臍帯巻絡(へその緒が首に巻く)とは?産婦人科医が解説する原因、リスク、そして過度な心配が不要な理由
妊娠

臍帯巻絡(へその緒が首に巻く)とは?産婦人科医が解説する原因、リスク、そして過度な心配が不要な理由

妊娠中の超音波検査で医師から「赤ちゃんにへその緒が巻いていますね」と告げられ、その瞬間、心に大きな不安がよぎった経験はありませんか。オンラインの掲示板や友人との会話でこの「臍帯巻絡(さいたいけんらく)」という言葉を見聞きし、漠然とした恐怖を感じている方も少なくないでしょう。あなたは決して一人ではありません。これは多くの妊産婦が抱く共通の懸念です10。本記事は、日本産科婦人科学会(JSOG)などの権威ある機関の指針と最新の科学的根拠に基づき、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が専門家の監修のもとで作成しました。目的は、その不安を正確な知識で和らげ、皆様が自信を持って出産に臨めるよう、信頼できる情報を提供することです。

本記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下のリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性のみが含まれています。

  • PLOS ONE誌に掲載された系統的レビューとメタアナリシス: この記事における、臍帯巻絡と周産期死亡リスクとの関連性に関する指導(例:1周の巻絡ではリスクは有意に増加しない)は、145件の研究を統合したこの高レベルの科学的証拠に基づいています13
  • 日本産科婦人科学会(JSOG)診療ガイドライン: 臍帯巻絡の定期的スクリーニングを推奨しないという立場に関する解説は、日本の産科診療における最高権威の一つであるJSOGの公式ガイドラインに基づいています24
  • 済生会新潟病院の研究: 日本国内における臍帯巻絡の発生頻度(約31.4%)や、長いへその緒が持つ保護的な役割に関する考察は、7,115件の分娩データを分析したこの大規模な国内研究に基づいています7
  • クリーブランド・クリニックの患者情報: 臍帯巻絡の一般的な発生率や管理方法に関する情報は、国際的に評価の高い医療機関であるクリーブランド・クリニックが提供する患者向け情報源を参考にしています8

要点まとめ

  • 臍帯巻絡は非常に一般的で、全分娩の約20%~35%で認められます。これは「異常」というより「妊娠過程における一般的なバリエーション」です47
  • へその緒には「ワルトン膠質」というゼリー状の物質があり、これがクッションとなって血管が圧迫されるのを防いでいます。そのため、多くの場合は赤ちゃんに危険が及ぶことはありません16
  • 最も信頼性の高い大規模研究では、1周の臍帯巻絡が周産期死亡のリスクを有意に増加させることはないと結論付けられています13
  • 分娩中は、胎児心拍数陣痛図(CTG)を用いて赤ちゃんの状態が継続的に監視されます。医療チームは、万が一の事態に備えて標準化された対応手順を持っており、赤ちゃんの安全はシステムによって確保されています26
  • 不安を解消する最善の方法は、正確な情報を得ることです。医師との対話を大切にし、自身の体と医療チームを信頼することが重要です。

臍帯巻絡は珍しいこと?データで見る発生頻度

多くの妊婦さんが不安に思う臍帯巻絡ですが、まず知っていただきたいのは、これが決して珍しい現象ではないということです。実際には、妊娠と出産においてごく一般的に見られるものなのです。国内外の信頼できるデータは、この事実を明確に示しています。

日本国内および世界での発生率

日本国内の臨床現場からの報告によると、臍帯巻絡は全分娩の約20%から35%の範囲で発生するとされています4。より具体的な数字として、済生会新潟病院が妊娠37週以降の7,115件の分娩データを分析した大規模な後向き研究では、2,232件、実に31.4%の赤ちゃんに臍帯巻絡が認められました7。これは、おおよそ「3人から5人に1人」の赤ちゃんが、へその緒が首に巻かれた状態で生まれてくることを意味します。

この数値は、世界的なデータとも驚くほど一致しています。国際的な医学文献では、発生率は10%から29%の範囲で報告されており1、中には37%に達するという研究もあります12。2020年に学術誌PLOS ONEに掲載された、145件の研究データを統合した大規模な系統的レビューとメタアナリシスでは、首への巻絡の平均有病率は22%(95%信頼区間[CI]: 19%~25%)、2周以上の多重巻絡は4%(95%CI: 3%~5%)と推定されています13

さらに興味深いことに、臍帯巻絡の発生率は妊娠週数と共に増加する傾向があります。ある研究では、妊娠20週で約6%だった発生率が、妊娠42週には29%までほぼ直線的に上昇することが示されました1。これは、赤ちゃんが成長し、子宮内での動きが活発になるにつれて、へその緒が自然に巻きつきやすくなることを示唆しています。

表1: 臍帯巻絡(Saitai Kenraku)の発生頻度に関する国内外の比較

出典/研究 地域 全体的な発生率 (%) 多重巻絡の発生率 (%) 注記
済生会新潟病院7 日本 31.4 5.0 (2周), 0.6 (3周以上) N=7,115件、妊娠37週以降の分娩データ。
臨床婦人科産科誌4 日本 25 – 35 特定せず 1999年の医学文献からのデータ。
メタアナリシス (PLOS ONE, 2020)13 国際 22 (95% CI: 19-25) 4 (95% CI: 3-5) 145件の研究からの統合データ。
クリーブランド・クリニック8 国際 10 – 29 2.4 – 8.3 患者向け統合データ。
Larson JD et al. (2013)1 国際 29 (42週時点) 2.4 – 8.3 妊娠週数による増加を示す。

「よくあること」が意味する安心

これほど高い頻度で発生するという事実は、警鐘ではなく、むしろ安心材料と捉えるべきです。もしこれほど一般的な現象が本質的に危険で、頻繁に深刻な結果を招くのであれば、周産期死亡や脳性麻痺といった重篤な産科合併症の発生率は、現実よりもはるかに高くなっているはずです。毎年、臍帯巻絡がありながらも何百万人もの赤ちゃんが無事生まれているという事実こそが、人体と出産のプロセスがこの現象に適応してきた何よりの証拠です。したがって、この「一般的」という事実は、不安を煽るものではなく、「一般的であるからこそ、多くは無害である」と論理的に理解するための強力な根拠となるのです。

なぜ臍帯巻絡は起こるのか?主な原因と体の防御機能

臍帯巻絡がどのようにして起こるのか、そのメカニズムを理解することは、漠然とした不安を具体的な知識へと変える第一歩です。基本的には、赤ちゃんの動き、へその緒の長さ、そして羊水の量という3つの要素が絡み合って発生します。

巻絡を引き起こす主な要因

臍帯巻絡の正確な原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が発生の可能性を高めることが知られています。

  • 長いへその緒(過長臍帯 – かちょうさいたい): これは最も重要な危険因子と考えられています。へその緒の平均的な長さは約50~60cmですが1、70cmを超えると「過長臍帯」と定義され、多重巻絡や真結節(後述)のリスクが高まることが国内外の研究で示されています6
  • 羊水過多(ようすいかた): 子宮内の羊水が多いと、赤ちゃんが動き回るためのスペースが広くなります。この自由な動きが、長いへその緒と組み合わさることで、偶然に首に巻きつく確率を高めます816
  • 活発な胎動(かっぱつなたいどう): 赤ちゃんが子宮内で行う回転や宙返りといったダイナミックな動きが、へその緒を巻きつける直接的な原因です8
  • 多胎妊娠(たたいにんしん): 双子や三つ子などの場合、限られた子宮内で複数の赤ちゃんが動くため、互いのへその緒が絡まったり、体に巻きついたりするリスクが高まる可能性があります19

へその緒の驚くべき自己防衛機能:「ワルトン膠質」

多くの親御さんが抱く「へその緒が首を絞めてしまうのでは」というイメージは、へその緒の実際の構造を知ることで大きく変わります。へその緒は、単なる細い紐ではありません。内部の血管(2本の動脈と1本の静脈)を守るために精巧に設計された、生命のライフラインです。その中心的な役割を担うのが「ワルトン膠質(こうしつ)」です16

ワルトン膠質は、ヒアルロン酸を豊富に含むゼリー状の結合組織で、血管の周りを厚く覆っています。この物質は水圧クッションのように機能し、へその緒が折れ曲がったり、ねじれたり、軽く圧迫されたりしても、内部の血管が完全に潰れて血流が途絶えるのを防ぎます。このおかげで、へその緒は柔軟性を保ちながら、安定した血液供給を維持できるのです。この知識は、恐ろしい「絞首用のロープ」というイメージを、柔軟な「保護チューブ」という現実に即したイメージへと転換させ、不安を大幅に軽減する助けとなります。

長いへその緒のパラドックス:リスク因子であり保護因子

一見すると、長いへその緒は単なるマイナス要因に思えます。しかし、より深く分析すると、そこには複雑で逆説的な関係性が見えてきます。済生会新潟病院の医師が指摘するように、長いへその緒は巻絡の原因となりやすい一方で、巻絡が起きてしまった際には、むしろ保護的に働くことがあるのです7

この逆説は次のように説明できます。

  1. リスクとして: 統計的に、長いへその緒は赤ちゃんが動く際に体に巻きつきやすいことは事実です6
  2. 保護として: 分娩が始まり、赤ちゃんの頭が骨盤を下降する際、へその緒は必然的に引っ張られます。本当の危険は「巻いていること」自体ではなく、「へその緒が伸びきって血流が阻害されること」にあります。臍帯巻絡があるケースでは、へその緒が元々通常より長いことが多いため、分娩の過程で赤ちゃんが下降しても、なお「余裕がある( độ chùng)」状態が保たれ、過度に引っ張られずに済むことが多いのです7

つまり、平均的な長さや短いへその緒が巻絡した場合の方が、かえって引っ張られる力が強くなり、胎児機能不全を引き起こす危険性が高まる可能性があるのです。この複雑な関係性を理解することは、生命現象が一概に「良い」「悪い」と割り切れるものではないことを示しており、より深いレベルでの安心につながります。

「巻絡」と「真結節」は違う?知っておくべきリスクの本当の姿

へその緒のトラブルに関する不安を正しく理解するためには、「臍帯巻絡」と、それよりもはるかに稀でリスクの高い「真結節(しんけっせつ)」を明確に区別することが不可欠です。多くの不安は、この二つを混同することから生じます。

  • 臍帯巻絡(さいたいけんらく): へその緒が赤ちゃんの首などに「巻いている」状態。非常に一般的で、多くは自然にほどけたり、分娩時に問題なく扱われたりします。
  • 真結節(しんけっせつ): へその緒自体が「固く結ばれている」状態。赤ちゃんが動き回る過程で偶然できてしまう本物の結び目です。これは非常に稀(約1%)ですが、結び目がきつく締まると血流が完全に遮断される深刻なリスクを伴います13

この違いを理解した上で、科学的根拠に基づいたリスクの大きさを客観的に見てみましょう。2020年のPLOS ONE誌に掲載された、145件の研究、数十万人のデータを統合したメタアナリシスは、この問題に関する最も信頼性の高い答えを提示しています13

  • 1周の臍帯巻絡: 最も一般的なこのケースでは、周産期死亡のリスクは統計的に有意な増加を示しませんでした(オッズ比 1.11、95%CI: 0.62-1.98)。
  • 多重巻絡(2周以上): 複数回巻いている場合、リスクはわずかに上昇する傾向が見られましたが、その結果は統計的に境界線上でした(オッズ比 2.36、95%CI: 0.99-5.62)。
  • 真結節: これに対し、真結節は周産期死亡のリスクを約4.7倍に増加させる、明確で重大な関連性が示されました(オッズ比 4.65、95%CI: 2.09-10.37)。

このデータは、「へその緒が巻いている」という一般的な状況と、「へその緒に深刻なトラブルが起きている」という稀な状況を明確に切り分けるための強力なツールです。以下のリスクマトリックスは、その理解をさらに助けるでしょう。

表2: へその緒の異常に関する周産期リスクマトリックス

へその緒の状態 推定発生頻度 分娩中の胎児機能不全リスク 緊急帝王切開リスク 周産期死亡リスク (オッズ比)13
巻絡1周(緩い) 約20-25%4 低い~中程度 低い 有意な増加なし (約1.1倍)
多重/きつい巻絡 約4%13 中程度~高い 中程度 軽度増加の可能性あり (約2.4倍)
真結節 約1%13 高い 高い 有意に増加 (約4.7倍)

この表が示す通り、最も心配されるべきは真結節のような稀なケースであり、大多数を占める1周の巻絡は、管理可能なリスクの範囲内にあることが分かります。

妊娠中の診断と管理:なぜ定期的なスクリーニングは推奨されないのか

臍帯巻絡は、出生前に超音波検査、特に血流を色で表示するカラードップラー法を用いることで診断が可能です11。しかし、ここで一つの重要な疑問が生じます。なぜ、これほど妊婦さんが心配しているにもかかわらず、日本産科婦人科学会(JSOG)や国際産科婦人科超音波学会(ISUOG)のような権威ある組織は、全妊婦に対する臍帯巻絡の定期的スクリーニングを推奨していないのでしょうか2427

「情報の空白」の背景にある医学的判断

この「推奨しない」という姿勢は、見落としではなく、熟慮された医学的判断に基づいています。理由は主に3つあります。

  1. 頻度が高く、合併症が稀: 非常に一般的な状態をスクリーニングすると、臨床的に問題とならない「陽性」結果が多数出てしまい、不必要な不安を煽る結果になります。
  2. 不要な精神的負担: 妊娠中の赤ちゃんは活発に動くため、巻絡は自然に発生したり解消されたりします11。介入不可能な一過性の所見を伝えることは、妊婦に大きなストレスを与えるだけで、利益がありません。
  3. 過剰医療のリスク: 診断がつくことで、「念のため」という理由で医学的に不要な帝王切開が増加し、母体への負担を増やしてしまう危険性があります。

一方で、臨床現場では、多くの医師が超音波検査中に巻絡に気づきます。日本の西島クリニックのように、情報を医療スタッフ間で共有し分娩の準備に役立てるものの、不要な心配を避けるために積極的に患者さんには伝えない方針をとっている施設もあります10

この情報をどう受け止めるべきか

この公式な指針と臨床現場での対応の違いが、「情報の空白」を生み、時に混乱を招きます。しかし、この背景を理解することが重要です。医師が「巻絡があります」と伝えたとしても、それは即座に危険を意味するわけではありません。むしろ、「分娩中に胎児心拍数の変化が起こりやすいかもしれないので、より注意深く監視しましょう」という、医療チーム内の準備信号としてその情報が使われているのです。したがって、患者さんとしては、その診断に一喜一憂するのではなく、胎動のセルフチェックを心がけ、何か気になることがあれば医師とオープンに話し合うことが最も建設的な対応と言えるでしょう。

分娩時の対応:産科チームはどのように安全を確保するのか

臍帯巻絡がある場合の赤ちゃんの安全性は、個人の幸運に委ねられているわけではありません。それは、現代の産科医療が築き上げてきた、標準化された監視と介入のシステムによって保証されています。

分娩中の継続的な監視体制

分娩が始まると、最も重要な役割を果たすのが「胎児心拍数陣痛図(CTG)」です26。この装置は、赤ちゃんの心拍数と母親の子宮収縮を同時に記録し、リアルタイムで赤ちゃんの健康状態を評価します。臍帯巻絡がある場合、陣痛によってへその緒が一時的に圧迫され、心拍数に「変動一過性徐脈」と呼ばれる特徴的なパターンが現れることがあります16。これは、医療チームにとって「赤ちゃんが少し苦しいサインを送っている」という警報です。このサインを早期に察知することで、迅速な対応が可能になります。

経腟分娩における具体的な手技

分娩が順調に進み、赤ちゃんの頭が娩出されると、医師や助産師はすぐに指で赤ちゃんの首の周りを確認します8

  • 巻絡が緩い場合: 最も多いケースです。へその緒を指で引っかけて、赤ちゃんの頭の上からそっと外します39
  • 巻絡がややきつい場合: 頭から外すのが難しい場合は、体が娩出される際に、肩越しにへその緒を滑らせて外します。
  • 巻絡が非常にきつい場合(稀): 非常に稀ですが、分娩の進行を妨げるほどきつい場合は、へその緒を2か所でクランプ(鉗子で挟む)し、その間をカットして赤ちゃんを解放することがあります39

帝王切開への移行判断

臍帯巻絡があるからといって、自動的に帝王切開になるわけではありません。帝王切開は、CTGの監視下で、胎児機能不全の兆候が明らかで、母親の体位変換や酸素投与といった蘇生術に反応しない場合に、赤ちゃんの安全を最優先するために選択される手段です19。これは「失敗」ではなく、赤ちゃんの脳を守るための、適切で迅速な医学的判断なのです。

最終的に、赤ちゃんの安全は「巻絡がないこと」によってではなく、「問題を検知し、対応できる医療システムがあること」によって担保されます。この事実を理解することは、漠然とした不安を、医療チームへの具体的な信頼へと変える力を持っています。

よくある質問(FAQ)

臍帯巻絡は脳性麻痺の原因になりますか?

現在の科学的証拠では、臍帯巻絡が単独で脳性麻痺の直接的な原因となるという明確な関連性は示されていません。日本の産科医療補償制度の報告書を分析しても、脳性麻痺のような重篤な合併症は、常位胎盤早期剥離など、複数の複雑な要因が絡み合って発生することがほとんどです33。臍帯巻絡は、状況を悪化させる一因にはなり得ますが、それ自体が唯一の原因であることは極めて稀です10

臍帯巻絡を予防したり、自分で治したりする方法はありますか?

残念ながら、臍帯巻絡を予防したり、「治す」ための特定の方法はありません。これは、赤ちゃんが子宮内で自然に動き回る結果として起こる偶発的な現象だからです。特定の体操や姿勢が巻絡を解消するという科学的根拠はありません。しかし、前述の通り、ほとんどのケースで介入は不要であり、赤ちゃんの元気な胎動を感じることが、順調な証拠と捉えるのが良いでしょう11

医師から臍帯巻絡があると知らされました。次に何を質問すればよいですか?

不安な気持ちを抱え込まず、医師とコミュニケーションをとることが大切です。以下のような質問は、状況をより具体的に理解するのに役立ちます。

  • 「何周巻いていますか?」
  • 「カラードップラーの超音波検査で、へその緒の血流は正常に見えますか?」
  • 「分娩中の監視計画はどのようになりますか?」
  • 「私が特に気をつけておくべきこと(胎動の感じ方など)はありますか?」

結論

臍帯巻絡という診断は、多くの親御さんにとって大きな不安の種となります。しかし、本記事で見てきたように、科学的根拠と臨床経験に基づけば、その不安の多くは過度なものであることが分かります。臍帯巻絡は非常に一般的であり、へその緒の保護機能や、分娩時の確立された監視体制によって、ほとんどの場合は安全な出産に至ります。真のリスクは、真結節のような稀な状況にあり、一般的な巻絡とは明確に区別して考える必要があります。

不安に対する最良の処方箋は、正確な知識と信頼です。ご自身の体、赤ちゃんの生命力、そしてあなたを支える医療チームの専門知識を信頼してください。そして、コントロールできないことに心を悩ませるのではなく、健康的な生活習慣を送り、楽観的な気持ちを保ち、医師との対話を大切にするなど、ご自身でコントロールできることに集中しましょう。この情報が、皆様の不安を和らげ、素晴らしい出産体験への一助となることを心から願っています。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康上の懸念や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. Larson JD, Rayburn WF, Crosby S, Thurnau GR. Nuchal cord and its implications. Matern Fetal Neonatal Med. 2013;27(13):1349-52. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5719938/
  2. Weerakkody, Y., Heloury, Y. Nuchal cord. Radiopaedia.org. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://radiopaedia.org/articles/nuchal-cord
  3. 臍帯巻絡 – Wikipedia. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%8D%E5%B8%AF%E5%B7%BB%E7%B5%A1
  4. 平林 祐治. 3.臍帯巻絡. 臨床婦人科産科. 1999;53(7):856-860. Available from: https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1409903708
  5. Imai K, Takeda S, Takeda J, Koyama K, Omatsu T, Murakami K. The Presence of Nuchal Cord Does Not Hinder the Normal Progression of Labor. J Clin Gynecol Obstet. 2016;5(3):61-64. Available from: https://jcgo.org/index.php/jcgo/article/view/549/363
  6. Kuwata T, Matsubara S, Ohkuchi A, Shiono Y, Izumi A, Suzuki M. Length of the Umbilical Cord and Perinatal Outcomes in Japanese Singleton Pregnancies Delivered at Greater Than or Equal to 34 Weeks’ Gestation. J Clin Gynecol Obstet. 2013;2(1):1-5. Available from: https://jcgo.org/index.php/jcgo/article/view/62/35
  7. 済生会新潟病院. 巻いてない 方がちょっぴり ありがたい (臍帯巻絡 …). [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://ngt.saiseikai.or.jp/data/pr/hesonoo/pdf/hesonoo135.pdf
  8. Cleveland Clinic. Nuchal Cord: Causes, Risks, Prognosis & What To Do. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/nuchal-cord
  9. Peesay M. Nuchal Cord : A Retrospective Analysis. J Obstet Gynaecol India. 2012;62(5):540-3. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4921575/
  10. 西島クリニック. お腹の赤ちゃんに臍の緒が巻いているか心配になった時に読む話. [インターネット]. 2023年5月15日 [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://nishijima-clinic.or.jp/blog/2023/05/15/お腹の赤ちゃんに臍の緒が巻いているか心配になった時に読む話/
  11. メディカルノート. 臍帯巻絡について. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://medicalnote.jp/diseases/%E8%87%8D%E5%B8%AF%E5%B7%BB%E7%B5%A1
  12. Shrestha E, Singh S, Shah S. Ultrasound detection of nuchal cord and its effects on labour and neonatal outcome. Medpulse International Journal of Gynaecology. 2019;10(3):141-144. Available from: https://www.medpulse.in/Radio%20Diagnosis/html_16_3_1.php
  13. Peel F, Watts K, Kimmage K, et al. Umbilical cord characteristics and their association with adverse pregnancy outcomes: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2020;15(9):e0239630. Published 2020 Sep 25. doi:10.1371/journal.pone.0239630. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7514048/
  14. Peel F, Watts K, Kimmage K, et al. Umbilical cord characteristics and their association with adverse pregnancy outcomes: A systematic review and meta-analysis. PubMed. [インターネット]. 2020年9月25日 [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32970750/
  15. Peel F, Watts K, Kimmage K, et al. Umbilical cord characteristics and their association with adverse pregnancy outcomes: A systematic review and meta-analysis. PLOS ONE. 2020;15(9):e0239630. Available from: https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0239630
  16. 馬島 道子. 臍帯因子と fetal distress. 日本産科婦人科學會雜誌. 1996;48(12):1075-1081. Available from: https://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/48/12/KJ00001751931.pdf
  17. 桑田 知之, 松原 茂樹, 大口 昭英, 塩飽 裕子, 和泉 明子, 鈴木 満. 妊娠分娩13 過長臍帯と分娩・新生児予後に関する検討. 関東連合産科婦人科学会誌. 2012;49(2):207. Available from: https://jsog-k.jp/journal/lfx-journal_detail-id-17856.htm
  18. Kuwata T, Matsubara S, Ohkuchi A, Shiono Y, Izumi A, Suzuki M. Length of the Umbilical Cord and Perinatal Outcomes in Japanese Singleton Pregnancies Delivered at Greater Than or Equal to 34 Weeks’ Gestation. Journal of Clinical Gynecology and Obstetrics. 2013;2(1). Available from: https://jcgo.org/index.php/jcgo/article/view/62
  19. ガーデンヒルズウィメンズクリニック. へその緒が赤ちゃんに巻き付く「臍帯巻絡」(さいたいけんらく)とは?原因と赤ちゃん・ママの影響について【医師監修】. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://gh-womens.com/blog/archives/5259
  20. 加藤クリニック. 臍帯巻絡. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.katocl.jp/glossary/loop_umbilical_cord/
  21. さかえ助産院. へその緒巻いてる?大丈夫?. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://yamahata-tokie.com/is-the-umbilical-cord-wrapped-all-right/
  22. Chen T, Liu B, Zhang J, et al. Standardized Ultrasound Diagnosis of Nuchal Cord. J Pers Med. 2021;11(9):894. Published 2021 Sep 7. doi:10.3390/jpm11090894. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8455514/
  23. Chen T, Liu B, Zhang J, et al. Standardized Ultrasound Diagnosis of Nuchal Cord. PubMed. [インターネット]. 2021年9月7日 [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34557033/
  24. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. 産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2023. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2023.pdf
  25. Minds ガイドラインライブラリ. 産婦人科診療ガイドライン-産科編2023. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00801/
  26. 産科医療補償制度. Ⅱ. 臍帯脱出以外の臍帯因子について. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/documents/prevention/theme/pdf/Saihatsu_Report_05_Chapter4-II_Jirei.pdf
  27. Fieni S, Palmisano M, Guffanti C, et al. Clinically Relevant Prenatal Ultrasound Diagnosis of Umbilical Cord Pathology. Diagnostics (Basel). 2022;12(2):236. Published 2022 Jan 21. doi:10.3390/diagnostics12020236. Available from: https://www.mdpi.com/2075-4418/12/2/236
  28. アスクドクターズ. へその緒首に巻きつく障害に関する医師への質問21件. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.askdoctors.jp/search/topics/q:へその緒首に巻きつく障害
  29. ピジョンインフォ. 出産 | お悩み相談室. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://pigeon.info/soudan/soudan-9035.html
  30. Pundo A, Pjetri E, Pervathi E, et al. The Relationship between Nuchal Cord and Adverse Obstetric and Neonatal Outcomes: Retrospective Cohort Study. Medicina (Kaunas). 2022;58(2):304. Published 2022 Feb 18. doi:10.3390/medicina58020304. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8883893/
  31. Peel F. Umbilical cord characteristics and their association with adverse pregnancy outcomes. eScholarship.org. [インターネット]. 2020. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://escholarship.org/content/qt42r3f3s4/qt42r3f3s4.pdf
  32. ResearchGate. Umbilical cord characteristics and their association with adverse pregnancy outcomes: A systematic review and meta-analysis. [インターネット]. 2020. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.researchgate.net/publication/344384855_Umbilical_cord_characteristics_and_their_association_with_adverse_pregnancy_outcomes_A_systematic_review_and_meta-analysis
  33. 産科医療補償制度. Ⅱ. 臍帯脱出以外の臍帯因子について. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/documents/prevention/theme/pdf/Saihatsu_Report_05_50_79.pdf
  34. 産科医療補償制度. 第2回 再発防止に関する報告書. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/documents/prevention/report/pdf/Saihatsu_Report_02_All.pdf
  35. 産科医療補償制度. 産科医療補償制度 再発防止に関する報告書. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/documents/prevention/report/pdf/Saihatsu_Report_03_All.pdf
  36. 厚生労働省. 産科医療補償制度 再発防止に関する報告書. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001n6b1-att/2r9852000001n8e1.pdf
  37. ベビーカレンダー. へその緒が首に巻きついています|医師・専門家が回答Q&A. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://baby-calendar.jp/knowledge/qanda/week20/613
  38. ベビーカレンダー. これって大丈夫!? おなかの中の赤ちゃんにへその緒が巻きついている!. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://baby-calendar.jp/smilenews/detail/14839
  39. 看護roo!. 分娩の介助. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.kango-roo.com/learning/8541/
  40. 村田 雄二. 10.異常分娩の管理と処置. 日本産科婦人科學會雜誌. 2009;61(3):N-101-N-111. Available from: https://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/61/3/KJ00005380496.pdf
  41. Yahoo! JAPAN. 1人目の妊活に3年!2人目の妊活はたったの3ヶ月!家族計画って難しい…. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://article.yahoo.co.jp/detail/58365d61eaed91c8a6a3340879ff1a3fcc07c646
  42. Yahoo! JAPAN. トラブル!産後「癒着胎盤」で急遽「胎盤用手剥離術」に. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://article.yahoo.co.jp/detail/42ce9dace56e592f7db562b1a4218383a4cc11d5
  43. ガーデンヒルズウィメンズクリニック. 赤ちゃんとママの命綱「臍帯」(へその緒)の異常とは?臍帯異常のリスクと対応について【医師監修】. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://gh-womens.com/blog/archives/5553
  44. 身原病院. 臍帯巻絡(さいたいけんらく)・臍帯結節(さいたいけっ … [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://mihara.com/glossary/saitai/
  45. 公益社団法人 日本産科婦人科学会. 周産期委員会報告. 日本産科婦人科學會雜誌. 2009;61(7):2409-2419. Available from: https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/shusanki_vol61no7.pdf
  46. 厚生労働省. 周産期医療の体制構築に係る指針. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001118039.pdf
  47. 厚生労働省. 平成22年度我が国の保健統計. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hoken/national/22.html
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ