【科学的根拠に基づく】妊娠中の性行為のすべて:日本人読者のための安全性、最適な実践、最新エビデンスの完全ガイド
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【科学的根拠に基づく】妊娠中の性行為のすべて:日本人読者のための安全性、最適な実践、最新エビデンスの完全ガイド

妊娠中の性生活は、多くのカップルにとって喜びであると同時に、不安や疑問の源でもあります。特に日本では、海外の情報とは異なる慎重な意見も見受けられ、何が真実で、どのように行動すれば良いのか混乱してしまう方も少なくありません。この記事では、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、世界的な医学的コンセンサスと、特に日本の状況に焦点を当てた最新の研究結果を統合し、妊娠中の性行為に関する包括的で信頼性の高い情報を提供します。赤ちゃんの安全を最優先しながら、パートナーとの親密な関係を育むための、科学的根拠に基づいた知識を詳しく解説します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指針との直接的な関連性を含むリストです。

  • 英国国民保健サービス(NHS)および米国産科婦人科学会(ACOG): 本記事における「低リスク妊娠における性行為の全般的な安全性」に関する指針は、これらの国際的保健機関が公表したガイドラインに基づいています15
  • 近畿大学による研究(Medicina誌掲載): 日本人集団における性行為と早産リスクの関連性、特に細菌性膣症(BV)との相乗効果に関する重要な分析は、この研究に基づいています1920
  • 世界保健機関(WHO)および各種医学論文: 感染症予防、特定の医学的禁忌(例:前置胎盤)、および身体的・心理的側面に関する具体的な推奨事項は、これらの専門機関や学術論文で示されたエビデンスに基づいています24

要点まとめ

  • 低リスク妊娠では基本的に安全:合併症のない正常な妊娠では、国際的な医療機関は妊娠期間を通じて性行為は安全であるとの見解で一致しています。胎児は子宮、羊水、粘液栓によって強固に守られています189
  • 日本人特有のリスクに注意:近畿大学の研究により、日本人妊婦では性行為が早産のリスクを高める可能性が示唆されました。特に細菌性膣症(BV)を合併している場合、その危険性が著しく増大します1920
  • 感染症対策が最重要:上記の研究結果から、日本においては性行為の物理的刺激よりも、細菌感染が引き起こす炎症が早産の主な懸念事項となります。コンドームの使用は、性感染症予防だけでなく、早産リスクを低減するための極めて重要な手段です17
  • 絶対的な禁忌事項の遵守:医師からの指示、前置胎盤、切迫早産の兆候、前期破水など、特定の医学的状況下では性行為は完全に避けなければなりません45
  • コミュニケーションと親密さの再定義:妊娠期間中の性欲の変化は正常です。オープンな対話を通じて、お互いの不安や希望を共有し、性交以外の方法でも親密さを維持することが、パートナーとの良好な関係にとって不可欠です15

第1部:妊娠中の性行為に関する基礎知識:世界的な医学的コンセンサス

このセクションでは、なぜ低リスクの妊娠において性行為が一般的に安全と見なされるのか、主要な国際医療機関の見解に基づき解説します。これにより、より具体的で詳細なリスクについて触れる前に、カップルが抱きがちな初期の不安を和らげることを目的とします。

1.1 全般的な安全性の原則

英国の国民保健サービス(NHS)や米国産科婦人科学会(ACOG)といった国際的な権威機関からの一般的な見解は、正常で合併症のない妊娠であれば、性行為は完全に安全であるというものです15。この原則は、医学的な禁忌が存在しない限り、妊娠初期から破水や陣痛が始まる直前まで、妊娠期間全体にわたって適用されます。

1.2 胎児を保護する解剖学的・生理学的メカニズム

親となる人々が抱く最も一般的な懸念の一つは、赤ちゃんを傷つけてしまう可能性です。しかし、胎児は複数の生物学的なバリアによって強力に保護されています。

  • 子宮:強靭な筋肉で構成された子宮壁が、安全な保護層を形成します8
  • 羊水:羊膜嚢と内部の羊水は衝撃吸収材として機能し、外部からの動きや圧力から胎児を守ります9
  • 子宮頸管と粘液栓:子宮頸管は妊娠後期まで固く閉ざされています。さらに、厚い粘液栓が子宮頸管の入り口を密閉し、膣からの細菌侵入を防ぐバリアとして機能します7。ペニスが膣より奥に進むことはなく、胎児に物理的に接触することはありません2

1.3 流産や陣痛誘発に関する誤解

  • 流産:健康な妊娠において、性行為が流産を引き起こすことはありません。妊娠初期における流産の大部分は、母親の活動ではなく、胎児の染色体異常が原因です5。ただし、性行為の後に偶然流産が起こった場合、それが大きな心理的負担や自責の念につながる可能性があることは、カップルが考慮すべき要素です13
  • 陣痛誘発:オーガズムや精液に含まれるプロスタグランジンが子宮の収縮(ブラクストン・ヒックス収縮)を引き起こすことはありますが、正常な正期産の妊娠において、これが早産につながることは通常ありません2。この効果は、妊娠が満期に達した、あるいは予定日を超過した場合に、陣痛を誘発するのに役立つ可能性があると考えられる程度です4

世界の医療におけるアプローチは、まず安心させることを優先し、親が抱く最も一般的で根源的な恐怖(例:赤ちゃんを傷つける、流産させる)を和らげることに重点を置いています。このアプローチは、オープンなコミュニケーションを促進し、不安を軽減するために心理的に重要です。まず最大の恐怖に対して、単純な科学に裏付けられた強力な安心のメッセージで対処することで、信頼の基盤を築きます。この安全網を確立した後に初めて、より細かなニュアンスや例外が紹介されます。本稿もこの構成に従い、まずこれらの一般的な安心材料を提示して信頼性を構築した上で、第2部で日本の状況に特化した、より具体的な警告データを示します。


第2部:日本の文脈:国内のエビデンスによるリスクの再評価

このセクションは、本稿の重要な転換点です。日本の公衆衛生に関する助言で一般的に見られる、より慎重な論調を紹介し、その慎重さの根拠となりうる日本独自の特定の研究について、専門家レベルの詳細な分析を提供します。

2.1 日本の公衆衛生情報における「慎重なコンセンサス」

多くの欧米の情報源とは異なり、日本で人気のある一部の健康・育児関連ウェブサイトは、非常に保守的な立場を取っています。これらの情報源は、「妊娠中は(性行為を)避けたほうがベター」であり、「医師は何も言わないけれどセックスしないほうが安全」と明記していることがあります12。この種のアドバイスは、特に不安定な妊娠初期の禁欲を推奨することが多いです12。これは、日本の読者に対して、高度な慎重さを求める文化的・情報的背景を形成しています。

2.2 近畿大学による早産研究の詳細な分析

ここでは、Medicina誌に掲載され、PubMedにも引用されている近畿大学の重要な前向きコホート研究を分析します19。これは、日本に特化した推奨事項を導き出す上で最も重要なエビデンスです。

  • 研究デザインと対象:182人の日本人妊婦を対象とした前向きコホート研究です19。この研究は、関連性がないことを示した過去の研究が主に白人集団を対象としており、ランダム化比較試験ではなかったことを明確に指摘し、日本人女性に関する知識のギャップを指摘しています19
  • 主要な発見:妊娠中の性行為(SI)は、統計的に有意に高い累積早産率と関連していました(p=0.018)19。このリスクは、週に1回を超える性行為でさらに顕著になりました(p<0.0001)。
  • 重大な相乗効果:この研究は、妊娠中期における細菌性膣症(Bacterial Vaginosis – BV)を独立した主要な危険因子として特定しました。妊娠中期の性行為とBVの組み合わせは、60%という高い早産率と関連しており、強力な相乗効果を示唆しています(p<0.0001)20
  • 提案されたメカニズム:研究は、性行為が生殖器内での細菌の異常増殖(絨毛膜羊膜炎などの炎症につながる)、血清オキシトシン濃度の上昇、物理的刺激による子宮収縮といったメカニズムを通じて早産のリスクを高める可能性があると示唆しています19。BVとの強い関連性は、炎症経路が主要な懸念であることを裏付けています。

近畿大学の研究は、日本人集団における主要なリスクモデルを、純粋に機械的なもの(物理的圧力を恐れるが、これはリスクが低い)から、生物学的・炎症的なもの(細菌を持ち込み、炎症と早産を引き起こすことを恐れる)へと根本的に転換させました。世界的なコンセンサス(第1部)は、機械的な損傷への恐怖を払拭することに焦点を当てています。対照的に、日本の研究19は性行為と早産の間に強い関連性を見出しましたが、この影響は細菌性膣症の存在によって大幅に増幅されました。細菌性膣症は、膣内細菌叢のバランスが崩れた状態です。精液は膣のpHを変化させる可能性があり、性行為は細菌を持ち込むことでBVを誘発または悪化させる可能性があります17。これが上行性感染・炎症(絨毛膜羊膜炎)につながり、早産の既知の原因となります。したがって、この集団にとってエビデンスに基づく最も重大なリスクは、物理的な行為そのものではなく、感染と炎症の生物学的連鎖反応を引き起こす可能性です。これは本稿の推奨事項の中心的な柱でなければなりません。安全対策の重点は、単に「優しくする」ことから、厳格な感染制御に移行する必要があります。これにより、コンドーム使用の重要性が、性感染症(STI)予防策から、この特定の文脈における早産リスクを軽減するための主要なツールへと格上げされます。


第3部:積極的なリスク管理のための臨床的枠組み

このセクションでは、研究結果を、生物学的リスクと物理的リスクの両方を理解した上での、実践可能で交渉の余地のない安全手順に落とし込みます。

3.1 感染制御:第一の防御線

  • コンドームの必須使用:これは最も重要な推奨事項です。コンドームは二重の目的を果たします:
    1. 感染予防:クラミジア、梅毒、淋病など、胎児に危険を及ぼす性感染症の予防に不可欠です17。また、細菌性膣症(BV)を引き起こしたり悪化させたりして、日本の研究で早産と強く関連付けられた絨毛膜羊膜炎につながる可能性のある細菌の伝播も減少させます17
    2. プロスタグランジンの遮断:精液には、子宮頸管を軟化させ、子宮収縮を刺激する可能性のあるプロスタグランジンが含まれています12。コンドームはこれらの物質への曝露を防ぎます。
  • 衛生管理:細菌の伝播を最小限に抑えるため、性交前の清潔保持の重要性を強調します5
  • オーラルセックスに関する注意:
    • 空気塞栓症:オーラルセックス中に膣内に空気を吹き込まないよう、カップルに警告する必要があります。稀ではありますが、これにより致命的な空気塞栓症を引き起こす可能性があります7
    • ヘルペス感染:パートナーに口腔ヘルペス(口唇ヘルペス)の既往歴がある場合は、オーラルセックスを避けるべきです。妊娠中の女性の性器への初感染は、赤ちゃんにとって危険な状態(新生児ヘルペス)を引き起こす可能性があるためです4
  • アナルセックスに関する注意:アナルセックスは一般的に推奨されません。直腸から膣へ有害な細菌(大腸菌など)が運ばれ、重篤な感染症を引き起こすリスクが高いためです7。また、妊娠に伴う痔を悪化させる可能性もあります。

3.2 物理的刺激の管理

  • 子宮収縮:性交、オーガズム、さらには乳首への刺激による物理的な刺激は、オキシトシンを放出し、子宮を収縮させる(ブラクストン・ヒックス収縮)可能性があります2
  • 推奨事項:これらの収縮は通常無害ですが、アプローチは常に優しく、ゆっくりとしたものであるべきです。収縮が痛みを伴う、または規則的になる場合、あるいは何らかの痛みや不快感がある場合は、直ちに性行為を中止しなければなりません5。深く、激しい挿入は避けるべきです13

表1:潜在的リスクと推奨される予防策の概要

潜在的リスク 主要なメカニズム / 寄与因子 エビデンスに基づく予防策 参考文献
早産 感染/炎症(細菌性膣症、絨毛膜羊膜炎);子宮収縮 コンドームの必須使用;特にBVがある場合は医師に相談;ハイリスクの場合は避ける;優しいアプローチ。 17, 19
性感染症 (STI) 感染したパートナーとの無防備な性行為(膣、口腔、肛門)。 コンドームの必須使用;パートナーのSTIステータスが不明または陽性の場合は避ける。 2
子宮収縮 / 不快感 精液中のプロスタグランジン;オーガズム/乳首刺激によるオキシトシン放出;物理的圧力。 コンドームの使用;激しくない、穏やかな活動;過度の乳首刺激を避ける;圧迫のない体位を選ぶ。 2
膣からの出血 子宮頸管の刺激;前置胎盤の状態の悪化。 穏やかで浅い挿入;前置胎盤と診断された場合や出血がある場合は完全に避ける。 2
静脈空気塞栓症(オーラルセックス) 膣内への空気の吹き込み。 パートナーは膣内に決して空気を吹き込まないよう、明確に指導される必要がある。 7

第4部:絶対的禁忌:完全に禁欲すべき場合

このセクションでは、性行為を避けなければならない医学的状況について、明確で議論の余地のないリストを提供します。安全を最優先するため、表現は直接的で曖昧さのないものとします。

4.1 医師による指示

最優先されるべきルールは、担当の医師や助産師からの直接的な指示に従うことです。もし彼らが禁欲や「骨盤位安静」を勧めた場合、それは厳格に守られなければなりません5

4.2 高リスクの妊娠状態

  • 前置胎盤:胎盤が低置し、子宮頸管の一部または全部を覆っていると診断された場合。性交は壊滅的な出血を引き起こす可能性があります4
  • 早産・切迫早産の既往歴または兆候:早産の既往がある、または現在、早産の兆候(例:37週未満の規則的な収縮)がある場合8
  • 子宮頸管無力症:収縮なしに子宮頸管が早期に開き(拡張し)始める状態9
  • 前期破水:羊膜が破れて「破水」した場合。性交は胎児への感染リスクが非常に高くなります2

4.3 警告となる兆候と症状

  • 原因不明の膣からの出血:点状出血であっても、いかなる出血も禁欲し、医師に相談する理由となります2
  • 持続的な腹痛やけいれん:特にこれらの症状が性行為中またはその後に発生する場合5
  • 羊水の漏出:羊水が漏れている疑いが少しでもある場合は、直ちに医療機関を受診し、性交を控える必要があります4

4.4 その他の高リスクシナリオ

  • 多胎妊娠(双子など):多くの場合、早産のリスクが高まります。すべての人にとって絶対的な禁忌ではありませんが、多くの医師は特に妊娠後期において慎重さまたは禁欲を勧めるでしょう3
  • 活動性の性感染症(STI):パートナーのいずれかが未治療のSTIに罹患している場合2

第5部:妊娠期間の段階別親密さガイド

このセクションでは、妊娠の各段階に合わせたアドバイスを提供し、身体的変化、ホルモンの変動、および安全上の考慮事項を統合します。

5.1 妊娠初期(1〜13週):初期の変化と不安を乗り越える

  • 身体的・ホルモン的状態:吐き気、極度の疲労、胸の張りなどが特徴で、性欲を大幅に減退させることがあります25
  • 心理的状態:流産に対する高い不安が一般的です。性行為が流産を引き起こすわけではありませんが、恐怖心自体が強力な抑止力となります13
  • 推奨事項:日本の多くの情報源は、この不安定な時期には慎重さまたは禁欲を勧めています12。望むならば、精神的なサポートと非挿入的な親密さに焦点を当てるべきです。性交を行う場合は、最大限の優しさが必要です。

5.2 妊娠中期(14〜27週):「黄金期」?

  • 身体的・ホルモン的状態:初期の症状が和らぎ、エネルギーが回復し、骨盤領域への血流増加が一部の女性の興奮を高めることがあります11
  • 推奨事項:この時期は一般的に性行為にとって最も快適な時期です。しかし、近畿大学の研究で特定されたように、これは細菌性膣症が発症する上で重要な時期でもあります20。したがって、すべての感染制御策(特にコンドームの使用)が最も重要です。お腹が大きくなるため、体位の調整が必要になります。

5.3 妊娠後期(28週〜出産):身体的制約への適応

  • 身体的・ホルモン的状態:大きなお腹は多くの体位を困難または不可能にします。不快感、息切れ、疲労が増加します17。子宮頸管が柔らかくなり始め、正常な妊娠でも性交後に軽い点状出血が見られることがあります6
  • 推奨事項:安全と快適さが唯一の指針です。腹部に圧力がかかる体位は避けなければなりません。性交の頻度が減るか、完全に中止されることもあります。収縮(たとえブラクストン・ヒックス収縮であっても)を誘発するリスクが高まります2。高リスク状態が発生した場合は禁欲すべきです。

第6部:快適さと安全性を最大限に高めるための推奨体位

この実践的なガイドでは、推奨される体位を詳述し、それぞれの生体力学的および安全上の理由を説明します。

6.1 安全な体位の原則

  • 常に妊婦が挿入の深さと速度をコントロールできること。
  • 腹部に一切の圧力がかからないこと。
  • コミュニケーションと調整が容易な体位であること。

6.2 推奨される体位

  • 横向き(スプーンの体位):二人とも横になり、パートナーが後ろから挿入します。これは一般的に最良の体位の一つと見なされており、良好なサポートを提供し、腹部への圧力を排除します2
  • 女性が上になる体位:この体位は、妊婦が動きと挿入の深さを最大限にコントロールでき、腹部に体重がかかるのを防ぎます4
  • 後ろからの挿入(四つん這いの体位):妊婦が手と膝をつきます。この体位も腹部への圧力を避けますが、妊娠が進むにつれて疲れることがあります2。枕を使ってサポートすると良いでしょう2
  • 座位:女性がパートナーの膝の上に座る体位で、向き合っても背を向けても可能です。これはコントロールが効く快適な選択肢となり得ます18

6.3 避けるべき体位

  • 正常位(女性が仰向けになる体位):この体位は妊娠初期以降(おおよそ4ヶ月頃から)は避けるべきです。成長する子宮の重みが、大血管である下大静脈と大動脈を圧迫し、母親の心臓と赤ちゃんへの血流を制限する可能性があります3

第7部:心理・関係性の側面:パートナーシップとしての親密さの探求

このセクションでは、妊娠中の性生活において見過ごされがちですが、カップルの幸福にとって極めて重要な、感情的、心理的、そして関係性における側面に焦点を当てます。

7.1 性欲の変動を正常なことと捉える

妊婦の性欲が低下することは非常に一般的で、一部の研究では70〜78%もの女性がこの低下を経験することが示されています6。これはホルモンの変化、身体的な不快感、そして赤ちゃんへの心理的な集中が原因です12
パートナーの性欲もまた変化することがあり、胎児や妊娠中のパートナーを傷つけることへの恐怖から減少することもあります5
逆に、一部の人は性欲の増加を経験することもあります5。あらゆる変動は正常です。

7.2 コミュニケーションの最重要性

オープンで、正直で、共感的なコミュニケーションは、この時期を乗り越えるための最も重要なツールです2。カップルは、お互いの恐怖、願望、不快感を批判することなく話し合うことが奨励されます15。女性が性行為を望まない場合、自分の愛情をパートナーに再確認しつつ、明確かつ優しく伝えるべきです18

7.3 性交を超えた親密さの再定義

性交が不可能または望ましくない場合、他の手段を通じて親密さを維持することが極めて重要です。これには、抱きしめる、キスをする、マッサージをする、手をつなぐ、そして愛情のこもった時間を共に過ごすことなどが含まれます5。これらの行為もまた、「絆のホルモン」であるオキシトシンを放出し、カップルの絆を強め、大きな変化の時期に感情的な安定をもたらします5
コミュニケーションの欠如は、負の連鎖を生み出す可能性があります。外部情報からの慎重論や個人的な恐怖が性的な回避につながります。オープンな話し合いがなければ、この回避は拒絶や魅力の欠如と誤解され、感情的な距離とパートナーの不満を引き起こす可能性があります30。この感情的な緊張は、さらに欲求を減退させ、不安を増大させ、悪循環を強固なものにします。したがって、このサイクルを明確に特定し、それを断ち切るためのツールを提供することは、重要な臨床的介入となります。すなわち、経験を正常なものとして捉え、対話を始めるためのきっかけを提供し、非性交的な親密さがパートナーシップにとって同等に重要であることを認識することです。


よくある質問

日本の研究で早産のリスクが示唆されていますが、それでも安全と言えるのですか?
大変良い質問です。世界的には低リスク妊娠での性行為は安全とされていますが、近畿大学の研究19は日本人集団において、特に細菌性膣症(BV)がある場合に早産リスクが高まる可能性を示しました。このため、日本の状況ではより慎重なアプローチが推奨されます。絶対的な安全を確保するためには、①まず医師に相談し、ご自身の妊娠が低リスクであることを確認すること、②そして、いかなる場合でもコンドームを必ず使用し、感染経路を遮断することが極めて重要です。
コンドームはなぜこれほど重要視されるのですか?
コンドームは二つの重要な役割を果たします。第一に、クラミジアやヘルペスなどの性感染症(STI)から母体と胎児を守ります17。第二に、そして日本の文脈で特に重要なのは、精液に含まれるプロスタグランジン(子宮収縮を誘発する物質)を遮断し、膣内の細菌バランスを乱す可能性のある外部細菌の侵入を防ぐことです。これは、早産の引き金となりうる細菌性膣症(BV)や絨毛膜羊膜炎のリスクを低減するために不可欠です1720
性行為後にお腹が張るのは危険なサインですか?
性行為やオーガズムによって軽い、不規則なお腹の張り(ブラクストン・ヒックス収縮)が起こるのは一般的で、通常は心配いりません2。しかし、その張りが痛みを伴う、規則的になる、治まらない、または出血や水っぽいおりものを伴う場合は、早産の兆候である可能性があるため、直ちに性行為を中止し、医療機関に連絡してください。
パートナーが性行為を怖がっています。どうすればよいですか?
パートナーが赤ちゃんやあなたを傷つけることを恐れるのは、愛情の表れでもあります。大切なのは、オープンに、そして共感をもって話し合うことです15。この記事で得たような正確な医学的情報(例えば、胎児が羊水で守られていることなど)を共有し、お互いの不安を正直に伝え合いましょう。性交が不安な時期は、マッサージや抱擁など、他の方法で親密さを表現することも、絆を深める上で非常に価値があります5

結論

本稿では、妊娠中の性行為について、世界的なコンセンサスと日本独自の重要な研究データを統合して包括的に解説しました。低リスクの妊娠における性行為は、解剖学的に安全であると広く認識されています。しかし、近畿大学の研究19は、日本人女性において性行為が感染症、特に細菌性膣症を介して早産のリスクを高める可能性があるという、見過ごすことのできない重要な証拠を提示しました。この発見は、日本で暮らす私たちにとって、他国で推奨される以上に感染制御を重視した、より慎重なアプローチが賢明であることを示唆しています。
最終的に、妊娠中の安全で満たされた性生活は、以下の三つの柱の上に成り立ちます。

  1. 医学的な許可:最初の絶対的なステップは、あなたの具体的な妊娠状況について、担当の医師や助産師に相談し、許可を得ることです。彼らがあなたの状態に関する最終的な権威です。
  2. 厳格な安全手順:常にコンドームを使用してください。優しく、安全な体位を選び、痛みや警告の兆候があれば直ちに中止してください。
  3. パートナーとのオープンな対話:あなたの関係こそが土台です。感情、恐怖、願望について率直に話し合い、変化するニーズに合わせて親密さを再定義し、感情的なつながりを優先してください。

妊娠は、すべてのカップルにとって唯一無二の旅です。医学的知識と、お互いへの敬意、そしてオープンなコミュニケーションを組み合わせることで、カップルは親密な生活の変化を、赤ちゃんの安全を守りながら、そして親になる準備としてパートナーシップを強化する方法で乗り越えることができます。常に母体と赤ちゃんの健康と幸福を最優先し、疑問や懸念があれば、ためらうことなく医療提供者に相談してください。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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