【医師監修】赤ちゃんのよだれが多いのはなぜ?月齢別の原因と正しいケア、注意すべき病気のサインを徹底解説
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【医師監修】赤ちゃんのよだれが多いのはなぜ?月齢別の原因と正しいケア、注意すべき病気のサインを徹底解説

赤ちゃんの可愛らしい口元から垂れるよだれ。多くの保護者にとっては微笑ましい光景ですが、「うちの子、よだれが多すぎない?」「よだれで肌が荒れてかわいそう」「もしかして何かの病気?」といった不安を感じることも少なくありません。この記事では、JapaneseHealth.org編集委員会が、小児科医の監修のもと、赤ちゃんのよだれに関するあらゆる疑問に、科学的根拠に基づいてお答えします。生理的な発達の一部であるよだれから、注意すべき病気のサインまで、包括的に理解を深め、適切なケアができるようになりましょう。

本記事の科学的根拠

この記事は、引用元として明記された最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された情報源と、提示された医学的ガイダンスへの直接的な関連性を示すものです。

  • 学術論文および医療機関の指針: よだれの生理的機能、よだれかぶれの対処法、および流涎症の診断・治療に関する記述は、兵庫県立こども病院のガイドブック13や、国際的な医学雑誌に掲載された複数の査読済み論文(例: Fairhurst & Cockerill, 20115; Reid, S. M., et al., 201915)に基づいています。
  • 日本の公的機関および学会の情報: 異物の誤飲に関する注意喚起は、日本小児科学会の提言12を参考にしています。また、感染症に関する情報は、国立感染症研究所のデータ24など、信頼できる情報源に基づいています。
  • 専門医による臨床情報: 各症状の解説や対処法については、複数の小児科・皮膚科クリニックが公開している臨床情報467を精査し、総合的な見地からまとめています。

要点まとめ

  • 赤ちゃんのよだれは、消化を助け、口内を清潔に保つ重要な役割があります。よだれが多いのは、唾液を飲み込む機能が未熟なためで、病気ではないことがほとんどです。
  • よだれかぶれ(接触性皮膚炎)の予防とケアは、「清潔・保護・保湿」の3原則が基本です。食事前のワセリン塗布が効果的です。
  • 発熱や呼吸困難を伴う、口の中を痛がる、異物誤飲の可能性があるなど、急なよだれの増加には注意が必要です。速やかに医療機関を受診してください。
  • 4歳を過ぎてもよだれが著しく続く場合は「流涎症」の可能性があり、専門家による評価や治療が推奨されます。
  • ほとんどのよだれは成長の一過程です。正しい知識を持ち、過度に心配せず、適切なケアを心がけることが大切です。

赤ちゃんの「よだれ」の基本:なぜ出て、どんな役割があるの?

赤ちゃんのよだれを正しく理解することは、不要な心配を減らすための第一歩です。多くの保護者が抱く疑問に、科学的根拠をもって答えていきます。

よだれの正体と重要な役割

よだれ(唾液)は単なる水分ではなく、赤ちゃんの健康と成長に不可欠な多くの機能を持っています。スコーレ幼稚園が提供する健康だよりによると、唾液には主に以下の4つの重要な役割があります1

  • 消化の補助: 唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素が、離乳食などに含まれるデンプンを分解し、胃腸での本格的な消化を助けます。
  • 口腔内の浄化と保護: 口の中の食べかすを洗い流す自浄作用があります。さらに、抗菌作用によって虫歯の原因となる細菌の増殖を抑え、口内の粘膜を保護し、傷の修復を助ける働きも担っています。
  • 嚥下の補助: 食べ物を湿らせてひとまとめにし、スムーズに飲み込む(嚥下する)のを助けます。
  • 歯の保護: 食事によって酸性に傾いた口内を中和し、歯の表面にあるエナメル質が溶け出す「脱灰」を防ぎ、虫歯のリスクを低減させます。

なぜ赤ちゃんはよだれが多いのか?本当の理由

「歯が生え始めるからよだれが増える」というのは広く知られていますが、それは数ある原因の一つに過ぎません。赤ちゃんのよだれが多い根本的な理由は、その「機能の未熟さ」にあると、育児情報サイト「ママフリ」は解説しています2

  • 口腔機能の未熟さ: 大人と比較して、赤ちゃんは口周りの筋肉がまだ十分に発達していません。そのため、口をしっかりと閉じて唾液を口内に保持する能力や、溜まった唾液を意識的に「ごっくん」と飲み込む嚥下機能が未熟です2。結果として、分泌される唾液の量が大人と同じでも、処理しきれずに口から溢れ出てしまうのです。
  • 消化機能の発達: ベビー用品を扱うアカチャンホンポの情報によると、生後4〜5ヶ月頃になると、赤ちゃんは離乳食の開始に備えて消化機能が整い始め、それに伴い唾液の分泌量そのものが増加します3
  • 歯の萌出(ほうしゅつ)による刺激: 歯が生え始める時期には、歯茎がむずむずと刺激されることで、反射的に唾液の分泌がさらに促進されると、ABCデンタルクリニックは指摘しています4

よだれの量の月齢別変化:いつからいつまで?

よだれの量には大きな個人差がありますが、一般的な発達の目安を知っておくことは、保護者の安心につながります。

  • 生後0〜3ヶ月: 唾液の分泌量自体がまだ少なく、一日の大半を寝て過ごすため、よだれはほとんど見られません3
  • 生後4〜6ヶ月: この時期に唾液腺が発達し、消化機能が整い始めるため、よだれの量が急激に増えます。多くの赤ちゃんにとって、これが最初のよだれのピークとなります3
  • 生後7ヶ月〜1歳頃: 離乳食が進み、歯が次々と生えそろうにつれて、唾液の分泌はさらに活発になります。また、好奇心からおもちゃなどを口に入れることも増え、よだれは多い状態が続きます4
  • 1歳半〜3歳頃: 口周りの筋肉が発達し、嚥下機能が上達するにつれて、意識的に唾液を飲み込めるようになり、よだれは徐々に減少していきます。多くの子どもは2歳頃までには、よだれを垂らすことがほとんどなくなるとされています2

第三者的な洞察: よだれは「発達のマイルストーン」の一つと捉えることができます。よだれが増え始めることは、赤ちゃんが固形物を食べる準備が整ってきたサインでもあるのです4。一方で、2歳を過ぎてもよだれが多い場合でも、その多くは個人差の範囲内です。しかし、2011年に発表されたFairhurst氏とCockerill氏の研究によると、4歳を過ぎても日中に顕著なよだれが続く場合は、単なる生理的な範囲を超えている可能性があり、専門家への相談を検討する一つの目安となります5

【完全ガイド】よだれかぶれ(接触性皮膚炎)の予防と対策

よだれが多い時期に、多くの保護者が直面するのが「よだれかぶれ」です。これは医学的には接触性皮膚炎に分類されます。正しい知識を身につけ、赤ちゃんのデリケートな肌を守りましょう。

よだれかぶれの原因:なぜ赤く、ブツブツになるのか?

よだれかぶれは、いくつかの要因が重なって発生します。

  • 薄くてデリケートな皮膚: アカチャンホンポが提供する専門家の情報によれば、赤ちゃんの皮膚の厚さは大人の約半分しかなく、外部からの刺激に対するバリア機能が非常に弱い状態です3
  • 消化酵素の刺激: よだれにはアミラーゼなどの消化酵素が含まれています。この唾液が長時間肌に付着することで、皮膚の主成分であるタンパク質を分解し、炎症、すなわち接触性皮膚炎を引き起こします。これが、よだれかぶれの直接的な原因です3
  • 摩擦と食べかす: よだれを拭く際のゴシゴシという摩擦や、口周りに付着した離乳食の食べかすも、弱い皮膚への刺激となり、症状を悪化させる一因となります。キッズドクターの記事でもこの点が強調されています6

よだれかぶれ対策の3つの鉄則:「清潔・保護・保湿」

よだれかぶれのケアは、この3つのポイントに集約されます。これらを徹底することが、赤ちゃんの肌を守る上で最も重要です。

鉄則1:清潔 (Cleanse)

  • 優しく拭き取る: よだれに気づいたら、乾いた布でこするのではなく、水で濡らした柔らかいガーゼやコットンで、ポンポンと優しく押さえるように拭き取ることが推奨されています3。摩擦は最大の敵と心得ましょう。
  • 食事の後は洗い流す: 食べかすが残らないよう、食事の後には口周りをきれいに拭くか、ぬるま湯で優しく洗い流す習慣をつけましょう6
  • 入浴時の洗浄: 石鹸やボディソープをよく泡立て、その泡で優しく撫でるように洗い、洗浄成分が残らないようにしっかりとすすぎます3

鉄則2:保護 (Protect)

  • 食事前のバリア形成: ベネッセ教育情報サイトで専門家が推奨している非常に効果的な予防策として、食事の前に口周りにワセリンを薄く塗る方法があります7。ワセリンが保護膜の役割を果たし、よだれや食べ物の刺激が直接肌に触れるのを防ぎます。
  • スタイの活用: 吸湿性の高い綿やガーゼ素材のスタイ(よだれかけ)をこまめに交換し、顎や首によだれが付着し続けるのを防ぎましょう7

鉄則3:保湿 (Moisturize)

  • ケアの基本: 肌が乾燥するとバリア機能が著しく低下し、わずかな刺激でも炎症を起こしやすくなります。よだれを拭いた後や入浴後は、必ず保湿剤を塗ることを習慣にしましょう3
  • 保湿剤の選び方: ベビー用の低刺激なローションやクリームが基本です。特に乾燥が強い冬場などは、油分の多いクリームタイプが適しています3。ワセリン(白色ワセリンや、より純度の高いプロペトなど)は、肌の水分蒸発を防ぐ「蓋」の役割を果たす皮膚保護剤です。それ自体に潤いを与える効果は限定的なため、ローションやクリームで潤いを補給した後に重ねて塗ると、より高い効果が期待できます3

こんな時は病院へ:受診の目安

適切な家庭でのケアを続けても改善が見られない、あるいは症状が悪化する場合は、小児科や皮膚科を受診することが重要です。

  • 赤みが強く、かゆみがひどい、または赤ちゃんが頻繁に掻こうとする場合7
  • 皮膚がじゅくじゅくして浸出液が出たり、黄色いかさぶた(膿痂疹のサイン)ができたりしている場合7
  • 発疹が口周りだけでなく、体や手足など他の部位にも広がっている場合。これはアトピー性皮膚炎など、他の皮膚疾患の可能性を示唆します8

医療機関では、必要に応じてステロイド軟膏が処方されることがあります。ステロイドは炎症を速やかに抑える効果があり、専門家の指導のもとで適切な強さのものを短期間使用すれば、非常に安全で有効な治療法です6

注意すべき「よだれ」:見逃してはいけない病気のサイン

ほとんどのよだれは心配いりませんが、中には病気のサインが隠れていることがあります。普段の様子と違うと感じた場合は、注意深く観察し、以下の症状が見られる場合は速やかに医療機関を受診してください。

サイン1:急によだれの量が増え、他の症状を伴う場合

よだれの量が急激に増える場合、それは唾液の分泌が増えたのではなく、「痛みで飲み込めない」状態を示唆していることが多くあります。

  • 口の中の痛み(感染症):
    • 手足口病、ヘルパンギーナ、扁桃炎、口内炎など、口の中や喉に水疱や潰瘍ができる病気では、強い痛みで唾液を飲み込むことが困難になります。その結果、よだれの量が急に増えたように見えます4
    • 確認事項: これらの病気では、発熱、機嫌が悪い、食事やミルクを嫌がるといった症状が同時に見られることが特徴です。菊名キュアーズクリニックも、これらの症状を判断のポイントとして挙げています9
  • 呼吸の苦しさ:
    • 木下こどもクリニックによると、アレルギー性鼻炎などによる重度の鼻づまりや、アデノイド肥大で鼻呼吸ができないと、自然と口呼吸になります。口が開いたままになるため、よだれが垂れやすくなります10
    • 急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん): これは非常に危険な状態で、喉の奥にある喉頭蓋が細菌感染で腫れ上がり、気道を塞いでしまいます。高熱、呼吸困難、そして著しいよだれの増加が特徴です。パンパースが提供する医療情報によれば、これは窒息の危険があるため、救急受診が絶対に必要な状態です11
  • 異物の誤飲:
    • おもちゃの部品やボタン電池、硬貨などを誤って飲み込み、食道に詰まらせてしまうと、唾液が胃に流れなくなり、突然よだれが大量に出ることがあります。顔色が悪くなる、声が出せない、苦しそうにしているなどの場合は、窒息のサインかもしれません。日本小児科学会は、このような場合は直ちに救急車を呼ぶよう強く呼びかけています12

サイン2:年齢相応の発達と比べて、よだれが長く続く場合

発達の目安: 通常、多くの子どもは2〜3歳までによだれのコントロールができるようになります。国際的なコンセンサスでは、4歳を過ぎても日中によだれが続く場合は、生理的な範囲を超えている可能性があり、何らかの基礎的な問題(pathologic sialorrhea)を考慮する必要があるとされています5
考えられる背景:

  • 口腔機能の問題: 舌や唇の動きが不器用であったり、口腔内の感覚が鈍かったりするために、唾液をうまく飲み込めない場合があります。
  • 神経・筋疾患: 兵庫県立こども病院のガイドブックによると、脳性麻痺などの神経学的障害を持つ子どもの約40%に流涎(よだれが続く状態)が見られると報告されています13。これは唾液の過剰分泌ではなく、嚥下機能の障害が主な原因であると、カナダの医学雑誌に掲載されたBok医師の論文で述べられています14
  • 発達の遅れ: 知的な発達に遅れがある場合、嚥下機能の習得もそれに伴って遅れることがあります14

保護者へのメッセージ: 4歳を過ぎてもお子様のよだれが気になる場合は、「そのうち治るだろう」と自己判断せず、一度かかりつけの小児科医に相談することが重要です。必要に応じて、小児歯科、小児神経科、耳鼻咽喉科といった専門医への紹介を検討することもあります。

【専門医の視点】流涎症(Sialorrhea)の診断と治療

4歳以降も続く、あるいは基礎疾患に伴う持続的なよだれは、医学的に「流涎症」と呼ばれ、生活の質を向上させるために治療の対象となることがあります。

流涎症がもたらす問題

流涎症は、単に衣服が汚れるという美容的な問題だけでなく、様々な医学的・社会的問題を引き起こす可能性があります。オーストラリアの小児科医を対象とした調査研究では、以下のような問題が指摘されています15

  • 身体的問題: 繰り返す口周りの皮膚炎、絶えず水分を失うことによる脱水、口臭、そして最も懸念されるのが、唾液が誤って気管に入ること(誤嚥)による肺炎のリスクです。
  • 心理・社会的問題: 本人の自尊心の低下、他者からのからかいやいじめによる社会的な孤立、さらにはキーボードやタブレットなどコミュニケーションを補助する機器が唾液で故障する問題、介護者の負担増大などが、英国の医学雑誌に掲載されたChong氏らのレビューで報告されています16

専門家による診断とアプローチ

流涎症の治療は、単一の科で完結するものではなく、原因や重症度に応じて、多職種の専門家チームが連携して行われます15。このチームには、小児科医、小児神経科医、歯科医、耳鼻咽喉科医、言語聴覚士、作業療法士などが含まれます。まず、姿勢、口腔機能(唇や舌の動き)、嚥下能力、鼻の通り具合、歯並びなどを詳細に評価し14、治療のゴールを設定します。そのゴールは、必ずしもよだれを完全にゼロにすることではなく、本人の生活の質(QOL)を向上させるために、管理可能なレベルまで減らすことです15

流涎症の治療法:保存的治療から外科的治療まで

治療は、侵襲性(体への負担)が低いものから段階的に行われるのが一般的です。ブラジルの医学会誌に掲載された2023年の系統的レビューでも、この段階的アプローチが推奨されています17

  1. 保存的治療(非薬物療法)
    • 姿勢の調整: 正しい姿勢を保つことは、頭と首のコントロールを改善し、嚥下を助けるための最も基本的なアプローチです15
    • 口腔モーター訓練: 言語聴覚士(ST)の指導のもと、唇や舌、頬の筋肉を鍛え、口腔内の感覚を高める訓練を行います。兵庫県立こども病院の唾液治療クリニックでは、ラッパを吹く、ストローで吸う・吹く遊び、顔の表情を作る、舌で唇を舐める練習などが紹介されています18
    • 行動療法: 「ごっくんしようね」という声かけや、タイマー、視覚的な合図(シールなど)を用いて、意識的に唾液を飲み込む習慣を促す方法です13
  2. 薬物療法
    唾液の分泌そのものを抑える抗コリン薬が使用されることがあります。

    • グリコピロニウム(Glycopyrrolate): 小児の流涎症治療において、その有効性が複数の研究で示されている薬剤です19。しかし、日本の医薬品医療機器情報提供ホームページによれば、2024年現在、小児の流涎症に対する保険適用はありません20
    • スコポリアエキス(ロートエキス): 日本では、重症心身障害児(者)の重度の流涎に対し、胃腸薬であるスコポリアエキスが適応外で使用されることがあります。国本医師による2012年の研究では高い有効性が報告されていますが、便秘や痰が硬くなるなどの副作用に注意が必要です21
    • その他: 貼り薬のスコポラミンなども使用されることがありますが14、いずれも医師の厳密な管理下で使用されるべき薬剤です。
  3. ボツリヌス毒素(BoNT)注射
    唾液腺(主に耳下腺や顎下腺)にボツリヌス毒素を注射し、唾液の分泌を一時的に(通常3〜6ヶ月間)抑制する方法です。2013年に学術誌Toxinsに掲載されたレビュー論文によると、流涎症治療において高いレベルの科学的根拠があるとされています22
  4. 外科的治療
    他の治療法で効果が見られない重度の流涎症に対して、最終的な選択肢として検討されます。唾液腺の導管(唾液の通り道)を喉の奥に付け替える手術(唾液腺導管移設術)などがあります17

よくある質問

Q1: よだれが多いと虫歯になりにくいというのは本当ですか?
A1: はい、そのように言われることがあります。唾液には口の中を洗い流し(自浄作用)、酸を中和して細菌の増殖を抑える働きがあるため、唾液の分泌が多いことは虫歯予防に有利に働く側面があります1。しかし、それだけで虫歯が完全に防げるわけではありません。糖分の多い飲食物の摂取習慣や、歯磨きの習慣がなければ虫歯のリスクは高まりますので、適切な歯磨きは不可欠です。
Q2: 2歳の子どものよだれがまだ多いです。心配です。
A2: 2歳であれば、まだよだれが多いのは個人差の範囲内であることがほとんどです4。口周りの機能が発達し、嚥下コントロールが上達するにつれて自然に減っていくことが多いので、焦らず見守りましょう。ただし、この記事のセクション3で挙げたような、発熱や痛み、呼吸の苦しさなどの他の心配な症状がなく、元気に発達していることが前提です。ご不安な場合は、乳幼児健診などの機会にかかりつけの医師に相談してみるのが良いでしょう。
Q3: よだれかぶれの薬は、市販薬でも大丈夫ですか?
A3: 軽い赤み程度であれば、市販の非ステロイド性抗炎症薬や保湿剤で様子を見ることも可能です。しかし、炎症が強い場合や、じゅくじゅくしている場合は、自己判断で薬を塗り続けると悪化したり、細菌感染を起こしたりする可能性があります。特に、赤ちゃんに使用できる薬剤は限られています。早めに小児科や皮膚科を受診し、症状に合った適切な強さのステロイド外用薬などを処方してもらうのが、最も安全で確実な方法です。

結論

赤ちゃんのよだれは、その多くが成長過程における自然で健全な生理現象です。消化機能や口腔機能が、次の発達段階に向けて準備を進めている証拠でもあり、基本的には温かく見守ってあげることが大切です。それに伴うよだれかぶれに対しては、「清潔・保護・保湿」の3原則に基づいた丁寧なスキンケアが最も有効な対策となります。
一方で、よだれが「いつもの様子と違う」と感じたときは、見逃してはならない病気のサインである可能性も考慮に入れなければなりません。特に、急激な量の変化、発熱や痛みといった他の症状を伴う場合、そして国際的な目安である4歳を過ぎても著しく続く場合は、迷わず小児科医に相談してください。現代の医療では、専門的な介入が必要な流涎症に対しても、多角的な治療選択肢が用意されています。
この記事が、保護者の皆様の不安を和らげ、科学的根拠に基づいた冷静な判断と適切な対応を促し、赤ちゃんの健やかな成長をサポートするための一助となれば幸いです。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康上の懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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