妊婦のきゅうり摂取は安全?【産婦人科医・管理栄養士監修】メリット・4つの危険性・推奨量を科学的根拠に基づき徹底解説
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妊婦のきゅうり摂取は安全?【産婦人科医・管理栄養士監修】メリット・4つの危険性・推奨量を科学的根拠に基づき徹底解説

お腹の赤ちゃんのために、口にするものすべてに気を配る妊娠期間。身近で爽やかなキュウリも、「本当に安全なのだろうか?」と疑問に思うのは、ごく自然なことです。この記事では、産婦人科医と管理栄養士の二重監修のもと、妊婦さんがきゅうりを食べることのメリット、知っておくべき4つの重大なリスク、そして科学的根拠に基づいた安全な食べ方について、あらゆる疑問に答えます。

要点まとめ

  • キュウリは適切な洗浄と衛生管理を行えば、妊娠中に食べても安全かつ有益な食材です。
  • 水分、カリウム、ビタミンK、葉酸などを豊富に含み、むくみ対策、便秘解消、胎児の発育補助に役立ちます1, 2
  • 最大のリスクは、きゅうり自体ではなく、洗浄不足による微生物汚染(O157、リステリア菌)や寄生虫(トキソプラズマ)です3, 4, 5。これらは徹底した洗浄と適切な調理で予防可能です。
  • 1日の摂取目安は1〜2本(100〜200g)とし、過剰摂取は避けるべきです2。塩分の多い漬物は少量に留めましょう。

「栄養がない」は誤解!きゅうりが妊婦と赤ちゃんにもたらす5つのメリット

きゅうりが「ほとんど水分で栄養がない」というのは大きな誤解です2。実際には、日本の公式な食品成分データベース6が示す通り、妊娠中の体に不可欠なビタミンやミネラルを豊富に含んでおり、母体と胎児の健康維持に多くの利点をもたらします。

メリット1:妊娠中のむくみと高血圧を予防・改善

きゅうりには100gあたり200mgのカリウムが含まれています6。カリウムは体内の余分なナトリウム(塩分)を水分と共に尿として排出する働き(利尿作用)があります7。この作用により、妊娠中に多くの女性が悩む「むくみ(浮腫)」の解消に直接的に貢献します1。さらに、ナトリウムの排出は血圧を正常に保つ上でも非常に重要であり、妊娠高血圧症候群のリスク管理にも役立ちます。

メリット2:胎児の正常な発育をサポートするビタミン群

きゅうりは、胎児の健全な成長に不可欠なビタミン類も供給します。

  • ビタミンK: 100gあたり34µgを含有6。ビタミンKは、正常な血液凝固に必須の因子です。これは分娩時の過度な出血に備える上で重要であると同時に、胎児の丈夫な骨格形成を助ける役割も担っています8
  • 葉酸: 100gあたり25µgの葉酸が含まれています6。葉酸は、赤ちゃんの脳や脊髄の基となる神経管の形成に不可欠であり、その先天的な異常である神経管閉鎖障害のリスクを低減することが科学的に証明されています9。きゅうりを食事に取り入れることは、日々の葉酸摂取に貢献します。ただし、これはあくまで食事からの補助的な摂取であり、特に妊娠初期に推奨されるサプリメントによる1日400µg(0.4mg)の葉酸摂取を代替するものではないことを明確に理解しておく必要があります。
  • ビタミンC: 100gあたり14mgのビタミンCを含みます6。ビタミンCは母体の免疫機能をサポートするだけでなく、赤ちゃんの皮膚、骨、軟骨の形成に必須であるコラーゲンの合成を助ける重要な栄養素です8

メリット3:便秘解消と適切な体重管理

きゅうりは100gあたり1.1gの食物繊維を含んでおり6、妊娠中にホルモンバランスの変化や子宮による腸の圧迫で起こりがちな便秘の予防・改善に役立ちます8。また、1本(約100g)あたり約13kcalと非常に低カロリーであるため、食事の満足感を得ながら摂取カロリーを抑え、妊娠中の適切な体重管理をサポートするのに最適な食材です。

メリット4:脱水予防とつわりの緩和

約95%が水分で構成されているきゅうりは、効率的な水分補給源となります6。特に、つわりで食欲がなく、固形物や飲み物さえも受け付けにくい時期でも、そのさっぱりとした風味と冷たくてシャキシャキした食感は口にしやすいと、多くの妊婦さんから支持されています10, 11

メリット5:母体の免疫力サポートと抗酸化作用

きゅうりにはビタミンCやβ-カロテン(体内でビタミンAに変換)、さらにはククルビタシンといった抗酸化物質が含まれています6, 12。これらの成分は、体内の過剰な活性酸素による細胞のダメージを防ぎ、妊娠中に変化しやすい母体の免疫機能を維持するのを助けます13

表1:きゅうりの栄養成分(生・100gあたり)
栄養素 含有量 栄養素 含有量
カロリー 13 kcal 亜鉛 0.2 mg
水分 95.4 g 0.11 mg
タンパク質 1.0 g ビタミンA (β-カロテン当量) 28 µg
脂質 0.1 g ビタミンK 34 µg
炭水化物 2.0 g ビタミンB1 0.03 mg
食物繊維 1.1 g ビタミンB2 0.03 mg
カリウム 200 mg ナイアシン 0.4 mg
カルシウム 26 mg 葉酸 25 µg
マグネシウム 15 mg ビタミンC 14 mg
0.3 mg    

出典: 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を基に作成6

【最重要】知っておくべき4つの重大なリスクとその完全な回避策

きゅうり自体のリスクは皆無に等しいですが、その「扱い方」を誤ると重大な危険につながる可能性があります。ここでは4つのリスクとその完璧な予防策を、科学的根拠に基づいて解説します。大切なのは、不必要に怖がるのではなく、正しい知識でリスクを管理することです。

危険性1:微生物汚染(食中毒)

妊娠中は、胎児を異物として攻撃しないように、母体の免疫機能が意図的に抑制されています14。そのため、通常時であれば問題にならないような少量の細菌でも、食中毒を発症しやすくなるため、特に注意が必要です。

事例から学ぶ:腸管出血性大腸菌O157

きゅうりによる食中毒リスクを理解する上で、日本国内で発生した具体的な事例を知ることは極めて重要です。2014年の夏、静岡県内の複数の花火大会の露店で販売された「冷やしきゅうり」を原因とする、腸管出血性大腸菌O157の集団食中毒事件が発生し、最終的に510名もの人々が腹痛や下痢、血便などの症状を訴えました5。その後の調査で、原因となったきゅうりは同じ業者から供給され、消毒が不十分なまま、あるいは洗浄されずに提供されていた可能性が指摘されました。さらに、菌が増殖しやすい常温環境で長時間放置されていたことも、感染拡大の要因となりました。この事例は、きゅうりのような生野菜であっても、不適切な衛生管理が大規模な健康被害につながりうるという厳しい教訓を私たちに示しています。

見過ごせないリスク:リステリア・モノサイトゲネス

リステリア菌は、冷蔵庫のような低温環境でも増殖できる生命力の強い細菌です4。健康な成人であれば感染しても軽い胃腸炎で済むことが多いですが、妊娠中に感染すると、胎盤を通じて胎児に移行し、流産、死産、あるいは新生児髄膜炎といった極めて重篤な影響(新生児リステリア症)を引き起こす可能性があります14。日本の国内産野菜での検出事例は多くありませんが、土壌や水など自然環境に広く存在するため、リスクはゼロではありません。

食中毒の完全回避策

  • 徹底した洗浄: 流水(溜め水ではなく)を使い、表面のイボの間まで指でこするように、30秒以上かけて念入りに洗い流します。これにより、表面に付着した細菌の大部分を物理的に除去できます15
  • 調理器具の分離・消毒: 生の肉や魚を切ったまな板や包丁には、O157やカンピロバクターなどの細菌が付着している可能性があります。きゅうりを切る際は、必ずそれらとは別の、清潔な調理器具を使用してください。使用後の器具は熱湯消毒が効果的です。
  • 冷蔵保存と迅速な消費: きゅうりは購入後すぐに、また調理後も速やかに冷蔵庫で保存してください。カットしたきゅうりを長時間室温に放置することは、細菌増殖のリスクを著しく高めるため、絶対に避けるべきです5

危険性2:寄生虫感染(トキソプラズマ)

トキソプラズマは、主に猫の糞に含まれる原虫で、その糞によって汚染された土壌や水を介して野菜に付着することがあります3。妊娠初期に初めてトキソプラズマに感染すると、胎児に感染が及び、水頭症、視力障害、精神運動発達遅滞などの深刻な影響を及ぼす「先天性トキソプラズマ症」の原因となる可能性があります14。特に、無農薬や減農薬で栽培された家庭菜園の野菜は、化学肥料や農薬のバリアがない分、土が付着している可能性が高く、より一層の注意が必要です4

トキソプラズマの完全回避策

  • 洗浄と皮むき: O157対策と同様の流水による徹底的な洗浄が基本です。それに加え、皮をむくことで、表面に付着している可能性のある原虫(オーシスト)を効果的に除去でき、リスクをさらに低減させることができます。
  • 加熱調理: トキソプラズマは熱に弱いため、67℃以上で加熱すれば死滅します。土壌汚染のリスクが特に心配な場合(例:よく洗われていない可能性のある外食のサラダ、家庭菜園の野菜など)は、スープや炒め物など、加熱調理して食べるのが最も確実で安全な予防策です。

危険性3:化学物質(残留農薬)

多くの妊婦さんが、食品の残留農薬が胎児に与える影響について懸念を抱いています16。しかし、日本の食品衛生法に基づき、国内で流通する農産物には、農薬ごとに厳格な残留基準値が定められています17。この基準値は、動物を用いた繁殖毒性試験など、様々な安全性評価試験の結果に基づき、生涯にわたって毎日摂取し続けても健康に悪影響がないとされる量(一日摂取許容量, ADI)に、さらに安全係数をかけて設定されています。胎児への影響がないとされるレベルに設定されているため、基準値内の農産物であれば、過度に心配する必要はないとされています18

残留農薬リスクの低減策

  • 信頼できる店からの購入: 流通経路が明確な店舗で購入することが基本です。JAS認証を受けた有機(オーガニック)野菜などを選ぶのも一つの選択肢です。
  • 洗浄と皮むき: 流水でよく洗うことで、表面に付着した農薬の大部分を減らすことができます19。皮をむくことも有効な手段です。
  • 実践的な選び方: 極端に大きすぎるものや、不自然なツヤがあるものを避けるといった、昔ながらの知恵も参考になります。

危険性4:生理学的な副作用(過剰摂取のリスク)

きゅうりは健康的な食材ですが、何事も適量が大切です。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」であり、一度に大量に摂取すると、かえって体に不調をきたす可能性があります。

  • 消化不良と下痢: きゅうりは水分と食物繊維が豊富なため、一度に大量に食べ過ぎると胃腸に負担がかかり、消化不良を起こしたり、お腹が緩くなって下痢や腹痛を引き起こしたりすることがあります2
  • 「体を冷やす」作用: 日本の伝統的な健康観では、きゅうりは体を冷やす「陰性」の性質を持つ食材とされています20。科学的なメカニズムは明確ではありませんが、実際に冷えを感じやすい方もいます。特に妊娠中は体の冷えを避けたいと考える方が多いため、冷たいまま大量に食べるのは避けた方が良いかもしれません。体を温める食材(生姜、ネギなど)と組み合わせる、常温に戻してから食べる、加熱調理するといった工夫がおすすめです。
  • 利尿作用と脱水のパラドックス: カリウムの利尿作用はむくみ解消に有益ですが、これはあくまで体内のナトリウムとのバランスを調整した結果です7。他の水分を十分に摂取せずに、きゅうりだけを極端に大量に食べると、尿量だけが増えてしまい、逆説的に体内の水分バランスが崩れて軽度の脱水状態につながる可能性も理論的には考えられます21

【実践ガイド】妊娠中の安全で健康的なキュウリ摂取ガイド

リスクを理解した上で、次は安全にきゅうりの恩恵を最大限に享受するための具体的な方法をステップバイステップで解説します。

1日の推奨摂取量は?

中くらいのサイズで1日1〜2本(約100〜200g)を目安にするのが良いでしょう2。この量は、厚生労働省と農林水産省が共同で策定した「妊産婦のための食事バランスガイド」が推奨する1日の野菜摂取目標量350g以上(そのうち緑黄色野菜120g以上)の一部として、他の野菜とのバランスを考慮した現実的な量です22。きゅうり(淡色野菜)だけでなく、様々な種類の野菜を組み合わせて食べることが、栄養バランスの観点から最も重要です。

選び方と保存方法

  • 選び方: 緑色が濃く均一で、ハリとツヤがあるものを選びましょう。表面のイボがチクチクと鋭く尖っているものが新鮮な証拠です。黄色く変色していたり、持った時に柔らかく感じるものは鮮度が落ちているため避けます。
  • 保存方法: きゅうりは低温と乾燥に弱いため、水分をキッチンペーパーで丁寧に拭き取り、1本ずつペーパーで包んでからポリ袋や保存袋に入れます。冷蔵庫の野菜室でヘタを上にして立てて保存するのが理想的です。この方法で4〜5日は鮮度を保てますが、なるべく数日以内に使い切るようにしましょう20

究極の洗浄・調理プロトコル

  1. 調理を始める前に、まず石鹸で丁寧に手を洗う。
  2. ボウルに溜めた水ではなく、必ず流水で、指やスポンジで表面を優しくこするように、30秒以上かけてしっかりと洗う。
  3. 生の肉や魚を切ったまな板や包丁は、洗浄・消毒しない限り絶対に使用しない。可能であれば野菜専用の調理器具を用意する。
  4. 調理後は速やかに食べるか、すぐに冷蔵庫で保存する。

賢く美味しい食べ方の提案

  • 生で: サラダやスティック、和え物で。そのシャキシャキとした食感と爽やかな風味を最も楽しめます。ただし、市販のドレッシングは塩分や糖分、脂質が多い場合があるので、成分表示を確認し、かけすぎに注意しましょう。
  • 加熱して: スープや炒め物、煮物に。加熱することでカサが減り、たくさんの量を食べやすくなります。また、汚染のリスクが完全に排除でき、体の冷えが気になる場合にも最適な食べ方です。きゅうりは炒めると意外な美味しさを発見できます。
  • 漬物: 日本では非常に一般的な食べ方ですが、妊娠中は注意が必要です。ぬか漬けや浅漬けは塩分が非常に高く、過剰摂取はむくみや妊娠高血圧症候群のリスクを高める可能性があります21。これは、生のきゅうりが持つカリウムの利点(ナトリウム排出)とは逆の効果をもたらしかねません。食べる際はごく少量に留めるか、塩分を控えた自家製のピクルスなどを選びましょう。

レシピ提案: 「減塩・減糖のキュウリとワカメの酢の物」1や、体を温める効果のある「キュウリと生姜の鶏がらスープ」など、妊娠中でも安心して食べられる簡単なレシピを取り入れることで、飽きずにきゅうりを楽しむことができます。

妊娠中の不快な症状を管理するツールとしてのキュウリ

きゅうりの持つ特性は、妊娠中に頻繁に見られるいくつかの不快な症状を緩和・管理するための有効なツールとなり得ます。

つわり対策として

多くの食べ物が受け付けられないつわりの時期でも、きゅうりのさっぱりとした風味、水分量の多さ、そして冷たくてシャキシャキした食感は、吐き気を誘発しにくく、口にしやすいと感じる妊婦さんが多いです10。水分とミネラルの補給にもなるため、つわり時の食事として非常に優秀です。

むくみ・高血圧対策として

前述の通り、きゅうりに豊富に含まれるカリウムは、体内の余分なナトリウムと水分の排出を促すため、むくみや血圧の管理に直接的に役立ちます1。特に塩分を摂りすぎてしまったと感じる日の食事に、意識的にきゅうりを取り入れるのは賢明な方法です。

妊娠糖尿病の食事管理として

きゅうりは糖質が非常に少なく、血糖値の上昇が緩やかであることを示すGI値(グリセミック・インデックス)も低い食材です。そのため、妊娠糖尿病と診断された方や、血糖値の急上昇を抑えたい場合の食事療法において、安心して食事の量を増やし、満腹感を得るために非常に適した食材と言えます23

健康に関する注意事項

  • この記事で提供する情報は、一般的な知識の提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。
  • アレルギー体質の方や、特定の健康上の懸念がある場合は、きゅうりを食べる前に必ず主治医または管理栄養士に相談してください。
  • 異常に強い苦味を感じるきゅうりは、ククルビタシンという天然毒素を多く含んでいる可能性があるため、絶対に食べないでください24

よくある質問 (FAQ)

きゅうりは他の野菜のビタミンCを壊すと聞きましたが本当ですか?
これはよくある俗説ですが、正確ではありません。きゅうりにはアスコルビナーゼという酵素が含まれており、これはビタミンCを酸化させる働きがあります。しかし、酸化されたビタミンC(デヒドロアスコルビン酸)も体内に入るとビタミンCとして機能するため、栄養価が失われるわけではありません。また、この酵素の働きは酢やレモン汁などの酸によって容易に抑制されるため、サラダや酢の物で食べる場合にはほとんど気にする必要はありません2
きゅうりの表面にある時々強い苦みは何ですか?食べても大丈夫?
その苦味の成分は「ククルビタシン」というステロイド系アルカロイドの一種です24。きゅうりが害虫などから身を守るために生成する天然の成分で、通常、ヘタに近い部分に多く含まれます。通常市販されているきゅうりの苦味程度であれば健康上の問題はありませんが、極めてまれに、栽培環境のストレスなどによってククルビタシンを異常に多く含有する個体があり、腹痛や嘔吐などの食中毒の原因となることがあります25。異常に強い苦味を感じた場合は、無理に食べずに捨てるようにしてください。
きゅうりの漬物は食べてもいいですか?
はい、ただし食べる量には最大限の注意が必要です。市販の漬物は、保存性を高めるために非常に多くの塩分を使用しています。塩分の過剰摂取は、妊娠高血圧症候群やむくみの悪化に直結します21。きゅうりそのものが持つカリウムの利点を、高い塩分が打ち消してしまいます。もし食べるのであれば、箸休めに一切れ二切れ程度に留めるか、塩分を自分で調整できる自家製の浅漬けやピクルスを選ぶのが賢明です。
家庭菜園のきゅうりは店で買うより安全ですか?
一概には言えません。農薬を使用しない点で残留農薬のリスクは低いかもしれませんが、一方で、土壌に直接触れる機会が多いため、土壌由来のトキソプラズマやO157などの微生物に汚染されるリスクは市販品より高まる可能性があります4。また、栽培環境のストレス(水不足など)によっては、苦味成分であるククルビタシンが多くなることもあります。家庭菜園のきゅうりを生で食べる場合は、特に念入りな洗浄と皮むきを強く推奨します。
きゅうりは体を冷やすと聞きますが、妊娠中に食べても大丈夫ですか?
きゅうりが体を冷やす性質を持つというのは、東洋医学や伝統的な食養生の考え方です20。実際に、きゅうりは水分が多く利尿作用もあるため、体感として涼しく感じることがあります。妊娠中の冷えを気にされる方は、一度にたくさん食べるのを避けたり、体を温める作用のある生姜やニンニク、ネギなどを使った料理(スープや炒め物)で食べる、ドレッシングに少しだけ生姜のすりおろしを加える、といった工夫をすると良いでしょう。加熱調理は、この懸念を和らげる最も効果的な方法です。

結論

きゅうりは、科学的根拠に基づいた正しい知識を持って正しく扱えば、妊娠中の多くの悩みを解決してくれる、非常に有益で心強い味方です。そのリスクは、きゅうりという食材そのものではなく、私たちの「扱い方」—すなわち、洗浄不足や不適切な衛生管理、そして過剰な摂取に起因します。本記事で詳細に解説した、流水による徹底的な洗浄、調理器具の衛生管理、適切な摂取量の遵守といったポイントを日々の生活で実践することで、食中毒や寄生虫感染のリスクを限りなくゼロに近づけることができます。これにより、妊婦さんは安心して、きゅうりが持つ豊富な栄養と爽やかな風味を、健康的なマタニティライフの一部として楽しむことができるのです。

免責事項
この記事は情報提供を目的としており、医学的診断や治療に代わるものではありません。個別の食事や健康状態に関する懸念については、必ず主治医または管理栄養士にご相談ください。

参考文献

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