毛髪の健康に対するエッセンシャルオイルの専門的分析:科学的有効性、安全な適用法、および日本の法規制遵守
皮膚科疾患

毛髪の健康に対するエッセンシャルオイルの専門的分析:科学的有効性、安全な適用法、および日本の法規制遵守

植物由来成分への関心が高まる中、エッセンシャルオイル(精油)はヘアケア分野で大きな注目を集めています。しかし、その効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、市場に溢れる製品群を正確に理解することが不可欠です。特に、「エッセンシャルオイル」と「市販のヘアオイル」という二つの用語はしばしば混同されますが、その性質、目的、使用法は根本的に異なります12。この専門的分析報告書の冒頭として、まずこの基本的な誤解を解き、本報告書の目的と構成を明確にします。

この記事の科学的根拠

本記事は、日本の公的機関・学会ガイドラインおよび査読済み論文を含む高品質の情報源に基づき、出典は本文のクリック可能な上付き番号で示しています。

  • 男性型脱毛症に対するローズマリーオイルの有効性:2015年に発表されたランダム化比較試験では、ローズマリーオイルが医薬品ミノキシジル2%液と同等の育毛効果を示したことが報告されています。4
  • 日本の法規制:エッセンシャルオイル製品の表示や広告は、日本の医薬品医療機器等法(薬機法)によって厳しく規制されています。この記事では厚生労働省の公式文書に基づき解説します。3335

要点まとめ

  • ローズマリーオイルは、男性型脱毛症(AGA)に対して医薬品ミノキシジルと同等の育毛効果を持つことを示した唯一の臨床試験が存在するエッセンシャルオイルです。4
  • ペパーミントオイルは、動物実験においてミノキシジルを上回る劇的な発毛促進効果が確認されており、毛包を成長期へ誘導する力が強いとされます。8
  • ティーツリーオイルとレモングラスオイルは、フケの原因となる真菌を抑制する効果が臨床試験で証明されており、頭皮環境の改善に有効です。1216
  • エッセンシャルオイルは高濃度なため、必ずキャリアオイルで1〜3%に希釈して使用することが安全性の絶対原則です。原液塗布は皮膚トラブルの原因となります。30
  • 日本では薬機法により、雑貨として販売されるエッセンシャルオイルに「育毛」や「フケ防止」といった効果効能を記載することは法的に禁じられています。32

第I部:育毛と毛包刺激の科学 – エビデンスに基づく階層的分析

薄毛や抜け毛に悩み、科学的根拠のある対策を探しているものの、情報が多すぎてどれを信じれば良いか分からない、と感じることはありませんか。その気持ち、とてもよく分かります。多くの製品が育毛効果を謳う中で、本当に信頼できる成分を見分けるのは難しいことです。科学の世界では、その信頼性を「エビデンスの階層」という物差しで測ります。これは、研究デザインの信頼性によって情報を整理する考え方で、個人の体験談よりも、数百人を対象とした厳密な比較試験(ランダム化比較試験、RCT)の結果の方がはるかに信頼性が高い、というものです。この仕組みは、いわば食品の品質表示のようなもので、どの情報が「国産A5ランク」で、どれが「産地不明」なのかを見分けるのに役立ちます。

だからこそ、本章ではエッセンシャルオイルをこの「エビデンスの階層」に従って分析します。臨床試験という最高レベルの証拠を持つローズマリーから、強力な動物実験データを持つペパーミントまで、その科学的根拠の「ランク」を明確にすることで、あなたの賢明な選択をサポートします。

第1章:ローズマリー(Rosmarinus officinalis):毛髪密度に関する臨床研究が存在する植物成分

ローズマリーオイルは、育毛効果を裏付けるエビデンスの質において、他のエッセンシャルオイルとは一線を画します。その最大の理由は、医薬品との直接比較を含むヒト臨床試験の存在です。2015年に発表された画期的なランダム化比較試験では、男性型脱毛症(AGA)の患者100名を対象に、ローズマリーオイルと承認された育毛剤であるミノキシジル2%液の効果を6ヶ月間にわたり比較しました。その結果、6ヶ月後には両群ともに毛髪数が有意に増加し、その効果に統計的な有意差は認められませんでした。特筆すべきは、ローズマリーオイル群の方がミノキシジル群に比べて頭皮の掻痒感(かゆみ)という副作用が少なかった点です。この研究は、エッセンシャルオイルが医薬品と同等の臨床効果を示し得たという点で、ローズマリーをエビデンス階層の最上位に位置づける強力な根拠となります4

ローズマリーの作用機序は多角的です。一つは、AGAの主な原因であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成に関わる5α-リダクターゼという酵素の働きを阻害する可能性です57。さらに、頭皮の血行を促進して毛包への栄養供給を増やしたり、豊富な抗酸化・抗炎症成分で毛包細胞を酸化ストレスから保護したりすることも、その効果に寄与していると考えられています16

第2章:ペパーミント(Mentha piperita):強力な成長期誘導因子

ペパーミントオイルは、ヒトでの臨床試験はまだ十分ではありませんが、その劇的な育毛効果を示した質の高い動物実験により、エビデンス階層の第2位に位置づけられます。2014年に発表されたマウスを用いた前臨床研究では、3%のペパーミントオイルを4週間塗布したところ、約92%という驚異的な被毛再生が見られました。これは、比較対象であったミノキシジル3%液の約55%を大きく上回る結果でした8。組織学的分析でも、ペパーミントオイル群で真皮の厚さ、毛包の数、毛包の深さが有意に増加しており、ミノキシジル群と同等かそれ以上の効果が確認されています。

この強力な作用の背景には、ペパーミントオイルが毛包を「休止期」から「成長期」へと迅速に移行させる力があると考えられています。科学的には、このプロセスにインスリン様成長因子-1(IGF-1)といった重要なシグナル分子の発現増加が関与している可能性が示唆されています68。ただし、これはあくまで動物実験の結果であり、この有望な効果がヒトの脱毛症にどう応用できるかについては、今後の質の高い臨床試験による検証が不可欠です910

第3章:ラベンダー(Lavandula angustifolia):毛髪と頭皮への多角的アプローチ

ラベンダーオイルは、育毛と頭皮環境改善の両面からアプローチする多機能性が特徴です。その育毛効果に関して最も頻繁に引用されるのは、1998年に円形脱毛症患者86名を対象に行われたランダム化比較試験です。この研究では、ラベンダー、タイム、ローズマリー、シダーウッドをブレンドしたオイルを7ヶ月間使用した群で、44%の患者に改善が見られました。これは、キャリアオイルのみを使用した対照群の15%と比較して統計的に有意な差(p=0.008)であり、アロマセラピーの有効性を示す重要な結果です11。しかし、これは4種類のオイルを混合した結果であるため、ラベンダー単独の寄与度を正確に特定することはできません9。一方で、その強力な抗炎症作用や抗菌作用は、健康な髪が育つための土台となる頭皮環境を整える上で、重要な役割を果たすと考えられています。

自分に合った選択をするために

臨床試験での実績を最優先する場合: 男性型脱毛症(AGA)への対策として、医薬品との比較データがあるローズマリーオイルが最も信頼性の高い選択肢です。

成長のスピード感を期待する場合: 動物実験レベルではありますが、毛髪の成長期を強力に誘導する可能性が示されているペパーミントオイルが有望です。今後の臨床研究に期待が寄せられます。

頭皮環境の改善も視野に入れる場合: 育毛と同時に、抗炎症作用などで頭皮を健やかに保ちたい場合は、ブレンド研究で実績のあるラベンダーオイルが適しています。

第II部:健やかな頭皮環境の育成 – 活力ある毛髪の基盤

フケやかゆみ、頭皮のべたつきが気になり、それが原因で髪全体の健康も損なわれているように感じることは、決して珍しいことではありません。美しい髪は健康な頭皮という土壌から育まれるため、これらの不快な症状は、髪の成長を直接妨げかねない根本的な問題です。科学的には、これらのトラブルの多くは、頭皮の常在菌バランスの乱れ、特にマラセチア属という真菌の過剰な増殖が引き金となっていると考えられています14。この真菌は皮脂をエサに増殖し、その代謝物が頭皮を刺激してターンオーバーを異常に早め、フケやかゆみを引き起こすのです。このプロセスは、庭の手入れを怠った結果、雑草がはびこり、美しい花が育ちにくくなる状況に似ています。

だからこそ、大切なのは、原因となる微生物の活動を穏やかに抑え、頭皮の生態系を正常な状態に戻すことです。本章では、特にフケの原因菌に対する臨床効果が証明されているティーツリーやレモングラスなど、頭皮環境の「土壌改善」に役立つエッセンシャルオイルの科学的背景を詳しく見ていき、根本的な改善を目指します。

第4章:ティーツリー(Melaleuca alternifolia):フケ対策の抗菌スタンダード

ティーツリーオイルは、その強力な抗菌・抗真菌作用により、特にフケやかゆみの原因に対処する成分として確立された地位を築いています。その有効性は、2002年に126名を対象に行われたランダム化単盲検プラセボ対照試験によって臨床的に証明されています。この研究では、5%のティーツリーオイルを配合したシャンプーを4週間使用した群で、フケの重症度が41%改善しました。これは、プラセボ(偽薬)シャンプーを使用した群の11%の改善に留まったのと比較して、統計的に極めて有意な差(p<.001)です12。この結果は、ティーツリーオイルがフケに対して明確な臨床効果を持つことを示す強力なエビデンスです。

この効果の根幹にあるのは、ティーツリーオイルの主成分であるテルピネン-4-オールが、フケの主要な原因とされる常在真菌マラセチア属の増殖を効果的に抑制する力にあります1315。これにより頭皮の微生物バランスを正常化し、フケやかゆみを根本から改善に導くと考えられています。

第5章:レモングラス(Cymbopogon flexuosus):抗真菌性と収斂作用を持つトニック

レモングラスオイルもまた、フケ防止に有効な成分として注目されています。2015年に実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、10%のレモングラスオイルを配合したヘアトニックが14日間の使用でフケを約81%も減少させ、プラセボと比較して有意な改善が認められました169。この有効性の中心には、主成分であるシトラールが持つ強力な抗真菌作用があります17。さらに、レモングラスには収斂作用もあり、皮脂腺の活動を穏やかに調整することで、過剰な皮脂分泌を抑え、べたつきやすい頭皮を清潔に保つ効果も期待されます1819

第6章:シダーウッド(Cedrus atlantica):頭皮バランスを整える調整役

シダーウッドオイルは、皮脂分泌のバランスを整え、炎症を鎮める作用が期待されることから、古くから頭皮ケアに用いられてきました。前述の円形脱毛症に関するブレンド研究で有効な成分の一つとして使用された実績があります11。単独での強力な臨床エビデンスはまだ乏しいものの、その効果は、皮脂腺の働きを正常化する作用や、免疫調整・抗炎症作用によってもたらされると推定されています1921。これにより、乾燥性フケと脂性フケの両方に対応できる可能性があります。

今日から始められること

  • フケ・かゆみが主な悩みの場合:臨床効果が証明されているティーツリーオイルまたはレモングラスオイルを1〜2滴、普段お使いのシャンプーに混ぜて使用することを試してみましょう。
  • 頭皮のべたつきや乾燥が混在する場合:皮脂バランス調整が期待されるシダーウッドオイルをキャリアオイルで希釈し、週に1〜2回の頭皮マッサージを取り入れてみましょう。

第III部:毛髪の強靭性と質のための特殊な植物成分

髪が以前より細くなった、パサついて質が落ちてきたように感じるけれど、本格的な育毛剤を使うほどではない、という微妙な変化に悩んでいませんか。それは、多くの方が経験する悩みです。髪質の変化には、ホルモンバランスのゆらぎや頭皮のコンディションなど、育毛とは少し異なる側面からのケアが有効な場合があります。科学的には、特に女性の毛髪の健康は女性ホルモンであるエストロゲンのレベルと密接に関連しており、このホルモンが減少すると相対的に男性ホルモンの影響が強まり、毛髪が細くなることが知られています23。伝統的に使われてきた植物の中には、この繊細なバランスに働きかけるとされるものが存在します。それは 마치 정원의 토양에 특정 영양분을 추가하여 꽃의 색과 힘을 향상시키는 것과 같습니다。

だからこそ、本章では、育毛というよりは髪の質やホルモン性脱毛への視点から語られることが多いクラリセージや、伝統的にコンディショニングに使われてきたイランイランなどを取り上げます。これらのオイルに関する主張の多くは、直接的な臨床試験よりも理論や伝統に基づいているため、そのエビデンスの現状を透明性をもって評価し、あなたのケアにどう役立つ可能性があるのかを考えます。

第7章:クラリセージ(Salvia sclarea):ホルモン性脱毛への植物エストロゲン的視点

クラリセージオイルは、特に女性のホルモンバランスに関連する悩みに対して、アロマセラピーで伝統的に用いられてきました。その特異性は、含有成分であるスクラレオールに由来します22。スクラレオールは、女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ており、体内でエストロゲン様作用を示す可能性があることから、植物エストロゲン(フィトエストロゲン)の一種と考えられています20。このため、更年期などでエストロゲンが減少することによるホルモン性の薄毛を緩和するのではないか、という仮説が立てられています23。しかし、この仮説は理論的には興味深いものの、現時点でクラリセージが毛髪に直接作用して育毛を促進するという臨床試験は存在せず、さらなる科学的検証が必要です24

第8章:タイム(Thymus vulgaris):強力な抗酸化物質と循環刺激剤

タイムは、円形脱毛症に関する1998年のブレンド研究で有効性が示された成分の一つです11。その効能は、主成分であるチモールが持つ非常に強力な防腐・抗菌・抗酸化作用に大きく依存していると考えられています25。これらの特性は、頭皮上の有害な微生物の増殖を抑制し、酸化ストレスから毛包を保護することで、清潔で健康な頭皮環境を維持するのに貢献します。ただし、その刺激性が強いため、使用には特に注意が必要です。

第9章:イランイラン(Cananga odorata):毛髪のコンディショニングと光沢のための伝統的な万能薬

イランイランは、東南アジアでは古くから髪を美しく保つためのトニックとして利用されてきました。その役割は主にコンディショニング効果にあり、皮脂の分泌バランスを正常化させ、特に乾燥した頭皮や髪に天然の潤いを与えることで、パサつきや切れ毛を防ぐと考えられています26。育毛を直接促進するという科学的エビデンスは乏しいものの、髪の質感や輝きを向上させるための補助的なケアとして位置づけるのが妥当です276

このセクションの要点

  • クラリセージオイルには、女性ホルモン様作用を持つ可能性がある植物エストロゲンが含まれていますが、薄毛への直接的な効果は臨床的に証明されていません。
  • タイムオイルは強力な抗菌・抗酸化作用を持ちますが、皮膚への刺激が強いため注意が必要です。
  • イランイランオイルは、育毛効果よりも、皮脂バランスを整え髪の質感を向上させるコンディショニング目的での使用が主となります。

第IV部:日本における実践的かつ法規を遵守した適用フレームワーク

エッセンシャルオイルを安全かつ効果的に使いたいけれど、具体的な方法や注意点、特に日本での法的な位置づけがよく分からず、一歩を踏み出せずにいませんか。その慎重な姿勢は、とても大切です。なぜなら、エッセンシャルオイルは植物の力が凝縮された非常に強力な物質であり、正しい知識なしに使うとリスクを伴うからです。科学的には、その有効成分は皮膚に浸透して作用しますが、それは同時に、濃度や使い方を間違えれば皮膚刺激やアレルギーの原因にもなり得ることを意味します30。この関係は、よく効く薬には副作用のリスクも伴う、という状況と似ています。

さらに日本では、「医薬品医療機器等法(薬機法)」という厳格な法律が、製品に表示できる効果を細かく定めています。だからこそ、海外の研究で有望な結果が出ていても、日本の製品ラベルには「育毛」とは一言も書かれていないのです。本章では、安全な希釈濃度といった実践的なガイドと、この複雑な日本の法律を分かりやすく解説し、あなたが日本で賢く、安全にエッセンシャルオイルを活用するための具体的なフレームワークを提供します。

第10章:実践者のための安全かつ効果的な使用ガイド

エッセンシャルオイルの安全な使用における絶対原則は「希釈」です。純粋なエッセンシャルオイルは非常に高濃度であり、皮膚に直接塗布してはなりません29。必ずホホバオイルやアルガンオイルといったキャリアオイル(ベースオイル)で薄めてから使用することが、皮膚への刺激やアレルギー反応を避けるための最も重要なルールです3031。頭皮への使用における一般的な希釈濃度は1%から3%です。例えば、キャリアオイル30ml(大さじ2杯)に対して、エッセンシャルオイルを6滴(約1%濃度)から18滴(約3%濃度)加えるのが目安となります13

使用方法としては、希釈したオイルでの頭皮マッサージや、使用直前のシャンプーに1〜2滴混ぜる方法があります。ただし、個人の健康状態によっては使用を避けるべきオイル(禁忌)があるため、注意が必要です。例えば、妊娠中の方や高血圧の方はローズマリーやペパーミントの使用を避けるべきとされています。また、ティーツリーオイルは猫に対して非常に毒性が高いため、ペットのいるご家庭では特に注意が求められます。

第11章:日本の医薬品医療機器等法(薬機法)のナビゲーション

日本国内でエッセンシャルオイル製品を取り扱う際には、薬機法が定める厳格な規制を理解することが不可欠です。この法律により、製品はその目的や効果によって「雑貨」「化粧品」「医薬部外品」「医薬品」に分類されます。多くの純粋なエッセンシャルオイルは、人体への作用を示唆する効果効能を一切謳えない「雑貨」として販売されています32。そのため、ラベルには「芳香用」としか記載できず、「育毛」や「フケ防止」といった表現は法的に禁じられています。

一方、「化粧品」として販売されるヘアオイルは、「フケ、カユミを抑える」「頭皮、毛髪を健やかに保つ」といった薬機法で定められた56項目の範囲内の効果は標榜できますが、「発毛促進」のような医学的な効果を謳うことはできません3334。さらに、化粧品の広告では、「必ず効く」といった効果の保証表現や、科学的研究データの引用、医師の推薦、使用前後の写真の掲載も、消費者に誤解を与えるとして原則禁止されています35。この法的な枠組みが、店頭の製品ラベルと海外の科学的研究との間に情報の断絶が生じる理由です。

受診の目安と注意すべきサイン

  • 使用前に必ずパッチテストを行う:初めて使用するオイルは、腕の内側などに低濃度で塗布し、24時間〜48時間様子を見て、赤み、かゆみ、発疹などが出ないか確認してください。
  • 禁忌事項を確認する:妊娠中・授乳中の方、てんかん、高血圧などの持病がある方、特定の薬を服用中の方は、使用前に必ず医師や専門家に相談してください。
  • 異常を感じたらすぐに中止する:使用中に皮膚の異常や気分の不調を感じた場合は、直ちに使用を中止し、水と石鹸で洗い流してください。症状が改善しない場合は、皮膚科医を受診してください。

よくある質問

ローズマリーオイルは本当にミノキシジルと同じくらい効果があるのですか?

2015年のある臨床試験では、ローズマリーオイルがミノキシジル2%液と6ヶ月後に同等の毛髪数増加効果を示し、副作用の頭皮のかゆみは少なかったと報告されています4。これは非常に有望な結果ですが、あくまで一つの研究結果であり、すべての人に同じ効果があることを保証するものではありません。効果の現れ方には個人差があります。

エッセンシャルオイルを原液のまま髪や頭皮につけても良いですか?

絶対におやめください。エッセンシャルオイルは植物成分が非常に高濃度に凝縮されたものであり、原液での使用は皮膚への強い刺激、化学熱傷、アレルギー反応(感作)を引き起こす可能性があります30。必ずキャリアオイルで1〜3%に希釈して使用することが安全のための絶対原則です。

なぜ日本では「育毛効果」と書かれたエッセンシャルオイルが売られていないのですか?

それは日本の医薬品医療機器等法(薬機法)による規制のためです。日本において「育毛」「発毛促進」といった効果を製品に表示するためには、厚生労働省から「医薬部外品」や「医薬品」としての承認を得る必要があります。多くのエッセンシャルオイルは、この承認を得ておらず、「雑貨」として販売されているため、法律上、人体への効果効能を謳うことができないのです3233

結論

本報告書を通じて、ヘアケアにおけるエッセンシャルオイルが、それぞれ異なる科学的根拠と作用機序を持つ多様な植物成分の集合体であることが明らかになりました。ローズマリーが男性型脱毛症に対する臨床試験という最高レベルのエビデンスを持つのに対し、ペパーミントは強力な前臨床データが、ティーツリーやレモングラスはフケに対する臨床的有効性が示されています。一方で、クラリセージやイランイランのように、その主張が主に伝統的な使用法や理論に基づいているものも存在します。このエビデンスの階層を理解することは、自身の悩みに応じた合理的な選択を行うための第一歩です。しかし、その効果の可能性と同時に、安全な使用法(特に希釈の徹底)と日本の薬機法が定める表示の限界を認識することが、賢明な利用者にとって不可欠です。科学的知見、安全性、そして法規制という三つの視点を統合することで、エッセンシャルオイルは現代のヘアケアにおいて価値ある選択肢となり得ます。

免責事項

本コンテンツは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療に関する意思決定の前に、必ず医療専門職にご相談ください。

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