【女性の陰部のかゆみ】考えられる原因と検査・治療・セルフケアをやさしく解説
女性の健康

【女性の陰部のかゆみ】考えられる原因と検査・治療・セルフケアをやさしく解説

「かゆくて仕事や家事に集中できない」「病気だったらどうしようと思いながらも、恥ずかしくて誰にも相談できない」——女性の陰部(デリケートゾーン)のかゆみは、からだだけでなく心にも大きな負担をかける症状です。

かゆみの原因はひとつではなく、カンジダ腟炎や細菌性腟症(バクテリアバランスの乱れ)などの感染症だけでなく、ナプキンや下着による接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎や硬化性苔癬(こうかせいたいせん)といった皮膚の病気、更年期以降のGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)による乾燥、糖尿病など全身の病気が背景にあることもあります12

本記事では、日本産科婦人科学会の「産婦人科 診療ガイドライン 婦人科外来編 2023」1、日本性感染症学会のガイドライン2、日本皮膚科学会の瘙痒症ガイドライン3、さらに米国CDCの性感染症治療ガイドライン4やNAMS(North American Menopause Society)のGSMに関する声明5など、国内外の信頼できる一次情報をもとに、女性の陰部のかゆみについてわかりやすく整理します。

「においが気になる」「おりものの色が変わった」「市販薬を使っても良くならない」「妊娠中だけど赤ちゃんへの影響が心配」「更年期だから仕方ないとあきらめている」など、さまざまな不安に寄り添いながら、原因の考え方、セルフチェック、医療機関での検査・治療、日常生活でできるケア、受診の目安までを一つひとつ丁寧に解説していきます。

誰にも相談できず一人で悩んでいる方も少なくありませんが、陰部のかゆみは「がまんするもの」でも「恥ずかしいから隠すべきもの」でもありません。この記事を読み進めながら、ご自身の状態を整理し、「いつ・どこで相談すればよいか」を一緒に考えていきましょう。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、日本産科婦人科学会や日本性感染症学会、日本皮膚科学会などの専門学会が公表しているガイドライン123、厚生労働省や自治体の公式情報67、米国CDCの性感染症治療ガイドライン4、NAMSによるGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の声明5、Cochraneレビューなどの査読付き論文89といった一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:女性の健康手帳や性感染症に関する公式サイトなど、日本人向けの公的情報を優先して参照しています67
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本産科婦人科学会、日本性感染症学会、日本皮膚科学会、WHO、NAMS、Cochraneレビューなど、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています1234589
  • 教育機関・医療機関による一次資料:帯下(おりもの)の診断と治療に関する総説10、侵襲性真菌症・カンジダ症に関する国立感染症研究所の解説11なども参考にしています。

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会の紹介ページをご覧ください。

要点まとめ

  • 女性の陰部のかゆみは、カンジダ腟炎や細菌性腟症などの感染症だけでなく、ナプキンや下着による接触皮膚炎、アレルギー、慢性皮膚疾患、ホルモンバランスの変化(更年期のGSMなど)、糖尿病など全身の病気が関わっていることもあります123
  • 世界的には一生のうち約75%の女性が一度はカンジダ腟炎を経験し、そのうち約5〜8%は年4回以上の再発性外陰腟カンジダ症(RVVC)になると推計されています1012。日本でも同様に、カンジダやBV(細菌性腟症)は婦人科外来でよく見られる疾患です110
  • 「かゆみ」だけでは原因を確実に見分けることはできませんが、おりものの色・量・におい、痛みや出血の有無、発疹や水ぶくれの有無、年齢やライフステージ(妊娠、更年期など)を組み合わせて考えることで、おおよその方向性を知ることはできます14
  • 自宅でできるセルフケアとしては、デリケートゾーンを強く洗いすぎないこと、香り付きの石けんやスプレー、きつい下着やナプキンの長時間使用を避けること、乾燥が気になる場合は専用の保湿剤を使うことなどが挙げられます313
  • 一方で、「強い痛みや水ぶくれ・潰瘍(ただれ)」「腫れと熱感」「悪臭の強いおりもの」「発熱や下腹部痛」「出血を伴う」「子どもの陰部の出血や行動の変化」などは、性感染症や骨盤内炎症、悪性腫瘍、虐待など重い病気のサインの可能性があるため、早めの受診が重要です34
  • 陰部のかゆみが続くと、睡眠不足や集中力低下、仕事や学業への影響、性交痛や性欲低下、パートナーとのコミュニケーションの悪化など、生活の質(QOL)にも大きく影響しますが、適切な診断と治療で改善が期待できるケースが多くあります314
  • 本記事では、「自分でできるチェック」と「市販薬で様子を見て良い場合」「必ず医療機関を受診すべき場合」をわかりやすく整理し、受診先の選び方や診察時に伝えるとよいポイントまで解説します。

第1部:陰部のかゆみの基本と日常生活の見直し

まずは「陰部」「外陰」「腟」といった言葉の違いと、デリケートゾーンの構造・性質を簡単に押さえたうえで、かゆみが起こるメカニズムや、日常生活のなかで悪化させやすいポイントを整理していきます。

1.1. 「陰部」「外陰」「腟」の違いとデリケートゾーンの特徴

日常会話では「陰部」「デリケートゾーン」という言葉がよく使われますが、医学的には少しずつ指す範囲が異なります。外から見える部分(恥丘・大陰唇・小陰唇・陰核・前庭など)をまとめて「外陰」と呼び、その奥にある筋肉に囲まれた管状の空間が「腟」です。一般的な「陰部」は、この外陰と腟を合わせた広い範囲をイメージして使われることが多いと言えます1

外陰部の皮膚や粘膜は、顔や腕とは違って「湿っていて、温度が高く、衣類やナプキンなどで覆われやすい」という特徴があります。汗やおりもの、尿の残りなどがたまりやすく、摩擦も起こりやすいため、少しの刺激でもかゆみや炎症が生じやすい環境です3

一方、腟の中は、健康な状態では乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)という善玉菌が優勢で、pH3.8〜4.5前後のやや酸性に保たれています。乳酸桿菌が乳酸を作り、外から侵入した細菌やカビが増えにくい環境を維持しているのです410

1.2. かゆみが起こるメカニズム(簡単なイメージ)

かゆみは、皮膚や粘膜に分布している知覚神経が、炎症物質や化学物質、温度変化などの刺激を受けて興奮し、その信号が脳に伝わることで感じられます。特に外陰部は神経が豊富で、少しの炎症でも「チクチク」「むずむず」「かきむしりたくなる」といった強いかゆみとして感じられやすい部位です3

炎症の原因はさまざまで、 (1)感染症による炎症(カンジダ、BV、トリコモナス、性感染症など)、 (2)化学的・物理的刺激による接触皮膚炎(ナプキン・おりものシート・石けん・洗剤・合成繊維の下着など)、 (3)アトピーや乾癬などの皮膚疾患(4)ホルモン変化による乾燥・萎縮(更年期のGSM)、 (5)糖尿病や肝・腎疾患など全身性の要因などが挙げられます1235

かゆみを何度もかきむしると、皮膚が傷つき、さらに炎症物質が出て、神経がより敏感になります。この「かゆい→かく→皮膚が傷つく→さらにかゆい」という悪循環を「itch–scratch cycle(かゆみ―掻破サイクル)」と呼び、慢性化の大きな要因になります314

1.3. 正常なおりものと異常なおりものの違い

おりもの(帯下)は、子宮頸管や腟の粘膜から分泌される液体で、腟内を潤し、不要な菌や細胞を外に出す役割を持っています。いわば「腟の自動クリーニングシステム」のようなものです10

正常なおりもののイメージとしては、 「透明〜乳白色」「少し粘り気がある」「軽い酸っぱいにおい」「量は日によって変動する(排卵期や妊娠中に増える)」といった特徴があります。生理周期やホルモンバランスによっても変化するため、「昨日と違うからすぐ異常」と思う必要はありません。

一方で、以下のような変化がある場合は、何らかの異常(感染症や炎症など)が隠れている可能性があります14

  • 色が灰色・黄緑色・黄褐色など明らかに変化している
  • 魚が腐ったような強い悪臭がする
  • 泡立っていたり、塊が混ざっている
  • 血が混じる、茶色の出血が続く
  • 量が急に増え、下着がすぐ湿るほどになる
  • かゆみ・痛み・しみる感じ・性交痛・排尿痛を伴う

ただし、「おりもの異常のパターン」だけで自己診断することは危険です。BVやカンジダ、トリコモナス、クラミジアなど、症状が似ている疾患も多く、複数の感染症が同時に重なっていることもあるため、最終的な診断は医療機関での検査が必要です14

1.4. 悪化させてしまうNG習慣と日常の見直しポイント

陰部のかゆみがあると、「汚れているのでは」と不安になり、ついゴシゴシと強く洗ったり、香りつきのボディソープやデリケートゾーン用スプレーで「におい」を消そうとしてしまいがちです。しかし、多くのガイドラインやレビューでは、こうした「洗いすぎ」がかえって症状を悪化させることが指摘されています313

  • ナプキンやおりものシートを長時間替えずに使う(湿気と摩擦が増え、接触皮膚炎やかぶれの原因に)
  • 毎日ボディソープで外陰部をゴシゴシこする(皮膚のバリアが壊れ、かゆみが悪化)
  • 腟の中までシャワーで洗い流す「膣内洗浄(douching)」を頻繁に行う(腟内の乳酸桿菌が減少し、BVや感染症のリスクが上がる)8
  • 化学繊維でぴったりと密着する下着やガードル、ストッキングを長時間着用する(高温多湿となり、カンジダが増えやすい環境に)2
  • かゆみを我慢できず、寝ている間に無意識に強くかきむしってしまう(肌が厚くなり、さらにかゆみが続く)

こうしたNG習慣に心当たりがある場合は、まず日常生活の小さな改善から始めることで、症状が軽くなることも少なくありません。ただし、すでに強いかゆみや痛み、おりものの異常がある場合は、生活習慣の見直しと並行して医療機関の受診も検討しましょう。

表1:セルフチェックリスト — まず見直したい生活習慣と環境
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
毎日ボディソープやボディスクラブで外陰部を念入りに洗っている 皮膚バリアの破綻、接触皮膚炎、かゆみの悪化につながる可能性
ナプキンやおりものシートを長時間替えないことが多い 高温多湿環境によるかぶれ・接触皮膚炎、カンジダ増殖のリスク
タイトな下着やガードル、ストッキングを一日中着用している 摩擦と蒸れによる皮膚炎、湿疹、かゆみの増悪
腟の中までシャワーで洗い流している、洗浄液を頻繁に使っている 膣内の乳酸桿菌の減少によるBV(細菌性腟症)リスク上昇
寝ている間にシーツや下着に血がにじむほどかきむしってしまう 慢性外陰瘙痒症、湿疹、硬化性苔癬など皮膚疾患の可能性

第2部:感染症・皮膚疾患・ホルモン変化など身体の内部要因

生活習慣や環境を整えてもかゆみが続く場合、その背景には腟内の菌のバランスの乱れ、性感染症、皮膚の病気、ホルモンバランスの変化、全身疾患など、身体の内部要因が隠れている可能性があります。ここでは代表的な原因を、「感染性」と「非感染性」に分けて整理します。

2.1. 感染症による陰部のかゆみ

陰部のかゆみの原因としてまずイメージされやすいのが、外陰腟カンジダ症や細菌性腟症、トリコモナス腟炎、クラミジア・淋病、性器ヘルペスなどの感染症です。これらはそれぞれ原因となる微生物や症状の特徴、治療法が異なりますが、自己判断での市販薬使用だけでは見分けが難しいことも多く、医療機関での検査が推奨されます124

2.1.1 外陰腟カンジダ症(VVC)

外陰腟カンジダ症は、カンジダ属という真菌(カビ)の一種が増えすぎることで起こる感染症です。本来カンジダ自体は皮膚や腟内に「常在菌」として存在しますが、抗生物質の使用、妊娠、糖尿病、免疫力の低下、きつい下着などの条件が重なると、急速に増殖して炎症を起こします2411

典型的な症状は、 「強いかゆみ」「外陰部の赤みや腫れ」「酒粕状・カッテージチーズ状の白いポロポロしたおりもの」「排尿時のしみる感じ」「性交時の痛み」などです。おりもののにおいは、BVのような強い魚臭ではなく、あまりにおわないか、ほのかに酸っぱい程度であることが多いとされています410

一生のうちに少なくとも1回はカンジダ腟炎を経験する女性は約75%にのぼるとする総説もあり1012、決して珍しい病気ではありません。ただし、年4回以上くり返す再発性外陰腟カンジダ症(RVVC)になると、生活の質(QOL)が大きく低下し、長期的な維持療法が必要になることがあります912

2.1.2 細菌性腟症(BV)

細菌性腟症(bacterial vaginosis:BV)は、腟内の乳酸桿菌が減少し、代わりにガードネレラなどの嫌気性菌が増えることで起こる状態です。性感染症そのものではありませんが、複数パートナーとの性行為、コンドームを使わない性行為、膣内洗浄(douching)の習慣などがリスクとして知られています48

代表的な症状は、「薄い灰白色〜白色のさらっとしたおりもの」「魚が腐ったようなにおい」「pHが4.5より高くなる」といったものです。かゆみはカンジダほど強くないか、あるいはほとんど感じない人もいます410

日本の総説では、BVは妊娠していない女性の約10〜40%、ある地域の妊婦では18.2%の有病率が報告されています1015。BV自体は時間とともに自然に軽快することもありますが、そのまま放置すると骨盤内炎症性疾患(PID)や早産、性感染症のリスク増加につながることが知られており、特に妊娠中は注意が必要です48

2.1.3 トリコモナス腟炎・クラミジア・淋病などの性感染症(STI)

トリコモナス腟炎は、トリコモナスという原虫の感染によって起こる病気で、「黄緑色〜泡立ったおりもの」「強いにおい」「外陰部の発赤・かゆみ」「性交時や排尿時の痛み」などが特徴とされます。腟鏡(ちつきょう)で診ると「いちご状」の子宮頸部が見られることもあります4

クラミジアや淋病は、日本の性感染症の中でも非常に頻度が高く、若い世代を中心に問題となっています7。多くは無症状ですが、女性ではおりものの増加、軽い下腹部痛、性交痛、排尿時の違和感などとして現れることがあります。かゆみが主症状ではない場合も多いものの、カンジダやBVと同時に感染していると、かゆみも加わって複雑な症状となることがあります4

性器ヘルペスは、HSV(単純ヘルペスウイルス)の感染によるもので、「ピリピリ・チクチクする前駆症状のあと、小さな水ぶくれが多数でき、やがて破れて強い痛みを伴う潰瘍になる」という経過をたどります。かゆみよりも痛みが目立つことが多く、排尿時にしみてトイレに行くのがつらくなるほどの痛みが出ることもあります416

2.2. 非感染性の原因:接触皮膚炎・湿疹・硬化性苔癬など

陰部のかゆみ=感染症と思われがちですが、実際には「感染症ではない原因」によるものも少なくありません。特に、ナプキンやおりものシート、洗剤、ボディソープ、コンドーム、潤滑剤(ローション)などによる接触皮膚炎や、アトピー性皮膚炎、乾癬、硬化性苔癬などの慢性皮膚疾患は、外陰部そう痒症の大きな割合を占めます313

2.2.1 接触皮膚炎・アレルギー

接触皮膚炎は、刺激の強い物質やアレルゲンが皮膚に触れることで生じる炎症です。陰部では、 「多い日用の厚手ナプキンを長時間使用」「香り付き・色つきのナプキンやおりものシート」「柔軟剤や香り付き洗剤」「ラテックス製コンドーム」「殺精子剤入り潤滑剤」「香り付きボディソープ」などが原因になることがあります13

症状としては、「赤み」「ヒリヒリ感」「小さなブツブツ」「かさつき」「皮むけ」「ジクジク」「ふくらみ」などが見られ、かゆみが強く、かけばかくほど悪化する傾向があります。原因となる製品をやめ、刺激を避けるだけで改善することもあれば、ステロイド外用薬や保湿剤が必要になることもあります313

2.2.2 湿疹・乾癬・硬化性苔癬など慢性皮膚疾患

アトピー性皮膚炎や慢性湿疹、乾癬、扁平苔癬、硬化性苔癬などの皮膚疾患は、外陰部にも発生します。特に硬化性苔癬は、外陰部に白く薄い、紙のような見た目の皮膚変化を起こし、夜間に強いかゆみが出ることが多い病気です317

硬化性苔癬は放置すると、皮膚が薄く破れやすくなったり、瘢痕(はんこん)によって外陰部が狭くなったり、長期的には外陰がんのリスクが上がることが報告されています17。そのため、適切な強さのステロイド外用薬による治療と、定期的な経過観察が重要です。

2.3. ホルモンバランスとGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)

女性ホルモン(特にエストロゲン)は、腟や外陰部の粘膜の厚みや潤い、腟内の乳酸桿菌バランスを保つうえで重要な役割を果たしています。閉経前後や卵巣摘出後、ホルモン療法の中断などでエストロゲンが低下すると、粘膜が薄くなり、乾燥しやすくなり、少しの刺激でも痛みやかゆみを感じやすくなります5

このような閉経に関連した腟・外陰部・尿路の症状をひとまとめにした概念が「GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause:閉経関連泌尿生殖器症候群)」で、北米閉経学会(NAMS)の声明では、閉経後女性の27〜84%が何らかのGSM症状を持つとされています5

GSMの代表的な症状としては、 「腟の乾燥」「ヒリヒリ・かゆみ」「性交痛(挿入時の痛み)」「頻尿・尿意切迫感」「性交後や少しの刺激で出血しやすい」「繰り返す尿路感染症」などが挙げられます。感染症のようなおりものの増加は目立たない一方で、「乾燥によるひび割れ」「細かい出血」「痛み」が前面に出るのが特徴です5

2.4. 全身疾患や薬によるかゆみ

糖尿病や肝疾患、腎不全、一部の血液疾患、甲状腺疾患など、全身疾患の症状のひとつとして陰部のかゆみが出ることもあります。また、抗生物質の長期使用はカンジダ腟炎のリスクを高めることが知られています29

「かゆみが陰部に限らず全身にある」「体重減少や強い疲労感、黄疸(皮膚や白目が黄くなる)など、他の症状もある」「糖尿病や肝・腎疾患を治療中」という場合は、婦人科や皮膚科だけでなく、内科での評価も重要になります。

第3部:ライフステージ別に見る陰部のかゆみとセルフチェック

同じ「陰部のかゆみ」でも、年齢やライフステージによって背景は大きく異なります。ここでは、女児・思春期前、性活動期、妊娠・産後、更年期以降の4つに分けて、特徴的な原因と注意点を整理します。

3.1. 女児・思春期前のかゆみ:虐待や異物にも注意

思春期前の女児では、エストロゲンが少ないため腟や外陰部の粘膜が薄く、わずかな刺激で炎症が起こりやすい状態です。おむつかぶれやトイレ後の拭き方、石けんの刺激、プール後の濡れた水着の長時間使用など、日常のちょっとしたことが原因になることもあります。

一方で、長期間続くかゆみや痛み、出血、陰部のあざや傷、行動の変化(おとなの性的な言動、特定の人を極端に怖がるなど)がある場合、異物の混入や性的虐待などの可能性も慎重に検討する必要があります18。このような場合、保護者だけで抱え込まず、小児科や小児専門の婦人科、地域の相談窓口などに早めに相談することが重要です。

3.2. 性活動期(20〜40代):性感染症・カンジダ・BVが多い

性活動期の女性では、カンジダ腟炎、BV、トリコモナス腟炎、クラミジア・淋病などの性感染症がかゆみの主な原因になります124。また、ピルの使用や避妊具の種類、パートナーの数や性行動のパターン、膣内洗浄の習慣などもリスクに影響します。

特に、「かゆみ+酒粕状の白いおりもの」はカンジダを、「軽いかゆみ+魚臭の強い灰白色おりもの」はBVを、「黄緑〜泡立つおりもの+におい+痛み」はトリコモナスを疑う手がかりになりますが、自己判断は禁物です。複数の感染症が同時に存在することもあり、見た目だけで判断できないことも少なくありません4

3.3. 妊娠中・産後:妊娠の影響と赤ちゃんへのリスク

妊娠中はホルモンバランスの変化により腟内の糖分が増え、カンジダが増殖しやすくなることが知られています29。そのため、妊娠中のVVCは珍しくありません。一方、BVは妊娠合併症(早産や前期破水など)のリスクと関連付けられており、ガイドラインでは症状がある妊婦に対して適切な治療を行うことが推奨されています148

「妊娠中に薬を飲んでも大丈夫か」「赤ちゃんにうつらないか」という不安で受診を迷う方もいますが、妊婦に対して安全性が確認された治療法がガイドラインで示されています。自己判断で市販薬だけをくり返し使うよりも、産婦人科で相談して、妊婦に適した治療を受ける方が、むしろ母体と胎児の安全につながるケースも少なくありません14

3.4. 更年期〜高齢期:GSMと皮膚の変化

更年期以降の陰部のかゆみでは、カンジダやBVなどの感染症もありますが、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)や硬化性苔癬など、エストロゲン低下や皮膚の慢性疾患が背景にあることが少なくありません3517

「年齢のせいだから仕方ない」「恥ずかしくて誰にも言えない」と我慢している方も多いのですが、局所エストロゲン療法や保湿剤、適切な外用ステロイドなどで症状が大きく改善することが、国内外の研究で示されています517。痛みやかゆみがあることで、性行為やパートナーとの関係がつらくなってしまう前に、婦人科や更年期専門外来などで相談してみることをおすすめします。

第4部:症状パターンから考える原因の目安とNGセルフケア

ここでは、「かゆみ+おりもの」「かゆみ+痛み」「かゆみ+皮膚の色の変化」など、症状の組み合わせから考えられる代表的な原因と、やってしまいがちなNGセルフケアを整理します。あくまで「目安」であり、自己診断をすすめるものではありませんが、自分の状態を医師に説明するときの整理にも役立ちます。

4.1. かゆみ+おりものの色・量・においからの目安

以下は、代表的なパターンと、考えられる原因の一例です1410

  • 強いかゆみ+白くポロポロした酒粕状のおりもの+においは強くない:外陰腟カンジダ症の典型パターン
  • 軽いかゆみ〜違和感+灰色〜白色でサラサラしたおりもの+魚が腐ったようなにおい:細菌性腟症(BV)の典型パターン
  • かゆみ+黄緑色〜泡立つおりもの+強いにおい+痛み:トリコモナス腟炎の可能性
  • かゆみはあまりなく、おりものが増えて軽い下腹部痛・排尿痛・性交痛:クラミジアや淋病などの性感染症の可能性(無症状のことも多い)

ただし、「においがないからカンジダ」「においがあるから必ずBV」といった単純な自己判断は危険です。実際には複数の感染症が同時に存在することや、GSMや皮膚疾患が重なっていることもあり、検査なしには確定できません34

4.2. かゆみ+痛み・出血・しこりがある場合の危険サイン

次のような症状がある場合は、早めの受診が強くすすめられます3417

  • かゆみだけでなく、歩けないほどの強い痛みや焼けるような感覚がある
  • 水ぶくれやただれ、潰瘍(皮膚の欠損)があり、排尿のたびに強くしみる(性器ヘルペスなど)
  • 硬いしこり、皮膚の色の変化(黒ずみ・白斑など)、ざらつき、長く続く傷などがある(外陰がんや前がん病変の可能性)
  • 発熱、下腹部痛、悪臭の強いおりものがあり、全身の具合も悪い(骨盤内炎症性疾患など)
  • 尿が出にくい、性行為が不可能なほどの狭さや痛みを感じる(硬化性苔癬やGSMなど)
  • 子どもの陰部の出血やあざ、傷、行動の変化など、虐待を疑うサインがある

4.3. やってはいけないNGセルフケア

かゆみがつらいと、「今すぐ何とかしたい」という気持ちから、次のような対処をしてしまうことがあります。しかし、これらは長期的には悪化や別の病気の見逃しにつながるおそれがあります3813

  • 市販のカンジダ治療薬を自己判断で何度も繰り返し使用し、医療機関での診断を避け続ける
  • 手持ちの抗生物質や家族の薬を自己判断で服用する
  • インターネットやSNSで見た「デトックス膣スチーム」「謎のハーブパック」「強力な塩や酢での洗浄」などを試す
  • かゆみを紛らわせるために、冷えピタやメントール入りの軟膏など、デリケートゾーン用ではない製品を直接塗る

こうした方法は、一時的に刺激感でごまかされても、皮膚バリアを壊したり、腟内環境を大きく乱したり、皮膚疾患や悪性腫瘍の発見を遅らせてしまうリスクがあります。自己判断でできるケアはあくまで「刺激を減らす」「清潔を保つ」「乾燥を防ぐ」といった基本的な範囲にとどめ、症状が続く場合は早めに専門家に相談しましょう。

表2:セルフケアで様子を見てもよいケースと受診が必要なケースの目安
状況 セルフケアの目安
軽いかゆみのみで、おりものや皮膚の見た目に大きな変化がない/数日以内に自然に軽快しつつある 刺激を避け、洗いすぎをやめる・下着を見直すなどのセルフケアで数日様子を見てもよい
かゆみが強く、おりものの色やにおいが明らかに変化してきた/市販薬を1〜2回使っても改善しない 自己判断で市販薬を繰り返すより、婦人科・性感染症外来などで検査・診断を受けた方が安全
痛み・発熱・出血・しこり・水ぶくれ・潰瘍などの「赤信号」症状がある できるだけ早く医療機関を受診。夜間や休日で強い痛みや出血がある場合は救急相談も検討
妊娠中・産後・小児・免疫低下(ステロイド・抗がん剤治療中など)でかゆみやおりものの異常がある 自己判断での市販薬使用は避け、必ず医療機関で安全性を確認したうえでの治療を

第5部:医療機関での検査・診断・治療と受診のしかた

陰部のかゆみで受診すると、どのような問診や検査が行われるのでしょうか。「どこまで話せばいいのか」「内診は必ず必要なのか」「費用はどれくらいかかるのか」など、受診前の不安を少しでも減らせるように、一般的な流れをまとめます。

5.1. 問診で聞かれる主なポイント

問診では、次のような内容を聞かれることが多いです14

  • いつから、どのようなかゆみがあるか(強さ・場所・時間帯など)
  • おりものの変化(色・量・におい・粘り気)
  • 痛み・しみる感じ・出血・排尿時の症状・性交痛の有無
  • 月経周期や妊娠の可能性、妊娠週数(妊婦の場合)
  • 性行為の有無・人数・避妊方法・最近のパートナーの変更など(可能な範囲で)
  • これまでに似た症状があったか、再発をくり返していないか
  • 市販薬や他の医療機関での治療歴、使っている薬や基礎疾患(糖尿病など)

性の話題を口にするのは勇気がいることですが、医師や看護師は日常的にこのような相談を受けており、恥ずかしがる必要はありません。どうしても直接言いづらい場合は、事前にメモにして渡したり、問診票にできる範囲で正直に記入しておくと、診察がスムーズになります。

5.2. 外陰部の診察・腟鏡検査・内診のイメージ

診察では、まず外陰部の状態(赤み・腫れ・湿疹・しこり・色の変化など)を目で確認し、必要に応じて軽く触って状態を確かめます。続いて、腟の中を観察するために「膣鏡(ちつきょう)」という器具を使って腟内を広げ、おりものの様子や子宮頸部の状態を確認します14

未婚・未経産・性交経験のない方や、痛みが強い方には、サイズの小さい膣鏡を選んだり、無理に挿入しないなど、できるだけ負担を減らす工夫がされます。不安がある場合は、診察前に「性交経験はないので、できる範囲の検査でお願いします」などと遠慮なく伝えましょう。

5.3. おりもの検査・pH測定・顕微鏡検査・培養

おりものの一部を綿棒などで採取し、顕微鏡で観察することで、カンジダの菌糸や胞子、トリコモナス原虫、Clue cell(BVのサインとなる細菌が付着した細胞)などを確認することができます。また、腟壁やおりもののpHを専用の試験紙で測定し、BVやGSMの可能性を判断する材料にします1410

必要に応じて、細菌培養(どの菌がどの程度いるかを詳しく調べる検査)や、クラミジア・淋病・トリコモナスなどのNAAT(核酸増幅検査)を行うこともあります。再発をくり返すカンジダ腟炎では、どの種類のカンジダなのか(Candida albicansか、それ以外の非アルビカンス種か)を調べることもあります29

5.4. 診断基準と代表的な治療方法

BVではAmsel基準(おりものの性状・pH・アミン臭・Clue cellの有無)やNugentスコア(Gram染色標本を点数評価)に基づいて診断が行われます48。VVCでは、典型的な症状に加えて、顕微鏡でのカンジダ確認や培養結果が重要です24

治療の概要は次のようになります12489

  • カンジダ腟炎:腟錠(クロトリマゾール・ミコナゾールなど)やクリームを3〜7日間使用する。国際的にはフルコナゾール150mg単回内服もよく用いられるが、妊娠中は局所治療が推奨される。
  • 再発性カンジダ腟炎:初期治療で症状を落ち着かせたあと、週1回のフルコナゾール内服を数カ月続けるなどの維持療法が検討される。
  • 細菌性腟症(BV):メトロニダゾール内服やゲル、クリンダマイシンクリームなどを用いる。再発例では、生活習慣の見直しやパートナー治療の有無も含め、個別に検討される。
  • トリコモナス腟炎:メトロニダゾールの内服治療が基本で、パートナーも同時に治療することが重要。
  • クラミジア・淋病などのSTI:アジスロマイシンやセフトリアキソンなど、ガイドラインに沿った抗菌薬治療とパートナーの同時検査・治療が推奨される。
  • 接触皮膚炎・慢性皮膚疾患:原因となる刺激やアレルゲンの回避、保湿、適切な強さのステロイド外用薬など。
  • GSM・萎縮性腟炎:局所エストロゲン療法や非ホルモン保湿剤、骨盤底リハビリ、場合によってレーザー治療など。

5.5. 受診すべき診療科の選び方と費用の目安

日本で陰部のかゆみを相談できる診療科としては、主に以下が挙げられます。

  • 産婦人科:腟・子宮・卵巣など女性生殖器全般。妊娠・出産・月経トラブル・性感染症・更年期など幅広い相談が可能。
  • 皮膚科:接触皮膚炎・アトピー・乾癬・硬化性苔癬など皮膚疾患が疑われる場合。
  • 性感染症専門クリニック/泌尿器科:パートナーと一緒に検査・治療したい場合や、男性側の症状もある場合。
  • 小児科・小児専門婦人科:女児の陰部のかゆみや出血、虐待が疑われるケースなど。

費用は、保険診療か自由診療か、行う検査や治療内容によって大きく変わりますが、一般的な保険診療での初診+基本的なおりもの検査の場合、3割負担で数千円〜1万円弱程度となることが多いでしょう。事前に医療機関のホームページで費用の目安を確認したり、不安な点は受付で相談することもできます。

よくある質問

Q1: かゆみは強いのですが、においはあまり気になりません。これはカンジダでしょうか?それとも性感染症ですか?

A1: 「強いかゆみ+白くポロポロしたおりもの+においはそれほど強くない」というパターンは、外陰腟カンジダ症でよく見られる組み合わせです2410。一方、細菌性腟症(BV)は、においが魚のように強くなるわりに、かゆみは軽いか、ほとんどないこともあります410

しかし、クラミジアや淋病などの性感染症が同時に隠れていたり、GSMや皮膚疾患が重なっていることもあり、「においの有無」だけで原因を断定することはできません。市販薬で一時的に楽になっても、くり返し同じ症状が出る場合や、パートナーの症状が気になる場合は、婦人科や性感染症専門クリニックで検査を受けることをおすすめします147

Q2: 市販のカンジダ治療薬を使ってもかゆみが治りません。何回まで自分で試していいですか?

A2: 市販薬で一時的に症状が軽くなることはありますが、同じ薬を何度も繰り返しても改善しない場合や、数週間〜数カ月おきに何度も再発する場合は、自己判断での「くり返し使用」はおすすめできません239。カンジダと思っていたら、実はBVやトリコモナス、皮膚疾患、悪性腫瘍など別の病気だったということもあり得ます317

目安としては、「同じ市販薬を1〜2回試しても改善しない」「半年以内に2回以上再発する」「痛みや出血・しこり・色の変化がある」場合には、早めに医療機関を受診し、きちんと原因を調べたうえで適切な治療を受けることをおすすめします。

Q3: 妊娠中に陰部がかゆくておりものも増えています。赤ちゃんへの影響が心配です。

A3: 妊娠中はホルモンバランスの変化でおりものが増え、カンジダ腟炎が起こりやすくなりますが、カンジダ自体は基本的に胎児への重い影響は少ないとされています24。一方、BVや一部の性感染症(クラミジア・淋病・トリコモナスなど)は、早産や前期破水のリスクを高める可能性があるため、妊婦で症状がある場合は適切な治療が推奨されています148

妊娠中に自己判断で市販薬を使用するのではなく、必ず産婦人科で相談し、妊婦に安全性が確認された薬剤・投与方法で治療を受けましょう。かゆみやおりものの変化を「よくあること」として我慢せず、「妊娠中であること」「薬への不安があること」を遠慮なく伝えてください。

Q4: パートナーにも治療してもらった方がよい病気と、そうでない病気の違いは何ですか?

A4: 一般的に、カンジダ腟炎の場合、男性パートナーが症状を出さないことが多く、 routineに治療する必要はないとされています24。一方、トリコモナス腟炎、クラミジア、淋病、性器ヘルペスなどの性感染症では、パートナーも同時に検査・治療することが原則です47

BVについては、従来は「パートナー治療の有効性は限定的」とされてきましたが、近年の研究で、特定の状況ではパートナー治療が再発リスクを下げる可能性も報告されています819。ただし、ガイドラインによる推奨は国や時期によって異なるため、最新の情報に基づき、医師と相談しながら決めることが大切です。

Q5: 更年期以降のデリケートゾーンのかゆみは、年齢のせいとあきらめるしかないのでしょうか?

A5: 更年期以降に増えるGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)では、腟の乾燥やかゆみ、痛み、性交痛、尿トラブルなどがよく見られますが、これらは「年だから仕方ない」と我慢する必要はありません5。局所エストロゲン療法や非ホルモン保湿剤、骨盤底リハビリなど、多くの選択肢があり、症状の改善が期待できます5

ただし、ホルモン治療には乳がんや血栓症など、個々のリスクを評価したうえで慎重に判断すべきケースもあります。婦人科や更年期外来で「どの程度つらいか」「どのような生活を送りたいか」を含めて相談し、一緒に治療方針を考えてもらいましょう。

Q6: 子どもの陰部のかゆみが続いています。婦人科に連れて行っても大丈夫でしょうか?

A6: 女児の陰部のかゆみは、おむつかぶれや洗いすぎ、トイレ後の拭き方など日常的な原因で起こることも多いですが、長く続く場合や出血・傷・行動の変化などがある場合は、小児科や小児専門の婦人科での診察が望ましいとされています18

大人向けの婦人科ではなく、小児にも対応している医療機関を選ぶことで、身体的・心理的負担を減らしながら診察を受けることができます。かゆみだけでなく、気になる行動や生活環境についても、可能な範囲で医師に伝えるようにしましょう。

Q7: 陰部のかゆみはストレスやメンタルの不調とも関係しますか?

A7: はい、全身のかゆみと同様に、陰部のかゆみもストレスや心理的要因と関連することがあります。ストレスが続くと自律神経や免疫バランスが乱れ、皮膚のバリア機能が低下したり、かゆみを感じる神経が敏感になったりすることが知られています314

また、「かゆみ→眠れない→翌日もストレスが増える→さらにかゆく感じる」という悪循環になることもあります。かゆみの原因が皮膚や感染症だけでは説明しきれない場合、心療内科や精神科と連携して対処するケースもあります。自分を責めるのではなく、「心と体の両方の問題」として捉え、必要に応じて専門家に相談しましょう。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

女性の陰部のかゆみは、「恥ずかしい」「自分だけがおかしい」と感じてしまいがちですが、日本産科婦人科学会や各種ガイドラインが示すように、カンジダ腟炎や細菌性腟症、GSM、皮膚疾患など、多くの女性が経験しうるごく一般的な症状です1235

一方で、同じ「かゆみ」でも、性感染症や骨盤内炎症性疾患、硬化性苔癬や外陰がんなど、重い病気が背景にあることもあります。この記事で紹介した「症状パターン」「赤信号となるサイン」「セルフケアで様子を見てもよいケースと受診が必要なケースの目安」を参考にしながら、必要なタイミングで医療機関に相談する一歩を踏み出していただければと思います。

かゆみが続くと、仕事・家事・育児・勉強・パートナーとの関係など、生活のあらゆる場面に影響が出ます。しかし、適切な診断と治療、そして日常生活のちょっとした工夫によって、症状は大きく改善することが期待できます。あなたの悩みはあなただけのものではありません。この記事が、ご自身のからだを守るための一つの手がかりになれば幸いです。

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参考文献

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