「がん」と聞くと、「自分や家族もいつかなるかもしれない」「もし見つかったら人生が終わってしまうのでは」と強い不安を感じる方が多いのではないでしょうか。インターネットやテレビでは毎日のようにがんの情報が流れますが、「何が本当なのか」「自分は何から始めればいいのか」が分かりにくく、かえって不安が増してしまうこともあります。
世界保健機関(WHO)は、世界全体でがんは主要な死因の一つであり、2020年には約1,000万人ががんで亡くなったと報告しています1。一方で、既に分かっている危険因子を避けることで、がんの30〜50%は予防できるとされています2。つまり、「正しい知識」と「日々の小さな習慣の積み重ね」で、がんのリスクは大きく下げることができます。
本記事では、日本の公的機関や国際機関のデータをもとに、「がんに関する16の事実」を整理しながら、 ① がんとは何か(病気の正体)、 ② どこまで予防できるのか、 ③ どんな人が要注意なのか、 ④ どのタイミングで受診・検診を考えるべきか を、日常生活の視点から分かりやすく解説していきます。
「家族にがんの人がいるから遺伝だとあきらめている」「忙しくて検診に行けない」「子どもや若い人には関係ないと思っていた」——こうした不安や思い込みにも一つひとつ触れながら、明日から実践できる予防策と、もし気になる症状が出たときの受診の目安も整理していきます。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、世界保健機関(WHO)、厚生労働省、日本の専門学会、国立がん研究センター「がん情報サービス」などの一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:がん検診の指針、統計資料、がん対策関連の政策レポートなど、日本人向けの公式情報を優先して参照しています3,6。
- 国立がん研究センター・各専門学会:最新のがん統計、小児がん・AYA世代のがん情報、喫煙や肥満など生活習慣とがんの関連に関する疫学研究などを基に要点を整理しています3,4,5,9。
- WHOやその他の国際機関:世界全体のがん負担、予防可能ながんの割合、主な危険因子(喫煙、飲酒、肥満、感染症等)に関するデータを補足的に利用しています1,2。
- 皮膚科学会などの専門学会の解説:紫外線と皮膚がんの関係など、特定の部位に関する詳細なメカニズムや注意点について、専門学会のQ&Aや総説を参照しています8。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
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要点まとめ
- がんは1つの病気ではなく100種類以上の病気の総称であり、どの臓器にどのようにできるかによって症状や治療法が大きく異なります1。
- WHOなどの報告では、喫煙や飲酒、肥満、感染症、紫外線などのリスク要因を避けることで、30〜50%のがんは予防できるとされています2。
- 日本では2人に1人が一生のうちにがんと診断されますが、その一方で5年相対生存率は6割を超え、早期発見・治療により長く生活している人も多くいます3。
- 喫煙は肺がんをはじめ多くのがんの大きな危険因子であり、日本国内の解析では、肺がん死亡の約6割が喫煙に起因する可能性があると報告されています5。
- 小児がんはまれな病気ですが、日本では毎年およそ2,000〜2,500人の子どもが新たに診断されており、早期診断と専門的な治療により生存率は向上しています4。
- 加工肉の食べ過ぎ、運動不足、肥満、睡眠リズムの乱れなど、「少し気をつけるだけで改善できる生活習慣」が、長期的ながんリスクに影響します2,7,9。
- 症状が出る前に見つけるためのがん検診(胃・大腸・肺・乳房・子宮頸部など)は、科学的根拠に基づき対象年齢と間隔が定められています。対象年齢に達したら、定期的な受診を検討しましょう6。
「家族にがんの人がいるから仕方がない」「毎日忙しくて、検診や生活習慣の見直しまで手が回らない」——そんな気持ちから、がん対策を先送りにしてしまう方は少なくありません。
本記事ではまず、がんの仕組みや統計をコンパクトに押さえた上で、生活習慣・体質・年齢・家族歴などの観点から、自分のリスクを整理できるように構成しています。そのうえで、「今日からできる小さな一歩」から「定期的ながん検診の受け方」「気になる症状があるときの受診の目安」まで、段階的に理解できるように解説します。
必要に応じて、関連する総合ガイドや、詳細解説記事など、JHO内の関連記事に自然な文脈で橋渡しを行います。
記事を読み進めることで、「自分や家族はどこから始めればよいか」「どのような症状が出たらどこに相談すべきか」を具体的にイメージできるようになることを目指します。
第1部:がんの基本と日常生活の見直し
最初に、がんの基本的な仕組みと、私たちの日常生活の中に潜む代表的なリスクについて整理します。「がんは突然降ってくる不運な病気」ではなく、長年の生活習慣や環境、加齢などが少しずつ積み重なって発生することが多いと分かっています1,2。
1.1. がんとは何か? — 細胞レベルで見る「16の事実」の出発点
私たちの体は、数十兆個ともいわれる細胞からできており、細胞は「古い細胞が死んで、新しい細胞が生まれる」というサイクルを繰り返しています。この仕組みがあるからこそ、傷が治ったり、成長したりすることができます。
通常、この細胞の増え方は厳密にコントロールされていますが、遺伝子(DNA)に傷がつき、その修復がうまくいかなかったとき、一部の細胞が「勝手に増え続ける」状態になることがあります。この制御不能になった細胞の集まりが「がん」です1。
ここで覚えておきたい「事実」のひとつは、がんは1つの病気ではなく100種類以上の病気の集合体だという点です1。肺にできる肺がん、乳房にできる乳がん、大腸にできる大腸がん、血液にできる白血病など、部位や性質によって症状も治療法も大きく異なります。したがって、「がんなら全部同じ治療」ということはありません。
また、日本の統計では、2021年に新たに診断されたがんは約98万件、2023年にがんで亡くなった人は約38万人と報告されています3。一方で、2009〜2011年に診断された人の5年相対生存率は全体で64.1%とされており、早期発見・治療により長く生活している人も増えています3。
1.2. 悪化させてしまうNG習慣 — 喫煙・飲酒・食事・運動不足・睡眠
WHOや国立がん研究センターなどの報告によると、がん死亡の約半分は、喫煙、高BMI(肥満)、飲酒、不健康な食事、運動不足、感染症、職業性曝露、空気汚染など「予防可能な危険因子」によって引き起こされていると推計されています1,2,5,7,9。ここでは、日常生活で特に注意したいNG習慣を整理します。
- 喫煙(能動喫煙・受動喫煙):日本人を対象とした解析では、がん全体の罹患の約15%、死亡の約20%が能動喫煙に起因すると推計されており、肺がん死亡の約6割が喫煙に関連するとされています5。また、受動喫煙でも肺がんリスクが約1.3倍に増加することが報告されています5。
- 過度の飲酒:アルコールは口腔、咽頭、食道、肝臓、乳房、大腸など複数のがんのリスクを高めることが確認されています1。飲酒量が増えるほどリスクも増加するため、「休肝日を設ける」「量を減らす」といった工夫が重要です。
- 不健康な食事(加工肉・塩分過多・野菜不足など):ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉は、国際がん研究機関(IARC)により「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」と分類されており、毎日50g摂取するごとに大腸がんリスクが約18%増加すると評価されています7。塩分のとりすぎは胃がんリスクにも関係するとされています1。
- 運動不足:身体活動が少ない人は、がん全体のリスクが高くなることが報告されており、特に大腸がん(男性)や乳がん(女性)などでリスク低下効果が示されています2,9。
- 肥満(高BMI):肥満やメタボリックシンドロームは、大腸がんや乳がん、子宮体がん、肝がんなどのリスクと関連しており、日本人を対象とした大規模コホート研究でも、肥満と血液腫瘍による死亡リスクの上昇が報告されています9。
- 睡眠リズムの乱れ・夜勤:夜勤を伴う交代制勤務が乳がんなど一部のがんリスクと関連する可能性が指摘されており、体内時計の乱れがホルモンバランスや免疫機能に影響を与えると考えられています1,2。ただし、睡眠時間とがんリスクの関係はがんの種類によって異なり、研究により結果も一様ではありません。
こうした習慣は、今日から少しずつ見直すことができます。「全部完璧にしなければ」と考えると続きませんが、「毎日1本ずつ喫煙本数を減らす」「平日はエスカレーターではなく階段を使う」など、現実的なレベルから始めることが大切です。
| こんな習慣・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 毎日たばこを吸っている、または家族・同僚の喫煙で煙を浴びることが多い | 能動喫煙・受動喫煙による肺がん・頭頸部がん・膀胱がんなどのリスク増加5 |
| ハム・ソーセージ・ベーコンなど加工肉をほぼ毎日食べている | 大腸がんリスクの上昇(加工肉の過剰摂取)7 |
| 運動はほとんどせず、デスクワーク中心で1日中座りっぱなしが多い | 大腸がん・乳がんなどのリスク増加、高BMIによる全体的ながんリスク上昇2,9 |
| 体重が若い頃より大きく増え、BMIが25以上になっている | 肥満関連のがん(大腸・乳房・子宮体部・肝臓など)のリスク増加9 |
| 日焼け止めを塗らずに長時間屋外で過ごすことが多い | 紫外線による皮膚がん(有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫など)のリスク増加8 |
| 夜勤や交代制勤務が多く、睡眠時間が日によってバラバラ | 体内時計の乱れによるホルモンバランスの変化・免疫機能の低下などが一部のがんリスクと関連1,2 |
第2部:身体の内部要因 — 遺伝・ホルモン・加齢・感染症
生活習慣を見直しても、年齢、遺伝的な体質、ホルモンバランス、ウイルスや細菌など、私たち自身の体の内側の要因ががんのリスクに影響することがあります。「家族にがんが多い=必ず自分もなる」というわけではありませんが、リスクを正しく理解しておくことは大切です。
2.1. 遺伝はどこまで関係する? — 「5〜10%の事実」と「家族で共有される生活習慣」
一般に、「がんのうち遺伝要因が占める割合は5〜10%程度」と言われています1。これは、特定の遺伝子変異(例:BRCA1/2遺伝子変異による遺伝性乳がん・卵巣がん症候群など)があると、がんになりやすい体質が生まれつきあるケースです。
一方で、「家族にがんの人が多いから遺伝だろう」と思い込んでしまう背景には、同じ家庭で同じ生活習慣や食事、喫煙環境を共有しているという側面もあります。例えば、家族全員が喫煙し、塩分の多い食事を好む家庭では、食道がんや胃がん、肺がんのリスクが家族全員で高くなる可能性があります1,5,7。
「親ががんだったから、自分も必ずがんになる」と決めつけてしまうのではなく、家族の中で共通する生活習慣を見直すきっかけにしてみることが重要です。それでも不安が強い場合は、遺伝カウンセリング外来などで専門家に相談する選択肢もあります。
2.2. 年齢とホルモンバランス — 高齢化と女性特有のライフステージ
がんは基本的に「加齢に伴う病気」であり、年齢が上がるほど発症リスクが高くなります。日本のデータでは、65歳以上でがんと診断される人の割合が高く、高齢化が進むほどがん患者も増える傾向にあります3。
また、ホルモンバランスも一部のがんに影響します。例えば、女性ホルモン(エストロゲン)は乳がんや子宮体がんのリスクと関係しており、初経が早い・閉経が遅い・出産経験がないなどの要因が、長期的にはリスクに影響することが知られています1。
ただし、これらは「絶対的な運命」ではなく、生活習慣や体重管理、適切ながん検診によって、リスクを下げたり早期発見に結び付けたりすることができます。
2.3. 感染症とがん — 肝炎ウイルス・ピロリ菌・ヒトパピローマウイルス(HPV)など
WHOは、世界全体のがんのうち、肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ピロリ菌などの感染症が一定割合を占めると報告しています1。日本でも、以下のような関係がよく知られています。
- 肝炎ウイルス(B型・C型) → 肝がん
- ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ) → 胃がん
- ヒトパピローマウイルス(HPV) → 子宮頸がんなど
これらの中には、ワクチン接種(B型肝炎ワクチン・HPVワクチン)や除菌治療(ピロリ菌除菌)など、医療機関で受けられる予防策もあります。特にHPVワクチンは、子宮頸がんの予防に有効であることが多くの研究で示されています1。
2.4. 肥満・メタボリックシンドロームとがん
肥満(BMI 25以上)やメタボリックシンドロームは、糖尿病や心血管疾患だけでなく、がんのリスクとも関連しています。日本人を対象とした大規模コホート研究では、肥満と血液腫瘍による死亡リスクの上昇が報告されており、肥満関連がんとして大腸がん・乳がん・子宮体がん・肝がんなどが挙げられています9。
「少し太っている程度だから大丈夫」と放置するのではなく、適正体重(BMI 18.5〜24.9程度)を保つことが、長期的ながん予防にもつながります。急激なダイエットではなく、バランスのよい食事と無理のない運動を組み合わせることが重要です。
第3部:専門的な診断が必要な「代表的ながん」と早期発見のポイント
セルフケアや生活習慣の調整だけでは対処できない段階に進むと、専門的な検査や治療が必要になります。ここでは、日本で多い代表的ながんと、早期発見のために知っておきたいポイントを紹介します。
3.1. 日本で多いがん — 男女別の特徴
国立がん研究センターがん統計によると、日本で新たに診断されるがんの数(罹患数)や死亡数には、男女で特徴的な違いがあります3,10。
- 男性で多いがん:前立腺がん、大腸がん、胃がん、肺がん、肝がんなどが代表的です。死亡数では肺がん、大腸がん、胃がん、膵がん、肝がんの順で多いと報告されています3,10。
- 女性で多いがん:乳がん、大腸がん、肺がん、子宮頸がん・子宮体がん、胃がん、卵巣がんなどが代表的です。死亡数では大腸がん、肺がん、膵がん、乳がん、胃がんの順で多いとされています3,10。
これらのがんの中には、症状がほとんど出ないうちから検査で見つけることができるものも多く、国が推奨するがん検診(胃・大腸・肺・乳房・子宮頸部など)の対象となっています6。
3.2. 小児がん・AYA世代のがん — 「まれ」だが無視できない現実
小児がんは、0〜14歳の子どもに発生するがんの総称で、白血病、脳腫瘍、リンパ腫などが代表的です。日本では、0〜14歳の子どものうち、1年間におよそ2,100〜2,500人が小児がんと診断されていると推計されています4,7。AYA世代(15〜39歳)でも年間数千人規模でがんが診断されており、学業や就職、妊娠・出産などライフイベントへの影響が大きいことが特徴です7。
小児がんはまれな病気ではありますが、突然の発熱・原因不明のあざ・長引く頭痛や嘔吐・骨や関節の痛みなど、気になる症状が続く場合には、小児科で相談し、必要に応じて専門施設への紹介を受けることが重要です。
3.3. 皮膚がんと紫外線 — 日光との付き合い方
皮膚がんは、日本では欧米ほど多くはありませんが、高齢化やライフスタイルの変化に伴い増加傾向にあります8。日本皮膚科学会は、顔や手の甲など長年にわたり日光を浴び続けた部位に、日光角化症(前がん病変)や有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫などが生じることがあると解説しています8。
紫外線は細胞のDNAに傷をつけ、その修復の過程で誤りが生じると突然変異となり、がんに進展することがあります8。一方で、適切な日光浴はビタミンD合成に役立つため、「まったく日光を浴びない」のではなく、「強い日差しの時間帯を避け、日焼け止めや帽子・衣服で調整する」ことがポイントです。
3.4. 「症状が出たときには進行している」ことも — だからこそ検診が大切
大腸がんや肺がん、卵巣がんなど、多くのがんでは、初期にはほとんど症状が出ず、症状が現れたときには進行していることが少なくありません1,3。例えば、
- 大腸がん:便に血が混じる、体重減少、貧血、腹痛など
- 肺がん:長引く咳、血痰、胸痛、息切れなど
- 卵巣がん:腹部膨満感、食欲低下、下腹部痛など
しかし、これらの症状は「疲れのせい」「年齢のせい」と見過ごされることも多く、受診が遅れる原因にもなります。そのため、症状がないうちから検診で見つける「早期発見」が、がん対策の重要な柱となっています6。
第4部:今日から始めるがん予防アクションプラン
ここまで見てきたように、がんのリスクには「変えられない要因」(年齢・遺伝など)と、「自分の行動で変えられる要因」(喫煙・飲酒・食事・運動・体重管理など)があります。WHOは、危険因子の回避と既存の予防戦略を実行することで、がんの30〜50%が予防できると述べています2。
ここでは、「今夜から」「今週から」「これから数年間で」と時間軸に分けて、現実的に取り組みやすいがん予防のステップを整理します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 刺激を減らし、リラックスする生活習慣を作る | 就寝前2時間は喫煙・飲酒を控える/スマホ・PCを早めにオフにする/ぬるめのお風呂にゆっくりつかる など |
| Level 1:今夜からできること | 食事の「一品」を変えてみる | ソーセージやベーコン入りの朝食を、焼き魚+野菜のおかずに変えてみる/甘い清涼飲料水をお茶や水に置き換える など |
| Level 2:今週からできること | 喫煙本数・飲酒量を「見える化」する | 1週間、吸った本数・飲んだ量をメモしてみる/週に1〜2日は完全に飲まない「休肝日」を設定する/禁煙外来の情報を調べる など |
| Level 2:今週からできること | 無理なく続けられる身体活動を増やす | 通勤の一部を徒歩にする/エレベーターの代わりに階段を使う/週末に30分の散歩を習慣にするなど、合計1日60分程度の歩行を目標にする9 |
| Level 3:今月からできること | 健康診断・がん検診のスケジュールを確認する | 自治体や職場から届いた検診案内を見直し、対象年齢のがん検診(胃・大腸・肺・乳房・子宮頸部など)に予約を入れる6 |
| Level 3:今月からできること | 体重とウエスト周囲径を記録し、目標を設定する | 体重・BMI・腹囲を月1回測定し、1年かけて体重の5〜10%減量を目標にする(医師と相談のうえで無理のない範囲で)9 |
| Level 4:1年〜数年かけて取り組むこと | ワクチン・除菌治療など医療的な予防策を検討する | B型肝炎ワクチン、HPVワクチンの接種状況を確認する/ピロリ菌感染がある場合は医師と相談し除菌治療を検討する など1 |
すべてを一度に実行する必要はありません。「これならできそう」と思えるものから一つずつ始め、少しずつ生活全体を健康的な方向にシフトしていくことが、長期的ながん予防につながります。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
「この症状はがんかもしれない」と不安になっても、受診のタイミングやどの診療科に行けばよいのかが分からず、足が止まってしまうことがあります。ここでは、危険なサイン、診療科の選び方、診察時に役立つ準備について整理します。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 原因不明の体重減少(数か月で明らかに体重が落ちた)
- 2週間以上続く咳や声枯れ、血痰
- 排便・排尿習慣の変化(便秘と下痢を繰り返す、血便・黒色便が続くなど)
- 乳房や体のどこかに触れるしこりがあり、数週間以上消えない
- 長引く腹痛・背部痛、食欲不振
- 原因不明の出血(不正出血、喀血、血尿など)
- 長く続く疲労感や発熱、夜間の寝汗など
- ほくろやシミの形・色・大きさが変化している、出血するなどの皮膚変化
上記の症状があるからといって、必ずしもがんというわけではありません。しかし、「様子を見過ぎて受診が遅れる」ことのほうが問題になることも多く、「2週間以上続く」「徐々に悪化している」と感じた場合は、一度医療機関に相談することを検討しましょう。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 症状がはっきりしない/複数の部位にまたがる → 総合内科・総合診療科
- 咳・息切れ・胸痛など → 呼吸器内科/呼吸器外科
- 血便・便通異常・腹痛など → 消化器内科/消化器外科
- 乳房のしこり・乳頭分泌など → 乳腺外科・婦人科
- 不正出血・おりものの変化など → 婦人科
- ほくろ・しみの変化、皮膚のしこりなど → 皮膚科
- 子どもの症状全般 → まず小児科へ相談し、必要に応じて小児がん拠点病院などに紹介
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 症状メモ・経過記録:いつから、どのような症状が、どの程度の頻度で出ているかをメモしておくと、診断の手がかりになります。
- お薬手帳・現在服用中の薬の一覧:併用薬の有無や副作用の評価に役立ちます。
- 健康診断や画像検査の結果:過去の検査結果を持参することで、変化や進行の度合いを評価しやすくなります。
- 費用の目安:がん検診や精密検査の費用は、保険適用の有無や検査内容によって大きく変わります。市区町村が行うがん検診は、自己負担が比較的少額に抑えられていることが多いため、自治体の広報やホームページを確認するとよいでしょう6。
緊急性が高いと感じた場合(激しい胸痛・大量の出血・意識障害など)は、迷わず119番通報や救急外来の受診を検討してください。
よくある質問
Q1: がんはどのくらい予防できますか?
世界保健機関(WHO)は、既に分かっている危険因子を避けたり、既存の予防策を徹底したりすることで、全体の30〜50%のがんが予防可能だと述べています2。具体的には、禁煙・節度ある飲酒・バランスのよい食事・適度な運動・体重管理・ワクチン接種(B型肝炎・HPVなど)・適切な日光対策などが挙げられます1,2,5,7,9。
逆に言えば、「すべてのがんを防ぐことはできない」ことも事実です。そのため、予防と同時に、定期的ながん検診や、気になる症状があるときに早めに受診することが重要です。
Q2: 家族にがんの人が多いのですが、自分も必ずがんになりますか?
「がんのうち、遺伝要因が占める割合は5〜10%程度」とされています1。特定の遺伝性腫瘍症候群がある場合を除き、家族にがんの人がいる=必ず自分もがんになるというわけではありません。
一方で、同じ家庭で過ごすことにより、食習慣や喫煙環境、運動量などの生活習慣が似てしまい、結果的に家族全体のがんリスクが高くなることはあります1,5,7。家族歴がある方ほど、禁煙や食事・運動の見直し、適切ながん検診の受診が特に重要だと考えてください。
心配な場合は、まずかかりつけ医や総合内科に相談し、必要に応じて遺伝カウンセリング外来などを紹介してもらうと安心です。
Q3: 小児がんや若年者のがんは、どれくらい起こるのですか?
日本では、0〜14歳の子どものうち、1年間に約2,100〜2,500人が小児がんと診断されると推計されています4,7。AYA世代(15〜39歳)でも年間数千人規模でがんが診断されていますが、全体のがんの中では割合としては少なく、「まれだが確かに存在する病気」といえます。
小児がんは早期診断と専門的な治療により生存率が向上してきていますが、治療の影響が学業や成長、将来の妊娠・出産などに及ぶこともあるため、医療機関だけでなく学校や職場、行政の支援も重要です。
子どもに「長引く発熱」「原因不明のあざ」「持続する頭痛や嘔吐」「骨や関節の痛み」など気になる症状が続く場合には、小児科で早めに相談しましょう。
Q4: ハムやソーセージなどの加工肉は、もう食べないほうがいいですか?
国際がん研究機関(IARC)は、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉を「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」と分類し、「毎日継続して1日50g摂取するごとに大腸がんのリスクが約18%増加する」と評価しています7。
ただし、これは「一口食べたらすぐがんになる」という意味ではなく、「長期的に毎日多量に食べ続けるとリスクが積み上がる」というイメージです。完全にゼロにすることが難しい場合でも、「毎日は食べない」「量を減らす」「野菜や果物を一緒に増やす」といった工夫で、リスクを下げることができます。
日本の食文化や家族の好みも考慮しつつ、総合的な食事バランスで考えることが大切です。
Q5: 日光を浴びるとすぐ皮膚がんになりますか?日焼け止めは毎日必要ですか?
日本皮膚科学会は、皮膚がんのすべてが紫外線によって起こるわけではないものの、長年にわたり日光を浴び続けることで、日光角化症(前がん病変)や有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫などが起こりうると説明しています8。紫外線は細胞のDNAに傷をつけ、修復の誤りが積み重なることでがんに進展することがあります8。
一方で、適度な日光浴はビタミンD合成に必要であり、「完全に日光を避ける」必要はありません。特に夏場の10〜14時ごろの強い日差しを避け、帽子や日傘、長袖の衣類、日焼け止めなどを組み合わせて、「賢く日光と付き合う」ことが推奨されます。
屋外で過ごす時間が長い方や、アウトドア・スポーツを楽しむ方は、日焼け止めを日常的に活用し、汗をかいたら塗り直すなどの対策を取ると安心です。
Q6: がん検診は何歳から、どのくらいの頻度で受ければよいですか?
厚生労働省は、科学的根拠に基づいて、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんなどのがん検診の対象年齢と受診間隔を定めています6。具体的な対象年齢・頻度は自治体の案内や厚生労働省の資料で確認できますが、例として以下のようなものがあります(自治体により実施状況は異なります)。
- 大腸がん検診(便潜血検査):おおむね40歳以上、年1回
- 肺がん検診(胸部エックス線検査など):おおむね40歳以上、年1回
- 乳がん検診(マンモグラフィ):おおむね40歳以上、2年に1回
- 子宮頸がん検診(細胞診):おおむね20歳以上、2年に1回
既にがんや前がん病変で治療中の方は、一般的ながん検診の対象外となることがあります。検診の再開時期や頻度については、主治医とよく相談してください6。
Q7: 「がん=死」と考えてしまいます。実際のところ、どのくらい生きられるのでしょうか?
かつては「がん=不治の病」というイメージが強くありましたが、日本の最新の統計では、2009〜2011年にがんと診断された人の5年相対生存率は全体で64.1%(男性62.0%、女性66.9%)と報告されています3。がんの種類や進行度によって大きく異なるものの、多くの人が治療後も長く生活しているという現実があります。
もちろん、依然として治療が難しいがんや、早期発見が難しいがんも存在します。しかし、「早期発見・早期治療」が生存率を大きく左右することは多くの研究で示されています1,3,6。気になる症状を我慢しすぎず、検診や受診のハードルを下げていくことが、人生全体を見据えたときの大きな安心につながります。
不安が強いときは、一人で抱え込まず、家族や友人、医療者、がん相談支援センターなど、信頼できる人や支援窓口に話してみることも大切です。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
がんは、誰にとっても身近な病気でありながら、その正体や予防法については、まだまだ誤解や不安が多いテーマです。本記事では、「がんは一つの病気ではない」「30〜50%は予防可能である」「早期発見・早期治療で助かる命が増えている」といった16の事実を軸に、日常生活でできる対策や受診の目安を整理しました1,2,3,5,7,9。
今日から実践できることは、決して難しい特別なことではありません。たばこの本数を1本減らすこと、加工肉を食べる頻度を週の半分にすること、エレベーターの代わりに階段を使うこと、気になる症状を「様子見」しすぎずに相談すること——こうした小さな一歩の積み重ねが、10年後・20年後の自分や家族の健康を守る大きな力になります。
一人で完璧を目指す必要はありません。「自分にできることを、少しずつ増やしていく」。そのための道しるべとして、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
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本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
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徳島大学. 〖プレスリリース〗肥満と代謝異常の組み合わせでがんリスクが変わる?~大規模日本人集団の追跡研究結果から~. 2024 Nov 26. https://www.tokushima-u.ac.jp/docs/58787.html(最終アクセス日:2025-11-26)
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国立がん研究センター がん情報サービス. がんの統計 2024 図表編. https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/2024_jp.html(最終アクセス日:2025-11-26)

