かかとのひび割れ・ガサガサの原因と治し方|皮膚科医が教える市販薬と正しいケア【完全ガイド】
皮膚科疾患

かかとのひび割れ・ガサガサの原因と治し方|皮膚科医が教える市販薬と正しいケア【完全ガイド】

冬になると多くの人を悩ませる、かかとのひび割れやガサガサ。見た目が気になるだけでなく、悪化すると痛みが生じ、歩くことさえ辛くなることもあります。「ただの乾燥だから」と放置していませんか?実は、その症状の裏には、単なる乾燥だけではない、水虫などの隠れた病気の可能性や、間違ったケアによる悪化が潜んでいるかもしれません。この記事では、なぜかかとがひび割れるのかという科学的な根本原因から、皮膚科医が推奨する正しいセルフケア、効果的な市販薬の選び方、そして専門医を受診すべき危険なサインまで、日本の読者のために網羅的かつ深く解説します。あなたの長年のかかとの悩みに、今日で終止符を打ちましょう。

要点まとめ

  • かかとのひび割れは「乾燥」「圧力・摩擦」「ターンオーバーの乱れ」が絡み合う「悪循環」によって起こります41
  • かゆみがなくても「角化型足白癬(かかと水虫)」の可能性があり、自己判断での保湿は症状を悪化させる危険性があります5
  • 治療の鍵は「まず保護、次に軟化」です。痛みを伴う深い亀裂にはまずワセリンで保護し、亀裂が閉じてから尿素配合クリームで角質を柔らかくするのが安全です9
  • 角質ケアは「優しく、頻繁に行わない」が鉄則。削りすぎは逆効果になるため、週に1回程度に留め、必ず保湿を徹底してください103
  • セルフケアで改善しない、強い痛みや感染の兆候がある、または糖尿病の方は、重篤なリスクを避けるため直ちに皮膚科を受診してください13

科学的基礎:なぜかかとはひび割れるのか?角化と亀裂の病態生理

記事の信頼性を確立するため、まず「なぜかかとがひび割れるのか」を科学的根拠に基づいて詳細に解説します。かかとの悩みを根本から理解することが、正しいケアへの第一歩です。

かかと特有の皮膚構造

かかとが体の中でも特にひび割れやすいのには、その特異な構造に根本的な理由があります。

  • 皮脂腺の欠如: 足の裏の皮膚には、皮膚の水分蒸発を防ぐ「皮脂膜」を形成する皮脂腺が存在しません。このため、かかとは体の他の部位と比べて本質的に乾燥しやすい運命にあります18
  • 厚い角層: 全体重を支えるという極めて大きな物理的負荷に耐えるため、かかとの角層は体の中で最も厚く、硬く発達しています。しかし、この分厚さが皮肉にも柔軟性を低下させ、保湿成分の浸透を妨げるバリアとなってしまいます。その結果、圧力がかかった際に硬い角質が耐えきれず、パキッと亀裂を生じやすくなるのです1

ひび割れを引き起こす3つの主要因

かかとのひび割れは、単一の原因ではなく、以下の3つの要因が複雑に絡み合って発生します。

  1. 乾燥 (Xerosis): 最も重要な要因です。冬場の低い湿度やエアコンによる空気の乾燥といった外的要因、そして加齢や水分摂取不足といった内的要因により、ただでさえ乾燥しやすいかかとの厚い角層から水分が容赦なく奪われ、皮膚の弾力性が失われます4
  2. 物理的刺激 (圧力と摩擦): 歩行時、かかとには体重の約70%もの圧力がかかると言われています8。この巨大な圧力がかかとの内部にある脂肪体を横に押し広げ、水分の抜けた柔軟性のない角質を無理やり伸展させることで、微細な亀裂(フィッシャー)が生じます。肥満、長時間の立ち仕事、そしてかかとを適切に支えないサンダルやかかとの開いた靴の着用は、この物理的ストレスを著しく増大させる要因となります7
  3. 皮膚のターンオーバーの異常: 加齢、血行不良、ビタミンEや亜鉛といった栄養素の不足は、古い角質が自然に剥がれ落ちて新しい皮膚に生まれ変わるサイクル(ターンオーバー)を遅らせます。これにより、排出されるべき硬く古い角質がどんどん蓄積(角質肥厚)してしまい、皮膚はさらに厚く、硬く、乾燥し、ひび割れやすい状態に陥ってしまうのです16

病態の核心:「ひび割れの悪循環」

これらの3つの要因は独立して存在するのではなく、互いに影響し合い、自己増殖的な「悪循環」を形成します。このメカニズムを理解することが、治療戦略を立てる上で極めて重要です。

ひび割れの悪循環のメカニズム:
1. 乾燥により、角層の柔軟性が失われる。
2. そこに歩行などの圧力が加わり、柔軟性を失った硬い角層に亀裂が生じる。
3. 体は微小な傷と継続的な摩擦から皮膚を守ろうとする防御反応として、さらに角質を厚くする(角質肥厚)。
4. さらに厚くなった角質は、内部まで水分がより一層届きにくく、柔軟性もさらに低下するため、より深く、痛みを伴う亀裂が生じやすくなる。
この悪循環をどこかで断ち切ることが、かかとのひび割れ治療の鍵となります。髙山かおる医師をはじめとする専門家も、このサイクルの理解の重要性を指摘しています3

鑑別診断:ただの乾燥か、それとも病気か?

効果的なセルフケアを始める前に、より深刻な医学的問題の可能性を排除することが、読者の皆様の安全を守る上で最も重要です。特に、かかとのひび割れと非常によく似た症状を示す皮膚疾患があり、注意が必要です。

最重要鑑別疾患:角化型足白癬(かかと水虫)

これは日本の読者にとって極めて重要な情報であり、本記事が最も強調したい点の一つです。多くの人が「かかとの乾燥」と誤解しているケースが後を絶ちません。

  • 症状の特徴: このタイプの水虫(白癬菌という真菌が原因)は、多くの人が水虫と聞いてイメージする「かゆみ」を伴わないことが最大の特徴です。そのため、多くの人が単なる乾燥や加齢による肌荒れだと誤認し、何年も放置してしまうケースが少なくありません5
  • 誤った対処のリスク: もし水虫が原因である場合、保湿剤のみを塗り続けても決して治癒しません。それどころか、真菌の増殖にとって好ましい湿潤な環境を提供してしまい、症状を悪化させる可能性があります。さらに、未診断の水虫にステロイド外用薬(湿疹やかぶれの薬に含まれることがある)を使用すると、菌の活動を抑える免疫機能が低下し、症状が急激に悪化することがあるため非常に危険です16
  • 水虫を疑うべきサイン: 記事では、読者がセルフチェックできるリストを提供します。以下の項目に一つでも当てはまる場合は、自己判断を中止し、専門医の受診を強く推奨します。
    • 夏になっても治らない、または悪化する7
    • 保湿ケアを徹底しても一向に改善しない5
    • 皮膚が粉を吹いたようにカサカサしている5
    • 片足だけに症状が強い、または左右で症状の程度が著しく異なる5
  • 取るべき行動: 水虫が少しでも疑われる場合は、絶対に自己判断せず、必ず皮膚科を受診してください。皮膚科では、簡単な検査(KOH直接鏡検法など)で真菌の有無を迅速に確認できます5

その他の基礎疾患

かかとのひび割れは、他の全身性の病気が原因で引き起こされたり、悪化したりすることもあります。

  • 糖尿病: これは極めて重要な注意点です。糖尿病患者の方のかかとのひび割れは、単なる皮膚の問題では済みません。神経障害(感覚が鈍くなる)や血行不良により、ひび割れから細菌が侵入しても気づきにくく、重篤な感染症、潰瘍、さらには壊疽(組織の壊死)につながる非常に深刻なリスクを伴います。髙山かおる医師もこの危険性を強く警告しており3、糖尿病の診断を受けている方は、軽微なかかとの変化であっても主治医や皮膚科医に相談することが不可欠です。
  • 甲状腺機能低下症、乾癬、アトピー性皮膚炎: これらの全身性または皮膚科的疾患も、皮膚の乾燥や角化異常を引き起こし、かかとのひび割れの原因となる可能性があります13

提案:明確な判断基準を示すための比較表

読者の皆様が次に取るべき行動を安全に判断できるよう、シンプルで視覚的なツールを提供します。これは「Helpfulness(有用性)」を最大化し、E-E-A-Tを強化する上で非常に効果的です。

表1:かかとのひび割れ:セルフケアか?皮膚科か?
特徴 単純な乾燥によるひび割れ 角化型足白癬(水虫)の疑い 他の病気の疑い
季節性 乾燥する冬に悪化しやすい7 夏でも改善しない、または悪化する7 通年で持続する
保湿への反応 継続的な使用で改善が見られる7 保湿してもほとんど改善しない5 保湿だけでは改善しないことが多い
かゆみ 通常はないか、あっても軽度7 無いことが多い(最重要ポイント)5 症状による
見た目 両足対称的、乾燥、亀裂7 粉を吹く、片足だけがひどい場合がある5 他の皮膚症状や全身症状を伴う(例:糖尿病、甲状腺疾患など)
推奨される行動 セルフケアを続ける 必ず皮膚科を受診する 必ず医師・皮膚科医に相談する

科学的根拠に基づく治療法:階層的アプローチ

治療法は、基本的な生活習慣の改善から専門的な医療介入まで、ピラミッド型の階層構造で提示します。まずは土台となる第一層から始め、改善が見られない場合に段階的にアプローチを強化していくことが重要です。

第1層:基本的な生活習慣と予防

薬を塗る前に、まずは日々の生活習慣を見直すことが、ひび割れの予防と改善の土台となります。

  • 入浴習慣の見直し: 熱いお湯での長風呂は、肌に必要な皮脂まで奪い去り、乾燥を助長します。入浴は40℃前後のぬるま湯で5~10分程度に留めましょう。体を拭く際も、ゴシゴシこするのではなく、タオルで優しく押さえるように水分を吸い取ることが大切です。この方法は、米国皮膚科学会(AAD)と日本の情報源で一貫して推奨されています10
  • 靴の選択: かかとの部分が開いているサンダルやミュールは、歩行時にかかとの脂肪体が横に広がり、皮膚に過剰なストレスを与えます。クッション性が高く、足に合ったサイズの、かかとがしっかりと覆われた靴を選ぶことが重要です7
  • 血行促進: 定期的な運動や、入浴後のマッサージは、末梢(体の末端)への血流を改善し、皮膚のターンオーバーを正常化させ、治癒を促進する助けとなります18
  • 栄養と水分補給: 体の内側からのケアも忘れてはなりません。十分な水分摂取を心がけるとともに、皮膚の健康維持に不可欠なビタミンE(血行促進)や亜鉛(皮膚の新陳代謝を助ける)といった栄養素をバランス良く摂取することが推奨されます6

第2層:外用薬の科学 – 保湿剤と角質溶解薬

ここでの核心は、「まず保護・修復、次に軟化」という安全な原則を提示することです。多くの海外情報源は尿素などの角質溶解薬を第一に推奨しますが11、日本の複数の情報源は、痛みを伴う深い亀裂がある場合、それらの成分が刺激(しみる)となる可能性があると警告しています5。この矛盾を解消し、より安全で信頼性の高いアドバイスを提供します。

ステージ1:痛みを伴う深い亀裂の保護と修復

ひび割れが深く、痛みや出血がある場合は、角質を柔らかくする前に、まず傷を保護し、皮膚自身の治癒力をサポートすることが最優先です。

  • ワセリン: 最も安全かつ効果的な保護剤(Occlusive)です。皮膚表面に物理的な膜(油膜)を形成して水分の蒸発を防ぎ、外部の刺激から亀裂を保護することで、皮膚が本来持つ自然治癒力を最大限に引き出します。アレルギー反応などの刺激性が極めて低く、非常に安全な選択肢です10
  • 液体絆創膏: 深い亀裂を物理的に密封し、水や細菌の侵入を防ぎながら、痛みを軽減し、治癒を早めるのに有用です。米国皮膚科学会(AAD)も推奨する効果的な方法です11

ステージ2:硬くなった角質の軟化(亀裂が閉じた後)

痛みのある深い亀裂が治癒し、皮膚が閉じた段階で、次なるステップとして硬く厚くなった角質(角質肥厚)を柔らかくするケアに移行します。

  • 尿素 (Urea): 最も多くの科学的研究があり、世界中の皮膚科医に広く推奨されている有効成分です。尿素は、角質細胞同士の結合を緩めて硬い角質を溶解する作用(Keratolytic)と、水分を強力に引き寄せて角層内に保持する作用(Humectant)という二重のメカニズムを持ちます。AADのガイドラインでは、10~25%の濃度の製品が効果的であると示されています3
  • ヘパリン類似物質: 日本で非常に人気のある成分で、医療用医薬品としても広く処方されています。高い保湿力に加えて、局所の血行を促進する作用も併せ持ち、ターンオーバーの乱れにもアプローチできるのが特徴です8
  • サリチル酸、アルファヒドロキシ酸(AHA): 尿素と同様に、古い角質を剥がしやすくする効果的な角質溶解成分として知られています11

提案:有効成分ガイド表

この表は記事の科学的な核となり、専門性と信頼性を一目で示します。読者が自分の症状に合った市販薬を賢く選ぶための羅針盤となります。

表2:かかとのひび割れ治療薬の有効成分ガイド
成分 分類 作用機序 最適な症状 科学的根拠レベル 注意点
ワセリン 保護剤 (Occlusive) 物理的な膜で水分の蒸発を防ぐ 痛みを伴う深い亀裂(ステージ1) 高(臨床ガイドライン)10 油分が多くベタつきやすい
尿素 角質溶解薬, 保湿剤 角質の結合を緩め、水分を保持する 硬く厚い角質(ステージ2) 高(システマティックレビュー, ガイドライン)321 深い亀裂にはしみる可能性がある5
ヘパリン類似物質 保湿剤, 血行促進剤 高い水分保持能、局所の血流を改善 全般的な乾燥、維持期 中(臨床実践)8 刺激が非常に少ない
サリチル酸 角質溶解薬 古い角質を剥がし、皮膚を柔らかくする 硬く厚い角質(ステージ2) 中(ガイドライン)11 刺激を感じることがある
ビタミンE (トコフェロール) 抗酸化剤, 血行促進剤 血行を促進し、皮膚の健康をサポート 補助的な成分として 低(一般的健康情報)8 他の保湿剤と併用されることが多い

第3層:物理的な角質ケアの注意点

多くの人がやりがちな物理的な角質ケアですが、方法を間違えると症状を悪化させる「ひび割れの悪循環」を加速させてしまいます。ここでの原則は「優しく、頻繁に行わない」です。軽石ややすりで毎日ゴシゴシと強く削ることは、皮膚の防御反応を過剰に刺激し、かえって角質を厚くするため、厳禁であることを強調します3

正しい手順

  1. まず入浴や足浴で10分ほど足を温め、皮膚を十分に柔らかくします22
  2. タオルで水分を軽く拭き取った後、目の細かいやすりを一方向に優しく動かして角質を整えます。往復させると皮膚を傷つけやすくなります。(一部には、削りすぎを防ぐために乾いた状態でのケアを推奨する意見もありますが、まずは皮膚を柔らかくする方が安全です3)。
  3. ここでの目的は、角質を完全に取り除くことではなく、表面の凹凸を「整える」ことであると心得るべきです9
  4. ケアの後は、必ず保湿剤(尿素やヘパリン類似物質などを含むクリーム)をたっぷりと塗布し、水分が逃げないように蓋をします。靴下を履いて寝るとさらに効果的です17
  5. 頻度は週に1回程度までとし、症状の改善に伴い徐々に間隔をあけていくのが賢明です3

第4層:皮膚科を受診すべき時

セルフケアは有効ですが、限界もあります。以下のサインが見られる場合は、ためらわずに専門家である皮膚科医の診察を受けてください。

  • 前述の「鑑別診断の比較表(表1)」で水虫や他の病気が疑われるサインがある場合。
  • 痛みが強く、歩行に支障をきたす場合。
  • 感染の兆候(赤み、強い腫れ、熱感、膿など)が見られる場合。
  • ひび割れから出血がある場合。
  • 2~4週間、本記事で紹介した丁寧なセルフケアを実践しても全く改善が見られない場合1

皮膚科では、高濃度の尿素軟膏やサリチル酸ワセリンといった処方箋薬のほか、抗真菌薬(水虫の場合)、デブリドマン(専門家による安全な角質の切除)、テーピングによる亀裂の固定など、より専門的な治療を受けることができます13

日本で入手可能な市販製品の選び方

科学的な原則を理解した上で、次は実際にどの製品を選べば良いのかを見ていきましょう。ここではランキング形式ではなく、あなたの症状の「ステージ」に合わせて、有効成分から製品を選ぶための教育的なガイドを提供します。薬局やドラッグストアで自信を持って製品を選択できるようになりましょう14

ステージ1(保護・修復期)向け:ワセリンベースの保護軟膏

深いひび割れがあり、しみるような痛みを感じる場合は、まず「保護」が最優先です。「ワセリン」や「白色ワセリン」を主成分とする、添加物の少ないシンプルな製品を選びましょう。製品の成分表示を確認し、有効成分がワセリンであることを確かめてください。

ステージ2(角質軟化期)向け:尿素ベースのクリーム

痛みが治まり、硬くなった角質を柔らかくしたい段階では、「尿素」を有効成分とする製品が第一選択となります。日本の市販薬では尿素10%または20%配合の製品が主流です。髙山かおる医師が監修する情報サイトでも、尿素の有効性が強調されています3。製品パッケージの「尿素10%配合」「尿素20%配合」といった表示を確認しましょう。硬さが特に気になる場合は20%配合のものがより効果的ですが、肌が敏感な方は10%から試すのが良いでしょう。

維持・予防期向け:ヘパリン類似物質やビタミン配合クリーム

症状が改善した後、良い状態を維持するためや、乾燥の季節の予防策としては、保湿と血行促進を主眼に置いた製品が適しています。「ヘパリン類似物質」や「ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)」、「ビタミンA」などが配合されたクリームを選びましょう。これらの成分は、日々の保湿ケアとして継続的に使用するのに適しています8

よくある質問 (FAQ)

なぜ冬になるとかかとのひび割れが悪化するのですか?
冬は空気が乾燥しており、湿度が低いため、皮膚から水分が奪われやすくなります。特にかかとは皮脂腺がなく、もともと乾燥しやすいため、外気の乾燥の影響を強く受けます。さらに、暖房の使用も室内の乾燥を加速させ、かかとの水分をさらに奪うため、ひび割れが悪化しやすくなります4
かかとの角質ケアは、乾いた状態と濡れた状態、どちらで行うべきですか?
これには専門家の間でも意見が分かれることがありますが、より安全なのは「皮膚を柔らかくしてから優しく行う」方法です。入浴や足浴で皮膚を10分程度ふやかすと、角質が柔らかくなり、最小限の力で余分な角質を整えることができます22。乾いた状態で行うと、どこまで削ればよいかの判断が難しく、健康な皮膚まで傷つけてしまうリスクがあります。いずれの場合も、削りすぎは厳禁であり、ケア後の徹底した保湿が不可欠です3
尿素クリームを塗るとしみるのですが、使い続けても大丈夫ですか?
痛みを伴う深いひび割れや、目に見える傷がある場合に尿素クリームを塗ると、その刺激でしみることがあります5。これは異常ではありませんが、痛みを我慢して使い続ける必要はありません。このような場合は、本記事で提案した「まず保護、次に軟化」の原則に従い、まずはワセリンなどの低刺激な保護剤で傷が治るのを待ちましょう。痛みがなくなってから、尿素クリームの使用を再開してください。
かかと水虫は家族にうつりますか?
はい、うつります。水虫の原因である白癬菌は、剥がれ落ちた角質の中に潜んでいます。家庭内に水虫の人がいると、床やバスマット、スリッパなどを介して他の家族に感染する可能性があります。かかと水虫はかゆみがないため、感染源であることに気づきにくいのが問題です。ご家族に同様の症状の方がいる場合や、ご自身の症状が水虫のサインに当てはまる場合は、家族全員の健康のためにも皮膚科を受診することが重要です519
保湿クリームはどのくらいの量を、いつ塗るのが最も効果的ですか?
保湿クリームを塗る最も効果的なタイミングは、入浴後10分以内です。入浴後の皮膚は水分を最も吸収しやすいゴールデンタイムですが、同時に水分が最も蒸発しやすい時間でもあります。量は、人差し指の第一関節の長さ分(約0.5g)を片足の裏全体に塗るのが目安です。クリームを手に取り、かかとを中心に、ひび割れの溝を埋めるように優しく塗り込んでください。今井亜希子医師も、十分な量を塗ることの重要性を指摘しています8

結論

かかとのひび割れは、多くの人が経験するありふれた悩みですが、その背後には科学的なメカニズムと、時には見過ごせない医学的な問題が隠されています。本記事で解説したように、治療の鍵は、ご自身の症状が単なる乾燥によるものなのか、それとも水虫などの疾患が隠れていないかを正しく見極めることから始まります。そして、「乾燥」「圧力」「ターンオーバーの乱れ」という3つの要因が形成する「悪循環」を断ち切るために、生活習慣の見直し、そして「まず保護、次に軟化」という安全で効果的な階層的アプローチを粘り強く実践することが不可欠です。この記事が、あなたの長年のかかとの悩みに対する明確なロードマップとなり、自信を持ってすべすべのかかとを取り戻すための一助となることを心から願っています。もし少しでも不安や疑問が残る場合は、決して一人で悩まず、信頼できる皮膚科の専門医にご相談ください。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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