【医師監修】やってはいけない!ニキビを潰すときに避けるべき11の過ち
皮膚科疾患

【医師監修】やってはいけない!ニキビを潰すときに避けるべき11の過ち

顔にできた一つのニキビ。それを潰してしまいたいという衝動は、多くの人が経験する、ごく自然で理解できるものです5。しかし、その一瞬の行動が、長期的な肌トラブルの引き金となり、永続的な瘢痕(はんこん、傷跡)を残す可能性があることをご存知でしょうか。この記事は、単なる美容上のアドバイスではありません。日本皮膚科学会(JDA)1や米国皮膚科学会(AAD)10などの権威ある機関の科学的根拠に基づき、なぜ自己流でニキビを潰すことが危険なのか、そしてその代わりに何をすべきかを徹底的に解説します。厚生労働省の委託事業であるAMR臨床リファレンスセンターが引用した2020年の調査によると、日本の人口の90%以上がニキビを経験しているにもかかわらず、皮膚科を受診する割合は約16%に過ぎません2。この「治療の空白」こそが、多くの方々が誤った自己判断に頼り、肌の状態を悪化させてしまう根本的な原因です。本稿では、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、皆様の肌に関する悩みを解消し、科学的に正しい知識を提供することを使命とし、ニキビを「潰す」という行為に潜む11の重大な過ちを、その医学的根拠とともに解き明かします。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的ガイダンスとの直接的な関連性を含むリストです。

  • 公益社団法人日本皮膚科学会 (JDA): 本稿における尋常性痤瘡(ニキビ)の病態生理、治療の第一選択薬(アダパレン、過酸化ベンゾイル等)、および専門的な面皰圧出に関する記述は、同学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」に基づいています1
  • AMR臨床リファレンスセンター(厚生労働省委託事業): 日本におけるニキビの罹患率と皮膚科受診率の間の大きなギャップに関するデータは、同センターが発表した「令和時代のニキビ治療」の報告書を引用しています2
  • 米国皮膚科学会 (AAD): ニキビを潰す行為の危険性、専門家による処置の重要性、および日常的なスキンケアに関する推奨事項は、同学会の一般向け広報資料および治療ガイドラインに基づいています101726
  • ノースウェスタン・メディスン / クリーブランド・クリニック: ニキビを安全に潰す方法が存在するか、特に炎症を起こしたニキビへの対処法、ハイドロコロイドパッチの使用に関する具体的なアドバイスは、これらの高名な医療機関が提供する健康情報に基づいています315

要点まとめ

  • ニキビは単なる美容上の問題ではなく、「尋常性痤瘡」という治療可能な皮膚疾患です1。しかし、日本では患者の約16%しか皮膚科を受診していません2
  • 不潔な手や器具でニキビを潰すと、新たな細菌が侵入し、感染や炎症を悪化させる危険性があります6
  • 鼻の付け根から口角を結ぶ「顔の危険な三角地帯」のニキビを潰すと、感染が脳にまで及ぶ稀ですが致死的な合併症を引き起こす可能性があります1921
  • 炎症が起きている赤いニキビや、芯のない深いニキビを無理に潰すと、炎症を皮膚の奥深くに押し込み、永続的な瘢痕(傷跡)や色素沈着の原因となります69
  • ニキビを潰すことは根本的な治療法ではなく、症状の一時的な対処に過ぎません。皮膚科専門医による早期の正しい治療が、将来の瘢痕を防ぐ最も効果的な方法です6

ニキビを「潰す」前に:医学的背景の理解

多くの人がニキビを潰してしまう背景には、それが「早く治る」という誤解があります6。しかし、この行為の是非を判断するためには、まずニキビが単なる吹き出物ではなく、「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」という名の皮膚疾患であることを理解する必要があります1。日本皮膚科学会が定めるように、これは医学的な治療が推奨される状態です。

ニキビの正体:四つの病態生理

ニキビは複雑なプロセスを経て発生します。その根底には、主に四つの要因が絡み合っています2

  1. 皮脂の過剰分泌:ホルモンバランスなどの影響で皮脂腺が活性化し、皮脂が多く作られます。
  2. 毛穴の詰まり(異常角化):毛穴の出口の角質が厚くなり、皮脂がスムーズに排出されず、毛穴の中に詰まってしまいます。これが「面皰(めんぽう)」、いわゆるコメドの始まりです。
  3. アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖:毛穴が詰まり、皮脂が豊富な環境は、アクネ菌にとって絶好の増殖場所となります。
  4. 炎症反応:増殖したアクネ菌が作り出す物質などが引き金となり、免疫系が反応して炎症が起こります。これにより、ニキビは赤く腫れ上がり、痛みを伴うようになります。

このプロセスを理解すれば、ニキビを無理に潰すことが、炎症をさらに悪化させ、問題を複雑にするだけの行為であることがわかります。

専門家の「面皰圧出」と自己流の「ニキビ潰し」の決定的違い

「でも、皮膚科ではニキビを潰してくれるじゃないか」と思うかもしれません。しかし、それは「面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)」と呼ばれる専門的な医療行為であり、自宅で行う行為とは全く異なります6

  • 診断の正確性:皮膚科医は、圧出が適切で安全なニキビ(主に炎症を起こしていない白ニキビや黒ニキビ)を正確に見極めます9
  • 無菌環境:滅菌された専用の器具(面皰圧出器など)を使用し、感染を徹底的に防ぎます6
  • 専門的技術:毛包壁を破壊しないよう、皮膚へのダメージを最小限に抑えながら、制御された力で内容物だけを的確に排出します。

これに対し、自宅での行為は、不潔な手や器具、不適切なタイミング、そして過剰な力によって、皮膚組織を破壊し、事態を悪化させる可能性が非常に高いのです。

やってはいけない!ニキビを潰すときに避けるべき11の過ち

ここからは、ニキビを潰す際に絶対にしてはならない11の具体的な過ちを、その医学的理由と正しい対処法と共に詳しく解説します。

過ち1:不潔な手、爪、または自作の器具を使用する

【医学的根拠】私たちの手には、目に見えない無数の細菌が付着しており、決して無菌ではありません6。不潔な手でニキビに触れることは、開いた傷口に新たな細菌を植え付ける行為に他ならず、二次感染を引き起こし、炎症をさらに深刻化させます6。特に爪を使うと、周囲の健康な皮膚まで物理的に傷つけてしまいます。

【正しい行動】顔、特にニキビには触れないように心掛けましょう10。もし誤ってニキビが潰れてしまった場合は、清潔なティッシュペーパーでそっと滲出液を吸い取り、その部分を優しく洗浄するに留めます14

過ち2:まだ「熟していない」ニキビ(深い、炎症性、または白い頭がない)を攻撃する

【医学的根拠】赤く腫れて痛みを伴う深いしこり(表面に膿がない炎症性丘疹)や嚢胞(のうほう)を無理に潰そうとするのは、無益かつ有害です。ローレン・タグリア医師が指摘するように、圧力をかけることで炎症の巣が皮膚のさらに深い層(真皮)に押し込まれ、組織の損傷を拡大させ、深刻な瘢痕のリスクを増大させます36。白い膿の頭がはっきりと形成されるのを待つことが賢明です。

【正しい行動】深くて痛いニキビには、温湿布を当てて自然に膿が表面に出てくるのを助けるか、逆に清潔な氷を当てて炎症と痛みを和らげましょう3。米国皮膚科学会や日本皮膚科学会が推奨する、過酸化ベンゾイルやサリチル酸などの成分を含むスポット治療製品の使用が効果的です116

過ち3:過剰な力、または誤った方向からの圧力を加える

【医学的根拠】ニキビは、皮脂、細菌、そして死んだ皮膚細胞の破片が詰まった袋のようなものです11。強すぎる力を加えると、この袋が皮膚の下で破裂し、内容物が周囲の真皮層に撒き散らされます6。これにより、より激しい炎症反応が引き起こされ、毛細血管の損傷による炎症後色素沈着(PIH)、さらにはコラーゲン組織の破壊による萎縮性瘢痕(クレーター状のへこみ)や肥厚性瘢痕(盛り上がった傷跡)といった、永続的なダメージにつながる可能性があります9

【正しい行動】目に見える部分は氷山の一角であることを理解し、ニキビが自然に治癒するか、外用薬で治療されるのを待ちましょう。

過ち4:「顔の危険な三角地帯」にある tổn thương に手を出す

【医学的根拠】これは特に注意喚起が必要な、極めて重要な項目です。解剖学的に「顔の危険な三角地帯(Danger Triangle of the Face)」と呼ばれる領域が存在します。これは、両方の口角と鼻梁(びりょう、鼻の付け根)を結んだ三角形のエリアを指します19。この領域の静脈(特に顔面静脈)は、頭蓋骨の内部、眼の奥にある「海綿静脈洞」という静脈のネットワークに直接つながっています21。そのため、この部分のニキビを潰して細菌感染が起こると、感染が血流を逆行して頭蓋内に到達し、重篤な合併症を引き起こす恐れがあるのです。

【深刻な危険性】具体的には、海綿静脈洞血栓症(CST)、髄膜炎、脳膿瘍、視力喪失、麻痺、そして稀なケースでは死に至ることも報告されています1920

【正しい行動】この領域にできたできものには、絶対に自己判断で手を加えてはいけません。特に、重度の痛み、腫れ、または感染の兆候が見られる場合は、直ちに医療機関を受診してください。

過ち5:無理やり「芯(しん)」を全部出そうと試みる

【医学的根拠】一般に「芯」と呼ばれる角栓(かくせん)は、皮脂と古い角質が混ざったものです24。一度ニキビが破れた後に、残った芯を無理やり絞り出そうとすることは、すでに炎症を起こして弱っている組織に繰り返しダメージを与える行為です14。これにより、組織の損傷が悪化し、治癒が遅れ、永続的な瘢痕や炎症後色素沈着のリスクが著しく高まります。

【正しい行動】一度ニキビが破れたら、その目的は「清潔に保ち、自然治癒を待つこと」に切り替えます。優しく洗浄した後、ハイドロコロイド素材のニキビパッチを貼って、残った滲出液を吸収させつつ、外部の刺激から保護するのが最善です3。そして、あとは触らずに放置しましょう。

過ち6:潰した後にアルコールなどの強力な消毒剤を塗る

【医学的根拠】これは直感に反するかもしれませんが、重要な過ちです。清潔にしたいという気持ちは理解できますが、アルコールのような強力な消毒剤は、傷ついて敏感になっている皮膚を過度に刺激し、体の自然な治癒プロセスを妨げ、回復を遅らせる可能性があります14

【正しい行動】低刺激性の洗顔料とぬるま湯で優しく洗浄するだけで十分です14。患部が清潔に保たれていれば、体の免疫システムが残りの処理を行ってくれます。

過ち7:炎症を起こしている、または開いた tổn thương の上にスクラブ入りの洗顔料や強力な角質除去製品を使用する

【医学的根拠】物理的な角質除去(スクラブ)は、皮膚表面に微細な傷を作り出し、活動中のニキビから細菌を広げ、皮膚の保護バリアを損ない、さらなる炎症を引き起こす可能性があります5。これは、開いた傷口をやすりでこするようなものです。

【正しい行動】ニキビが多発している時期は、すべての物理的な角質除去製品を避けましょう。代わりに、皮膚科医の指導のもと、長期的な治療計画の一環として、サリチル酸のような化学的角質除去剤やレチノイド外用薬に頼るべきです。これらは物理的な摩擦なしに作用します17

過ち8:潰した直後のニキビを厚化粧で隠す

【医学的根拠】油分が多く閉塞性の高いファンデーションやコンシーラーは、開いた傷口に細菌を閉じ込め、皮膚が「呼吸」して自己修復するのを妨げ、毛穴をさらに詰まらせる原因となります13。これは、生活の質(QOL)向上のために刺激の少ないノンコメドジェニック(ニキビができにくい)製品の使用を推奨する日本皮膚科学会の指導とは逆行する行為です1

【正しい行動】傷口が閉じて治癒プロセスが始まるまで、できるだけ何も塗らないでおきましょう。どうしても化粧が必要な場合は、ノンコメドジェニックテスト済みの通気性の良い製品を選び、優しく塗布してください。さらに良い選択肢は、治癒を助けながらカモフラージュもできるハイドロコロイドパッチを使用することです3

過ち9: tổn thương の誤認:それはニキビではないかもしれない

【医学的根拠】専門家でなければ、一般的なニキビと他の皮膚疾患とを確実に見分けることはできません。例えば、粉瘤(ふんりゅう、アテローム)、ウイルス性のイボ、あるいは伝染性膿痂疹(とびひ)のような感染症をニキビと間違えて潰そうとすると、深刻な事態を招くことがあります。

  • 粉瘤(アテローム):袋状の構造物であり、圧迫すると皮膚の下で袋が破裂し、激しい炎症を引き起こし、後の外科的切除を困難にします28
  • イボ:ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であり、潰すことでウイルスを拡散させ、さらに多くのイボを作る原因となります29
  • とびひ:伝染性の高い細菌性皮膚感染症であり、潰すことで細菌を皮膚全体や他人に広げてしまいます30

【正しい行動】できものが異常に見える、特に痛みが強い、またはなかなか治らない場合は、自己判断せず、正確な診断のために皮膚科を受診してください。

過ち10:ニキビを潰すことが治療法または長期的な解決策であると信じる

【医学的根拠】ニキビを潰す行為は、単一の症状に対処しているだけであり、ニキビという疾患の根本原因を解決するものではありません6。次のニキビの発生を防ぐ効果は全くありません。この短期的な思考は、ニキビを長期的にコントロールし、将来の瘢痕を防ぐことができる効果的な、根拠に基づいた治療の開始を遅らせるだけです。

【正しい行動】焦点を、反応的に「潰す」ことから、積極的に「治療する」ことへ移しましょう。日本皮膚科学会や米国皮膚科学会のガイドラインに基づいた包括的な治療計画について、皮膚科医と相談してください。これらのガイドラインでは、レチノイド外用薬や過酸化ベンゾイル、必要に応じて抗生物質などが強く推奨されています132

過ち11:恥ずかしさや無関心から専門的な医療相談を避ける

【医学的根拠】この最後の過ちは、冒頭で触れた「治療の空白」の問題に帰着します2。現代の皮膚科学は、アダパレンや過酸化ベンゾイルのような効果的な外用薬から、ドキシサイクリンやイソトレチノインのような内服薬、そして瘢痕に対する様々な治療法まで、ニキビと戦うための強力な武器を持っています1。専門家の助言を避けることは、予防可能であったはずの瘢痕と、不必要な精神的苦痛を自ら招くことに繋がります。

【正しい行動】ニキビは治療可能な病気であると認識し、皮膚科専門医に相談してください。早期かつ適切な治療こそが、清潔な肌を手に入れ、永続的なダメージを防ぐための最も確実で効果的な道です6

能動的な管理と回復のためのフレームワーク

ここからは、受動的に過ちを避けるだけでなく、積極的に肌を管理し、回復させるための具体的な行動計画を提示します。

緊急対応:もしニキビが潰れてしまったら?

パニックにならず、以下の手順を冷静に実行してください。

  1. それ以上、触らない、絞らない:すでに起きてしまったダメージを悪化させないでください14
  2. 優しく洗浄する:低刺激性の洗顔料とぬるま湯を使い、そっと洗い流します。清潔なタオルかティッシュペーパーで、こすらずに水分を吸い取ります14
  3. 保護して治癒を促す:ハイドロコロイド素材のニキビパッチを貼ります。これは、残った滲出液を吸収し、傷を湿潤環境に保って治癒を早めると同時に、外部からの細菌の侵入を防ぐという二重の役割を果たします3
  4. 経過を観察する:赤み、腫れ、痛みの増大、膿の増加といった感染の兆候に注意してください。これらの兆候が現れた場合は、速やかに医師の診察を受けてください。

後始末の管理:ニキビ跡(瘢痕)ガイド

ニキビが治った後に残る跡は、一種類ではありません。原因と治療法が異なるため、自分の跡がどのタイプかを理解することが、適切なケアへの第一歩です。

ニキビ跡の種類と対処法
跡の種類 見た目の特徴 根本原因 セルフケア・予防 専門的な治療法
炎症後紅斑 (赤み) 赤色から紫色の平坦な斑点 炎症による毛細血管の損傷と、残存するヘモグロビン18 時間経過、優しいスキンケア、厳格な紫外線対策。十分な睡眠やストレス管理など、健康的な生活習慣によるターンオーバーの促進。 ヘモグロビンを標的とするレーザー治療(ジェネシスなど)。
炎症後色素沈着 (茶色のシミ) 茶色いシミ、そばかすに似た平坦な斑点 炎症によりメラノサイト(色素細胞)が刺激され、メラニンが過剰に生成される18 紫外線対策が絶対的に重要36。美白有効成分を含む製品の使用。 ケミカルピーリング、レーザートーニング、処方外用薬。
萎縮性瘢痕 (へこみ) クレーター状、アイスピック状、箱状のへこみ 真皮層の組織を破壊するほどの深刻な炎症によるコラーゲンの喪失1 予防が最も重要。セルフケアでの改善は非常に限定的。 ヒアルロン酸注入、レーザーリサーフェシング、ケミカルピーリング、マイクロニードリングなど。
肥厚性瘢痕・ケロイド (盛り上がり) 赤みを帯びた硬い盛り上がり 治癒過程におけるコラーゲンの過剰産生1 予防が最も重要。 ステロイド局所注射(日本皮膚科学会ガイドライン推奨)1

よくある質問

ニキビは結局、潰した方が早く治るというのは本当ですか?

医学的には嘘です6。潰すことで一時的に内容物が排出され、見た目の腫れが引いたように感じることがありますが、皮膚内部では炎症が悪化・拡大し、治癒が遅れるだけでなく、瘢痕(傷跡)や色素沈着のリスクを大幅に高めます。適切な治療薬を使用する方が、はるかに安全かつ効果的に治癒を促進します。

ニキビパッチ(ハイドロコロイドパッチ)はどんな時に使うのが効果的ですか?

ハイドロコロイドパッチは、すでに破れてしまったニキビ、または膿の頭がはっきりして自然に破れそうなニキビに使用するのが最も効果的です3。パッチが滲出液を吸収し、傷を湿潤環境に保つことで治癒を助け、外部からの細菌や物理的刺激を防ぎます。炎症がひどいだけの赤いニキビや、まだ芯のない深いニキビに貼っても、効果は限定的です。

皮膚科ではどんな治療をしてくれるのですか?保険は適用されますか?

尋常性痤瘡(ニキビ)は皮膚疾患ですので、皮膚科での治療は基本的に健康保険が適用されます。日本皮膚科学会のガイドラインでは、アダパレンや過酸化ベンゾイル、クリンダマイシンといった外用薬(塗り薬)が治療の基本とされています1。症状が重い場合には、抗生物質の内服薬が処方されることもあります。また、保険適用で面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)という、専用の器具で安全にコメドを排出する処置が行われることもあります6

ニキビ跡のクレーター(へこみ)は自力で治せますか?

残念ながら、一度できてしまったクレーター状のニキビ跡(萎縮性瘢痕)をセルフケアで完全に治すことは、ほぼ不可能です。これらの瘢痕は、皮膚の深い層である真皮のコラーゲン組織が破壊されてしまった状態だからです。改善を目指すには、レーザー治療、ケミカルピーリング、ヒアルロン酸注入など、美容皮膚科での専門的な治療が必要となります。だからこそ、瘢痕を作らないための「予防」、つまり早期のニキビ治療が何よりも重要なのです。

結論

ニキビを潰したいという衝動は強力ですが、その一瞬の行動がもたらす代償は、長期的な瘢痕や色素沈着という形で現れます。本稿で詳述した11の過ちは、単なる禁止事項のリストではありません。それは、ニキビを「尋常性痤瘡」という医学的疾患として捉え、科学的根拠に基づいたアプローチへと思考を転換するための道しるべです。顔の危険な三角地帯のリスクから、 tổn thương の誤認、そして専門家による面皰圧出との決定的違いまで、自己流でニキビを潰す行為には、計り知れない危険が伴います。最大の過ちは、ニキビを潰すという個々の行為そのものよりも、根拠に基づいた専門的な医療を求めずに、自己流の対処法に頼り続けてしまうことです。現代の皮膚科学は、ニキビを効果的に管理し、将来の瘢痕を予防するための安全で確立された治療法を提供しています。この記事が、皆様がその一歩を踏み出すきっかけとなり、健やかで美しい肌を取り戻すための一助となることを、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会は心より願っています。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 公益社団法人日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf
  2. AMR臨床リファレンスセンター. 令和時代のニキビ治療 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://amr.jihs.go.jp/pdf/20220127_press.pdf
  3. Northwestern Medicine. Is There a Safe Way to Pop a Pimple? [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.nm.org/healthbeat/healthy-tips/quick-dose-is-there-a-safe-way-to-pop-a-pimple
  4. ビューティースキンクリニック. 皮膚科医がオススメするニキビ市販薬とニキビの成り立ち [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://beauty-clinic.or.jp/blog/drugs
  5. Maison KOSÉ. ニキビができたら、どうすればいい!? ニキビの対処法 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://maison.kose.co.jp/article/drphil/g/g-phil-beauty-column-20230208/
  6. SOKUYAKU. 【医師監修】ニキビを潰すと早く治るのは嘘?やってはいけない理由と正しい潰し方を紹介 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://sokuyaku.jp/column/2024_215.html
  7. ココクリニック. 専門医が教えるニキビ(ざ瘡)は病院で治療すべき5つの理由と、その医学的根拠 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://koko-clinic.com/blog/%E5%B0%82%E9%96%80%E5%8C%BB%E3%81%8C%E6%95%99%E3%81%88%E3%82%8B%E3%83%8B%E3%82%AD%E3%83%93%EF%BC%88%E3%81%96%E7%98%A1%EF%BC%89%E3%81%AF%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%A7%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%99%E3%81%B9/
  8. 厚生労働省. 資料 2-1 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001313009.pdf
  9. 大垣クリニック. ニキビの治し方を皮膚科専門医が解説 – あごや鼻・おでこのニキビを速攻治したい方へ [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://oogaki.or.jp/hifuka/acne/treatment/
  10. American Academy of Dermatology. Pimple popping: Why only a dermatologist should do it [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.aad.org/public/diseases/acne-and-rosacea/pimple-popping-why-only-a-dermatologist-should-do-it
  11. WebMD. What to Know Before You Pop a Pimple [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.webmd.com/skin-problems-and-treatments/features/pop-a-zit
  12. PAIR(ペア)ピュア肌ラボ. ニキビは潰す方が早く治る? | 皮膚科医 横山先生の特別講座 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://pair.lion.co.jp/article/dr/010_rumor.htm
  13. 銀座アイグラッドクリニック. 簡単にできるニキビ跡を消すコツとは?やってはいけない … [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://ginza-iglad.com/remove-acne-scars/
  14. 美肌ドクター. ニキビが潰れてしまった……! やってはいけないNG行為とおすすめのケア方法 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: http://www.bihadadr.com/blog/beauty/2018/09/care-method/
  15. Cleveland Clinic Newsroom. Why is it Bad to Pop a Pimple? [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://newsroom.clevelandclinic.org/2024/11/12/why-is-it-bad-to-pop-a-pimple
  16. Kansas City University. American Academy of Dermatology Acne Guidelines of Care versus Modern Skincare Trends [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://digitalcommons.kansascity.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=2017&context=studentpub
  17. The Dermatology Digest. AAD Issues Updated Acne Treatment Guidelines [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://thedermdigest.com/aad-issues-updated-acne-treatment-guidelines/
  18. MEDIAGEクリニック青山院. ニキビ跡 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://mediage.co.jp/menu/nayami-nikibi_ato
  19. Global News. Reality check: Can popping pimples really kill you? [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://globalnews.ca/news/3010034/reality-check-can-popping-pimples-really-kill-you/
  20. PMC – PubMed Central. Cavernous Sinus Thrombosis of Nasal Origin in Children [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4298578/
  21. Wikipedia. Danger triangle of the face [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://en.wikipedia.org/wiki/Danger_triangle_of_the_face
  22. Cleveland Clinic Health Essentials. What Is the Danger Triangle on the Face? [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://health.clevelandclinic.org/danger-triangle
  23. Fortis Healthcare. The ‘Danger Triangle of the Face’: What It Is and Why It Matters [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.fortishealthcare.com/blogs/danger-triangle-face-what-it-and-why-it-matters
  24. 健栄製薬. 【医師監修】毛穴の白いニョロニョロの正体は?間違ったケア・適切なケア方法も紹介 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.kenei-pharm.com/lumild/column/dry_skin/column03/
  25. ビューティースキンクリニック. ニキビから血が出る原因と対策|ニキビは潰してもいい? [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://beauty-clinic.or.jp/blog/nikibi-blood
  26. American Academy of Dermatology. American Academy of Dermatology issues updated guidelines for the management of acne [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.aad.org/news/updated-guidelines-acne-management
  27. 公益社団法人日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡治療ガイドライン 2016 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/acne%20guideline.pdf
  28. 大阪梅田形成外科粉瘤クリニック. 粉瘤(アテローム)とは [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.umeda-keisei.jp/atheroma/
  29. 千里皮膚科. イボの種類や取り方|やってはいけないことは? [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.senrihifuka.com/warts/
  30. キャップスクリニック. とびひの治療。​家庭でできるケアについて [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://caps-clinic.jp/tobihi/
  31. マルホ 医療関係者向けサイト. ざ瘡の治療 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.maruho.co.jp/medical/articles/acne/treatment/index.html
  32. AAFP. Acne Vulgaris: Treatment Guidelines from the AAD [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2017/0601/p740.html
  33. 日比谷ヒフ科クリニック. ニキビ・ニキビ痕 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.hibiya-skin.com/subject/nikibi.html
  34. はなふさ皮膚科. ニキビ跡による色素沈着の原因と治療方法を解説 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://hanafusa-hifuka-beauty.com/disease/acne-scars/pigmentation/
  35. 三鷹台ヒルズクリニック. 赤み・色素沈着 | ニキビ跡 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://mitakabiyou.com/acnescars/acnescar/redness/
  36. マイビューティクリニック. ニキビ跡がシミになる?原因と消す方法を徹底解説【皮膚科医監修】 [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://mb-hifuka.com/blog/acne-scars-stain/
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ