「机に向かっているのに、なかなか集中できない」「スマホや雑音が気になって、作業に没頭できない」――そんなとき、何気なく音楽を流している方も多いのではないでしょうか。
実は、音楽は気分を整えたりストレスを和らげたりするだけでなく、選び方や聴き方によっては、集中力や作業効率をサポートしてくれることが、国内外の研究から少しずつ分かってきています。厚生労働省の情報サイトでも、音楽がストレス軽減や心身のリラックスに役立つ可能性があると紹介されています。12
一方で、どんな音楽でも「聞けば賢くなる」「集中力が何倍にもなる」というわけではありません。課題の種類や個人の性格によっては、音楽がかえって気を散らしてしまうこともあります。34
この記事では、日本の公的情報や最新の研究をもとに、脳を刺激し、集中力アップに役立つと考えられている5つの音楽の種類と、その上手な取り入れ方を詳しく解説します。自分に合う音楽の選び方、勉強や仕事のシーン別の使い分け、注意したいポイントまで、日常生活で実践しやすい形でまとめました。
なお、長期間にわたって集中できない状態が続いている場合や、落ち込み・不眠など他のつらい症状を伴う場合は、うつ病や不安障害、発達特性(ADHDなど)など、医療的な対応が必要な状態が隠れていることもあります。その場合、音楽だけで解決しようとせず、早めに医療機関や専門の相談窓口に相談することが大切です。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、厚生労働省e-ヘルスネットやeJIM(イージム)など日本の公的情報源、国内外の医学会ガイドラインや査読付き論文、音楽と健康・集中力に関するシステマティックレビュー(系統的レビュー)などの一次情報に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。34
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:音楽療法とストレス、心の健康に関する解説や統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。12
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:背景音楽(BGM)が認知課題や注意力に与える影響を調べた無作為化比較試験やシステマティックレビュー、音楽療法がストレス指標に与える効果を検証したメタアナリシスなどをもとに、要点を整理しています。3456
- 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:日本人を対象とした研究や、音楽が注意力・記憶力に及ぼす影響を検証した研究発表なども参考にしています。7
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。
要点まとめ
- 音楽は、ストレス軽減や気分の改善を通じて集中しやすい状態をつくることがあり、特に「自分が心地よいと感じる音楽」や穏やかな自然音などが役立つ可能性があります。125
- 一方で、歌詞のある音楽は注意力テストの成績を下げることが無作為化比較試験で示されており、読書や文章作成など「言葉」を使う作業のときは歌詞なしの音楽を選ぶのが無難です。6
- 自然音、クラシック音楽、歌詞のないピアノや環境音楽、自分の好きな音楽、神経科学を応用したBGMサービスなど、5つのタイプの音楽にはそれぞれ特徴があり、作業の種類やその日の状態に合わせて使い分けることが大切です。347
- 音楽の効果には個人差が大きく、「無音のほうが集中できる」人もいます。試しながら、自分にとっての「ちょうどよい音量・テンポ・ジャンル」を見つけていきましょう。34
- 長期間にわたって集中できない状態が続いたり、仕事や学業・日常生活に支障が出ている場合は、心の病気や発達特性が隠れていることもあります。音楽によるセルフケアは役立つ一方で、必要に応じて医療機関へ相談することも重要です。8
「BGMを流しているのに、逆に気が散ってしまう」「勉強のときに何を流せばいいのか分からない」と感じている方も少なくありません。
この記事ではまず、集中力が落ちてしまう一般的な背景(睡眠不足、ストレス、騒音、スマホなど)を整理したうえで、音楽を「気分を整え、集中しやすい状態に近づけるツール」としてどう活用できるかを、段階的に解説します。
そのうえで、1)自然音、2)クラシック、3)自分の好きな音楽、4)歌詞のない音楽、5)神経科学ベースのBGMという5つのタイプに分けて、それぞれの特徴・向いている作業・注意点を詳しく紹介します。
読み進めることで、「自分はどのタイプの音楽が合いそうか」「どのシーンでは音楽を消したほうがよいのか」「集中できないときに、明日から何を試してみればよいのか」が具体的にイメージできるようになることを目指しています。
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第1部:音楽と集中力の基本 — 日常生活の見直しから始めよう
集中力の土台になっているのは、睡眠・食事・運動・ストレス・作業環境などの基本的な生活要因です。その土台が大きく崩れている場合、どんなに良い音楽を選んでも、集中力の問題が劇的に改善するとは限りません。
まずは、音楽の選び方に入る前に、「そもそも集中しにくくなっている背景」と「音楽が手助けできるポイント」を整理しておきましょう。
1.1. 音楽が脳と集中力に働きかける基本メカニズム
音楽が集中力に影響するメカニズムは、大きく分けて3つあります。
- 気分(感情)への影響:好きな音楽や心地よい音は、ポジティブな感情を高めたり、不安や緊張を和らげたりします。ストレスが和らぐと、自分のやるべき作業に意識を向けやすくなります。125
- 覚醒度(目の冴え具合)への影響:テンポや音量によって、脳の「目覚め度」が変化します。ほどよく刺激のある音楽は眠気を抑え、単調な作業を続けやすくすることがありますが、刺激が強すぎると逆に落ち着かなくなることもあります。34
- 注意の向け方への影響:音楽が「ちょうどよい背景ノイズ」として働くと、周囲の雑音をマスクし、注意を作業に向けやすくすることがあります。一方で、歌詞や激しい変化のある音楽は、注意を音楽側に奪ってしまう場合があります。67
背景音楽と認知課題の成績についてのシステマティックレビューでは、音楽が成績を改善する研究もあれば、悪化させる研究もあり、全体として結果は一貫していないとされています。ただし、タスクの難易度(単純作業か、複雑な推論か)、音楽の種類(歌詞の有無、テンポなど)、本人の性格や好みによって影響が大きく変わることが分かっています。34
1.2. 集中力を下げてしまうNG習慣と、音楽との付き合い方
集中できないと感じるとき、つい「BGMを大きめに流す」「テンションの上がる曲をガンガンかける」といった対処をしてしまうことがあります。しかし、以下のような習慣は、かえって集中力を下げてしまう可能性があります。
- 歌詞のある音楽を大きな音量で流し続ける: 無作為化比較試験では、歌詞のある音楽は、歌詞なしの音楽や無音に比べて注意テストの成績を有意に悪化させたと報告されています。6特に読書・文章作成・プログラミングなど、言語や論理を扱う作業中は要注意です。
- 就寝直前まで刺激の強い音楽を聴き続ける: 寝る前にアップテンポの音楽や大音量の音楽を聴き続けると、交感神経が高ぶり、入眠しにくくなることがあります。結果として睡眠不足につながり、翌日の集中力低下を招きます。
- 「ながら聴き」の時間が極端に長い: 一日中何かしらの音を流しっぱなしにしていると、「静かな環境だと逆に落ち着かない」という状態になり、無音で集中する力が弱くなる場合もあります。
音楽は「集中力のスイッチ」を入れるサポートツールですが、土台となる睡眠・休憩・姿勢・画面との距離などの基本を整えることも同じくらい重要です。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 平日と休日で睡眠時間や起床時間が大きく違う | 体内時計の乱れ、睡眠の質の低下 |
| 勉強・仕事中に常にスマホ通知やSNSが気になってしまう | デジタルデバイスによる注意の分散、習慣的なマルチタスク |
| 歌詞のある音楽を大音量で流さないと作業を始められない | 過剰な刺激への依存、静かな環境での集中力の低下 |
| 一日の終わりにどっと疲れが出て、頭がぼんやりする | 慢性的な睡眠不足、ストレス、眼精疲労 |
第2部:脳を刺激する5つの音楽の種類 — 特徴と向いているシーン
ここからは、集中力や認知機能のサポートに役立つ可能性があるとされる5つの音楽タイプを、一つずつ詳しく見ていきます。いずれも「これを聴けば必ず成績が上がる」という魔法のBGMではありませんが、うまく取り入れることで、作業に向き合いやすい環境づくりに役立つことが期待できます。
2.1. 自然音(雨音・川のせせらぎ・森の環境音など)
風が木々を揺らす音、静かな雨音、川や滝の水の流れる音、鳥のさえずりなどの自然音は、オフィスや自宅の環境に比べて刺激が少なく、一定のパターンで続くため、「心地よい背景」として働きやすいと考えられています。
注意機能と自然音の関係を調べた実験では、自然音を聴いているときのほうが、都市の騒音に比べて注意課題の成績や主観的な集中度が高かったという報告があります。59
特におすすめのシーンは次のような場面です。
- オープンオフィスやカフェなど、周囲の人の会話が気になるとき
- 単純作業やルーティンワークを黙々と進めたいとき
- 寝る前の読書や、就寝前のリラックスタイム
ただし、雷鳴や激しい波音など、急激な音の変化を含む自然音は、かえって驚きや不安を引き起こす場合もあります。自分が「心地よい」と感じる音を選び、音量は会話の邪魔にならない程度の小さめを目安にしましょう。
2.2. クラシック音楽(特にモーツァルトなどの器楽曲)
クラシック音楽、とくにモーツァルトのピアノソナタなどが「知能を高める」「成績が良くなる」と話題になった現象は、「モーツァルト効果」と呼ばれています。初期の研究では、モーツァルトの一部の曲を聴いたあとに、空間認知課題の成績が一時的に向上したという報告がありました。10
しかし、その後の研究やレビューでは、モーツァルトの音楽そのものが特別というより、「気分や覚醒度がちょうどよく高まった結果、一時的に課題成績が良くなった」という解釈が有力です。クラシック音楽全般や、他の心地よい音楽でも同様の効果が得られる場合があります。1112
クラシック音楽が向いているのは、次のような場面です。
- 落ち着いて本を読み込みたいとき(歌詞がない器楽曲が無難)
- 在宅ワークで「仕事モード」に切り替えたいとき
- 試験勉強の前に、気分を整えたいとき
反対に、クラシック音楽にあまり馴染みがなく、逆に「落ち着かない」「退屈でイライラする」と感じる場合は、無理にクラシックを選ぶ必要はありません。モーツァルトにこだわるよりも、「自分が心地よく聴ける歌詞なしの音楽」を選ぶ方が現実的です。
2.3. 自分の好きな音楽(ただし使い方に工夫が必要)
「好きな音楽を聴くと作業がはかどる」「テンションの上がる曲でやる気が出る」という経験は、多くの方にあると思います。実際、好みの音楽を背景に流しているときのほうが、低負荷の注意課題でタスクに集中しやすくなったという研究報告もあります。7
一方で、「好きすぎる曲」は、つい歌詞を口ずさんでしまったり、メロディに意識が向いてしまったりと、作業から注意を奪いやすい側面もあります。特に歌詞のある曲や、感情を大きく揺さぶる曲は、文章を書く・読解する・難しい計算をするような作業にはあまり向きません。6
好きな音楽を集中の味方にするためのコツとして、次のような工夫がおすすめです。
- 「やる気を出すための5分間」だけ好きな曲を聴き、その後は歌詞なしBGMに切り替える
- 繰り返し聴き慣れた曲を選び、新しい曲は「休憩時間の楽しみ」に回す
- 歌詞付きの曲は「単純作業」や「家事」のときに限定する
「好きな曲を全く禁止する」のではなく、作業の種類やタイミングごとに「聴き方を分ける」イメージを持つと、生活に取り入れやすくなります。
2.4. 歌詞のない音楽(ピアノ・ローファイ・アンビエントなど)
読書やレポート作成、プログラミングなど、言語や論理を扱う作業をするときは、歌詞のない音楽がもっとも無難です。前述の無作為化比較試験では、歌詞つきの音楽が注意テストの成績を悪化させた一方、歌詞なしの音楽ではそのような悪影響は見られませんでした。6
また、高校生を対象にした研究では、ソフトな歌詞なしBGMが、注意力テストのパフォーマンスに良い影響を与えた可能性が示されています。13
歌詞なしBGMとしてよく選ばれているジャンルの一例は以下の通りです。
- ピアノソロ(クラシック・ジャズ・ポップスのインストゥルメンタル版など)
- ローファイヒップホップ(穏やかなビートとシンプルなメロディ)
- アンビエント・環境音楽(ゆっくりとした展開で音の変化が少ないもの)
- ゲーム音楽・映画音楽(場面に合わせて作業をサポートするよう設計されたもの)
どのジャンルが一番良いというより、「自分が聞き流せる程度に心地よく、作業の邪魔にならないかどうか」がポイントです。試験勉強など集中度が特に重要な場面では、音量を小さめにし、「途中で曲調が大きく変わらないプレイリスト」を選ぶとよいでしょう。
2.5. 神経科学を応用した「集中用BGMサービス」
近年、Brain.fm や Focus@Will のように、「脳科学にもとづいて集中力や生産性を高める」とうたう音楽配信サービスが登場しています。これらのサービスは、音楽の周波数・テンポ・音の配置などを工夫し、脳波のパターンや注意の状態に影響を与えることを目指しています。1415
一部のサービスでは、国の研究助成を受け、集中状態に関わる脳波の変化を報告しているものもありますが、日常生活レベルでの成績向上や仕事の成果にどの程度つながるかについては、まだ研究の蓄積が十分とはいえません。14
また、あるサービスでは「集中力が400%アップする」といった大きな主張をしていたものの、紹介されている文献と主張との対応関係が不明瞭であると指摘された報告もあります。15
こうしたサービスは、「自分に合っていれば便利なツールの一つ」として試してみる価値はありますが、効果を過大に期待しすぎず、通常の音楽や自然音と同じく「集中するためのきっかけ」程度に考えるのが現実的です。料金や利用条件を確認したうえで、ご自身の生活スタイルに合うかどうかを見極めることが大切です。
第3部:音楽だけでは解決できない集中力低下 ― 隠れているかもしれない不調
音楽は、気分を整えたりストレスを和らげたりするうえで心強い味方ですが、「集中できない状態」のすべてが音楽で解決できるわけではありません。背景に、心身の病気や発達特性など、医学的なサポートが必要な状態が隠れていることもあります。
3.1. ストレス・不安・うつ状態と集中力の関係
厚生労働省の資料では、強いストレスや不安障害・うつ病などのこころの病気では、「集中できない」「頭がぼんやりする」「些細なことでびくっとする」といった症状が出ることがあると説明されています。8
このような状態で、つらさを紛らわすために大音量で音楽を聴き続けてしまうと、睡眠の質が下がったり、現実感が薄れるような感覚が強くなったりする場合もあります。ストレス状態のときは、音楽を「無理に気分を変えるため」ではなく、「気持ちを落ち着けるための小さな支え」として使うイメージを持つとよいでしょう。
次のような状態が続く場合には、音楽だけに頼らず、心療内科・精神科などへの相談を検討してください。
- 楽しかったことがほとんど楽しめなくなった状態が2週間以上続いている
- 仕事や学業に大きく支障が出ている(ミスが急に増えた、欠勤・遅刻が続くなど)
- 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまう
- 「いなくなりたい」「消えてしまいたい」といった考えが頭から離れない
3.2. 発達特性(ADHDなど)と音楽の付き合い方
注意欠如・多動症(ADHD)などの発達特性がある場合、「静かすぎる環境では逆にそわそわしてしまい、適度な刺激があったほうが集中しやすい」ということがあります。最近の研究では、刺激的なBGMが、特定の条件下で注意の維持を助ける可能性が示唆されているものもあります。37
ただし、ADHDの有無や日常生活への影響は、自己判断だけでは分かりにくいものです。子どもの場合も大人の場合も、「集中が続かない」「忘れ物やミスが極端に多い」といったことで困っている場合には、発達外来や精神科など専門の医療機関で相談することが大切です。音楽はあくまでサポートの一つであり、診断や治療に代わるものではありません。
第4部:今日からできる「音楽×集中力」アクションプラン
ここまで解説してきた内容をふまえ、「今日から」「今週から」「長期的に」という3つのレベルに分けて、音楽を活かした集中力アップの実践アイデアをまとめます。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 歌詞なしBGMと自然音を試しながら、最適な音量を探す | 仕事・勉強の前に5分だけ好きな曲を聴き、その後は小さめのピアノBGMや雨音のプレイリストに切り替える |
| Level 2:今週から試せること | タスクごとに音楽のルールを決める | 「文章を書くときは歌詞なし」「メール整理は好きな曲OK」「寝る前1時間は自然音だけ」など自分なりのルールを紙に書いておく |
| Level 3:長期的に続けたいこと | 生活リズムと休憩習慣を整え、音楽を「スイッチ」にする | ポモドーロ・テクニック(25分集中+5分休憩)のタイマーとセットで、集中用BGMを1セッションごとに流す/就寝前は毎日同じ穏やかなプレイリストで体に「寝る合図」を送る |
音楽の効果は、年齢・性格・これまでの音楽経験などによっても変わります。高校生を対象とした研究では、普段から音楽をよく聴く人ほど、BPM(テンポ)の違いによって記憶課題への影響が変わる可能性が示されています。16大切なのは、研究結果を「絶対的な正解」として受け取るのではなく、「自分の体感と照らし合わせながら、少しずつ調整していくこと」です。
第5部:音楽だけに頼りすぎないために ― 受診の目安と相談の仕方
最後に、「どこまでが音楽によるセルフケアの範囲で、どこから医療機関に相談したほうがよいのか」の目安を整理しておきます。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 集中できない状態が1か月以上続き、仕事・学業・家事に大きな支障が出ている
- 気分の落ち込み、強い不安、イライラ、涙もろさなどが続き、音楽を聴いてもほとんど楽にならない
- 夜眠れない・朝起きられない・食欲が極端に落ちる、または過食する
- 「消えてしまいたい」「自分には価値がない」という考えが繰り返し浮かぶ
こうしたサインがある場合は、音楽で気を紛らわせることも一時的には助けになりますが、根本的な解決にはつながりません。早めにかかりつけ医や心療内科・精神科、自治体の相談窓口などに相談することをおすすめします。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 主に「眠れない」「食欲がない」「頭痛・動悸など身体症状が強い」場合:まずは内科やかかりつけ医に相談し、必要に応じて心療内科・精神科の紹介を受ける
- 仕事や学業でのミス・忘れ物・遅刻が極端に多く、小さいころから似たような傾向があった場合:発達外来や精神科(成人のADHD外来など)を検討する
- 学校や職場に行けず、家族以外とのコミュニケーションが極端に減っている場合:スクールカウンセラー、産業医、地域の相談窓口などにも相談する
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 集中できないと感じる場面や時間帯、困りごとをメモしたノート(例:「朝9〜11時は集中しやすいが、午後はぼんやりする」など)
- いつから・どのくらいの頻度で症状が続いているかを記録した簡単な日記
- 服用中の薬があればお薬手帳
- 健康保険証(日本では多くの診察や検査に公的医療保険が使えます)
費用は診療科や検査内容によって異なりますが、公的医療保険が適用される場合、自己負担は通常3割です。初診料や血液検査のみであれば数千円程度から、心理検査や精密検査が追加される場合は数万円になることもあります。事前に医療機関のウェブサイトや電話で目安を確認しておくと安心です。
よくある質問
Q1: 勉強や仕事中は、絶対に歌詞なしの音楽にしたほうがよいですか?
Q2: 自然音と普通のBGM、どちらのほうが集中に良いのでしょうか?
Q3: 子どもに「モーツァルトを聴かせると頭が良くなる」というのは本当ですか?
Q4: 「脳波に効く」とうたう集中用BGMは、安全に使っても大丈夫でしょうか?
Q5: 無音だと落ち着かないのですが、それでも「音楽は消したほうがよい」のでしょうか?
Q6: 勉強中にイヤホンで音楽を聴いても、耳への影響は大丈夫ですか?
A6: 一般的に、長時間・大音量でイヤホンやヘッドホンを使用すると、難聴や耳鳴りのリスクが高まるとされています。特に通勤電車など周囲がうるさい環境で音量を上げがちな場合は注意が必要です。
目安として、「隣の人に漏れ聞こえない程度の音量」「1日トータルで1〜2時間程度に留める」など、自分なりのルールを決めておくと安心です。耳が詰まった感じがする、キーンとした音が続くなどの症状がある場合は、早めに耳鼻科を受診してください。
Q7: 高齢の家族が物忘れや集中力低下を気にしています。音楽は役に立ちますか?
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
音楽は、私たちの感情や覚醒度、注意の向き方に影響を与える力を持っています。自然音、クラシック、自分の好きな曲、歌詞のないBGM、神経科学を応用した集中用BGMなど、さまざまなタイプの音楽には、それぞれ違った良さがあります。
一方で、「これさえ聴けばすべて解決する」という万能のBGMは存在しません。研究でも、音楽が集中力や課題成績を改善する場合もあれば、悪化させる場合もあり、その差はタスクの種類や音楽の特徴、そして何よりも「その人自身」によって大きく変わることが示されています。
だからこそ、音楽を「自分の心と集中を整えるためのツールの一つ」として、上手に付き合っていくことが大切です。この記事で紹介した5つの音楽タイプや実践アイデアを参考に、少しずつ試しながら、「自分にとってちょうどいい音と静けさのバランス」を見つけてみてください。
そして、集中できない状態が長く続く、気分の落ち込みや不安が強い、といった場合には、音楽だけで抱え込まず、医療機関や相談窓口に頼ることも決して悪いことではありません。一人で悩まず、必要なサポートを受けながら、自分のペースで心とからだを整えていきましょう。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。
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参考文献
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