手や指、足の裏、首まわりなどに、いつの間にか小さな「ブツブツ」や「盛り上がり」ができて、なかなか消えない……。皮膚科に行くほどではない気がして放置しているけれど、見た目が気になって人前で手足を出しにくい、家族や子どもにうつらないか不安、という方も少なくありません。
一般に「いぼ」と呼ばれるものの多くは、医学的には「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」とよばれるウイルス性の皮膚の良性腫瘤です。原因の多くはヒトパピローマウイルス(human papillomavirus: HPV)への感染であり、手足にできるものから、性器まわりにできる尖圭コンジローマまで、部位やウイルスの型によってさまざまなタイプがあります12。
多くのいぼは命に関わる病気ではありませんが、放置している間に数が増えたり、別の部位や家族にうつったりすることもあります13。また、性器にできるいぼの一部は子宮頸がんなどのリスクとも関係しており、適切な知識と対処が重要です78。
この記事では、Japanese Health(JHO)編集部が公的機関や専門学会、査読付き論文などの信頼できる情報をもとに、いぼ(尋常性疣贅)とは何か、原因・種類・見分け方、治療法と予防策、自然に治る場合と受診が必要なサインまで、できるだけわかりやすく整理して解説します。誰にも相談できず悩んでいる方が、「自分はどのタイプに当てはまりそうか」「いつどこで誰に相談すべきか」を具体的にイメージできることを目指しています。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。厚生労働省や日本の専門学会、世界保健機関(WHO)などが公開する信頼できる情報と、査読付き論文をもとに、日常生活で活用しやすい知識として整理することを目指しています。
本記事では、尋常性疣贅に関する日本皮膚科学会の診療ガイドラインや、国内外の公的機関・医療機関の情報、システマティックレビューなどのエビデンスを中心に参照しました12345678。AIツールは文献整理や構成案作成のアシスタントとして活用し、最終的な内容の確認・編集はJHO編集部が一次情報を照合しながら行っています。
- 厚生労働省・公的研究機関:性感染症(尖圭コンジローマなど)やHPVに関する解説・統計資料など7。
- 日本の専門学会・国内医療機関:日本皮膚科学会「尋常性疣贅診療ガイドライン2019」に基づく治療の推奨度や、皮膚科専門医による解説記事16。
- 海外の公的機関・査読付き文献:アメリカ皮膚科学会(AAD)、Mayo Clinic、Cleveland Clinic、Better Health Channel、NCBI Bookshelf などによる疾患解説や治療選択肢のレビュー2345。
本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、これらの一次情報源に基づいて作成していますが、個々の症状に対する診断や治療方針の決定を代替するものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断で治療を変える前に、必ず医師などの医療専門職にご相談ください。
要点まとめ
- 一般的ないぼ(尋常性疣贅)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染が原因の良性の皮膚病変で、多くは手足にみられます12。
- いぼには、手足にできる尋常性疣贅や足裏の足底疣贅、顔や四肢に多い扁平疣贅、爪のまわりにできる爪囲疣贅、性器にできる尖圭コンジローマなど、いくつかのタイプがあります23。
- 多くのいぼは数か月〜数年かけて自然に消えることがありますが、その間に数が増えたり、他人にうつったりすることもあるため、症状や生活への影響によっては皮膚科受診が推奨されます13。
- 治療の基本は、サリチル酸外用薬による角質溶解や、液体窒素による冷凍凝固療法で、日本皮膚科学会のガイドラインでも第一選択として位置づけられています14。
- 性器にできるいぼ(尖圭コンジローマ)は、性感染症であり、一部のHPV型は子宮頸がんや肛門がんなどのリスクと関連するため、早めの受診とパートナーも含めた適切な対応が重要です78。
- 予防には、いぼをいじらない・削らない、皮膚の小さな傷を放置しない、プールや浴場でのスリッパ使用、タオルや爪切りの共用を避けることなどが役立ちます123。
- 痛み・出血・急な増加・顔や性器、爪の変形を伴う場合などは、自己処理にこだわらず、早めに皮膚科や適切な診療科を受診することが勧められます137。
「これは本当にいぼなのか、ほかの病気ではないのか」「放っておいても自然に消えるのか、それとも治療した方がよいのか」「家族や子どもにうつらないか心配」という不安は、多くの方が抱えるものです。
この記事では、まず日常生活の中で影響しやすい要因やセルフケアのポイントを整理したうえで、栄養・免疫・ホルモンなど体の内部要因、さらに専門的な診断や治療が必要になる病気について、段階的に理解できるよう構成しています。
いぼができている部位や数、痛み・出血の有無、性器のいぼや免疫力の低下など、心配のポイントは人それぞれ異なります。自分の状態に近い部分を探しながら読み進めることで、「今すぐできること」と「医療機関に相談した方がよいタイミング」の両方が見えてくるはずです。
必要に応じて、JHO内の総合ガイドや関連する詳しい解説記事へのリンクも活用しながら、ご自身やご家族の健康管理に役立ててください。
第1部:いぼとは?基本と日常生活の見直し
まずは、一般的ないぼとはどのようなものか、どんな仕組みでできるのか、日常生活で悪化させてしまう要因は何かを整理します。「専門的な病気かもしれない」と不安になる前に、身近なポイントを押さえておくことで、自分の状態を客観的に振り返りやすくなります。
1.1. いぼ(尋常性疣贅)の基本的なメカニズム
一般に「いぼ」と呼ばれるものの多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが皮膚の表面の小さな傷から入り込み、表皮の細胞に感染することで生じます12。HPVには100種類以上の型があり、そのうち手や足にできる尋常性疣贅では2型、27型、57型などが主な原因とされています1。
ウイルスに感染した表皮細胞は、角質(皮膚の一番外側の層)を過剰につくり出すようになり、小さな硬い盛り上がりとして見えるようになります。これがいぼです。基本的には良性で、がんになることは極めてまれですが、ウイルスが存在しているため、同じ人の別の部位や周囲の人へうつることがあります13。
感染は、いぼに直接触れることで起こるほか、ウイルスがついたタオルやスリッパ、床面を介して起こる「間接的な接触感染」もあります12。皮膚に小さなキズやささくれがあると、そこからウイルスが入り込みやすくなります。
1.2. 悪化させてしまうNG習慣と身近なリスク
いぼそのものは小さくても、「いじる」「削る」「つぶす」といった行為を繰り返すことで、ウイルスが周囲に広がり、いぼの数が増えてしまうことがあります123。特に気をつけたいNG習慣として、次のようなものが挙げられます。
- いぼを爪でひっかく・むしる:出血や炎症のリスクがあるだけでなく、爪の先についたウイルスが別の部位に運ばれ、いぼが増える原因になります。
- いぼのある部位をカミソリで剃る:カミソリの刃でウイルスが周囲の皮膚にこすりつけられ、同じライン上にいぼが増えてしまうことがあります。
- 靴や靴下のムレを放置する:足底疣贅(足の裏のいぼ)の場合、長時間のムレや摩擦で皮膚バリアが弱まり、ウイルスに感染しやすくなります。
- プールや温泉で裸足のまま歩く:多くの人が利用する場所では、床にHPVが存在していることがあり、足底疣贅のリスクになります23。
- タオルや爪切りの共用:家族内で何気なく共用しているアイテムからウイルスが広がることがあります23。
こうした習慣はつい無意識に行ってしまいがちですが、「いぼは触らない・削らない・共用しない」という基本を意識するだけでも、悪化や再発のリスクを下げることができます。
| 症状・状況 | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 手の甲や指に、表面がザラザラとした小さな盛り上がりがいくつもある | 尋常性疣贅(手足のいぼ)、爪噛み・ささくれ・乾燥による皮膚バリア低下 |
| 足の裏に、押すと痛む硬いしこりがあり、黒い点のようなものが見える | 足底疣贅(足裏のいぼ)、プールや浴場・スポーツ施設の床からの感染 |
| 顔や手の甲に、平らで小さい、肌色〜うす茶色のポツポツがたくさんある | 扁平疣贅(平らないぼ)、思春期や若年者に多いタイプ |
| 性器・肛門まわりにカリフラワー状のブツブツがあり、数が増えてきた | 尖圭コンジローマ(性感染症の一種)、HPVハイリスク型との関連に注意78 |
第2部:身体の内部要因 — 免疫・栄養・ホルモンバランス
いぼはウイルス感染によって起こりますが、その背景には「ウイルスへの防御力(免疫力)」や「皮膚のバリア機能」の状態も関わっています。同じ環境にいてもいぼができやすい人と、ほとんどできない人がいるのは、こうした内部要因の影響も大きいと考えられています123。
2.1. 免疫力といぼの関係
体の免疫システムは、ウイルスを排除する重要な役割を担っています。免疫がしっかり働いていれば、HPVに感染しても症状が出ないまま自然に抑え込まれることもあります。一方で、次のような状態ではいぼができやすく、また治りにくくなることが知られています23。
- 風邪や疲労が続いている、睡眠不足が続いている
- 強いストレスを抱え、食事が偏っている・食欲が落ちている
- 糖尿病などの慢性疾患があり、免疫機能が低下している
- 臓器移植や自己免疫疾患などで、免疫抑制薬を使用している
- HIV感染症など、免疫システムに影響する病気がある
特に免疫抑制薬を使用している方や、HIV感染症などで免疫機能が低下している方では、いぼが多発・難治化しやすいことが報告されており、自己判断での市販薬使用だけでなく、担当医と相談したうえで皮膚科の専門的な治療を受けることが重要です24。
2.2. 栄養状態と皮膚バリア
皮膚のバリア機能は、「角質・皮脂・保湿成分」がバランスよく保たれることで成り立っています。ビタミンA・C・E、亜鉛などの微量栄養素は、皮膚や粘膜の健康と免疫機能に関わる栄養素として知られており、極端に不足すると皮膚トラブルや感染症にかかりやすくなる可能性があります35。
もちろん、これらの栄養素を「サプリメントさえ飲めばいぼが治る」という意味ではありませんが、偏ったダイエットや不規則な生活で栄養バランスが大きく崩れている場合は、いぼの治りにくさにも影響する可能性があります。基本は、主食・主菜・副菜をそろえた食事を心がけ、必要に応じて管理栄養士や医療機関で相談することが大切です。
2.3. ライフステージとホルモンバランス(特に女性)
思春期や妊娠中、更年期など、ホルモンバランスが大きく変化する時期は、皮膚の状態も不安定になりがちです。扁平疣贅は、顔や手の甲などに多発しやすく、特に若年者や女性に多いタイプとして知られています23。妊娠中は免疫機能が一時的に変化するため、いぼが目立つようになることもありますが、多くは出産後に自然に減っていくケースも報告されています3。
ただし、性器まわりのいぼ(尖圭コンジローマ)の場合は、妊娠や分娩への影響、パートナーへの感染リスクなど、より慎重な対応が必要となります78。この場合は自己判断で様子を見るのではなく、婦人科や泌尿器科、性感染症外来などで早めに相談することが重要です。
第3部:代表的ないぼの種類と見分け方 — 受診が必要な疾患
一口に「いぼ」といっても、その種類やできる部位、原因となるHPVの型によって特徴やリスクは異なります。ここでは代表的なタイプと、専門的な診断・治療が必要になるケースを整理します。
3.1. 尋常性疣贅(一般的ないぼ)
尋常性疣贅は、もっともよくみられるいぼのタイプで、主に手の甲・指・足の指などに生じます12。表面がザラザラとしていてやや硬く、丸い・半球状の小さな盛り上がりが単発または多発します。子どもから大人まで幅広い年代にみられ、特に子どもでは自然に消えることも少なくありません13。
見た目が似ているものとして、魚の目やタコがありますが、魚の目は中心に芯があり、圧迫すると中心が特に痛くなるのに対し、いぼは押したときに広い範囲が痛んだり、表面に黒い点(毛細血管の血栓)がみられたりすることがあります23。
3.2. 足底疣贅(足裏のいぼ)
足底疣贅は、足の裏、特に体重がかかりやすいかかとや母趾球(親指のつけ根)にできるいぼです12。歩くたびに強い圧力がかかるため、いぼが外に盛り上がるのではなく、押し込まれるように「皮膚の中にめり込んだ状態」になり、硬いタコのように見えることがあります。
歩行時や立っているときに痛みを感じることが多く、スポーツをしている方や長時間立ち仕事をしている方にとっては大きな負担になります。自己処理として市販のスピール膏などを使う方もいますが、正常な皮膚まで一緒に溶かしてしまい、かえって痛みや感染リスクを高める場合もあるため注意が必要です24。
3.3. 扁平疣贅(平らないぼ)
扁平疣贅は、顔・額・頬・手の甲・前腕などにできる、平たくて小さいいぼです23。色は肌色〜薄い茶色で、直径1〜3mm程度の目立たないものが多数現れることが多く、「なんだか肌がザラザラしてきた」「ニキビだと思って触っていたら増えた」という形で気づかれることもあります。
特に10代〜20代の若年層や女性に多く見られ、顔に多発することで心理的な負担が大きくなることがあります。カミソリやタオルでこすることで線状にいぼが増えることがあり、自己処理は控えた方がよいタイプです2。
3.4. 爪囲疣贅(爪のまわりのいぼ)
爪の周囲や爪の下にできるいぼは「爪囲疣贅」と呼ばれ、爪噛みやささくれをいじる癖がある方に多く見られます23。爪の形が変形したり、割れやすくなったりすることがあり、見た目だけでなく機能的にも影響が出ることがあります。
爪の下にできたいぼを自分で削ったり、針などでほじったりすると、強い痛みや出血、細菌感染のリスクが高まるため、自己処理は避け、皮膚科での専門的な治療が必要です24。
3.5. 尖圭コンジローマ(性器周囲のいぼ)
性器や肛門のまわりに、カリフラワーのように盛り上がったいぼが多発する場合は、「尖圭コンジローマ」の可能性があります7。これは性行為などによって感染するHPVによる性感染症であり、手足のいぼとは区別されます。見た目は良性のいぼに見えても、一部のHPV型は子宮頸がんや肛門がんなどのリスクと関連していることが知られており、注意が必要です78。
性器まわりのいぼについては、市販薬での自己治療やカミソリでの除去は絶対に避け、必ず婦人科・泌尿器科・性感染症外来などで診察を受けてください。パートナーへの感染対策や、HPVワクチンを含めた長期的な予防についても、医療機関で相談することが勧められます78。
第4部:今日から始める改善アクションプラン
いぼの対策は、「今すぐ自分でできること」と「医療機関で相談した方がよい治療」をうまく組み合わせることがポイントです。ここでは、レベル別に具体的なアクションプランを整理します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今日からできるセルフケア | いぼをいじらない・削らない・共用しない | いぼを爪でむしらない/カミソリを当てない/タオル・爪切り・カミソリを家族と共用しない |
| Level 1:皮膚バリアと清潔の見直し | 手足の保湿と小さな傷のケア | 手洗い後はハンドクリームで保湿する/ささくれは引きちぎらずに清潔な爪切りで整える |
| Level 2:市販薬を使う場合のポイント | サリチル酸外用薬の適切な使用 | 手足のいぼで、医師から使用を許可された場合のみ、説明書に従って限定的に使用する(顔・性器には使用しない)24 |
| Level 2:生活習慣と免疫のサポート | 睡眠・食事・ストレスケア | 睡眠時間を確保する/過度なダイエットを避け、バランスのよい食事を心がける/ストレスが強い場合は相談できる相手や窓口を確保する |
| Level 3:医療機関での治療 | 液体窒素療法・外用療法・その他の専門治療 | 皮膚科での液体窒素(冷凍凝固)による治療、場合によっては他の外用薬やレーザー治療などを組み合わせる146 |
| Level 3:性感染症としての対応 | 性器いぼの専門診療とパートナーへの説明 | 尖圭コンジローマが疑われる場合は、婦人科・泌尿器科・性感染症外来を受診し、パートナーと一緒に検査や治療方針を相談する78 |
4.1. サリチル酸外用薬を使うときの注意点
サリチル酸は、厚くなった角質をやわらかくし、少しずつ溶かしていく作用を持つ成分で、多くの市販の「いぼ取り用」外用薬に含まれています24。日本皮膚科学会のガイドラインでも、尋常性疣贅に対する治療選択肢の一つとして位置づけられています1。
ただし、正常な皮膚にも作用してしまうため、広い範囲に塗ったり、使用部位を誤ったりすると、ただれや痛みを引き起こすことがあります。特に次の点に注意が必要です。
- 顔・首・性器など、皮膚が薄い部位には使用しない(市販薬の用法・用量を必ず確認する)。
- 糖尿病や末梢循環障害がある方、足の感覚が鈍くなっている方は、足底のいぼを自己処理しない4。
- 赤み・強い痛み・水疱などが出た場合は使用を中止し、皮膚科を受診する。
- 治療には数週間〜数か月かかることが多く、「焦って削りすぎない」ことが大切。
4.2. 液体窒素による冷凍凝固療法
皮膚科で最も一般的に行われているいぼ治療が、液体窒素を用いた冷凍凝固療法です126。綿棒やスプレーを用いて、−196℃の液体窒素をいぼに数十秒間あてることで、いぼの細胞を凍らせて壊し、体の自然な修復機能によりいぼを脱落させます。
治療中は「チクッ」とした痛みや、治療後数日間のヒリヒリ感、軽い水疱などが生じることがありますが、多くの場合は数日〜1週間程度でおさまります。1回で完全に消えることもあれば、2〜3週間ごとに複数回通院が必要になることもあります24。
冷凍凝固療法は、日本皮膚科学会のガイドラインでも第一選択となる治療法として推奨されており、多くの医療機関で保険診療の範囲内で行われています16。
4.3. その他の専門的治療
難治性のいぼや、数が多い・広範囲に広がっている場合などには、以下のような治療が検討されることがあります146。
- 外用免疫賦活薬(イミキモドクリームなど):免疫反応を高めていぼを攻撃する治療。特に尖圭コンジローマに対して使用されます7。
- カンタリジンなどの水疱形成剤:海外では小児のいぼに用いられることがありますが、日本では使用状況が限られます4。
- レーザー治療や電気焼灼:局所麻酔下でいぼを焼灼して除去する方法。瘢痕のリスクとのバランスを見ながら選択されます24。
- 手術的切除:特に爪の下など、一部の部位では外科的な切除が選ばれることもあります。
どの治療も「必ず一度で完全に治る」わけではなく、いくつかの方法を組み合わせながら時間をかけて治療していくことが多いとされています14。生活や仕事、痛みへの耐性なども含めて、担当医と相談しながら自分に合った方法を選びましょう。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
「いぼくらいで受診してよいのだろうか」「忙しくてなかなか時間がとれない」と迷っているうちに、いぼが増えてしまうケースは少なくありません。ここでは、受診の目安や診療科の選び方、診察時に役立つポイントを整理します。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 急に大きくなってきた、短期間で数がどんどん増えている。
- 強い痛み・出血・膿(うみ)を伴う、周囲が赤く腫れている。
- 色が黒く変化してきた、形がいびつで左右差が強い(悪性腫瘍との鑑別が必要なことがあります)。
- 顔・目のまわり・唇・性器・肛門周囲にいぼ状の病変がある。
- 爪の形が変わってきた、爪の下に黒褐色の筋ができている。
- 糖尿病や免疫抑制状態があり、足の裏にいぼができている(自分で削ると傷や感染のリスクが高くなります)4。
- 市販薬を数週間〜数か月使用しても改善がみられない、かえって悪化している。
こうしたサインがある場合は、自己判断で様子を見続けるよりも、早めに皮膚科などの医療機関を受診することで、重症化や長期化を防げる可能性があります。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 手足・顔・体幹のいぼ:まずは皮膚科が一般的な窓口です。
- 性器・肛門周囲のいぼ:婦人科、泌尿器科、性感染症外来、皮膚科など。地域によって対応科が異なるため、事前に医療機関のホームページなどで「尖圭コンジローマ」「性感染症」への対応状況を確認すると安心です7。
- 免疫抑制薬を使用している、重大な持病がある:かかりつけ医と連携しながら皮膚科で治療するケースが多くなります。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- いつから・どこに・どのようないぼができているかを書き留めたメモや写真。
- これまでに試した市販薬・処置の内容(塗布期間・症状の変化)。
- 現在服用中の薬や、過去の病歴がわかるお薬手帳。
- 保険証や医療証(日本の公的医療保険が適用される場合、液体窒素療法など多くの治療が3割負担で受けられます)。
費用は医療機関や治療内容によって異なりますが、一般的ないぼの冷凍凝固療法であれば、初診料・再診料を含めて数千円台から始まることが多いと報告されています23。心配な場合は、あらかじめ医療機関に電話で目安を確認しておくと安心です。
よくある質問
Q1: いぼは自然に治ることがありますか?
A1: 手足にできる尋常性疣贅や扁平疣贅は、免疫の働きによって数か月〜数年のうちに自然に消えることもあります13。特に子どもでは自然消失が比較的多いとされています。ただし、その間にいぼが増えたり、家族にうつったりすることもあり、完全に放置するかどうかは生活への影響や部位によって判断が必要です。
痛みが強い、数が増えて困っている、顔や爪・性器にあるなどの場合は、「そのうち治るだろう」と我慢しすぎず、皮膚科などで相談することをおすすめします。
Q2: 自分でいぼを切ったり、針でつついたりしても大丈夫ですか?
A2: 自己処理でいぼを切ったり、針やピンセットでほじったりすることはおすすめできません。出血や細菌感染のリスクが高まるだけでなく、ウイルスが周囲の皮膚に広がって、いぼが増えてしまう可能性があります123。
特に、足の裏・爪の下・顔・性器まわりのいぼは、構造が複雑で重要な組織が多いため、自己処理による深い傷や神経の損傷のリスクもあります。気になる場合は、自己処置を中止し、皮膚科や適切な診療科を受診してください。
Q3: 市販のいぼ取り薬は使ってもよいのでしょうか?
A3: 手足の一般的ないぼに対しては、サリチル酸などを含む市販薬が有効な場合もあります24。ただし、顔や首、性器まわり、爪の下など、皮膚が薄い・デリケートな部位には使用できない製品が多く、誤った使い方をするとやけどのような状態になってしまうことがあります。
使用前には必ず添付文書をよく読み、「適応部位」「使用期間」「中止すべき症状」を確認しましょう。不安がある場合や、数週間使っても変化がない場合は、皮膚科で相談することをおすすめします。
Q4: 足の裏のいぼと「魚の目」の見分け方はありますか?
A4: 足底疣贅(足裏のいぼ)と魚の目は見た目が似ていることがありますが、いくつかの違いがあります23。魚の目は、中心に硬い芯があり、そこをピンポイントで押すと強い痛みを感じることが多いです。一方、いぼは周囲も含めて押したときに広い範囲が痛んだり、表面に黒い点が散らばって見えたりすることがあります。
ただし、見た目だけで確実に区別するのは難しい場合も多く、自己判断でスピール膏などを使用すると、いぼだった場合に悪化させてしまうこともあります。痛みが続く・歩きにくいなどの場合は、皮膚科で診断を受けると安心です。
Q5: 性器まわりにいぼのようなものがあります。恥ずかしくて受診しづらいのですが、どうしたらよいでしょうか?
A5: 性器や肛門まわりのいぼは、尖圭コンジローマなどの性感染症である可能性があります7。性行為によってパートナーにうつることがあるほか、一部のHPV型は子宮頸がんや肛門がんなどのリスクとも関連しているため、自己処理で隠したり、市販薬で対処しようとするのは避けた方が安全です78。
恥ずかしさから受診をためらう方は多いですが、医療従事者にとってはよくある相談の一つです。婦人科・泌尿器科・性感染症外来・皮膚科など、対応している診療科は複数ありますので、通いやすい医療機関を選んで早めに相談することをおすすめします。パートナーと一緒に受診・相談することも有効です。
Q6: 子どものいぼは、どのタイミングで皮膚科に連れて行くべきですか?
A6: 子どものいぼは自然に消えることもありますが、数が増えてきた場合や、痛み・かゆみ・出血がある場合、顔・爪・性器にできている場合は、早めに皮膚科を受診することが勧められます13。学校や習い事で裸足になる機会が多い場合は、ほかの子どもへの感染予防の観点からも診察を受けておくと安心です。
小児では治療の痛みに対する不安や恐怖も大きいため、治療方法や回数について、保護者も含めて医師とよく相談し、無理のないペースで行うことが大切です。
Q7: いぼががんになることはありますか?
A7: 手足や顔にできる一般的ないぼ(尋常性疣贅)は、通常は良性であり、そのままがんになることはほとんどありません12。ただし、「いぼだと思っていたものが、実は皮膚がんや別の腫瘍だった」というケースも報告されています。
次のような特徴がある場合は、悪性の可能性も含めて皮膚科で精密な診断(ダーモスコピー検査や必要に応じた組織検査など)を受けることが重要です。
- 色が不均一(黒・茶・赤などが混在)で、境界がギザギザしている。
- 急速に大きくなってきた、周囲の皮膚と明らかに違う質感になっている。
- 長期間かさぶたが取れない、治っては再発を繰り返す。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
いぼ(尋常性疣贅)は、多くの場合は良性のウイルス性皮膚疾患であり、命に関わることはほとんどありません。それでも、見た目のつらさや「人にうつさないか」という不安、痛みや日常生活への支障など、生活の質に大きな影響を与えることがあります。
大切なのは、「いじらない・削らない・共用しない」という基本を押さえたうえで、部位や症状に応じてセルフケアと医療機関での治療を上手に使い分けることです。特に、性器まわり・爪・顔・足の裏のいぼ、急に大きくなってきた病変、免疫力が低下している方のいぼなどは、自己判断に頼らず、早めに専門家へ相談することが安全につながります。
あなたのいぼがどのタイプにあてはまりそうかを知ることは、必要以上に怖がらず、かといって軽視しすぎないための第一歩です。本記事が、ご自身やご家族の健康について考える際の手がかりとなり、「一人で悩まずに相談してもいいのだ」と感じていただければ幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、厚生労働省、日本皮膚科学会、世界保健機関(WHO)などが公開する資料や、国内外の医療機関・研究機関による一次情報を中心に参照しました12345678。
原稿作成にあたっては、最新のAIツールを活用して関連文献の収集や構成案の作成を行い、その後、JHO編集部が原著資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断と更新の責任は、すべてJHO編集部が負っています。
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参考文献
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