小児科

妊婦さんのための快眠ガイド決定版:全期間対応、医学的根拠に基づく戦略

妊娠中の睡眠障害は、決して珍しいことではありません。実際、多くの研究によれば、妊娠中の女性の最大80%が何らかの睡眠の質の低下を経験すると報告されています1。特に妊娠後期にかけて、その悩みは深刻化する傾向にあります2。このガイドは、まずその経験が多くの妊婦さんにとって共通のものであることを伝え、不安を和らげることから始まります。質の高い睡眠は、単なる贅沢ではなく、母体と胎児双方の健康にとって医学的に不可欠な要素です。不十分な睡眠は、さまざまな好ましくない妊娠結果と関連することが、複数の研究で指摘されています3。日本の厚生労働省も、妊娠中の睡眠の質の低下が胎児の健康リスクとなりうる可能性を明確に示しています4。しかし、幸いなことに、妊娠中の睡眠障害の多くは、薬に頼らない方法で主観的な睡眠の質を大幅に改善できることが、2025年発表のメタアナリシスを含む数多くの研究で明らかになっています3。このガイドは、科学的根拠に基づいた知識と実践的な対策を提供し、妊婦さん自身が主体的に快眠を取り戻すための、信頼できるツールキットとなることを目指します。より詳しい安全な寝姿勢についても解説します。

この記事の科学的根拠

本記事は、日本の公的機関・学会ガイドラインおよび査読済み論文を含む高品質の情報源に基づき、出典は本文のクリック可能な上付き番号で示しています。

  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」: 日本の公衆衛生の観点から、妊娠中の睡眠の重要性と具体的な指針を提供している主要な情報源です6
  • 妊娠中の睡眠と胎児への影響に関するメタアナリシス: 複数の研究を統合・分析し、特に仰向け寝のリスク(調整済みオッズ比 約2.63)など、高いエビデンスレベルの情報を提供しています8

要点まとめ

  • 妊娠28週以降は、安全のため仰向けで寝ることを避けるべきです。これは子宮が下大静脈を圧迫し、胎児への血流を低下させる可能性があるためです89
  • 最も推奨される寝姿勢は、左側を下にして横になる「シムス位」です。抱き枕などを使うと、この姿勢を楽に保つことができます11
  • 不安で眠れない夜には、不眠症認知行動療法(CBT-I)の原則が有効です。特に「15分ルール」(眠れなければ一度ベッドから出る)を試してみましょう13
  • アロマやハーブティーは、子宮収縮作用を持つものがあるため注意が必要です。使用前には必ずかかりつけの医師に相談してください18

第1章 妊娠期間別に見る睡眠の課題:「なぜ」を理解する

「妊娠してから、なぜこんなに眠れないのだろう…」と、戸惑いや不安を感じる夜があるかもしれません。その気持ち、とてもよく分かります。実はその原因は、時期ごとに変化するホルモンや体の変化によるもので、あなただけが経験していることではありません。科学的には、妊娠中の睡眠障害は、プロゲステロンとエストロゲンというホルモンの劇的な変化、大きくなる子宮による身体的な圧迫、そして出産への自然な不安という、主に3つの要因が複雑に絡み合って生じます。この仕組みは、まるで体の中で新しい交通整理が始まったようなものです。普段はスムーズに流れていた道路(血管や神経)が、新しい建物(子宮)の建設工事で混雑したり、交通ルール(ホルモンバランス)が一時的に変わったりするのに似ています56。だからこそ、まずはその「なぜ」を理解し、ご自身の体の変化を優しく受け入れることから始めましょう。

妊娠初期(〜13週):ホルモンの急増期

妊娠初期は、特にプロゲステロンというホルモンが急激に増加します。このホルモンは妊娠を維持するために不可欠ですが、その副作用として日中に強い眠気を引き起こす一方で、夜の眠りを浅くすることがあります。さらに、大きくなり始めた子宮が膀胱を圧迫し始めるため、夜中に何度もトイレに行きたくなる「頻尿」も多くの妊婦さんが経験します。ある調査では、妊娠2ヶ月未満でも72%の女性が頻尿を経験すると報告されています7。これに加えて、つわりによる不快感が、夜間の安眠をさらに妨げることがあります。

妊娠中期(14〜27週):比較的穏やかな時期

多くの妊婦さんにとって、妊娠中期は「ハネムーン期」とも呼ばれ、つわりが落ち着き、体のエネルギーも回復するため、睡眠にとっても比較的過ごしやすい時期です。しかし、この時期から胎動を感じ始めたり、足のつり(こむら返り)が起こりやすくなったりと、後期に向けた変化の兆しが現れ始めます。

妊娠後期(28週〜):不快感のピーク

妊娠後期は、身体的な不快感が最も強まる時期です。大きくなった子宮がお腹のすべてを圧迫し、楽な寝姿勢を見つけること自体が困難になります。実際に、妊娠8ヶ月以上の妊婦さんの94%が寝姿勢の困難を報告しているというデータもあります7。また、横隔膜が押し上げられることによる息苦しさや、ホルモンの影響による鼻づまりから、いびきをかきやすくなることもあります。これらに加え、間近に迫った出産への期待と不安が入り混じり、精神的な要因も眠りを妨げやすくなります。

このセクションの要点

  • 妊娠中の睡眠問題は、初期・中期・後期で原因が異なり、主にホルモン、身体的変化、心理的要因の3つが影響します。
  • 初期はホルモンによる眠気と頻尿、中期は比較的安定、後期は子宮の増大による物理的な不快感が主な原因です。

第2章 安眠の土台作り:科学的根拠に基づく睡眠衛生の徹底

毎晩ぐっすり眠るための準備は、実は眠るずっと前から始まっています。多くの方が「夜眠れないから、早く寝なければ」と考えがちですが、専門家は逆のアプローチを推奨しています。それは、まず「朝起きる時間」を固定することです。これは、私たちの体の中にある「体内時計」を正確にセットするための最も強力な方法です。科学的には、決まった時間に起き、朝日を浴びることで、脳は覚醒のスイッチを入れ、夜に自然な眠りを誘うホルモン「メラトニン」が適切な時間に分泌されるようリズムを整えます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」でも、「早起きが早寝に通じる」と明確に述べられています6。そのため、まずは週末も含めて毎日同じ時刻に起きることから始めてみませんか。

睡眠環境を整える:寝室を「聖域」に

快適な睡眠のためには、寝室の環境作りが欠かせません。寝室は涼しく(20〜26℃程度)、できる限り暗く、静かに保つことが理想です。特に妊婦さんは基礎体温が高めなため、涼しいと感じるくらいの室温が快適な場合があります。また、不眠症の治療法の一つである「刺激制御法」では、「ベッドは睡眠と性生活のためだけの場所」とされています。ベッドの中でスマートフォンを見たり、食事をしたりすることをやめるだけで、脳は「ベッド=眠る場所」と再認識し、入眠がスムーズになる効果が期待できます。

光と食事のタイミング

夜の眠りは、日中の光の浴び方と食事に大きく影響されます。朝起きたらまずカーテンを開け、15分ほど自然光を浴びましょう。逆に、夜、特に就寝1〜2時間前は、スマートフォンやPCの画面が発するブルーライトを避けることが重要です。ブルーライトはメラトニンの分泌を抑制し、脳を覚醒させてしまうからです。食事については、就寝直前の満腹は避け、夕食は寝る2〜3時間前までに済ませるのが理想的です。特にカフェインは覚醒作用が長く続くため、午後以降の摂取は控えましょう。

今日から始められること

  • 明日から、週末でも平日と同じ時間に起きることを試してみましょう。
  • 就寝1時間前になったらスマートフォンを充電器に置き、代わりに静かな音楽を聴いたり、軽い読書をしたりする時間にしてみましょう。
  • 日中の水分補給は大切ですが、夜間の頻尿を減らすために、就寝2時間前からは水分を控えるように調整してみましょう。

第3章 安全で快適な寝姿勢の技術と科学

お腹が大きくなってくると、どんな姿勢で寝ても苦しく、「楽な寝方」を探すこと自体がストレスに感じられるかもしれません。そのお悩み、後期を迎えた多くの妊婦さんが同じように感じています。実は、単に快適さだけでなく、赤ちゃんの安全のために、特に知っておくべき寝姿勢の科学があります。最も重要なのは、大きくなった子宮がお母さんの体の主要な血管を圧迫するのを避けることです。科学的には、この圧迫は体内の血液循環、特に下半身から心臓へ血液を戻す「下大静脈」の流れを妨げる可能性があります。これは、庭の水やりで使う水道のホースを足で踏んでしまうと、水の出が悪くなるのと似ています。この血流の低下が、胎盤を通じて赤ちゃんに送られる酸素や栄養の量に影響する可能性があるため、専門家は特定の姿勢を避けるよう強く推奨しています。だからこそ、この章で解説する、医学的に推奨される安全な寝姿勢を身につけることが非常に大切なのです。

極めて重要な安全勧告:仰向け寝(仰臥位)を避ける

複数の研究結果に基づき、英国のNICE(国立医療技術評価機構)ガイドラインを含む多くの国際的な主要ガイドラインは、妊娠28週以降は仰向け(仰臥位)で寝ることを避けるよう勧告しています10。仰向けの姿勢では、子宮の重みが下大静脈を直接圧迫し、心臓に戻る血液量を減少させ、結果として胎盤への血流が低下するリスク(仰臥位低血圧症候群)があるからです。複数の研究を統合した2019年のメタアナリシスでは、仰向けで寝始めることと死産のリスク上昇との間に関連性があることが示唆されています(調整済みオッズ比 約2.63)8。ただし、夜中に目が覚めて仰向けになっていても、パニックになる必要はありません。重要なのは「寝始めの姿勢」です。もし仰向けで目覚めたら、 đơn giảnに横向きに戻れば問題ありません。

最適な寝姿勢「シムス位」

最も安全で快適な姿勢として推奨されているのが「シムス位」です。これは、基本的に左側を下にして横になり、上の脚(右脚)を軽く曲げて前方に倒し、その下にクッションや抱き枕を挟んで支える姿勢です。左向きが推奨されるのは、下大静脈が体の右側を走っているため、圧迫を最も効果的に避けられるからです11。抱き枕やクッションを背中やお腹、膝の間に戦略的に配置することで、この姿勢を安定させ、腰への負担を和らげることができます。専用の抱き枕がなくても、家にあるクッションや丸めたバスタオルで十分に代用できます。

受診の目安と注意すべきサイン

  • 仰向け寝のリスク: 妊娠28週以降は、死産のリスクとの関連が指摘されているため、意識的に横向きで寝始めるようにしましょう。
  • 無理は禁物: 左向きが理想ですが、もし苦しい場合は右向きでも問題ありません。最も重要なのは、仰向けを避けることです。

第4章 妊娠特有の睡眠トラブルへの標的型ソリューション

夜中に突然、足が「ピーン!」と張って激痛で目が覚める。あるいは、脚がむずむずして、じっとしていられない。これらは妊娠中、特に後期によく見られる睡眠の妨げです。その不快感、本当にお辛いですよね。多くの場合、これらの問題は個別の病気というより、妊娠による体の大きな変化、特に血液循環の変化や特定の栄養素の需要増加が原因で起こります。体内で起きていることは、いわば交通量の増えた高速道路のようなものです。血液という車が増え、かつお腹の赤ちゃんという新しい目的地へのルートができたことで、一部の道路(特に脚の血管)で渋滞が起きやすくなっているのです。そのため、血行を良くし、必要な栄養を補給するという基本的なアプローチが、これらの異なる症状の多くを同時に和らげる鍵となります。ここでは、具体的な症状ごとに対処法を見ていきましょう。

足のつり(こむら返り)

就寝前の穏やかなストレッチや、日中の十分な水分補給が予防に繋がります。また、カルシウムやマグネシウムといったミネラルの不足も一因とされるため、乳製品や緑黄色野菜、バナナなどを意識的に食事に取り入れると良いでしょう。もし足がつってしまった場合は、慌てずに足の指先をゆっくりと自分の体の方へ引き、ふくらはぎの筋肉を伸ばしてください。

夜間頻尿

睡眠を妨げる大きな原因の一つですが、日中の水分摂取を減らすのは危険です。対策としては、水分の摂り方を工夫することが重要です。日中はしっかり水分を摂り、就寝前の2〜3時間は摂取を控えるようにしましょう。また、排尿時に少し前かがみになり、膀胱を完全に空にするように意識することも効果的です。

今日から始められること

  • 寝る前に、壁に足の裏をつけてふくらはぎを5分ほどゆっくり伸ばすストレッチを取り入れてみましょう。
  • 日中の飲み物を、利尿作用のあるカフェイン飲料から、ミネラル豊富な麦茶やルイボスティーに変えてみましょう。
  • 骨盤底筋を鍛える「ケーゲル体操」を日中の隙間時間に行うことで、尿意のコントロールが改善されることがあります。

第5章 心を育む:安眠のための精神的・感情的ウェルビーイング

ベッドに入ると、これからの出産や育児への期待と同時に、様々な不安が頭をよぎって目が冴えてしまう。そんな夜を過ごしていませんか。それは、お母さんになる準備をしているからこその、ごく自然な心の働きです。心が活動的になっている時に、体に「眠れ」と命令しても、なかなかうまくいきません。科学的には、このような「思考の反芻(はんすう)」は脳を覚醒状態に保ち、入眠を妨げます。これは、静かに着陸態勢に入りたい飛行機が、管制塔(脳)から次々と新しい指示を受け続けているような状態です。着陸するためには、まず管制塔との通信を一旦休止し、心を穏やかな状態に導く必要があります。2024年のメタアナリシスでも、妊娠中の不眠に対する認知行動療法(CBT-I)の安全性と有効性が確認されています14。だからこそ、体だけでなく、心のスイッチを「おやすみモード」に切り替えるための、具体的な戦略を試してみませんか。

思考が駆け巡る夜の「15分ルール」

不眠症認知行動療法(CBT-I)の中でも特に効果的なのが「刺激制御法」、通称「15分ルール」です。これは、ベッドに入って15〜20分経っても眠れない場合は、一度思い切ってベッドから出る、というものです。そして、別の部屋で画面を見ずに静かな活動(例えば、難しくない本を読む、編み物をするなど)を行い、眠気を感じてから再びベッドに戻ります。これを繰り返すことで、「ベッド=眠れない場所」という脳の誤った学習をリセットし、「ベッド=眠る場所」という本来の結びつきを再構築することができます13

安全なリラクゼーション法

就寝の1〜2時間前に、熱すぎないお湯(38〜40℃)での入浴は、一時的に上がった体温が下がる過程で自然な眠気を誘います。また、マタニティヨガも睡眠の質を改善するという報告がありますが、安全が第一です。お腹を圧迫するポーズや、強いねじりのポーズ、後期における仰向けのポーズは避け、資格のある指導者のもとで行うか、マタニティ専用のプログラムを選びましょう。

今日から始められること

  • 今夜もし眠れないと感じたら、「15分ルール」を試してみましょう。無理に寝ようとせず、一度ベッドから出てリラックスすることが大切です。
  • 夕方の早い時間帯に、心配事や明日のタスクをノートに書き出す「ジャーナリング」の時間を5分だけ作ってみましょう。頭の中を整理することで、就寝時の思考の反芻を防ぎます。
  • アロマやハーブティーは、ラベンダーやカモミールなど一般的に安全とされるものでも、必ずかかりつけの医師に相談してから使用してください。

第6章 専門家の助けを求める時と日本の相談窓口

ここまで様々なセルフケアの方法をご紹介してきましたが、「試してみても、どうしても眠れない」「日中の生活に支障が出るほど辛い」と感じることもあるでしょう。そのように感じること、決して弱いからではありません。妊娠という特別な時期には、専門家のサポートが必要になるのはごく普通のことです。特に、いびきがひどくなったり、睡眠中に呼吸が止まっていると家族から指摘されたりした場合は注意が必要です。科学的には、これらは「睡眠時無呼吸症候群(OSA)」のサインかもしれません。OSAは、お母さん自身の血圧や、赤ちゃんへの酸素供給に影響を与える可能性があるため、早期の相談が重要です。これは、家の火災報知器が鳴っているような状態です。小さな煙かもしれないし、本当に火事の始まりかもしれません。いずれにせよ、専門家(消防士)に点検してもらうのが最も安全な選択です。ためらわずに、かかりつけの産科医や地域の相談窓口に連絡してください。

日本国内のサポートリソース

日本には、妊婦さんとそのご家族を支えるための公的な相談窓口が各自治体に設置されています。かかりつけの産婦人科はもちろんのこと、地域の保健センターや子育て世代包括支援センターでは、助産師や保健師が様々な相談に応じてくれます。下記の表は一例ですが、お住まいの市区町村のウェブサイトで「母子保健」や「子育て支援」といったキーワードで検索すると、より身近な窓口の情報が見つかります。

受診の目安と注意すべきサイン

  • 大きないびきが続き、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された場合。
  • セルフケアを1〜2週間試しても不眠が全く改善せず、日中の眠気や気分の落ち込みがひどい場合。
  • 脚のむずむず感が非常に強く、生活の質を著しく下げている場合。
  • 2週間以上にわたり、気分の落ち込みや、何事にも興味が持てないといった「産前うつ」の兆候が続く場合。

よくある質問

妊娠後期に仰向けで寝てしまうのが怖いのですが、どうすれば防げますか?

まず、寝始めの姿勢を意識して横向きになることが最も重要です。さらに、背中の後ろにクッションや抱き枕を置くことで、無意識に仰向けになるのを物理的に防ぐことができます。もし夜中に仰向けで目覚めても、心配しすぎずに、静かに横向きに戻れば大丈夫です9

「15分ルール」を試しても、結局眠れずに朝になってしまいそうで不安です。

そのお気持ちはよく分かります。「15分ルール」の目的は、無理に眠ることではなく、「ベッドの上で眠れないまま苦しむ時間」を減らすことです。ベッドから出てリラックスすることで、眠りへのプレッシャーから解放され、結果的により早く眠れることが多くの研究で示されています。眠れなくても焦らず、「今はリラックスする時間」と捉えてみてください13

昼寝はしても良いのでしょうか?

はい、昼寝は有効な疲労回復手段です。ただし、夜の睡眠に影響を与えないように、午後の早い時間帯(できれば15時まで)に、20〜30分程度の短い時間にとどめるのがコツです。長い昼寝や夕方の昼寝は、夜の寝つきを悪くする可能性があるため注意しましょう1

結論:休息を妊娠という旅の重要な一部として受け入れる

本ガイドで詳述したように、妊娠中の睡眠問題は多岐にわたりますが、その多くは科学的根拠に基づいたアプローチによって改善が可能です。最も重要な戦略は、①毎日同じ時刻に起きることで生活リズムを確立すること、②妊娠後期は安全な「シムス位」で休むこと、そして③眠れないことへの不安を手放し、心を穏やかに保つ習慣を取り入れることです。睡眠の課題は、妊娠という素晴らしい旅の一部であり、個人の失敗ではありません。ご自身に優しくあることを忘れず、かかりつけの医療チームと積極的に連携し、あなたに最も合った方法を見つけることが大切です。十分な休息をとることは、健康な赤ちゃんを育むための、そして母親自身の心身を守るための、不可欠で尊い「仕事」なのです。

免責事項

本コンテンツは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療に関する意思決定の前に、必ず医療専門職にご相談ください。

参考文献

  1. Gidget Foundation. Changes to sleep during pregnancy. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  2. 香坂雅子. 女性の睡眠障害. 日本睡眠学会. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  3. Kwekkeboom K, et al. Effectiveness of nonpharmacological sleep interventions in pregnancy: a systematic review and meta-analysis. J Clin Sleep Med. 2025. リンク
  4. 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠指針の改訂について(案). 2023. [PDF]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  5. Gupta R, et al. Insomnia during pregnancy: Diagnosis and Rational Interventions. J Nat Sci Biol Med. 2016. リンク
  6. 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド 2023. 2023. [PDF]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  7. sleep1.jp. 健康づくりのための睡眠ガイド(2023)の内容を詳細に紹介!(その6)女性の睡眠(妊娠). [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  8. Warland J, et al. Maternal sleep during pregnancy and poor fetal outcomes: A scoping review of the literature with meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019. リンク
  9. NHS. 27 weeks pregnant – Week-by-week guide. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  10. NICE. Routine antenatal care for women and their babies. The BMJ. 2021. [PDF]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  11. BabyプラスWEB. 妊娠中でもぐっすり眠りたい. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  12. Cronin RS, et al. Sleeping posture in pregnancy. CMAJ. 2025. リンク
  13. 国立精神・神経医療研究センター. 睡眠障害・睡眠問題に対する支援マニュアル -保健師・対人援助職向け-. [PDF]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  14. ケアネット. 妊婦の不眠症に対する認知行動療法の有用性~メタ解析. 2024. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  15. Studio Shuca. 【妊活中 アロマテラピー 禁忌】注意点!安全に楽しむための基本知識. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  16. Aroma Ritardando. 妊娠中・分娩中・産後に精油を楽しむ方法と禁忌. 2023. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  17. Oishi-Kenko. 妊娠中に食べすぎ・飲みすぎてはいけないもの. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
  18. 厚生労働省eJIM. カモミール[ハーブ – 医療者]. [インターネット]. [引用日: 2025-09-11]. リンク
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ