【医師監修】神経管閉鎖障害の完全ガイド：日本の現状と葉酸による予防、最新治療法のすべて

第1部：神経管閉鎖障害（NTDs）の全体像 – 日本における深刻な現状

神経管閉鎖障害（NTDs）、日本語では神経管閉鎖障害（しんけいかんへいさしょうがい）として知られ、妊娠ごく初期の段階で胎児の神経管（将来、脳と脊髄になる管状の組織）が正常に閉じないことによって生じる、深刻な先天性形態異常の一群です。¹ この極めて重要な発育段階は、通常、受胎後およそ28日目には完了します。これは、多くの女性が自身の妊娠にまだ気づいていない可能性が高い時期にあたります。¹

神経管閉鎖障害の主な種類

NTDsにはいくつかの主要な病型が存在します。

• 二分脊椎（にぶんせきつい – Spina Bifida）: これは最も頻度の高い病型です。この状態では、脊椎の一部が適切に形成されず、隙間が生じることで、脊髄や神経が体外に露出してしまう可能性があります。⁴ 多くの患者さんは長生きできますが、生涯にわたって複雑かつ多専門領域にわたる医療ケアを必要とします。⁴ 症状には、下肢の筋力低下や麻痺、感覚の喪失、膀胱や腸のコントロールに関する問題などが含まれます。⁴
• 無脳症（むのうしょう – Anencephaly）: これは最も重篤な病型であり、脳の主要部分、頭蓋骨、頭皮の欠損を特徴とします。² この状態は生命と相容れず、常に死産、あるいは出生後数時間から数日以内での死亡に至ります。⁴
• 脳瘤（のうりゅう – Encephalocele）: より稀な病型で、頭蓋骨の隙間から脳組織と髄膜の一部が突出し、袋状の塊を形成します。¹

「日本のパラドックス」：なぜ予防可能な疾患が減らないのか

日本における憂慮すべき現実は、NTDs、特に二分脊椎の発生率が数十年間にわたり減少傾向を示さず、ある時期にはむしろ増加したことです。⁵ 複数のデータが示すところによると、その発生率は出生1万人あたり5〜6例前後で推移しており、政府からの公式な推奨があったにもかかわらず、この数字は変わっていません。³
この「日本のパラドックス」、すなわち公衆衛生上の推奨が存在するにもかかわらず発生率が減らないという矛盾は、予防戦略の伝達と実行における重大なギャップを示唆しています。日本の厚生労働省（MHLW）は2000年には葉酸の重要な役割に関する通知を発出していますが¹⁰、その後の研究では、女性の認知度と行動が期待される効果を上げていないことが繰り返し指摘されています。ある全国調査では、多くの女性が葉酸の補給を開始するのは妊娠を知った後であり、この時点ではNTDsを予防するには手遅れであることが明らかになりました。³
さらに、アメリカやカナダといった多くの欧米諸国とは異なり、日本では小麦粉などの穀物製品への葉酸添加を義務付ける政策（fortification）が実施されていません。⁵ この事実は、予防の負担をほぼ完全に個々人の意識と行動に委ねていることを意味し、問題の根本的解決のためには、より効果的で広範な医療コミュニケーション戦略が不可欠であることを示しています。

葉酸以外にも存在するリスク要因：包括的な視点

葉酸の欠乏が予防可能な主要なリスク要因であることは間違いありませんが、NTDsの発症は複雑な多因子プロセスです。他のリスク要因に関する包括的な情報を提供することは、母親の行動のみに責任を帰するのを避け、特別なカウンセリングが必要な対象者を特定するために極めて重要です。
医学的に認知されているリスク要因には以下のものが含まれます¹：

• 遺伝的要因: NTDs症例の約20〜30%は葉酸だけでは予防できず、複雑な遺伝的要因が関与している可能性があると推定されています。⁵
• 母親の健康状態: 管理が不十分な糖尿病や母親の肥満は、NTDsを持つ子供が生まれるリスクを高めることが確認されています。¹
• 環境要因: 妊娠初期の高熱も、記録されているリスク要因の一つです。¹
• 薬剤の使用: これは特に強調すべき領域です。特定の薬剤はNTDsのリスクを著しく高める可能性があります。
  • バルプロ酸ナトリウム（Natri Valproate）: 一般的な抗てんかん薬であり、日本の医薬品医療機器総合機構（PMDA）は、この薬剤について、神経管閉鎖障害を含む催奇形性（さいきけいせい）のリスクを明確に警告しています。¹³ 日本の医薬品添付文書では、バルプロ酸による治療を受けている妊娠可能な年齢の女性に対し、妊娠前にリスクと効果的な予防法について十分な医学的カウンセリングを受ける必要があると強調されています。¹⁵

これらのリスク要因、特に特定の薬剤名を明確にすることは、記事をより包括的で責任あるものにするだけでなく、てんかんを持つ女性など、ハイリスク群の読者にとって重要な警告情報を提供します。これは、すべての女性の健康に対する深い配慮を示すものであり、コンテンツの信頼性と価値を高めます。

第2部：予防の柱 – 葉酸の不可欠な役割

神経管閉鎖障害を葉酸で予防するという科学的根拠は極めて強固であり、世界中の主要な保健機関および日本国内で広く認知されています。厚生労働省（MHLW）と日本産科婦人科学会（JSOG）の両者が、明確で一貫した推奨を提示しています。¹⁰

公式な推奨とその科学的背景

主要な推奨事項は以下の通りです。

• 推奨量: 妊娠の可能性があるすべての女性は、健康的で葉酸豊富な食事に加えて、サプリメントから毎日0.4mg（400マイクログラム）の葉酸を摂取すべきです。⁵
• 摂取時期: これが決定的な要因です。補給は、妊娠を計画する少なくとも1ヶ月前から開始し、妊娠初期の3ヶ月間継続しなければなりません。¹⁷ その理由は、神経管が非常に早い時期、すなわち妊娠第4週頃（受胎後28日目）に閉鎖するため、妊娠を確認してから補給を始めても手遅れだからです。³

ここで理解すべき重要な点は、食品に含まれる天然の葉酸（folate）と、サプリメントに含まれる合成の葉酸（folic acid）とでは、体内での吸収率に違いがあるということです。食品中の葉酸はポリグルタミン酸型として存在し、体内での利用率は約50%にとどまります。一方、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸はモノグルタミン酸型であり、その吸収率は約85%と格段に高いです。⁷ これこそが、日本および国際的な推奨が、予防に必要な量を確実に摂取するためにサプリメントの使用の重要性を強調する理由です。

日本の食生活における葉酸摂取の実践ガイド

サプリメントによる補給が不可欠である一方、葉酸を豊富に含む食事を心がけることは、健康な妊娠期間の基盤となります。以下に、日本の食卓で馴染み深く、女性が日々の食事に容易に取り入れられる葉酸豊富な食品を紹介します。

• 緑黄色野菜: 最も手軽で豊富な葉酸源です。ブロッコリー、ほうれんそう、アスパラガス、そして枝豆などは非常に高い葉酸含有量を誇ります。¹⁹
• 豆類・種実類: 大豆製品である納豆やきな粉は素晴らしい選択肢です。ごまのような種子類も相当量の葉酸を含んでいます。¹⁹
• 果物: いちごやアボカド、特に水分が凝縮されたドライマンゴーは葉酸含有量が非常に高いです。¹⁹
• 肉・魚介類: レバー、特に鶏レバーや豚レバーは、食品の中でもトップクラスの葉酸源です。¹⁸ 魚卵であるイクラやすじこ、うなぎの肝も貴重な供給源となります。²⁰
• 海藻類: 特筆すべきは、焼きのりが極めて高い葉酸含有量を誇る点です。ご飯に添えるだけで手軽にこの微量栄養素を補給できます。²¹
• 飲み物: せん茶や抹茶といった日本の緑茶も葉酸が豊富です。ただし、妊娠中の女性はこれらの飲料に含まれるカフェイン量に注意が必要です。²¹

葉酸を逃さない調理のコツ: 葉酸は水溶性で熱に弱いビタミンです。食品中の葉酸を最大限に保持するためには、蒸す、炒める、あるいはスープや汁物にして煮汁ごと食べるといった調理法を優先しましょう。野菜を長時間茹でて茹で汁を捨てるのは避けるべきです。¹⁹
読者が容易にイメージし、実践できるよう、以下の表に日本の食事で一般的な葉酸豊富な食品をまとめました。

第3部：出生前診断の道のり – 選択のための情報提供

出生前診断の道のりは、親となる方々にとって不安に満ちた期間となり得ます。検査の選択肢について明確で正確な情報を提供することは、彼らが医師との相談のもとで賢明な決定を下すために不可欠です。リスクを推定する「非確定的検査」と、胎児の状態を確定する「確定的検査」を明確に区別することが重要です。¹⁷

スクリーニングから確定診断へ：妊婦のための選択肢

• 超音波検査: これは非侵襲的な方法で、妊婦健診で定期的に行われます。NTDsに関連する大きな形態異常を発見することができます。
  • 妊娠第一トリメスター（初期）では、無脳症のような非常に大きな異常が発見されることがあります。
  • 通常、妊娠18週から20週頃に行われる胎児形態学的超音波検査が最も重要な時期です。医師は、胎児の脳の画像に見られる二分脊椎に特徴的な所見（「レモンサイン」や「バナナサイン」と呼ばれる）を探し、脊椎を直接観察して開放部を見つけます。¹⁷
• 母体血清マーカー検査:
  • クアトロテスト: これは妊娠15週から17週頃に母親に対して行われる血液検査です。母体血中の4つの物質（α-フェトプロテイン（AFP）を含む）の濃度を測定します。AFP濃度が高い場合、開放性の神経管閉鎖障害（開放性二分脊椎や無脳症など）のリスクを示す可能性があります。⁴ クアトロテストは、ダウン症候群など他の染色体異常のリスクもスクリーニングします。
  • 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査（NIPT）: これは誤解を避けるために明確化が必要な点です。現在日本で認可されている標準的なNIPTは、主に最も一般的な染色体数的異常である21トリソミー（ダウン症候群）、18トリソミー、13トリソミーのスクリーニングに焦点を当てています。NTDsは通常、染色体数的異常によって引き起こされるわけではないため、標準的なNIPTでは直接スクリーニングされません。¹⁷
• 確定的検査（侵襲的検査）:
  • 羊水穿刺: スクリーニング検査でリスクが高いと示された場合、羊水穿刺は開放性NTDsを確定診断するための「ゴールドスタンダード（最も信頼性の高い基準）」です。この手技は通常15週以降に行われ、分析のために羊水サンプルを採取します。羊水中のAFP濃度が非常に高い場合、開放性NTDsの強力な指標となります。⁴ これは正確な診断検査ですが、流産を引き起こすわずかなリスク（1%未満）を伴います。

以下の表は、NTDsの出生前スクリーニングおよび診断方法を比較し、ご夫婦が全体像を把握するのに役立ちます。

第4部：先進的治療 – 胎児手術と日本での未来

ここ数十年で、先天性異常の治療分野は胎児手術の登場により革命を遂げました。脊髄髄膜瘤（myelomeningocele）という病型の二分脊椎に対して、この治療法は希望に満ちた新時代を切り開いています。

胎児手術 vs. 生後手術：MOMS研究からのエビデンス

二分脊椎治療における最大の転換点は、2011年に発表されたランダム化比較臨床試験である「MOMS研究（Management of Myelomeningocele Study）」でした。²⁵ この研究は、胎児のうちに（妊娠26週未満で）修復手術を受けた群と、出生後に伝統的な方法で手術を受けた群の結果を比較しました。
MOMS研究の結果は非常に印象的で、世界中の標準治療を根底から変えました。胎児手術は以下の点で優れていることが証明されました：

• 脳室シャント留置の必要性を大幅に減少: 二分脊椎の一般的な合併症である水頭症の治療に必要なシャント留置率は、生後手術群の82%から胎児手術群では40%へと劇的に減少しました。²⁶
• 運動機能の改善: 生後30ヶ月の時点で、補助具の有無にかかわらず自力で歩行できた子どもの割合は、生後手術群の21%に対し、胎児手術群では42%と倍増しました。²⁶

この成功の背景にある科学的根拠は、「ツーヒット仮説（two-hit hypothesis）」です。「第一のヒット」は神経管形成過程の異常による初期の神経損傷です。「第二のヒット」は、露出した脊髄が羊水に直接さらされたり、子宮壁に擦れたりすることで、妊娠期間を通じて継続的に発生する二次的な損傷です。²⁷ 胎児手術は、この「第二のヒット」を防ぎ、神経機能を温存するために、脊髄を覆い保護することを目的としています。
しかし、MOMS研究以降のさらなる研究やシステマティックレビューは、よりバランスの取れた全体像も示しています。胎児手術は大きな介入であり、母親と胎児双方のリスク、特に極度の早産のリスクや、将来の妊娠における子宮破裂または瘢痕菲薄化のリスクを著しく増加させます。²⁹ 現在、主に二つの術式があります。

• 開放式胎児手術 (Open fetal surgery): MOMS研究で用いられた術式で、胎児に到達するために母親の腹部と子宮を切開する必要があります。効果は証明されていますが、母親の子宮へのリスクが最も高いです。³⁰
• 胎児鏡手術 (Fetoscopic surgery): より新しい低侵襲な術式で、子宮の小さな切開創から行われます。この術式は母親の子宮へのリスクを低減できる可能性がありますが、胎児側の髄液漏や創部離開の発生率が高い可能性が指摘されています。²⁹

長期的な結果に関して、研究によれば、胎児手術は生活の質（QOL）、認知機能、行動を改善することが示唆されています。これは主に、脳の発達に悪影響を及ぼしうる水頭症シャント留置の割合を減少させることによるものです。³¹

日本における胎児手術：希望と現実

日本の家族にとって、二分脊椎に対する胎児手術へのアクセスは、現実的な状況を明確に理解する必要がある複雑な問題です。国際的に報道される希望と、日本国内での利用可能性や費用との間には、かなりのギャップが存在します。

• 現在の状況: 日本において、二分脊椎に対する胎児手術は依然として臨床研究の段階にあり、医療保険が広く適用される標準治療としてはまだ承認されていないことを強調する必要があります。²⁷
• 先進的な施設: この分野をリードする中心の一つが大阪大学医学部附属病院であり、2020年から二分脊椎に対する胎児手術の臨床研究プログラムを開始しています。²⁷
• 費用と保険: これは家族にとって最大の関心事です。
  • 「臨床研究」であるため、この手術の費用は通常、公的医療保険で全額カバーされません。³⁶
  • これは「先進医療」のカテゴリーに分類される可能性があります。この制度下では、患者は先進的な手術技術料部分を100%自己負担し、入院費、基本的な薬剤費、定期的な検査などの他の費用は保険で一部カバーされる場合があります。³⁷
  • 参考として、陽子線治療や重粒子線治療といった他のがん治療における「先進医療」の技術料は、平均で270万円から320万円です。³⁷ 胎児手術の費用も同程度かそれ以上になる可能性があります。
  • 一部の臨床研究プログラムでは、患者の経済的負担を軽減するための支援（負担軽減費）が提供されることもありますが、これは個々の研究のデザインや資金源に完全に依存します。⁴¹

したがって、この選択肢に関心のある家族は、十分なカウンセリングを受け、参加基準、プロセス、リスク、費用に関する最も正確な情報を得るために、研究を実施している施設に直接問い合わせることが推奨されます。

第5部：二分脊椎と共に生きる – 患者と家族への包括的支援

二分脊椎の子どもを育てることは長い道のりであり、多くの専門分野の緊密な連携と、社会からの力強い支援を必要とします。

多専門領域による管理と生活の質（QOL）

二分脊椎患者のケアは、集学的（しゅうがくてき）かつ終生（しゅうせい）にわたる取り組みです。⁵ 包括的な医療チームは通常、以下の専門家で構成されます。

• 脳神経外科: 出生直後に感染やさらなる損傷を防ぐため、瘤を閉鎖する手術を担当します。また、脳室シャントを留置して水頭症を管理し、キアリ奇形などの関連問題を監視します。⁵
• 泌尿器科: 神経因性膀胱の管理は最大の課題の一つです。泌尿器科医は、家族と患者に清潔自己導尿（CIC）の方法を指導し、膀胱を空にして尿路感染を防ぎ、腎機能を保護します。⁵
• 整形外科: 股関節脱臼、脊柱側弯症、足の変形など、骨格系の問題を監視・治療し、運動能力を最大限に高めます。⁵
• 消化器科／外科: 便秘や便失禁を含む神経因性腸の管理を、排便管理プログラムや時には手術を通じて行います。⁴³
• リハビリテーション科: 理学療法士や作業療法士が早期から子どもと関わり、筋力を強化し、運動能力を改善し、子どもが最大限の自立を達成できるよう支援します。

患者の生活の質（QOL）は、これらの問題、特に排尿・排便の管理能力と自立した移動能力をいかに効果的に管理できるかに大きく依存します。⁴⁵

日本の社会・財政支援制度

日本には、慢性疾患や障害を持つ子どもたちのいる家庭を支援するための、比較的手厚い社会福祉・財政支援制度があります。これらの制度を理解し、活用することで、家族の負担を大幅に軽減することができます。

コミュニティの力：患者会の役割

医療制度や政府からの支援に加え、同じ境遇にある人々とのつながりや分かち合いは、計り知れない精神的な力をもたらします。日本では、日本二分脊椎症協会が、二分脊椎を持つ人々とその家族のための唯一の全国的な患者組織です。⁵⁴
この協会は、多くの役割を積極的に担っています：

• つながりと交流: 全国および地方支部でセミナー、交流会、サマーキャンプなどを開催し、経験を共有し、孤立感を和らげる機会を提供します。⁵⁴
• 情報提供: 定期的な会報「道」や各種資料を発行し、最新の医療情報や日常生活に関する問題について更新します。⁴⁶
• 政策提言: 厚生労働省や文部科学省などの政府機関と連携し、二分脊椎患者のための医療、教育、福祉に関する政策の改善を働きかけます。⁵⁴
• 医療連携: 医学会や研究グループと情報交換を行い、生活の質（QOL）に関する調査に参加するなどして、医療ケアの改善に患者の声を届けます。⁴⁶

このような会に参加することは、家族が実用的な支援を受けるだけでなく、同じ道のりを歩む人々から共感、理解、そして希望を見出す助けとなります。

結論

本稿では、日本の文脈における神経管閉鎖障害の包括的な全体像を明らかにしました。得られた知見から、私たちは単に情報を羅列するのではなく、読者の具体的な悩みに寄り添い、行動を促すための戦略的なアプローチを導き出しました。日本における葉酸摂取の「パラドックス」、すなわち推奨がありながらも発生率が減らないという現実の背景には、妊娠前の摂取という「時期」の重要性に関する認識不足と、食品への葉酸添加が義務化されていないという制度的課題があります。また、治療においては、胎児手術という大きな希望がある一方で、そのアクセスはまだ限られており、高額な費用がかかるという現実も存在します。
しかし、最も重要なメッセージは、予防への道筋は明確であり、また、もしもお子様が二分脊椎と共に生きることになったとしても、決して一人ではないということです。日本の充実した公的支援制度と、日本二分脊椎症協会のような温かいコミュニティが、ご家族を力強く支えます。JAPANESEHEALTH.ORGは、すべての女性が妊娠を計画する段階で医師に相談し、葉酸の適切な摂取を開始することを強く推奨します。そして、この記事が、正確な知識の普及を通じて、日本における神経管閉鎖障害の予防という大きな目標に貢献し、影響を受けるすべてのご家族にとって信頼できる羅針盤となることを心から願っています。