重なると、回復までに時間がかかったり、重症化しやすくなります。 とくに日本では、乳幼児や高齢者が住む家庭が多く、家族全体でのケアが重要になることも少なくありません。^5・7

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2.1. 高リスクの人：子ども・高齢者・妊娠中・基礎疾患のある方

子どもや高齢者は、体内の水分量が少なかったり、腎臓や心臓の働きが弱いことが多く、短時間で脱水が進んでしまうことがあります。^5・7

• 乳幼児・小児： 小児科の資料では、子どもは大人よりも脱水になりやすく、嘔吐や下痢のときには糖と塩分を含んだ飲み物（経口補水液など）をこまめに少量ずつ与えることが勧められています。^{5・7・9・10}
• 高齢者： 自分から「喉が渇いた」と言い出さなかったり、もともと腎機能が弱っていることも多く、脱水が進んでも気づきにくいことがあります。尿量や意識状態、口の渇きなどを周囲が観察することが大切です。^6・7
• 妊娠中の方： 母体の脱水は胎児の状態にも影響するため、一般の大人以上に早めの水分補給と受診が重要です。自己判断で市販薬を使うのではなく、産婦人科や内科に相談しましょう。
• 基礎疾患（心臓病・腎臓病・糖尿病など）がある方： 水分や電解質のコントロールが難しい場合が多く、経口補水液の量などについて医師と相談しながら調整する必要があります。

2.2. 脱水と電解質バランス：どんな飲み物がよい？

食中毒で怖いのは、嘔吐や下痢そのものよりも、それに伴う脱水と電解質（ナトリウム・カリウムなど）の不足です。^3・5・7

小児科の指導資料では、下痢・嘔吐のときの水分として、適度な糖分と塩分を含んだ飲み物が推奨されており、具体例として以下のようなものが挙げられています。^{5・7・9・10}

• 市販の経口補水液（OS-1®など）
• 子ども用イオン飲料
• 薄めたスポーツドリンク（必要に応じて）
• 重湯（ごく薄いおかゆの上澄み）や具の少ないスープ
• 薄めたりんご果汁 など

一方、お茶や水だけでは電解質が不十分になりやすく、最初の脱水予防には不向きとされています。症状が落ち着いて食事も安定してきたら、水やお茶に切り替えていくイメージです。^5・7・9

吐き気が強いときには、一度に多く飲むとすぐに吐いてしまうため、「スプーン1杯を5〜10分おきに」など、ごく少量を頻回にとる方法がすすめられています。^5・7・14

2.3. 回復期の栄養バランスと腸内環境

急性期を乗り越え、ある程度食事がとれるようになったら、少しずつたんぱく質やビタミン・ミネラルも取り入れていくことが重要です。 米国NIDDKなどの資料では、食中毒のあとも食欲が戻れば、下痢が続いていても通常の食事に近づけてよいとされていますが、脂肪分が多いものは避けるよう勧めています。^3・8

また、腸内細菌のバランスが崩れていることが多いため、日本人になじみやすい食品として、味噌汁・ヨーグルト・納豆などの発酵食品を少しずつ取り入れていくのも一つの方法です。 ただし、牛乳や生クリームたっぷりのデザートは下痢を悪化させる可能性もあるため、様子を見ながら少量から試しましょう。^3・8・11

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第3部：専門的な診断が必要な疾患と受診の目安

多くの食中毒は、自宅での水分補給と安静で自然に回復しますが、中には医療機関での診断や点滴、場合によっては入院が必要になるものもあります。^1・6・8

このセクションでは、「自宅で様子を見てよい状態」と「早めに受診すべき状態」の違いを整理していきます。

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3.1. 細菌性食中毒（サルモネラ・カンピロバクターなど）

生肉や加熱不十分な肉料理、生卵などを介して起こることが多い細菌性食中毒では、急な発熱・腹痛・水様〜血性の下痢がみられることがあります。^1・11・15

多くは数日で改善しますが、血便が出る・高熱が続く・強い腹痛が治まらない場合には、腸の炎症が強かったり、溶血性尿毒症症候群など重い合併症のリスクもあるため、速やかに医療機関を受診してください。^1・6・8

3.2. ウイルス性胃腸炎（ノロウイルス・ロタウイルスなど）

冬場に流行しやすいノロウイルスなどのウイルス性胃腸炎では、突然の激しい嘔吐と水様性の下痢、腹痛、発熱が特徴です。^4・14

ノロウイルスでは、症状が治まったあともしばらく便中にウイルスが排泄されることが知られており、トイレ後の手洗いや嘔吐物の処理など、家庭内での感染対策が非常に重要です。^4・7・14

治療は基本的に対症療法（脱水予防・解熱など）であり、決定的な特効薬はありません。 特に小さな子どもでは、尿が極端に少ない・口がカラカラ・ぐったりしている・泣いても涙が出ないなどの脱水サインがみられたら、早めに小児科を受診しましょう。^{5・7・13・14}

3.3. その他：寄生虫・自然毒・アレルギーなど

サバやイカなどに寄生するアニサキス、二枚貝に含まれる自然毒、食物アレルギーによる嘔吐や下痢など、食中毒に似た症状を起こす原因は多岐にわたります。^1・11・15

特に以下のような場合は、自己判断で様子を見るのではなく、救急相談窓口や医療機関に早めに連絡しましょう。

• 口や喉が腫れて息苦しい、ぜーぜーする、意識がぼんやりする（アナフィラキシーの疑い）
• 毒キノコ、フグ、正体不明の魚介類などを食べた可能性がある
• 山菜や自家採取の食品を食べてから症状が出た

日本では、#7119（救急安心センター・対応地域のみ）や各都道府県の救急相談窓口で、救急受診の要否を電話で相談することもできます。 迷ったときは一人で抱え込まず、こうした公的窓口も活用してください。

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第4部：今日から始める改善アクションプラン（食事・飲み物・自然療法）

ここからは、実際に「今日から何をどうすればいいか」という視点で、症状のステージごとに具体的なアクションプランをまとめます。^{3・4・5・7・8}

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4.1. 食中毒のときに「食べてもよい」具体的な食品

NIDDKや各種ガイドでは、食中毒のときに食べやすい食品として、脂肪分が少なく、味付けが濃すぎず、食物繊維が控えめなものを挙げています。^3・8

• 主食系：おかゆ・重湯、柔らかく煮たうどん、そうめん、白いパン、クラッカー、塩むすび など
• 果物：バナナ、すりおろしリンゴ、果汁100％ジュースを薄めたもの（飲みすぎに注意）
• 野菜：よく煮たにんじん・じゃがいも・大根など（生野菜サラダは後半まで控える）
• たんぱく質：豆腐、白身魚の煮物、脂身の少ない鶏ささみなど、油をあまり使わない調理法
• スープ類：具少なめの味噌汁、コンソメスープ、野菜スープなど（塩分が強すぎない程度に）
• 発酵食品：少量のヨーグルト、味噌、納豆など（牛乳をそのまま飲むのは様子を見ながら）

量の目安としては、「最初はいつもの半分以下」「少しずつ回数を増やす」イメージで、体調に合わせて調整してください。^5・9

4.2. 食中毒のときに控えたい食品・飲み物

すでに触れた内容と重なりますが、改めて「避けたいもの」を一覧にしておきます。^4・6・8

• アルコール飲料全般（ビール、日本酒、ワイン、チューハイ、焼酎など）
• カフェインを多く含む飲み物（コーヒー、濃い緑茶、エナジードリンクなど）
• 炭酸飲料（コーラ、炭酸ジュースなど）
• 揚げ物・脂っこい料理（唐揚げ、とんかつ、ポテトフライなど）
• 辛い料理・香辛料の多い料理（激辛カレー、キムチ鍋など）
• 生もの（刺身・生肉・生卵・ナチュラルチーズなどの非加熱食品）
• 砂糖の多いお菓子・スイーツ・ジュースの飲みすぎ
• 牛乳・生クリームたっぷりのデザート（下痢を悪化させることがある）

保育所向けガイドラインでも、下痢の際には脂っこい料理や糖分の多い料理・お菓子を控え、消化のよい食事と十分な水分補給を行うことが勧められています。⁶

4.3. 自然療法・民間療法との付き合い方（ショウガ・お酢・活性炭など）

インターネットやSNSでは、「ショウガ茶が効く」「リンゴ酢やアップルサイダービネガーがよい」「活性炭サプリで毒を吸着する」など、さまざまな民間療法が紹介されています。 これらは完全に否定されるわけではないものの、「万能薬」ではないことを理解しておきましょう。

• ショウガ（生姜）： 吐き気を和らげる効果が期待され、妊娠悪阻などでも利用されることがあります。薄いショウガ湯やショウガ入りのハーブティーを少量飲む程度であれば、多くの場合安全と考えられますが、「熱い飲み物を一気に飲む」とむしろ吐き気が増すこともあるので注意が必要です。
• リンゴ酢・アップルサイダービネガー： 抗菌作用があると紹介されることもありますが、食中毒治療としての明確なエビデンスは乏しく、原液や濃いお酢を大量に飲むと胃を刺激して症状を悪化させる恐れがあります。取り入れる場合は、あくまで少量を十分に薄めて、体調と相談しながらにしましょう。
• 活性炭サプリメント： 病院で行う中毒治療の一部として活性炭が使われることはありますが、これは医師が中毒の種類や時間経過を確認した上で行う医療行為です。自己判断で大量に飲むと、便秘や腸閉塞のリスクがあり、必要な薬まで吸着してしまう可能性もあります。自己判断での使用は避け、必ず医師に相談してください。

自然療法を試す際は、「これだけで治る」と考えるのではなく、基本は水分補給と安静、必要なときには医療機関を受診するという軸を忘れないことが大切です。

4.4. 口腔ケアと手洗い・トイレ周りの衛生

食中毒のときは、嘔吐を繰り返したり、胃酸を含んだ内容物が口腔内に残ることで、歯のエナメル質が傷んだり、口臭が強くなったりすることがあります。

• 吐いたあとすぐは強く歯を磨かず、まずは水やうがい薬でやさしく口をすすぐ
• 30分ほど経ってから、柔らかめの歯ブラシで軽くブラッシングする
• 入れ歯は外して洗浄し、清潔に保つ

また、ノロウイルスなどのウイルス性胃腸炎では、便や嘔吐物に大量のウイルスが含まれます。 トイレ後の手洗い、便や嘔吐物の処理時の手袋・マスク・エプロンの使用、ドアノブやトイレ周りの消毒など、家庭内での感染拡大を防ぐ対策も重要です。^{4・7・13・14}

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第5部：専門家への相談 — いつ・どこで・どのように？

「どこまで自宅で様子を見てよいのか」「どのタイミングで病院に行くべきか」は、多くの方が悩むポイントです。 このセクションでは、危険なサイン（レッドフラッグ）や診療科の選び方、受診時に準備しておきたい情報を整理します。^{1・6・7・8・13・14}

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5.1. すぐに受診・救急相談を検討すべき警告サイン

• 半日以上尿が出ていない、または尿の量が極端に少なく色が濃い（脱水のサイン）^6・7・13
• ぐったりしていて呼びかけに反応が鈍い、意識がぼんやりしている
• 血便や黒っぽい便が出る、便に粘液やゼリー状のものが混じる^6・13・14
• 39℃以上の高熱が続く、または強い頭痛やけいれんを伴う
• 我慢できないほど強い腹痛が続く（波打つ痛みが続く、押さえると激痛など）
• 乳幼児で「泣いても涙が出ない」「口の中や唇が乾いている」「顔色が悪くぐったりしている」^{5・7・13・14}
• 妊娠中・高齢者・基礎疾患持ちで嘔吐や下痢が止まらない

これらのサインが一つでも当てはまる場合は、自己判断せず医療機関を受診する、または地域の救急相談窓口（#7119など）に相談して指示を仰ぎましょう。 生命に危険を感じる場合は、ためらわずに119番通報を検討してください。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

• 大人で、主に腹痛・下痢・嘔吐： 一般内科または消化器内科が基本です。かかりつけ医がいる場合は、まずそこに相談するとスムーズです。
• 乳幼児・小児： 小児科を受診します。夜間・休日であれば、小児救急対応のある病院や小児救急電話相談（#8000など）を利用することもできます。^{5・7・12・13}
• 妊娠中の方： 産婦人科と内科の両方の視点が必要になることがあるため、まずはのかかりつけの産婦人科に電話で相談し、指示に従いましょう。
• アレルギー症状（発疹・呼吸困難など）を伴う場合： 救急外来や耳鼻咽喉科・アレルギー科を含む総合的な診療ができる医療機関が望ましいです。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

• お薬手帳・現在服用中の薬のリスト： 持病の薬と食中毒治療の薬の相互作用を確認するために役立ちます。
• 症状のメモ： 「いつから」「どのくらいの頻度で」「どのような便・嘔吐物か（色・量）」などを書き留めておくと、診察がスムーズになります。場合によっては写真を見せることが勧められることもあります。
• 食事内容のメモ： 発症前24〜48時間に何を食べたか、同じものを食べた人がいるかなどを整理しておくと、原因の推定に役立ちます。
• 健康保険証・子ども医療証など： 日本では公的医療保険により診療費の自己負担は原則3割（子どもや高齢者はさらに少ないことも）ですが、時間外加算などがつく場合もあります。事前に自治体の制度も確認しておくと安心です。

点滴や検査の有無によって費用は変わりますが、保険3割負担の場合、軽症の外来診療であれば数千円程度〜、採血・点滴・検便などを行うと1万円前後になることもあります。 心配な場合は、受診前に医療機関に問い合わせてみましょう。

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