「男性はなぜ浮気？最新研究が示す8つの動機と隠れた心理」

動機の分類：「関係の欠陥」モデルを超える

パートナーの浮気を分析する際に最も陥りやすい誤解の一つは、「きっと私たちの関係が不幸だったからだ」と結論づけてしまうことです。もちろん、関係への不満は重要な引き金ですが、現代心理学の研究は、それだけでは説明できない、はるかに複雑で多面的な動機の存在を明らかにしています²。

この理解を大きく前進させたのが、495人の不貞経験者を対象とした画期的な研究です。この研究では、浮気の動機が主に8つのカテゴリーに分類されることが特定され、従来の「関係の欠陥モデル」だけでは不十分であることが示されました³。これらの動機は、大きく分けて「関係性の問題」から生じるものと、「個人のニーズや状況」から生じるものの2つのグループに分類できます。

関係性に起因する動機（「私たち」に亀裂が入った時）

このグループの動機は、現在のパートナーシップの中で感じられる不足感や対立を直接反映しています。

• 怒り・復讐: これは、パートナーから受けた裏切りや傷に対する直接的な報復行為です。例えば、相手の浮気を知った後に「やり返す」ために浮気をするケースがこれにあたります。この動機を持つ人は、自分の行為を相手に告白する傾向が比較的高いと報告されています。なぜなら、相手に同じ苦しみを与えること自体が、復讐という目的の一部だからです⁴。
• 愛情の欠如: これは最も強力な動機の一つで、「パートナーへの愛情が冷めてしまった」という感情から生じます³。愛情が失われると、人は失われたロマンスや情熱、精神的なつながりを外部の関係に求め始めます。この動機から始まる浮気は、感情的・知的な満足度が高く、関係が長期化しやすい一方で、現在の関係を終わらせる「関係破壊者」になる可能性が最も高いとされています²。
• 無視されている感覚: パートナーから感情的、あるいは身体的に放置されている、大切にされていないと感じる時、人はその空白を埋めるために第三者を求めます³。この場合、浮気相手は、現在の関係では得られなくなった「自己価値の承認」や「注目」を提供してくれる存在としての役割を果たします。
• コミットメントの欠如: 一部の人は、そもそも現在の関係に対して深い関与や将来への約束を感じていません。彼らにとって、浮気への心理的なハードルは非常に低いのです³。浮気が、関係を終わらせるための一種の「出口戦略」として、無意識あるいは意識的に利用されることもあります。

個人・状況に起因する動機（「私」が何かを求めた時）

こちらの動機は、たとえ現在の関係が安定しているように見えても起こり得る、より根深い個人の心理的欲求や状況要因から生じます。

• 自尊心の向上: 浮気は、自分がまだ魅力的で、他者から求められる存在であることを確認するための手段として利用されることがあります。この動機は、パートナーの行動よりも、本人の内面的な不安から生じることが多いのが特徴です³。新しい相手からの注目は、自信のなさや自己への不満を一時的に和らげる効果があります。
• 性的な欲求・多様性: より頻繁な、あるいは新しい性的経験を求める、非常に直接的な動機です³。ある日本の研究では、男性が浮気をする最大の理由は「性的欲求を満たすため」であったと報告されています⁵。この動機は、主に浮気関係の身体的な側面に焦点を当てています。
• 状況的要因: 事前の計画なく、機会や状況に流されて発生する浮気です。アルコールの摂取によって判断力が低下した時や、強いストレス下にある時などが典型例です⁶。こうした関係は短期間で終わり、満足度も低く、現在の関係を終わらせる原因になることは比較的少ないとされています⁴。

裏切りの「設計図」：個人の心理的・生物学的要因

もし関係の問題が不貞という植物が育つ「土壌」であるならば、個人の心の中に元々存在する心理的・生物学的特性は、その「種」そのものと言えます。これらの内的な要因は、いわば個人の心の「設計図」を形成し、現在の関係の質とは無関係に、その人を誘惑に対して脆弱にさせることがあります。

アタッチメント理論：幼少期の絆がもたらす残響

アタッチメント理論（愛着理論）は、成人の親密な関係を理解するための最も foundational な枠組みの一つです。この理論は、幼少期に親などの主要な養育者との間で経験した関わり方が、信頼、安心、親密さに関する「内的ワーキングモデル（内的な行動指針）」を形成すると考えます。そして、このモデルが、その後の恋愛関係における他者との関わり方を無意識のうちに方向づけるのです。

2023年に発表された大規模なメタ分析（複数の研究を統合・分析する、最もエビデンスレベルの高い研究手法）は、この関連性に関する強力な科学的証拠を提示しました⁷。この研究は、不安定な愛着スタイルと不貞行為との間に、統計的に有意な正の相関があることを結論付けています。具体的には、愛着の不安定さ（不安と回避の両方を含む）のレベルが高いほど、不貞行為に及ぶ可能性が高まることが示されました（相関係数 r = 0.18, 95% CI = 0.14–0.22, p < 0.0001）。

パーソナリティ特性と精神病理

愛着スタイルに加え、その人の核となる性格特性も重要な予測因子となります。

• ビッグファイブ性格特性: 心理学で広く用いられるこのモデルでは、特に「誠実性(Conscientiousness)」と「協調性(Agreeableness)」のスコアが低い人ほど、不貞に及びやすいことが示されています⁸。「誠実性」が低いと衝動的で自己規律に欠け、「協調性」が低いと他者の感情への配慮が少なくなります。また、「神経症傾向(Neuroticism)」が高い人も、慢性的な不安や不幸感を和らげるために外部からの承認を求め、結果として不貞に至るリスクが高まります⁹。
• ダークトライアド（闇の3要素）: 「自己愛(Narcissism)」「マキャベリズム(Machiavellianism)」「サイコパシー(Psychopathy)」の3つの性格特性を指します。自己愛傾向の強い人は、自分は特別扱いされるべきだという特権意識や、絶え間ない賞賛への渇望から浮気に走ることがあります¹⁰。サイコパシー傾向の強い人は、他者への共感性が著しく欠如しているため、自分の行動がパートナーに与える深刻な苦痛を意に介しません⁹。

生物学的・遺伝的基盤

生物学的な要因も一定の役割を果たします。双生児を対象とした研究では、不貞行為の個人差の約40%が遺伝的要因で説明できる可能性が示唆されています。これは、特定の性格特性や性欲の強さが遺伝することと関連している可能性があります⁹。ホルモンレベルでは、テストステロン値の高さが、不貞を含むリスクの高い行動と関連していることが知られています。一般に、特定のパートナーと長期的な関係にある男性はテストステロン値が低い傾向にありますが、このホルモン値が持続的に高い男性は、より多くの性的パートナーを求める傾向があるかもしれません⁹。

これらの知見は、私たちの認識に重要な転換を促します。つまり、浮気は必ずしも「魔が差した」一瞬の選択ではなく、深く根差した心理的パターンの行動的表出であるかもしれない、ということです。関係のストレス（例えば、子供の誕生や失業など）は、ゼロから不貞の欲求を生み出すのではなく、その個人が元々持っている不適応的な対処戦略（例：外部に承認を求める、浮気によって親密さから距離を置く）の引き金を引くだけなのかもしれません。この視点は、裏切られた側にとって、不貞が必ずしも自分の欠点や魅力のなさのせいではなく、パートナー自身の心の構造に深く関わっている可能性を理解する助けとなり、自己防衛と癒しのプロセスを開始するための重要な一歩となります。

関係性の亀裂：「私たち」が壊れるとき

個人の心に不貞の「種」があったとしても、それが芽吹くかどうかは、関係性という「土壌」の状態に大きく左右されます。ある系統的レビュー（複数の研究を網羅的に評価する手法）は、「個人の内的特性の不一致」よりも、「二人の相互作用の特性の不一致」の方が、不貞行為とより強く関連する可能性が高いと結論付けています。これは、二人の間のコミュニケーションや感情的なつながり（あるいはその欠如）がいかに強力な要因であるかを浮き彫りにしています。

関係における不満の主な要因

• 感情的な不満: これは不貞行為と最も強く相関する要因の一つです。慢性的に無視されている、評価されていない、誤解されている、といった「感情的な飢餓状態」を指します。自分の話を聞いてもらえず、理解されず、感謝もされない関係の中では、人は外部からの優しさや承認に対して非常に脆弱になります。そのとき、浮気相手は心の空白を埋めてくれる「感情のオアシス」として機能してしまうのです。
• 性的な不満: これは男女共通の問題ですが、特に男性にとって強力な動機となり得ることが研究で示されています。この不満は単なる回数の問題ではなく、質、親密さ、そして性生活における情熱の欠如に関わります。満たされない、あるいは存在しない性生活は、拒絶されている、求められていないという感覚を生み、外部に満足を求める動機となり得ます。
• コミュニケーションの崩壊: ほとんどの関係の問題の根底には、これがあります。カップルが自分たちのニーズ、感情、問題についてオープンかつ効果的に対話できない、あるいはしようとしないとき、小さな不満は積み重なり、やがて二人を隔てる高い壁となります。問題を解決しようとする試みが何度も失敗したり、無視されたりすると、一方が「他で安らぎを求めるしかない」という結論に至ることがあります。
• コミットメントと親密さの侵食: 低いコミットメントは不貞の重要な予測因子です。これは一夜にして起こるのではなく、カップルが徐々に「距離を置き」、関係を育むための時間とエネルギーを投資しなくなるプロセスです。親密さが薄れるにつれ、外部の魅力的な選択肢が、以前はタブーであったものから、起こり得る可能性へと変わっていきます。

ここで重要なのは、関係が必ずしも「有害」であったり、喧嘩に満ちていたりする必要はないということです。むしろ、「まあまあ」の関係、つまりすべてが慣れと無関心の惰性に陥っている関係の方が、より危険な場合があります。このような関係では、パートナーは日々の役割や責任はこなすものの、真の感情的なつながりが欠けています。彼らは互いの存在を当たり前とみなし、愛を育む努力をやめてしまいます。このような状況で不貞が発覚したときの衝撃は、表面的には「問題ない」ように見えたからこそ、非常に大きくなります。浮気は、日々の単調さによって覆い隠されていた深刻な欠乏、つまり関係の土台が静かに侵食されていたという事実を白日の下に晒すのです。

男らしさのパラドックス：男性特有の深層心理

浮気をした男性の「本音」を理解するためには、男性心理と社会的圧力に関連する特有の力学を分析することが不可欠です。ここには、伝統的な見解と近年の心理学・社会学的知見との間に存在するパラドックスがあります。

伝統的見解：性的な多様性を求める動機

進化心理学に端を発するこの見解は、男性には性的な目新しさを求める生物学的な、あるいは深く根差した本能的な傾向があると主張します。この見解を支持する証拠は広く見られます。日本の大学生を対象としたある研究では、男性が浮気をする最も一般的な理由は「性的欲求を満たすため」であり、その81.8%が性交渉を伴っていたことが報告されています。この視点によれば、男性の不貞は主に基本的な身体的ニーズによって駆動されるということになります。

対抗的見解：男性的承認を求める探求

しかし、『Psychology Today』誌の分析などで強調されている、より洗練された社会学的視点は、多くの男性にとって不貞行為は性行為そのものよりも、その「象徴的な意味」に重きを置いていると指摘します。

この視点の核心は、「男性は、パートナーの目から見て自分が失望の対象であると感じたとき、浮気に走る可能性がある」というものです。これは、彼らの核となる男らしさの感覚を脅かすからです。この失望は、稼ぎ手として、父親として、あるいは性的パートナーとして、あらゆる領域で起こり得ます。彼らは自分が十分に優れていない、強くない、あるいはパートナーを満足させられないと感じているのかもしれません。

このような文脈において、第三者の女性は重要な心理的役割を果たします。彼女は、まさに欠けていたもの—賞賛、情熱、感嘆、そして承認—を提供してくれるのです。彼女は男性に、自分が再び「男らしく」、求められ、有能であると感じさせてくれます。浮気は、傷ついた自我を回復するための「代替的な解決策」となるのです。

パラドックスの統合：感情の言語としてのセックス

これら二つの見解は矛盾するものではなく、実は密接に結びついています。「性的なニーズ」と「男として認められたいニーズ」は、同じコインの裏表なのです。「性的な多様性」の追求は、単に新しい身体を求めるだけでなく、多くの場合、自我を肯定し、高揚させてくれるような「性的な相互作用」そのものを求める行為なのです。

このプロセスは次のように解釈できます：

1. 社会はしばしば男性に感情を抑圧するよう教え（「男なら強くあれ」）、同時に、性的には自信に満ち、熟達していることを期待します。
2. 男性が（感情的または性的に）妻の期待に応えられていないと感じると、彼の核となる男性的なアイデンティティが脅かされます。
3. 彼はこの感情を言葉にする能力がないか、そうすることを奨励されていません。例えば、「君からの感情的な承認が必要だ」と言う代わりに、この傷ついた感情は、より「男性的」で社会的に受け入れられやすい欲求、すなわち「もっとセックスがしたい／違うセックスがしたい」という形に変換されます。

したがって、浮気におけるセックスの追求は、しばしば「感情的な状態」—すなわち、力強く、求められ、承認されているという感覚—の追求であり、それは現在の関係で失われてしまったものなのです。この統合的な解釈は、生物学的な動機、表明された理由、そして潜在的な社会学的圧力を、一つの首尾一貫した深遠な説明へと結びつけます。

機会の役割：行動への触媒

たとえ個人に心理的な脆弱性があり、関係に亀裂が入っていたとしても、第三の要素、すなわち「機会」がなければ、不貞行為は発生しません。機会は、潜在的な傾向や不満を具体的な行動へと転換させる化学反応の「触媒」なのです。

「不貞の三角形」モデルは、不貞が発生するためには3つの要素が必要であると提唱しています：動機を持つ個人、関係における欠乏、そして最も重要なのが、機会の存在です。

主な状況的・文脈的要因は以下の通りです：

• 代替選択肢の存在: 魅力的で、乗り気で、しばしば好意的な反応を示してくれる第三者の存在が、決定的な要因となります。職場は典型的な舞台であり、ある研究では浮気をした人の約半数が、その相手と職場で出会ったと報告されています。
• 環境要因: 潜在的なパートナーが多く存在する環境で働くことや、家を離れて過ごす時間が多いことは、リスクを著しく増大させます。出張、仕事関連の懇親会、あるいは相互作用の多い職場環境は、より多くの機会を生み出します。
• 自制心を失わせる要因: 抑制を解き、判断力を鈍らせるアルコールやその他の薬物の役割は、非常に一般的な状況的要因です。酩酊状態では、普段は守られている道徳的な境界線が曖昧になることがあります。
• テクノロジー: ソーシャルメディアやマッチングアプリの台頭は、外部とのつながりを形成するための新しく、よりアクセスしやすい経路を生み出しました。秘密裏の連絡、親密なやり取り、そして密会の約束がかつてないほど容易になり、不貞行為への物理的な障壁を引き下げています。

嵐の後の航海術：明確さと癒しへの道

不貞行為に至る複雑な要因を分析した後、最も重要なことは、裏切られた側に焦点を当てることです。知識は、それがいかに深くても、痛みを消し去ることはできません。しかし、それは危機の後の段階を乗り越えるための強力なツールとなり得ます。

トラウマの認識

まず第一に、裏切りが深刻な心理的トラウマであることを認識する必要があります。裏切られた側の感情は、侵入的な記憶、過剰な警戒心、激しい感情的反応など、心的外傷後ストレス障害（PTSD）に類似した症状を含むことがあります。信頼は破壊され、自尊心は傷つけられ、そして深い不安感が生活のあらゆる側面に影を落とす可能性があります。これらの経験を認め、言葉にすることが、癒しのプロセスの最初で不可欠な一歩です。

未来は選択肢である

不貞発覚後の段階は、定められた結末ではなく、一連の選択の連続です。最終的な目標は、必ずしも関係を何が何でも修復することではなく、裏切られた側が自己のコントロール感覚、自律性、そして精神的な健康を取り戻すことです。

裏切られた側にとって重要なステップは以下の通りです：

• セルフケアの優先: 危機の最中においては、自分自身の心身の健康に集中することが最優先です。十分な睡眠、健康的な食事、運動、そして安らぎを感じられる活動に時間を費やすことが含まれます。
• 情報の探求、自己非難の回避: この記事で得た知識を活用し、現在進行中の力学を理解しましょう。目標は、「私が何かいけなかったのだろうか？」という自己非難から、「どのような要因がこの結果に寄与したのだろうか？」という分析的な理解へとシフトすることです。相手の行動が、彼自身の根深い問題（愛着スタイルや性格特性など）に起因する可能性を認識することは、自己非難の重荷を軽減する助けとなります。
• 強固な境界線の設定: 不貞を犯したパートナーに対して明確な境界線を設定することは不可欠です。これには、完全な正直さの要求、第三者との連絡の完全な断絶、そして将来の行動に関する期待などが含まれます。境界線は、裏切られた側が自身の感情を処理し始めるための安全な空間を作り出すのに役立ちます。
• 専門的な支援の探求: 裏切りによるトラウマに一人で立ち向かうことは非常に困難です。心理療法士や夫婦カウンセラーからの助けを求めることは、強く、主体的な一歩です。彼らは、感情を探求し、対処スキルを学び、関係の未来について賢明な決定を下すための安全な場を提供してくれます。