妊婦はドラゴンフルーツを食べても大丈夫?【医師監修】栄養、効果、注意点を科学的根拠に基づき徹底解説
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妊婦はドラゴンフルーツを食べても大丈夫?【医師監修】栄養、効果、注意点を科学的根拠に基づき徹底解説

鮮やかな色とユニークな見た目で注目を集めるドラゴンフルーツ(ピタヤ)。近年、日本国内でも沖縄県産品を中心にスーパーマーケットで見かける機会が増え1、「妊娠中に食べても安全なのだろうか?」「赤ちゃんに良い影響はあるのだろうか?」といった疑問を持つ妊婦の方も多いのではないでしょうか。本記事は、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、日本の公的データと最新の科学研究に基づき、妊婦のドラゴンフルーツ摂取に関する利益と安全性を徹底的に分析し、専門家の視点から信頼できる情報を提供するものです。

本記事の科学的根拠

この記事は、日本および国際的な公的機関の指針、査読付き科学論文など、明示的に引用された最高品質の医学的エビデンスにのみ基づいています。以下は、本記事で提示される医学的指針の根拠となる主要な情報源です。

  • 日本の省庁(厚生労働省、文部科学省): 本記事における「妊娠中の食事指針」や「栄養素の推奨摂取量」、「食品成分データ」に関する記述は、厚生労働省の「妊産婦のための食生活指針」2や「日本人の食事摂取基準」3、文部科学省の「日本食品標準成分表」4に基づいています。
  • 世界保健機関(WHO)および米国農務省(USDA): 国際的な視点からの栄養指導や食品データについては、世界保健機関(WHO)5や米国農務省(USDA)6の公開情報を参照し、日本の状況と照らし合わせています。
  • 査読付き科学論文(PubMed等): ドラゴンフルーツの血糖コントロールへの影響7や抗酸化作用8など、特定の健康効果に関する記述は、国際的な医学論文データベースであるPubMed等に掲載されたシステマティックレビューや臨床研究の結果に基づいています。

要点まとめ

  • ドラゴンフルーツは低カロリーで、胎児の神経管閉鎖障害リスクを低減する葉酸や、妊娠中のむくみ・高血圧対策に役立つカリウムを豊富に含みます。
  • 豊富な食物繊維は妊娠中に多い便秘の予防・改善に効果的であり、オリゴ糖は腸内環境を整えるプレバイオティクスとして機能します。
  • 妊娠糖尿病のリスクがある場合でも、血糖値の上昇が緩やかな低GI食品であるため、1日約150g(1単位/80kcal)を目安に適量を守れば安全に摂取できます。
  • ごく稀にアレルギー反応が報告されているため、初めて食べる際やアレルギー体質の方は少量から試すことが推奨されます。
  • 残留農薬のリスクを最小限にするため、流水で十分に洗浄し、可能であれば国産品(沖縄県産など)を選ぶとより安心です。

ドラゴンフルーツの栄養プロファイル:包括的分析

ドラゴンフルーツが妊婦にとってなぜ有益なのかを理解するためには、まずその栄養成分を詳しく見ることが不可欠です。日本の公式データである「日本食品標準成分表(2015年版・七訂)」4および米国農務省(USDA)6のデータを基に、その栄養価を分析します。

主要栄養素とカロリー

日本食品標準成分表によると、ドラゴンフルーツ(生、可食部100gあたり)のエネルギーは52 kcal、たんぱく質1.4g、脂質0.3g、炭水化物11.8gです4。この数値は、本果物が低カロリー・低脂肪であり、コレステロールを全く含まないことを示しています。これは、厚生労働省が示す妊娠中の望ましい体重増加の指針に沿った健康的な体重管理を目指す上で、非常に優れた食品選択肢であることを意味します2
さらに特筆すべきは、100gあたり1.9gの食物繊維を含んでいる点です。その内訳は水溶性食物繊維0.3g、不溶性食物繊維1.6gであり9、この豊富な食物繊維が妊娠中に起こりがちな消化器系の不調を緩和する鍵となります。

母体と胎児の健康に不可欠なビタミンとミネラル

ドラゴンフルーツは、妊娠期間中に特に需要が高まる特定のビタミンとミネラルをバランス良く含んでいます。

  • 葉酸 (Folate): 100gあたり44μgの葉酸を含みます4。ご存知の通り、葉酸は胎児の脳や脊髄の発達に不可欠であり、神経管閉鎖障害のリスクを低減するために極めて重要な栄養素です。この重要性は日本の厚生労働省3および世界保健機関(WHO)5などの国際的な保健機関によって一貫して強調されています。ドラゴンフルーツは、他の多くの果物と比較しても良好な食事性葉酸の供給源となります10
  • カリウム (Potassium): 100gあたり350mgと、果物の中でも非常に豊富なカリウムを含有しています1。カリウムは体内のナトリウム排出を促進し、水分バランスと血圧を正常に保つ働きがあります。これにより、妊娠中に見られがちな高血圧や不快な浮腫(むくみ)の予防・緩和に直接的に寄与する可能性があります11
  • マグネシウム (Magnesium): 100gあたり41mgのマグネシウムを含みます1。マグネシウムは、胎児と母体の骨の健康を維持し、数百もの酵素反応に関与することで正常な神経機能をサポートします。また、精神的な安定やストレス緩和にも関与していると考えられています11
  • 鉄 (Iron)とビタミンCの相乗効果: 鉄分そのものは100gあたり0.3mg4と突出して高くはありませんが、ここで重要なのはビタミンC(100gあたり7mg)との組み合わせです。ビタミンCは、野菜や果物に含まれる非ヘム鉄の体内での吸収率を著しく高める働きがあります。妊娠中は血液量が増加し鉄欠乏性貧血になりやすいため、鉄分の吸収効率を高めるこの組み合わせは、貧血予防において極めて合理的かつ効果的です212

植物性栄養素の力:抗酸化物質とプレバイオティクス

ドラゴンフルーツの健康への貢献は、ビタミンやミネラルだけにとどまりません。近年注目されている植物由来の機能性成分も豊富です。

  • 抗酸化物質 (Antioxidants): 特に果肉が鮮やかな赤色の品種(レッドピタヤ)には、ベタシアニンという強力なポリフェノールの一種が豊富に含まれています11。抗酸化物質は、体内で過剰に発生すると細胞を傷つけ、様々な不調の原因となる「フリーラジカル」を中和する働きがあります。この酸化ストレスの軽減は、母体の全体的な健康を維持し、将来的な生活習慣病のリスクを低減する上で有益であると、複数の研究で示唆されています813
  • プレバイオティクス (Prebiotics): ドラゴンフルーツには、善玉菌のエサとなるオリゴ糖が含まれており、これがプレバイオティクスとして機能します6。プレバイオティクスは、腸内に生息するビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌の増殖を選択的に促進します。健康な腸内フローラ(腸内細菌叢)は、便通の改善だけでなく、免疫機能の正常化や腸内感染症のリスク低減にも繋がり、これらはすべて妊娠期間中の母体の健康維持に直接貢献します13

表1: ドラゴンフルーツの栄養成分詳細(可食部100gあたり)- 日本と米国のデータ比較

栄養素 日本食品標準成分表4 USDA6 妊娠における重要性
エネルギー 52 kcal 60 kcal 低カロリーで、妊娠中の適切な体重管理に貢献。
葉酸 44 µg データなし 胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減する極めて重要なビタミン。
カリウム 350 mg データなし 血圧の調節と浮腫(むくみ)の軽減をサポート。
マグネシウム 41 mg 18 mg 骨の健康維持と神経機能のサポート。
0.3 mg 0.74 mg 妊娠性貧血の予防に貢献。ビタミンCが吸収を促進。
食物繊維総量 1.9 g 2.9 g 妊娠中に多い便秘の予防・解消に役立つ。
ビタミンC 7 mg 2.5 mg 鉄分の吸収を助け、免疫機能をサポート。

注:USDAのデータは出典により若干の差異が見られます。ここでは代表的な値を記載しています。日本のデータで突出しているカリウムと葉酸の含有量は特に注目に値します。

この栄養素の組み合わせは、単に個々の成分が優れているだけでなく、相互に作用し合って健康効果を高める「相乗効果パッケージ」として機能します。例えば、鉄とビタミンCの組み合わせは、妊娠性貧血という具体的な課題に対する効果的な解決策を食品自体が内包していることを示しており、これは単なる栄養素のリストアップを超えた、より深いレベルの理解を提供します。

健康的な妊娠食におけるドラゴンフルーツの役割

栄養豊富なドラゴンフルーツは、妊娠中の食事において具体的にどのような役割を果たすのでしょうか。厚生労働省の指針214と照らし合わせながら解説します。

妊娠期の栄養需要増加への対応

妊娠中は、胎児の成長を支えるために追加のエネルギーが必要となりますが、その増加量は意外と限定的です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日あたりの付加量は初期で+50 kcal、中期で+250 kcal、後期で+450 kcalとされています15。ドラゴンフルーツは、栄養価が高い一方でカロリーが低いため、これらの追加エネルギー需要を質の低い「空のカロリー(エンプティカロリー)」で満たすことなく、必須ビタミンやミネラルといった質の高い栄養素で補うのに理想的な食品です。
厚生労働省が推奨する「主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事」の枠組みにおいて、ドラゴンフルーツは「果物」として重要な役割を担います。特に、「不足しがちなビタミン・ミネラルを、『副菜』や『果物』でたっぷりと」という指針を実践する上で、優れた選択肢となります2

胎児の神経管閉鎖障害予防への貢献

この点は、妊娠を計画している女性および妊娠初期の女性にとって最も重要な考慮事項の一つです。厚生労働省は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のため、通常の食事からの葉酸摂取に加えて、サプリメントなどから1日400μgの合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)を摂取することを強く推奨しています3
ここで極めて重要なのは、この推奨量がサプリメントや強化食品に含まれる吸収率の高い形態の葉酸を指しているという点です。食品に含まれる天然の葉酸(食事性葉酸)のみでこの量を満たすのは困難であり、「サプリメントは不要」と誤解することは避けるべきです。ドラゴンフルーツ(100gあたり44μgの食事性葉酸を含む)4は、この必須のサプリメント摂取を補完する、優れた食事性葉酸の供給源として位置づけられます。ほうれん草やブロッコリーなど他の葉酸が豊富な食品と共に日々の食事に組み込むことで、全体的な葉酸摂取量を底上げし、より万全な状態を目指すことができます。したがって、ドラゴンフルーツはサプリメントの代替品ではなく、健康的な食生活を通じて葉酸摂取をサポートする貴重なパートナーと考えるべきです。

妊娠中の一般的な不快症状の緩和

ドラゴンフルーツに含まれる栄養素は、多くの妊婦が経験する不快な症状を自然な形で緩和するのに役立ちます。

  • 便秘 (Constipation)の改善: 妊娠中はホルモンバランスの変化や増大した子宮による腸の圧迫で、頑固な便秘に悩まされることが少なくありません。ドラゴンフルーツに含まれる豊富な不溶性食物繊維(100gあたり1.6g)9は、便のかさを増やして腸の蠕動(ぜんどう)運動を物理的に刺激し、スムーズな排便を促す効果が期待できます。
  • 貧血 (Anemia)の予防: 妊娠中は、胎児へ酸素を供給するために循環血液量が約40-50%増加し、体が「希釈性貧血」の状態になりがちです。前述の通り、ドラゴンフルーツは鉄分とその吸収を促進するビタミンCを同時に含んでいるため、赤血球の主成分であるヘモグロビンの産生をサポートし、貧血に伴う疲労感、息切れ、めまいの予防に貢献します12
  • むくみ (Edema)と高血圧の管理: 豊富なカリウム(100gあたり350mg)1は、体内の過剰なナトリウム(塩分)の排出を促す作用があります。塩分の摂り過ぎは体内に水分を溜め込み、むくみや血圧上昇の原因となります。カリウムを適切に摂取することは、体内のミネラルバランスを整え、これらの症状を軽減する効果が期待できます11

安全性に関する懸念の検証:リスク・ベネフィット評価

多くの利益がある一方で、摂取にあたって注意すべき点も存在します。ここでは、特に懸念される「妊娠糖尿病」「アレルギー」「残留農薬」の3つの観点から、科学的根拠に基づいたリスクとベネフィットを評価します。

妊娠糖尿病(GDM)と血糖コントロール

妊娠糖尿病と診断された、あるいはそのリスクがある女性にとって、食事による血糖管理は最優先事項です。果物の甘さが血糖値に与える影響を心配されるのは当然のことです。
低GI食品としての利点: グリセミック・インデックス(GI)とは、食後の血糖値の上昇度合いを示す指標です。ドラゴンフルーツは、このGI値が低い食品とされており、食後の血糖値の急激な上昇を引き起こしにくいという優れた特徴があります16。これは、糖質の吸収を緩やかにする食物繊維が豊富に含まれているためです。この特性により、ドラゴンフルーツは妊娠糖尿病の食事療法においても、量を管理すれば適切に取り入れることができる果物の一つと考えられます。
科学的根拠: 複数の研究が、ドラゴンフルーツの血糖コントロールに対する有益な効果を示唆しています。国際的な医学論文データベースPubMedに掲載された2017年のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、糖尿病前症(予備軍)の被験者において、ドラゴンフルーツの摂取が空腹時血糖値を著しく低下させることが報告されました717。さらに、近年の研究では、ドラゴンフルーツの皮の抽出物が糖の消化・吸収を遅らせる可能性18や、ドラゴンフルーツをベースにした飲料がインスリン反応を改善したという結果19も報告されており、その機能性に対する科学的関心は高まっています。
量の管理の重要性: 「血糖値に良い」という情報と、「食べ過ぎに注意」という勧告は一見矛盾しているように聞こえるかもしれません。しかし、これはGI値が低い食品であっても、摂取量が多すぎれば血糖値は上昇するという、食事療法の基本原則に基づいています。日本の糖尿病食事療法では、1日の果物の摂取目安を「80kcal(これを1単位と呼びます)」と定めています2021。エネルギー量が100gあたり52kcalのドラゴンフルーツの場合、この1単位は約150gに相当します。これは中サイズ半分程度です。この量を守ることが、利益を最大化し、リスクを最小化する鍵となります。

表2: 妊娠糖尿病(GDM)管理のための果物摂取ガイド(1日80kcal/1単位の目安)

GDMの食事管理において、「どの果物を、どれくらいなら食べられるのか」という疑問は非常に切実です。以下の表は、日本の食事療法で用いられる「80kcal/1単位」の考え方に基づき、主要な果物の摂取目安量とGI値を比較した実践的なガイドです。

果物 80kcal分の目安量 (約)20 GI値 (参考)16 特記事項
ドラゴンフルーツ 150 g 低い 食物繊維が豊富で血糖上昇が緩やか。
りんご 200 g (約2/3個) 36 (低い) 皮ごと食べると食物繊維がより多く摂れる。
バナナ 90 g (約1本) 51 (中程度) カリウムと葉酸が豊富だが、糖質はやや高め。
いちご 250 g (約1パック) 40 (低い) 糖質が低く、ビタミンCが豊富。
スイカ 200 g (2切れ程度) 76 (高い) GI値が高いため、摂取量には特に注意が必要。

この表は、ドラゴンフルーツがGDM管理において優れた選択肢であることを示すと同時に、他の果物とのバランスを考え、多様な食品を摂取することの重要性を強調しています。

アレルギーリスク

ドラゴンフルーツの摂取は一般的に安全ですが、ごく稀にアレルギー反応が報告されています。

  • アナフィラキシー反応: ドラゴンフルーツを含むミックスフルーツジュースによるアナフィラキシー反応の症例報告が日本国内で存在します22。これは極めて稀なケースですが、蕁麻疹、血管浮腫(まぶたや唇の腫れ)、呼吸困難、血圧低下などの重篤な症状が現れた場合は、即座に救急医療機関を受診する必要があります。
  • 口腔アレルギー症候群 (OAS): より一般的に考えられるのは、花粉症を持つ人において、特定の生の果物や野菜を食べた際に口の中や喉にかゆみやピリピリ感が生じる口腔アレルギー症候群(OAS)です23。これは、花粉に含まれるアレルゲンタンパク質と、果物に含まれる類似のタンパク質が交差反応を起こすために生じます24。ドラゴンフルーツがOASの一般的な原因となることは稀ですが、可能性として認識しておくことが賢明です。

推奨事項: 過去に他の果物(特にキウイフルーツやパパイヤなど)でアレルギー反応を経験したことがある方や、重度の花粉症を持つ方は、初めてドラゴンフルーツを食べる際に、まず一切れだけ試すなど、慎重なアプローチを取ることが推奨されます。

残留農薬と食品安全

食品の安全性は、妊娠中において特に重要な関心事です。過去に、一部の輸入ドラゴンフルーツから、日本では未承認の農薬が基準値を超えて検出された事例が厚生労働省検疫所によって報告されています25。一方で、ドラゴンフルーツ自体は病害虫に比較的強い植物であり、農薬の使用を抑えて栽培されることも多いとされています10
戦略的推奨: これらの懸念に対する最も効果的で安心な対策は、以下の2点を徹底することです。

  1. 十分に洗浄する: 妊娠中の食品安全に関する普遍的なガイドラインとして、すべての生の果物や野菜は、食べる前や調理する前に流水で十分に洗浄することが強く推奨されます5
  2. 国産品を選ぶ: 可能な限り、国産(特に沖縄県産など産地が明記されたもの)のドラゴンフルーツを選ぶことです1。国産品は日本の農薬使用基準に準拠しており、輸送期間が短い(フードマイレージが短い)ため、より新鮮な状態で入手できるという利点もあります。

結論として、ドラゴンフルーツに関する安全性への懸念は、果物そのものの毒性ではなく、主に「量の管理」「稀なアレルギーへの認識」「農薬に関する適切な選択と処理」という3つの側面に集約されます。これらのリスクは、正しい知識と実践によって効果的に管理することが可能です。

実践ガイド:ドラゴンフルーツを食生活に取り入れる

知識を得たところで、次にそれを日々の生活にどう活かすかが重要です。美味しいドラゴンフルーツの選び方から、栄養を逃さない食べ方までをご紹介します。

選び方、保存方法、旬の時期

  • 選び方: 新鮮で美味しいドラゴンフルーツを選ぶポイントは、皮の色が鮮やかで均一であり、傷やしわがないことです。表面にある鱗片状の部分がしなびておらず、緑色が鮮やかであることも新鮮さの指標です。果実全体を優しく押してみて、石のように硬すぎず、適度な弾力を感じるものが食べ頃のサインです26
  • 保存方法: ドラゴンフルーツは収穫後に熟度が進む「追熟」をしない果物です27。そのため、購入後はできるだけ早く消費するのが理想的です。保存する場合は、乾燥を防ぐためにポリ袋や新聞紙に包んで冷蔵庫の野菜室に入れてください。この方法で4〜5日間は鮮度を保つことができます28。カットしたものは、切り口をラップでぴったりと覆い、冷蔵庫で保存し、1〜2日以内に食べきりましょう。
  • 旬の時期: 日本国内で流通する国産ドラゴンフルーツの旬は、主に夏から秋にかけての7月から11月頃です。沖縄県が最大の主産地であり1、この時期には、樹の上で完熟させた糖度の高いドラゴンフルーツを味わうことができます。一方、ベトナムなどからの輸入品は年間を通じて入手可能です29

妊娠中に安全な調理法とレシピ案

ビタミンCや葉酸のような水溶性で熱に弱い栄養素を効率的に摂取するためには、加熱を伴わないシンプルな食べ方が最も適しています。

  • そのまま食べる: 最も簡単で栄養を損なわない方法です。縦半分にカットし、スプーンですくって食べるか、さらに櫛形にカットして皮を剥いてお召し上がりください。
  • ヨーグルトやシリアルにトッピング: 角切りにしたドラゴンフルーツを無糖のプレーンヨーグルトや、全粒粉のシリアルに加えるだけで、手軽な朝食や栄養豊富な間食になります。食物繊維とタンパク質を手軽に補給できます。
  • スムージー(ピタヤボウル): レッドピタヤを使うと、鮮やかなピンク色のスムージーが作れます。バナナ(カリウム、葉酸)、ほうれん草(鉄、葉酸)、牛乳や豆乳(タンパク質、カルシウム)と一緒にミキサーにかければ、栄養バランスの取れた一杯になります。これをボウルに注ぎ、他のフルーツやナッツ、グラノーラをトッピングすれば、見た目も美しい「ピタヤボウル」が完成します12
  • サラダのアクセントに: 角切りにしたドラゴンフルーツをグリーンサラダに加えると、彩りと爽やかな食感、自然な甘みがアクセントになります。ナッツやチーズとの相性も良好です。

これらのレシピは、ドラゴンフルーツの栄養を最大限に活かしつつ、妊娠中の食事に多様性と楽しみをもたらすためのアイデアです。

健康に関する注意事項

本記事は医学的アドバイスに代わるものではありません
この記事で提供される情報は、一般的な知識の提供を目的としており、個別の医学的診断や治療に代わるものではありません。妊娠中の食事に関しては、個人の健康状態(特に妊娠糖尿病やアレルギー歴など)によって特別な配慮が必要な場合があります。新しい食品を食事に取り入れる前や、健康に関する懸念がある場合は、必ずかかりつけの医師、産婦人科医、または管理栄養士に相談してください。

よくある質問

Q1: 妊娠糖尿病ですが、ドラゴンフルーツは本当に食べても大丈夫ですか?
はい、適量を守れば大丈夫です。ドラゴンフルーツは血糖値の上昇が緩やかな「低GI食品」です。日本の糖尿病食事療法で推奨される1日の果物の目安量「80kcal(1単位)」を守ることが重要です。ドラゴンフルーツの場合、これは約150g(中サイズ半分程度)に相当します20。この量を守り、他の食事とのバランスを考えて摂取してください。不安な場合は、必ず主治医や管理栄養士にご相談ください。
Q2: ドラゴンフルーツの赤い果汁で、尿や便が赤くなることはありますか?
はい、その可能性があります。特にレッドピタヤ(赤い果肉の品種)を多めに食べた場合、色素であるベタシアニンが体内で完全に分解されずに排出され、尿や便がピンク色や赤色になることがあります。これは「偽血尿」と呼ばれ、通常は健康上の問題はなく、摂取をやめれば1〜2日で元に戻ります。しかし、摂取していないにも関わらず赤い尿や便が続く場合は、他の原因(血尿や血便など)が考えられるため、速やかに医療機関を受診してください。
Q3: 国産と輸入のドラゴンフルーツで栄養価に違いはありますか?
明確な栄養価の比較データは限られていますが、一般的に果物は完熟した状態が最も栄養価が高いとされています。輸入品は長距離輸送のために未熟な段階で収穫されることが多いのに対し30、国産品(特に沖縄県産など)は樹の上で完熟させてから収穫されるため、糖度だけでなく、ビタミンなどの栄養素もより豊富に含まれている可能性があります1。味の面でも、完熟した国産品の方が甘みが強く美味しいと感じる方が多いようです。

結論

本レポートの包括的な分析の結果、ドラゴンフルーツは、科学的根拠と公的機関の指針に基づき、妊婦にとって非常に有益かつ、適切な知識をもって摂取すれば概して安全な果物であることが明らかになりました。
主要な結論として、ドラゴンフルーツは食事性葉酸の優れた供給源であり、豊富なカリウムによる血圧・むくみ管理への貢献、そして豊富な食物繊維とプレバイオティクスによる消化器系の健康維持といった、妊娠期間中に特に重要となる複数の利益を一つの食品で提供します。その抗酸化作用は、母体の長期的な健康維持にも寄与する可能性を秘めています。
一方で、その安全な摂取には、特に妊娠糖尿病(GDM)における厳格な量の管理(1日80kcal/約150gを目安)、そしてごく稀なアレルギー反応の可能性に対する認識が不可欠です。残留農薬への懸念に対しては、国産品を選択し、十分に洗浄するという実践的な対策が有効です。
最終的に、本分析は、妊婦がドラゴンフルーツの利益とリスクを正しく理解し、エビデンスに基づいたシンプルな指針に従うことで、この栄養価が高く美味しい果物を安心して食生活に取り入れ、ご自身と赤ちゃんの健康的な妊娠期間をサポートできることを示しています。この包括的な知見が、多くの読者にとって信頼できる権威ある情報となることを願っています。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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  30. この季節のミラクル美容食 ドラゴンフルーツの美味しい食べ方. ニッポン放送 NEWS ONLINE. [インターネット]. 2018年7月11日. [引用日: 2025年6月22日]. Available from: https://news.1242.com/article/147085
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