B型肝炎と妊娠:赤ちゃんとご自身の健康を守るために、すべてのママが知っておくべきこと
妊娠

B型肝炎と妊娠:赤ちゃんとご自身の健康を守るために、すべてのママが知っておくべきこと

妊娠という喜ばしい期間中に、B型肝炎(HBV)に感染していると告げられることは、多くの不安や疑問を引き起こすかもしれません。しかし、まず最初にお伝えしたいのは、あなたは決して一人ではないということ、そして現代の医療、特に日本の先進的な医療制度のもとでは、あなたとあなたの大切な赤ちゃんを効果的に守るための確固たるシステムが存在するということです。医学の進歩とこれまでの経験から、今日の医療体制はかつてないほど安全かつ効果的になっています。この記事は、その道のりを一歩一歩、明確かつ詳細に解説し、あなたが自信と安心をもって母子の健康管理に取り組めるよう、あなたに寄り添うことを目的としています。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源のみを含み、提示された医学的指導との直接的な関連性を示したものです。

  • 世界保健機関(WHO)および米国疾病予防管理センター(CDC): 高いウイルス量を持つ母親に対するテノホビル(TDF)を用いた抗ウイルス療法の推奨や、母子感染予防に関する国際的な標準治療方針に関する記述は、これらの組織が公表したガイドラインに基づいています42627
  • 日本肝臓学会(JSH)および日本産科婦人科学会(JSOG): 日本国内における妊婦へのHBsAgスクリーニング、高ウイルス量妊婦への抗ウイルス療法(HBV DNA量200,000 IU/mL以上)、および母子感染防止策の具体的な実施方法に関する記述は、これらの日本の主要な専門学会が策定した診療ガイドラインに基づいています3132
  • 国立感染症研究所(NIID)および日本の公衆衛生研究: 1986年から続く日本の「B型肝炎母子感染防止事業」の歴史的成功と、それによる国内のHBsAg陽性率の劇的な低下に関するデータは、国立感染症研究所の報告や愛知県などで行われた公衆衛生研究に基づいています69

要点まとめ

  • 日本には、B型肝炎の母子感染を防ぐための非常に効果的で確立された公的プログラムがあります。
  • すべての妊婦さんは、妊娠初期の妊婦健診でB型肝炎ウイルスの検査(HBsAg検査)を受けます。
  • 検査で陽性だったお母さんから生まれた赤ちゃんは、出生後すぐに特別な注射(HBIGとB型肝炎ワクチン)を受けることで、感染から守られます。
  • お母さんの体内のウイルス量が特に多い場合、妊娠後期に安全な抗ウイルス薬を服用することで、赤ちゃんへの感染リスクをさらに最小限に抑えることができます。
  • 赤ちゃんへの予防策が適切に行われていれば、母乳育児は安全です。そして、お母さん自身の長期的な健康管理も非常に重要です。

B型肝炎を理解する:なぜ妊娠中に重要なのか?

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓に感染することで起こる病気です1。妊娠中において最も重要な点は、出産の際に赤ちゃんにウイルスが感染してしまう「母子感染」の危険性です。適切な医療介入がなければ、感染したお母さんから生まれた赤ちゃんの約90%が、ウイルスを生涯持ち続ける「慢性キャリア」になると言われています3
B型肝炎ウイルスを「招かれざる客」に例えてみましょう。健康な大人がこのウイルスに出会った場合、免疫システムが十分に強力なため、多くはウイルスを体外に追い出すことができます。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんの免疫システムはまだ未熟で、この「客」が異物だと認識できません。そのため、ウイルスが体内に永住してしまい、慢性的な感染状態を引き起こすのです。これが将来的に、肝硬変や肝がんといった深刻な病気につながる危険性を高めます1。だからこそ、母子感染を防ぐことが何よりも重要なのです。

日本の保護システム:標準的なケアのステップ

日本のB型肝炎母子感染予防システムは、世界的に見ても非常に成功した公衆衛生のモデルです。その成功は、すべての妊婦さんを対象とした検査と、赤ちゃんを守るための標準化された予防策という、二つの強力な柱に基づいています。

ステップ1:最初の安全確認 ー 妊婦健診でのスクリーニング検査

赤ちゃんをHBVから守るための最初の、そして最も重要な一歩は、お母さんの感染状況を把握することです。日本では、すべての妊婦さんが妊娠初期の定期的な妊婦健診(妊婦健診)の一環として、B型肝炎ウイルスの表面抗原(HBsAg)を調べる血液検査を受けることが義務付けられています2。この検査費用は、地方自治体から交付される妊婦健康診査受診票を利用することで公費補助の対象となるため、すべての人が安心して検査を受けられる体制が整っています15。もしHBsAg検査の結果が陽性であった場合は、ウイルスの活動性を評価するためのより詳細な検査(HBe抗原検査など)が行われますが、これらの追加検査も国民健康保険の適用対象となります18

ステップ2:赤ちゃんのための「二重の盾」ー 出生直後の予防プログラム

お母さんのHBsAg検査が陽性であると判明した場合、赤ちゃんが生まれた直後から、非常に効果的であることが証明されている標準的な予防プログラムが開始されます。この処置も健康保険の適用となり、日本全国で標準的な医療として提供されています6。この治療法は、赤ちゃんを守る「二重の盾」となる二つの同時介入から成り立っています。

  • 抗HBs人免疫グロブリン(HBIG): これは、精製されたB型肝炎ウイルスに対する抗体を大量に含んだ注射です。赤ちゃんの体内に侵入したウイルスを直ちに中和する力があり、「受動免疫」として即効性のある防御を提供します。このHBIGの投与は、出生後できるだけ速やかに行う必要があり、特に生後12時間以内が強く推奨されています21
  • B型肝炎ワクチン: HBIGの注射と同時に(ただし、反対側の太ももなど、別の部位に)、赤ちゃんはB型肝炎ワクチンの最初の接種を受けます21。このワクチンは、赤ちゃんの未熟な免疫システムを刺激し、ウイルスに対する自分自身の抗体を作り始めさせる役割を果たします。これにより、「能動免疫」として長期間持続する防御力が構築されます。

出生時の初回接種後、赤ちゃんは通常、生後1ヶ月と生後6ヶ月の時点であと2回のワクチン接種を受け、基本的な予防接種スケジュールを完了します14。HBIGによる即時の受動免疫と、3回のワクチン接種による長期的な能動免疫の組み合わせは、90~94%以上のケースで母子感染を成功裏に防ぐことが科学的に証明されています3
以下の表は、お父さんお母さんが赤ちゃんの予防スケジュールを明確に把握し、大切な節目を見逃すことなく、積極的に赤ちゃんの健康管理に参加できるようまとめたものです。

表1:B型肝炎陽性の母親から生まれた赤ちゃんの標準予防スケジュール(日本)
時期 必要な対応 目的 重要な注意点
出生直後(12時間以内) 抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)1回接種 + B型肝炎ワクチン初回接種 即時的な受動免疫の提供と、能動免疫の構築開始。 最も重要なステップです。病院が時間通りに実施したことを確認し、母子健康手帳に記録してもらいましょう。
生後1ヶ月 B型肝炎ワクチン2回目接種 免疫反応を強化し、抗体産生を促進する。 ワクチンの最適な効果を得るため、予約日を守りましょう。
生後6ヶ月 B型肝炎ワクチン3回目(最終)接種 長期的な免疫防御のため、基礎接種を完了させる。 この接種は忘れられがちです。事前に予約を入れておきましょう。
生後9~12ヶ月 赤ちゃんの血液検査(HBsAgと抗HBs抗体) 予防が成功したか(感染していないか)、防御に必要な抗体が十分に作られたかを確認する。 赤ちゃんの状態を確実に知るための最終確認であり、非常に重要です。

より高い感染リスクを持つお母さんへ:追加の防御層

日本の標準的な予防プログラムは非常に高い成功率を誇りますが、ごく一部に、予防がうまくいかない危険性が通常より高いケースが存在することがわかっています。それは、お母さんの血液中のウイルス量が非常に多い場合です。このような状況に対して、現代医療は妊娠中の抗ウイルス薬治療という、さらなる防御層を追加することを推奨しており、これは日本の専門学会と世界の医療ガイドラインで強く支持されています。

追加介入が必要なのはどんな時? 高リスク群の特定

出生後の予防策が効かずに赤ちゃんが感染してしまう「ブレークスルー感染」は、稀ではありますが起こり得ます。愛知県での詳細な調査を含む複数の研究から、このようなブレークスルー感染は、ほぼすべてが血液中のHBV量が極めて高いお母さんから生まれた赤ちゃんに起きていることが示されています9。高リスクの妊婦さんを特定するためには、主に二つの血液検査指標が用いられます。

  • HBe抗原: HBe抗原が陽性であることは、ウイルスが活発に増殖している状態を示唆します。HBe抗原陽性のお母さんは、陰性のお母さんと比較して赤ちゃんへの感染リスクが格段に高くなります18
  • HBV DNA定量(ウイルス量): これは感染リスクを評価する上で最も正確な指標、「ゴールドスタンダード」とされています。この検査は、血液1ミリリットル中のウイルス遺伝子のコピー数を直接測定します。現代の臨床ガイドラインは、予防的な抗ウイルス療法の必要性を判断するために、この数値を基準にしています26

抗ウイルス療法:さらなる防御層

過去10年間におけるHBV母子感染予防の最も重要な進歩の一つが、高ウイルス量の妊婦さんへの抗ウイルス薬の使用です。特筆すべきは、世界の主要な医療機関(WHO、CDC)と日本の専門学会(日本肝臓学会、日本産科婦人科学会)のガイドラインが、この点において力強く一致していることです。この国際的な合意は、患者さんにとって「日本で受ける治療は、世界で認められた最高水準の治療である」という強力な安心材料となります4
これらのガイドラインは、お母さんのウイルス量が特定の基準値を超えた場合に、予防的な抗ウイルス療法を推奨しています。

  • 治療開始の基準値: 予防的治療を開始するための国際的に合意されたHBV DNAの基準値は、200,000 IU/mL (5.3 log10 IU/mL) 以上です2631。お母さんのウイルス量がこのレベルを超えると、赤ちゃんがHBIGとワクチンを完全に接種しても、ブレークスルー感染のリスクが高まります。
  • 選択される薬剤: この目的で第一に選択される抗ウイルス薬は「テノホビル ジソプロキシル フマル酸塩(TDF)」です。TDFは、ウイルス量を迅速に減少させる高い効果、母体と胎児双方に対する良好な安全性、そして薬剤耐性を生じる危険性が非常に低いことが証明されています2732
  • 治療のタイミング: 治療は通常、妊娠後期、具体的には妊娠28週から32週頃に開始し、出産まで継続します。場合によっては、出産後のお母さんの肝炎の急な悪化(フレアアップ)を防ぐために、出産後短期間、服薬を続けることを医師が勧めることもあります26

強調すべき極めて重要な点は、お母さんへの抗ウイルス療法はあくまで「追加」の措置であり、赤ちゃんへの標準予防策(HBIGとワクチン)の「代替」ではないということです。生まれた赤ちゃんは、引き続きスケジュール通りにHBIGとワクチンの完全な接種を受ける必要があります。

表2:B型肝炎母子感染予防ガイドラインの国際比較
項目 WHO (世界保健機関) CDC (米国) 日本 (JSH/JSOG) 特筆すべき共通点
妊婦スクリーニング 全妊婦にHBsAg検査27 全妊婦に毎回の妊娠でHBsAg検査26 妊婦健診でHBsAg検査が必須11 全員検査が世界標準
抗ウイルス薬治療の基準 HBV DNA ≥200,000 IU/mL27 HBV DNA >200,000 IU/mL26 HBV DNA ≥200,000 IU/mL31 20万IU/mLが国際的合意
第一選択薬 テノホビル (TDF)27 テノホビル (TDF)4 テノホビル (TDF)32 TDFが安全性と効果で一致
治療開始時期 妊娠28週から27 妊娠28~32週26 妊娠24~32週32 妊娠後期からの開始が基本
赤ちゃんへの予防 出生後24時間以内にワクチン27 出生後12時間以内にHBIG+ワクチン3 出生後12時間以内にHBIG+ワクチン21 出生直後のHBIGとワクチン併用が鍵

出産後のケア:赤ちゃんの健康確保と母親の長期管理

ケアのプロセスは分娩室で終わりではありません。産後の期間は、予防策の成功を確認し、育児に関する現実的な懸念に対処し、そしてお母さん自身の長期的な健康管理計画を立てるための重要な時期です。

成功の確認:予防接種後抗体検査(PVST)の重要性

赤ちゃんがB型肝炎ワクチンの3回接種を完了した後、最後の非常に重要なステップが、予防プログラムの効果を確認するための血液検査です。この検査は「予防接種後血清学的検査(Post-vaccination Serologic Testing – PVST)」と呼ばれ、通常、赤ちゃんが生後9ヶ月から12ヶ月の時点で行われます3。PVSTの目的は、以下の二つの重要な要素を確認することです3

  • 感染の有無(HBsAg): HBsAgが陰性であれば、赤ちゃんがウイルスに感染しなかったことが確認されます。これがプログラム全体の主目的です。
  • 免疫獲得の有無(抗HBs抗体): 抗HBs抗体が陽性で、かつ十分な量(通常 ≥10 mIU/mL)が確認できれば、赤ちゃんの体が将来の感染から身を守るための十分な抗体を作り出したことを意味します。

この最終確認は、ご家族に「防御の盾」が効果的に機能したという大きな安心感をもたらします。

日々の懸念への対応:母乳育児と赤ちゃんのケア

退院後の日常生活に関する心配は、ごく自然なことです。これらの問題について、科学的根拠に基づいた明確な情報を提供することは、お母さんのストレスを軽減するのに役立ちます。

  • 母乳育児: 最もよくある質問の一つは、母乳育児が安全かどうかです。答えは「はい」です。CDCや日本産科婦人科学会を含む主要な医療機関は、赤ちゃんが予定通りにHBIGと初回のワクチン接種を受けていれば、HBsAg陽性のお母さんによる母乳育児は安全であり、推奨されると断言しています26。研究によれば、母乳を介した感染リスクはごくわずかであり、それよりも母乳がもたらす多くの健康上の利点がはるかに上回るとされています1。ただし、重要な例外が一つあります。お母さんの乳首に亀裂が入っていたり、炎症や出血があったりする場合は、赤ちゃんが血液に触れるのを避けるため、傷が治るまで直接授乳を一時中断し、搾乳して捨てるべきです21
  • 日常のケア: B型肝炎ウイルスは血液や体液を介して感染し、呼吸や通常の接触では感染しません。したがって、家庭内での予防策(水平感染の防止)は、血液との接触を避けることに焦点を当てます。具体的な実践には以下が含まれます10
    • 歯ブラシ、カミソリ、爪切りなど、血液が付着する可能性のある身の回り品の共有を避ける。
    • お母さんに開いた傷がある場合は、注意深く絆創膏などで覆う。
    • 赤ちゃんのおむつ交換の後は、石鹸で丁寧に手を洗う。
    • お父さんや同居の家族など、他の家族にもHBV検査を受け、免疫がない場合はワクチンを接種するよう勧める23

お母さんのためのケア:長期的な道のり

お母さんにとって、安全な出産は長期的な健康管理の旅における一つのマイルストーンに過ぎません。HBVの慢性キャリアである状態は、生涯にわたる肝臓専門医による定期的な経過観察を必要とします21。このフォローアップには、通常、肝機能(ALTなど)やウイルス量をチェックするための定期的な血液検査と、肝がんの早期発見のための定期的な腹部超音波検査が含まれます。これを遵守することで、肝臓の状態の変化を早期に捉え、深刻な合併症を防ぐための治療を適切な時期に開始することができます。
同時に、私たちは複雑な現実にも目を向ける必要があります。理想的な予防プロセスは非常に効果的ですが、現実世界での実施には課題が伴うことがあります。愛知県の研究では、予防プログラムにおける接種漏れ(2.5%)や遅延(2.9%)の事例が報告されています9。原因には、病院側の事務的なミス、患者の予定通りの再診の遅れ(特に生後6ヶ月の接種)、そして全国的に統一されたフォローアップ指導の欠如などが含まれます。これは、医療手法そのものではなく、人的・制度的要因に「ほころび」が生じる可能性を示唆しています。したがって、真に役立つ記事は、これらの課題を認識し、患者さんが自らと子どもをシステムの潜在的な「穴」から守るための知識を装備させる必要があります。予約をメモし、医師に質問し、検査結果を求めるという患者さん自身の主体性が、プロセスを完璧に遂行するための重要な要素となるのです。

あなたのアクションチェックリスト:自分自身に力を与える

以下のチェックリストは、あなたがご自身のケアの主役となり、医師との対話を円滑に進め、母子ともに最善のケアを受けていることを確認するための実用的なツールです。印刷して、健診の際に持参することをお勧めします。

表3:B型肝炎と診断されたお母さんのためのチェックリスト
段階 やるべきこと 完了? (☐)
診断時 ご自身のHBe抗原の結果について医師に尋ねる。
正確なウイルス量を知るために、HBV DNA定量検査を依頼する。
HBV DNAの結果について医師と話し合い、予防的な抗ウイルス薬が必要なグループに該当するか尋ねる。
妊娠期間中 薬が処方された場合、用法・用量を守って正しく服用する。
出産予定の病院に、ご自身がHBsAg陽性であることを伝えてあるか確認する。
出産直後 赤ちゃんが生後12時間以内にHBIGとB型肝炎ワクチン初回の両方を接種されたか、医療スタッフに確認する。
赤ちゃんのケア 生後1ヶ月のワクチン2回目の予約を取り、接種に連れて行く。
生後6ヶ月のワクチン3回目の予約を取り、接種に連れて行く。
生後9~12ヶ月の血液検査(PVST: HBsAgと抗HBs抗体)の予約を取り、検査に連れて行く。
ご自身のケア 出産後、長期的なフォローアップ計画を開始するために、肝臓専門医との再診予約を入れる。

よくある質問

B型肝炎と診断されました。赤ちゃんは大丈夫でしょうか?
はい、ご安心ください。日本の確立された母子感染防止プログラムのもとで適切なケアを受ければ、赤ちゃんが感染するリスクは極めて低いです。出生直後のHBIGとワクチンの接種が非常に効果的であり、大多数の赤ちゃんは安全に守られます。
妊娠中に飲む抗ウイルス薬(テノホビル)は、赤ちゃんに安全ですか?
はい、安全です。テノホビル(TDF)は、妊娠後期に使用する際の安全性が多くの研究で確認されており、WHOやCDC、日本の専門学会を含む世界の主要な医療ガイドラインで推奨されている第一選択薬です。この薬は、赤ちゃんへの感染リスクをさらに低減させるための、安全で効果的な追加の防御策です2732
本当に母乳をあげても良いのでしょうか?
はい、母乳育児は完全に安全です。赤ちゃんが出生直後にHBIGと最初のワクチン接種を適切に受けていれば、母乳を介して感染するリスクは非常に低いと考えられています。CDCも母乳育児を推奨しています26。ただし、乳首に亀裂や出血がある場合は、傷が治るまで一時的に直接授乳を控えることが勧められます。
パートナーや他の家族は何をすべきですか?
パートナーや同居しているご家族は、B型肝炎の検査を受けることが推奨されます。もし感染しておらず、免疫もない(ワクチン未接種)場合は、感染を予防するためにB型肝炎ワクチンの接種を受けることが重要です。これにより、家庭内での感染(水平感染)を防ぎ、家族全員の健康を守ることができます23
赤ちゃんの最後の検査が終わったら、もう安心ですか?
はい、生後9~12ヶ月の検査で、赤ちゃんが感染しておらず、十分な抗体を持っていることが確認できれば、赤ちゃんについては一安心です。その後は、お母さん自身の健康管理が焦点となります。B型肝炎は生涯にわたるフォローアップが必要な状態ですので、定期的に肝臓専門医の診察を受けることが、ご自身の将来の健康を守るために不可欠です。

結論

妊娠中にB型肝炎の診断を受けることは、確かに心を揺さぶる出来事です。しかし、日本の医療システムは非常に信頼性が高く、母子感染を防ぐための予防策は極めて効果的です。スクリーニング検査から始まり、出生直後の赤ちゃんへの「二重の盾」、そして必要に応じたお母さんへの抗ウイルス療法に至るまで、あなたと赤ちゃんを守るための多層的な防御網が敷かれています。この記事で提供された知識とチェックリストが、あなたの不安を和らげ、自信を持って医師と対話し、積極的にご自身の健康管理に参加するための一助となることを心から願っています。あなたの主体的な関与こそが、このプロセスを成功に導く鍵です。あなたと赤ちゃんの健やかな未来が、ここにあります。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 【医師監修】妊婦がB型肝炎に感染したら赤ちゃんに影響する?予防法・対処法も解説 | トモニテ. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://tomonite.com/articles/7480
  2. 妊婦健診について(2)血液型 | 雅の徒然日記〜教授室(中田雅彦)から綴るよもやま話です〜. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/gyne/blog/2023/maternalcheckup3.html
  3. Management of Infants Born to Women with Hepatitis B Virus Infection for Pediatricians | CDC. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.cdc.gov/vaccines/programs/perinatal-hepb/downloads/HepB-Provider-tipsheet-508.pdf
  4. Enhancing interventions for prevention of mother-to-child- transmission of hepatitis B virus. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10405098/
  5. 妊婦健診で調べる感染症について。感染した場合のママや赤ちゃんの影響とは【医師監修】. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://gh-womens.com/blog/archives/4760
  6. B型肝炎 – 国立感染症研究所. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/hepatitis/020/hepatitis-b-intro.html
  7. IASR特集関連記事517号. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2608-related-articles/related-articles-517.html?start=3
  8. わが国における B 型肝炎母子感染防止の経緯と universal …. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/02102/021020149.pdf
  9. B型肝炎キャリア母体児の B型肝炎感染予防に関する検討 – 愛知県. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/455755.pdf
  10. 妊娠時の検査でB型肝炎と判明 赤ちゃんへの影響は?. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://bkan.kailash-tech.jp/article/bkan/b%E5%9E%8B%E8%82%9D%E7%82%8E%E3%81%AE%E8%B5%A4%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF
  11. B型肝炎の方が妊娠するときのリスクは?母子感染の可能性や予防策について解説. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://media.bkan-pro.com/column/221/
  12. 体外受精とB型肝炎ウイルス | 岩城産婦人科妊活ブログ. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://ameblo.jp/po4ku3chi2/entry-12456186549.html
  13. 妊婦健康診査の公費負担の状況について(令和5年4月1日現在)【簡易調査】. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d4a9b67b-acbd-4e2a-a27a-7e8f2d6106dd/b82ceb26/20240422_policies_boshihoken_tsuuchi_2024_29.pdf
  14. 母子感染と予防 | B型肝炎とは. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.hbv-pt.jp/hbv/infection/
  15. 妊婦健診費用の一部公費負担 – さっぽろ子育て情報サイト – 札幌市. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://kosodate.city.sapporo.jp/mokuteki/money/ninshin/998.html
  16. 妊婦健康診査について | 世田谷区公式ホームページ. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.city.setagaya.lg.jp/02244/1193.html
  17. ・B型肝炎母子感染防止事業の実施について( 平成07年03月31日児発第309号). [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta1815&dataType=1&pageNo=1
  18. B型肝炎母子感染防止対策の周知徹底 – 日本産婦人科医会. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/letter/mhlw_091204.pdf
  19. B型肝炎母子感染防止に係る保険診療上の取扱いについて. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta3100&dataType=1&pageNo=1
  20. 1.母親が妊娠中に検査を行ってB型肝炎キャリアであることがわかった場合は、母子感染予防として健康保険で接種できます。その際は. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.hakujyuji.com/HBVv.htm
  21. B型肝炎の母子感染について. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/pdf/guideline01.pdf
  22. 免疫グロブリン製剤の適応 一般社団法人日本血液製剤協会. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: http://www.ketsukyo.or.jp/plasma/globulin/glo_07_03.html
  23. B型肝炎の母子感染について. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.kanen.ncgm.go.jp/content/010/boshi.pdf
  24. (再発・類似事例) 「B型肝炎母子感染防止対策の実施忘れ」(医療安全情報No. 49)について. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.med-safe.jp/pdf/report_2015_3_R001.pdf
  25. (別添様式1) 未承認薬・適応外薬の要望 1.要望内容に関連する事項 要 望 者 学会 (学会名 – 厚生労働省. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/03/dl/youbousyo-361.pdf
  26. Hepatitis B Screening, Testing, and Management of Pregnant Women – CDC. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.cdc.gov/vaccines/programs/perinatal-hepb/downloads/ob-provider-hepb-tip-sheet.pdf
  27. Recommendations – Prevention of Mother-to-Child Transmission of Hepatitis B Virus: Guidelines on Antiviral Prophylaxis in Pregnancy – NCBI. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK561126/
  28. Preventing HBV Perinatal Transmission – Core Concepts – Hepatitis B Online. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.hepatitisb.uw.edu/pdf/prevention-hbv/preventing-perinatal-transmission-hbv/core-concept/all
  29. Mother-to-child transmission of hepatitis B – Global Hepatitis …. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.who.int/teams/global-hiv-hepatitis-and-stis-programmes/hepatitis/prevention/mother-to-child-transmission-of-hepatitis-b
  30. Testing and Treatment During Pregnancy – Hepatitis B Foundation. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.hepb.org/treatment-and-management/pregnancy-and-hbv/treatment-during-pregnancy/
  31. 産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2023 – 公益社団法人 日本産科…. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2023.pdf
  32. B 型肝炎治療ガイドライン (第 4 版 ) – 日本肝臓学会. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/B_v4.pdf
  33. Clinical Overview of Perinatal Hepatitis B | Hepatitis B | CDC. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://www.cdc.gov/hepatitis-b/hcp/perinatal-provider-overview/index.html
  34. B型肝炎ワクチン|接種時期・効果・副反応をわかりやすく解説 – 岩間こどもクリニック. [インターネット]. [2025年6月23日引用]. Available from: https://iwama-cl.com/medical/type_b_pneumonia.html
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ