赤ちゃんの泣き声で気持ちを読み解く方法|原因別サインとママ・パパの対処ガイド
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赤ちゃんの泣き声で気持ちを読み解く方法|原因別サインとママ・パパの対処ガイド

「おむつも替えたし、さっき授乳もしたのに、どうしてこんなに泣き続けるんだろう……」。生まれたばかりの赤ちゃんと向き合っていると、そんな不安や戸惑いを感じるママ・パパは少なくありません。

赤ちゃんにとって泣くことは、唯一の「ことば」です。お腹が空いた、眠い、抱っこしてほしい、暑い・寒い、どこか痛い、なんとなく不安——たくさんの気持ちや状態を、泣き声や表情、動きで伝えようとしています。

一方で、「泣き声だけで理由を言い当てる」ことは、大人でも簡単ではありません。特に初めての育児では、「ちゃんと分かってあげられていないのでは」「自分のせいで泣かせてしまっているのでは」と自分を責めてしまう方もいます。

本記事では、厚生労働省や日本・海外の小児医療機関の情報をもとに、赤ちゃんの泣き声や様子から考えられる代表的な原因と、ママ・パパが今日から実践できる対処法を整理します17。同時に、「泣きやまないときにどう気持ちを保つか」「いつ医療機関や相談窓口に頼るべきか」についても具体的に解説します。

先に大事なポイントだけお伝えすると、赤ちゃんがよく泣くこと自体は、多くの場合「発達の一部」であり、ママ・パパのせいではありません78。ただし、発熱や呼吸の異常、ぐったりしている、いつもと明らかに違う泣き方など「危険なサイン」があるときは、すぐに小児科や救急を受診したり、#8000(小児救急電話相談)などの公的な相談窓口に連絡することが勧められています15

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。赤ちゃんの発達や子育てに関する話題は、保護者の不安に直結する「YMYL(Your Money Your Life)」分野にあたるため、信頼できる一次情報をもとに慎重に解説することを大切にしています。

本記事では、厚生労働省が公開している「赤ちゃんが泣きやまない 泣きへの理解と対処のために」などの資料や1、国立成育医療研究センターが作成した乳幼児健診マニュアル3、日本小児科医会が案内する小児救急電話相談(#8000)の情報5に加え、海外の小児専門病院や公的医療機関のガイドライン678など、査読付き論文・公的機関の資料を中心に参照しています。

これらの一次情報源をもとに、JHO編集部が生成AIツールのサポートを受けながら原稿案を作成し、その後、原著資料と付き合わせて事実関係・数値・URL等を一つひとつ確認したうえで、日本の生活者にとって読みやすい形に整理しています。最終的な内容の確認と公開判断は、すべて JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が行っています。

なお、本記事はあくまで一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の赤ちゃんの診断・治療方針の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や治療・ミルクの変更を検討する場合には、必ずかかりつけの小児科や助産師などの医療専門職にご相談ください。

要点まとめ

  • 赤ちゃんの泣きは「お腹が空いた」「眠い」「抱っこしてほしい」「暑い・寒い」「どこか痛い」など、さまざまなニーズを伝えるための大事なサインです。
  • 生後数か月までは、1日に合計2〜3時間ほど泣くことも多く、生後6〜8週ごろに泣きがピークを迎え、その後少しずつ落ち着いていくと報告されています7
  • 泣き方の音やリズム、泣き始める前後のしぐさ(口をモグモグさせる、体をのけぞらせる、手足をバタバタさせる等)を組み合わせて観察すると、「お腹が空いたサイン」「眠いサイン」など、ある程度のパターンが見えてきます。
  • 長時間の激しい泣きが夕方〜夜に集中する場合、「黄昏泣き」「いわゆるコリック(疝痛様の泣き)」など、消化器の未熟さや興奮しやすさが背景にあるケースもありますが、多くは時間の経過とともに改善します67
  • 発熱・呼吸が苦しそう・ぐったりしている・高く鋭い泣き声・けいれん・血便など「危険なサイン」がある場合は、自己判断せずに119番通報や救急外来、小児救急電話相談(#8000)などにすぐ相談しましょう15
  • 泣き止まない赤ちゃんのお世話は、ママ・パパの心身に大きな負担をかけます。イライラしてしまうのは自然な反応であり、「どうしてもつらい」と感じたときは、安全な場所に赤ちゃんを寝かせて一息つき、家族や行政の支援に頼ることも大切です14

第1部:赤ちゃんの泣き方の基本と日常生活の見直し

まずは、赤ちゃんがなぜ泣くのか、その基本的な仕組みと、生活の中でチェックしやすいポイントから整理していきましょう。専門的な病気を心配する前に、「実はお腹が空いていただけ」「少し暑すぎた」など、身近な要因で説明できることも少なくありません。

1.1. 泣きは「ことば」──どんなメカニズムで伝えている?

赤ちゃんは、生まれた直後から泣くことで肺を広げ、外の世界で呼吸を始めます。その後も、空腹・眠気・不快感・不安などを伝えるために、泣き声や表情、手足の動きなどを使って、まわりの大人に「助けて」「気づいて」とサインを送っています78

海外の小児病院の報告では、赤ちゃんの泣きは生後2〜3週から増え始め、生後6〜8週ごろにピークを迎え、その後3〜4か月ごろにかけて少しずつ減っていくとされています7。平均すると、1日に2〜3時間ほど泣くことも珍しくなく、20%前後の赤ちゃんはそれ以上泣くという調査もあります8

つまり、「よく泣く赤ちゃん」というだけで、すぐに病気とは限りません。重要なのは「赤ちゃんの全体的な様子」と「いつもの状態との違い」です。機嫌のよい時間もあり、体重が順調に増え、授乳やおしっこ・うんちがいつも通りなら、泣き時間が長くても発達の一部であることが多いとされています7

また、泣きの前には「早めのサイン」が出ていることもあります。たとえば、お腹が空いているときは、口をモグモグさせる・手をしゃぶる・頬に触れると口を探す(ルーティング・反射)などの様子が見られます。眠いときには、目をこする・あくびをする・視線が合いにくくなるなどのサインが出ることも多いでしょう3

「泣き声そのものの音」で意味を読み取りやすくするための考え方として、「お腹が空いたときは『ネェ』のような音」「眠いときは『アオ〜』のようなあくび混じりの声」などと説明されることもあります。しかし、こうした分類は科学的に厳密に証明されたルールというより、「観察のヒント」として参考程度にとらえるのが安全です。大切なのは、音だけで判断しようとするのではなく、泣き始める前後のしぐさや時間帯、1日の流れと合わせてパターンをつかんでいくことです。

1.2. 悪化させてしまいやすいNG習慣と環境

赤ちゃんの泣きやすさは、気質や体質、日ごろの生活リズム、周囲の環境など、さまざまな要因が重なって変化します。ママ・パパのせいではありませんが、次のような状況が重なると、泣きが長引きやすくなることが知られています78

  • 昼夜のリズムが整っていない:日中ずっとカーテンを閉め切って過ごしていると、赤ちゃんの体内時計が整いにくく、夕方以降にぐずりやすくなります。
  • 刺激が多すぎる:テレビやスマートフォンの音・光、来客が多い環境などは、赤ちゃんにとって疲れやすい要因になります。
  • 室温・服装が合っていない:厚着をさせ過ぎて汗ばんでいる、逆に冬なのに薄着で手足が冷え切っているなど、暑さ・寒さも泣きの原因になります1
  • ママ・パパが限界まで我慢している:保護者が極度に疲れていると、どうしても反応が遅れたり、声かけのトーンが強くなったりしがちです。結果として赤ちゃんが不安になり、泣きが長引いてしまう悪循環が起こることもあります4

もちろん、これらを「すべて完璧に整える」必要はありません。できる範囲で、まずは室温や服装、光や音の環境など「今日から変えられること」から少しずつ見直していきましょう。

1.3. よくある泣き方と背景をセルフチェック

下の表は、よく見られる泣き方や状況と、それに関連しやすい背景を大まかに整理したものです。あくまで目安ですが、「どこから確認していけばよいか」を考えるヒントになります。

表1:赤ちゃんの泣きと背景のセルフチェックリスト
こんな泣き方・状況はありませんか? まず考えたい主な背景・原因カテゴリ
授乳から2〜3時間以上経つと、口をモグモグさせながらだんだん泣き始める お腹が空いている可能性(空腹サイン)
目をこすりながらグズグズ→急に大きな声で泣き出す 眠気・疲れのサイン、寝つきがうまくいっていない
おむつ交換や服の着替えのときに特に激しく泣く 寒暖差が苦手、肌の刺激(おむつかぶれ等)、姿勢が不快
夕方になると決まって激しく泣き、足をお腹の方にギュッと引き寄せる お腹の張り・消化器の未熟さ、「いわゆるコリック」様の泣き
抱っこするとすぐ落ち着くが、置くとすぐ泣いてしまう 抱っこやスキンシップへの強いニーズ、不安・寂しさ
突然、高く鋭い声で長時間泣き続け、顔色が悪い・ぐったりしている 重い病気が隠れている可能性(早急に医療機関や#8000へ相談)

こうしたチェックは、「原因を一発で言い当てるため」というより、「一つずつ可能性をつぶしていくための順番を決める」ために役立ちます。たとえば、 ①お腹が空いていないか → ②眠くないか → ③暑さ・寒さ・おむつ・服装 → ④それでもダメなら抱っこや環境の見直し のように、ママ・パパ自身が分かりやすい手順を決めておくと、焦りが少し和らぎます。

第2部:身体の内部要因 — 消化器・アレルギー・隠れた不調

生活習慣や環境を整えても泣きが続く場合、背景に体の内側の要因が隠れていることもあります。ここでは、特に多い「消化器の未熟さ」「ミルク・食物に関連するトラブル」「感染症などの病気」の観点から見ていきます。

2.1. 消化器の未熟さと「黄昏泣き」「いわゆるコリック」

生後数か月の赤ちゃんは、胃腸の機能がまだ未熟で、ガスがたまりやすかったり、胃から腸への内容物の移動がスムーズでなかったりします。そのため、特に夕方〜夜にかけて、「理由がはっきりしない激しい泣き」が長時間続くことがあります。これは俗に「黄昏泣き」と呼ばれたり、「コリック(疝痛)」と説明されたりします67

国際的には、「3時間以上の激しい泣きが、週3日以上、3週間以上続く場合」を一つの目安として「乳児コリック」と呼ぶ定義がよく用いられてきましたが、最近のガイドラインでは、必ずしも厳密な時間で線引きするより、「赤ちゃんと家族がどれほど困っているか」が大切だと指摘されています7

コリックに典型的とされる様子としては、 夕方に集中して大泣きする/足をお腹の方に引き寄せる/お腹が張っているように見える/抱っこや授乳でもなかなか落ち着かない などが挙げられます6。ただし、これだけで病気かどうかを判断することはできません。まずは小児科で診察を受け、「別の病気が隠れていないか」を確認してもらうことが重要です67

胃腸の未熟さが主な背景である場合、多くは生後3〜4か月ごろまでに自然と落ち着いていきます6。それまでの間は、「泣きやませること」だけをゴールにせず、 赤ちゃんが少しでも安心できる環境を整えることと、ママ・パパが燃え尽きないようにサポートを受けること を大切にしましょう。

2.2. ミルク・アレルギーなどが関わる場合

一部の赤ちゃんでは、牛乳タンパク質アレルギーや、与えているミルク・母乳中の成分が影響して、お腹の不快感や湿疹、血便などを起こすことがあります。こうした場合、泣き方だけでなく、次のようなサインが組み合わさっていないかに注意が必要です6

  • 体に湿疹や強いかゆみがある
  • うんちに血やゼリー状の粘液が混ざる
  • ミルクや母乳のあとによく吐く、体重の増え方が心配
  • 呼吸がゼーゼーするなど、他のアレルギー症状がある

これらの症状があるからといって必ずしもアレルギーとは限りませんが、自己判断でミルクの種類を何度も変えたり、勝手に除去食を始めると、栄養バランスを崩すおそれがあります。必ず小児科やアレルギー専門の医師・助産師と相談し、必要に応じて専門的な検査や指導を受けましょう3

医師の指導のもとで、母乳の場合は母親の食事内容を一定期間見直したり、ミルクの場合はアレルゲンを減らした特殊ミルクを試すことが提案される場合もありますが、その効果には個人差があり、「必ず泣きが減る」とは限りません6。大切なのは、「ママの食事が悪いから泣いている」といった誤った罪悪感を抱かず、医学的な根拠に基づいて一緒に方針を考えてくれる専門家とつながることです。

2.3. 発熱・感染症など病気が隠れているときのサイン

泣きが長引く背景に、風邪や中耳炎、尿路感染症などの病気が隠れていることもあります。特に次のようなサインがある場合は、早めに医療機関で診察を受けましょう37

  • 38度以上の発熱、または明らかに体が冷たい・熱い
  • 息が速い・苦しそう、胸やお腹が大きくへこむ、うなり声を出している
  • 母乳やミルクを明らかに飲む量が減った、全く飲まない
  • ぐったりして目が合いにくい、あまり反応しない
  • 繰り返す嘔吐、黄緑色の嘔吐、血便、黒い便などがある
  • 首が硬そう、けいれんしている、泣き声がいつもとまったく違う

こうした症状は、救急受診の目安に挙げられていることが多く、日本小児科医会や各自治体は、迷ったときに相談できる窓口として小児救急電話相談(#8000)の利用を呼びかけています5。迷ったときは一人で抱え込まず、#8000やかかりつけ医に相談しましょう。

第3部:専門的な診断が必要な疾患

ここでは、必ずしも頻度は高くないものの、「いつもの泣き」とは違うサインとして注意したい状況を整理します。ここで挙げる疾患名はあくまで一例であり、自己診断の材料ではありません。大切なのは、「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたときに、ためらわず専門家に相談することです37

3.1. いつもと違う高い泣き声・ぐったりした様子

高く鋭い泣き声が続く、泣いていても声が弱々しい、普段より明らかに反応が乏しい——こうした「いつもの泣き方との明らかな違い」は、脳や中枢神経、代謝異常などの重い病気のサインである可能性があります3

特に、 けいれんしている・目線が合わない・白目をむいている・呼吸のリズムがおかしい・皮膚の色が青白い・灰色っぽい などの症状があれば、ただちに119番通報を含めた緊急対応が必要です。救急車を呼ぶべきか迷うときも、ためらわずに119番で相談しましょう。

また、厚生労働省や日本小児科医会は、「泣きやまないからといって、決して赤ちゃんを激しく揺さぶらないこと」を繰り返し注意喚起しています12。激しく揺さぶられると、脳の血管が傷つき、乳幼児揺さぶられ症候群と呼ばれる重い障害を引き起こす危険があります。イライラしてどうしても我慢できないと感じたら、まずは赤ちゃんを安全なベッドや布団に寝かせ、数分間その場を離れて深呼吸をするなど、自分の心と体を守る行動を優先しましょう1

3.2. 繰り返す激しい泣きと嘔吐・血便など

繰り返す激しい泣きに加えて、黄緑色の嘔吐や血便、黒いタール状の便などがみられる場合は、腸重積や腸閉塞、消化管出血などの重い消化器疾患が背景にある可能性があります37

特に、 「泣く→やや落ち着く→また急に激しく泣く」を周期的に繰り返す/膝を抱え込むような姿勢をとる/お腹が張って硬い といったサインがある場合は、時間との勝負になることもあります。すぐに小児救急外来や119番に相談しましょう。

3.3. 新生児期(生後1か月ごろまで)の特別な注意点

生後1か月前後までの新生児期は、体温調節や免疫機能が未熟で、感染症などのリスクが高い時期です。この時期の赤ちゃんが激しく泣いている場合、次の点に特に注意しましょう3

  • 生後3か月未満で38度以上の発熱がある
  • 授乳間隔が極端に長い・全く飲まない、または飲んでもすぐ吐いてしまう
  • 尿や便の回数が極端に少ない、または全く出ていない
  • 黄疸の色が強くなる、白目まで黄色くなる

これらは国内外のガイドラインで「早期に医療機関を受診すべきサイン」とされています37。夜間や休日であっても、遠慮せずに救急外来や#8000に相談しましょう。

第4部:今日から始める改善アクションプラン

ここからは、原因がはっきりしないときでもママ・パパが「今この瞬間からできること」を、段階別に整理していきます。すべてを一度に完璧にこなす必要はありません。家庭の状況に合わせて、できそうなものを1つずつ試していきましょう78

表2:赤ちゃんの泣きへの改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今すぐできること(数分〜今夜) 基本ニーズのチェックと落ち着ける工夫 授乳・おむつ・室温・服装を確認する/静かな場所に移動する/電気を少し暗くする/抱っこでゆっくり揺らす/やさしく背中やお尻をトントンする/ホワイトノイズ(換気扇の音など)を活用する
Level 2:数日〜数週間で整えていくこと 生活リズムと環境の見直し 朝はカーテンを開けて日光を浴びる/夜は照明を落として静かな環境にする/赤ちゃんの「眠そうサイン」を見つけて早めに寝かせる/テレビ・スマホの音・光を減らす/家族や支援サービスに家事を手伝ってもらう
Level 3:専門家と一緒に考えること 泣きの記録と相談 泣く時間帯・長さ・前後の様子をメモする/授乳量・おしっこ・うんちの回数を記録する/乳幼児健診のときに相談する/小児科や助産師外来でミルクの種類・授乳方法を見てもらう/必要に応じて#8000で相談

特に、泣きが長期化しているときは、「いつ・どのくらい・どんな様子で泣いているか」を簡単にメモしておくと、医療機関や相談窓口で話しやすくなります。スマートフォンのメモ帳やカレンダーアプリを利用するのもよいでしょう3

また、海外の小児医療機関は、泣きやまない赤ちゃんに対して「赤ちゃんだけでなく、ママ・パパのケアが最優先」と繰り返し強調しています78。日本でも、厚生労働省は「赤ちゃんが泣きやまないとき、保護者が一人で抱え込まないこと」「イライラしたら赤ちゃんから一時的に離れてもよいこと」「揺さぶらないこと」を強く呼びかけています1

泣き止まないときは、「泣き止ませなければならない」と思うほど追い詰められてしまいがちですが、「泣いていても安全なら、とりあえずOK」と考える視点も大切です。安全なベビーベッドや布団に寝かせ、数分間ベランダで深呼吸をしたり、家族にバトンタッチしたり、#8000や地域の育児相談に電話して話を聞いてもらうだけでも、心が軽くなることがあります45

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

最後に、「どのタイミングで医療機関に相談すべきか」「受診先はどこを選べばよいか」「相談の際に何を伝えるとよいか」をまとめます。日本には、小児科医・助産師・保健師など、赤ちゃんと家族を支えるさまざまな専門家がいます。遠慮せずに頼ってよい存在です。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 38度以上の発熱、または明らかに体が冷たい・ぐったりしている
  • 呼吸が速い・苦しそう、胸やお腹が大きくへこむ、うなり声が続く
  • 母乳やミルクをほとんど飲まない、尿や便の回数が極端に減っている
  • 黄緑色の嘔吐や血の混じった嘔吐、黒いタール状の便、血便がある
  • けいれんしている、目線が合わない、反応が弱い、高い鋭い泣き声が続く
  • 頭をぶつけた・落下したあとに、いつもと違う泣きやぐったりがある

これらはいずれも、国内外の救急ガイドラインが「すぐに医療機関を受診すべき状態」として挙げているサインです37。夜間や休日であっても、119番通報や救急外来、小児救急電話相談(#8000)などを迷わず利用してください5

5.2. 症状に応じた相談先の選び方

  • かかりつけ小児科:日中の受診や、慢性的な悩み(よく泣く・夜泣き・授乳のことなど)を相談する基本の窓口です。体重の増え方やこれまでの経過を踏まえてアドバイスしてもらえます。
  • 産科・助産師外来:産後間もない時期の授乳や赤ちゃんの扱い方、ママの体調・メンタルに関する相談に適しています。
  • 市区町村の保健センター・子育て世代包括支援センター:育児全般の不安や家族関係、経済的な心配などを含めて相談できます。必要に応じて訪問支援につなげてくれる自治体もあります4
  • 小児救急電話相談(#8000):夜間や休日に「今すぐ救急に行くべきか」「朝まで様子を見てもよいか」判断に迷ったときに、小児科医や看護師が電話でアドバイスしてくれる公的窓口です5
  • 119番救急:明らかな危険サインがあるとき、または保護者が「命の危険があるかもしれない」と感じたときは、ためらわずに119番を利用してください。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 母子健康手帳:出生時の情報や健診・予防接種の記録がまとまっており、医師が全体像を把握するのに役立ちます。
  • お薬手帳:すでに薬を飲んでいる場合、重複処方や飲み合わせのチェックに必要です。
  • 泣きや授乳・排泄のメモ:「いつ・どのくらい・どのように泣いたか」「授乳量・回数」「おしっこ・うんちの回数」などを書いたメモやスマホの記録があると、診察がスムーズになります3
  • 動画・写真:受診時には症状が落ち着いていることも多いため、家での様子を短い動画に撮っておくと非常に参考になります(医師の指示がある場合を除き、撮影よりもまず安全確保を優先してください)。
  • 費用の目安:日本では乳幼児医療費助成制度が整備されており、多くの自治体で小児科の受診費用は一部または全額が公費で補助されています。地域の制度は市区町村のホームページや窓口で確認しておきましょう4

よくある質問

Q1: 生後1〜2か月の赤ちゃんが毎日たくさん泣きます。抱き癖がつかないか心配です。

A1: 生後数か月の赤ちゃんが1日に2〜3時間、あるいはそれ以上泣くことは珍しくなく、多くは発達の一部とされています78。この時期の抱っこや声かけによって「抱き癖」がつき、将来わがままな子になるという科学的根拠はありません。

むしろ、赤ちゃんが泣いたときにできる範囲で応えてあげることは、安心感と信頼感(愛着)の形成に役立つとされています7。ママ・パパが疲れ切ってしまうほど無理に応える必要はありませんが、「泣いたらできる限り応えても大丈夫」と考えてよいでしょう。

ただし、発熱や元気のなさなど「いつもの泣き」とは違うサインがある場合は、抱き癖ではなく病気が隠れている可能性もあるため、小児科や#8000に相談してください35

Q2: 夕方になると決まって大泣きします。これってコリックですか?

A2: 夕方〜夜にかけて決まって大泣きする「黄昏泣き」は、多くの赤ちゃんに見られる現象です。国際的には、「1日3時間以上の激しい泣きが週3日以上、3週間以上続く」場合に「乳児コリック」と呼ぶ定義がよく用いられてきましたが6、最近は必ずしもこの定義にこだわらず、「赤ちゃんと家族がどれくらい困っているか」で支援を考える傾向があります7

コリックのような泣きが疑われる場合でも、多くは3〜4か月ごろに自然と軽くなっていきます6。とはいえ、長時間の泣きはママ・パパにとって非常につらいものです。お腹の張りや血便、発熱などの危険なサインがないかを確認しつつ、かかりつけ小児科や助産師に相談し、家でできる工夫や必要な検査の有無について一緒に考えてもらうと安心です。

Q3: どのくらい泣いたら病院に行くべきですか?時間で目安はありますか?

A3: 「何時間以上泣いたら必ず受診」という一律の基準はありません。重要なのは、泣き方の質と、赤ちゃん全体の様子です。前述のような危険なサイン(発熱・呼吸の異常・ぐったり・嘔吐や血便・けいれんなど)が1つでもある場合は、時間に関わらずすぐ受診や119番通報を検討してください37

危険なサインがなくても、「今までと泣き方が違う」「親として直感的におかしいと感じる」ときには、遠慮せずにかかりつけ医や#8000に相談して構いません5。医療者側も、「何もなかったとしても早めに相談してくれた方が安心」と考えていることが多いです。

Q4: 泣き止まないとイライラしてしまい、手をあげてしまいそうで怖いです。

A4: 泣きやまない赤ちゃんに長時間向き合っていると、どんなに優しい人でもイライラしたり、無力感に襲われたりするのはごく自然な反応です。あなたが「親失格」だからではありません14

厚生労働省は、「赤ちゃんが泣きやまないときには、一人で抱え込まず、赤ちゃんを安全な場所に寝かせて数分間離れること」「絶対に激しく揺さぶらないこと」「身近な人や専門の相談窓口に助けを求めること」を強く勧めています1。安全なベッドや布団に寝かせたうえで、ベランダや別室で深呼吸をしたり、家族や友人に電話をしたり、#8000や自治体の子育て相談に電話をするなど、「自分の心を守る行動」を優先して構いません。

イライラや不安が続き、「泣き声を聞くだけで涙が出る」「何もやる気がしない」といった状態が続く場合は、産後うつなどの可能性もあるため、産科や心療内科、保健師などに早めに相談しましょう4

Q5: ミルクを変えれば、赤ちゃんの泣きが減りますか?

A5: 一部の赤ちゃんでは、牛乳タンパク質アレルギーや消化のしやすさが関係して、ミルクの種類を変えることでお腹の不快感が軽くなり、結果として泣きが減ることもあります6。しかし、すべての赤ちゃんで効果があるわけではなく、自己判断で何度もミルクを変更すると、栄養バランスが乱れたり、コスト面で負担が大きくなったりするおそれがあります。

ミルクとの関係が疑われるときは、まず小児科や助産師に相談し、「どのタイミングでどんな症状が出るのか」「体重はどのように増えているか」などを一緒に確認してもらいましょう3。必要に応じて、医師の指示のもとでアレルゲンを減らしたミルクに変更するなど、計画的な対応が検討されます。

Q6: 「ネェ」「アオ〜」など泣き声の音で意味が分かるという方法は本当ですか?

A6: 赤ちゃんの泣き声の音やリズムから、「お腹が空いたときはこういう音」「眠いときはこういう音」といったパターンを読み取ろうとする試みは、世界中で紹介されています。ただし、現時点ではこうした「泣き声の言語」を科学的に厳密に検証した研究は限られており、すべての赤ちゃんに当てはまる「絶対的なルール」とは言えません。

大切なのは、泣き声の音だけに頼るのではなく、泣き始める前のしぐさ(口をモグモグさせる・あくびをする等)や時間帯、授乳からの経過時間、環境の変化などを合わせて観察することです78。ご家庭ごとに「うちの子のパターン」が少しずつ見えてくるので、日々の観察メモが役立つでしょう。

Q7: 上の子もいて、赤ちゃんが泣いてもすぐに抱っこできないときがあります。どうしたらいいでしょうか?

A7: きょうだいがいる家庭では、常に赤ちゃんを最優先に抱っこすることは現実的ではありません。赤ちゃんが泣いていても、まずは上の子の安全を確保しなければならない場面も多いでしょう。それは決して「悪い親」だからではなく、生活上避けられない状況です。

可能であれば、「上の子と一緒に赤ちゃんをあやす時間」を作ることが一つの工夫です。例えば、「ママは赤ちゃんを抱っこするから、お兄ちゃんは優しくトントンしてあげてね」「一緒に『大丈夫だよ〜』って声をかけようか」といった形で、上の子を「助けてくれる存在」として巻き込むと、赤ちゃんも上の子も安心しやすくなります4

それでもどうしても余裕がないときは、「今は上の子の安全を優先する」「赤ちゃんは安全なベッドにいるから、少し泣いていても大丈夫」と自分に言い聞かせることも大切です。心配が続くときは、保健センターや子育て相談窓口で家庭の状況を含めて相談してみましょう4

Q8: 泣き声が気になって、近所迷惑ではないかと不安になります。

A8: 日本では住宅が密集している地域も多く、「泣き声がうるさいと思われているのでは」と不安になる保護者は少なくありません。その不安から、必要以上に外出を控えたり、相談をためらってしまうケースも報告されています4

しかし、赤ちゃんが泣くこと自体は完全には避けられませんし、子育ては社会全体で支えるべきものです。可能であれば、日頃から挨拶を交わしている近所の方に、「今は赤ちゃんが小さくて泣き声が多い時期ですが、成長とともに落ち着いていきますので、温かく見守っていただけると助かります」と一言伝えておくと、気持ちが少し楽になるかもしれません。

どうしても近隣との関係がつらい場合は、自治体の相談窓口や地域包括支援センターなどに状況を伝え、第三者の支援を受けることも検討しましょう4

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

赤ちゃんの泣きは、ママ・パパにとってときに試練のように感じられますが、その一方で「生きていること」「何かを伝えようとしていること」のサインでもあります。生後数か月のあいだは、1日に2〜3時間以上泣くことも多く、多くの場合は発達の過程として自然に落ち着いていきます78

この記事では、泣き方のパターンや背景となりうる要因、危険なサインと受診の目安、今日からできる具体的なアクションを紹介しました。すべてを一度に実践する必要はありません。気になった部分から少しずつ試し、「この子はこういうときにこう泣くんだな」という感覚を、赤ちゃんと一緒に少しずつ育てていければ十分です。

そして何より、「泣きやまないのは自分のせいだ」と一人で背負い込まないことが大切です。厚生労働省や日本小児科医会、各自治体は、赤ちゃんの泣きに悩む保護者が相談できる窓口や支援制度を整えています15。困ったときは、どうか遠慮せずに専門家や地域の支援につながってください。

Japanese Health(JHO)編集部は、今後も公的機関や査読付き論文などの信頼できる情報に基づき、日本の生活者に寄り添った形で子育て・健康情報をお届けしていきます。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、赤ちゃんの泣きに関する国内外のガイドライン、公的機関の情報、医学論文などを幅広く参照し、日本の子育て環境に合わせて内容を整理しました。

原稿の作成にあたっては、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、 JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療内容・ミルクの変更・育児方針の見直し等を検討される際には、必ず小児科医や助産師などの医療専門家にご相談ください。

記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが 運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。

免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容・ミルクの種類・育児方針の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局. 赤ちゃんが泣きやまない 泣きへの理解と対処のために. 2013年. https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000030731.pdf (最終アクセス日:2025-11-26)

  2. 日本小児科医会ほか. 乳幼児揺さぶられ症候群に関する啓発資料. 公開年不詳. https://www.jschild.or.jp/ (最終アクセス日:2025-11-26)

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  8. Raising Children Network. Crying babies: what to do. 2024年. https://raisingchildren.net.au/newborns/behaviour/crying-colic/crying-babies (最終アクセス日:2025-11-26)

  9. HealthyChildren.org (American Academy of Pediatrics). Colic Relief Tips for Parents. 公開年不詳. https://www.healthychildren.org/English/ages-stages/baby/crying-colic/Pages/Responding-to-Your-Babys-Cries.aspx (最終アクセス日:2025-11-26)

  10. Banks JB et al. Infantile Colic. StatPearls [Internet]. StatPearls Publishing; 2023年. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK518962/ (最終アクセス日:2025-11-26)

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