毛孔性苔癬(二の腕のブツブツ)とは?原因・症状から市販薬・皮膚科治療まで専門医が科学的根拠に基づき徹底解説
皮膚科疾患

毛孔性苔癬(二の腕のブツブツ)とは?原因・症状から市販薬・皮膚科治療まで専門医が科学的根拠に基づき徹底解説

二の腕や太ももに広がる、まるでサメ肌のようなザラザラとした肌触り。多くの人が「このブツブツは何だろう?」と悩みながらも、病気だと認識せずに過ごしているかもしれません1。その正体は「毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)」または「毛孔性角化症(もうこうせいかくかしょう)」と呼ばれる、非常によくある皮膚の状態です2。これは良性で他人に感染する心配はありませんが、特に肌を見せる機会が増える季節には、見た目に関する悩みやストレスの原因となり得ます3

毛孔性苔癬そのものは命にかかわる病気ではありませんが、「人前で腕を出したくない」「パートナーや家族にも見せたくない」といった気持ちにつながり、生活の質(QOL)や自己イメージに大きく影響することがあります9。長年「体質だから仕方ない」とあきらめている方も多く、正しい情報にたどり着けず、自己流ケアでかえって悪化させてしまうケースも少なくありません11

本記事は、毛孔性苔癬に関する最新の科学的根拠に基づき、その根本原因から家庭でできるセルフケアや市販薬による対策、皮膚科で受けられる専門的な治療法に至るまでを、段階的に整理したガイドです。完全に「治す(キュア)」ことよりも、長期的に上手に付き合いながら「目立ちにくく整える(ケア)」ことを現実的な目標とし、日常生活で実践しやすい形で解説します。

本記事の内容は、厚生労働省や日本皮膚科学会、海外の皮膚科専門学会、査読付き論文などの信頼できる情報をもとに、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が日本の生活者向けにわかりやすく整理したものです。オンライン上で広まりやすい「ビタミン不足だけが原因」「強くこすれば治る」といった誤解にも触れながら、「自宅でできること」と「医療機関で相談したほうがよいサイン」を切り分けて説明していきます。

まずは、「毛孔性苔癬とは何か」「どの程度よくある状態なのか」といった全体像をつかむところから始めましょう。

要点まとめ

  • 毛孔性苔癬は、遺伝的要因が大きく、毛穴に古い角質(ケラチン)が詰まることで発生する良性の皮膚の状態です4
  • 主な症状は二の腕、太もも、お尻、顔の頬などに現れる、ザラザラとした肌触りの小さなブツブツで、「サメ肌」「鶏の皮」に例えられることがあります5
  • 治療の基本は、毎日の徹底した「保湿」と、尿素やサリチル酸などを含む製品による穏やかな「角質ケア」の組み合わせです6714
  • 市販薬でも効果的な製品が多くありますが、より確実な効果や赤み・色素沈着まで含めた改善を求める場合は、皮膚科での保険診療や自由診療(ケミカルピーリング、レーザー治療、ダーマペンなど)が選択肢となります5821
  • 強くこする、ブツブツをつぶす、自己判断でビタミンAサプリを大量に飲むといった自己流ケアは、色素沈着や別の皮膚トラブルにつながるおそれがあり避けるべきです612
  • 赤み・かゆみ・痛み・熱感・滲出液(じんしゅつえき)などが目立つとき、急に範囲が広がったとき、小児や妊娠中の方で心配な症状があるときは、毛孔性苔癬だけと決めつけず、早めに皮膚科で相談することが推奨されます511

第1章:毛孔性苔癬(毛孔性角化症)とは何か?

毛孔性苔癬は、多くの人々、特に思春期の若者や若年成人に影響を与える一般的な皮膚の状態です。世界的には、思春期の若者の50~80%、成人の約40%がこの状態を経験していると推定されています9。一方で、日本の皮膚科外来における全国調査では、毛孔性苔癬は受診理由の上位20位には入っていません10。これは、多くの人が医療機関を受診するほどの深刻な問題とは考えていないか、あるいは、見た目の悩みであっても「我慢するしかない」と思い込んでいる可能性を示しています。

近年のレビューでは、毛孔性苔癬は「命に関わらないものの、見た目や触感が気になることで心理的な負担になりやすい状態」として、QOLの観点からも注目されています9。そのため、「放置すべきか」「どこまで治療してよいか」を自分なりに整理しておくことが大切です。

1.1. 皮膚で何が起きているのか?毛穴の角化異常

毛孔性苔癬の核心にあるのは、毛穴の「角化異常」です。通常、私たちの皮膚は古い角質を自然に剥がれ落とします(ターンオーバー)。しかし、毛孔性苔癬の人の皮膚では、このプロセスがうまくいかず、ケラチンというタンパク質が過剰に生成され、毛穴の出口に蓄積してしまいます4。これが硬い「角栓(かくせん)」となり、毛穴を塞いでしまうのです。

これを分かりやすく例えるなら、「一本一本の毛穴に、小さな硬いフタが詰まっている」ような状態です。そのフタの周りにわずかな炎症や乾燥が加わることで、肌表面がザラザラと感じられるようになります。この状態は良性であり、ウイルスや細菌による感染症ではないため、他人にうつる心配はありません2

一方で、角栓の上から摩擦や乾燥が繰り返されると、周囲の皮膚が赤くなったり、かゆみを伴ったり、治ったあとに色素沈着が残ったりすることがあります5。そのため、「無害だから放置してよい」と割り切るのではなく、「肌を守りながら目立たなくしていく」という発想が重要です。

1.2. 症状の現れ方:種類と特徴

毛孔性苔癬の最も典型的な症状は、触るとザラザラ、ブツブツとした感触で、「サメ肌」や「鶏の皮」に例えられることがあります11。これらのブツブツは、主に以下の部位に現れます。

  • 二の腕の外側(最も一般的)5
  • 太もも5
  • お尻5
  • 顔の頬(特に子供に見られる)5

肌の色によって見え方も変わります。肌色や白っぽいブツブツだけが目立つ人もいれば、ブツブツの周りが赤くなって「プツプツした赤み」として気になる人もいます。乾燥が強いときや、入浴後・運動後など血行がよくなるタイミングで一時的に赤みが強くなることもあります11

日本の皮膚科専門医であるこばとも皮膚科の小林智子医師などは、臨床的な特徴に基づき、毛孔性苔癬を主に2つのタイプに分類しています5

  • 白色毛孔性苔癬(alba型): 赤みを伴わず、肌色または白色のブツブツが特徴です。炎症が少ないタイプで、触ったときのザラザラ感が主な悩みになります。
  • 紅色毛孔性苔癬(rubra型): 毛穴の周りに炎症を伴い、赤いブツブツとして現れます。見た目がより目立つため、半袖やノースリーブを避けるなど、生活への影響が強くなりやすいタイプです。

まれに、これらのブツブツが治った後に、わずかな色素沈着や瘢痕(はんこん)を残す「萎縮性(いしゅくせい)」のタイプも存在します4。特に長年つぶしたり、強くこすったりしていた部位では、毛穴の開きや小さなへこみが残ることがあるため、早めにケアの方向性を整えることが大切です。

1.3. どのような人に多い?年代・性別・家族歴

毛孔性苔癬は、思春期前後から20代にかけて症状が目立ちやすく、30代以降になると自然に目立たなくなっていくことが多いと報告されています915。男女差はそれほど大きくありませんが、「肌を見せる機会」や「見た目への意識」の違いから、女性のほうが悩みとして認識しやすい傾向があります3

家族内に同じようなブツブツがある人がいるケースも多く、「親やきょうだいも二の腕がザラザラしている」という訴えは典型的です。遺伝要因が強いことから、「頑張ってケアしているのに完全にはなくならない」と感じることもありますが、これは「自分の努力不足」ではなく、「体質的に角質がたまりやすい」という背景によるものです4

このような背景を知っておくと、「一晩でつるつるにする」「1本のクリームですべて解決する」といった宣伝文句に振り回されにくくなり、現実的なゴール設定がしやすくなります。

1.4. 毛孔性苔癬と間違えやすい疾患

見た目が似ているために、毛孔性苔癬と混同されやすい皮膚疾患もいくつかあります。

  • ニキビ・毛嚢炎: 毛穴の部分が赤く腫れ、痛みや膿を伴うことがあります。細菌感染が関与していることがあり、抗菌薬が必要になる場合もあります11
  • アトピー性皮膚炎・湿疹: 広い範囲に赤みやかゆみが出て、掻き壊しをきっかけにザラザラ感が残ることがあります7
  • 魚鱗癬(ぎょりんせん)などの角化症: からだ全体の乾燥や鱗状のフケのような皮むけを伴うことが多く、毛孔性苔癬とは治療アプローチが異なります9

赤み・かゆみ・痛み・熱感が強い場合や、短期間で急に悪化した場合、「毛孔性苔癬だと思っていたけれど、実は別の病気が隠れていた」ということもあり得ます11。そのため、自己判断だけでケアを続けるのではなく、気になる点があれば一度皮膚科で確認してもらうと安心です。

第2章:毛孔性苔癬の根本原因と悪化させる要因

毛孔性苔癬は、「遺伝的な体質」と「環境・生活習慣」が組み合わさって現れる状態と考えられています49。ここでは、根本原因と悪化させる要因を整理し、「どこまでが自分で変えられる部分なのか」を明らかにしていきます。

2.1. 最も大きな原因は「遺伝」

毛孔性苔癬の最も強力な原因は遺伝的素因です4。多くの場合、常染色体優性遺伝という形式で親から子へ受け継がれることが知られています4。これは、片方の親がこの素因を持っていれば、子どもにも現れる可能性があることを意味します。

近年の研究では、ABCA12など、皮膚のバリア機能や脂質輸送に関わる遺伝子との関連も指摘されています4。ただし、特定の遺伝子が見つかったからといって、検査を受けたり、遺伝子そのものを「治療」したりする段階ではありません。現時点では、「角質がたまりやすい体質」という前提を受け入れたうえで、環境やケアの工夫で症状をコントロールしていくことが現実的なアプローチです。

2.2. 関連が指摘される疾患と体質

毛孔性苔癬は、特定の体質や他の皮膚疾患と密接に関連していることが分かっています。

  • アトピー性皮膚炎と乾燥肌: 最も強い関連性が見られるのが、アトピー性皮膚炎や乾燥肌(乾皮症)です12。これらの状態では皮膚のバリア機能が低下しており、角化異常が起こりやすくなります。日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも、皮膚バリア機能を維持するための保湿ケアの重要性が繰り返し強調されており、この原則は毛孔性苔癬のケアにも直接応用できます7
  • 肥満とホルモンバランス: 肥満や糖尿病、そして妊娠などホルモンバランスが大きく変動する時期に、毛孔性苔癬が悪化することが報告されています11。摩擦が起きやすい部位(太ももの内側など)にブツブツが増えるケースもあり、「体重・ホルモン・摩擦」が組み合わさることで症状が目立ちやすくなると考えられています。

2.3. 【専門家の視点】ビタミン不足は本当に関係あるのか?

インターネット上では「ビタミンA不足が原因」という情報が散見されますが、これは専門的な視点からは注意が必要です。確かに、重度のビタミンA欠乏症は「毛嚢性角化症」という類似の症状を引き起こすことがありますが、飽食の現代日本において、通常の食事をとっている人でビタミンA不足が毛孔性苔癬の直接的な原因となることは極めて稀です13

より正確な関係性は、治療薬としての「ビタミンA誘導体(レチノイド)」の有効性にあります。レチノイドは皮膚の細胞のターンオーバーを調整する働きがあるため、毛孔性苔癬の治療薬として用いられます6。つまり、「不足しているから補う」のではなく、「薬理作用を期待して使用する」という関係性です。

自己判断でビタミンAサプリメントを過剰に摂取すると、肝機能障害や胎児への影響(妊娠中)などのリスクがあるため、サプリや内服薬による「ビタミンA治療」を独自に行うことは絶対に避けてください13。レチノイド外用薬や内服薬を検討する場合は、必ず皮膚科医と相談のうえで使用しましょう。

2.4. 生活習慣・環境要因(摩擦・乾燥・季節など)

毛孔性苔癬は体質がベースにありますが、日常生活の習慣や環境によって症状の出方が大きく変わります。

  • 摩擦: ナイロンタオルやボディブラシで強くこする習慣、きつい衣類(ぴったりしたジーンズやレギンスなど)は、ブツブツの部分に微細な傷を繰り返しつけ、赤みや色素沈着を悪化させます11
  • 乾燥: 空気が乾燥する季節や、エアコンの効いた室内で長時間過ごすと、バリア機能が低下し、ザラザラ感が増しやすくなります7
  • 気温・湿度の変化: 湿度の高い夏には症状が自然に軽快することがある一方で、空気が極度に乾燥する冬には悪化しやすいと報告されています15

これらの要因は、すぐに完全に避けることは難しいかもしれませんが、「ナイロンタオル→柔らかいタオルに変える」「長風呂を控え、ぬるめのシャワーにする」「入浴後5分以内の保湿を習慣化する」といった具体的な行動で、少しずつ負担を減らすことができます714

2.5. 心理的な影響とQOL

毛孔性苔癬は医学的には良性ですが、「人に見られたくない」「写真に写るのが嫌」といった心理的な負担につながることがあります。海外のレビューでも、毛孔性苔癬が自己イメージや自尊感情に影響し得ることが指摘されています9

日本では、「肌を見せる機会が多い職業」「温泉文化」「夏のファッション」などの影響もあり、「命にかかわる病気ではないのに、相談してよいのだろうか」と悩む人が少なくありません。しかし、見た目の悩みもれっきとした健康問題の一部です。自己肯定感や生活のしやすさに影響していると感じる場合は、「こんな軽いことで…」と思わず、遠慮なく皮膚科に相談してかまいません。

第3章:自宅でできるセルフケアと市販薬(OTC医薬品)の選び方

幸いなことに、毛孔性苔癬の症状の多くは、適切なホームケアによって大幅に改善することが可能です。米国皮膚科学会(AAD)も、セルフケアの重要性を強調しており、保湿とやさしい角質ケアを組み合わせたアプローチが推奨されています614

3.1. 日常ケアの3つの基本原則

  1. 優しく洗う: ナイロンタオルなどでゴシゴシ擦ることは、炎症を悪化させ、かえって色素沈着を引き起こす原因となるため厳禁です11。たっぷりの泡で優しく撫でるように洗いましょう。
  2. 徹底的に保湿する: これが最も重要なステップです。皮膚の乾燥は角化異常を悪化させます。日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されているように、入浴後5分以内の、肌がまだ湿っているうちに保湿剤を塗布するのが最も効果的です714。尿素やヘパリン類似物質を含む製品が特に推奨されます7。日本の文化である温泉や長風呂は、皮膚を乾燥させることがあるため、入浴後の保湿は特に念入りに行う必要があります7
  3. 角質を穏やかに除去する: 物理的なスクラブではなく、化学的な角質除去成分(ケラトリティック)を含む製品を選びましょう14。これにより、肌への刺激を最小限に抑えながら、毛穴の詰まりを優しく解消することができます。

実際のケアルーティンとしては、「洗う→水分を拭き取る→5分以内に保湿→週に数回、角質ケア成分を含むアイテムを重ねる」という流れを、生活リズムに合わせて無理のない範囲で繰り返すことが大切です。1週間で劇的に変わることは少ないものの、数か月続けることで「触ったときのザラザラ感が違う」と感じる人が多いと報告されています614

3.2. 日本のドラッグストアで買える!毛孔性苔癬におすすめの市販薬

日本のドラッグストアでは、毛孔性苔癬に有効な成分を含む優れた市販薬(OTC医薬品)が数多く販売されています。ここでは、専門家の視点から選んだ代表的な製品を比較し、その特徴と選び方を解説します8。いずれの製品も、添付文書に記載された用法・用量を守り、刺激やかぶれが出た場合には使用を中止して医師や薬剤師に相談してください。

日本の市販薬(OTC)製品比較表
商品名 主な有効成分 主な効果 価格帯の目安 こんな人におすすめ 公式情報
ニノキュア (NinoCure) 尿素 (20%)
酢酸トコフェロール
グリチルリチン酸モノアンモニウム
硬い角質を柔らかくし、血行を促進し、炎症を鎮める。 ¥1,200 – ¥1,500 ブツブツに赤みを伴う方(紅色毛孔性苔癬)。 製品ページ16
ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム 尿素 (20%) 高い角質軟化作用で、硬くなった皮膚を柔らかくする。 ¥1,000 – ¥1,800 赤みはなく、とにかく肌のザラザラ・ゴワゴワが気になる方。 製品ページ17
メンソレータム ザラプロA 尿素 (10%)
ビタミンA
ジフェンヒドラミン
グリチルリチン酸二カリウム
角質軟化、ターンオーバー促進、かゆみや炎症の抑制といった多角的なアプローチ。 ¥1,300 – ¥1,600 ブツブツ、赤み、時々かゆみも感じる方。 製品ページ18
ヒルマイルドクリーム (Hirumild) ヘパリン類似物質 高い保湿力で皮膚のバリア機能を修復し、乾燥を防ぐ。 ¥1,500 – ¥2,000 特に肌が乾燥しやすく敏感な方、アトピー素因のある方。 製品ページ8
ザーネクリーム (Sahne Cream) 酢酸d-α-トコフェロール (天然型ビタミンE)
(かつてはビタミンAも配合)
血行を促進し、肌荒れを防ぎ、皮膚に潤いを与える。 ¥600 – ¥1,100 刺激の少ない製品で、全体的な肌の滑らかさを維持したい方。 製品ページ19

これらの製品を選ぶときは、「どれが一番強そうか」ではなく、「今の自分の肌状態(赤み・かゆみ・乾燥の程度)に合っているか」を基準に考えることが大切です。特にビタミンA配合製品は、妊娠中・授乳中の使用について注意が必要な場合があるため、不安があれば必ず医師や薬剤師に確認しましょう6

3.3. 全身スキンケアルーティンの組み立て方

毛孔性苔癬のケアは、「その部位だけを特別扱いする」というより、「全身のスキンケアの一部として習慣化する」と考えると続けやすくなります。以下は一例です。

  • 入浴時: ボディソープは低刺激なものを選び、ナイロンタオルではなく手や柔らかいタオルで泡をのせて洗う。
  • 入浴後5分以内: タオルで軽く押さえるように水分を拭き取り、二の腕・太もも・お尻など気になる部位を中心に、保湿剤を十分な量で全体に伸ばす。
  • 週数回: 尿素やサリチル酸など角質ケア成分を含むクリームを、様子を見ながら追加する(最初は少量・狭い範囲から)。
  • 日中: 乾燥しやすい季節は、衣服の上からでも保湿スプレーなどでこまめに保湿を意識する。

「突然すべてを完璧にやる」のではなく、「まずは入浴後の保湿だけは毎日続ける」といったように、優先順位の高い習慣から一つずつ定着させていくと、挫折しにくくなります。

3.4. セルフケアのよくあるNG例

自己流ケアのなかには、短期的にはすっきりしたように感じても、長期的には悪化につながるものもあります。

  • ボディスクラブやピーリング石けんで毎日のようにゴシゴシこする。
  • ブツブツを爪で押しつぶしたり、角栓を無理に押し出したりする。
  • 複数の高濃度ピーリング製品やレチノイド製品を同時に使い始める。
  • 海外のSNS情報だけを頼りに、医師の指示なく内服レチノイドやサプリを試す。

これらは一時的に「角質が取れた」ように見えることがありますが、炎症や色素沈着、傷跡の原因となるリスクが高く、安全性の観点から推奨されません612。自己判断でケアをエスカレートさせる前に、一度立ち止まり、「肌を守る方向のケア」に切り替えることが重要です。

第4章:皮膚科での専門的な治療法(保険診療と自由診療)

セルフケアで改善が見られない場合や、より積極的な治療を望む場合は、皮膚科専門医への相談が推奨されます。日本の医療制度では、治療法は大きく「保険診療」と「自由診療」に分けられます。ここでは、それぞれの特徴と、受診時に押さえておきたいポイントを整理します511

4.1. 保険適用の治療:基本となる塗り薬

日本の国民健康保険が適用される治療は、主に外用薬(塗り薬)によるものが中心となります。これらは治療の基本であり、多くの患者に最初に処方されます。

  • 角質溶解薬: 尿素を20%以上含むクリーム(例: パスタロン軟膏)や、サリチル酸ワセリン軟膏が処方され、硬くなった角質を柔らかくします11
  • 保湿剤: ヘパリン類似物質を含む保湿剤(例: ヒルドイドローション・クリーム)が、皮膚の乾燥を防ぎバリア機能を高めるために処方されます11
  • ビタミンD3外用薬: 活性型ビタミンD3誘導体を含む軟膏(例: オキサロール軟膏)が、皮膚のターンオーバーを調整する目的で処方されることがあります20

これらの外用薬は、「1〜2週間で劇的に変わる」というより、「数か月かけて少しずつザラつきを軽くしていく」イメージで使うことが多いです11。赤みや刺激が出た場合には塗る回数を減らしたり、部位を限定したりするなど、医師と相談しながら調整していきます。

4.2. 自由診療:より早く、確実な効果を求める方へ

自由診療(保険適用外)は、より高い審美的な改善を求める患者のための選択肢です。これらの治療は、一般的な健康情報サイトでは十分にカバーされていないことが多く、本稿の重要な差別化要因となります21。日本の高い美意識を背景に、医学的に無害であっても見た目の改善を強く望む声に応えるものです3

日本の美容皮膚科における専門的治療法の比較
治療法 仕組み 期待できる効果 費用の目安(1回) ダウンタイム 推奨対象
ケミカルピーリング グリコール酸やサリチル酸などの薬剤を皮膚に塗布し、古い角質を溶かして剥がす。 肌のザラつき改善、ターンオーバーの正常化。 約 5,000円 – 15,000円 ほとんどなし~数日の赤み。 肌の質感を全体的に改善したい方。
ダーマペン4 極細の針で皮膚に微細な穴を開け、創傷治癒力を利用してコラーゲン生成を促し、角栓を破壊する。 肌の質感、色素沈着、凹凸の改善。 約 20,000円 – 40,000円 数日~1週間の赤みや皮むけ。 質感と色素沈着の両方を改善したい方。
レーザー治療 Nd:YAG (ジェネシス): 皮膚の深層を加熱し、赤みを軽減し、肌のキメを整える5
フラクショナルレーザー: 皮膚に点状にレーザーを照射し、新しい皮膚の再生を促す5
色素レーザー (Vビーム): 赤みの原因である毛細血管に選択的に作用する5
赤みの軽減、肌質の改善、コラーゲン増生。 約 15,000円 – 60,000円以上 施術によるが、数日~1週間以上の赤み。 特に赤みが強い方(Vビーム)、総合的な肌質改善を望む方。

これらの治療は、クリニックによって方針や使用機器、料金体系が異なります。事前カウンセリングで、「どの部位をどの程度まで改善したいのか」「ダウンタイムにどれくらい時間を割けるのか」「予算はいくらか」といった点を整理して伝えると、後悔の少ない選択につながります21

注意:費用やダウンタイムは、クリニックや治療範囲によって大きく異なります。必ず事前にカウンセリングを受けてください。

4.3. 医療レーザー脱毛との関係

二の腕や背中の医療レーザー脱毛をきっかけに、「毛孔性苔癬が軽くなった」「逆に赤みが目立つようになった」と感じる人もいます123。レーザー脱毛は毛根や毛包に作用するため、毛孔性苔癬そのものを治す治療ではありませんが、「毛穴にたまる角質の見え方」に影響を与えることがあります。

レーザー脱毛を検討する場合は、毛孔性苔癬があることを事前に伝え、「どの程度まで脱毛を進めると見た目がどう変わり得るか」「照射後のケアをどうするか」について、クリニックとよく相談しましょう23

4.4. 受診前に整理しておきたいポイント

皮膚科や美容皮膚科を受診する前に、次のような点をメモしておくとスムーズです。

  • いつ頃から、どの部位にブツブツが出ているか。
  • 家族に同じような症状があるかどうか。
  • かゆみ・痛み・しみる感じがあるか、ないか。
  • 今までに試したセルフケア(市販薬・スクラブなど)と、その経過。
  • 妊娠中・授乳中かどうか、持病や内服薬の有無。

これらを共有することで、医師は「毛孔性苔癬として自宅ケアで様子を見るのか」「別の皮膚疾患が隠れていないか」「どこまで治療を踏み込むか」を判断しやすくなります。

第5章:よくある質問(FAQ)

Q1: 毛孔性苔癬は他人にうつりますか?

A: いいえ、うつりません。毛孔性苔癬は主に遺伝的な素因と角化異常によるものであり、ウイルスや細菌による感染症ではありません2。家族内で似た症状を持つ人が複数いることは多いですが、それは「うつった」のではなく、「体質が似ている」ためと考えられます。

Q2: 年齢とともに自然に治りますか?

A: 多くの人では、思春期〜20代で目立ち、その後30代頃までに症状が自然に軽快または消失することが報告されています915。ただし、完全に消えるとは限らず、「よく見ると残っている」「乾燥すると目立つ」といった形で続く場合もあります。

年齢による自然な変化を待つだけでなく、セルフケアや保湿、必要に応じた治療を組み合わせることで、若い時期から「目立ちにくい状態」を保つことができます。

Q3: 自分でブツブツを潰してもいいですか?

A: 絶対にやめてください。ブツブツを無理に潰したり、強くこすったりすると、皮膚に炎症が起き、細菌感染のリスクが高まります。さらに、治った後にシミ(炎症後色素沈着)や小さな傷跡が残る原因になります12

「白い角栓のようなものが見えると取りたくなる」という気持ちは自然ですが、毛孔性苔癬では「触らないほうがきれいに保てる」ことが多いです。どうしても気になる場合は、スクラブではなく、医師と相談して角質ケア用の外用薬やピーリング治療を検討しましょう6

Q4: 治療をやめると再発しますか?

A: はい、その可能性が高いです。毛孔性苔癬は体質的なものであり、慢性的な経過をたどります6。治療やセルフケアによって症状が改善しても、ケアを中断すると角質が再び蓄積し、ザラザラ感や赤みが戻ってくることがあります。

「完治」を目指すというより、「症状をコントロールしやすい状態を維持する」ことを目標に、保湿を中心とした維持療法を続けることが大切です。

Q5: 子どもにも市販薬を使っても大丈夫ですか?

A: 子どもの毛孔性苔癬はよく見られますが、皮膚が大人よりも薄く敏感なため、自己判断で高濃度の尿素製剤やビタミンA配合製品を広範囲に使用することは避けてください512。まずは刺激の少ない保湿剤で様子を見て、それでも気になる場合は小児も診ている皮膚科で相談することをおすすめします。

Q6: 妊娠中・授乳中でも治療できますか?

A: 妊娠中・授乳中はホルモンバランスの変化により、毛孔性苔癬が一時的に目立ちやすくなることがあります11。保湿や摩擦を減らすといった基本的なセルフケアは通常問題ありませんが、レチノイドや一部の外用薬は使用を控える必要がある場合があります6

妊娠中・授乳中に新しい市販薬を試す前には、必ず医師や薬剤師に相談し、安全性を確認しましょう。

Q7: アトピー性皮膚炎もあるのですが、ケアはどうしたらいいですか?

A: アトピー性皮膚炎と毛孔性苔癬が両方ある場合、まず優先すべきは「かゆみや炎症のコントロール」です712。皮膚バリアが十分に整っていない状態で強い角質ケアを行うと、アトピー症状が悪化するおそれがあります。

アトピーの治療薬と保湿で炎症を落ち着かせたうえで、医師と相談しながら、尿素製剤などの使用範囲や頻度を慎重に決めていくと安心です。

結論:毛孔性苔癬と上手に付き合うために

毛孔性苔癬は、遺伝的背景を持つ非常に一般的な皮膚の状態であり、「病気」というよりは「体質」に近いものです。この記事で解説したように、その核心には角質の蓄積と乾燥があります。したがって、治療戦略の根幹は、「一貫した、穏やかな角質除去」「徹底した保湿」という2つの柱に集約されます22

完治(cure)を目指すのではなく、症状をコントロールし、見た目を改善すること(care)が現実的な目標となります。幸い、市販薬から専門的な美容医療に至るまで、症状を大きく軽減させるための選択肢は数多く存在します6823

今日からできる小さな一歩として、まずは「ナイロンタオルでこするのをやめる」「入浴後5分以内の保湿を毎日続ける」といったシンプルな習慣から始めてみてください。それでもなお不安が残るときや、市販薬では十分な改善が得られないと感じるときは、遠慮せずに皮膚科専門医に相談しましょう。専門的な視点から、あなたの肌の状態や生活スタイルに合った治療計画を一緒に考えてもらうことができます。

免責事項

この記事は情報提供のみを目的としており、個々の診断や治療の代わりとなるものではありません。実際の治療方針は、症状や全身状態、他の持病などを総合的に考慮して、担当の医師が判断します。気になる症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  2. 藤井クリニック. 二の腕のブツブツ(毛孔性苔癬)は治る?梅田・神戸の美容クリニック医師が解説!. [https://www.fujiiclinic-umeda.com/column/139.html](https://www.fujiiclinic-umeda.com/column/139.html). 2025年6月15日参照.
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  11. 渋谷美容外科クリニック. 二の腕がブツブツする原因は?市販薬で治る?治し方や対策方法を紹介. [https://shibu-cli.com/acne/upper-arm-butubutu/](https://shibu-cli.com/acne/upper-arm-butubutu/). 2025年6月15日参照.
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  14. American Academy of Dermatology. Keratosis pilaris: Self-care. [https://www.aad.org/public/diseases/a-z/keratosis-pilaris-self-care](https://www.aad.org/public/diseases/a-z/keratosis-pilaris-self-care). 2025年6月15日参照.
  15. タカミクリニック. 二の腕にできるぶつぶつの原因と治療方法. [https://takamiclinic.or.jp/doctorscolumn/other/139062/](https://takamiclinic.or.jp/doctorscolumn/other/139062/). 2025年6月15日参照.
  16. 小林製薬株式会社. ニノキュア – 製品情報. [https://www.kobayashi.co.jp/seihin/nc/](https://www.kobayashi.co.jp/seihin/nc/). 2025年6月15日参照.
  17. 興和株式会社. 【製品情報】ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム. [https://hc.kowa.co.jp/keratinamin/product01/](https://hc.kowa.co.jp/keratinamin/product01/). 2025年6月15日参照.
  18. ロート製薬株式会社. メンソレータム ザラプロA. [https://jp.rohto.com/mentholatum/zarapro-a/](https://jp.rohto.com/mentholatum/zarapro-a/). 2025年6月15日参照. [リンク切れの可能性あり]
  19. エーザイ株式会社. ザーネクリーム. [https://www.eisai.jp/products/sahne](https://www.eisai.jp/products/sahne). 2025年6月15日参照.
  20. 徳島県医師会. 毛孔性苔癬. [https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/1694-2019-06-27-05-40-56](https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/1694-2019-06-27-05-40-56). 2025年6月15日参照.
  21. タカミクリニック. 毛孔性苔癬治療(二の腕・背中のぶつぶつ). [https://takamiclinic.or.jp/service/taisen/](https://takamiclinic.or.jp/service/taisen/). 2025年6月15日参照.
  22. Reddit. What are your holy grail products for keratosis pilaris? : r/AsianBeauty. [https://www.reddit.com/r/AsianBeauty/comments/14ud7ld/what_are_your_holy_grail_products_for_keratosis/](https://www.reddit.com/r/AsianBeauty/comments/14ud7ld/what_are_your_holy_grail-products-for-keratosis/). 2025年6月15日参照.
  23. ドクター松井クリニック. 毛孔性苔癬に対する医療レーザー脱毛について. [https://dr-matsui.or.jp/blog/knowledge/4871/](https://dr-matsui.or.jp/blog/knowledge/4871/). 2025年6月15日参照.

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