唾液腺がん(Salivary Gland Carcinoma – SGC)は、組織病理学的な多様性と臨床的挙動を特徴とする不均一な悪性腫瘍群です。比較的まれで、全頭頸部がんの約6%を占めるに過ぎませんが、その複雑さから高度に専門的な集学的アプローチが求められます2。本レポートでは、疫学データ、国内外の臨床ガイドライン、最新の研究成果を統合し、SGCを包括的に分析します。主な結論として、組織型と悪性度が最も重要な予後因子であり、臨床経過と治療選択を決定づけることが示唆されます。限局性疾患に対する根治的切除術は依然として治療の根幹であり、高リスク症例における局所領域制御には術後放射線療法が不可欠な役割を果たします。進行・再発・転移例に対しては、精密医療の時代が到来し、従来の化学療法から、アンドロゲン受容体(AR)、HER2、NTRK融合遺伝子などのバイオマーカーに基づく分子標的治療へとパラダイムシフトが起きています13。本レポートは、患者の転帰を最適化するために、正確な診断、徹底した病期分類、そして集学的チームによる管理の重要性を強調するものです。
この記事の科学的根拠
本記事は、日本の公的機関・学会ガイドラインおよび査読済み論文を含む高品質の情報源に基づき、出典は本文のクリック可能な上付き番号で示しています。
要点まとめ
- 唾液腺がんは20種類以上の多様な組織型を持つまれながんであり、発生部位によって悪性度が大きく異なります。特に舌下腺に発生した腫瘍はほぼ100%が悪性です。15
- 治療の基本は外科的切除ですが、高悪性度や進行例などリスクが高い場合には、再発を防ぐために術後放射線療法(PORT)が強く推奨されます。57
- 進行・転移例の治療は大きく進歩しており、AR、HER2、NTRKといった腫瘍の遺伝子情報(バイオマーカー)に基づいた分子標的治療が中心となっています。1320
- 腺様嚢胞がん(ACC)のように、進行は遅いものの数十年後に再発することがあるタイプも存在するため、診断された組織型に応じて長期的な経過観察が不可欠です。1617
唾液腺がんの性質と範囲
顔や首にできた原因不明のしこり。「ただの腫れだろう」と思いつつも、もしかしたら悪いものではないかと不安がよぎる—。そのお気持ちは、とてもよく分かります。多くのがんの原因が完全には解明されていないため、ご不安に思われるのは当然です。科学的には、唾液腺がんの発生メカニズムはその種類の多様性にあり、これはまるで天気のようです。「雨」という一つの言葉では、霧雨と台風の大きな違いを表現できないように、「唾液腺がん」という一つの病名だけでは、その性質を語ることはできません。だからこそ、まず知っていただきたいのは、確立されたリスク要因は非常に限定的であるということです。過度に心配せず、まずはご自身の状況を正確に理解することから始めましょう。
定義と解剖学的分類
唾液腺がんは、唾液を分泌する組織である唾液腺の上皮から発生する、不均一な悪性腫瘍群と定義されます。これは比較的まれな疾患で、頭頸部に発生するがん全体の約6%を占めるに過ぎません2。体の構造上、唾液腺は大きく二つに分類されます。一つは耳下腺、顎下腺、舌下腺からなる「大唾液腺」、もう一つは口の中や喉の粘膜下に無数に散らばる「小唾液腺」です。この発生部位は、単なる場所の違い以上の意味を持ちます。科学的なデータによると、腫瘍が悪性である確率は発生部位によって劇的に変化することが、日本頭頸部外科学会1によって示されています。例えば、唾液腺がんの70-76%が発生する耳下腺では、腫瘍が悪性である確率は15-32%ですが、舌下腺にできた腫瘍はほぼ100%が悪性であると報告されています5。このように、しこりが見つかった場所が、医師が初期診断を下す上での重要な手がかりとなるのです。この記事で扱う頭頸部がんの中でも、唾液腺がんは特に複雑な疾患の一つです。
疫学と世界的な負担
唾液腺がんの罹患率は低く、西側諸国では年間10万人あたり約3例と報告されています6。診断される年齢の中央値は55歳から60歳で、やや男性に多い傾向が見られます2。予後を測る上で重要な指標となるのが、発見された時点での病気の進行度(病期)です。米国立がん研究所(NCI)が管理する大規模データベース(SEER、2015-2021年)の分析によると、がんが最初に発生した場所にとどまっている「限局性」の場合、5年後の相対生存率は96%と非常に良好です。しかし、周囲のリンパ節に転移している「領域リンパ節転移」では70%、肺や骨など他の臓器に転移している「遠隔転移」では42%へと低下します8。
原因と特定されたリスク要因
残念ながら、ほとんどの唾液腺がんの直接的な原因はまだ解明されていません2。他の多くの頭頸部がんと異なり、喫煙や過度の飲酒との明確な関連性は確立されていません。現在、科学的に最も確実なリスク要因とされているのは、過去に頭頸部へ受けた電離放射線被曝(例えば、他の病気の治療のための放射線照射など)です9。その他、いくつかの潜在的なリスク要因が示唆されています。例えば、ニッケル合金やシリカなどの粉塵を扱う職業に従事している方や、まれなタイプであるリンパ上皮腫様がんではエプスタイン・バー(EB)ウイルスへの感染が関連していると、Johns Hopkins Medicine9は報告しています。
このセクションの要点
- 唾液腺がんは発生部位(耳下腺、顎下腺、舌下腺など)によって悪性度が大きく異なり、これが初期診断の重要な手がかりとなります。
- 確立された唯一のリスク要因は過去の頭頸部への放射線被曝であり、他の原因の多くはまだ不明です。
組織病理学的および分子的背景
「唾液腺がん」と診断されたけれど、種類がたくさんあるようで自分のタイプがよくわからない—。そのように感じられるのは無理もありません。20種類以上もの複雑な分類があり、専門家でなければ混乱してしまうことでしょう。重要なのは、この分類が単なる名前の違いではなく、がんの性格や治療方針を決定づける設計図のようなものだということです。科学的には、がんの性質を理解するプロセスは、犯罪捜査に似ています。まず、現場の状況(組織型)を顕微鏡で詳細に観察し、次に犯人の特徴的な指紋(分子バイオマーカー)を探します。この二つの情報が揃って初めて、効果的な対策(治療法)を立てることができるのです。だからこそ、主治医にご自身の正確な病理診断名(例:「低悪性度・粘表皮がん」など)と、分子検査の必要性について尋ねてみることが、治療への第一歩となります。
WHO組織病理分類
唾液腺がんの最も顕著な特徴は、その驚くべき多様性です。世界保健機関(WHO)による分類は改訂を重ね、最新の第5版では20種類以上の異なる悪性サブタイプ(亜型)が正式に認められています12。この組織型(顕微鏡で見たときの顔つき)は、がんの臨床的な振る舞い、治療への反応、そして最終的な予後を決定する上で最も重要な要因の一つです1。代表的なものには、最も頻度の高い「粘表皮がん(MEC)」、神経に沿って広がりやすい「腺様嚢胞がん(ACC)」、非常に悪性度の高い「唾液腺導管がん(SDC)」などがあります。近年では、分子生物学の進歩により、「NTRK融合遺伝子を持つ分泌がん」のように、遺伝子情報に基づいたさらに詳細な分類が登場し、個別化医療の道を切り拓いています13。
表1:唾液腺の悪性上皮性腫瘍に関するWHO分類(第5版に基づく)
組織型 | ICD-Oコード |
---|---|
粘表皮がん(Mucoepidermoid carcinoma) | 8430/3 |
腺様嚢胞がん(Adenoid cystic carcinoma) | 8200/3 |
腺房細胞がん(Acinic cell carcinoma) | 8550/3 |
分泌がん(Secretory carcinoma) | 8502/3 |
多形がん(Polymorphous carcinoma) | 8525/3 |
硝子化明細胞がん(Hyalinising clear cell carcinoma) | 8310/3 |
基底細胞腺がん(Basal cell adenocarcinoma) | 8147/3 |
非浸潤性乳管がん(Intraductal carcinoma) | 8500/2 |
唾液腺導管がん(Salivary duct carcinoma) | 8500/3 |
筋上皮がん(Myoepithelial carcinoma) | 8982/3 |
上皮筋上皮がん(Epithelial-myoepithelial carcinoma) | 8562/3 |
粘液腺がん(Mucinous adenocarcinoma) | 8480/3 |
多形腺腫由来がん(Carcinoma ex pleomorphic adenoma) | 8941/3 |
癌肉腫(Carcinosarcoma) | 8980/3 |
脂腺がん(Sebaceous adenocarcinoma) | 8410/3 |
リンパ上皮がん(Lymphoepithelial carcinoma) | 8082/3 |
扁平上皮がん(Squamous cell carcinoma) | 8070/3 |
唾液腺芽腫(Sialoblastoma) | 8974/1 |
唾液腺がん、NOSおよび新興エンティティ | 8140/3 |
出典: ICCR, 202412
腫瘍の悪性度の重要性
組織型に加え、もう一つ極めて重要なのが腫瘍の「悪性度(グレード)」です。これは、がん細胞が正常な唾液腺細胞からどれだけかけ離れた姿をしているかを示す指標で、通常は低、中、高の3段階に分類されます。低悪性度(高分化型)のがんは、正常細胞に似ており、比較的ゆっくりと増殖し、予後も良好です15。一方で、高悪性度(低分化型)のがんは、正常細胞とは似ても似つかない姿をしており、急速に増殖・転移しやすく、より悪い予後と関連します。この悪性度は、治療方針を決定する上で決定的な役割を果たします。例えば、2024年に学術誌「Cancers」で発表されたメタアナリシスでは、高悪性度であることが術後に放射線治療を追加(術後補助放射線療法、PORT)すべきかどうかの最も重要な判断基準の一つであると結論付けられています5。
主要な分子的ドライバーとバイオマーカー
現代のがん治療は、顕微鏡による形態観察から、がん細胞の遺伝子レベルでの解析へと大きくシフトしています。特に進行・再発した唾液腺がんでは、この分子プロファイリング(遺伝子情報の解析)が治療の羅針盤となります。特定の遺伝子変異やタンパク質の発現(バイオマーカー)を特定することで、その弱点を狙い撃ちする「分子標的治療」が可能になるのです。国立がん研究センター東病院13によると、主要なバイオマーカーには以下のようなものがあります:
- アンドロゲン受容体(AR): 主に唾液腺導管がん(SDC)で強く発現しており、前立腺がんで使用されるホルモン療法(抗アンドロゲン療法)が有効な場合があります。
- HER2: 乳がんで有名なバイオマーカーですが、SDCの一部でも過剰発現が見られ、抗HER2薬(例:トラスツズマブ)の標的となります。
- NTRK融合遺伝子: 分泌がんなどで見られるまれな遺伝子異常ですが、TRK阻害薬という特効薬があり、劇的な効果を示すことがあります。
- MYB-NFIB融合遺伝子: 腺様嚢胞がん(ACC)の半数以上で認められる特徴的な遺伝子異常で、将来的な治療標的として研究が進められています17。
このセクションの要点
- 唾液腺がんはWHO分類で20種類以上に細分化され、どのタイプかによってがんの性質が全く異なります。
- 進行がんの治療は、AR、HER2、NTRKといった遺伝子情報(バイオマーカー)を調べることで、個々の患者さんに最適な「分子標的薬」を選択する時代になっています。
臨床評価と病期分類
痛みも何もないのに、ただのしこりが「がん」かもしれないと言われて心配です—。初期の唾液腺がんは痛みを伴わないことが多いため、診断が遅れがちになることがあります。ご心配はもっともですが、早期発見が重要です。科学的には、がんの増殖は静かに始まることが多く、初期段階では体が警告サインを出さないことが珍しくありません。これは、がん細胞が元々は自分自身の正常な細胞だったため、免疫システムからの攻撃を巧みにかわす能力を持っているからです。しかし、がんがある程度の大きさになると、周囲の神経を圧迫したり、組織を破壊したりし始め、痛みや麻痺といった症状として現れます。ですから、持続するしこりや腫れに気づいたら、ためらわずに専門医(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)を受診し、精密検査を受けることが、未来の健康を守るための最も確実な一歩となります。
症状と臨床所見
唾液腺がんの最も一般的な初期症状は、耳の下、あごのライン、頬、または口の中に現れる、痛みを伴わない持続的なしこりや腫れです1。多くの場合、この「静かな」しこりのために受診が遅れる傾向にあります。しかし、以下のような「警告症状」が現れた場合は、悪性の可能性が高まるため、特に注意が必要です。
- しこりの急速な増大
- 痛みやしびれの出現
- 顔の片側の動きにくさ(顔面神経麻痺)18
- しこりが硬く、周囲の組織に固定されて動かない
これらの症状は、がんが進行し、周囲の神経や組織に浸潤(侵食)し始めているサインである可能性があり、早期の専門的な評価が不可欠です。
診断プロセス
診断は通常、以下の3つのステップを組み合わせて慎重に進められます。
- 臨床診察と画像診断:まず、医師が頭頸部を丁寧に触診し、しこりの大きさ、硬さ、可動性を評価します。その後、超音波検査でしこりの内部の様子を観察したり、CTやMRI検査で腫瘍の正確な範囲や周囲への広がり、リンパ節への転移の有無を詳細に評価したりします1。
- 細胞診・組織診(生検):確定診断のために、しこりの一部を採取して顕微鏡で調べる必要があります。最も低侵襲な方法は、細い針をしこりに刺して細胞を吸引する「穿刺吸引細胞診(FNA)」ですが、これだけでは良悪性の判断が難しい場合もあります。そのため、より太い針で組織片を採取する「針生検」や、手術でしこり全体を摘出して調べる「切除生検」が行われることも少なくありません2310。
- 病期分類(ステージング):診断が確定すると、がんの進行度を評価するためにTNM分類が用いられます。これは、原発腫瘍の大きさ(T)、領域リンパ節への転移(N)、遠隔臓器への転移(M)の3つの要素を組み合わせて、病期(ステージ)を決定するものです。この病期は、カナダがん協会14が指摘するように、予後を予測し、最適な治療計画を立てる上で最も重要な情報となります。
受診の目安と注意すべきサイン
- 顔や首に2週間以上消えないしこりや腫れがある場合。
- しこりが急に大きくなったり、痛みが出始めたりした場合。
- 顔の片側に原因不明の麻痺やしびれが生じた場合。
唾液腺がんの治療戦略
手術が必要と言われたが、顔に傷が残ったり、麻痺が出たりしないか怖い—。顔の手術には、機能や見た目に関する大きな不安が伴います。治療チームもその点を十分に理解し、最善の方法を検討します。科学的に見ると、治療戦略は「城攻め」に例えることができます。がんという城(原発巣)がまだ一つの場所に留まっている限局性の段階では、城壁ごと完全に取り除く「包囲殲滅作戦」(外科的切除)が最も効果的です。しかし、敵が城の外にまで散らばってしまった転移・再発の段階では、個々の兵士(がん細胞)が持つ特有の弱点(分子バイオマーカー)を突く「特殊部隊による精密攻撃」(分子標的治療)が必要になります。だからこそ、手術の方法、顔面神経温存の可能性、術後の変化について、納得がいくまで医師と話し合い、ご自身の状況に合った最適な戦略を一緒に見つけることが重要なのです。
外科的切除の中心的な役割
病変が限局している唾液腺がんに対して、治療の根幹をなすのは外科的切除です24。その最大の目標は、がん細胞を完全に切除し、手術で切り取った組織の断端(切り口)にがん細胞が残っていない状態(断端陰性)を達成することです。手術の方法は、がんの発生部位や大きさによって異なります。例えば、耳下腺がんでは、顔の表情を作る顔面神経をできる限り温存しながら腫瘍を切除する繊細な技術が求められます7。また、悪性度が高いがんや、画像検査でリンパ節転移が疑われる場合には、再発のリスクを減らすために、首のリンパ節を系統的に切除する「頸部郭清術」が同時に行われることがあります。
術後補助放射線療法と根治的放射線療法
手術後に、目に見えない微小ながん細胞が残存している可能性が高いと判断された場合、再発を防ぐ目的で放射線治療が追加されます。これを術後補助放射線療法(PORT)と呼びます。2024年の包括的なメタアナリシスによると、特に①高悪性度の組織型、②進行したT分類(T3-T4)、③手術の断端が陽性、④リンパ節転移が陽性、⑤神経への浸潤が見られる、といった高リスク因子を持つ患者さんにおいて、PORTが局所再発を有意に減少させることが強く推奨されています57。一方、がんが大きく進行していて手術が困難な場合や、患者さんの全身状態から手術が難しい場合には、根治を目指して放射線治療が単独で行われることもあります。日本では、一部の頭頸部がんに対して、先進医療である重粒子線治療が保険適用となっており、治療選択肢の一つとなっています25。
表2:病期とリスク因子に応じた治療法の概要
病期/リスク群 | 原発巣手術 | 頸部手術(郭清術) | 術後補助放射線療法(PORT) |
---|---|---|---|
早期(I/II期) – 低リスク | 陰性断端での広範切除 | 経過観察または選択的郭清(検討) | 通常は適応なし |
早期(I/II期) – 高リスク* | 陰性断端での広範切除 | 選択的または治療的郭清 | 推奨 |
局所進行(III/IVA期) | 隣接構造物を含む可能性のある広範切除 | 選択的または治療的郭清 | 強く推奨 |
切除不能例 | 非適用 | 必要に応じて生検 | 根治的放射線療法(化学療法併用も) |
再発/転移例(IVB/IVC期) | 症状緩和のための手術を検討 | 症状緩和のための手術を検討 | 症状緩和のための放射線療法 |
*高リスク因子には、高悪性度、T3-T4期、断端陽性/近接、リンパ節転移(pN+)、神経周囲浸潤(PNI)、脈管侵襲(LVI)が含まれる。57
進行・転移がんに対する全身療法
手術や放射線治療が困難な進行・転移性の唾液腺がんに対する治療は、近年大きく様変わりしました。従来の殺細胞性抗がん剤(化学療法)の効果が限定的であったのに対し、がん細胞が持つ特定の分子(バイオマーカー)を標的とする「分子標的治療」が主役となっています13。日本頭頸部癌学会19のガイドラインでも、これらの薬剤の使用が明記されており、その多くは日本国内で保険適用となっています。
表3:進行/再発SGCに対するバイオマーカーに基づく全身療法
バイオマーカー | 関連する組織型 | 推奨される治療法 | 日本での保険適用状況(2024年) |
---|---|---|---|
アンドロゲン受容体(AR)発現 | 唾液腺導管がん(SDC) | 抗アンドロゲン療法(例:ビカルタミド+リュープロレリン) | 承認(症例ごとの審査)22 |
HER2増幅/過剰発現 | SDC、腺がんNOS | トラスツズマブ+化学療法(例:ドセタキセル) | 承認21 |
NTRK遺伝子融合 | 分泌がん | TRK阻害薬(ラロトレクチニブ、エヌトレクチニブ) | 承認(コンパニオン診断薬と共に)19 |
腫瘍遺伝子変異量高(TMB-H)/マイクロサテライト不安定性高(MSI-H) | まれ | 免疫チェックポイント阻害薬(例:ペムブロリズマブ) | 承認(がん種横断的適応) |
今日から始められること
- ご自身の正確な病理診断(組織型と悪性度)と病期(ステージ)を主治医に確認し、メモしておく。
- 提案された治療法の目的、具体的な手順、期待される効果と副作用について、納得できるまで説明を求める。
- 分子標的治療の適応を調べるための遺伝子パネル検査について、主治医に相談する。
組織病理学的サブタイプ別の予後と転帰
自分のタイプの予後(生存率)を知るのが怖い—。統計データはあくまで集団のものであり、ご自身の未来を決定するものではありません。しかし、今後の見通しを知りたいというお気持ちも理解できます。科学的に言えば、予後を理解することは、天気予報を見るのに似ています。明日の降水確率が80%でも、必ず傘が必要になるとは限りませんが、備えをしておくことができます。同様に、ご自身の病理診断に基づく一般的な予後を知ることで、治療計画やその後の生活について、より現実的な見通しを持って医師と話し合うことができるようになります。個別化治療が進歩した今、状況は常に変化していることを心に留めながら、冷静に情報を受け止めることが重要です。
粘表皮がん(Mucoepidermoid Carcinoma – MEC)
粘表皮がんは、すべての唾液腺がんの中で最も頻度が高いタイプです15。このがんの最大の特徴は、予後が「悪性度(グレード)」によって天と地ほども違う点です。2017年に学術誌「Head and Neck Pathology」で発表された研究によると、悪性度の低い(低悪性度)MECの5年生存率は90%から100%と非常に良好で、治癒も期待できます。しかし、悪性度の高い(高悪性度)MECは非常に攻撃的な振る舞いを見せ、5年生存率は26%から43%へと急激に低下します27。このため、正確な悪性度診断が治療方針を左右する上で極めて重要となります。
腺様嚢胞がん(Adenoid Cystic Carcinoma – ACC)
腺様嚢胞がんは、唾液腺がんの中でも特にユニークな性質を持つがんです。その特徴は「ゆっくりとしつこい」という言葉に集約されます。増殖は比較的緩やかで、5年生存率も約80%と良好に見えます。しかし、このがんは神経に沿って広がる(神経周囲浸潤)傾向が非常に強く、また、治療から10年、20年という長い年月を経てから再発や遠隔転移(特に肺)をきたす「晩期再発」が問題となります。実際に、2017年の「Modern Pathology」誌の報告では、10年生存率は61%まで低下するとされています1716。このため、ACCと診断された患者さんは、症状がなくても生涯にわたる定期的な経過観察が必要となります。
唾液腺導管がん(Salivary Duct Carcinoma – SDC)
唾液腺導管がんは、まれではあるものの、唾液腺がんの中で最も悪性度の高いタイプの一つです。その名の通り、乳がんの乳管がんに組織の形態が似ており、非常に攻撃的な性質を持ちます。早期からリンパ節や他の臓器へ転移しやすく、予後は一般的に不良です。2015年のSEERデータベースを用いた大規模な解析では、5年生存率は40%から64%と報告されています2928。しかし、このがんはアンドロゲン受容体(AR)やHER2タンパクが陽性であることが多く、前述の分子標的治療の良い適応となるため、近年治療成績の向上が期待されています。
表4:主要なSGCサブタイプの予後と5年・10年生存率の比較
組織学的サブタイプ | 典型的な悪性度 | 主な特徴 | 5年生存率(推定) | 10年生存率(推定) |
---|---|---|---|---|
粘表皮がん(MEC)- 低悪性度 | 低 | 最も一般的、予後良好 | 90–100%27 | >90% |
粘表皮がん(MEC)- 高悪性度 | 高 | 侵襲的、早期転移 | 26–43%27 | データ不明 |
腺様嚢胞がん(ACC) | 低/中 | 緩徐な増殖、神経浸潤、晩期再発 | ~80%17 | ~61% |
唾液腺導管がん(SDC) | 高 | 非常に侵襲的、予後不良、しばしばAR/HER2陽性 | 40–64%29 | データ不明 |
腺房細胞がん | 低 | しばしば緩徐な増殖、予後良好 | ~82%30 | ~68% |
自分に合った選択をするために
低悪性度のがんの場合: 主な治療目標は、機能を温存しながらの完全な外科的切除です。追加治療が不要な場合も多く、長期的な予後は良好です。
高悪性度やACCの場合: 初期治療として、手術に加えて放射線治療などの追加治療(集学的治療)が必要になる可能性が高いです。また、診断された時点から、生涯にわたる定期的な検査とフォローアップ計画を立てることが極めて重要になります。
日本における臨床実践:ガイドラインと医療政策
最新の治療法があると聞いたが、日本で受けられるのか、保険は効くのか知りたい—。治療の選択肢と経済的な負担は、患者さんにとって切実な問題です。そのお気持ち、よく分かります。日本の医療制度は、国民皆保険という素晴らしい制度を基盤にしていますが、最先端の医療が保険適用となるまでには、安全性と有効性を慎重に評価するための時間が必要です。これは、新しい道路が開通する前に、安全基準を満たしているか厳密な検査が行われるのに似ています。科学的根拠が確立され、国(厚生労働省)の承認を得て初めて、誰もが安心してその道(治療)を利用できるようになるのです。だからこそ、ご自身の病状で適用可能な最新の治療法と、それらの保険適用状況について、主治医やがん相談支援センターに具体的に確認することが、ご自身に合った治療計画を立てる上で不可欠です。
JSHNCガイドラインの概要
日本の頭頸部がん診療における羅針盤となるのが、日本頭頸部外科学会(JSHNC)が発行する診療ガイドラインです。このガイドラインでも、唾液腺がん治療の第一選択は外科的切除であると明確に位置づけられています。また、穿刺吸引細胞診(FNA)だけでは診断が困難な場合が多く、最終的には手術で摘出した組織全体の病理診断が確定診断となることの多さも指摘しています。手術後の放射線治療の追加は、摘出した組織の病理結果(悪性度、断端、リンパ節転移など)に基づいて慎重に判断されます。そして、2024年の改訂版では、再発・転移例に対する分子標的薬の役割が明確に記載され、薬物療法が有効な選択肢であることが示されました191。
保険適用(保険適用)と新規治療法へのアクセス
日本の公的医療保険制度の下では、新しい治療法が保険適用となることで、患者さんは高額な医療費の一部負担のみで治療を受けられるようになります。唾液腺がん領域でも、近年、重要な進展がありました。
- 抗HER2療法:HER2陽性の唾液腺がんに対し、トラスツズマブが2021年11月に保険適用となりました21。
- 抗アンドロゲン療法:AR陽性の唾液腺がんに対し、リュープロレリンおよびビカルタミドが2024年2月から症例ごとの審査の上で保険適用が認められるようになりました22。
- TRK阻害薬:NTRK融合遺伝子陽性のがんに対し、ラロトレクチニブやエヌトレクチニブが「がん種横断的」な承認を得ており、唾液腺がんでも保険診療で使用可能です。
- 重粒子線治療:切除不能な一部の頭頸部がんに対しては、2024年6月から重粒子線治療が保険適用となり、治療の選択肢が広がりました25。
ただし、国立がん研究センター4などで有効性が報告されているさらに新しい薬剤(例:アパルタミド)などは、まだ保険適用外の場合もあります。最新の状況については、主治医やがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターで確認することが重要です。
今日から始められること
- ご自身のがんが分子標的治療の対象となるか(AR、HER2、NTRKなどのバイオマーカー検査を受けているか)を主治医に確認する。
- がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」を活用し、治療費や公的支援制度(高額療養費制度など)について相談する。
- 臨床試験(治験)も選択肢の一つです。現在参加可能な試験があるか、主治医に尋ねてみる。
今後の方向性と結論
唾液腺がんの治療は、個別化医療の深化とともに、新たな時代を迎えようとしています。その原動力となっているのが、がんの分子メカニズムのさらなる解明と、それに基づく新しい治療薬の開発です。未来の治療は、AIが膨大な遺伝子データと臨床データを解析し、個々の患者さんにとって最適な治療法の組み合わせを予測するような、より精密なものになるでしょう。これは、経験豊富なシェフが、お客さん一人ひとりの好みや体調に合わせて、最高の食材と調理法を選ぶのに似ています。患者さんにとって最も重要なのは、希望を失わず、最新の治療情報にアクセスし続けることです。臨床試験への参加は、その最も有望な手段の一つと言えます。
新しい治療法と進行中の臨床試験
現在、世界中で唾液腺がんに対する新しい治療法の開発が精力的に進められています。Memorial Sloan Kettering Cancer Center34などがん専門病院では、以下のようなアプローチが臨床試験で検証されています。
- 免疫療法の最適化:免疫チェックポイント阻害薬と放射線治療を組み合わせることで、治療効果を高める試みが行われています31。
- 新規抗体薬物複合体(ADC):HER2を標的とする新しいタイプの薬剤であるトラスツズマブ デルクステカンなどが、高い効果を示すことが期待されています32。
- 新規分子標的薬:まだ標的が見つかっていない遺伝子異常に対する新しい薬剤の開発も進んでいます。
再発・転移性の唾液腺がんの患者さんにとって、これらの臨床試験への参加は、標準治療では得られない新しい治療の機会を得るための重要な選択肢となります。
エビデンスのまとめと主要な推奨事項
唾液腺がんは、その多様性と希少性から、診断と治療に高度な専門知識を要する複雑な疾患です。最適な治療を行うためには、頭頸部外科医、放射線腫瘍医、腫瘍内科医、病理診断医、放射線診断医など、多分野の専門家からなる集学的チームによるアプローチが不可欠であると、米国国立がん研究所(NCI)24は強調しています。治療方針は、病期、発生部位、組織型、悪性度、分子プロファイル、そして患者さん個々の状態を総合的に考慮して、オーダーメイドで決定されるべきです。限局性疾患に対する外科的切除の重要性は揺るぎませんが、進行例においては分子標的治療が治療の主役となりつつあります。この複雑ながんに対する理解を深め、新しい治療法を開発するための継続的な研究が、今後の患者さんの予後をさらに改善していく鍵となるでしょう。
このセクションの要点
- 唾液腺がんの治療の未来は、より詳細な分子分類と、それに基づいた新規分子標的薬や免疫療法の開発にかかっています。
- 進行・再発した患者さんにとって、臨床試験への参加は最新の治療法へアクセスするための重要な選択肢です。
よくある質問
唾液腺がんは遺伝しますか?
ほとんどの唾液腺がんは散発性であり、明らかな遺伝的素因は知られていません。特定の遺伝性症候群(例:ブルック・スピーグラー症候群)でリスクが上昇することがありますが、これは非常にまれです。一般的に、ご家族に唾液腺がんの方がいても、ご自身のリスクが大幅に高まるわけではありません。
治療後の食事はどうなりますか?
手術部位や放射線治療の範囲によって、嚥下(飲み込み)や唾液の分泌に影響が出ることがあります。治療後は一時的に、または永続的に、柔らかい食事や水分を多く摂る工夫が必要になる場合があります。管理栄養士や言語聴覚士が、個々の状況に合わせた食事指導やリハビリテーションを提供します。
結論
唾液腺がんは、多種多様な顔を持つ複雑ながんですが、その診療は分子レベルでの理解に基づいた個別化医療の時代へと確実に移行しています。この記事で見てきたように、治療の成功は、正確な組織診断と病期分類、そして集学的チームによる最適な治療戦略の立案にかかっています24。限局した病変には外科的切除が基本であり、高リスク例には術後放射線療法が再発率を低下させます5。そして、進行・再発例に対しては、分子標的治療が新たな希望をもたらしています13。顔や首のしこりなど、気になる症状があればためらわずに専門医を受診すること、そして診断された場合は、ご自身の病状を正しく理解し、治療チームと納得のいくまで話し合うことが、最良の転帰への第一歩です。
免責事項
本コンテンツは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療に関する意思決定の前に、必ず医療専門職にご相談ください。
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