自家製フェイスマスクの芸術と科学:あらゆる肌タイプに対応する効果的で安全なスキンケアのためのエビデンスに基づくガイド
皮膚科疾患

自家製フェイスマスクの芸術と科学:あらゆる肌タイプに対応する効果的で安全なスキンケアのためのエビデンスに基づくガイド

スキンケアの広大な世界において、自家製(DIY)フェイスマスクは、自然由来の成分を使ったパーソナルなケアとして、多くの人々を魅了しています。しかし、その魅力的な手軽さの裏には、科学的な理解と安全への配慮が不可欠です。この記事は、JapaneseHealth.org(JHO)編集委員会が、皮膚科学の最新の知見と主要な診療ガイドラインに基づき、自家製フェイスマスクの効果、潜在的なリスク、そして安全な実践方法を包括的に解説するものです。私たちの目的は、読者の皆様が単なる流行に流されることなく、ご自身の肌にとって真に有益で、かつ安全な選択ができるよう、信頼性の高い情報を提供することにあります。健やかな肌への探求は、まずその対象である皮膚そのものを深く理解することから始まります1

この記事の科学的根拠

本稿で提示される医学的指導および分析は、以下に示すような信頼性の高い情報源に全面的に基づいています。これらは、記事全体の科学的信頼性を担保するものです。

  • 日本皮膚科学会(JDA)各種診療ガイドライン: アトピー性皮膚炎2や尋常性痤瘡(ニキビ)3に関する記述は、同学会が策定した公式の診療ガイドラインに基づいています。これらは日本の皮膚科診療における標準的な治療方針を定めるものです。
  • 査読付き学術論文(PubMed, PMC等): ハチミツ4、コロイドオートミール5、クレイ6といった個別成分の有効性に関する記述は、国際的な医学・科学論文データベースに掲載された臨床試験やレビュー論文を典拠としています。
  • 米国国立衛生研究所(NIH)等の公的機関: 健康な皮膚を維持するための基本的な原則は、NIH1や米国皮膚科学会7などが一般向けに発信する情報に基づいています。

要点まとめ

  • 自家製マスクは「治療」ではなく、健康な肌への「補完的ケア」です。アトピー性皮膚炎やニキビなどの疾患は、専門医の診断と治療が最優先です。
  • 最大の危険性は「経皮感作」です。バリア機能が低下した肌(湿疹や傷など)に食物を塗ると、重篤な食物アレルギーを誘発する可能性があります8
  • すべての成分は、使用前に必ず「パッチテスト」を行ってください。「自然」だから「安全」とは限りません。
  • 水を含むレシピは細菌汚染のリスクが非常に高いため、作ったマスクは一度で使い切り、決して保管しないでください。
  • 自家製化粧品を他人に譲渡・販売する行為は、医薬品医療機器等法(薬機法)に抵触する可能性があります9。個人の自己責任における使用に厳密に限定してください。

第1章:健やかな肌の基礎 – あなたのキャンバスを理解する

効果的なスキンケア、特に自家製のフェイスマスクを安全に活用するためには、まずその対象である皮膚そのものの深い理解から始める必要があります。皮膚は単なる身体の覆いではなく、生命維持に不可欠な、精巧でダイナミックな器官です1。この「生きたキャンバス」の構造と機能を理解することが、あらゆるケアの絶対的な前提条件となります。

1.1 皮膚の構造:顕微鏡レベルでの観察

皮膚は人体最大の器官であり、大きく分けて表皮、真皮、皮下組織の3層から構成されています。スキンケアにおいて特に重要なのは、最外層である表皮、とりわけその一番外側にある「角層(角質層)」です10。現代の皮膚科学において、角層は単なる死んだ細胞の集まりではなく、外界からの刺激を防ぎ、体内の水分蒸散を制御する極めて高度な機能を持つ「皮膚バリア」の要とされています2。この構造はしばしば「レンガとモルタル」に例えられ、角層細胞が「レンガ」、その隙間を埋めるセラミドなどの細胞間脂質が「モルタル」の役割を果たし、皮膚の健全性を維持しています。

1.2 皮膚バリア機能:身体の最前線

「皮膚バリア機能」とは、この角層が持つ保護機能の総称です。このバリアが正常に機能している限り、皮膚は潤いを保ち、アレルゲンや細菌といった外部の侵入者から身体を守ることができます1。この機能の健全性は、経皮水分蒸散量(Transepidermal Water Loss, TEWL)という指標で測定でき、バリア機能が低下するとTEWLが増加し、皮膚は乾燥します11。アトピー性皮膚炎のような疾患は、このバリア機能の根源的な異常が病態の核心にあると考えられています12。したがって、あらゆるスキンケアの基本目標は、この皮膚バリア機能をいかに保護し、サポートするかに集約されるのです。

1.3 肌タイプの定義:皮膚科学的視点から

美容業界で使われる「肌タイプ」も、皮膚科学的な視点から理解することが重要です。

  • 乾燥肌(乾皮症): 皮脂や細胞間脂質の不足により、バリア機能が低下し、水分保持能力が落ちている状態です1
  • 脂性肌(脂漏): 皮脂腺の活動が活発で、皮脂が過剰に分泌されている状態です。テカリや毛穴の開き、ニキビができやすい傾向があります6
  • 敏感肌: 医学的な診断名ではありませんが、バリア機能の低下により、外部刺激に過敏に反応しやすい状態を指します13

重要なのは、一見正反対に見える肌タイプでも、根底には「バリア機能の不全」という共通課題が存在しうることです。例えば、強力な洗浄剤で皮脂を取りすぎると、皮膚はかえって皮脂を過剰に分泌する「インナードライ」に陥ることがあります。これは、表面的な悩みへの対処だけでなく、すべての肌に共通する「バリア機能を守る」という根本原則の重要性を示唆しています。

第2章:特定の皮膚悩みへの対応 – 臨床ガイドラインに基づくアプローチ

アトピー性皮膚炎やニキビといった特定の皮膚疾患を持つ場合、自家製フェイスマスクの使用は特に慎重な判断が求められます。これらの状態は単なる「肌質」の問題ではなく、明確な病態生理が存在します。ここでは、日本皮膚科学会(JDA)の診療ガイドラインに基づき、これらの疾患への正しい理解とスキンケアの原則を解説します。

2.1 アトピー素因のある肌と極度の敏感肌:慢性的なバリア機能不全状態

アトピー性皮膚炎(AD)は、JDAガイドラインにおいて「強い瘙痒(かゆみ)を伴う湿疹を主病変とする疾患であり、増悪・寛解を繰り返す」と定義され、その根底には「皮膚の乾燥とバリアー機能異常」が存在します2。治療の目標は、薬物療法で炎症を抑え、スキンケアでバリア機能を補うことにあります14
「二重抗原曝露仮説」:極めて重要な警告
ADを持つ肌への食品応用を考える上で絶対に知っておくべきなのが「二重抗原曝露仮説」です8。これは、バリア機能が破壊された皮膚から食物中のタンパク質(卵、牛乳など)が侵入することで、その食物に対するアレルギーが成立(経皮感作)してしまうという理論です15。感作後にその食物を食べると、アナフィラキシーショックを含む重篤なアレルギー症状を引き起こす可能性があります16。つまり、「肌に良いから」と安易に食物をADの肌に塗る行為は、生涯続く食物アレルギーを自ら誘発する、極めて危険な行為になりかねないのです。

2.2 ニキビができやすい肌(尋常性痤瘡):炎症性の毛包疾患

尋常性痤瘡(ニキビ)は、毛穴の詰まり、皮脂分泌の増加、アクネ菌の増殖、そして炎症反応が関与する慢性炎症性疾患です17。JDAのガイドラインでは、薬物治療と並行して適切なスキンケアを行うことが推奨されています3。これには、1日2回の洗顔と、「ノンコメドジェニックテスト済み」(ニキビの始まりである面皰を誘発しにくいことが確認された)保湿剤の使用が含まれます18。ニキビ治療薬には乾燥を伴うものが多いため、適切な保湿は治療の継続性を高める上で不可欠です。
食事に関する公式見解
JDAガイドラインは、食事に関して「特定の食べ物(チョコレート、ナッツなど)を一律に制限することは推奨しない」と明確に述べています3。特定の食品が個人のニキビを悪化させる可能性はありますが、すべての人にそれを禁止する科学的根拠は不十分というのが専門家の見解です。

表1:皮膚の状態別 臨床的ニーズとスキンケアアプローチ
皮膚の状態 主な病態生理 ガイドラインに基づくスキンケア目標 適切なDIY成分の原則 極めて重要な注意事項
乾燥肌 (乾皮症) バリア機能低下、皮脂不足 バリア機能の修復、水分補給 保湿剤(ヒューメクタント)、柔軟剤(エモリエント) 過剰な角質除去を避ける
脂性肌 (脂漏) 皮脂の過剰分泌 皮脂コントロール、適切な保湿 吸着剤、抗酸化剤 皮脂の取りすぎ、刺激を避ける
アトピー素因のある肌 重度のバリア機能不全、炎症 徹底的なバリア修復、抗炎症、アレルゲン回避 極めて穏やかな鎮静成分(細心の注意を払う) 経皮感作のリスクのため、食物アレルゲンは厳禁8
ニキビができやすい肌 毛穴の詰まり、皮脂、アクネ菌、炎症 毛穴詰まりの軽減、菌のコントロール、抗炎症 抗炎症作用、非閉塞性の成分(使用は非常に慎重に) 閉塞性・コメドジェニック性の成分を避ける18

第3章:台所にある薬局 – 天然成分に関するエビデンスに基づくガイド

自家製フェイスマスクで使われる天然素材の効果は、それぞれが含有する特有の「生物活性化合物」とその科学的な作用機序に基づいています13。この章では、主要な成分を科学的エビデンスと共に体系的にレビューします。

表2:エビデンスに基づく主要成分の概要
成分 主な生物活性化合物 主な作用機序 エビデンスの強さ(簡易評価) 最も適した肌悩み
ハチミツ 果糖/ブドウ糖, 過酸化水素, メチルグリオキサール 保湿(ヒューメクタント), 抗菌4 強い 乾燥・脱水肌
コロイドオートミール アベナンスラミド, サポニン バリア機能修復, 抗炎症5 強い 敏感肌・アトピー素因のある肌
ヨーグルト 乳酸 (AHA) 角質除去19 中程度 くすみ・ごわつきのある肌
緑茶 EGCG (ポリフェノール) 抗酸化, 抗炎症20 中程度 すべてのタイプ(抗酸化目的)
クレイ(カオリン/ベントナイト) ケイ酸塩(モンモリロナイト等) 皮脂吸着6 中程度 脂性肌・ニキビができやすい肌
アロエベラ 多糖類(グルコマンナン等) 鎮静, 保湿, 創傷治癒21 有望 炎症を起こした肌・日焼け後の肌

3.1 保湿剤と鎮静剤:うるおいを与える成分

  • ハチミツ: 天然の保湿剤(ヒューメクタント)であり、抗菌性および抗炎症性も報告されています22。創傷治癒効果に関する研究も豊富です4
  • アロエベラ: 抗炎症、皮膚保護、創傷治癒促進作用で知られ、アトピー性皮膚炎などへの有効性を示唆するレビューもあります23
  • オートミール(コロイド状): 米国食品医薬品局(FDA)によって皮膚保護剤として承認されており、皮膚バリアを強化し、pHを緩衝する能力が臨床的に実証されています524

3.2 角質除去剤とブライトニング剤:肌を磨き上げる成分

  • ヨーグルト(乳酸): 主成分である乳酸はアルファヒドロキシ酸(AHA)の一種で、穏やかな角質除去作用があります。臨床研究では、低濃度でも肌の滑らかさを改善したことが報告されています19
  • 酒粕: 日本の伝統的な美容成分で、コウジ酸や豊富なアミノ酸、ビタミンなどによる穏やかな角質除去効果と栄養補給効果が期待されます2526

3.3 脂性肌向け吸着剤:浄化する成分

  • クレイ(ベントナイト、カオリン): 余分な皮脂や不純物を物理的に吸着する能力に優れています。臨床試験では、クレイマスクがニキビや皮脂量を有意に改善したことが示されています6

3.4 抗酸化剤:保護する成分

  • 緑茶: 強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持つポリフェノール(特にEGCG)を豊富に含み、光老化から皮膚を保護する効果も期待されています2027
  • 米ぬか(米糠): γ-オリザノールやフェルラ酸といった抗酸化作用を持つ化合物を含む、日本の伝統的な美容成分です28

第4章:あなたのスキンケアを創る – レシピと方法論

この章では、科学的根拠に基づき、具体的で実践的な自家製フェイスマスクのレシピを提案します。重要な原則は、「作りたてを一度で使い切る」ことです。これにより、微生物汚染のリスクを最小限に抑えます。

4.1 乾燥肌・脱水肌・成熟肌向け:バリアサポートマスク

レシピ:コロイドオートミールとハチミツの保湿マスク(オートミールのバリア修復効果5とハチミツの保湿効果22を組み合わせる)

  • 材料:コロイドオートミール 大さじ2、ハチミツ 小さじ1、精製水またはぬるま湯 適量
  • 方法:材料を混ぜて滑らかなペースト状にし、清潔な肌に10~15分塗布後、優しく洗い流します。
  • 専門家からの注釈:これは一時的な水分補給と鎮静効果をもたらしますが、市販の保湿クリームの代わりにはなりません。マスク後は直ちに保湿剤を塗布してください。

4.2 脂性肌・混合肌向け:皮脂バランス調整マスク

レシピ:カオリンクレイと緑茶の浄化マスク(カオリンの皮脂吸着力6と緑茶の抗酸化作用20を活用する)

  • 材料:カオリンクレイ(化粧品グレード) 大さじ2、濃く淹れて冷ました緑茶 適量
  • 方法:材料を混ぜてペースト状にし、Tゾーンを中心に5~10分塗布し、完全に乾く前に洗い流します。
  • 専門家からの注釈:皮脂を効果的に吸着しますが、過乾燥を防ぐため完全に乾くまで放置しないでください。使用は週1回程度に留めるのが賢明です。

4.3 くすみ・ごわつきのある肌向け:穏やかなブライトニングマスク

レシピ:プレーンヨーグルトと酒粕の輝きマスク(ヨーグルトの乳酸19と酒粕の発酵成分25による穏やかな角質除去)

  • 材料:プレーンヨーグルト(無糖・無添加) 大さじ1、酒粕 大さじ1
  • 方法:材料を混ぜてペースト状にし、清潔な肌に10分程度置き、優しく洗い流します。
  • 専門家からの注釈:非常に穏やかな角質除去作用です。酸による刺激を感じる可能性があるため、必ずパッチテストを行い、炎症肌や敏感肌への使用は避けてください。

4.4 炎症を起こした肌や傷ついた肌への特別な勧告

活動性の高い炎症性ニキビや中等症以上の湿疹がある皮膚には、いかなる自家製マスクも塗布すべきではありません。理由は、ニキビ肌にはノンコメドジェニック性が保証された製品が必要であること18、そして湿疹のある肌では経皮感作による食物アレルギー誘発のリスクが極めて高いこと8にあります。このような肌には、専門医の指導に従うことが最も安全な選択です。

第5章:見えないリスク – 安全なDIYスキンケアのための皮膚科学的ガイド

「自然」という言葉の心地よい響きの裏には、微生物学的、アレルギー学的、そして法的な落とし穴が潜んでいます。市販の化粧品が厳格な品質管理の下で製造されている理由を理解することは、安全な実践の第一歩です。

5.1 微生物学的地雷原:細菌、カビ、酵母

水を含むあらゆる調製品は、適切な防腐システムがなければ微生物の温床となります29。自宅のキッチンは化粧品工場の無菌環境とは異なり、空気中や手指からの汚染は避けられません30。汚染された製品を肌に塗布することは、皮膚感染症を引き起こす可能性があります。唯一の安全策は、使用直前に使い切る量だけを調製し、残りはすべて廃棄するという厳格な単回使用の原則です。

5.2 アレルギーと刺激の可能性:「自然」が牙をむく時

「自然」は「低アレルギー性」を意味しません13。柑橘類の皮に含まれる成分のように、塗布後に紫外線に当たると火傷のような反応(光毒性)を引き起こす植物成分もあります。そして、最も深刻なリスクが、前述の「二重抗原曝露仮説」8による食物アレルギーの誘発です。新しい成分を使用する前には、必ず上腕の内側などで24~48時間のパッチテストを行い、異常が出ないかを確認することが義務です。

5.3 法的・規制的枠組み:医薬品医療機器等法(薬機法)

日本の法律では、手作りのフェイスマスクも「化粧品」に該当し得ます9。化粧品を業として製造・販売するには許可が必要であり、無許可で製造した化粧品の販売、貸与、または「授与」(無償のプレゼントも含む)は法に抵触する可能性があります31。自家製化粧品は、厳格に個人の自己責任における私的使用に限定しなければなりません。

表3:DIYスキンケア リスク評価マトリクス
リスクの種類 詳細 潜在的な危害 リスク軽減策
微生物汚染 防腐剤を含まない製品における細菌・真菌の増殖。 皮膚感染症、ニキビの悪化。 単回使用分のみを直前に調製。残りは全て廃棄。精製水・蒸留水を使用。
アレルギー性接触皮膚炎 成分(ハチミツ、植物エキス等)への免疫反応。 赤み、かゆみ、腫れ、湿疹。 新しい成分・バッチごとに48時間のパッチテストを義務化。
経皮感作 バリアが破壊された皮膚への塗布による全身性食物アレルギーの誘発。 重篤で生命を脅かす可能性のある食物アレルギー(アナフィラキシー)。 湿疹、炎症、傷のある皮膚には、食品ベースのマスクを絶対に塗布しない。
刺激性・光毒性反応 成分(酸、精油等)による直接的な皮膚損傷や、紫外線による反応。 ひりつき、火傷様の症状、色素沈着。 パッチテストの実施。既知の刺激物を避ける。光毒性の可能性のある成分使用後は日光を避ける。
法的違反(薬機法) 無許可での化粧品の製造・授与。 罰金、行政処分、民事上の責任。 厳格に個人の私的利用に限定。販売、交換、贈与は絶対に行わない。

よくある質問

Q1: 食べ物を顔に塗っても本当に安全ですか?
A1: 安全とは限りません。最も注意すべきは「経皮感作」のリスクです。湿疹や傷など、皮膚のバリア機能が低下している部分に食物(特に卵、牛乳、小麦、ナッツなど)を塗布すると、その食物に対する重篤なアレルギーを発症する危険性があります8。健康で傷のない肌であっても、アレルギー反応や刺激が起こる可能性があるため、必ずパッチテストを行ってください。
Q2: 自家製マスクはどのくらいの頻度で使えば良いですか?
A2: 目的によりますが、一般的には週に1~2回が目安です。特にクレイマスクのような皮脂吸着力の強いものや、ヨーグルトのような角質除去作用のあるものは、使いすぎると肌の乾燥や刺激を招く可能性があります。肌の状態をよく観察しながら、頻度を調整することが重要です。
Q3: パッチテストはどのように行えば良いですか?
A3: 作成したマスクを少量、上腕の内側や耳の後ろなどの柔らかく目立たない皮膚に塗布します。その上から絆創膏などを貼り、24時間から48時間放置します。その後、剥がして皮膚の状態を確認し、赤み、かゆみ、腫れ、水疱などの異常が見られないかを確認します。少しでも異常を感じた場合は、そのマスクの使用は中止してください。
Q4: 自家製マスクでニキビは治りますか?
A4: いいえ、治りません。ニキビ(尋常性痤瘡)は皮膚科医による診断と治療が必要な疾患です3。自家製マスクはニキビの根本治療にはならず、むしろ毛穴を詰まらせる成分(コメドジェニックな油分など)を使用して悪化させるリスクもあります。皮脂管理の補助としてクレイマスクなどを使用する場合も、炎症が強い場合は避け、専門医に相談することが賢明です。

結論

自家製フェイスマスクは、治療薬ではなく、あくまで「健康で損傷のない皮膚に対する、補完的なケア」と位置づけるべきです。真に効果的なスキンケアの秘訣は、特別なテクニックではなく、科学的根拠に裏打ちされた日々の地道な習慣にあります。

  1. 光防御:毎日、広域スペクトラムの日焼け止めを使用すること7
  2. 穏やかな洗浄:肌のpHを乱さないマイルドな洗浄剤を使用すること。
  3. 一貫した保湿:バリア機能をサポートする保湿剤を日常的に使用すること。
  4. 専門家への相談:持続する皮膚の問題は、皮膚科専門医に相談すること。

自家製マスクは、これらの土台がしっかりと築かれた上での「付加的な楽しみ」として捉えるのが最も賢明です。神話と事実を区別し、趣味と治療の境界線を明確に引き、安全性を有効性の絶対的な前提条件として捉えること。この知識こそが、あなた自身に真に効果的なスキンケアを届けるための究極の秘訣です。あなたのスキンケアの旅が、科学的知見に導かれ、安全で実り豊かなものとなることを心から願っています。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の懸念がある場合、または健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. NIH News in Health. Keep Your Skin Healthy. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://newsinhealth.nih.gov/2015/11/keep-your-skin-healthy
  2. 日本皮膚科学会. 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.kyudai-derm.org/part/atopy/pdf/atopy2008.pdf
  3. 日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf
  4. Al-Ghamdi S, Al-Hakami A, Al-Otaibi A, Al-Yahya K, Al-Harbi M, Alfaleh K, et al. A Comprehensive Review of Honey-Containing Hydrogel for Wound Healing Applications. Gels. 2024;10(7):477. doi:10.3390/gels10070477. 全文リンク
  5. Kurtz ES, Wallo W. Colloidal Oatmeal (Avena Sativa) Improves Skin Barrier Through Multi-Therapy Activity. J Drugs Dermatol. 2016;15(6):684-90. PMID: 27272074
  6. Aba V, Puia A, Mihai MM, Tiba A, Titorencu I, Tuchilus C. Comprehensive assessment of the efficacy and safety of a clay mask in oily and acne skin. Int J Cosmet Sci. 2023;45(6):797-807. doi:10.1111/ics.12891. 全文リンク
  7. American Skin Association. The Seven Principles for a Life Course of Healthy Skin. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.americanskin.org/education/seven_principles.php
  8. 日本皮膚科学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf
  9. 佐賀県. 手作りであっても「医薬品医療機器等法(旧薬事法). [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00334262/3_34262_1_handmaidsorpv2.pdf
  10. MedlinePlus. Aging changes in skin. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://medlineplus.gov/ency/article/004014.htm
  11. Popa A, Puha B, Biciușcă V, Lăcătușu I, Ștefan M, Mihai CT, et al. Nutritional Supplements for Skin Health—A Review of What Should Be Chosen and Why. Medicina (Kaunas). 2024;60(1):68. doi:10.3390/medicina60010068. 全文リンク
  12. 日本医学会. 1.アトピー性皮膚炎と皮膚のバリア機能. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://jams.med.or.jp/event/doc/126062.pdf
  13. 医療総合支援機構. オーガニック=肌に優しいって本当?. [インターネット]. 2020年9月9日 [2025年6月21日引用]. 入手先: https://iryousougoushien.jp/2020/09/09/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%9D%E8%82%8C%E3%81%AB%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%9C%AC%E5%BD%93%EF%BC%9F/
  14. 大阪大学大学院医学系研究科・医学部皮膚科学教室. アトピー性皮膚炎治療ガイドライン. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://derma.med.osaka-u.ac.jp/a-guideline.html
  15. 日本アレルギー学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.jsaweb.jp/huge/atopic_gl2021.pdf
  16. ココクリニック. アトピー性皮膚炎の診断について専門医が解説します. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://koko-clinic.com/blog/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E%E3%81%AE%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E5%B0%82%E9%96%80%E5%8C%BB%E3%81%8C%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%81%97/
  17. ココクリニック. 赤みを伴うニキビ(ざ瘡)の原因と治療についてー専門医がガイドラインに沿って説明ー. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://koko-clinic.com/blog/%E8%B5%A4%E3%81%BF%E3%82%92%E4%BC%B4%E3%81%86%E3%83%8B%E3%82%AD%E3%83%93%EF%BC%88%E3%81%96%E7%98%A1%EF%BC%89%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A8%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
  18. 医療法人社団双腎会 ひまわり医院. ニキビの正しい治し方は?ガイドラインで推奨されているニキビ治療法について解説. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/pimple/
  19. Smith WP. Epidermal and dermal effects of topical lactic acid. J Am Acad Dermatol. 1996;35(3 Pt 1):388-91. doi:10.1016/s0190-9622(96)90602-7. PMID: 8784274
  20. Vaughn AR, Sivamani RK. Green tea in dermatology. Arch Dermatol Res. 2013;305(9):785-90. doi:10.1007/s00403-013-1355-6. PMID: 23346663
  21. Hekmatpou D, Mehrabi F, Rahzani K, Memarian A. The Effect of Aloe Vera Clinical Trials on Prevention and Healing of Skin Wound: A Systematic Review. Iran J Med Sci. 2019;44(1):1-9. 全文リンク
  22. Burlando B, Cornara L. Honey in dermatology and skin care: a review. J Cosmet Dermatol. 2013;12(4):306-13. doi:10.1111/jocd.12058. PMID: 24305429
  23. Feily A, Namazi MR. A Comprehensive Systematic Review of Natural Biomedicines for Immune-Mediated and Inflammatory Dermatologic Diseases. J Clin Med. 2024;13(13):3957. doi:10.3390/jcm13133957. PMID: 40293693
  24. Jo S, Park S, Gwon M, Cho A, Youn C, Kim H, et al. Oat (Avena sativa L.) Sprouts Restore Skin Barrier Function by Modulating the Expression of the Epidermal Differentiation Complex in Models of Skin Irritation. Nutrients. 2023;16(1):12. doi:10.3390/nu16010012. 全文リンク
  25. Veltra. 酒粕パックで美肌作り! 自宅でできる簡単な作り方とやり方を紹介. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.veltra.com/jp/yokka/article/how-to-make-sakekasu-pack/
  26. 山下市二. 麹甘酒に含まれる成分について. 日本醸造協会誌. 2023;118(7):408-16. doi:10.6013/jbrewsocjapan.118.408. CiNii Research
  27. Prasanth MI, Sivamaruthi BS, Chaiyasut C, Tencomnao T. A Review of the Role of Green Tea (Camellia sinensis) in Antiphotoaging, Stress Resistance, Neuroprotection, and Autophagy. Nutrients. 2019;11(2):474. doi:10.3390/nu11020474. 全文リンク
  28. WWDJAPAN. 米国発、日本の伝統美容から生まれたスキンケアブランド「タッチャ」 Jビューティ人気に火を付けた手法とは?. [インターネット]. 2023年12月26日 [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.wwdjapan.com/articles/1497493
  29. メディリード. 防腐剤フリーは本当に安全なの?手作り化粧品が危険なわけを解説. [インターネット]. 2023年3月14日 [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.medi-l.com/blog/medileadlabo-article/0013/
  30. YouTube. 【必見!】手作りコスメの落とし穴~使用期限と防腐剤の話~. [インターネット]. [2025年6月21日引用]. 入手先: https://www.youtube.com/watch?v=b7JfKvkpJjU
  31. D-Style. “手作り石鹸”販売で書類送検【 薬機・薬事法/景品法ライティング】. note. 2021年4月25日 [2025年6月21日引用]. 入手先: https://note.com/dstylecleate/n/nea3be1723225
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ