心血管疾患

【乳児血管腫(いちご状血管腫)】自然に消える?治療が必要なケースと最新のケアをやさしく解説

生まれたばかりの赤ちゃんの肌に、突然あらわれた赤い盛り上がり――。最初は「虫刺されかな?」と思ったのに、数週間でどんどん大きくなり、家族や周りの人からも「どうしたの?」と聞かれるようになって、不安が強くなっていく……。そんな経験をしているご家族も少なくありません。

このような赤いあざの代表例が、乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ、いちご状血管腫)です。多くは良性の血管のこぶで、時間とともに自然に小さくなっていく一方で、目・口・気道の近くなどにできると、視力や呼吸、食事に影響することもあります。また、大きく目立つ場所にできると、将来の見た目やいじめ・からかいへの不安、保護者のメンタルヘルスにも関わってきます。

日本で作成された「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017」や、米国小児科学会(American Academy of Pediatrics: AAP)の乳児血管腫診療ガイドライン、さらに2021年の総説論文やStatPearlsの解説記事でも、乳児血管腫は「多くは自然経過で良くなるが、一部は早期治療が必要な病気」として位置づけられています1234

本記事では、Japanese Health(JHO)編集部が、日本および海外のガイドライン・論文・専門家解説をもとに、乳児血管腫の基本から、自然経過と後遺症の可能性、治療が必要になるケース、プロプラノロール(β遮断薬)やレーザー治療などの最新の選択肢、そして日常生活でのケアや親御さんの不安への向き合い方まで、できるだけやさしく、ていねいに解説します。

「うちの子は放っておいても大丈夫?」「いつまでに消えるの?」「薬の副作用が心配」「どの診療科にかかればいい?」といった疑問にも、一つずつお答えしていきます。記事の最後まで読むことで、乳児血管腫との向き合い方と、今できる次の一歩がイメージしやすくなるはずです。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。乳児血管腫のように専門的なテーマについても、厚生労働省や日本の専門学会、海外のガイドラインや査読付き論文などの信頼できる情報を整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、以下の一次情報源に基づいて、JHO編集部が生成AIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 日本の公的機関・研究班:厚生労働省研究班による「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017」など、日本人を対象とした公式の診療指針や解説を参照しています1
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:米国小児科学会(AAP)の乳児血管腫ガイドライン、Curr Pediatr RevやPlast Reconstr Surg、NEJM、Medicine(Baltimore)などの総説・ランダム化比較試験・メタアナリシスをもとに、治療の有効性と安全性を整理しています23891011
  • 日本皮膚科学会や日本レーザー医学会などの情報:日本皮膚科学会Q&A、レーザー医学会誌の総説・後遺症に関する報告、PMDAによるヘマンジオル(プロプラノロールシロップ)の審査報告書などを参照し、日本の医療現場での実情も踏まえて解説しています567814

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

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要点まとめ

  • 乳児血管腫(いちご状血管腫)は、乳児期にみられる良性の血管のこぶで、多くは生後数週間〜数か月で現れ、1歳前後まで急に大きくなった後、数年かけてゆっくり小さくなっていきます2314
  • 日本や海外の研究では、乳児血管腫は女児、早産児、低出生体重児に多く、日本人ではおおよそ0.8〜1.7%程度にみられると報告されています35
  • 多くの乳児血管腫は自然に目立たなくなりますが、目や口、気道、耳、肝臓などにできた場合や、急速に大きくなる・潰瘍でただれる場合などは、視力や呼吸、食事に影響するため、早めの専門的な治療が推奨されています124
  • β遮断薬プロプラノロール(内服)は、国際的にも日本でも乳児血管腫の標準的な治療として位置づけられており、ランダム化比較試験やメタアナリシスで高い有効性と許容できる安全性が示されています891011
  • 日常生活では、こすれや乾燥を避けるスキンケア、写真での経過記録、定期的な診察のほか、保育園・幼稚園・学校への伝え方や、親御さん自身の不安やストレスにどう向き合うかも大切なポイントです613

第1部:乳児血管腫(いちご状血管腫)の基礎知識

まずは「乳児血管腫とは何か」をしっかり理解することが大切です。名前は難しく聞こえますが、イメージとしては「赤ちゃんの皮膚の中にできた、血管が集まってできた柔らかいコブ」のようなものです。多くの場合は良性で、時間とともに小さくなっていきますが、一部では治療が必要になります2314

1.1. 乳児血管腫の仕組みと自然経過 ― 「できて、大きくなって、小さくなる」

乳児血管腫は、赤ちゃんの皮膚や皮下にある毛細血管の内側をつくる細胞(血管内皮細胞)が、一時的に増えすぎてしまうことでできる良性の腫瘍です。病理学的にはグルコース輸送体GLUT-1というタンパク質が強く発現しており、胎盤の血管とよく似た性質をもつことがわかっています3

多くの乳児血管腫には、次のような三つの時期があります2314

  • ① 出現期(生後数日〜数週間):生まれたときには目立たず、生後2〜3週間ごろから、皮膚に小さな赤い点や薄い赤みとして現れることがよくあります。ご家族が「最近、ほくろのような赤い点が出てきた」と気づくのはこの時期です。
  • ② 増殖期(おおよそ生後1〜6か月):赤い点が数週間〜数か月かけて、いちごのように盛り上がった赤いコブになっていきます。研究によると、最も速く大きくなるのは生後1〜3か月ごろで、生後5か月までに最終的な大きさの約80%に達することが多いとされています27
  • ③ 退縮期(1歳以降〜学童期):1歳を過ぎるころから少しずつ色が薄くなり、表面がやわらかく、しぼんだような印象になっていきます。5歳ごろまでに約半数、7歳ごろまでに約7割の乳児血管腫がかなり目立たなくなる、という報告があります214

ただし、「目立たなくなる」といっても、もとの皮膚とまったく同じ状態に戻るとは限りません。あとで詳しく述べますが、たるみ、白っぽい瘢痕(はんこん)、表面の毛細血管の広がり(赤い点々)などが残ることもあります6

日本皮膚科学会のQ&Aでも、「多くの場合は自然と目立たなくなるが、場所や大きさによっては早期に治療したほうがよい」と説明されています14。そのため、「いつか消えるから大丈夫」と一律に考えるのではなく、「自分の子どもの血管腫はどのタイプか」を知ることが大切です。

1.2. 乳児血管腫のタイプ ― 表在型・深在型・混合型と部位

乳児血管腫は、見た目やできている深さによって、いくつかのタイプに分けられます。日本や海外のガイドラインでは、国際血管異常学会(ISSVA)の分類に基づき、乳児血管腫を「腫瘍(tumor)」として、血管奇形(vascular malformation)などと区別して扱っています124

  • 表在型(ひょうざいがた):皮膚の表面近くにできるタイプで、鮮やかな赤色をしており、いちごのようにプクッと盛り上がって見えます。顔や頭、首、体幹の表面などに多く、写真で「いちご状血管腫」と検索すると、典型的な見た目がイメージしやすいでしょう。
  • 深在型(しんざいがた):皮膚の少し深いところに広がるタイプで、皮膚の表面は青みがかったり、少しふくらんで見えたりしますが、鮮やかな赤ではないことも多いです。そのため、「あざではなく、単なるふくらみかな?」と見過ごされることがあります。
  • 混合型:表在型と深在型が組み合わさったタイプで、表面に赤い部分があり、その下に青っぽく広がるしこりが触れることがあります。比較的大きな乳児血管腫に多いタイプです。

できる場所は顔、頭、首、体幹、四肢などさまざまですが、特に目のまわり(まぶた)、鼻、口唇、耳、首、肛門や性器まわり、肝臓内などにできた場合は、機能への影響が問題となります245。こうした部位にある場合は、小さく見えても早めの専門医受診が勧められます。

1.3. 悪化させてしまうNGケアと、安心してできるスキンケア

乳児血管腫は「こすると悪くなる」「触ってはいけない」と思い込み、必要以上に触れないようにしている方もいます。一方で、強くこすったり、自己判断で市販の塗り薬を使ってしまい、かえってただれや出血を起こしてしまうケースもあります。ここでは、避けたいNGケアと、安心してできるケアを整理します5614

  • 強くこする・こすれる環境を放置するのはNG:ガーゼやタオルでゴシゴシこすったり、きつい服・スタイで繰り返しこすれると、表面がただれたり出血しやすくなります。特に首まわりやおむつのあたる部分は注意が必要です。
  • 自己判断でステロイド外用薬や民間薬を使うのはNG:顔の赤み用のステロイド軟膏、保湿クリーム、ハーブ系のクリームなどを自己判断で血管腫に塗ってしまうと、皮膚が薄くなったり、かぶれたりすることがあります。治療目的のレーザーや外用β遮断薬(チモロールなど)は、必ず専門家の指示のもとで使用する必要があります12
  • つねに清潔・保湿を心がけるのはOK:弱酸性のベビーソープでやさしく洗い、やわらかいタオルで押さえるように水分をとり、その後、刺激の少ない保湿剤を塗ることは推奨されます。保湿により皮膚バリアを保ち、こすれや乾燥によるトラブルを減らせます。
  • 紫外線から守るのも大切:顔など露出部の血管腫は、日焼けによって周りとの色のコントラストが強く見えることがあります。生後6か月以降で使用可能な日焼け止めや帽子、日陰を利用し、無理のない範囲で紫外線を避けることも有用です。

「何か特別なケアをしなければ」と頑張りすぎる必要はありませんが、「こすれ」「乾燥」「自己判断の薬」だけは避ける、と考えておくと安心です。不安がある場合は、かかりつけ小児科や皮膚科で、日常ケアについても遠慮なく相談してみてください。

表1:乳児血管腫かな?と思ったときのセルフチェック例
こんな様子はありませんか? 考えられる背景・受診のポイント
生後2〜3週間ごろから、赤い点や小さな赤い盛り上がりが出てきている 乳児血管腫の典型的な出現時期・見た目。かかりつけ医で一度相談を。
1〜3か月のあいだに、赤い部分がどんどん大きく・高くなっている 増殖期の可能性が高い。写真で記録しつつ、小児科や皮膚科で今後の方針を確認。
まぶた・鼻・口・耳の近くにあり、目をふさいだり呼吸や授乳に影響していそう 視力や呼吸に関わる「高リスク」部位。早めに専門的な診療を受ける必要があります。
首やおむつのあたる部分がただれて、赤ちゃんが痛そうにしている 潰瘍(かいよう)や感染の可能性。早期に医療機関を受診し、痛みのコントロールや感染対策を。
体のあちこちに赤いあざがたくさんある 多発性乳児血管腫の可能性。まれに肝臓など内臓にも血管腫があることがあり、超音波検査などを検討します。

第2部:なぜ乳児血管腫ができる?原因とリスクが高い赤ちゃん

乳児血管腫ができる正確な理由は、まだ完全には解明されていません。ただし、国内外の研究から、「血管内皮細胞の増え方の異常」「低酸素状態」「胎盤に似た細胞の関与」など、いくつかの仮説が支持されています3。また、どのような赤ちゃんに多いのかという疫学データも集まってきています35

2.1. 乳児血管腫ができやすい赤ちゃんの特徴

日本レーザー医学会による総説や国際的な総説論文では、乳児血管腫は次のような赤ちゃんに多いことが示されています35

  • 女の子に多い:多くの報告で、女児に多く、男児の3〜4倍、報告によっては9倍程度となることもあります。女性ホルモンの影響などが関与している可能性が指摘されていますが、決定的な理由はまだわかっていません。
  • 早産児・低出生体重児:妊娠37週未満で生まれた早産児や、出生体重2,000g未満の赤ちゃんでは、乳児血管腫の頻度が高いと報告されています。ある総説では、早産児で約4.3%、2,000g未満では約12.7%とされています3
  • 多胎妊娠(双子など):双子・三つ子など、多胎で生まれた赤ちゃんに多い傾向があり、胎盤や血流の環境が関わっていると考えられています3
  • 胎盤や妊娠高血圧などのトラブル:一部の研究では、妊娠中の高血圧や胎盤機能の問題など、胎児が相対的に低酸素状態になりやすい条件があると、乳児血管腫のリスクが高まる可能性が示唆されています3

これらはあくまで「統計的にそういう傾向がある」という話であり、「早産だったから必ず血管腫ができる」「女児なら必ずできる」という意味ではありません。また、妊娠中の生活習慣やお母さんの行動が直接の原因になったとする証拠はありません。多くの場合、「親のせい」ではなく、赤ちゃんの体質や胎盤・血管の発達の個性と考えられています3

2.2. 病気の仕組み ― 低酸素・胎盤由来細胞・β受容体の関与

乳児血管腫の病態は複雑ですが、近年の研究では次のような仕組みが提案されています3

  • 低酸素仮説:胎児期や生後まもなく、何らかの理由で皮膚の一部が「少し酸素不足(低酸素)」の状態になると、血管を増やして酸素を届けようとするスイッチが入り、血管内皮細胞が過剰に増えてしまう可能性があります。このとき、HIF-1αという低酸素応答因子や血管内皮増殖因子(VEGF)などが関わると言われています。
  • 胎盤由来細胞仮説:乳児血管腫の細胞が胎盤の血管とよく似たマーカー(GLUT-1など)を持つことから、胎盤由来の細胞が胎児の皮膚に入り込み、出生後に増殖するのではないかという仮説があります。
  • βアドレナリン受容体の関与:乳児血管腫の細胞には、交感神経が使うホルモン(アドレナリンなど)に反応するβ受容体が豊富にあり、これが血管の増殖を促している可能性があります。β遮断薬のプロプラノロールは、この受容体をブロックすることで、血管腫の血流を減らし、VEGFなどの産生を抑えると考えられています38

ただし、これらはあくまで「こうしたメカニズムが関わっていそうだ」というレベルであり、「この原因があるから必ず乳児血管腫になる」というような単純なものではありません。現時点では、「親の生活習慣や育て方が悪かったからできた」というような説明は科学的ではなく、必要以上に自分を責める必要はありません。

2.3. 日本と世界における頻度の違い

乳児血管腫がどれくらいの頻度で見られるのかについても、さまざまな研究があります。国際的な総説では、白人の集団ではおおよそ5〜10%程度に乳児血管腫がみられると報告されています3。一方、日本のレーザー医学会誌などの報告では、日本人では0.8〜1.7%程度と、やや少ないことが示されています5

また、日本の「あざ専門外来」における統計では、受診した「あざ」の子どもの約半数が乳児血管腫であったと報告されており、「赤ちゃんの赤いあざ」の中でも頻度の高い病気であることがわかります5

このように、人種や地域によって頻度が異なる背景には、皮膚の色や血管の発達、遺伝的な要因などが関与していると考えられていますが、はっきりした理由はまだ明らかではありません。

第3部:専門的な診断が必要な乳児血管腫 ― 危険なサインと検査

乳児血管腫の多くは、自然経過を見守るだけで問題ない「低リスク」のタイプです。一方で、場所や大きさ、数によっては、視力や呼吸、食事、将来の見た目に大きな影響が出る「高リスク」の乳児血管腫もあります。ここでは、どんなサインが危険なのか、どのような検査が行われるのかを整理します12415

3.1. すぐに受診したい「危険なサイン」

日本のガイドラインやAAPガイドライン、StatPearlsなどの解説では、次のような乳児血管腫を「専門的な診断・治療が必要な高リスク群」としています124

  • 目のまわり(まぶた・眉・眼窩周囲):瞼が下がって瞳を隠している、角膜が変形しているなどの場合、弱視(視力の発達障害)や乱視の原因になります。視覚の発達は生後数か月〜数年が特に重要なため、放置は禁物です。
  • 鼻・口・あご・首など、気道に近い部位:喉の奥や気道の周りに血管腫があると、呼吸困難や喘鳴(ゼーゼー音)の原因になることがあります。顔や口のまわりに大きな血管腫がある場合、気道内にも病変がある可能性に注意が必要です。
  • 肛門・性器・首まわり・唇など、こすれやすい部位での潰瘍:表面がただれてジュクジュクする潰瘍は、強い痛みや感染、出血の原因になります。赤ちゃんがオムツ替えや抱っこのたびに激しく泣くようなときは、潰瘍の可能性があります。
  • 非常に大きい、または広い範囲を占める血管腫:顔の半分以上、体の一側などに広がる「セグメンタルタイプ」と呼ばれる血管腫は、症候群を伴うことがあり、心臓や大血管、脳、眼の精査が必要になる場合があります。
  • 全身に多発している血管腫:皮膚に5個以上の乳児血管腫がある場合、肝臓など内臓にも血管腫があることがあり、心不全や甲状腺機能低下などのリスクが高まる可能性が指摘されています2

このようなサインがある場合は、「そのうち小さくなるだろう」と自己判断せず、できるだけ早く小児科・皮膚科、必要に応じて形成外科や血管腫・血管奇形専門外来を受診しましょう。なお、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、ぐったりしている、大量出血が止まらないといった緊急の症状がある場合は、ためらわずに119番通報や救急外来の受診を検討してください。

3.2. 診断の流れ ― 問診・視診・超音波・MRI

乳児血管腫の診断は、多くの場合、「いつごろ、どのようにして出てきて、どのくらいの速さで大きくなっているか」という経過と、見た目・触った感じから行われます。生後すぐにはっきりしたしこりとして存在し、その後あまり大きさが変わらない「先天性血管腫」とは経過が異なります24

診察では次のようなことが確認されます。

  • 出現時期:生まれたときにあったか、生後何週目ごろから出てきたか
  • 増え方:何週間・何か月でどのくらい大きくなったか、色や形の変化
  • 症状:痛み、出血、ただれ、視力・呼吸・授乳への影響の有無
  • 数と分布:体のどの部位にいくつあるか
  • 妊娠・出産の経過:早産、低出生体重、多胎妊娠、妊娠高血圧症候群などの有無

典型的な外見と経過であれば、血液検査や生検(組織をとって調べる検査)を行わなくても、乳児血管腫と診断できることがほとんどです。必要に応じて行われる画像検査としては、次のようなものがあります24

  • 超音波検査:皮膚の下の深さや、血流の程度を調べることができます。痛みや被ばくがなく、赤ちゃんにも行いやすい検査です。深在型かどうか、動脈・静脈の流れなどを評価するのに役立ちます。
  • MRI(磁気共鳴画像)検査:顔や気道の深い部分、脳に近い場所、肝臓など内臓の血管腫が疑われる場合に行われます。造影剤を使用すると、血管腫の範囲や周囲の構造との関係がよりわかりやすくなります。

一方で、「血管奇形」や「静脈奇形」「動静脈奇形」と呼ばれる別のタイプの血管異常は、乳児血管腫とは異なり、出生時からはっきり存在し、年齢とともに少しずつ大きくなりますが、乳児期に急に大きくなって小さくなることはありません14。この違いを見極めることは、治療方針を決めるうえで非常に重要です。

3.3. 後遺症として残る可能性 ― 「消える」とはどういうことか

「自然に消える」と言われたものの、「本当に元通りになるの?」という疑問を持つ保護者の方は多いです。日本のレーザー医学会誌の報告では、退縮後の乳児血管腫の部位に、次のような変化が後遺症として残ることがあるとされています6

  • 皮膚のたるみや余った皮膚
  • 白っぽい瘢痕や凹み
  • 赤い点々や線状の毛細血管拡張
  • 脂肪組織の増生によるふくらみ

報告によって割合は異なりますが、程度の差はあれ、何らかの形で後遺症が残るケースは25〜90%と幅広く報告されています6。もちろん、髪の毛で隠れる頭皮や、衣服で隠れる体幹・四肢の小さな病変であれば、実生活でほとんど気にならない場合も多いでしょう。

一方で、顔や首など目立つ部分の大きな血管腫では、自然経過だけに任せると、退縮後に目立つたるみや瘢痕が残り、思春期以降の自己イメージや対人関係に影響することもあります。そのため、見た目への影響が大きいと予測される場合には、早期からプロプラノロールやレーザー治療などを検討することが、日本や海外のガイドラインで推奨されています1256

第4部:乳児血管腫の治療と今日からできるアクションプラン

ここからは、乳児血管腫の主な治療法と、「今できること」「専門家と一緒に考えたいこと」を整理していきます。すべての血管腫に治療が必要なわけではありませんが、「治療したほうがよい場合に、適切なタイミングで選択できること」が大切です125

4.1. 標準治療:プロプラノロール内服療法

プロプラノロールは、もともと心臓病や高血圧の治療に使われていたβ遮断薬(交感神経の働きを弱める薬)です。2008年ごろから乳児血管腫に対する有効性が偶然発見され、その後、欧米や日本を含む多くの国で、乳児血管腫の標準的な治療として使われるようになりました38

2015年には、NEJMに掲載された大規模ランダム化比較試験で、プロプラノロール3mg/kg/日を6か月間投与したグループでは、プラセボに比べて明らかに高い治療成功率(色の改善やサイズの縮小)が示されました8。また、2013年のメタアナリシスでは、従来広く使われてきたステロイド療法と比べて、プロプラノロールのほうが有効率が高く、副作用も比較的軽いことが報告されています9

日本では、2016年にヘマンジオルシロップ(プロプラノロール塩酸塩内用液)が乳児血管腫に対する治療薬として承認され、PMDAの審査報告書でも有効性と安全性がまとめられています8。厚生労働省研究班のガイドラインでは、プロプラノロールは乳児血管腫に対する推奨度1、エビデンスレベルAの治療と位置づけられています1

投与量や期間は個々の症例によって異なりますが、日本の報告では、一般的に次のような方針がとられることが多いとされています578

  • 生後数か月〜1歳前後までの増殖期〜早期退縮期に開始することが多い
  • 最初は少量から始め、数日〜1週間かけて目標量(例:2〜3mg/kg/日)まで増やす
  • 治療期間はおおよそ6か月前後〜1年程度が多いが、病変や反応性により前後する
  • 中止後に再増大がみられる場合は、再度短期間投与することもある

主な副作用としては、脈が遅くなる(徐脈)、血圧が下がる、血糖値の低下、冷え、睡眠の変化などが知られていますが、多くは一過性で、適切なモニタリングのもとで管理可能とされています8。特に低血糖は、授乳間隔があきすぎたときなどに起こりやすいため、「薬を飲んだあと一定時間は授乳をさせる」「下痢や嘔吐で食事がとれないときは医師の指示なく薬を飲ませない」などの注意が重要です。

4.2. その他の薬物・局所療法

プロプラノロール以外にも、状況に応じて次のような治療が検討されることがあります。

  • 外用チモロール:チモロールは点眼薬としても使われるβ遮断薬で、0.5%ゲルなどを皮膚に塗ることで、表在型の小さな乳児血管腫の色や厚みを軽減できることがランダム化比較試験で示されています12。ただし、広い範囲や粘膜に近い部位に塗ると全身に吸収され、副作用が出る可能性があるため、必ず医師の指示のもとで使用します。
  • レーザー治療(パルス色素レーザーなど):主に表在型の赤みや、退縮後に残った毛細血管拡張、瘢痕などの改善を目的に行われます56。急速に増大する増殖期に単独で用いることは限られますが、プロプラノロールとの併用により、色や質感の改善が得られるという報告もあります11
  • ステロイド療法:プロプラノロールが使われる以前は、全身または局所のステロイド療法が標準的な治療でした。現在は、副作用(成長障害、クッシング症候群、免疫抑制など)のリスクを考慮し、プロプラノロールが使えない場合などに限って検討されることが多くなっています910
  • その他のβ遮断薬(アテノロールなど):一部の研究では、アテノロールなどの他のβ遮断薬も乳児血管腫に有効であり、気管支喘息や睡眠への影響が少ない可能性が示されていますが、現時点ではプロプラノロールほどのエビデンスはありません10

4.3. 手術療法 ― いつ頃検討されるのか

手術は、乳児血管腫の増殖期〜退縮期に積極的に行うことは少なく、一般的には自然退縮や薬物療法・レーザー治療などを経たあと、残ったたるみや瘢痕、左右差の改善を目的として検討されることが多いとされています56

日本の報告では、学童期以降(例:小学校入学前後〜思春期)に、本人や家族の希望、機能的な問題(まぶたの重さや口の閉じにくさなど)を踏まえて、形成外科での手術が行われるケースがあります。手術のタイミングは、「どの程度自然に落ち着いたか」「本人がどの程度気にしているか」によって異なります。

4.4. 今日から始める「3段階」のアクションプラン

「今すぐ治療が必要な高リスク」のケースと、「まずは経過観察でよい低リスク」のケースでは、取るべき行動が異なります。ただし、どちらの場合でも、「写真で経過を記録する」「定期的に診察を受ける」「日常のスキンケアや生活を整える」といった共通のアクションがあります。ここでは、今日から始められる行動を3つのレベルで整理します。

表2:乳児血管腫と向き合う改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今日からできること 状態を観察し、記録を残す 毎週同じ距離・角度から写真を撮る、メモアプリに出現時期・変化・気になったことを書き留める、こすれと乾燥を避けるスキンケアを行う。
Level 2:今週〜今月中にしたいこと かかりつけ医・専門医に相談する 小児科や皮膚科を受診し、「いつから」「どのように」変化しているかを写真とともに見せて相談する。高リスクが疑われる場合は、紹介状をもらって専門外来を受診する。
Level 3:中長期的に考えたいこと 治療方針や将来の見た目・心理面を含めた計画を立てる プロプラノロールやレーザー治療の必要性・タイミングを専門医と話し合う。将来残りそうなあとをどう捉えるか、本人が成長したときの気持ちやサポート体制(家族・学校・心理的支援など)も一緒に考える。

第5部:専門家への相談 ― いつ・どこで・どのように?

最後に、「どのタイミングで」「どの診療科に」相談すればよいのか、そして受診時に役立つポイントをまとめます。特に日本では、小児科・皮膚科・形成外科・大学病院の血管腫外来など、複数の窓口があり、どこに行けばよいか迷いやすいといわれています514

5.1. 受診を検討すべき具体的なサイン

  • 生後数週間〜1か月以内に急速に大きくなり、今も勢いよく増大している
  • 目・鼻・口・耳・首などにあり、視界をふさいだり、息苦しさや授乳のしづらさがある
  • 表面がただれてジュクジュクしている、出血を繰り返している、赤ちゃんが触られると強く泣く
  • 体のあちこちに赤いあざが5個以上ある
  • 顔の広い範囲(片側の頬から額にかけてなど)をおおう大きな血管腫がある

これらに当てはまる場合は、できるだけ早く小児科・皮膚科を受診し、必要に応じて形成外科や血管腫・血管奇形の専門外来を紹介してもらうことをおすすめします。紹介状があると、専門外来でもスムーズに診療を受けられることが多いです。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • まず相談しやすいのは小児科:乳児健診や予防接種のタイミングで、「ここに赤いあざがあるのですが」と相談しやすい窓口です。必要に応じて、皮膚科や形成外科への紹介が行われます。
  • 皮膚のトラブルやレーザー治療の相談には皮膚科:皮膚の専門家として、乳児血管腫かどうかの見極めや、レーザー治療の適応などを相談できます。乳児血管腫・血管奇形に詳しい皮膚科では、プロプラノロール治療の経験が豊富な場合もあります。
  • 見た目や機能の再建を含めた相談には形成外科:退縮後のたるみや瘢痕、左右差などが問題になる場合、形成外科で手術やレーザーの組み合わせを相談できます。乳児期からフォローしてくれる施設もあります。
  • 気道や眼への影響が疑われる場合には耳鼻咽喉科・眼科:気道内の血管腫が疑われる場合は耳鼻咽喉科、視力への影響が心配な場合は眼科と連携して診療が行われることもあります。

どの診療科に行くべきか迷う場合は、まずかかりつけ小児科で相談し、「乳児血管腫に詳しい先生がいる病院・クリニック」を一緒に探してもらうのも一つの方法です。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと、費用の目安

  • 経過がわかる写真:スマートフォンで撮影した写真で構いません。出現したころから現在までの変化がわかるよう、できるだけ時系列で見せられると、診断や治療方針の判断に役立ちます。
  • 母子健康手帳・予防接種の記録:出生時の体重や妊娠・出産の経過、早産の有無などはリスク評価に重要な情報です。
  • 現在飲んでいる薬や持病の情報:心臓病や呼吸器疾患、発作の既往などがある場合、プロプラノロールなどの治療選択に影響することがあります。
  • 費用の目安:診察や画像検査、入院を伴うプロプラノロール導入、レーザー治療などは、原則として健康保険の対象になります(日本では原則3割負担)。ただし、医療機関や治療内容によって自己負担額は変わるため、事前に窓口で確認しておくと安心です。

不安や質問は、メモしておいて診察時にまとめて聞くのがおすすめです。「こんなことを聞いていいのかな」と遠慮せず、疑問はその場で解消していきましょう。

よくある質問

Q1: 乳児血管腫は本当に自然に消えるのでしょうか?

A1: 多くの乳児血管腫は、時間とともに自然に小さくなり、色も薄くなっていきます。国際的な報告では、5歳ごろまでに約半数、7歳ごろまでに約7割がかなり目立たなくなるとされています214。ただし、「完全に元の皮膚と同じになる」とは限らず、たるみや瘢痕、赤い点々などが残ることもあります6

顔や首など目立つ場所の大きな病変では、将来の見た目への影響を減らすために、プロプラノロールやレーザー治療を早期に検討することもあります125。主治医とよく相談し、「自然経過で様子を見る」「治療して目立ちにくくする」のバランスを考えることが大切です。

Q2: 「そのうち消えるから大丈夫」と言われました。本当に放置しても問題ありませんか?

A2: 乳児血管腫の中には、放置しても大きな問題にならない低リスクのものもたくさんあります。一方で、目のまわりや気道の近く、大きなセグメンタルタイプ、多発例、潰瘍を起こしているものなどは、早期の専門的な治療が望ましいとされています124

「放置してよいかどうか」は、場所・大きさ・数・増え方・症状によって大きく異なります。少なくとも一度は小児科や皮膚科で評価してもらい、「経過観察でよい」と判断された場合でも、増え方や症状に変化があれば再度相談するようにしましょう。

Q3: プロプラノロールは赤ちゃんにとって安全な薬ですか?

A3: プロプラノロールは、乳児血管腫に対する標準治療として世界中で使用されており、大規模なランダム化比較試験やメタアナリシスでも高い有効性と許容できる安全性が示されています8910。日本でも、ヘマンジオルシロップとして承認され、PMDAの審査報告書で安全性情報がまとめられています8

一方で、どんな薬にも副作用があります。プロプラノロールでは、低血糖、徐脈、血圧低下、冷え、眠気の変化などが知られており、特に低血糖は注意が必要です。そのため、多くの施設では、開始時に入院または外来で数時間モニタリングを行い、投与量を慎重に調整します。

リスクとベネフィットを比較したうえで、「治療のメリット(視力・呼吸・見た目の保護など)」が「薬のリスク」を上回ると判断される場合に選択される薬です。疑問や不安は、治療を担当する医師に率直に伝え、一緒に考えていきましょう。

Q4: いつからプロプラノロール治療を始めるのがよいのでしょうか?

A4: 乳児血管腫が最も速く大きくなるのは、生後1〜3か月ごろで、生後5か月までに最終的なサイズの約80%に達するとされています27。そのため、日本の報告やガイドラインでは、機能や見た目への影響が予想される高リスクの乳児血管腫では、できるだけ早期(生後数か月以内)にプロプラノロールを開始することが推奨されています157

一方で、小さく目立たない低リスクの病変では、あえて薬物治療を行わず、経過観察を選ぶ場合も多いです。治療開始のタイミングは、「病変の特徴」「赤ちゃんの全身状態」「家族の希望」などを総合的に判断して決められます。

Q5: 小さな表面の血管腫でも、レーザー治療を受けたほうがよいですか?

A5: 小さな表在型の乳児血管腫で、機能的な問題がなく、衣服や髪で隠れる部位であれば、レーザー治療を行わずに経過観察とすることがよくあります。一方で、顔の中央や鼻の頭など目立つ部位では、将来の見た目への影響を考えて、早期からレーザーを検討することもあります56

レーザー治療には、痛みへの配慮や場合によっては麻酔の必要性、通院回数、費用なども関わってきます。メリットとデメリットをよく理解したうえで、主治医と相談しながら決めていくことが大切です。

Q6: うちの子は体に赤いあざがたくさんあります。内臓にも血管腫がある可能性はありますか?

A6: 皮膚に5個以上の乳児血管腫がある場合、肝臓など内臓にも血管腫がある可能性があると報告されています2。肝臓に多発する乳児血管腫は、まれに心不全や甲状腺機能低下などを引き起こすことがあり、超音波検査などで内臓の状態を確認することが勧められます。

必ずしも「多発=危険」というわけではありませんが、一度は小児科や専門外来で評価を受け、必要な検査やフォローアップの計画を立ててもらうと安心です。

Q7: 一度小さくなった血管腫が、また大きくなることはありますか?

A7: プロプラノロール治療を終了したあと、しばらくしてから血管腫がわずかに大きくなったり、色が濃くなったりする「再増大」が10〜20%程度にみられると報告されています810。その多くは軽度ですが、気になる場合は再度プロプラノロールを短期間使用することで改善が期待できるとされています。

また、治療をしていない自然経過の乳児血管腫でも、成長とともに周囲の組織とのバランスが変わり、見え方が変わることがあります。不安があれば、かかりつけ医や専門医に相談し、再評価を受けるようにしましょう。

Q8: 将来、子どもが見た目のことでいじめられないか心配です。

A8: 顔など目立つ部位の乳児血管腫では、たとえ機能的な問題がなくても、「将来いじめられないか」「写真を嫌がるようにならないか」といった不安を抱く保護者の方は少なくありません。海外の研究では、乳児血管腫の子どもとその家族は、健康な子どもと比べて生活の質(QOL)が一時的に低下しやすいものの、プロプラノロール治療などによる改善とともにQOLも上がっていくことが報告されています13

見た目の問題は、ときに医学的なリスク以上に本人や家族の心に影響します。「機能的には問題ないから」「命に関わらないから」と言われても、不安が消えないことは自然な感情です。必要であれば、心理カウンセリングやピアサポート(同じ経験をもつ人同士の支え合い)を利用したり、保育園・学校と連携して、いじめを防ぐ環境づくりを考えることも大切です。

Q9: 妊娠中の生活や薬のせいで、乳児血管腫になったのでしょうか?

A9: 現時点で、「妊娠中に特定の食べ物を食べた」「ある薬を飲んだ」ことが乳児血管腫の直接の原因になるとする確かな証拠はありません。早産や低出生体重、多胎妊娠、胎盤機能の異常などがリスク要因として挙げられていますが、これらも必ず血管腫につながるわけではなく、多くは親御さんの努力ではどうにもならない要素です3

「自分のせいかもしれない」と自分を責めてしまう方もいますが、多くの場合、誰にも責任がない「体の仕組み・発達の個性」と考えられています。気持ちが追いつかないときは、医療者や家族、周囲のサポートを借りながら、少しずつ不安を分かち合っていくことが大切です。

Q10: どの診療科にかかればいいのか迷っています。

A10: まず相談しやすいのは、小児科や皮膚科です。乳児健診や予防接種のときに、「ここに赤いあざがあるのですが」と写真を見せながら相談してみてください514。必要に応じて、形成外科や血管腫・血管奇形専門外来への紹介が行われます。

大きな病院や大学病院には、「あざ外来」「血管腫・血管奇形センター」などの専門外来を設けているところもあります。インターネットで病院のウェブサイトを確認したり、かかりつけ医に紹介先を相談するのも良いでしょう。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

乳児血管腫(いちご状血管腫)は、多くの赤ちゃんにみられる良性の血管のこぶであり、多くは時間とともに小さく・目立ちにくくなっていきます。しかし、目や気道の近く、大きく広がるタイプ、多発例、潰瘍を伴うものなど、一部には早期の治療や専門的なフォローが必要なケースもあります124

国際的にも日本でも、プロプラノロール内服療法は乳児血管腫に対する標準治療として位置づけられており、適切なモニタリングのもとで高い有効性と許容できる安全性が示されています8910。レーザー治療や外用薬、手術なども、病変のタイプや時期に応じて選択肢となり得ます561112

何より大切なのは、「一人で抱え込まないこと」です。「そのうち消える」と言われても、目の前で大きくなっていく赤いあざを見続けるのは、大きなストレスになります。気になることがあれば、かかりつけ小児科や皮膚科に相談し、必要に応じて専門外来を紹介してもらいましょう。

この記事が、乳児血管腫と向き合うご家族にとって、「何が起きているのか」「何を大切にして決めていけばよいのか」を考えるための一つの道しるべになれば幸いです。

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Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、乳児血管腫に関する日本の診療ガイドラインや厚生労働省研究班の報告、米国小児科学会(AAP)のガイドライン、国内外の総説・臨床研究などを中心に引用しています12358

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参考文献

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  2. American Academy of Pediatrics. Clinical Practice Guideline for the Management of Infantile Hemangiomas. Pediatrics. 2019;143(1):e20183475. doi:10.1542/peds.2018-3475(最終アクセス日:2025-11-25)

  3. Levy ML, et al. Infantile Hemangioma: An Updated Review. Current Pediatric Reviews. 2021;17(1):xx-xx. doi:10.2174/1573396316666200508100038(最終アクセス日:2025-11-25)

  4. StatPearls Publishing. Hemangioma / Periocular Capillary Infantile Hemangiomas. StatPearls [Internet]. Updated 2023. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/(最終アクセス日:2025-11-25)

  5. 日本レーザー医学会. 乳児血管腫の治療戦略〜クリニックの立場から〜 / Treatment Strategy for Infantile Hemangiomas. 日本レーザー医学会誌. 2021;42(1):3–9 ほか. J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp(最終アクセス日:2025-11-25)

  6. 日本レーザー医学会. 体表における乳児血管腫の後遺症とその対策. 日本レーザー医学会誌. 2023;43(4):32–38. J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp(最終アクセス日:2025-11-25)

  7. 日本レーザー医学会. 乳児血管腫のプロプラノロール治療のタイミング. 日本レーザー医学会誌. 2023;43(4):11–18. J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp(最終アクセス日:2025-11-25)

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  9. Leaute-Labreze C, et al. A Randomized, Controlled Trial of Oral Propranolol in Infantile Hemangioma. New England Journal of Medicine. 2015;372(8):735–746. doi:10.1056/NEJMoa1404710(最終アクセス日:2025-11-25)

  10. Jiao J, et al. Propranolol versus Corticosteroids in the Treatment of Infantile Hemangioma: A Systematic Review and Meta-analysis. Plastic and Reconstructive Surgery. 2013;131(5):1135–1147. PMID:23142941(最終アクセス日:2025-11-25)

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  12. Chan H, et al. Randomized Controlled Trial of Timolol Maleate Gel for Superficial Infantile Hemangiomas. Pediatrics. 2013;131(6):e1739–e1747. https://pediatrics.aappublications.org(最終アクセス日:2025-11-25)

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