【医師監修】小児免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)完全ガイド:原因、最新治療、日常生活のすべて
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【医師監修】小児免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)完全ガイド:原因、最新治療、日常生活のすべて

お子様が「免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)」と診断され、多くのご両親が不安や戸惑いを感じていらっしゃることと存じます。見慣れない病名、体に現れる紫斑(あざ)や点状出血は、大きな心配の種となることでしょう。しかし、まず最も重要なことをお伝えします。日本小児血液・がん学会(JSPHO)の公式な見解によれば、小児ITPの約75~80%は自然に回復する一過性の疾患であり、命に関わるような重篤な出血のリスクは極めて低いとされています12。この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、日本国内の最新の診療ガイドラインと科学的根拠に基づき、小児ITPに関するあらゆる情報を網羅的かつ正確に、そして何よりも保護者の皆様の心に寄り添いながら解説します。

この記事の科学的根拠

この記事は、日本小児血液・がん学会(JSPHO)の診療ガイドライン、日本の難病情報センター、および国際的な医学研究論文など、信頼性が最も高いとされる情報源のみに基づいて構成されています。記事内のすべての医学的記述は、これらの権威ある情報源に直接依拠しています。

  • 日本小児血液・がん学会(JSPHO): 本記事における治療方針、診断基準、日常生活の管理に関する推奨事項の大部分は、同学会が発行した「小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン2022年版」に基づいています2
  • 難病情報センター: 日本におけるITPの定義、公的助成制度、疫学データに関する記述は、厚生労働省の管轄下にある同センターの公式情報を参照しています1
  • 米国血液学会(ASH): 一部の治療選択肢や国際的な標準治療に関する比較情報については、米国血液学会が発行した2019年のガイドラインを参考にしています3

この記事の要点まとめ

  • 小児ITPの大部分(約75-80%)は自然に治癒し、多くの場合、特別な治療を必要としません1
  • 病名は「特発性」から「免疫性」へと変更され、原因が不明なのではなく、免疫系の誤作動によるものであることが明確になりました1
  • 治療の主な目的は、血小板数を正常値に戻すことではなく、危険な出血を防ぎ、お子様の生活の質(HRQoL)を維持することです2
  • 診断において、典型的な症状の子供の場合、骨髄検査は必須ではありません2
  • 日常生活での活動制限は血小板数に応じて段階的に判断され、過度な制限は推奨されていません。スポーツへの参加も可能です2

第1部:お子様の診断を理解する

診断名を聞いたばかりのご両親にとって、まず病気の全体像を正しく理解することが、不安を和らげる第一歩となります。

1.1. ITPとは何か?:「特発性」から「免疫性」への名称変更の意義

かつてこの病気は「特発性血小板減少性紫斑病」(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura)と呼ばれていました。「特発性」とは「原因がわからない」という意味であり、この言葉が保護者に大きな不安を与えていました。しかし、研究が進み、この病気が「免疫系の誤作動によって、自分自身の血小板を異物と間違えて攻撃・破壊してしまう自己免疫疾患」であることが解明されました4。この本質を正確に反映するため、現在では正式名称が「免疫性血小板減少性紫斑病」(Immune Thrombocytopenia)に変更されています。ただし、略称として「ITP」は引き続き広く使用されています1
この名称の変更は、単なる言葉の違い以上の意味を持ちます。「原因不明の謎の病気」ではなく、「体の防御システムの一時的な間違い」と理解することで、病気への向き合い方が変わります。特に子供の場合、ウイルス感染や予防接種などをきっかけに、この免疫の誤作動が一時的に引き起こされることが多いと考えられています1。JAPANESEHEALTH.ORGとして、この正確で最新の情報を最初にお伝えすることは、皆様の信頼を築く上で不可欠であると考えています。

1.2. 日本におけるITPの現状:データから見る疫学

具体的なデータは、病気の客観的な位置づけを理解し、過度な心配を和らげる助けとなります。

  • 国内の患者数: 日本全国でITPと診断されている患者様は約20,000人から25,000人と推定され、毎年約3,000人が新たに発症しています1
  • 子供の発症率: 日本小児血液・がん学会(JSPHO)の登録データによると、子供の発症率は10万人に4.3人と報告されています4。これは国際的な推計(10万人あたり2~5人)とも一致しており、決して極めて稀な病気というわけではありません5
  • 発症年齢と性別: 0歳から7歳が発症のピークです。7歳未満では男の子にやや多く見られますが(男女比 約1.2-1.38:1)、それ以上の年齢では性差はなくなります4

1.3. 子供における病気の経過と予後:「難病」という言葉に戸惑わないで

ITPは厚生労働省によって「指定難病」の一つに定められています6。しかし、この言葉が必ずしも「治らない重い病気」を意味するわけではありません。特に小児ITPにおいては、その捉え方に注意が必要です。
最新の病期分類(JSPHO 2022年版)2:

  • 新規診断期: 発症から3ヶ月未満
  • 持続性: 発症後3ヶ月から12ヶ月
  • 慢性期: 発症後12ヶ月以上経過

予後(病気の見通し):
小児ITPの最も重要な特徴は、その多くが「自己限定的」である、つまり自然に治る点です。日本の公式なデータによれば、約75~80%のお子様は発症から6~12ヶ月以内に自然に回復します1。慢性期に移行するのは約20%に過ぎず、その場合でも2年以上経ってから自然に軽快するケースもあります7
重篤な出血のリスク:
保護者の皆様が最も心配されるであろう、脳内出血などの命に関わる重篤な出血のリスクは、実際には非常に低く、0.3~0.5%程度と推定されています7
「指定難病」と医療費助成の関係:
ではなぜ「指定難病」なのでしょうか。これは、一部の患者様が慢性化し、長期的な治療や管理が必要になる場合があるため、そのような方々が経済的な支援を受けられるようにするための行政上の分類です8。実際、国の医療費助成を受けているITP患者のうち、20歳未満は非常に少数です9。これは、ほとんどの子供が助成制度を必要とする前に回復することを物語っています。お子様がITPと診断されても、「難病」という言葉に過度に動揺せず、大部分は一過性のものであるという事実を心に留めておくことが重要です。

第2部:症状と診断までの道のり

ITPの診断は、他の病気の可能性を一つずつ消していく「除外診断」という方法で行われます。ここでは、そのプロセスを分かりやすく解説します。

2.1. 保護者が気づく主な症状

ITPの症状は主に出血に関するものです。血を固める役割を持つ血小板が減少するために起こります。

  • 皮膚症状: 最も一般的な症状です。針で刺したような小さな赤い点(点状出血)や、ぶつけていないのにできる様々な大きさの青あざ(紫斑)が手足や体幹に見られます7
  • 粘膜出血: 鼻血(鼻出血)や歯ぐきからの出血もよく見られます7
  • 重篤な出血(稀): 血尿、血便(消化管出血)、頭蓋内出血などが起こることもありますが、頻度は非常に低いです7

2.2. 診断のプロセス:お子様にはどのような検査が行われるのか

ITPを確定するための特異的な検査はありません。診断は、問診、診察、そして血液検査を組み合わせて、血小板減少を引き起こす他の病気を否定することによって下されます10

  1. 問診と診察: 最近のウイルス感染の有無、予防接種歴、服用中の薬、家族歴などを詳しく聞き取ります。また、紫斑の程度やリンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れ(肝脾腫)がないかなどを診察します。
  2. 血液検査(全血球計算): 最も重要な検査です。血小板の数が10万/μL未満に減少していることが確認されます。ITPの典型的な特徴は、赤血球や白血球といった他の血液細胞の数や形態は正常である「単独の血小板減少」です10

2.3. 「骨髄検査は必要ですか?」という大きな不安について

「骨髄検査」と聞くと、白血病などの深刻な病気を連想し、大きな不安を感じる保護者の方が少なくありません。しかし、JSPHOの2022年版ガイドラインでは、典型的な小児ITPの診断において、骨髄検査は必須ではないと明確に述べられています2
骨髄検査が検討されるのは、以下のような「非典型的」な所見が見られる場合に限られます2

  • 血液検査で、血小板だけでなく赤血球や白血球にも異常が見られる場合
  • 診察で肝臓や脾臓の明らかな腫れが認められる場合
  • ステロイドなどの初期治療に全く反応しない場合

したがって、ほとんどの典型的な症状のお子様にとっては、骨髄検査は不要です。この点は、診断過程における保護者の精神的負担を軽減する上で非常に重要な知識です。

2.4. 重症度の評価:治療方針と公費助成のための2つの基準

ITPの「重症度」には、臨床的な治療方針を決めるための基準と、公費助成の対象となるかを判断するための行政上の基準の2種類があり、これらを区別して理解することが大切です。

  • 臨床的な重症度分類(JSPHO): 医師が治療法を決定する際には、血小板の数値そのものよりも、実際の出血症状の程度を重視します。JSPHOのガイドラインでは、改訂Buchanan出血スコア(グレード0~4)を用いて出血の重症度を評価し、治療介入の必要性を判断します2
  • 公費助成のための重症度分類(厚生労働省): 一方、医療費助成の申請には、厚生労働省が定めた独自の5段階の重症度分類が用いられます。これは血小板数と出血症状の種類(なし、皮膚のみ、粘膜、重篤)を組み合わせて判断され、原則としてステージII以上が助成の対象となります8

医師が話す「重症度」と、役所の手続きで使われる「重症度」が異なる場合があることを知っておくと、混乱を避けられます。

第3部:現代の治療選択肢:共同での意思決定

小児ITP治療の現代的な考え方は大きく変化しました。最大の目標は、単に血小板の数を正常化することではなく、「重篤な出血を予防し、お子様とご家族の生活の質(HRQoL)を最大限に守ること」にあります2。治療方針は、医師が一方的に決めるのではなく、ご両親、そして可能であればお子様自身も交えて、利点と欠点を十分に話し合った上で決定されます。

3.1. 初期治療(新規診断ITPに対するアプローチ)

発症から3ヶ月以内のITPに対する治療方針は、出血症状の程度によって大きく異なります。

  • 無治療経過観察 (Observation):
    出血症状がないか、皮膚症状(点状出血や紫斑)のみ(出血スコア グレード0-2)の場合、血小板の数値がたとえ低くても、特別な治療は行わず慎重に経過を観察することが最も推奨される選択肢です2。これは、日本のガイドラインだけでなく、米国血液学会(ASH)のガイドラインでも強く推奨されている方針であり11、ほとんどの子供が自然に回復するため、不要な薬の副作用を避けることが目的です。
  • 薬物療法(積極的治療):
    鼻血や歯ぐきからの出血といった粘膜出血(出血スコア グレード3以上)が見られる場合や、出血への恐怖から日常生活が著しく制限され、生活の質(HRQoL)が低下している場合には、積極的な治療が検討されます。主な選択肢は以下の2つです2

    1. 副腎皮質ステロイド: 短期間(通常7日以内)の経口投与が第一選択の一つです。血小板数を速やかに増加させる効果が期待できます。
    2. 免疫グロブリン大量静注療法(IVIG): 点滴による治療で、これも第一選択の一つです。ステロイドが使用できない場合や、手術などでより緊急に血小板数を増やす必要がある場合に特に有効です。

    JSPHOのガイドラインでは、これら2つの治療法に明確な優劣はつけておらず、患者様の状況に応じて選択されます2

3.2. 難治性・慢性ITPに対する治療(二次治療)

初期治療に反応しない、あるいは慢性期(1年以上)に移行したごく一部の患者様で、出血リスクが高いかHRQoLが低い場合には、二次治療が検討されます。ここでも治療法の選択肢は大きく進歩しており、かつてのような外科手術が第一に選ばれることはありません。
JSPHOガイドラインが推奨する二次治療の優先順位は以下の通りです2

  1. トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬: エルトロンボパグ(経口薬)やロミプロスチム(皮下注射薬)などがあります。これらの薬剤は血小板の産生を促進するもので、脾臓摘出術よりも優先して推奨されています。長期的に血小板数を安定させ、治療が不要になる「無治療寛解」を達成する例も報告されています12
  2. リツキシマブ: 血小板を攻撃するBリンパ球を標的とする薬剤です。これも選択肢の一つですが、免疫グロブリンが低下するリスクなどを考慮する必要があります。
  3. 脾臓摘出術(脾摘): かつては標準治療でしたが、現在は他の治療法に反応しない重症例に対する「最後の手段」と位置づけられています。脾臓は血小板が破壊される主要な場所であるため、摘出することで高い寛解率が期待できますが、手術リスクや生涯にわたる重症感染症のリスクが伴います13。日本では小児に対する脾摘は稀です14

3.3. 治療法比較一覧表

複雑な治療の選択肢を理解しやすくするために、JSPHO 2022年版ガイドラインに基づいた比較表を作成しました。これは、医師との相談の際に役立ちます。

表1. 小児ITP治療法の比較分析(JSPHO 2022年版ガイドラインに基づく)2
治療法 主な対象 投与方法 主な利点 主な副作用・注意点
無治療経過観察 出血なし、または皮膚症状のみ(グレード0-2) なし 薬剤の副作用を完全に回避できる。大部分は自然治癒する。 経過を慎重に見守る必要があり、家族の不安が伴うことがある。
副腎皮質ステロイド 粘膜出血(グレード3+)またはHRQoLの低下 経口薬(通常7日以内の短期) 血小板数を速やかに増加させる。簡便に開始できる。 短期的な気分変動、食欲増進、不眠など。長期使用は避ける。
免疫グロブリン(IVIG) 粘膜出血(グレード3+)、重篤な出血、緊急時 病院での静脈内点滴 非常に速く効果的に血小板を増やす。ステロイドが使えない場合に良い選択。 頭痛、発熱、吐き気など。入院が必要。高コスト。
TPO受容体作動薬 持続性・慢性の難治例で、出血やHRQoL低下がある場合 経口薬(毎日)または皮下注射(週1回) 長期的に血小板数を安定させる。脾臓摘出を回避できる。 長期的な治療が必要。頭痛や関節痛などの可能性。
リツキシマブ 持続性・慢性の難治例 静脈内点滴(通常、週1回を4週間) 一部で長期的な寛解が期待できる。 B細胞を枯渇させ、感染症リスクを高める。効果が持続しない場合がある。
脾臓摘出術(脾摘) 他の全ての治療法に反応しない重症例に対する最終手段 外科手術 最も高い永続的寛解率(約60-80%)。 手術リスク。生涯にわたる重症感染症のリスク増加。不可逆的。

第4部:ITPと共に生きる日常:すこやかに育つために

診断後の日常生活における具体的な注意点は、保護者の皆様が最も知りたい情報の一つです。現在の医療では、過剰な制限ではなく、安全を確保しながら可能な限り通常の生活を送ることが重視されています。

4.1. 運動やスポーツへの参加:科学的根拠に基づく指針

「うちの子は運動を続けても大丈夫でしょうか?」これは非常によくある質問です。JSPHOのガイドラインは、血小板数とスポーツの衝突リスクに基づいた明確な指針を提示しています2。この表を学校の先生と共有することも有効です。

表2. 血小板数に応じたスポーツ参加へのJSPHO指針2
血小板数 (/μL) 高リスクスポーツ
(柔道、ラグビー、ボクシング等)
中リスクスポーツ
(サッカー、バスケ、野球等)
低リスクスポーツ
(水泳、テニス、ジョギング等)
> 100,000
75,000 – 100,000 注意
50,000 – 75,000 不可
30,000 – 50,000 不可 不可
< 30,000 不可 不可

4.2. その他の日常生活における注意点

  • 予防接種: ステロイドやリツキシマブなどの免疫を抑制する治療中は、生ワクチンの接種を避ける必要があります。不活化ワクチンは一般的に安全とされていますが、いずれの場合も必ず主治医に相談してください2
  • 使用を避けるべき薬: 一部の解熱鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDs)は血小板の働きを弱める可能性があります。市販薬を使用する前にも、医師や薬剤師に確認することが重要です1
  • 思春期の女子における月経過多: ITPを持つ思春期の女子では月経の量が多くなることがあります。これは生活の質を大きく下げるため、抗線溶薬やホルモン療法などの治療選択肢について、婦人科医とも連携しながら主治医と相談することが推奨されます2
  • 学校生活: お子様が安心して学校生活を送れるよう、担任の先生や養護の先生に病気のこと、特に運動制限や怪我をした際の対応について説明しておくことが望ましいです。

第5部:日本の医療制度を理解する:公費助成とサポート体制

ITPが「指定難病」および「小児慢性特定疾病」の対象であることは、患者様とご家族が利用できる公的な支援制度があることを意味します。この制度を理解することは、経済的・精神的な負担を軽減するために非常に重要です。

5.1. 医療費助成制度の概要

ITPの患者様は、重症度分類や所得に応じて、医療費の自己負担分の一部または全部が助成される制度を利用できる可能性があります8。対象となる制度は主に2つあります。

  • 指定難病医療費助成制度: 主に18歳以上が対象ですが、18歳未満でも他の要件を満たせば対象となる場合があります。厚生労働省が定める重症度分類でステージII以上であることが一つの目安です15
  • 小児慢性特定疾病医療費助成制度: 18歳未満の児童が対象の制度です。こちらも独自の認定基準があります。

これらの制度は複雑なため、申請を検討される場合は、まず病院のソーシャルワーカー、またはお住まいの自治体の保健所や担当窓口に相談することをお勧めします。申請には医師の診断書が必要となります。

5.2. 患者会・サポートグループ

同じ病気を持つ他の家族と繋がることは、情報交換や精神的な支えを得る上で非常に有益です。日本には、ITP患者様とそのご家族を支援するための患者会があります。

  • ITP患者会 なんくるないさー: 日本で活動する主要なITP患者会の一つです。講演会や交流会などを通じて、患者様やご家族を支援しています。ウェブサイトなどで情報を得ることができます。

このようなサポートグループの活用も、病気と向き合う上での大きな力となります。

よくある質問 (FAQ)

Q1: 小児ITPは遺伝しますか?
いいえ、後天的な自己免疫疾患であり、遺伝する病気ではありません。ご兄弟が同じ病気になる可能性を心配する必要はほとんどありません。
Q2: 一度治ったら、再発することはありますか?
小児ITPは一度回復すれば、再発することは稀です。ただし、成人になってからITPを発症するケースとは区別して考える必要があります。小児期に完治した場合は、その後の再発リスクは低いと考えられています16
Q3: ITPが子供の将来の健康に長期的な影響を及ぼすことはありますか?
大部分の小児ITPは後遺症なく回復します。慢性化した場合でも、現代の治療法によって出血リスクはうまくコントロールできます。脾臓を摘出しない限り、免疫力に長期的な影響が残ることもありません。適切な管理を行えば、健康な生活を送ることが可能です。
Q4: 食事で気をつけることはありますか?
ITP自体を改善したり悪化させたりする特定の食品はありません。バランスの取れた健康的な食事を心がけることが、全身の健康維持にとって最も重要です。
Q5: 旅行や飛行機に乗ることはできますか?
血小板数が安定しており、出血傾向がなければ、旅行や飛行機の利用は通常問題ありません。ただし、長期の旅行や海外渡航を計画する際は、万が一の事態に備えて、事前に主治医に相談し、英文の診断書などを用意しておくと安心です。

結論

お子様が免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断されたご家族の皆様へ、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が最もお伝えしたいことは、希望を持って病気と向き合っていただきたいということです。小児ITPは、その大部分が自然に治癒へと向かう予後の良い疾患です。現代医療の進歩により、治療の選択肢は増え、かつてのような侵襲的な治療は最終手段となり、生活の質を保ちながら安全に経過をみることが標準となっています。
不安な気持ちは当然ですが、正しい知識がその不安を和らげる最大の武器となります。この記事が、皆様の疑問や懸念を解消し、主治医の先生方との円滑なコミュニケーションの一助となれば幸いです。お子様の健やかな成長を、私たちは心から応援しています。

免責事項
本記事は、医学的な情報提供を目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の懸念や治療に関する決定については、必ず資格を有する医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  2. 日本小児血液・がん学会. 小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン 2022年版. [インターネット]. 2022年. [引用日: 2025年6月21日]. Available from: https://www.jspho.org/pdf/journal/20221214_guideline/20221214_guideline.pdf
  3. Neunert C, Terrell DR, Arnold DM, et al. American Society of Hematology 2019 guidelines for immune thrombocytopenia. Blood Adv. 2019;3(23):3829-3866. doi:10.1182/bloodadvances.2019000966. 全文リンク
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